〈さぁ始まりましたフォークロア入学試験実技「コロシアムバンド」! B1は見事な戦いでしたが、B2の受験者は果たしてどんな試合を見せてくれるでしょうか!?〉
まさかの実況付き。凝るところはもうちょっと別のところにしない?
試験がスタートしたよ、コルトです。
取り敢えずスタートと同時に隠れました。草木がいい感じに背が高くて小柄な僕程度すっぽり隠れれちゃう。同時にクロさんに指示を出して、僕に近づこうとする奴を片っ端から翻弄してもらう。
「うわっなんだ!?」
「あれ!? バンドが、バンドが無い!!」
「うげぇっ蜘蛛だぁ!?」
うむうむ、なんとバンドも取ってきてくれたようだ。仕事ができる。
街育ちの子は基本森に慣れてない。草に足を取られるし、枝葉には引っかかる。
それを上手く利用したようだ。僕はニャル様によく森に連れてって貰ったからなぁまたクトゥグアさんに燃やされたらしいけど。森歩きは慣れてるのだ。
「ナイスクロさん、少し場所を変えよう。まだ森の中で何人か誘き寄せれるはず」
「ンナ」
視界の広い樹上にスルスルと登るクロさん。僕も待機ポイントを変え、わざと近くの枝を鳴り揺らす。
そうすれば近くにいた無警戒なライバルが近寄ってくるので、隙をついたクロさんがアンブッシュでバンドを奪う。
奇襲は順調に進み、森エリアはもうバンドを失った脱落候補しかいなくなった。
現在所持バンドは4本。
〈おおっとここで受験番号89番ティティナ・ティーカチェアがバンド10本達成だー! 脅威のスピード!!〉
まだ始まって10分も経ってないのに!?
試験時間は45分。脱落の心配は無いとはいえ、なるべくライバルを蹴落としたいからバンドを取っておきたい。
「クロさん、移動するよ」
「ンニャ」
どうやらコロシアム中央が激戦区になっているようだ。
なんか極太ビームとか氷の塊とか岩を砕くような轟音とかが確認できる。怖すぎ行きたく無い。
というわけでコロシアム外周をぐるっと回ってみよう。デカすぎて完璧には回りきれないかもしれないけど。
せめて10本は欲しいんだよな〜そしたらあとは逃げるに徹する予定。時間が進めば進むほど一人が持ってるバンドの量が偏っていくから急がなきゃ。
移動してきたのは廃墟エリア。
朽ちた瓦礫や障害物にしかならなそうな建造物跡が目立つ、森よりちょっと開けたエリアだ。高さがある建物もあるので、弓とか遠距離武器が使える人はここにいそう。
ちなみに武器は一人一つ! かつ手加減など力の調節ができるもの限定だよ。僕は武器なんて買う余裕が無かったので(財布)古くなったタオルを袋状にして砂を詰めたものを持ってきています。なんだっけこういうのブラックジャックて言うんだっけ?
クロさんに偵察を頼みつつ、瓦礫に隠れてコソコソ……。
やっぱり高台に遠距離武器を持った人が集まってるっぽいので、またクロさんに頼る。
クロさんたちウルタールの猫は、ただの猫だけど気配を消すことに関しては下手な神話生物より上手い。素人はそれこそ知覚できない。
狙撃に集中して後ろが疎かになってるスナイパーなんて、なおさらね。
というわけでスニーキングミッションしてもらって2本ゲット! 目標まであと4!
取られた相手はバンドが無くなっていることにも気づいてないでしょう。
ただ狙撃手系って遠くから撃ってもバンド取りに近寄らないといけないから今回不利だよね。だから少ないのか。
さて、クロさんばっかり頼ってるのもアレなので、僕も動きますか!
魔改造されてるからといって身体能力が上がってるわけじゃないからね。小さい時から働いてる分体力はあるつもりだけど、筋力や瞬発力なんかは人並み。
だから下手に鉄の剣とか持っても振り回せないんだよなぁ。
瓦礫に隠れてる
ブラックジャックで一発!
そしたら怯むからその隙にクロさんがバンド取って撤退! 殴る場所は足を狙ったから直ぐには追ってこれまい。
BJ打法で隠れ小ネズミちゃんを狩りまくって4本ゲット!!
〈クラリネ・パールがバンド30本突発!? 破竹の勢いだぞクラリネ! 今回の主役はこの娘かー!?〉
……上位層の数字は聞かなかったことにしよう。僕もなかなか頑張ってる方だから。
僕は一応武器もあるけどビームとか出せないし! クロさんもウルタールから僕の引率に来てくれてるようなものだから、必要以上のリスクを負いたくない。
クロさんだって耐久がずば抜けて高いわけじゃないし、むしろ猫だから人よりも脆い。あんな氷の礫や斧の一撃を浴びたらどうなるかわからん。万が一大怪我か致命傷を負ってしまったら、同胞意識の強いウルタールの猫たちが黙ってない。
数日後に骨だけで発見されるルートは嫌だもんね!!
というわけで僕はお溢れに預かりつつ身の丈に合った相手をだね……。
時間ももう残り15分を切って、中央はさらに苛烈になっている。
それに伴ってついていけなくなった受験者が逃げてきているので、それを漁夫の利とばかりに狩っていく。
中央に居ただけ合ってバンドを何本も持っている人が多くて、あっという間に目標の10本を超えて13本集まった。
なんだか「全属性使えるなんて聞いてねぇ!」「龍人に勝てるわけないだろ!」とか聞こえるけど、中央はどんな地獄になっているやら。
さてと、僕は目標数ゲットできたからあとは無理せず逃亡の時間だ。外周にいるそこそこ持ってる人を狙う奴も多くなってきたし。
ということで、秘策を発動させる。
クロさんに一本残して全てのバンドを胴体にくくりつけさせてもらう。嫌がらないクロさんは神。そして壁を登ったクロさんはコロシアムの観客席へ……。
僕のクロさんは召喚獣扱いで場外判定にはならないし、普通なら取りに行けない観客席にバンドごと送ることで実質安全圏に隠したのだ。
念のため一個は僕がつけておくけど、バンドを着けないといけないのは本人とは言われてないからセーフの筈。どっちにしろ試合が終わる時には戻ってきてもらうしね。
なによりクロさんが行った観客席は試験官やフォークロア教師陣がいるエリア。ちょっとサービスポーズでもしてもらって猫好き先生に媚びてもらう。教師からの好感度って本当大事。
隙のない作戦というわけだよ!
「ティナを舐めるなー!!」
「……無意」
ティティナの叫びと共に轟音が響いた。
中央で激化する戦いはどうやら彼女ともう一人が最上位らしい。ティティナが力を込めるたび抉れる地面や、相手の極太ビーム? の度巻き起こる閃光とか、もうなんか人外の戦いである。
絶対に近づきたくない激闘を繰り広げているけれど、どうやらティティナの方が押されている? かなり傷を負ってるし、満身創痍まであと少しといったレベルだ。
逆に相手の真っ白な女の子は無傷。無表情を崩さないまま手に持った光る剣で斬撃やビームを飛ばしている。剣から出るビームって何??
「ティナは……まだ……やれる!」
「やめろティナ! それ以上は無茶だ!」
「ヤダ! ティナは一番すごくて一番強いの! あんなやつに……負けたくないのッ!!」
「……無理」
黒髪の少年が止めに入るけど、ティナちゃんは止まろうとしない。というか黒髪くん中央でやってけてるの? すごいね?
力及ばず気絶してしまったティナちゃん。相手の子はもう興味を無くしたのか別の人を狙いに行ってしまった。
ティナちゃんはぱっと見でわかるほどバンドを持っていて、今なら大量ゲットのチャンスだ。
しかしそれは黒髪の少年が許さない。
どうやら彼が全属性使いだったみたいだね、水や、火や、風なんかを操って必死にティナちゃんを守ってる。ハイエナは大量に湧いてくるけど、なんとか躱せてるみたいだ。
僕はあっちにいく気はない。だってあんな大怪我負いたくないし……というか負ったら神話生物たちが何するかわかんないし……。
中央の戦いを眺めながら逃げ回っていたら、あっという間に終了時間になった。
一位はあの真っ白な女の子──ハルナと言うらしい──だった。
【試験結果】
一位 ハルナ 90本
二位 ティティナ 35本
三位 クラリネ 29本
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六位 コルト 13本
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