とある雷神の青春記録   作:グレムリン

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とある雷神の偽装工作

 

 御坂美琴────の姿を借りた、魔術師トールがシャーレの一室に住み着いてから数日のこと。

 ミレニアムサイエンススクールの『美甘ネル』という生徒が強いと聞き付けたトールは、早速彼女に接触する機会を得ようとミレニアムにやって来た。

 

「学園都市に潜り込んでた時は、あっちを見てもこっちを見ても最新鋭のなんちゃらだの溢れ返るくらい機械でいっぱいだったが、ここも似たようなもんだな」

 

 一般公開されているエリアとはいえ、平日の昼頃となると普通の生徒なら学校があるため、ミレニアムを訪れる他校の生徒もおらず、それゆえ廊下を行き交う人間の数もまばらである。

 トールも『御坂美琴』として振る舞わなければならない状況から少し解放された心地になり、口調にも気の緩みが見て取れる。

 

「でもここのは学園都市のと比べると、合理性とか効率性よりも遊び心(ロマン)を重視したみたいな作品も多いな」

 

 学園都市────彼の元居た世界のそれにも、ロマンを解する科学者は居る。犬だが。

 巨大ドリルを携えてマッハでかっ飛ぶ、『魔神』すら屠る超兵器を駆るお犬様はともかく、学園都市は研究で得られたデータを合理的に組み込み、強力な兵器を作ることに長けていた。

 

 このミレニアムでも学園都市のそれに決して劣ってはいない、見事な技術力を結集した作品が並んでいたが、その中にはどこか遊び心を感じられる、独特な機能付きのものも多かった。

 

「自爆機能とかBluetooth機能とか……使うやついんのかね。つーかここら辺の機械はみんなエンジニア部っつーとこが作ってんのな」

 

 『経験値』が欲しいと言っても、別に急いで戦う必要はないため、会えたらいいなくらいの気持ちでトールは一般公開エリアをぶらぶらしていた。

 

「……おい」

 

「んあ?」

 

 そんな時だった。トールの背後にいつの間にか、小柄な生徒が立っていた。

 鋭い目つき。メイド服。その筋の人しか着ないような特徴的な柄の革ジャン。

 これぞまさしく────

 

「────美甘ネル……さん?」

 

 目的の人物に会えて思わずフルネーム、しかも呼び捨てで呼びかけたが、自分の身の上が『御坂美琴』のものを借りていることに気づき、慌てて敬称を付ける。

 しかし当のネルは、どこか訝しげに御坂を────トールを見ていた。

 

「見かけねえ顔だな。名前は?」

 

「えっと……御坂美琴、ですけど」

 

 御坂美琴の姿を借りている以上、わざわざ本名を明かす必要はない。当然、御坂の名を騙った。

 ネルはとりあえず、今トールが被り名乗っているそれを目の前の人物の顔と名として記憶した。

 

「ふうん、御坂美琴ね。どこの所属か知らんが、見学も程々にして学校行けよ」

 

「……はーい」

 

 危機感があるのかないのか。あるいは危機が起きた(・・・・・・)として自分なら(・・・・・・・)必ず対処できる(・・・・・・・)自負があるのか(・・・・・・・)

 所属する学校すら聞かず、顔と名前だけ覚えて早々に立ち去るネルに内心肩透かしを食らいつつ、今ここで尋問の如く根掘り葉掘り身の上を聞かれたら困る可能性もあったので軽く安堵する。

 

「……あれがC&Cのコールサイン00(ダブルオー)。なかなか手強そうでいいじゃねえか」

 

 そして、ようやくご馳走にありつけた獣のように、ネルが去った空間で一人舌なめずりをする。

 立ち姿、去り際の動き、そしてその雰囲気から、彼女の戦闘能力がただの噂ではなく、実際に他を寄せ付けぬ達人の域にあることはハッキリ見られた。

 

 そして御坂美琴の顔でしていい域を少し超えかねないヤバめな表情でトールは『獲物(ネル)』と戦うアポを取り付ける手段を色々と考えていた。

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