大魔導士が嫁探しをするのは間違っているだろうか   作:今更止められねぇよ!性癖スイッチオンだ!

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 初手で神威という手札を切る。監査を迎えるにあたってあまりにも悪手であるのだが、その時のロキの心情はただひとつ。「こいつがオーディンなのか、そうじゃないのか」である。

 大神級の神は、神威を抑え込み人間になりすますことができる。フレイヤのような普通の神でも人間相手なら騙せるそれは、ゼウスやカーリーのような大神級が行ったのであれば、それこそ神相手でも騙すことができる。

 同時に、オーディンという神の性質にある。オーディンが、別人になりすまして(ひと)と問答するのが好きなのは、北欧神話(アースガルド)の神のほとんどが知るところだ。外見など魔法でなんとでもなる。

 

 ただ、同時にそう考えると違和感もある。数十種類の偽名を持っているオーディンが、今更偽名を使い回すか? という点。グリムが『仮面を被る者(グリームニル)』の略称であることは、アースガルドの神はともかく他の神話の神にはあまり広まっていない。逆に、アースガルドの神であれば誰もが知っている。

 あと、見た目をオーディンに寄せすぎてないか? という点。ロキの前に出てくるのに、眼帯と長髪って……なお、偶然である。

 

 だから、それを踏まえて威嚇から入った。これで別人なら、最悪自分が謝罪してペナルティを受ければ済む問題だからである。ギルドのトップであるロイマンはロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアの起こした問題をなぁなぁにしたがるから、という打算もあるが、それ以上にオーディンを放置しておくのが拙すぎるからである。

 これはロキやフレイヤはおろか、ニョルズのような温厚な者も同じ対応をするだろう。しないのは、どこまでも脳筋バカで底抜けのポジティブであるトールくらいか。

 

 天界にいたころ、ロキは悪神として暴れ回っていた。そして、そんな自分の気質にもっとも近いのがオーディンであることを知っている。オーディンがロキのようなことをしなかったのは、あくまで王という責務と、責務に自分を縛り付けるだけの自制心があったからだ。

 王の責務さえなければ、例の天授物(アーティファクト)を始めとするオーディンの作った趣味の悪い天授物を下界にばら撒いていたのは、ロキではなくオーディン本神だっただろう。

 ロキが下界に降りて退屈を癒やし家族(ファミリア)を持ったことで丸くなったのと逆に、オーディンが責務から解き放たれて悪神紛いの真似をしている可能性を否定できない。そして万が一そうであったとき、気がつけばファミリアが全滅している、なんてことも容易にあり得る。

 だからこそ、ロキはあらゆるペナルティを考慮しても、ここでオーディン本神であるかを確かめるという選択を採ったのである。結果的に杞憂ではあったが。

 

 グリムは、(アルギズ)のルーン魔法を発動させる。その意味は守護、保護。すなわち防御結界であり、ロキの神威を遮断した。

 

「ルーン……? やっぱ自分……」

 

「神ロキ、落ち着くといい。神オーディンは私の盟約相手ではあるが、グリムという名は名乗りを許されているだけにすぎない。本名を明かすと面倒なのでね。それ以上神威を発していると、私はともかく周りが保たないのではないか?」

 

 ロキは、団員たちが神威に耐えきれず倒れ始めているのを見て、警戒しつつも神威を抑える。グリムへの疑惑はまだ解けていない。ルーン魔法は下界の者単独では辿り着けない魔法だが、オーディンが教えたのならその限りではないだろう。

 しかし、オーディンだとすれば無闇にオーディンに繋がる情報を出しすぎなのだ。偽名もそうだが、魔法に長けたオーディンならば、ルーン魔法でなくとも神威を相殺する魔法を使って、人間偽装を続けられるはずだ。

 

「あぁ……スマンな。ペナルティは受けるわ、堪忍な」

 

「いや、これに関しては、その反応は妥当だ。咎める気はない。門番の対応はまた別だし、別件で聞きたいこともあるが……」

 

 オーディンの為神(ひととなり)を知るグリムもまた、ロキの対応を妥当と判じて赦した。ロキ本神とやり合うのは今じゃない。やるにしてもあとでいい。

 先にファミリアの方を是正しなければ、(ロキ)がいなくなっても無意味である。最悪、ファミリアさえ改善できれば、ロキ自身は今回の目的上はどうでもいい。随分と家族煩悩になっているようだし、まともになった団員の行動を無下にしないだろう。

 

「さて、通ってもいいだろうか」

 

「ああ、エエよ。ただ、門番の子ぉらへの注意は軽くしたってくれへんかな。監査について伝え忘れとったのはうちのミスなんや」

 

「伝達ミスは彼らの問題ではないが、主神に話を通さずに門前払いという態度は問題があるだろう。監査は相応に行う……そうだな、訓練場のような、大人数集まれる場所に団員を通してくれ。どうやら、告知したにもかかわらず今日ここにいない団員もいるようだが、とりあえずいる者にだけ伝えておくことにする」

 

 監査に来た3人が『黄昏の館』へと入り、鍛錬場に団員たちが集められる。その表情は様々だが、古参の団員や老兵は「ついにか」という納得の表情があるのに対し、大多数を占める若者や新参者に関してはあからさまにギルド職員を舐めているような表情や、逆に「ロキ・ファミリアを舐めているのか?」という反発の表情が読み取れる。随分と、まぁ、質が下がっているようだ。

 そして、そのどちらにも当てはまらない表情。エルフや狐人のような魔法種族(マジックユーザー)からは、明らかな畏怖の表情が読み取れる。特にエルフは先ほどの魔法から魔力量を感じ取って、本能的に彼の種族の正体へと行き当たったのだろう。

 

「ロキ・ファミリア団長の、フィン・ディムナだ。まず、門番の対応と主神の所業について謝罪させてほしい。すまなかった。団長としては、ギルドの監査を受け入れる用意がある」

 

「副団長のリヴェリア・リヨス・アールヴだ。同じく、家族の不始末を謝罪する」

 

 ロキ・ファミリアのトップツーが頭を下げたことで、団員たちがざわつく。それと同時に、リヴェリアが頭を下げたことで()()()()()()()()()()()()()()がだんまりしていることに疑問を呈する団員も少なくなかった。

 普段であればリヴェリアが頭を下げようものなら、仮に非がこちらにあろうともエルフの取り巻きがフォローし、頭を下げた相手に噛みついてもおかしくないのだ。しかし今回は、若いエルフが先走りそうになるのを、それなりに生きているであろうエルフが押さえ込む様子すら見て取れる。

 

「顔を上げてほしい。まず、自己紹介から行こうか。私はギルドより監査を委託され、臨時のギルド職員として派遣された、グリムというものだ。こちらは弟子のスクルド。過去に色々あって失声症になってしまっているので、多少の無礼は許容してほしい」

 

「(ほんで従者の名前がスクルドかい!! ボケ兄貴(オーディン)の関係者なんやからヴァルキュリャの方から取っとんのやろうけど、よー許したもんやわ)」

 

「そして、こちらがギルド職員のソフィ嬢だ。知ってる者も多いと思う。今回は補佐をやってもらう形になる」

 

 一通り紹介が終わり、さてと前置きをしてグリムは本題に入る。

 

「今回、我々が監査を決行するに至った理由は、ロキ・ファミリア団員の素行の悪化が原因だ。それに関しては、派閥の幹部も把握しているものと考えているが?」

 

「あぁ、把握しているよ。不甲斐ない限りだ。教育が行き届いていないのは、間違いなく僕らの落ち度だ」

 

「ディムナ殿の言ったとおり、これは教育を怠っている派閥の落ち度だ。そして、こちらで教育が行き届かない原因を調査した結果、派閥の拡大による事務仕事の増加に追われて対処しきれていないという結論に至ったのだが、そちらの認識と改善意識の有無を確認したい」

 

「こちらも同様の考えだ。改善案として、事務要員の教育を行っているが、結果は芳しくない」

 

 そう、リヴェリアの言う通り、なにもロキ・ファミリアが事態の悪化を何もせずにただ見送っていたわけではない。

 単純ではあるが、事務仕事を行える人材を増やすことを考え、そちらの教育を行なってはいるのだ。問題はと言えば、この教育を担当しているのがリヴェリアということであろうか。

 そう、リヴェリアの座学と言えば、その厳しさをロキ・ファミリアで知らぬ者はいない。多くの者が迷宮へと逃げ出し、教育は滞っていた。

 

「ということなので、まずはそこの改善を行いたい。さて、ロキ・ファミリアで専業サポーターはどのくらいいるだろうか」

 

 グリムの問いかけに、団員たちからちらほらと手が挙がり始める。分母が大きいだけあって、十数人はいるだろうか。

 

「ギルドは本日より、『認定サポーター制度』を始める。今までサポーターはギルドに登録していなかったが、認定サポーターとなる者は登録をしてもらう」

 

 グリムが説明した内容、認定サポーター制度の詳細は以下の通りだ。

 

 認定サポーターは『ダンジョン・サポーター』と『ファミリア・サポーター』に分かれている。まず両者共通の認定サポーターの『権利』だが、認定サポーターとして認められた者は、冒険者とのトラブルの際に、神ガネーシャ、女神アストレアを始めとしたギルドの協力神へ協力を求め、訴え出る『訴求権』が与えられる。訴えに虚偽がなく真であると認められた場合、ギルドが認定サポーター側について冒険者との間に入り、トラブルの解決を行うこととなる。要するに、ギルドが活動を保護することとなるわけだ。

 一方『義務』として、認定サポーターとなる際にペーパー試験が行われる。この試験は各サポーターによって内容が異なり、どちらの内容もギルドにて無料で講習が行われている。

 

 また、認定サポーターのうちダンジョン・サポーターはナビゲートやポーター、モンスターの解体、魔石やドロップアイテムの収集、周囲の警戒などを担当する。

 ダンジョン・サポーターの『権利』として、ギルドはその日の物品収入、金銭収入のうち、歩合に関わらず一定の分け前を与えるよう冒険者側に義務付ける。歩合の内容も不満があれば、『訴求権』を用いて認定サポーター側に正当性があると判断されれば、ギルドが認定サポーター側について金額交渉を行う。要するに、収入面の担保だ。さらに、防具やバックパック、上層の地図などの初期装備を、駆け出し冒険者と同様に支給される。

 ただし、ダンジョン・サポーターの『義務』として、定期的な再認定試験を受けて、ペーパーテストで合格点を取ってもらう。合格点に届かない場合は認定停止状態になるが、再試験はギルドにていつでも無料で行える。また、冒険者側がダンジョン・サポーターのサボタージュや仕事の不出来をギルドへ訴え出た時、ダンジョン・サポーターは自身の『訴求権』で弁明を行う『被訴求の義務』を負う。この時、ダンジョン・サポーターに落ち度が認められた場合、その程度によって罰金、再教育、認定停止処理などの懲戒処分が下ることとなる。

 

 一方ファミリア・サポーターの仕事は主に、ファミリア運営に携わる事務作業が主になる。帳簿や書類の作成、ギルドからの指示の報告などである。他ファミリアとの活動も行うダンジョン・サポーターに対して、こちらは自身の所属するファミリアでの活動が主になるだろう。

 こちらも、所属ファミリアの冒険者とのトラブルになった時、ギルドが認定サポーター側の弁護を行うサポーターの保護や、所属ファミリアへの一定金額の給与支払い義務などの『権利』が担保され、追加でファミリアからの理不尽な追放が行われた場合の『訴求権』とそれに伴うギルドでの保護。場合によっては、ギルド所属のファミリア・サポーターとして別ファミリアへの派遣やギルドでの再雇用などの保険を得ることができる。

 その分ダンジョン・サポーターよりも懲戒処分は重く、横領、癒着などの不正が『被訴求の義務』によって明らかになれば、容易に認定停止処理になり得る。

 

「これらの制度発足の公布は後々行うが、ロキ・ファミリアに関してはその先駆けとして、ソフィ嬢による専業サポーター団員への教育を、数日かけて行ってもらう。これは神ウラノスとギルド長ロイマンによって許可を得ていることだ。教育後、試験に合格すれば無事認定サポーターとして登録されることとなるのだが、主神ロキ、および幹部陣には、今回教育を受ける専業サポーターの中から、半数以上をファミリア・サポーターとしての教育を受けるように調整してほしい」

 

「今まで軽んじられていたサポーターやファミリア内の事務職をギルドで管理、保護する制度か……大きな改革だね。それにこちらにとっても都合がいい。サポーターにも得があるし、冒険者は迷宮探索に専念できる。僕らの手も空くから教育や研鑽に時間を費やせる……すごいね、これは……この案は君が?」

 

「あぁ。大ファミリアの運営があまりにもおざなりで、迷宮探索という探索系ファミリアの本分をろくに果たせていないようだったのでな」

 

「ここまでの制度を考えられる君に言われると、こちらとしても耳が痛いよ」

 

「そうか、だが、納得していない者もいるようだがな」

 

 グリムが目を向けた先には、敵意を表す若手の姿があった。

 フィンはそれを見て眉を顰める。今の説明のどこに納得できない要素があったのだろうか。サポーターは確かに軽んじられ、時に差別されて侮蔑されることさえある役割だが、決して嫌われているわけではない。それに、大派閥として専業ではなくともサポーターをやる機会は若手にもあったはずなのだから、この制度の意味は理解できるだろうに。

 この時、フィンは侮っていた。冒険者という人種の()()()を。

 口火を切ったのは意外なことに若手たちではなく、フィンやリヴェリアの同期であり三幹部と称されるドワーフ。ガレス・ランドロックだった。

 

「あー、すまんな。俺はガレスっていうもんだ。一応、そこのフィンやリヴェリアと一緒にここの頭張ってる……で、だ。お前の言う制度? ってのは、俺はいいと思う。やることやってるやつが相応の権利を得るのは当たり前の話だからな。そのうえで、多分若手のやつらが思ってることを代弁させてもらいたい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 グリムは若手を見渡す。どうやら、ガレスの言ったことがおおよその相違でよいようだ。

 将来的に、ガレス・ランドロックという男は好々爺のような豪放磊落な好漢として知られる。少なくとも『大抗争』と呼ばれる、4年後の大変革の頃には。しかし、今現在のガレスは違う。今のガレスは生来持つ戦士という性質を剥き出しにしており――有体に言って尖っていた。

 

「なぁ、お前ら。恩恵は持っているのか?」

 

「いや、私たちは恩恵を得ていない」

 

「!?」

 

 リヴェリアがグリムの返答に驚愕してロキを見る。ロキはそれに、嘘はついていないと首を振って返す。

 

「(バカな……では先ほどの魔法は、先天系の魔法だとでも言うのか……? それに、ロキは知っていたようだが、あの魔剣によく似た現象……何者なんだ、この同胞は……)」

 

「そう、それが俺たちが引っかかってるとこだ。この迷宮都市は実力主義だ。お前らの言うことはもっともなのかもしれないが、上から目線で評論をもらうのは納得がいかない」

 

「そうだ! 俺たちはロキ・ファミリアだぞ!!」

 

「ギルド如きがナマ言ってんじゃねえ!!」

 

 ガレスの啖呵に若手が同調する。しかし、それをガレスは力強く地面を踏み鳴らすことで制した。

 

「お前らもだ。誰のせいでこんなことになってると思ってる。弁えねえなら埋めるぞ」

 

「……なるほどな。私に上から目線でものを言われるのが気に食わないと。では、まずそちらの若手の方々の誤解から解いておこう。私はひとつの間違いもなく、君たちの上位者だ」

 

 そして、その制止を、グリムはさらに上から煽るように、そんな爆弾を放った。

 

「君たち個人が所属しているというなら、所属の第一はファミリア、第二がギルドなのだろう。しかし、君たちが冒険者として活動をするのなら、所属の第一はギルド、第二がファミリアだ。ファミリアというのは突き詰めれば、神を中心にした互助組織に過ぎないのに対して、ギルドは冒険者を管理する組織であり、明確に冒険者より上の立場にある。その監査なのだから、身分は君たちより上だ」

 

「け、けどロイマンは俺たちに……」

 

「ロイマンが(おもね)っているのは君たちではなくロキ・ファミリアという存在だ。極論、君たちがいなくなってもロキ・ファミリアが存続していれば問題はない。いいか、せめてギルドと相対するときは、自分という冒険者個人をファミリアと分けて考えろ。そして、君たちが晒している醜態が、ロキ・ファミリアを貶めていることを自覚しろ、愚物ども」

 

 そこまで言われて、ヤジを飛ばした冒険者は怒りを顔に宿したまま押し黙る。その目には、まだ相手を見下す感情が残っている。多くの若手は同様だった。ガレスは――これを腐っている若手を見極める試金石にするつもりで、あえて彼らに同調するような意見を言ったようだが。

 そもそも、リヴェリアやフィンに代わって教育を担当していたのがガレスであり、彼も派閥拡張で自身の手が届かない問題が出てきていたことを苦々しく考えていた。元々、工夫の街で荒くれ者のドワーフたちを纏めていただけあってその手腕は確かなのだが、いかんせん数が多い。

 まぁ、その他にも意図はあるのだが。

 

「それに、だ。これからは極度にロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアを擁護することもなくなるだろう」

 

「な、なんでだよ!!」

 

「この両派閥に対して便宜を図ってきたのは、黒竜を討伐する可能性が最も高い最大戦力だったからだ。だが安心しろ。君たちオラリオのファミリアは本分通り迷宮攻略に専念してくれていい」

 

 そして、グリムは宣言した。

 

「黒竜は私たちで討伐する。君たちが手を出す必要はない」

 

 事実上の戦力外通告を。

 

 何を言っているのかわからない、と言った表情でグリムを見るロキ・ファミリアの団員たち。その表情が嘲笑に変わり、実際に侮蔑の声が口から発せられる前に、再びガレスが地面を踏み鳴らした。

 

「……そこまで言うなら、実力を示してもらおうか。お前ら、俺と戦え」

 

「……それが目的だろう、君」

 

「ハッハッハ!! まぁな!! なにせ、恩恵を受けていないというのにあれほどの魔力を持ったエルフに、そちらの小娘も身のこなしが素人ではない。これで疼くなという方が無理な話だ」

 

「……まぁ構わないが……」

 

 グリムは再び団員たちを見渡す。その表情に宿っている感情は容易に読み取れる。若者たちからは「大言壮語を吐いた身の程知らずを幹部が叩きのめすのを見て悦に浸ろう」という感情。実力者からも、こちらを見定めようという意思が伝わってくる。

 そして直後、強い殺気が団員たちを襲った。その場に崩れ落ちる者、失禁する者、食べたものを吐き戻す者。少なくともLv3程度の団員は皆、その殺気に呑まれている。Lv4の実力者も耐えるのに精いっぱいで、フィンとリヴェリアは目を瞠って、ガレスはその表情に闘志と笑顔を浮かべて、殺気の発生源である幼く見える少女を見る。

 

「……スクルド、抑えなさい。気持ちは嬉しいが、ソフィ嬢やサポーター、あと、まともそうな者まで巻き込んでいる」

 

「……んっ」

 

 殺気の発生源――スクルドが気を落ち着けると、殺気が霧散して団員たちが解放される。グリムへの侮りや嘲りの感情が透けていたこと――しかも()()()()()()()()()()()()()()()――が我慢できなかったのだ。

 

「……さて、見ての通り私は魔導士でね。戦士であるランドロック殿の相手であれば、剣士であるスクルドが相応しいだろう」

 

 幼く見える少女に対しての侮りの視線はもうない。若手の団員から向けられるのは、下層の怪物に遭った時のような恐怖の目線。

 そして、ガレスは楽しみで待ちきれないといった様子で歯を剥いた。

 

「小娘相手で悪いが、手加減はできんぞ?」

 

「必要はない。それに、スクルドは君と同年代だ、ランドロック殿」

 

 その言葉に、全員が驚愕したという。




 原作キャラを『愚か者』にしたくないのでこの辺の塩梅が難しいよね。
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