大魔導士が嫁探しをするのは間違っているだろうか   作:今更止められねぇよ!性癖スイッチオンだ!

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 昨晩大筋を思い付いたのでこの方向で行きます。


対『闇派閥』定例会議

 

 世界三大秘境のひとつ、『竜の谷』。三大冒険者依頼の最後のひとつである『隻眼の黒竜』が封印された場所。

 オラリオの迷宮と同等かそれ以上に危険な竜種のモンスターが湧き、そして黒竜に恐れ慄いて人里へ降りてくる。ある意味では迷宮よりも危険な場所。

 それ故に、黒竜を封印した結界の内側からすり抜けてくるモンスターを駆除する門番が、『竜の谷』には複数存在している。

 その中でもふたり、7年前から門番に加わった素性を語らぬ男女は、抜きん出た強さを持っていた。

 

 男の方は大剣で竜を切り裂き、時に文字通り()()()。女の方はたったの1小節詠唱(ワンワード)で回避も防御も困難な魔法を使い、竜を撃ち落としていく。

 他の門番たちにとって、彼らはまさに英雄であったが、病かなにかによって長時間戦うことができないことを惜しむ声もあった。

 もし彼らが万全だったのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 

「くだらん」

 

 女は吐き捨てる。思っていた通りだ。やはり、直接対峙したものでなければ、アレの絶望感は正しく伝わらない。

 Lv9もLv8も、Lv7がいくらいたところで、アレは倒せない。

 

「『闇派閥』ごときに遅れを取っている今のオラリオでは到底……な」

 

「…………」

 

 女の、呪詛にも似た失望の声に、男は目を瞑り黙するのみ。しかし、考えていることは同じであった。

 先日やってきた、かの邪神。幽冥の化身。奴は言った。「腑抜けたオラリオに喝を入れるために、大罪人(踏み台)にならないか」と。

 彼女たちの心は、限りなく是に傾いていた。

 

 彼が、来なければ。

 

「ようやく、見つけたぞ」

 

 男の声が聞こえた。聞き覚えのある、聞こえるはずのない声だ。

 8年前、自分たちがまだオラリオで名声を持っていた頃、自分たちに転がされては向かってきた、少年だった男。

 Lv6で足踏みし、腑抜けたのだとやはり失望していた男。

 巨漢の猪人(ボアズ)。その隣に、いるはずの女神の姿はない。

 

「1年。ただ1年だけ、あのお方のお側を離れるお許しをいただいた。お前達を探すのに半年。残り半年しかない」

 

 猪人は持っていた大剣を構える。一振りで巨岩を砕く剣。それに相対するのは、一振りで山を割る男の剣。

 

「腑抜けていたと思っていたが、存外失望するには早かったか?」

 

「……腑抜けていたさ。失望も当然だ。だから、負けた。手も足も出なかった」

 

 その言葉に男女は目を(みは)る。この猪人は腐ってもLv6だ。それを手も足も出ないとまで言わせる者がオラリオに?

 

「慢心だ。油断などでは片付けられない、『猛者(おうじゃ)』などと持て囃されて塗り重ねた傲り。己の惰弱を思い知った」

 

「それでどうする」

 

「決まっている。上へ進む。お前達よりも、あの者たちよりも上に。そのためにまずは――踏み台になってもらうぞ」

 

 ふたつの大剣が激突する。

 その日、竜種が結界を越えてくることはなかった。

 

 

 

 『ギルド』で行われる、対『闇派閥』定例会議。この3年ほどの間、ロキ・ファミリアと(名目上は)フレイヤ・ファミリアの迷宮攻略に支障が出ないよう協力要請をせず、有志の優良ファミリアのみを率いて『闇派閥』の対処をしてきたガネーシャ・ファミリアではあったのだが、ここ1年で『闇派閥』による攻撃が激化してきた。

 不甲斐ない限りだが、ガネーシャ・ファミリアは自分たちのプライドよりもオラリオの平和を取り、つい数か月前、オラリオの二大ファミリアへ協力要請を申し出た。

 それから開かれている、オラリオ防衛の主戦力派閥を集めての会議。スパイの可能性を減らすために参加者は各派閥の代表者と、ギルドからはロイマンのみ。さらに部屋には、リヴェリアの先天系魔法による遮音結界を張っての開催になる。

 

「あら、今回は都市最強様がいらっしゃいますのね。先日までは『白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)』様がいらっしゃっておりましたのに」

 

 猫を被りながらそんなことを言うのは、アストレア・ファミリアのLv3、『大和竜胆』、ゴジョウノ・輝夜。いつも通り猫を被っているのだが、その言葉にはどこか棘がある。無理はない。この定例会議に参加するファミリアすべてが、毎回団長を参加させていた。前回までのフレイヤ・ファミリアを除いて。

 オラリオが『闇派閥』による危機に脅かされている時に、レベルでは追い付かれたとはいえ、元団長であったミア・グランドが引退した今、都市最強であるフレイヤ・ファミリアの団長が、1年という長い期間オラリオを出ていたのだ。反感を抱かないはずがない。

 しかし、それに対して当のフレイヤ・ファミリア団長『猛者』オッタルが放った一言は、部屋の中にいる人間すべてを驚かせた。

 

「面目ない限りだ。ことのついでで悪いが報告がある。俺は()()()()()()()()。今は、Lv7だ」

 

 Lv7。それは、かつての最強、ゼウス・ファミリアの幹部陣と並ぶレベル。

 やっとオラリオが、過去に一歩追いついた。

 

「……それはいいプロパガンダになるね。少なくとも、民間人の不安を和らげるには十分な効果だ」

 

 そう呟いたのは、ロキ・ファミリアの団長、Lv6『勇者(ブレイバー)』フィン・ディムナだ。彼は心強そうにオッタルの方を見ているが、その瞳にはうっすら、悔しさと羨望が見えている。それは、後ろで控えている副団長、L()v()6()万魔姫(ナインヘル)』リヴェリア・リヨス・アールヴも同様であろう。

 しかし、それよりもなお悔しいのが、フレイヤ・ファミリアの副団長、Lv5『女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)』ことアレン・フローメルだろう。彼は副団長という立場に甘んじていない。なんなら団長の座を虎視眈々と狙っていたのだ。それなのに、いきなり水をあけられてしまったのだ。不機嫌にもなろう。その証拠に、オッタルがランクアップを発表した際に、盛大に舌打ちしていた。

 さらに言えば、同じLv5だったロキ・ファミリアの三幹部が、ここ3年でLv6に上がっているのも屈辱的だった。

 

「不甲斐ない限りだが、ここ最近、『闇派閥』に不可解なことが起こっている」

 

「不可解なこと?」

 

 話を切り出したのは、ガネーシャ・ファミリア団長兼、ギルド傘下憲兵隊長、L()v()6()象神の杖(アンクーシャ)』シャクティ・ヴァルマだった。それに聞き返したのは、アストレア・ファミリア団長、L()v()4()紅の正花(スカーレット・ハーネル)』アリーゼ・ローヴェルだ。

 

「まず前提の再確認だが、以前から申していた通り我々ガネーシャ・ファミリアは『闇派閥』の本拠地について、大まかなあたりをつけており、出入り口もいくつか監視できる状態になっている。そのうえでまだ我々が見つけられていない出入り口があるだろうことは不徳の致すところだが……この本拠点の規模がオラリオ全域よりも広く、さらに上下方向にも深く続いていることを確認しているため、現状、乗り込んでの制圧は不可能と考え、出入りの監視に努めているところだ」

 

「その点に関して、ギルド……というより、我らの主神、ウラノスより報告がある。その拠点が、かつてウラノスの眷属であった名工であり、かのダイダロス通りの名の由来にもなっている職人、ダイダロスが作っていた『人工迷宮』クノッソスである可能性が高いとのことだ」

 

「人工迷宮……いや、しかし、そのダイダロスはもう亡くなっているのだろう?」

 

 ――大魔導士と違って。

 そんな言葉を内心に付け加えたリヴェリアの質問に、ロイマンが答える。

 

「どうやら、子々孫々で受け継いでいるようだな。クノッソスの完成という目標と、その妄執を」

 

「その子孫が『闇派閥』にいる、と……俄然、圧倒的な地の利があちらにある以上、深追いはできないね」

 

「あぁ、それでこちらの把握している都市内の出入り口から『闇派閥』が出てきた場合には監視を開始し、テロ行為の予兆があれば急行、確保するようにしている。だが、それでも我々が把握できていない入り口からのテロ行為はうち漏らしとなっており、早期確保はしているものの少なくない被害が出ている状況だ。で、不可解なことというのはこの監視している『闇派閥』のメンバーについてなのだが……明らかに魔力がおかしい者が複数人交ざり始めた。魔力の流れが停滞しているというか……感覚的で申し訳ないが、明らかに他の『闇派閥』と比べて不自然な者だ。さらに、つい一昨日のことだが……副団長のイルタを含む精鋭部隊が、たった一人の剣士に一蹴されたらしい」

 

「……Lv5が、かい? そんな強者が『闇派閥』にいるとは聞いたことがないが……」

 

「……こういう可能性はないか? ゼウス・ファミリア、あるいはヘラ・ファミリアの生き残りが、オラリオに復讐するために『闇派閥』に与した」

 

 それを提言したのは、アストレア・ファミリアのLv3『狡鼠(スライル)』ライラだ。提言の内容はかつてのゼウス・ファミリア、ヘラ・ファミリアを知る者にとって、かなり重い言葉としてのしかかる。否定したいができない。そんな雰囲気だ。

 しかし、それを真っ向から否定する者がいた。

 

「それはあり得ん」

 

「……随分はっきり否定すんじゃねえか、『猛者』」

 

 オッタルだ。

 会議中、自分から意見を発することはあまりないオッタルだが、珍しくしっかりと否定を口にした。

 

「……言っていなかったことがある。この1年、俺はある人物と会って、修行をしていた。その結果が今回のランクアップなのだが……その人物たちに助太刀を頼むことができた」

 

「……待ってくれ、まさかその人物って」

 

 フィンがオッタルの言葉で何かに気が付いたとき、不意に、立ち入り禁止になっているはずの部屋の扉が開いた。

 全員が臨戦態勢を取るなか、オッタルだけが座ったまま、そちらをじっと見据えている。

 扉の向こうに立っていたのは三人。いや、ふたりと一柱と言おうか。

 

「やぁやぁこんにちはオラリオ。助太刀に来たよ――と言っても、俺は全然役立たずなんだけどね」

 

 まず口を開いたのは見たことのない神だった。しかし、彼の発する神威を肌で感じ、かの神の神格がかなり高いことをはっきりと理解する。

 

「ふん、猪がこれだから多少は見直したが……やはりまだ温いな」

 

「だが、可能性が見えたのは間違いない。失望を撤回するチャンスくらいはくれてやろうじゃないか」

 

「……貴様ら、まさか……!!」

 

 フード付きのマントを羽織っていた男女の二人組が、顔を隠していたフードを取る。古参の者ならば知っている顔が、そこにはあった。

 

「『静寂』アルフィアに、『暴喰』ザルド……!!」

 

 ゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアの()()()()()()()

 Lv7のふたりが、オラリオへと足を踏み入れた。

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