リクトたちを探そう! となったわけだが……。
「どこにいるんだろうね?」
「ファースト限定のプールに居られると困るな」
そう、この列車、プールも付いているのだ。すごいよね。
リクトと連絡を取る手段は無いから、虱潰しに探すしか無いんだけど……。
「早く見つけ……あ」
「あ」
「うん? どうしたの?」
ガチャ、と連結部のドアを開けたところでリクト達とバッタリ会うことになった。いや、早く見つけたいとは思ったけどこんな早いとは……。
「リクト、もしかして殺人事件の犯人を追ってる?」
「あ、ああ。まだ全然分かってないんだけど……」
「ならちょうどよかった、怪しい人がファーストルームにいるんだよ。僕らだけじゃ入れないから、リクト達に協力してもらいたいんだ!」
「は!? 怪しい奴って……そんな奴がいるのかよ!」
「わかったわ! ティナ、絶対犯人を捕まえてやるんだから!」
驚くリクト。そりゃ何も手掛かりがない中、僕が急に怪しい奴なんて言ったら驚くよね。
まだ確定じゃないにしろ、僕のピンの存在を知っていると言う事は外部イベント……魔導師祭の時に見たか、千里鏡で見たかだ。でも魔導師祭のコロシアムであの小さなピンを見分けられるわけないし……。
錬金の泥との関係性は別として、不審というのに変わりはない。
「ファーストルームにはファーストクラスのチケットを持った人が最低でも一人はいないと入れないから……」
「俺たちを探してたってわけだな」
「あれ、そういえば……ハルナ達は?」
今はリクト、ティティナ、クラリネの三人しか居ない。ホムルとハルナはどうしたのだろう。
「ホムルが急に体調を悪くしてな……。今はハルナがついてるんだ」
「え、大丈夫?」
「やたらと『煤くさい』って言ってるんだが、俺はそんなの匂わないし……」
「煤……」
ホムンクルスにだけ効くなにかがあるのか?
地下の錬金の泥が千里鏡を持っていたように、今回の錬金の泥も何かアイテムを持っているのかも。
取り敢えず、リクト達と共にファーストルームへ行くことに。
ティティナはぷんすこ怒りながら、レストランにあったチキンを片手についてきている。すごいわんぱくな食べ方してるけど、服に油がついちゃうよ?
「お、どうしたコルト」
「イルカさん、僕ら今からファーストルームに向かいます」
「! 入れるのか?」
「リクトがファーストのチケットを持ってるので」
そうリクトに振り返れば、リクトはイルカさんのプレッシャーに気押されているようだ。迫力あるもんね、わかる。
そういえばリクトはイルカさんと会ったことないか。そりゃビビるよ、裏社会の空気脱ぎきれてないもの。
「へぇ、そんなガキが……。まぁいい、行きな。私たちはまだここで見張ってるよ」
「頑張って〜」
リリリ先輩の言葉に頷きつつ、僕はリクトの手を引いてファーストルームエリアへ入る。
「不審者は56号室。ツヴァイ、万が一のために戦闘準備!」
「わかった」
ツヴァイがハンドガンを喚び出す。
僕らは56号室へ走る。キンキラの装飾達が目に痛い。ファーストよりビジネスのが落ち着くな。
56号室は少し走ればすぐだ。中にひとの気配はあるけど、すこし違和感がある。
敵意……いや、殺意を感じる?
「ツヴァイ、防御魔法」
「ああ、リクトたちも気をつけろ」
本来なら、僕らだけでカタをつけたかったんだけどね……錬金の泥のことは知らせたくないし。
鍵は空いている。つまり、待ち構えられているということだ。
やはり、この男は何かを知っている。
「突撃!」
「!!」
勢いよく扉を開ける。と同時に、防御魔法によって攻撃魔法が弾き飛ばされた。
ファーストルームのカーテンが大きく靡く。
突入と同時の攻撃とは、ね。しかも攻撃力の高い風魔法に炎魔法を組み合わせた殺意の高いもの。
アタリだ。
「お前だな、列車連続殺人の犯人は!」
「チッ、もう嗅ぎつけて来やがったか、クソガキ共が!!」
「ツヴァイ、防御魔法はもういいよ」
「大丈夫か?」
「うん」
さて、今回は頼れるけどちょっと悪戯っ子な神話生物を登場させよう。
ツヴァイ達がいるけど、それでも安心……安心かな? 気まぐれな子達だけど、まぁ大丈夫だろう、今回は良いリアクションをしそうな方が敵だから。
「ティビ・マグナム・インノミナンドゥム・シグナ・ステラルム・ニグラルト・エト・ブファニフォルミス・サドクァエ・シギラム……。星の精、僕を守って!」
「何を変なことを!」
男の風魔法が僕に飛ぶ。でも、それは僕には届かず虚空で消えることになった。
僕は何もしていない。僕はね?
「吸っちゃダメだよ、まだ、まだ」
「な、なんで効かない!? 相殺されているのか!?」
「ツヴァイ、リクト達も一度部屋を出て。良いって言うまで入ってこないでね」
「わかったが、無茶はするなよ」
「え、ちょ……!?」
「わー!? ティナも加勢する! するんだからぁ!」
ツヴァイが筋肉でリクト達を抑え込み、部屋の外に出ていった。龍人の力すら抑え込めるって、ツヴァイ、いつの間にそんな筋力を……!?
まぁいいか。鍵をかけて、さて、楽しい尋問の時間だ。
「ハロー、白亜の心眼の人?」
「舐めやがって、《炎熱──ぐがぁ!?」
突然、男が宙に浮く。まるで体を拘束されているかのように首元を押さえて、ジタバタと暴れ始めた。
星の精が男を拘束したのだ。
「吸っちゃダメだよ〜まだだからね〜」
「なにっをっグゥ!?」
「さーて、今からあなたに質問をしていきます。嘘をついたらわかるからね、正しく答えないと……吊っちゃうよ?」
「ヒィ!!」
おっと、気絶も厳禁。星の精は飽きっぽいんだから、早くしてよね。
オルカさんのところで培った尋問術、見せてあげますかぁ〜。
「簡単な質問から行こうか。君たちは白亜の心眼だよね?」
「っ……! そうだ、そうだよ! 早く俺を離せ!」
「『早く俺を離せ』は要らないよね? 星の精、もっと締めて良いよ」
「あ゛ああああっ!!!」
余裕がありそうだから、息ができる程度に強めちゃって良いだろう。
さて、次の質問だ。星の精が飽きないためにもちゃっちゃと行かないとね。
「錬金の泥を使って殺人事件を起こしていたのはあなた?」
「そ、うだ……」
「殺人事件の目的は何?」
「ぁ……がぁ……。っホムンクルスの、行方を……追うこと……」
「それは何故?」
「言え、ない……」
「星の精」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁぁ!?!?」
星の精にちょっと血を吸わせる。生気と共に血と肉を吸われるのはしんどいぞ〜?
ダメだぞ、ちゃんと僕の質問にはちゃんと答えなきゃ。
「ホムンクルスの、先に……バケモノが、いると……」
「へぇ、バケモノ?」
「お前……かぁ……っ! それ、はぁ」
「うーん、自覚はあるよ。じゃあ僕を探してたの? なんで?」
「っ……っ……」
おっと、締めすぎたか。
はーい、星の精緩めて緩めて〜。
うん、そこら辺でいいよ。あ、杖は没収しとかなきゃ、忘れてた。危ない危ない。
「ねぇ、答えてよ。なんで?」
「完璧な……世界のためだぁ!!!」
どぷ、と僕の視界が真っ暗になる。
錬金の泥に包まれた、と気付いたのは、その1秒後のことだった。