大魔導士が嫁探しをするのは間違っているだろうか   作:今更止められねぇよ!性癖スイッチオンだ!

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会談

 

 場所は『黄昏の館』の執務室。主神ロキと三幹部、フィン、リヴェリア、ガレスの3人。そしてグリムとスクルドが話を詰めるために集まっていた。

 

「では、ロキ・ファミリアは『ファミリア・サポーター』による事務業務の負担軽減を念頭に入れた団員の再教育計画案をギルドへ提出。その後1か月で団員の引き締めを行い、それでも改善が見られなかった団員には厳正な処分を行ってもらう」

 

「承知したよ。ロキもそれでいいね?」

 

「まぁ、しゃあないわな……うちからも神威付きでしっかり説教して、抑止に努めるわ……ところで、あれ本気(マジ)なん?」

 

 話がひと段落となったところで、ロキがグリム相手に問いかけた。

 ロキはグリムが何者か、というのをこれ以上考えないことにした。リヴェリアや他のエルフたちの反応から、エルフの有名人であることはなんとなく理解した。そのうえでオーディンがその有名人に化けている可能性も、まぁ否定できない。あいつならやりかねない。

 オーディンが本気で人間に化けようと思えば、天界のロキならともかく下界に降りて全知零能になっているロキでは見抜くことはまずできない。というか、できれば下界まで来てオーディンと知恵比べとかやりたくない。

 

「あれ?」

 

「あれや、黒竜討伐の件。言うとっけど、そんな簡単なもんとちゃうで」

 

「あぁ、あれか。もちろん本気だ。我々もそれほど本気で鍛えていなかったからこの程度に落ち着いていたが、オーディンの依頼が終わったら頭数を揃えてダンジョンに潜るつもりだ」

 

「……言われてみれば、オラリオの外でLv7まで育ててんねんな……そんな育ちやすいんか? 自分の魔法って……」

 

「成長スピードは変わらないと思うぞ。ただ、お前たち神が劇的な冒険が見たいという理由で『偉業』なんて条件にしていた部分を撤廃して、恩恵で言うところのランクアップに必要なものを単純に大量の経験値にしてあるからな。冒険をしなくとも、戦いを続けていればいずれランクアップできるというシステムになっているだけだ」

 

「なんやそれズルやないか!!」

 

「私としてはなぜあのような仕様にしたのか理解はしたが納得に苦しむ。つまりは眷属を玩具にしようという神の意図が透けて見えた。術式を作った者は性格が悪いな」

 

アホ兄貴(オーディン)や!!」

 

「どうりで」

 

 さもありなんである。

 まぁ、実際はオーディンのやったことは『神の恩恵』をどのくらいのラインまでにとどめておくかの匙加減や恩恵全体の調整であり、そのあたりの条件を決めたのは他の愉快犯どもなのではあるが。

 

「例えばですが、『神の恩恵』は改宗(コンバージョン)に1年のインターバルが必要ですが、『神の恩恵』を封印したのち、すぐに『勇士の刻印』を刻むことや、『勇士の刻印』を解いてすぐ『神の恩恵』を刻むことはできるのでしょうか?」

 

「リヴェリア!?」

 

「技術的には可能だ」

 

「アカンで!? 今リヴェリアに出てかれたらホンマ詰むからな!?」

 

「話を戻すが……黒竜とスクルドには因縁がある。まぁ、黒竜にとってすれば数多ある因縁のひとかけらに過ぎんのかもしれんがな」

 

「あぁ~、言うたら悪いけどよくある話やね。ほんで、それってその子の魂が精霊とくっついとるのと、なんか関係あるんか?」

 

 ロキにしてみれば、まぁ確かに目の前に魂が半分精霊なんて言う存在が現れたら探らざるを得ないだろう。それを人為的にやったのなら、それは人間の魂を破壊して精霊の魂と混ぜたとしか考えられないのだから。倫理的な良識を持つ神であれば――いかんせん少数派である――その所業を軽蔑するだろう。それは、下界に降りて丸くなった彼女も同様だった。

 しかしまぁ運の悪いことに、彼女が投げたのは巨大なブーメランだったのだが。

 

「黒竜とは関係ないな。とある盗賊団が持っていた天授物(アーティファクト)が刀身を砕くと周囲にいる人間の魂を代償に爆発するという代物で、それに巻き込まれた際にスクルドの魂が半壊したので、私が契約していた精霊の魂を同意のうえで移植した」

 

「……あ……っ……本当に申し訳ございません……」

 

「ロ、ロキ!?」

 

 グリムの話を聞いて、一瞬引っかかりを感じ、心当たりを思い出し、顔面を蒼白にしてその場で頭を下げるロキ。普段のロキからではありえない行動に、フィンが驚きのあまり声を上げる。

 

「私と契約していた精霊がスクルドを助けることを選んだのは精霊の意思だ。スクルドを傷つけた実行犯は盗賊の頭領だ。悪意ある品を作ったが世に放たず蔵にしまっておいたオーディンは、まぁ管理責任といったところか。天界でのあなたの荒れ具合は聞いているよ、狡知の神ロキ。幸い、スクルドは生きているが、精霊との融合の影響で、彼の性別は変化してしまった。それが彼がまだ齢10の頃だ」

 

「ホンマすまん!! 言い訳のしようもない!!」

 

「……話の流れから、ロキが事態の遠因になっていることは察しがついた。僕からもあなた達に謝罪させてもらいたい」

 

「まずひとつ、神に対して期待がないから神ロキの行動への怒りはない。ふたつ、本当に謝るべきだと感じて謝ってはいるようだが、その謝罪の先にスクルドがいない時点でディムナ殿の謝罪は受け取る価値がない。みっつ、スクルドが何も言わない以上、私に何か言う権利はない。よっつ、スクルドが傷ついた怒りは自身の不甲斐なさへの怒りとして消化を終えている。神ロキ、あなたに赦しを与えることはないが咎めるつもりも(むく)いるつもりもない。自己満足だろうが何だろうが償うつもりがあるなら、まず自分たちのやるべきことをまっとうして、これ以上私の手間を増やすな」

 

 グリムにとってはとっくに過ぎたことではある。自身の関係のないことでも、こちらを慮って謝罪の選択をしたフィンの行動を否定する気はないし、打算や義務感、ポーズで謝っているわけではないというのは見ればわかる。

 実際、フィンの謝罪はこの場では最善の行動であっただろう。単純に、グリムがそれに興味を持たなかっただけで。

 スクルドも、今更謝罪には特段興味はない。彼女にとってはグリムとの距離が近づいたことでプラスだったからである。

 一方、これでロキもグリムがオーディンではないことを確信した。神というのは面子を第一に考える。そのため、こういう怒り方をする者は非常に珍しいのだ。そして、オーディンはそういうタイプではなかった。感情は置いておいて、罰は罰としてしっかりと与えるタイプだ。

 

「……ロキのガチ反省姿はリスに似ているとオーディンから聞いていたがこれが……」

 

「待てや、それただのリスとちゃうやろ。ラタトスクやろ。誰が走り回る出っ歯やねん」

 

「いや知らんが」

 

 いい加減に鬱陶しかったので茶化して終わらせる。ちなみに、ラタトスクとは世界樹の頂上にいる鷲と根元にいる蛇の喧嘩を煽っている愉快犯のリスである。

 

「ところで、先ほどの本を出した魔法。あれはスキル《異空倉庫(リポジトリ)》のような収納空間を作る魔法だと考えたんだが、間違いはないかな?」

 

「お前も切り替えが早いな、フィン」

 

「ガレス。相手がさっさと流したがっているんだ。長引かせても仕方ないさ……あの魔法があれば遠征はさらに捗るはずだ。何せ、『妖精部隊(フェアリー・フォース)』が丸ごとポーターに化ける。物資の運搬効率が跳ね上がるんだ。重量も嵩張りも無視してね……」

 

「ディムナ殿の見解で相違ない。あれはルーン魔法だが、先天系魔法にスケールダウンしたものが、その教本に収録してあるはずだ。初歩の魔法ではなく、かなり高難度ではあるのだが、《セーヴァルスタズ》と同じく生活基盤的な魔法ではあるからな」

 

 フィンの目が、先ほどから話を一切聞かずに読みふけっているリヴェリアの手元へと向かう。魔法種族(マジックユーザー)ではない自分が読んだところで意味はないのだが……

 

「魔法種族以外が先天系魔法を使えるようになる方法を知っていたりはしないかな? なんて……」

 

「『勇士の刻印』から魔法の触媒の要素だけを抽出して、それだけを刻む魔法ならそれに載せている。魂にはノータッチだから、『神の恩恵』とも干渉しない」

 

「なにはともあれリヴェリア待ちか……」

 

「……よし」

 

 不意にリヴェリアが詠唱を開始する。それこそ、フィンやロキが止める間もなくだ。魔力暴発(イグニス・ファトゥス)の危険性など頭からすっぽ抜けているらしい。グリムは静かにリヴェリアの周りに障壁を張った。

 そうして、詠唱を重ねること36小節。超長文詠唱をさらに上回る長さである。詠唱式の長さは本質的に自由というグリムの理論を逆手に取り、安定させるために極端に長い詠唱式を編んだのだ。

 『認証式(パスキー)』……魔力操作に至っては、教本の体験幻覚で繰り返すこと数百回。

 

「【――魂の具現をここに。契約の下に命ずる、我が名はアールヴ】《セーヴァルスタズ》!!」

 

 そうして、一度で成功させる辺りは、流石と言えばいいのだろう。リヴェリアは新緑色のローブを身にまとい、手には総木製の、矢にも槍にも剣にも杖にも見える奇妙な長物が握られ、またその先端には、一羽の鷲が留まっていた。

 

「……成功した……」

 

 成功の余韻を噛み締めるリヴェリア。しかし元来冷静な彼女だ。すぐに疑問が湧いてくる。

 

「……いや、待て。鳥?」

 

「《セーヴァルスタズ》は魂の波長を写し取り、魂のエネルギーで編んだ武装である『魂装(ヴェイプン)』を取り出す魔法だ。理論的には動物が出ることもあり得る。軍馬とかな」

 

「となると、その鷲は魂の片割れ、もうひとりのリヴェリアと言ったところか。なかなか聡明そうな顔をしているじゃないか」

 

「魂の片割れ……」

 

 グリムがそっと障壁を消すなかで、リヴェリアが鷲を見つめる。すると、鷲は大きく翼を広げてその場で何度も羽ばたき、長物から飛び立って開いていた窓から外へ出ていった。

 

「……あ? え、ちょ。おい!? どこへ行く!?」

 

「キー!!」

 

「キーじゃなくて!! おい、戻ってこい!!」

 

 リヴェリアが窓に飛びついたときには、鷲は遥か遠くを飛んでいた。

 

「……なぁ、飛んでったんだが……」

 

「ペットは飼い主に似ると言うしなぁ。そっくりではないか。好奇心に任せて飛び出していくところとか……! ダーッハッハッハッハ!!」

 

 自分で言って笑いが抑えられなくなったガレスと、なんとか堪らえようと下を向いているフィン。リヴェリアは、窓枠にもたれかかって力なく顔を覆った。

 

 そんな様子をひとり、ロキだけが顔を引き攣らせて見ていた。

 

「……ミストルテインやないかい……!!」




※レプリカです。特段神と繋がってもいないので神威とかもないです。


コメントでご指摘いただいたので追記。

 フィンはスクルドにちゃんと謝ってます。で、その上でグリムが謝る先にスクルドがいないと言ったのは以下の意図。

自分の状況や立場から、謝らなければならないと感じたから謝るのが「出発点だけの謝罪」
 今回のフィンのように「ロキがこれほどの反応を見せているのだからスクルドはどれだけ被害を負ったのだろう」と考えて謝罪するのは、スクルドの精神的被害にちゃんとした理解が及んでいない「出発点も到着点もあるけど出発点に偏った謝罪」
 この場合、ロキがいつも通りの態度を通して場合に、「まず謝る」じゃなくて相互理解、状況確認を優先した可能性がある(これも間違いではない。特に責任たる立場であるなら)
 グリムが受け取る価値があると考えるのは「スクルドの反応から見てこれだけの被害があったんだろう」と考えてする「出発点も到着点もある上で到着点重視の謝罪」
 こちらの場合だと、ロキがどんな態度取ってようと「まず謝罪」を優先させる。

 そのうえで、今回はスクルドが全く気にしてなかったからグリムが受け取る価値があると考える謝罪はもとより不可能なので、フィンとしては最善策をとったけどどうしようもなかった状況です。責めないであげて
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