大魔導士が嫁探しをするのは間違っているだろうか   作:今更止められねぇよ!性癖スイッチオンだ!

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2 weeks ago



「ごめんください! ヘスティア・ファミリアはここであってますか?」

「そうだけど〜……へ? まさか、まさかまさか、眷属希望の子……だったりする?」

「は、はい! 義母(はは)の勧めで……」

「よく来てくれたぁ!! ささ、中に入ってよ!! 記念すべき、ボクの眷属一号だ!」



〜〜〜〜

「そうか……亡くなったお義母さんがヘラの……」

「はい。ヘラ様から、『ヘスティアなら信用できる』と聞いていたそうで、オラリオに行くならヘスティア・ファミリアにしておけ、ロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアは絶対にやめておけと……」

「ははっ! 見る目があるねぇ君のお義母さんは! それじゃあ、これからよろしく頼むよ! ベルくん!」

「はい、よろしくお願いします! 神さま!」


アマゾネス

 

 『勇士』たちによるオラリオ観光当日。

 オラリオへと降り立った勇士たちは、早速分かれることになった。

 

「えー!? なんでー!?」

 

「いやいや、坊ちゃんの社会勉強させなならんのに女の買い物に付き合わせるとか愚の骨頂でしょうよ」

 

 ぶー垂れるルーナに対してにべもないスタルガドは、さっさとラタルとメルティを連れて人ごみへと消えていく。さらに言えば、いつの間にか瓜子もどこかへといなくなっていた。

 そもそも、この観光は主に、スタルガド、瓜子、ルーナの3人によって企画されたものである。スタルガドと瓜子は旧知がオラリオにいるため挨拶したいと考えており、ルーナもここに来て、自身の兄が生きてオラリオにいるという噂を耳にしたためだ。

 そこに社会勉強のためにオラリオを見たいラタルと梅、その護衛のメルティと櫟、牡丹。服を買いに来たスクルドに、面白そうだからついてきたヘルヴォールというのが今回のメンバーだ。グリムとヴィトー、カールは留守番となっている。

 そこからスタルガドとラタル、メルティ、瓜子が引かれ、残ったスクルドとルーナ、梅、ヘルヴォールの女子4人と、護衛もとい荷物持ちの付き人ふたりが、南地区にある繁華街、その被服店へと赴くことになったのだった。

 

 ところで話は変わるが、被服というものは大きく2つに分類できる。既製服(プレタポルテ)特注品(オートクチュール)である。

 しかしながら、この既製服という概念が生まれたのはかなり遅く近代に入ってから。19世紀初頭からとされている。それまでは、既製服と言えば古着。新品の服というのは特注品で貴族のもの。それを給料やチップの代わりに下げ渡された使用人が市井で売り払い、古着として世に出回るというのが和欧問わず服のスタンダードであった。

 とはいえこの世界は本来の歴史とは大きく違いその辺りは匙加減次第なのだが、グラマラスな小人族というかなり特殊な体形をしているスクルドの服を作るとなると、当然既製服ではなかなか相応のものが見つからない。

 無論着られる服があるにはあるのだが、デザインの幅というものがかなり狭まってしまう。ハズレ値というのはとかく苦労するものである。

 というわけでやってきたのが、ファミリア運営の被服店。特注品専門店である。被服を司る神とその眷属が運営しているだけあって、商業、生産系ファミリアの中でもかなり評判のいい店を、スクルドが魂の輝きから見て取った。なお、スクルドはこれで優良店以外を引いたことがない。

 

「姐さんは尻がデカいのに形がいい奇跡みたいな下半身してるから、ラインがしっかり出るパンツもそそるっちゃそそるんだが、やっぱり今までのギャップで雌を印象付けるならスカートなんだよなぁ……」

 

「ヘルヴォール変態くさいよ?」

 

「流石にセクハラなのでは……?」

 

「いやでもさぁ! こんなかで一番男の情欲理解できんのはアタシだよ!? 姐さん差し置いて悪いけど!」

 

 本来スクルドを着せ替え人形にしてワーワーキャーキャーガールズトークと洒落込むであろう場面で、しかしひとり盛り上がり方がおかしい(目的通りとも言える)のは何を隠そう生粋のレズビアンであるアマゾネス、ヘルヴォールである。

 彼女が純愛原理主義でなければスクルドも危なかっただろうが、幸いにして彼女は珍しく自制できるアマゾネスであった。スキル《運命打破(ヘルヴァルド)》の効果である。

 

「だから胸がデカいと服が浮くんだよ。タッパあればそれでもいいけど姐さんはちっこいから、こうしてバスト下を押さえる」

 

 ヘルヴォールが選んだのは意外にも露出の多いアマゾネス系の服ではなく、ブラウスに胴回りを覆うハイウエストスカートという組み合わせ。それほど露出も多くなく、フリルやリボンが多めでどちらかと言えば可愛い系に寄った取り合わせであった。

 これにはルーナや梅からも黄色い歓声が飛ぶ。狩猟民族系女子であるルーナはともかく、箱入り娘である梅はあまり露出過多な服装は好かないのだが、どうやらお目に適ったようである。ちなみに座敷牢(はこ)入り娘である瓜子はそういうの気にしないタイプだ。

 

「姐さんは唇は色っぽいけど全体的に見れば顔も雰囲気も子供っぽいし、あんまりセクシー路線で行くとチグハグな印象が先行するからなぁ……それに、露出多いとそれはそれで男っぽさもあるじゃん? ここはまず女を意識させる方向ってわけよ」

 

「お客様……なかなかできますね……!」

 

 店員さんもサムズアップである。なお、この店の試着はこの店員の幻惑魔法によって一手に賄われている。試着でおおまかな方向性を決めて、あとは作り手におまかせなのである。

 あくまで幻影なので当初は「どうやって着るのか考慮されていない」という事態もあったが、今では手軽な着せ替えもこの店の人気のひとつである。

 

「まぁ、でもやっぱセクシー路線も何着か持っといたほうがいいとは思うけどなー。大将も姐さんの色香にはヤラれてんだろ?」

 

「うん、それは間違いないよ。たまに発情のにおいしてるから」

 

 性欲は逐一魔法で消しているグリムではあるのだが、狼人族(ウェアウルフ)の中でも特に嗅覚が鋭いルーナの前ではその一瞬でバレることもあるのである。

 

「なら開けるのは下より上だなぁ。ロングドレスにして谷間はしっかり出すのがいいか。姐さんは密着しにいけるし、あの身長差なら視点的には谷間直撃だろ。で、下は逆に長めにして全体のバランスを取る。下も短くしたら娼婦だからな。流石に下品さが勝つわ。それもアリだけど」

 

「チョーカー買おうよチョーカー!」

 

「わ、私は極東の装束も似合うかと……」

 

 女三人よれば姦しいとはよく言ったもので、店員も交えてどんどんと盛り上がる女子たち。スクルドは振り回されるばかりであるが、感想はと言えば多くは「着にくそう」であった。

 店の前にはひとり取り残された牡丹。櫟は「いい機会だから服を作ってもらってくる」と、女子たちとは別に採寸をしてもらっている。2M(メドル)超えの大男は着る服にも一苦労なのである。

 

 そんな牡丹が3度目の欠伸をキメたときである。不意に、ヘルヴォールが懐かしい雰囲気を感じ取った。

 相当に離れているが関係ない。それはアマゾネスの直感である。

 

「ヘルヴォール? どしたの?」

 

「……悪ぃ、ちょっと野暮用できたわ。すぐ戻る」

 

「あ、ちょっと!? もー! どいつもこいつも!!」

 

 店を飛び出したヘルヴォールが向かったのは北西。冒険者通りと呼ばれる区画であった。

 

 

 

「どうしたの、ティオナ」

 

「……あ、ううん、なんか懐かしい感じがして……」

 

 一方で、同じようにそれを感じ取った者がいた。

 ロキ・ファミリアのLv5、『大切断(アマゾン)』ことヒリュテ姉妹の妹、アマゾネスのティオナ・ヒリュテである。

 ティオナは、同じくLv5の姉、『怒蛇(ヨルムンガンド)』ことティオネ・ヒリュテ、そしてL()v()6()、『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインとともに、遠征後の武器整備を頼みに、鍛冶系ファミリアであるゴブニュ・ファミリアの本拠地までやってきていた。

 遠征は途中まで順調だった。しかし、()()()()()()()()()()()()()()()51階層で未知のモンスターと遭遇。一部の団員を除き武器を溶かされてしまったことで撤退と相成った。

 ティオナなどは特にその煽りを食らっており、ゴブニュ・ファミリアの親方が大量の超硬金属(アダマンタイト)を不眠不休で鍛え上げた『大双刃(ウルガ)』はまるっと溶けてしまっていた。

 そういうわけで武器を預け終わり、代用の武器を貸し出してもらって、()()()()()打ち上げを行う予定の『豊穣の女主人』へと向かっている途中のことであった。

 

 上から、人が降ってきた。

 

 異常事態である。いくら気を抜いていたとはいえ第一級冒険者3人が、手を伸ばせば届く距離に着地されるまでその存在を気取れなかったのだ。

 戦闘では致命的な隙。しかし、それを突かれることはなく、3人は警戒態勢へ入る。現れたのは巨躯の持ち主だった。ロキ・ファミリアにも長身はいるが、それと比べてもかなり大きい。

 上背の次に目についたのは褐色肌と金髪。一瞬男にも見間違えたが、胸筋の上にある2つの膨らみは間違いなく女性のものである。

 アマゾネス。同族であるヒリュテ姉妹でなくとも、まずはその推測が思い浮かぶ。そしてその顔を見たとき、ヒリュテ姉妹の頭に大きな既視感が過ぎった。

 

「……久しぶりだなぁ、ティオネ、ティオナ……あんたら、まだ処女なのか……」

 

「ッ……!! あ、あんたまさか、ヘルヴォール!?」

 

「うそっ! ヘルヴォール!?」

 

 ヘルヴォール・ビャルトマール。ヒリュテ姉妹が『闘国(テルスキュラ)』を出るときにはLv4だったアマゾネス。つまりは彼女たちの古巣、カーリー・ファミリアの一員である。

 すわ、自分たちを連れ戻しに来たのかと警戒するヒリュテ姉妹。しかしそんな剣呑な雰囲気を感じ取ったのか、ヘルヴォールは一瞬キョトンとしてから、思い至ったように首を横に振った。

 

「あぁ違う違う。アタシも抜けたんだよ、カーリー・ファミリア」

 

「はぁ!? 抜けたぁ!?」

 

「そ、そーなの?」

 

「外の世界が見てみたくてなぁ……ちとキツい条件だったが、乗り越えてやったぜ」

 

 ヒリュテ姉妹のときはなんの条件もなく『闘国』を出た。『闘国』の門は常に開いている。誰も、出ようとしないだけなのだ。

 とはいえ、ヘルヴォールは『闘国』の中でもかなりの有望株であったが故に、特例として条件がつけられた。それが、『神の恩恵(ファルナ)』を封印した状態での鬼ごっこである。

 一般人の身体能力で、スキルもなく、猛者ばかりのカーリー・ファミリアとの鬼ごっこという無理難題を、ヘルヴォールは見事に突破してみせた。まぁ行き倒れてグリムに拾われたのだが。

 

「まぁ元気そうで良かったわ! アタシとしても可愛い妹分だったしな!」

 

「嘘つけや。あんた、単に自分好みに育てて()()つもりだっただけでしょ」

 

「あ、バレてた? ま、安心しとけ。アタシはもう心に決めた人がいるからさ」

 

 それじゃ。と挨拶を残し去っていくヘルヴォール。来るときも突然で帰りもまた突然だった。

 そんな相変わらずさに呆れるヒリュテ姉妹の横で、アイズはLv6の自分でも測りきれなかったヘルヴォールの強さに、ただひとり沈黙を保っていた。

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