大魔導士が嫁探しをするのは間違っているだろうか   作:今更止められねぇよ!性癖スイッチオンだ!

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終結

 アルフィアたちが漆黒のドラゴンを倒してからやや経って、『ギルド』から『大抗争』の終息が発表された。

 その根拠は、ゾンビ兵を操っていた『闇派閥』幹部を含めた主要な『闇派閥』幹部、『死霊術師』、『邪神官』バスラム、『白髪鬼(ヴェンデッタ)』オリヴァス・アクト、『殺帝(アラクニア)』ヴァレッタ・グレーデ、『妖魔』ディース姉妹の死亡が確認され、さらにルドラ・ファミリアなどの複数の『闇派閥』が全滅、主神も送還されたことによるものだった。

 

 後に『屍の一日』と呼ばれるようになるこの『大抗争』において、フレイヤ・ファミリアではアレン、ヘディン、ヘグニがLv6に、ガリバー兄弟がLv5にレベルアップを果たし、オッタルもまた、Lv7になって半年にも関わらず大きくステイタスを伸ばした。

 また、ロキ・ファミリアではフィンとリヴェリアがLv7に、アイズもLv4へとランクアップを果たし、ノアールたちが亡くなったこともあり、『質のフレイヤ、数のロキ』と呼ばれていたのが『質のロキ、数のフレイヤ』と呼ばれるようになり始めた。

 他にはと言えば、アストレア・ファミリアの団員が軒並みランクアップしたり、『大抗争』ではランクアップしなかったシャクティを含めたガネーシャ・ファミリアの団員がそれから一月でランクアップ*1、シャクティもまたLv7になったり、置いていかれたガレスがソロでのスパルトイ100体切り及びウダイオス討伐を果たしLv7に追いついたりと、オラリオも『大抗争』を機にかなりの飛躍を遂げたと言える。

 

 一方、被害についてだが、民間人への被害については建造物倒壊などが主で、人命被害もありはしたものの数十人から、多くても100人に満たない程度に落ち着いた。

 対して冒険者はかなりの数が犠牲になった。対照的だったのはロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアで、ロキ・ファミリアはノアールを始めとする老兵(ロートル)たちが散っていき、中盤層が一気にいなくなったのに対し、フレイヤ・ファミリアは死者なしという結果になった。

 

 『闇派閥』残党は未だクノッソスに籠もっている者も多いが、同時に出頭してくる者も多くいた。理由はいくつかあり、クノッソスに籠もっていた『死霊術師』が死んだことや、クノッソスに神も人も見境なく焼き殺す()()が現れ徘徊し始めたことによって、クノッソスが安全な拠点と言い切れなくなったため。

 また、『闇派閥』をまとめていた幹部陣がいなくなったことによる空中分解と仲間割れ、それに伴う物資供給の難化、都市外の商人からの支援の途絶などの『闇派閥』そのものの存続が危ぶまれる事態に襲われたためだ。

 出頭した『闇派閥』からの聞き取りで、クノッソスは主であるバルカ・ペルディクスが支配しており、クノッソス内の侵入者を察知できること。また、手動でも作動させられる罠を多数備えていることがわかったため、クノッソスの攻略作戦はバルカ・ペルディクスの死亡が確認されるまでは、出入り口の捜索、及び発見した出入り口をヘファイストス・ファミリアとゴブニュ・ファミリアの協力を受けて溶接、封鎖するに留めることが決定した。

 

 オラリオのファミリア、及び神々からは、『女帝』は何者が倒したのか、地上でゾンビ兵や精霊兵を処理していた小人族は何者なのか、なぜ『深影』がオラリオにいたのかという問い合わせが『ギルド』に殺到したが、ギルドはそれらに対し「『ギルド』の協力者で都市外の者」とだけ答え、それ以外の回答は沈黙を保った。

 

 

 

 ここまでのオラリオの動乱があったものの、それはグリムたち勇士には一切の影響を与えなかった。精々、同格と戦ったスクルドの魂が比較的成長を見せた程度だろうか。

 グリムが作ったディース・ゾンビは、クノッソス内を放浪し中にいる人間を殺すという状態で放置されている。この件はガネーシャ・ファミリアに(細部を暈かしたうえで)伝えてあり、本格的に攻略が始まる際には撤去する予定だ。

 今回の件で何か変わりがあったとするならば。

 

「駄目だな。私には治療はできん」

 

 『竜の谷』へと戻ってきたアルフィア、ザルドと、交流ができたことだろうか。

 元々、『竜の谷』を挟んで反対側を活動拠点にしていたアルフィア、ザルドと勇士たちだが、メルティ・ザーラが所属していることや、『女帝』を相手に互角以上に立ち回った小人族のことが気になっていたアルフィア、ザルドは、『竜の谷』に帰るや否や、件の小人族の魔力をアルフィアが感じ取ったために押しかけてきたのである。

 

 一方でスクルドも、アルフィアのことが気にかかっていた。スクルドの《選定精霊(スクルド・オルタナティブ)》による魂の視認。それを通して視たアルフィアの魂は、生きているのが不思議なくらいにボロボロだった。

 ヴィトーや、グリムからの又聞きではあるがスクルド自身の魂の欠損の場合、初めからなかったように、あるいは千切りとられたように欠損しているのが特徴だった。しかし、アルフィアや、ここにきて初めて見たザルドの魂は違う。

 さながら、虫に食われた朽木のように、魂全体がボロボロと脆くなっている。穴だらけで、いつどこから崩れてもおかしくないほどに。

 

 そしてそれを、スクルドはグリムへと「なんとかできないか」と相談してみたのだが、グリムの答えはNOだった。

 

「いろいろと理由はあるが、まぁ単純に魂を回復させる魔法というものを私は見つけていないということが大きい。スクルドやヴィトーの場合は程度はどうあれ()()()()()わけだから、それを補うように精霊の魂を移植したんだ。しかし、君たちの魂は既に()()()()いる。魂にまで届く毒や病というのはまぁあるし、恐らく黒竜も使ってくるから研究はしているんだが、ここまで末期症状になってしまうと、もはや手の出しようがない。そして、私がそれを見つけるまでに彼らが生きている保証もない」

 

「構わん。もとより期待していないし、覚悟などとうに決まっている。そんなことより、黒竜は大丈夫なのか? お前たちが倒すと啖呵を切ったのだろう?」

 

 アルフィアはオラリオを出る前に、リヴェリアにグリムについて聞き出していた。とはいえ、リヴェリア自体――ノルナゲストとしてのグリムはともかく――グリムの情報などそう多くは持っていなかったのだが、しかしアルフィアの興味を引くその文言に関しては伝わっていた。

 黒竜討伐。それはアルフィアとザルドが、その家族(ファミリア)たちが成そうとして成せなかった悲願であり絶望の体現である。

 そもそもアルフィアもザルドも、伝聞では黒竜の恐ろしさを理解できないと感じたからこそ、当初のエレボスが提示したオラリオ襲撃に乗ったのだ。だから、そこまで強気に出ているグリムの言いようが気になっていた。

 

「黒竜なら問題ない。戦力は育ってきている。見た限りの強さなら、成長している点を考慮しても討伐できるラインを見極めてあるからな」

 

「……見た、限り……?」

 

「成長……だと……?」

 

「偵察は当然だろう。私が何度か結界内に立ち入り、黒竜の戦闘力はおおよそ見極めている。黒竜が実力を隠している場合も考えて、それでも問題ない程度までは育てるつもりだが……まぁ10年以内には討伐できるんじゃないか」

 

 グリムが実際に結界内に立ち入り、逃げの一手とは言え黒竜と戦っていることや、黒竜がさらに成長しているかもしれない事実など耳を疑うことはあったが、それよりもそれでなお10年かかるという言葉に落胆を隠せないザルドと、同じく落胆しそうになって、信じられないものを見た顔になるアルフィア。

 

「……それでは遅い。黒竜を封じている結界は10年も保たん――」

 

「待て。おい、何故()()()()()()()()()()

 

「……は?」

 

 アルフィアの狼狽した疑問の声に、ザルドも呆気にとられたような声をあげ、そしてグリムはこともなげに答える。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。少なくとも、私ともうひとり、十分に結界魔法に習熟した者がいれば結界の修復程度は造作もない。少なくとも数百年は保つぞ」

 

 それがどれほどの絶技か、この男はわかっているのだろうか。アルフィアは黒竜戦以来、数年ぶりの『理不尽』を味わっていた。

 なお、アルフィアはグリムの実情――寿命関連――を知らないから、一度かけた修復で数百年保つと考えているが、グリムとしては数年ごとにかけ直し続けて数百年生きるつもりでいる。

 

「質問が以上なら、私はもう行く。弟子に魔法を教えねばならないからな」

 

「あ、あぁ……」

 

 去っていくグリムを見送り、しばし呆然とするアルフィアとザルド。やがて、アルフィアがザルドへと問う。

 

「……挑まなくてよかったのか?」

 

「戦いにならどのような強者相手であっても挑もう。だが、あれはダメだ。どうあがいても一方的に蹂躙されるだけだ。お前よりも理不尽な魔導士など相手にしていられるか。お前こそ、あの魔法さえあれば有利を取れるんじゃないか?」

 

「どうだか。私にはこともなげに無力化されて『静寂の園(シレンティウム・エデン)』ごと叩き壊されるのが目に見える。初めてだ、()()()()()()()()()()()に出会ったのは」

 

 アルフィアとザルドは連れ立って『竜の谷』をあとにする。討伐失敗の後始末として、せめて被害が広まらないように『竜の谷』の門番をやってきていたふたりだったが、もはや自分たちの手は必要もなさそうだ。

 

「……メーテリアの息子に、会おうと思っている」

 

「奇遇だな。俺も、あの恐れ知らずのサポーターの息子の顔を見に行こうと思っていたところだ」

 

「ふん、妙なことを教えたらすり潰すからな」

 

 そうして、一つの歴史は大きく着地点を変え終結を迎えた。

 蝶の羽ばたきと言うにはあまりにも大きすぎる風ではあるが、それで変わるものも変わらないものもある。

 例えば、『闇派閥』の幹部が全滅したことで『27階層の悪夢』と呼ばれた事件は起こらない。例えば、ルドラ・ファミリアが全滅したことで正義の眷属は迷宮の免疫と遭遇しない。

 

 やがて白兎が迷宮都市へやってくるその日は、もうほんの少し先になるが、どうか、お付き合いいただきたい。

*1
グリムによって本拠地に『竜の谷』とのゲートを設置され、シフトを組んで連れ回されるようになった。

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