大魔導士が嫁探しをするのは間違っているだろうか 作:今更止められねぇよ!性癖スイッチオンだ!
R-18だと感じた人は『疾風』の同類だと思ってください。お覚悟を。私はいつもやりすぎてしまうので。
■スクルド、10歳頃の一幕
ある森の奥深くの一角。ノルナゲストの魔法によって結界が張られ、見つからないように偽装された隠れ家。
その書斎で、ノルナゲストはオーディンから授けられたルーンの研究を行っていた。
「……凄まじいな」
ルーン文字を詠唱の代替に使う技術は比較的簡単に習得できた。しかし、このルーン一文字に籠められた意味を魔法に変換するルーン魔法に関しては、ノルナゲストも嘆息せざるを得ない。
言ってみれば、その場で発声も詠唱も特別な道具や素材も必要なくなく、ただほんの少しの時間わずかな身振りをするだけで、複数種類の効果を持った使い捨ての『魔剣』を作成できるようなものだ。
ただ空中に魔力でルーンを書いてそれに魔力を込めるだけ。ただそれだけの動作で、ルーンに秘められた意味を正しく理解さえしていれば、強力な魔法が発動する。
ルーンのアルファベット――フサルクと呼称するが、これは25種類*1存在し、それぞれのルーンが一文字で3〜5種類、多ければ10種類に届く意味を持つ。もちろん意味が重複するものもあるが……
ノルナゲストはつい、
まず
それに重ねて、
そして
これら3つのルーンを重ね合わせて一文字として書く。バインドルーンという技術。掛け合わせることで、ルーン魔法は一文字の何倍もの力を発揮する。
『陽雷嵐』のバインドルーンに魔力が注がれ、解放される。その瞬間、ルーンから発せられたのは熾烈な雷光と劈くような轟音、そして肌を焼かんばかりの熱。
一直線に伸びていく雷は森の木々を焼き、薙ぎ倒してなお止まらない。
たったこれだけの労力で、これほどの惨事を齎す力。新しく与えられた
ノルナゲストが満足して再び椅子に座りなおすと、部屋の外から体重の軽い駆けてくる足音が聞こえた。この館に、ノルナゲストを除けば居住者はひとりしかいない。
ドアノブの回る音がして、キィと木材の軋む音とともに少しだけ開かれた扉の隙間には、すっかり健康的になった褐色の肌が見えていた。
「……ん」
やってきたのは、当然スクルドだった。
スクルドはノルナゲストの姿を認めると部屋の中へ入ってきて、素早くノルナゲストの懐へと潜り込み、その腹部へ自身の顔をぐいと押し付けた。
ノルナゲストの腹部が呼吸で熱くなる。スクルドは落ち着くのか、こうやってノルナゲストの
「(……まったく、何が楽しいやら……)」
眼下に来たスクルドのくせ毛をわしゃわしゃと撫でてやれば、スクルドは上目遣いでノルナゲストを見上げたあと、脚をのぼって膝上へと座り、ノルナゲストの左腕をグイと引っ張って自身の体を抱えさせる。
そこまでやって、スクルドは満足そうにむふぅと息を吐くと、ノルナゲストへと背を
「(なんというか……随分とまぁ懐いたものだな)」
再び、空いていた右手をスクルドの頭に乗せる。性別が変わったことで髪の質も大きく変わった。くせ毛なのは変わっていないが、心なしか髪が細く柔らかくなり、その分毛量が増した気がする。時折、少年の頃と変わらない長さまで切ってやっているのだが、櫛の通りが全く違うのでよくわかる。
気持ちよさげに目を閉じてそれを受けいれるスクルドの姿は、拾ったばかりの頃の人形のような彼とは全く異なっている。今はさながら、家に慣れた猫のようだった。
こうなってしまうと眠ってしまうまで動かない。どうせ時間など腐るほどあるのだからと、ノルナゲストはスクルドが眠りにつくまでその頭を撫で続けるのだった。
■スクルド、15歳頃の一幕
ある絶海の孤島。ノルナゲストの魔法によって結界が張られ、見つからないように偽装された隠れ家。あらゆる船の航路上になく、海図に刻まれてすらいない未発見の島は、ノルナゲストは飛行の魔法を使って、スクルドは『
この5年でルーンの研究はそれなりに進んでいる。しかし、一通りの文字の意味を理解はしたものの、深くまで理解できている意味はひとつの文字につき精々ひとつかふたつ。
特に、ブランクルーンと呼ばれている、
ルーンを詠唱の代わりにして先天系魔法を発動する『字刻詠唱』と、ルーンそれ自体の意味を解放して魔法を発動する『ルーン魔法』とは、意味が大きく異なる。前者は詠唱に籠められている意味をルーンに置き換え、通信、知らしめることを意味する
こちらはルーンの意味を
ルーンを文章通りに並べて書いて魔力を流す。それだけの行為だ。慣れてしまえばどうということはない技術である。
だが、ルーン魔法は違う。ルーンの意味を
そもそも、ルーンの異質さというのは、魔力によって書かれた単なる字であるそれひとつひとつに、何故か『精霊の加護』や『神の恩恵』、『勇士の刻印』と同じ、世界構成への翻訳通信能力が備わっている点にある。だからこそ、『字刻詠唱』で魔法を発動するには別途に刻印や加護が必要なのに対して、ルーン魔法は他になんの用意をしていなくても、ルーン単体で魔法を発動させられるのだ。
そして、そのルーンに宿っている触媒は意味ごとに異なっている。そのため、意味を正確に理解し、魔力で以て発動させる触媒の
ふと、ノルナゲストは部屋の外に気配を感じた。すっかり気配を消すのも上手くなった
「スクルド。構わない、入りなさい」
ノルナゲストが声をかけると、小さく開けた扉の隙間から、スクルドがおずおずと入ってきた。最近、スクルドはこんな感じだ。
原因はいくつかある。まずひとつに、1年ほど前にやや遅かった初潮が来たことがあげられるだろう。自分の体の状況の簡易的な診断程度ならできるようになったスクルドなのだが、いきなり股から血が溢れ、診断しても正常の一言という異常事態に気が動転し、普段の彼からは信じられないほどに目をはっきり見開いて、下腹部に回復魔法をかけ続けながらノルナゲストの元へと走ってきたことがあった。
その時は、まぁ700と数十年もののヴィンテージ童貞とはいえ少なからず知識自体はあったので、その知識を伝えながら月経痛軽減の魔法*2を教えてやった。
ただ、それから本格的にスクルドの第二次性徴が始まったために、彼の体は日が経つにつれて女性らしくなっていった。小人族の特徴から、顔立ちや体躯そのものこそそれほど変化がなかった一方、肉付きは女性らしくふっくらしはじめ、特に胸の大きさに関しては、しっかりと見てわかる程度に膨らんでいた。恐らく、同世代の女子よりも大きいのではないだろうか。
それと同時に、ノルナゲストも若干スクルドの扱いを決めあぐねていたところがある。ノルナゲストの中で、スクルドはまだ普通に男児なのだ。正確には、ノルナゲストはスクルドの体が女性らしくなっていっていることをわかっているが、スクルドの性自認が男性である以上そう扱おうと決めている。
しかし体は容赦なく女性になっていくスクルド。そうなると、その対応としてどうしても女性扱いしなければならなくなることも多くなってくる。例えば、入浴に際してなどがそれだ。流石にこの歳になると、一緒に入浴することもなくなってきていた。
男として扱ってやりたくはあるが、女として扱わざるを得ない状況。そんな状況への葛藤がスクルドに伝わっていたのか、スクルドは不安を感じることが多くなってきた。
スクルド自身も、自分の体への違和感は覚えていた。というか、そういう保健体育的な基本知識は奴隷時代に叩き込まれている*3ため、自身の体が男性からかけ離れていっていることも理解はしている。初潮に関しては自分に起こるという意識がすっぽ抜けていたからパニックになったが、落ち着いてしまえばノルナゲストに教わるまでもなく存在は理解していた。対処法までは知らなかったが。
ただ、違和感は覚えているが、同時に、なるようにしかならないということも理解している。これまでの短い人生でこれ以上の理不尽などいくらでもあったのだ。違和感で済んでいるのなら御の字であろう。そういう割り切り方はできた。
ただ、ノルナゲストに若干距離を感じるようになったのがショックであった。
スクルドにとってノルナゲストは第二の父親であり、尊敬すべき師である。本来の両親のことも大好きであるし尊敬はしているが、既にノルナゲストはそれと同じくらい心の中を占めているのだ。どちらも心を籠めて自分を育て、命を懸けて自分を救ってくれたのだから。売られた先の優しかった人たちもそれはそうなのだが、やはり親というのは特別な存在である。
だからこそ、距離を置かれるというのはスクルドにとって思ってもみなかった事態であり、ダメージが大きかった。改めて考えれば、ノルナゲストは所詮他人であるという事実も重いものがある。両親との間にはあった、少なくともスクルドにとっては絶対的な楔であった血の繫がりというものが、ノルナゲストとの間にはないのだ。
どちらかが離れようとすれば簡単に離れてしまう関係であると改めて突き付けられてしまったスクルドは、ここにきて自分がノルナゲストの迷惑になっていないか、という点を気にするようになってしまい、心から甘えることができなくなってしまったのである。
と、いった感じのスクルドの内心事情のおよそ4割も理解できていないものの、自身の身の振り方が原因でスクルドにいらない心配をかけてしまったことに、ノルナゲストは気づいていた。*4
それならば自分が動かなければならない。ノルナゲストは立ち上がるとまっすぐにスクルドの方へと歩いていく。その様子に一瞬びくりと体を跳ねさせたスクルドだったが、脇に手を入れられて持ち上げられてしまえばもう抵抗はできない。
そのまま書斎の椅子まで持ち運ばれて、椅子に座ったノルナゲストの膝の上に乗せられた。
「……あぅ……」
しっかりと回された腕。背中に感じる温かみに、スクルドの心が解けていく。しばらくその温もりを楽しんだ後、スクルドはノルナゲストの腕を少し緩めて、体を反転させノルナゲストの方へ向くと、胸元に顔を埋めた。
スクルドはこのにおいを嗅ぐと、とても安心する。スクルドにとってノルナゲストは安心の象徴だからだろう。ただ、何故かはわからないのだが、最近は少しだけ心臓が、んっんっんっ、と音を立てるのだ。
スクルドは、ノルナゲストの体に自分の体を擦り付ける。自分の存在を刻みつけるかのように。
その行動が何を意味するのかも、自分が何故それをやろうとしたのかもよくわからないままに。
■スクルド、30歳頃の一幕
ある、少しズレた空間。ノルナゲストの理解した、運命や空間の意味を持つブランクルーンと呼ばれる『
その寝室で横を向いて寝ていたノルナゲストは、不意に気配を感じて目を覚ました。確信を覚えながら視線を下へと向ければ、幾度となく見てきた茶髪が目に入る。
「(……また忍び込んだのか、この子は……)」
無論、もうそんな歳ではないのだが、30年生きていても下手すれば人間で言う10歳程度の肉体と精神を持つエルフもいるものだから、行動と体躯やら顔つきやらが相まってノルナゲストも子供扱いを続けてしまっている。
そのせいで、未だに髪も切ってやっているし、風呂も一緒に入っているのだ。
さて、スクルドは何をしているかと言えば、いつも通りノルナゲストの胸元に顔を押し付け、においを吸いながら熟睡していた。ただ、これまでとやや勝手が違うところはと言えば、相応どころか相当に大きくなった果実が、グイグイとノルナゲストの体に押し付けられていることだろう。
「(あと、なんかすごい甘い匂いがする。同じ石鹸使っているはずなのに……)」
生憎、ノルナゲストには女性の匂いを嗅ぐという機会はなかったし、唯一その機会が近かったフェルズは当時あまり身だしなみに気を使わない干物女だった。
「(胸だけじゃなくて全身柔らかいし……いや、何を考えている? スクルドだぞ? ナリはこれでも男なんだから、欲情していいはずがないだろう……!!)」
ノルナゲストは思わず、欠乏や忍耐を意味する『
ノルナゲストの精神と肉体の一部が落ち着きを取り戻した直後、スクルドがノルナゲストの胸元から顔を上げ、薄っすらと目を開いた。
「……んぅ……?」
「む、起こしてしまったか……すっかり魔力反応に敏感になったな、お前も……」
「んん〜……」
スクルドの頭を優しく撫でてやると、スクルドは気持ちよさそうに目を細めて、身体を180度反転させる。ノルナゲストの体の前面に、スクルドの背中をくっつける形だ。
そうして、椅子に座っているときのように、ノルナゲストの右腕を自身の体に回そうと引っ張るので、ノルナゲストもそれに合わせて腕の力を抜いてやる。
ノルナゲストの懐にすっぽりと嵌まる形で落ち着いたスクルドは、満足そうにまた目を閉じた。ノルナゲストは微笑ましそうにそれを見たあと、スクルドの頭の下に自身の腕を差し込んでやる。俗に言う腕枕である。
しばらくはリラックスした雰囲気が漂っていたのだが、不意にスクルドがノルナゲストの手を持ったまま、下腹部に触れさせてゆっくりと動かす。*5
スクルドは最近、ノルナゲストのことを考えている時にこの辺りをゆっくり撫でると、体がぽかぽかと温まってくることに気づいたのである。*6
一方、それ以上の意図はねぇっつってんのに反応してしまうのがノルナゲストである。再び煩悩に苛まれる約800歳童貞。一度それを意識してしまえば、ちょうど股間の辺りにモッチリとしたものが当たっていることもまた、ノルナゲストの意識に激しく主張を繰り返してくる。
そう、たわわになった胸に目が行きがちだが、スクルドはむしろ尻であった。
ノルナゲストは素早く、かつスクルドに被害がいかないよう渾身の魔力操作で自身に
こんな感じの夜が、だいたい月に3回くらいあるのであった。