大魔導士が嫁探しをするのは間違っているだろうか   作:今更止められねぇよ!性癖スイッチオンだ!

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 半分幕間みたいな。
 その頃原作主人公はです。
 ほぼ原作通りのところはスキップしてます。


白兎とサポーター

 

 エイナ・チュールは激怒した。必ず、かの軽挙妄動の白兎を懲らしめなければならぬと決意した。エイナには現場がわからぬ。エイナは、『ギルド』の職員である。受付を担当し、アドバイザーもやって暮して来た。けれども下級冒険者の無茶な迷宮攻略に対しては、人一倍に敏感であった。

 まぁ、端的に言ってしまえば、エイナはキレていたのだ。理由は簡単。3週間前に冒険者になったばかりの新人が7階層まで潜ったなどと言われたからである。普通であれば冒険者になってひと月目など、3階層くらいをウロウロしていて当然なのだ。それが7階層などと言われれば冷静ではいられない。

 とはいえ、ベルに見せられたステイタスを鑑みれば、狩り場としては適正と言わざるを得ない。ベルの成長スピードが早すぎるのだ。なにかタネがあるのだろうが、流石にそれを探ることはギルド職員としてはやってはならない。というか、ステイタスを見るというのも、本来であれば咎められて然るべきであり、ベルの人の良さに漬け込んだとも言えるので、エイナの暴走なのである。

 さらに言えば、冒険者というのは基本的には自己責任であり、だからこそアドバイザーとはいえど、いちギルド職員に攻略のペースを強制する権利などない。

 エイナ自身もそれを頭ではわかっているのだが、彼女自身の苦い経験が彼女を過保護気味な行動へと走らせてしまうのだろう。

 

 さらに言えば、ベルの迷宮探索の頻度がおかしいというのもある。ここまで3週間、ベルが完全に迷宮探索を休んだ日はわずか3日である。ほぼ毎日のように迷宮へ潜っているのだ。

 また、説教の相手がベルという他の冒険者とは毛色が異なる、非常に素直かつ聞き分けがよく、人柄が温和で人好きするタイプの少年であるというのも大きい。エイナのお節介にも反発することなく素直に聞き入れるし、殊更に死んでほしくないと思えるような人柄をしているのだ。

 それと同時に、エイナはなんとなくベルの性質を理解してきた。基本はエイナの言うことをしっかりと守ってくれているのだろう。しかし、なにかあったときに無茶をすることを厭わない。ある意味、その場の衝動で動くタイプの人間だ。こういうタイプは、いくら言い聞かせたところで()()()()タイミングが来たら迷いなく行動に出る。

 

「ということで、あなたに監視を付けます」

 

「か、監視……?」

 

「保護者と言い換えてもいいわね」

 

「保護者……」

 

 子ども扱いにがっくりと来ている様子のベルをスルーし、エイナはアドバイザーとして提案する。

 

「ギルドの認定サポーターをパーティーに加えてもらいます。直接的な戦力にはならないでしょうけど、特に彼女のサポートは優秀と評判ですし、あなたの無茶もしっかり止めてくれると思うから……」

 

 と、そんなことがあったのがちょうど一昨日。『怪物祭』翌々日のこと。

 『怪物祭』で起こったモンスターの脱走騒ぎはガネーシャ・ファミリアによってすぐに鎮圧され、唯一取り逃がしたという、何故かヘスティアに執着していたシルバー・バックもベルの手によって倒された。

 その翌日は流石に休養日として、『怪物祭』翌々日である一昨日に迷宮へ潜ろうとギルドに寄った際に、ベルがシルバー・バックと戦うところを見ていたというエイナに、その無茶やら迷宮で勝手に階層を進めたことやら、無茶した翌々日にすぐ迷宮へ潜ろうとしていることやらを叱られ、ステイタスを見せて驚かれたあとに買い物の約束を取り付けられた。

 そして昨日丸一日をエイナとの買い物に費やし、今日、エイナの言っていた認定サポーターとやらと合流する予定なのである。

 

「サポーター……それもギルド公認の認定サポーターかぁ……どんな人なんだろう……」

 

「もし、そこの兎みたいな冒険者さん」

 

「ふぇ?」

 

 兎、というのは、昔から彼が亡き実父の知人である男性によく言われた比喩であり、白髪に赤目という外見からくるもの。それ故に、その呼びかけが自分を示していると気づいたベルが、その声の方向を見やる。

 そこには、巨大なバックパックが鎮座していた。違う、巨大なバックパックを背負った、子供としか言えない――小柄である彼の主神ヘスティアよりも輪をかけて小さな――少女が立っていた。

 身なりは清潔に保たれており、首からかけられたネックレスの先には認定サポーター、ベルは知らないが、『ダンジョンサポーター』と『ファミリアサポーター』の両方の資格があることを示すエンブレムが付いている。

 

「ベル・クラネルさんであっていますか?」

 

「え? は、はい!」

 

「こんにちは、はじめまして。()()()()()の認定ダンジョンサポーター、リリルカ・アーデと申します。本日はよろしくお願いします」

 

 彼女こそ認定サポーターの中でもかなりの評判の良さを誇り、公式な二つ名ではないが冒険者たちの間で『導小人(プーカ)』とあだ名される小人族の少女、リリルカ・アーデである。

 

 間接的にではあるが、リリルカ・アーデもグリムによって人生を変えられた者の一人であろう。正史と同様サポーターにならざるを得なかった彼女は、しばらくの間は粗暴な冒険者たちに虐げられたあと、認定サポーターという存在を知った。

 リリルカはこれに縋った。身の安全を保証する後ろ盾。自分の努力次第だが、受験料もそのための受講料も無料である。そして、生来の頭の良さで見事にこれに合格。まずはダンジョンサポーターとして認定された。

 その日から、リリルカの暮らしは大きく変わったと言っていいだろう。なんせ、ギルドが身の安全を保証してくれるのだ。

 ちょうど、リリルカが認定サポーターになる前に、認定サポーターが冒険者によって故意に殺されたことで、その冒険者たちが莫大な借金を背負わされ、ファミリアからも追放。結果として身売りする羽目になったという情報がギルドから公布されたのも大きい。

 認定サポーターが殺されれば、契約していた冒険者はギルドの協力神によって尋問がなされ、偽りの許されない証言を余儀なくされると知れ渡ったのだ。

 確かに認定サポーターには虐げられた際にギルドへ訴え出る権利があるが、死人に口なし、迷宮内で殺せば罪にならないと思っていた性悪冒険者も、これには怯まざるを得なかった。

 そういうこともあり、サポーターを見下しているような冒険者は認定サポーターと契約するようなことはなく、野良サポーターを酷使するかサポーターなしで迷宮に潜る。自然、認定サポーターと契約するのは、比較的まともな冒険者ばかりであった。

 

 そうして、神酒(ソーマ)を買うためにコツコツ貯金している途中で神酒が抜けきったリリルカはソーマ・ファミリアを抜けることを決意。極力ソーマ・ファミリアには寄り付かないようにしながら、数年かけて無事退団金を稼ぎきった。

 ギルド職員とガネーシャ・ファミリア団員の付き添いのもと、ソーマに退団を願い出たリリルカは、神酒を飲んだ上でその気があればという条件を突きつけられるも、酒を飲むには幼すぎる年齢であることと、認定サポーターに対して害ある行動を強要するのは違反に当たるとギルド職員からの物言いが入り、神酒の儀を避けることに成功したのだ。

 こうして、リリルカは恩恵をガネーシャ・ファミリアへと移しながら、ガネーシャ・ファミリア所属ではなくギルド所属の認定サポーターとして活動。『ファミリアサポーター』としての資格も入手し、様々なファミリアへ助っ人として招かれるようになったのである。

 

 そして今回ギルドから、というよりは、エイナによる個人的な要請に応えてベルと組むことになった。

 

「え、えーと……」

 

「……何考えてるか大体わかりますけど、リリはあなたより年上ですからね」

 

「ええっ!? ……あ、小人族……!」

 

「ま、これでも認定サポーターですから? 心配せずとも仕事はしますよ」

 

 そんなやり取りの後、早速ふたりは迷宮へと潜ることとなったのだが、ふたりは互いに舌を巻くこととなった。

 リリルカは、冒険者になって3週間とは思えないほどに戦い慣れしたベルの実力に。ベルは、リリルカの的確な指示と、素早く魔石を取り出す解体の腕にである。

 

「ベルさん*1、随分お強いんですね……冒険者になる前になにかやっていらっしゃったんですか?」

 

「なにかというか、故郷で義母(かあ)さんとその知り合いに鍛えられてね……結構無茶な訓練を……」

 

「なるほど……恩恵を刻む前に戦闘訓練を受けていた方は、基本アビリティが上がりやすいと聞きます。ベルさんの攻略ペースが早いのもそれが理由かもしれませんね。でも、無茶な攻略はリリが止めますからね! 一応、それが目的で組んでますから!」

 

「あはは……肝に銘じるよ……」

 

 しかしながら、ふたりが9階層へと到達することになるのは、そう遠くない未来のことであった。

*1
リリルカの三人称である『様』付けは、サポーターという弱い立場であったことが由来だと解釈。認定サポーターである本作のリリルカは過剰に謙る理由がないので『さん』付けを三人称としている。

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