固有魔法はSANチェック!【改訂版】   作:月日は花客

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35.魔導列車はSANチェック!⑥

 

「──ダメだよ、僕に逆らうの?」

 

 その言葉で、錬金の泥は即座に僕の体から飛び退いた。

 言葉に少し……魔力を走らせた(外宇宙の言葉を混ぜた)からだろうか、怯えて天井の隅に縮こまっている。

 かわいそうに、でも君が悪いよね。

 

「あーあー、こんなに縮んじゃって」

「あ……ああ……」

「絶望してるところ悪いんだけど、まだ聞きたいことがあるんだよね」

「ぁ……あああ……!」

 

 おっと、発狂しそうだ。

 はい、精神分析精神分析〜っと。ちょっとチクっとしますよ〜SAN値回復してあげますからね〜。

 

 オルカさんとの修行で、実は僕、SAN値を回復する手段を得ました!

 僕自身は役割的にKPの部分が大きいから、今までクトゥルフの呪文なんかは召喚くらいしか使えなかったんだけど……クティーラお姉様にSAN値回復の力を貰ったんだ。

 何度やっても尋問相手を発狂させる僕を不憫に思ったみたい。貴重な回復の力だ〜!

 ただ、デメリットで相手の生命力や能力値を吸っちゃうから、味方には使えないんだけどね……。尋問相手には丁度いいんだけどさ。

 やり方は、僕の杖の先を相手の体に刺すだけ。そしたら自動でクティーラの力が流れ込み、SAN値を(無理矢理)回復してくれます。

 接近する必要性や、人によって回復できる数値にブレがあること、確実に短命になるあたりが玉に瑕なところかな。

 今回は普通に使えるから関係無いけど……。

 

「……はっ!」

「はい尋問の続き。錬金の泥はどうやって使役してるの?」

「き、教祖様のお力です!!」

「錬金の泥に何かアイテムを持たせてる?」

「『煤の隠れ蓑』です!!」

「どういう効果?」

「身を隠し、ホムンクルスの探知能力を掻い潜る道具ですぅ!!」

 

「君たちのボスの名前は?」

「私も……知らない、教祖様、とだけ……」

「ふむ……」

 

 見違えて素直になったね! 従僕とかにしてないんだけどな、錬金の泥っていう切り札を無くしたらこんなものか。

 あ、錬金の泥はもう危ないからショゴスくんに食わせよう。

 

『テケリ=リ!』

「よろしく〜」

「あばばばばば」

 

 おっと、SAN値チェックSAN値チェック〜。

 回復しなきゃ。あ、ドスっとな。

 リリリ先輩の杖、便利〜。先輩に後でお礼言わなきゃ。

 

「ふむふむ……それじゃあ目的は僕かぁ、アジトに連れて来いとでも言われたの?」

「あ……あ……。か、可能なら殺せと……」

「ふーん、じゃああなたを殺しても良いわけだ」

「あ……ああ……ああああ……」

「だって、あなたも僕を殺そうとしてるんだから、いいよね? じゃあ……目を見て」

「あああ……!」

 

 僕の目に映るのは……今回のゲスト、クトゥグアさんでーす!

 常時燃えてるからなかなか寮に喚べないんだけど、僕の瞳の中なら簡単に喚べるもんね。

 クトゥグアさんも強いし僕によくしてくれるんだけど、いかんせん燃えてるから……麻雀とか人生ゲームもできないんだよね、燃えてるから。

 あとニャル様と仲悪くて、僕の元によく遊びに来る筆頭のニャル様とまた喧嘩されたら困るし……という、なんとも貧乏くじを引いている邪神さまです。

 

「────ぁ」

「あ、オルカさんに引き渡せば良かったかな? そっちのほうが穏便だったかも」

 

 やっちゃって後悔する。しかし永久発狂はもう戻せないから、仕方ない。

 聞けることは聞けたから、身体だけでも引き渡そうかなぁ。

 

『テケリリ〜』

「ありがとう、お疲れ様。星の精たちもありがと〜」

 

 ショゴス君は頭? をぺこりと下げて、星の精はその透明な体でクスクスと笑って、去っていった。

 星の精は透明な体で、体液を吸わない限り姿が現れないからこういう時便利だ。

 

「ツヴァイ、僕は大丈夫なんだけど、イルカさん呼んできてもらえる?」

「わかった、本当に大丈夫か?」

「うん、ただちょっと、リクトたちに見せるのは心配だから」

「え、それどういう事? コルトちゃん」

「すぐに呼んでくる」

 

 ツヴァイがリクトとティティナを引きずっていく音がする。

 流石に永久発狂した人を見せるのはどうかと思うからねー、メンタル心配だし。

 

「素直に話せば生き延びれたかもしれないのに」

「あ……あ……」

「それにしても、僕を殺しに、かぁ……」

 

 確実に地下と今回の出来事で目を付けられた。

 完璧な世界? この世界はアザトースの夢だっていうのに……泡沫の野望なんて放っておいて、さっさと逃げたらいいのにね。

 

「次の人生では、そこんところ間違えないようにね」

「…………ぁ……あぁ……」

「もう聞こえてないか。でも、どっちにしろ今からアジトに行く……教祖様に会えると良いんだけど」

 

 ガタゴトと列車が唸る。

 数分後、ツヴァイはイルカさんを連れて扉を開けた。

 イルカさんは何も言わず、ただ頷いて廃人となった男を縛り上げ、担いでどこかに連れて行った。

 もしかしたらお忍びで部下を乗せていたのかもしれない。とにかく誰かに引き渡しに行ったんだろう。

 帰ってきたイルカさんは手ぶらだったし。

 

 リクトとティティナには、悪者を退治した事、イルカさんが“退治した跡”を掃除してくれたと伝えた。

 リクトはそれだけ聞いて、何か想像したのか顔を引き攣らせて何も聞いてこなかった。ティティナの口を押さえてもいた。

 まぁ、確かに失禁とかしてたし、多少血の跡も付いてたから見苦しい有様ではあったね。

 

「ツヴァイ、一先ず連続殺人事件は解決だよ。……まさか初日からこんな事になるなんてね」

「あと二日、何も無いといいんだが」

「それ、フラグって言うんだよ」

「フラグ?」

 

 リクト達もいるし、イルカさんもいるし……この列車でこれ以上何も起きないなんて事、無いと思うけど……。

 

 と、いう僕の不安を嘲笑うように、残りの二日間は問題なく過ぎた。

 嵐が去った後というか、嵐の前の静けさというか……。

 イルカさん曰く、あの男は荷台に詰めてきたそうな。

 もちろん、今回聞いたこともしっかり共有しておく。こう言う時にモリオンさんがいてくれたら、なんか謎知識で一気に真相まで近づけそうなんだけどな。うーん。

 

「完璧な世界ねぇ……随分と夢見たことじゃないか。白亜の心眼は頭お花畑なのか?」

「錬金術の技術はありそうなのに、勿体無いですね〜」

「アホみたいな理想に付き合わされるこっちの身にもなってほしいな」

「わぁボロクソ」

 

 三人の感想はもっともだけどね。

 ポッポーと列車が鳴る。

 それは駅に着いたこと、目的地に到着したことを示す汽笛だった。

 

「そんなお花畑集団の棟梁はどんなモンなんだか」

 

 イルカさんの言葉は、棘を感じる。ステイルメイトを舐められて良い気分では無いだろう。逆に教祖が心配になってきたぞ。

 さーて、あとは馬車に乗って二日だ。

 ダノン村って、どんなところなんだろう?







魔導列車はここで終わりです。長かった……流石に冗長に感じたので残り二日間はパス!
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