大魔導士が嫁探しをするのは間違っているだろうか   作:今更止められねぇよ!性癖スイッチオンだ!

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大魔導士の魔法検証

 ノルナゲストは自身の授かった『神の恩恵(ファルナ)』を分析しながら、先天系魔法の研究を進めていた。まず、彼のステイタスが以下の通りである。

 

 

 

ノルナゲスト・タング・アールヴ

Lv1

 

力 : I0

耐久 : I0

器用 : I0

敏捷 : I0

魔力 : I0

 

魔法

《トリニティ》

・三相魔法。

・追加詠唱によって効果分岐。

・精神力追加消費で規模拡大。

・精神力追加消費で強化。

・詠唱式【岐路と復路、三本の道、進む方角は思いのままに】

・追加詠唱式【其れは過去を示すもの。過去の再演、その根は朽ちるべきではない】

・追加詠唱式【其れは現在を示すもの。現在の否定、その枝はあるべきではない】

・追加詠唱式【其れは未来を示すもの。未来の固定、その葉は落ちることはない】

 

《》

 

《》

 

スキル

貪食魔狼(カーニバル)

・死体から魔力徴収

・魔力に高域補正

 

 

 

 魔法スロットが3つあるのも、はじめからひとつ開いているのも、レアスキルを持っていることも、ハイエルフならまぁ納得できるステイタスであると言っていい。

 このステイタスを見たとき、主神となったヘカテーは妙に上機嫌であった。

 

「女神ヘカテー。何がそんなにお気に召したのかな?」

 

「ヘカテーでいいわ! だって、3つの顔を持つ女神、三相女神(トリニティ)は私のことだもの。もちろん、私以外にもいるけれど、私の眷属なんだから私のことよね。それにスキルの死体も、死も司っている私関連だし、狼も私の象徴の動物なの!」

 

 可愛らしく乙女のように喜ぶヘカテー、そんなやり取りがあった。とはいえ、ノルナゲストは特段それらに興味はない。今現在はただ淡々と、ファミリアの鍛錬場で自身の得たステイタスを使って検証を進めていた。

 

「ふむ、なるほど……確かにこれは先天系魔法から乗り換えるのも理解できる。相当使いやすい」

 

 彼の後天系魔法《トリニティ》は、大層な詠唱文に対して効果はシンプルなものだった。

 1つ目は治癒魔法、3つ目は防御結界魔法。2つ目は少しややこしいが、端的に言えば位置指定の破壊属性攻撃である。これで治癒魔法ではなく時間回帰による修復であったり、防御結界ではなく事象固定による防御などであれば格好がついたのだが、残念ながら、そう上手くはいかないようだ。

 ノルナゲストが驚いたのは、詠唱中の魔力のスムーズさだ。先天系魔法を知る彼にとって、詠唱中の魔力というものはもっと()()()ものだったのだが、後天系魔法は集中さえ乱さなければ、走りながら撃つことさえ容易に思えた。

 言っておくが、走りながらの魔法詠唱――並行詠唱という技巧はそれ自体が高度な技術であり、それを難なくこなすのは単純に彼の技量がずば抜けているからである。

 

「【――契約の下に命ずる。暴風をここに】《ゲイル・ブラスト》」

 

 続いてノルナゲストが繰り出したのは、エルフが使う先天系魔法の中ではポピュラーな風の魔法。ただし、本来は12小節以上の詠唱を必要とするところを、彼は研究の結果8小節まで縮めることを可能にしていた。

 だが、やはり8小節もの詠唱を要するにも関わらず、その威力は短文詠唱の後天系魔法程度のそれである。参考程度に言えば、リヴェリア・リヨス・アールヴの攻撃魔法《ヴァース・ヴィンドヘイム》の第二階位、長文詠唱と言われる《レア・ラーヴァテイン》の詠唱式が7小節。ベート・ローガの付与魔法であり、同じく長文詠唱と言われる《ハティ》が9小節。超長文詠唱と言われるアルフィアの《ジェノス・アンジェラス》が11小節だ。*1

 しかし詠唱の長さよりも、ノルナゲストはやはり魔力操作のスムーズさの違いに着目する。

 

「ふむ……後天系の魔法の方が、魔力の道がしっかりと固定されているイメージか? ちゃんと作られた経路を通るから安定しているといった感じか……」

 

「ノルナゲストー、なにやってんの?」

 

 ノルナゲストが考察していると、フェルズが話しかけてきた。

 このふたり、互いに男女として意識していないから妙に距離が近い。それを見てエルフの団員などは度し難いものを見る目で見ているのだが、フェルズに対して注意しようものならノルナゲスト本人から「何故俺のことをお前が決める? 王族から決める権利を奪うのか? 不敬者め」と詰られるのでなにも言えない。

 なお、王族であることを隠しているのは上層部だけであり、本人は特に隠す気はない。そして都合の良いときだけ王族であることを利用するのである。

 

「魔法の研究だ。後天系魔法が発現したのでな」

 

「あー、噂になってるよ。一個の魔法で攻撃、防御、回復と使い分けられる規格外な魔法が発現したって……羨ましい限りで」

 

「規格外さで言えば、お前の回復魔法も大概だろう」

 

 フェルズの魔法、全癒魔法《ディア・パナケイア》は、対象の負傷や疲労、毒に呪詛(カース)まですべてを癒す魔法。回復魔法の中では最上位の能力を持つ。それぞれの効果自体は比較的平凡なノルナゲストの魔法と比べれば、確かに規格外と言える。

 

「おかげさまで貴族に引っ張りだこよ」

 

「人間の貴族は不摂生の塊だからね」

 

「そのツケをこっちに押し付けないでほしいわ」

 

 そんな他愛ない会話をしながら、ノルナゲストは《トリニティ》の攻撃魔法を詠唱する。詠唱が完成し魔法が発動すると同時に、的としていた岩の一部が前触れなく砕ける。これが位置指定の破壊属性攻撃。

 空間上に照準となる点を浮かべ、その周囲に破壊力を伴った衝撃を発生させる。と言えばわかりやすいだろうか。

 再び同じ詠唱。発動する魔法も同じだが、今度は破砕ではなく粉砕。破壊点が重なった部分の岩が、砂同様に細かく飛散する。これが《トリニティ》の特性のひとつ、『精神力追加消費で強化』。発生する破壊力そのものを強化するというもの。

 さらに同じ詠唱。放たれた魔法は、今度は岩全体を砕き、石の群れへと様変わりさせた。これが『精神力追加消費で規模拡大』であり、破壊力が発生する点そのものを大きくするというものである。

 

「……やっぱズルいでしょ。同じ詠唱でこんだけバリエーションあるの……」

 

「バリエーションというほどでもないだろう。力を入れれば強くなるなど、魔法でなくとも同じことだ」

 

 ノルナゲストはまた同じ詠唱を繰り返す。破壊点が出現し、転がっていた石がひとつ砕け散る。

 

「【復唱(ダ・カーポ)】」

 

 そして、その一言で同じことが起こる。

 

「……え?」

 

「【復唱継続(コンテニュー)】」

 

 岩から分かたれて転がっていた石が、もはや詠唱もしていないというのに次々に砕けていくのを、フェルズは唖然として見ていた。

 

「【復唱終了(フィーネ)】」

 

 そして、ノルナゲストが終止符の詠唱を終えることで、破壊の雨はピタリと止んで、その場に静寂が訪れる。

 

「なるほど。先天系魔法で使っていた技術も、少なくとも一部は流用可能か」

 

「ちょ、ちょっと待って!? なに今の!? 詠唱は!?」

 

「『要求復唱(リピーティング)』という技術だ。直前に使った魔法をそのまま再度行う、先天系魔法で使用していた技術だ」

 

「えー……と。スキルとかじゃ……?」

 

「ないな。恩恵を得る前から使っていた、単なる技術だ」

 

 絶句するフェルズをよそに、ノルナゲストは自分なりに考察を始める。そもそも先天系魔法と後天系魔法の違いとはなにか。世間的にはそれを『個人に最適化(アジャスト)された魔法であるか』と捉えられているが、それだけでは認識として不十分だ。

 後天系魔法は、ステイタスに紐付けることで魔力の経路が保存されており、使い回すことができる。その保存のために個人個人の資質に合わせたものしか使えず、かつ個人によって容量の限界があるのだろうと、ノルナゲストは推測する。それならば、魔力制御が安定するのも納得できる。要するに専用の回路が常に用意されているのだ。

 一方の先天系魔法は、その回路をいちいち組み立てるところから始める必要がある。それ故に不安定で、かつ詠唱も長くなる。また、保存しておくことも難しい。逆に、器の側を魔法に合わせることで保存を可能にした技術が、恐らくは『魔剣』なのだろうと考えた。

 後天系魔法の考察は置いておいて、この先天系魔法の考察に関しては以前からノルナゲストが持っていた持論であり、『要求復唱』はその理論の上で開発した技術だ。直前に使用した魔法の魔力回路を残しておき、再び魔力を流すことで同じ魔法を使用する。ノルナゲストはこれによって、先天系魔法の欠点である詠唱の長さを一部克服するに至っていた。

 

「にしても、先天系魔法に輪をかけて『要求復唱』がやりやすかったな……初めから保存されている影響なのか?」

 

「…………」

 

 考察に没頭するノルナゲストの横で、フェルズが彼のことを化け物を見るような目で見ていたという。

*1
本小説の解釈として、詠唱の小節とはその小節ごとに一定の魔力操作が必要な区切りとして考える。1小節が短い場合も長い場合もあり、基本は句点の位置で判断している。




 ダンまちのオリ主なんてこのくらいは盛っていい。
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