とある雷神の青春記録   作:グレムリン

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とある雷神の異界探訪

 

 魔術と科学が交差するように、ある二つの世界が交差し、異世界の少女達が互いに親睦を深めたある日。

 その日からしばらくしてのこと。

 

「────御坂?」

 

 某日、ミレニアムサイエンススクール。

 連邦捜査部シャーレの『先生』は、特に急ぎではないがそれなりに重要な内容の書類を手に、セミナーの早瀬ユウカに会うべく来訪していた。

 

「…………あ、えと」

 

 そこにいたのは、一人の少女。

 少し前にこのキヴォトスにやって来た、異世界からの来訪者。

 御坂美琴。その彼女が今、目の前にいた。

 

「わあ、本当に御坂だ! こんなにすぐにまた会えるとは思ってなかったけど、でも嬉しいよ」

 

「…………あー、その、もしかして…………先生?」

 

「? うん、私だよ」

 

 少し前には普通に話していたのに、今話している御坂は何故かおそるおそるといった感じの歯切れの悪い口調で、目の前の『先生』が先生であることを確認した。

 

「そっかそっか、アンタが先生か……なんか上条ちゃんに雰囲気似てんなあ……」

 

「御坂?」

 

「あっ、ゴホン、なんでもないわ。それより久しぶりね先生、元気してた?」

 

 しみじみとした顔で先生を誰かと重ね合わせるように眺めていた御坂だが、ハッと何かに気付いたような顔をすると、咳を一つして仕切り直し、挨拶をする。

 ────御坂の元いた世界の住人、上条当麻がそれを目撃していたら、彼女……いや『彼』の正体を一発で察していただろう。

 

 トール。グレムリンという組織に属し、戦争代理人と呼ばれる程の尋常ならざる力を振るっていた、雷神の名を冠する魔術師。

 彼の持つ魔術の一つに、女性になら誰にでも変装することができる、という魔術があった。

 以前にも彼は『御坂美琴』の姿に化け、上条当麻を欺いたことがあるが、この御坂の正体も、彼女そっくりに化けた(トール)だったのだ。

 

 何故彼がキヴォトスに来たのか。何故御坂美琴の姿を借りているのか。

 それは彼の行動原理と、ある日彼が新しく手に入れた知識に端を発する。

 

(最近骨のあるヤツと()って『経験値』を得ることができてねえから、ミコっちゃんに何か知らないか聞いてみたが、本当に異世界ってあるもんなんだな。位相の一種か?)

 

 やはりというべきかなんというか、彼がわざわざ異世界までやって来たのは、彼の言う『経験値』のためであった。

 御坂美琴が異世界(キヴォトス)に行った時の体験を伝聞で知ったトールが、彼なりにその原因を解釈し、キヴォトスへの行き方の魔術的シミュレーションを繰り返した結果、ついに成功した────というのが事の顛末である。

 当然、御坂の姿を借りているのも、一度キヴォトスに来たことのある御坂なら警戒されにくいだろう、という打算ゆえである。

 

「御坂はこれからどうするの?」

 

「……どうする、って言ってもね……たまたまここにまた来れたってだけだし、やりたいこととか特に思い付かないわね」

 

「それならシャーレに来ない? 部屋なら余ってるし」

 

「良いの?」

 

「御坂さえ良ければ」

 

 瞬間、御坂(トール)はニヤリと笑う。もちろん、先生には見えない角度で。

 連邦捜査部シャーレとその責任者である先生の傍にいれば、一つの学園に留まるよりも入ってくる情報の量は桁違いに多い。

 それならば見つけることも容易だろう。

 御坂(トール)のお眼鏡に適う、『強敵』を。

 

「そうね、ここだと身寄りもないし……お言葉に甘えて先生に付いていくわね」

 

 御坂(トール)は笑う。今度は『御坂美琴』らしい柔らかな少女の顔で。

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