サキュバスアイドルマイスター 〜演技力カンスト役者、アイドル育成ゲームの世界に転生する〜   作:エビノース志月

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望月陽依ちゃんは超絶美少女天才子役!編
サキュバスアイドルマイスター


 サキュバスアイドルマイスターというゲームをご存知だろうか?

 

 え? サキュバス? エロゲ?

 ご新規さんの反応ありがとう。それだけで知らないってことがよくわかった。

 でもその勘違いはみんな通る道だ。俺だってサキュバスって名前見た時点でエロいゲームだって思ってたもんな。

 いやまあエロいところがないわけでもないが……あくまでも全年齢向けのソーシャルゲーム。いわゆる『アイドルソシャゲ』だ。

 

 しかしサキュバスって時点でエロいものを期待してしまうのは当たり前だよな。

 俺だってそうだ。ほとんどすべてのプレイヤーが性欲によって始めたゲームだろう。

 それがマジメにアイドルやってんだからリリースしてから三ヶ月くらいは『詐欺ゲー』呼ばわりされていたのもうなずける話だ。

 少なくとも俺はうなずける。文句言ってた側だったからな。

 実際にゲームをやっていくうちにハマってしまいもするんだが……。

 サキュスタのプロデューサー曰く、「アイドルなんだからそういうのはダメでしょ」とのことだが、じゃあサキュバスなんて設定にするなよなって思う。みんな思う。

 でも「サキュバスって設定だから本来ならアイドルにならないような子もアイドルにならざるを得なくなるんですよ!」なんて力説されたら「お、おう……」って引いちゃうよな。

 あの時のプロデューサーの目はヤバかった。ガンギマリだった。

 あっ……これ以上触れちゃいけないやつだ……ってみんな思ったもんな。

 

 サキュバスアイドルマイスターはどこかのアイドル育成ゲームの同人エロゲかと疑われるようなタイトルのゲームだったが、割りと健全で真面目なアイドル育成ゲームだった。

 登場するアイドルはタイトルに偽りなくサキュバス。サキュバスアイドル――サキュドルの数は優に百を越え、最終的には百五十一人。

 そこにまで喧嘩売るの? という感じだがコレに関しては恐らく偶然である。もしサービスが続いていたならばもっと増えてもおかしくなかったってくらいサキュドルの数を増やし続けているゲームだったからな。

 

 そう、サキュバスアイドルマイスター……サキュスタのサービスは既に終了している。

 群雄割拠のアイドルソシャゲの中では長寿な方で、なんと九年もの歴史を持つゲームだ。

 十年に至るかどうかと言ったところでサービス終了が発表されたゲームである。

 

 俺はそんなゲームのコントラクター……プレイヤーだった。(サキュスタのプレイヤーはサキュドルの契約者(コントラクター)となることから、『コントラクター』と呼ばれることが多い。先生とか騎士くんとか団長さんとか旅人とか審神者とかドクターとかトレーナーとかマスターとか指揮官とか提督とか殿とか支配人とか転校生とかマネージャーとかプロデューサーとかと同じだ)。

 

 サキュスタのプレイヤー人口は少なくなかった、と思う。

 そりゃ大手のゲームに比べればそこまで盛り上がってはいなかったかもしれないが……売上的にも、そこまで悪くはなかったはずだ。

 

 売上ランキング的なのでも定期的に上位にはランクインしていたし――人気キャラの限定スカウト(サキュスタにおける『ガチャ』だ)イベントのときには一位にだってなったことがある。

 

 俺もミーハーな立場だからな。いちばん好きな、いわゆる『最推し』が限定スカウトの対象になることは()()()()()()()が、人気キャラのスカウトの際にはジャブジャブ課金してしまったものだ。

 

 お得なイベントとかあってもすぐ回したし。STEPガチャみたいなのでもすぐ回す。と言うかガチャの種類もなんか色々あったんだよな。

 

 そこでゲーム性発揮するなって思うけど正直スカウトガチャ回してるときの快感は他に代え難いもので――射幸心を煽る課金ガチャの悪魔的構造に関する話はこれくらいにしておこう。

 アレ早く規制されねぇかな。気持ち良すぎるけど明らかに身体に悪いってわかるし。

 サウナみたいなもんだよな。サウナは課金ガチャほど悪いものじゃないって? はい。

 

 

 しかし、そんなサキュスタであってもサービス終了してしまった。

 実際、末期のサキュスタは一部の熱狂的なコントラクターによって支えられていたようなものだ。

 少なくなかったはずのプレイヤー人口は減少し続け――その理由は間違いなく百を越えるサキュドルにある。

 その数の多さは『売り』ではあったが、裏返せば『一人ひとりに割くことのできるリソースが少なくなってしまう』ということにも繋がってしまう。

 

 平等ではなかった。出番が多いサキュドルも居れば少ないサキュドルも居る。

 格差はあった。数年何の音沙汰もないサキュドルも居たくらいだ。出番が多いサキュドルであっても一年なんて余裕で待たされる。

 イベントシナリオなんかでは登場することもあったが……最も大きな集金手段である限定スカウトの機会が一度も与えられたことがないなんてサキュドルも少なくない。

 

 無償でやってることじゃあない。ビジネスだ。

 開発運営側のことを考えれば登場機会に格差が出るのは当たり前――なんてクソみたいな『常識』で引き下がるようなお利口なコントラクターも居たらしいが、そう簡単に飲み込めないコントラクターも数多く居た。

 SNS上では口喧嘩も絶えなかったからな。人気サキュドルのコントラクターとそこまで人気ってわけじゃあないコントラクターの口論はサキュスタプレイヤーの嗜みの一つ。

 俺もそうだった。そんなゴミみたいなカスレスバの結論はいつも同じだ。

 そのテンプレ結論とは『運営が悪ぃ!』である。

 なんで消費者のオレらがテメェ―らの事情なんて勘案してやらなきゃなんねーんだよ! テメェーらの事情なんざ知るか! オレはオレが好きなあの子の活躍をもっと見たいんだよォーッ!

 最終的にはみんな肩を組んでそういう結論になる。なった。

 

 そんな不満も原因の一つではあったのだろう。

『好きな子』を目当てにやっているゲームだと言うのに、その『好きな子』に関して何の更新もないのだ。個別シナリオを何周も何周も楽しむだけ。

 ひとりひとりに与えられる個別シナリオ自体は『ギャルゲの個人ルート?』ってくらい凝ってるし、それだけで十分に満足できてしまうレベルのものだったのだが――だからって『新展開』がなければゲームを続けようとはなりにくいだろう。

 

 サキュスタ最大の魅力はシナリオだ。

 その文量・質ともにプロデューサーの異様なまでのこだわりが随所に窺える内容だった。

 が、そのこだわりは『いらんやろ』ってところにまで浸透しているので賛否両論という部分もなくはなかった。

 自己満鬱設定ブチ込んでくんのはヤメロって何回言ったらわかるんだよ。いやそりゃちゃんと考えるとそうなるかもしれないけどさぁ……。

 俺たち(コントラクター)と会わなかったらどうなってたんだってサキュドルも多い。

 と言うか『実際にどうにかなってた』ってサキュドルも居る。し、そのくせ『コントラクターと出会う前に「解決」している』なんてサキュドルまで居た。いやその大トロの部分は見せてくれないのかよ!

 プロデューサー曰く、「この世界で『起こったこと』は『起こったこと』でしかないですから。契約者(コントラクター)の皆さんが干渉し得るのは『契約者(コントラクター)』にできることだけです」らしいが……どういうことだよ。そのこだわり捨てろや。

 

 あ、ちなみにエロい意味での鬱設定はないです。アイドルだからなのか、そこは抑えてくれたらしい。

 鬱じゃないエロい設定ならあるが……うん。そういうのならもっと欲しいです。盛り盛りください。

 

 俺はサキュドルのエロに寛容な立場だった。と言うかサキュバスって設定の時点でエロから逃れるのは厳しいだろう。

 批判的なコントラクターも居たが……サキュスタ、エロ同人の数はめちゃくちゃ多かったからなぁ……。

 サキュスタ自体は知らなくてもサキュスタのエロ同人なら見たことがあるって人は少なくないはずだ。

 ほら、あのピンク髪のツンデレっぽい娘……そうそう、サキュバスコスしてるヤツ。めちゃくちゃ恥ずかしそうにこっちを睨みつけるようにしてるけどめちゃくちゃエロい格好してる淫乱ピンク。

 アレ、ウチの顔です。ゲームのアイコンでもある。

 毎年開催されてた人気投票イベントでは二代目一位、そっから三位以下に落ちたことはただの一度たりともないなんて言う超人気キャラである。

 運営に愛され優遇に優遇されているが、それが『当たり前』として扱われるような『別枠』キャラ。

 サキュスタ内に特別扱いされがちなサキュドルは三人居るが、その中でも突出しているのがその子だ。

 あと二次創作で人気だったのは大陸ゲーみたいな長乳してる、服ってよりは布を被せただけみたいな格好した……話が脱線し過ぎてるか。ちょっと戻ろう。

 

 

 とにかく、サキュスタ――サキュバスアイドルマイスターというアイドルソシャゲがあった、という話だが……さて、どうして俺は長々とこんな話をしているのだろうか。

 

 

 好きだったゲームについて語っているだけ?

 サービス終了した好きなソシャゲの思い出話をするのは寂しいけど楽しいからな。そうじゃなきゃやってられなくなるときもある。

 今もそうだって? 違う。それはもうやった。

 コントラクター仲間――実際は敵対関係に近かったが――に対して互いにぐちぐちぐちぐちと思い出話をしまくった。

 

 なら、どうして俺はサキュスタについて語ったのか。

 その答えは、まずサキュスタについて話さなければ俺の現状を説明することが難しかったからだ。

 

 端的に言えば――俺は死んだ。

 そして、記憶を持ったまま転生した。

 

 ただし、転生した先の世界は『異世界』であり……この時点で察してくれたことと思うが、その通り。

 

 俺はずっと好きだったアイドルソシャゲ、サキュバスアイドルマイスターの世界に転生した。

 

 そして、ただ転生したわけではなく――

 

 

「いつ見ても美少女過ぎるな、俺」

 

 

 とんでもない美少女として転生していた!

 

 男として転生していたならばサキュドルと関わることさえ望み薄だろう。

 関わることができたとしても、深い関係にはなりにくいし――なるべきじゃない。

 

 だが、美少女になったなら。

 なればいい。アイドルに。

 そして、自分が最も愛した不遇の推し、天羽愛歌を――他でもない、俺の手でトップアイドルに押し上げる。

 

 天羽愛歌。

 サキュスタにおいては、一度だけ開催されたオーディションイベントに登場し、敗退した彼女。

 

 アイドルになることさえ許されなかった彼女を、トップアイドルにしてみせる。

 

 そのために、俺が今何をしているのかと言うと――

 

 

「陽依ちゃーん! 準備お願いします!」

 

「はい!」

 

 

 望月陽依、七歳!

 

 子役やってます!

 

 

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