大魔導士が嫁探しをするのは間違っているだろうか   作:今更止められねぇよ!性癖スイッチオンだ!

26 / 50
古豪と顔無し

 

「……まさか、お前たちが助太刀に来るとはな……ザルド、アルフィア」

 

 ロイマンが唸るようにそう零す。それは、かつてを知っている者たちの総意であっただろう。

 

「お前たちは、我々を恨んでいると思っていたが……」

 

「それは私たちを()()()()()()()か? だとすれば、ふざけるなと返そう。私たちはお前たちに()()()()()()()()のだ。多くの者は死に、生き残ったのは主神と我々だけだが……それは納得してのことだ。恨みなどない。あるとすれば、あれから8年経つのに、まだ足踏みを続けていたお前たちへの失望だ……まぁ、それもギリギリ、努力はしているのだろうと認めてやらなくもない程度には、見られるものになった」

 

 アルフィアは、会議室に集まっている面々を見下ろしながらそう告げる。オッタルを除き、全員が格下。8年経って未だ、だ。歩みを止めていたのは、むしろアルフィアとザルドの方であったというのに。

 

「ロキ・ファミリアはともかく、お前がLv6になるとはな……『象神の杖(アンクーシャ)』」

 

「……まぁ、色々あってな……」

 

 ロキ・ファミリアの面々は察した。三年前、『黄昏の館』を出ていくときにグリムは次にどこのファミリアへ行くのかは言っていかなかった。ただ、そのあとすぐにあのガネーシャ・ファミリアの大きな転換だ。おおよそ察しがついていたが、ガネーシャ・ファミリアの変化にはグリムが関わっていたらしい。

 

「おい、クソガキ。貴様を叩きのめしたというやつはどこにいる? 『闇派閥』対策会議に出ていないわけがあるまい」

 

「ちょ、ちょちょっと待て!! 叩きのめされた? 『猛者(おうじゃ)』がか!? 聞いておらんぞそんな話!!?」

 

 ロイマンが大いに狼狽えながら、オッタルへと質問したアルフィアへそう問いかける。部屋の中の反応は二分された。アストレア・ファミリアや、ここまで空気だったヘルメス・ファミリアのようにその発言に驚く者と、ロキ・ファミリアやガネーシャ・ファミリアのような察した者だ。いや、ひとりアレンだけが微妙な表情をしている。

 そんな中で、オッタルがはっきりと言い放つ。

 

「ここにはいない。というより、オラリオにはいないだろう。言っていなかったか、やつらはオラリオの外から来た者だ」

 

「なに?」

 

 アルフィアが片目を開けてオッタルを見る。嘘を吐いている様子はない。どころか、ロキ・ファミリアやガネーシャ・ファミリアもその相手を知っているようで欠片も驚いていない。

 

「おい年増。なにか知っているのか」

 

「あぁ知っているとも。三年前だ。当時あの方はギルドの監査官を名乗り、ロキ・ファミリアを視察しに来たのだから」

 

 リヴェリアの言葉に、じゃあなんでお前が知らねえんだよという視線がロイマンに集まり、ロイマンは「そう言えばウラノス様がそんなことを言っていたような……」などと呟く。

 

「なんだ年増。お前が敬うような物言いとは珍しい。よほどズタボロにされたか」

 

「私はされていないが、ガレスがな。手も足も出ないも出ないどころか、終始手加減され、かつ一撃も入れられなかったよ。聞いたが、その時ガレスが相手したのが弟子の方で小人族のLv7相当、そして師匠の方がハイエルフでLv8相当であらせられるそうだ」

 

「……恐らく、俺が負けたのも弟子の方だな」

 

 それを聞いてアルフィアとザルドも目を瞠る。まさか、自分たちを超えるレベルの人間がいるとは思っていなかったのだ。

 アリーゼたちアストレア・ファミリアや、ここまでマジで影が薄いアスフィ(Lv3)などはこれ以上ないほどに驚いている。

 

「おいおい……小人族でLv7って、未来は明るいねぇ勇者様?」

 

「……負け惜しみかも知れないけど、彼女は僕より年上だったからね」

 

「それでも、オラリオの外でLv7って相当よね……」

 

「しかも、今も上がっているかも知れない……か」

 

 そいつらを呼んでくれば『闇派閥』終わるのでは? などと全員の頭を過ったものの、アルフィアやザルドはまぁまだギリギリオラリオ勢力と言っていいが、彼らは完全にオラリオとは無関係だ。しかも、こちらには何も差し出せる対価がないのだ。流石に頼るのは恥知らずが過ぎる。

 

「さて、彼らは今頃何をやってるやら」

 

 

 

「良かったのか? わざわざファミリアを抜けてまで勇士に加わって」

 

 グリムがある女性に『勇士の刻印』を刻みながら言う。そう、『自由都市』で別の人間を勇士としてスカウトしていた際に現れたその女性は、今所属していたファミリアからその日中に脱退してまで、グリムの勇士へ加わりたいと申し出てきたのだ。

 しかも、その理由は『勇士の刻印』ではなく黒竜挑戦。彼女は黒竜へと挑むその仲間に入れてほしいと、勇士へ加わることを希望した。ちなみに、残念ながら当初スカウトしていた相手には断られている。

 

『えぇ、元々、いつ出ていってもいいと言われていた身です。拾われた恩は十分返しました。それに、黒竜に挑めるのです、見逃す手はありません。『傑物』も『女帝』も敗北した黒竜に勝利し、昔日の屈辱を晴らす……それが私の目的です。そのためなら、好きなようにお使いください』

 

  ダークエルフの女性。全身に包帯を巻いており、端正な顔も髪と目元以外を完全に隠している。白銀の髪と白銀の瞳。褐色の肌はスクルドのそれよりも濃い。そして、グリムと同様長い、妖精特有の耳。あれ? ここだけ見たらグリムとスクルドの子かな? と思わないでもないがもちろんそんなわけがない。

 彼女の名はメルティ・ザーラ。かつてゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアに挑み敗北してオラリオを去ったオシリス・ファミリアに所属していた、Lv7の元冒険者。

 オシリスは既に天界へ戻っていたようで、別の神のもとで隠居していたのだが、更に強くなって黒竜へ挑めると聞いて勇士入りを志願した。

 なお、ダークエルフのお約束として彼女も意思疎通に難がある。具体的に言えば、声がめちゃくちゃ小さい。本人的には結構声を張っているのだが、マジで小さいのだ。

 現在は、グリムが即席で作ったインカムに似た形の拡声器のような魔導具を使って声の音量を調整している。

 しかし、元々がLv7の実力者であったこともあり、あれからコツコツと集め、鍛えてきた勇士たちの中でも上位の実力を持っている。

 

「刻み終わったぞ。ステイタスの見方は分かるだろう。『神の恩恵』で得ていたスキルは受け継いでおいた。魔法は自力で使えるようになれ。基本アビリティを振り忘れるなよ」

 

『承知しました。ところで、他の勇士の方々はどこに……?』

 

「こっちだ」

 

 グリムがルーンを描き、その場にゲートを作り出す。もっとも空気のうまい都市『自由都市』に、ゲートの先の瘴気にも似た魔と血の香りが流れ込んだ。

 そう、グリムが繋げたのは、『竜の谷』。なんの偶然か、アルフィアとザルドがいたのとはちょうど反対側に、グリムたち勇士一行は修行の場を構えていた。

 

「おや……お方様!! 新たな勇士は迎えられましたか?」

 

 ゲートが開いたのを感じ取り駆け寄ってきたワインレッドの髪の青年。彼は勇士の中でも特にグリムのことを慕っている男である。

 さもありなん、彼は生まれながらにとある()()を患っていた。あらゆる感覚が色褪せていたのだ。色覚障害、嗅覚障害、味覚障害に加え、聴覚過敏。彼と世界を結びつけるための感覚器官のことごとくが狂ってしまっていた。

 その原因が、『魂の欠損』だった。かつてのスクルドのような、それが原因で体が崩壊するほどの欠損ではないものの、確実に彼の精神を蝕んでいた生まれながらの瑕疵。

 

 さらに不運だったのは、彼の感覚を埋めるものがあったことだろう。それは、負の感情を帯びたものだった。恐怖、悲しみ、怒り、絶望、そう言った負の感情を帯びた血の色だけ、彼は唯一知覚できたのだ。

 ゆえにこそ、彼はつい数年前まで犯罪都市で剣を振るい、とある組織の鉄砲玉として働いていた。魂の欠損による存在感の薄さと、目撃者のことごとくを殺してきた経歴から彼についたあだ名がある。

 

 『顔無し』のヴィトー。

 

「ほう、元オシリス・ファミリアのLv7……それはまた大物が勇士に列席なされたものです。末席を汚す者として鼻が高い」

 

『……むせ返るような血の臭いだ。獣の血ではない、人の血だな……意外だな、このようなケダモノでさえ大魔道士様は受け入れなさったのか』

 

「えぇ、えぇ!! 乙女様は私をすくい上げてくださり、お方様は私に"色"をくださった……」

 

 ヴィトーの魂の欠損を見たスクルドは、その欠損をグリムならなんとかできるのではないかと考えた。それに対して、グリムの答えは「できなくはない」だった。

 スクルドのときほど欠損は大きくない。精霊そのものを移植せずとも、ヴィトーと契約したいと言う精霊さえいれば、魂の一部を共有する形で埋めることができるだろう。問題はそんな精霊がいるかどうかだったが、何故か、そんなヴィトーを遠目から見ている精霊の姿にグリムは気がついた。

 その精霊曰く、犯罪都市で拉致されていたところをヴィトーに助けられたのだという。実際は敵対組織の殲滅をしていたヴィトーが偶然その精霊を拉致していた構成員を惨殺し、自我の薄い精霊では血を流してもヴィトーには色が見えなかったためにその精霊を見逃したというのが事実なのだが。

 ヴィトーへの興味で自我が強くなり始めていたその精霊の申し出により、グリムはヴィトーに――襲いかかってきたのでひとまず制圧した後――施術をした。この時のグリムはまだヴィトーに刻印を与える気はなく、スクルドになにかあったときのために魂関連の魔法の練度を上げる程度の目的で行ったのだ。

 

 しかし、この施術によってあらゆる"色"を知ったヴィトーは、グリムとスクルドに対し信仰に近い感情を抱き、懇願の末に勇士へと迎えられたのである。

 実際、ヴィトーの黒真珠のごとき魂も、欠損さえなければ有望ではあったため、無事勇士として迎えられた。

 

「ヴィトー、調子はどうだ?」

 

「はい、ちょうど先程、第7階位へ至ったところです」

 

『階位とレベルの相関性は聞いたが、およそLv5半ばほどか……腕はあるのだな』

 

「『勇士の刻印』は階位を上がる時の壁がないだけで、成長速度自体は『神の恩恵』とさして変わらん。努力を怠れば『経験値』を得られないのも同じだ。腕が鈍っているかもしれんが、努々忘れるなよ、ザーラ」

 

『御意に』

 

 極東から帰ってきて1年半、グリム一行は異空間にあるグリムの館を拠点にして、『竜の谷』にゲートを繋ぎ修行を行い、グリムとスクルドは時折修行をしながらも、勇士探しの旅を行ってきた。

 流石にスクルドの選定眼に適う者はそう多くなかったが、着実に勇士はその数を増やしていた。

 

 一方、極東までの勇士の様子はと言えば、ルーナはLv3相当の第4階位に上がり、ようやく《セーヴァルスタズ》が使えるようになった。しかし、他の魔法は未だに使えていない。

 スタルガドは元々それなりに高い階位で始まったために、現状は伸び悩んでいるが、魔法の扱いには長けているようで、戦闘補助の魔法をいくつか習得していた。

 梅に関しては、流石天狐と言うべきか《セーヴァルスタズ》をあっという間に習得し、他の魔法へも手を出している。現在第3階位である。一方のお供ふたりは未だに《セーヴァルスタズ》をうまく扱えないようだが、その分、ルーナとともにスタルガドに武器の扱いを鍛えてもらっている。

 

「あぁ、それとお方様。クズノハ嬢より、黒竜の封印が弱まっているとの言伝が……」

 

「……そうか。少し様子を見てくる。戻ってきたら封印の強化をするから、クズノハに用意をするように言っておけ」

 

 そう言うと、グリムは隻眼の黒竜を封印する結界の内側へと転移した。

 グリムが結界の内側へ入ってくるの同時に、そこにいた黒竜の目がグリムへ向く。次の瞬間には、グリムは凄まじい速度でその場から離れ、叩きつけられた尻尾を躱した。

 

「(なるほど、こうして直接見るのは初めてだが――確かに理不尽と言えるな)」

 

 現在第12階位。Lv9相当のグリムでも防戦一方、躱すので精一杯という黒竜の猛攻をなんとか避けながら、グリムはそう分析する。

 

「(これを屠るなら、少なくとも第13階位が10人は必要か……いや、安全なマージンを取るなら全員14階位は欲しい。最悪封印ならいくらでもかけられるが……まずは討伐の方向で動く)」

 

 グリムは再び転移で結界の外側へと戻ると、梅と共に封印結界を強化するのであった。




 はい、ヴィトーさんはこういう方向で。
 エレボスが「NTRやんけ〜〜〜」って叫んでる気がするけど、お前置いてったやん(原作)。
 当作品ではエレボスと出会う前にグリムと会った感じで。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。