IS×MGS - Another Solid - 作:No.20_Blaz
時系列はMGS4から二年後。その為、サニーの年齢は九歳です。(2007年生まれなので)
ついで、何か一人増えていますが、其処は追々話に出します。でないと色々とアレですので・・・
あと、老蛇は『まだ』生きてます。この事はタグをご参照ください。
詳しくは簡易ではありますが、キャラ設定を投稿しますので其処で語らせていただきます。
一匹の蛇の話をしよう。
禁断の果実、その果実によって生まれた二匹の蛇だ。
人の禁忌を犯して生み出された二匹の蛇。
伝説の英雄の遺伝子を元に生み出された最強の兵士。
その真の目的は彼らを新たな
その中で、劣勢の遺伝子を受け継がされた蛇。
彼が伝説の英雄と後に呼ばれる男だ。
物心ついた時から、鉄の武器を握り締め、10の歳には戦場を渡っていた。
明らかに普通とは違う生き方をした彼であったが、別に疑問は持たなかった。
その生き方しか知らなかったからだ。
だが、やがて彼は自分の生き方に疑問を持ち、その人生は変化していく。
オリジナルとの戦い。
もう一匹の蛇との出会い、そして決別。
決められた命のタイムリミット。そして、最悪の兵器への変貌の道。
運命付けられた彼は、それでもたった一つの生き方を見つける。
己が救った世界の行く末。それを見て、後世に伝える為に。
= 北米 ラングレー
世界一の軍事国家アメリカの所有するバージニア州の空軍基地。
戦争経済が終わりを告げ、米国の軍事費用は大幅な削減が行われていた事により、風景が一変していた。
戦争経済国の一つであったアメリカは戦争経済初期に大規模な軍拡を発表。それによって各基地の設備も強化され、多くの兵器も作られ、配備されていった。
しかし、今となっては戦争経済は終わりを告げ、米国は現在様々な問題を抱える国家と成ってしまった。
SOPシステムの後遺症『SOP症候群』
戦争経済の市場崩壊による大赤字。
米国軍傘下のPMC企業の相次ぐ倒産とそれによる失業者の続出。
何より、その情勢に火事場泥棒の様に入ってきたISとそれによる女尊男卑の波。
今や、アメリカは世界一の軍事国家でありながら、その力を無闇に振るう子供となってしまった。
その所為か、ラングレー基地でも費用削減の為に多くの設備を廃止。戦力を大きく目減りされていたのだ。
そのラングレーは現在、一般の貨物機なども補給が出来るように設備が変更されていた。
空港などでの混雑や空港一箇所での燃料の削減の為だ。
それに紛れて一機の輸送機もココで補給を行っていた。
その輸送機の名は『ノーマッド』。放浪の意を持つ大型輸送機である。
《ブロロロロロ・・・》
補給中のノーマッドは現在後部ハッチが開かれている。
其処から見える中には一機のヘリが格納されている。
そのヘリは今となっては余り使用する事がないので補給の意味はない。
かなり燃料が減っている時でなければ補給は出来ないのだ。
その輸送機へと一台のジープが近づく。
運転席には基地所属の兵士が。そしてその後部座席には一人の老人がスーツを着こんで座っていたのだ。
ジープはノーマッドの後部ハッチの近くにまで行くと、そのエンジンを止める。
エンジン停止を確認すると、運転手は後ろに乗っていた老人に相槌を打ち、降車可能である事を教えた。
老人は運転手の相槌を確認すると、その老体に似合わない、まだ現役だと言っても良いくらいの動きの良さでジープから降車した。
「ここで待っててくれ」
「了解です」
老人はジープから降りると運転手に待っているように言いつける。
そして、座席に一緒に持ってきていた杖を突き、其処からノーマッドにまで歩いていった。
まだ元気の良さそうな歩き方をするが、そろそろ身体にもふら付きが出始めている。
杖を持ってても損はないだろう。
老人はそのまま杖を突きつつ、ノーマッドの中に入っていく。ヘリを通り過ぎ、その先に向って一直線に歩いていったのだ。
彼の目の先には上に繋がる階段と簡易ベッド、そして二つのコンピューターやテーブルなどが置かれていた。
そして、其処には二人の少女が居ており、何かロボットの様な物をイジっていたのだ。
一人は白髪と青い瞳をしており、ドライバーを握って器用にロボットにその先を入れている。その反対側には黒髪のショートヘアーと黒い瞳の少女がその作業を眺めていた。
やっている事は大人顔負けであるが、二人の表情は明るい物だった。
「サニー、マドカ」
その彼女達を老人は声を掛ける。
二人の少女は声がする方に顔を向けるとその老人の顔を見て笑顔を見せる。
そして黒い髪の少女が一目散にその老人の許に駆け寄っていったのだ。
「キャンベルおじさん!」
「ハハハ・・・元気にしていたかい、二人共」
「う、うん」
「うん!」
「マドカは相変わらず明るいね。元気すぎて腰が抜けそうだよ」
「えへへ・・・」
マドカと呼ばれた黒髪の少女は頬を赤らめて嬉しそうな顔をしていた。
幼い少女に似合う元気な笑顔だ。
そして、老人はその目を白髪の少女の方に向け、彼女に尋ねたのだ。
「サニー。君がイジっていたのはもしかして・・・」
「ま、Mk.Ⅳだよ・・・ハル兄さんが作っても良いって言ってくれたから・・・」
「そうか。矢張り君は優秀だねサニー。将来は良いエンジニアになれるよ」
「・・・・・・」
白髪の少女、サニーは顔を少し下げて恥ずかしそうな顔をしていた。
彼女達が見ていたロボットのMk.Ⅳを彼女が作り上げた。と言えば誰でも驚くだろう。
彼女はそれほどまで優秀な知識を僅か九歳で持ち合わせていたのだ。
「二人共。彼らは居るかい?」
「あ、ハル兄さんなら上に居るよ」
「サニー、マドカ。どうしたんだ・・・って、キャンベル大佐」
彼女達の声が聞こえたのか、上に繋がる階段から一人の男性が降りて来た。
茶色の髪に白い水色の縦セーター。眼鏡は彼のトレードマークといってもいい。
その彼は階段なら懐かしい顔が見えたので思わず彼を階級と共に呼んでしまった。
その台詞に老人は苦笑し、自分の呼び方を改めさせた。
「大佐ではないと言っているだろ。今はキャンベルでいいよ、オタコン」
「ハハハ・・・けど、僕も彼も貴方を大佐と呼ぶ方が慣れてしまっているのでね。」
階段を下りつつ、眼鏡を掛け直したオタコン。
彼も苦笑しつつも彼がキャンベルと呼ぶ老人と付き合いが長いというのを改めて思い出させた。
思えばもう十年近くの付き合いなのだ。
「それより彼は?」
「ああ。二人なら今・・・」
「二人・・・ああ・・・」
「大佐?」
キャンベルが納得の声を上げて何かを思い出した。
すると、彼の後ろから彼を階級で呼ぶ声がしたのだ。
キャンベルはその声の主を見るために振り返り、オタコンは顔を横にズラす。
其処には険しい顔つきの老人が一人立っていたのだ。
老体に似合わず体格はまだしっかりとしており、目つきも鋭い。
しかし、白髪の髪と皺のある顔は老人であると言う事を思い出させてしまう。
だが。その老人は実際の年齢はまだ40半ばであるのだ。
彼を見てキャンベルは明るい声と共に彼の許にか歩み寄り、老人の方も歩んだ。
「スネーク!」
「大佐・・・いや、キャンベル。どうしてココに?」
「君の顔をまた間近で見たかったのでな。用事ついでにココに来たのだよ」
スネーク。それが彼の愛称だ。
彼こそ、かつて何度も核から世界を守った伝説の英雄。ソリッド・スネークその人なのだ。
今となっては訳あって現役を引退してはいるが、それでもかつてのコードネームで彼を呼ぶ者は多く居る。いや、寧ろ彼の本名を知る人物が少ないからだろう。
その中の一人が彼、キャンベルだ。
元特殊部隊FOXHOUNDの隊員と上官。二人の関係は其処からスタートし、今でもその関係は不動の物となっている。それ故に、スネークも彼の事をキャンベル、又は大佐と呼ぶのだ。
「用事?」
「ああ。実は、彼にも意味のある用事でな」
キャンベルは久々の友との再会を硬い握手で交わす。
だが、二人は長い付き合いだ。直ぐにその再開の喜びを横に流して別の話に二人は切り替える。
キャンベルがそう言うとスネークと一緒に居た少年に目を向けた。
其処には黒の軍用ベストを上にポピュラーな軍服を来た少年が立っていた。
キャンベルの顔が少年に向けられると少年は数歩ゆっくりと歩み寄った。
そして、彼に敬語で尋ねたのだ。
「・・・何か分かったんですか」
「ああ。詳しくは場所を変えよう」
「じゃあ上の階を使おう。サニー、マドカ。すまないけどしばらく上に上がらないでくれるかい?ちょっと大切な話をするから」
「うん」
「わかったー」
男野郎四人が上に階段を使って上がり、適当な場所に座り込む。
上の階には簡易キッチンがあり、其処でサニーは毎日目玉焼きを作っている。
初期こそとても食べれる物ではなかったが、今ではそれなりに食べられる物になった。
そのキッチンがある場所に集まり、スネークとキャンベルは折りたたみ椅子に腰を掛け、オタコンと少年は立って話を聞くことにした。
「で、大佐。用事とは?」
「ああ。その前に、君達はこの後何処に飛ぼうとしていたんだ?」
「・・・アメリカでも網を張ってみたんだけど・・・FBI、インターポール。どちらもハズレだった。だから、今度はイギリスに飛ぼうと思っていたのさ」
「イギリス・・・なるほど
「かつてリキッドが所属していた所。先ずは其処からと思ってね」
「そうか。君達が行く前に伝えられて良かったよ」
「・・・大佐。一体何が・・・」
「これは・・・君達にとって重大な一歩となる筈。その踏み出す切っ掛けだ」
「ッ!」
「そう。君にとって大いに関係のある情報だよ・・・
イチカ君」
黒髪の青年。一夏は鋭い目つきでキャンベルを見ていた。
睨んでいたわけではない。真剣な眼差しになったからだ。
彼も察しがついたのだろう、とキャンベルが予想すると、彼は背を少し丸め両手の合わせて彼はその一歩への切っ掛けを話したのだ。
「彼女の居場所が分かった。日本だ」
「ッ!!」
「日本か・・・」
「実は、此方で信頼性の高い情報が入ってな。近く、彼女は日本に九分九厘現れるだろう」
「・・・その根拠は、一体何なんだ」
スネークはキャンベルの確かな情報に疑問を持ったのか、彼にその根拠を尋ねた。
それを当然の事だろうとキャンベルも思っていたのか、直ぐにその根拠を話してくれたのだ。
「根拠は二つある。一つは、彼女の身内がある場所に現れる事。今まで居場所を特定するのが難しかったが、今回ようやく尻尾を掴めた」
「もう一つは」
「日本の諜報機関が偶然にも彼女が軍用の連絡衛星を経由して連絡をしていたのが分かった。しかもその発進元が日本国内だった」
「つまり・・・彼女は今日本に居る?」
「その可能性が極めて高い。これは我々にとって大きな一歩になる。違うか、二人共」
「・・・俺はともかく、イチカ。お前は・・・」
「・・・当然。願っても無いチャンスだ」
一夏の表情は笑っていた。
ようやく手がかりをつかめたのだ。
雲を掴むような思いで戦っていた彼にとって、この情報はその雲をつかめるのと同義だ。
この機会を逃す意味はない。
彼の答えを聞くとキャンベルは微笑み、スーツのポケットから何かを取り出す。
「そうか。聞くまでも無いとは思って居たが、安心したよ」
「それは?」
キャンベルが取り出したのは一枚の封筒。しかも少し分厚い。
それと二つの鍵が彼のポケットから取り出され、テーブルの上に置かれた。
「これは、君達の身分書と入学手続きの書類だ」
「身分・・・え、入学?」
「キャンベル、一体どういう・・・」
「・・・改めて君達に任務を言い渡す。ノーマッド補給後、君達は早期に日本に向かい、以後は彼女が現れるまで日本に滞在してくれ」
「・・・つまり、僕等は・・・」
「しばらく日本に住んでくれ・・・とでも言えばいいかね?」
キャンベルの言葉に三人は目を合わせる。
イマイチ話が飲み込めていないオタコンと一夏。スネークもある程度意味は分かったが入学とはどういう意味か未だに分からないのだ。
「それは分かったが・・・入学とは?」
「まだ言っていなかったな。彼女が現れる確率が高い理由。それは、彼女の妹が『IS学園』に入学するからだ」
「IS学園って・・・あの国営の?」
「そうだ。国連によって建設された人工島。その上に立つ日本の中の独立国」
「何処の法にも縛られない学園。正に、アウターヘブンの学園版って事だ」
一人の偉大なる英雄であり、大罪人であるある男が提唱した一つの思想。
戦士が唯一、生の充足を得られる場所。
どの国にも、主義や思想、イデオロギーにも縛られない場所。
男は、それを「アウターへブン」と呼んだのだ。
今となってはかつて生きる思想となっていた。スネークが戦った蛇たちもこのアウターへブンの思想を活動理念としていたのだ。
それをISに置き換え、一夏は皮肉を口にした。
IS学園も言うなればアウターへブンともいえる。
何処にも縛られず、戦士つまりはISの適正がある者達がその有用性を確かな物とし生きがいと出来る場所。
戦場や企業などと言った縛られた場所では感じられない充足。
正にもう一つの天国の外側と言う事だ。
「といっても、ISが動かせるからって充足するって理由でもなさそうだけどね」
「どうかな。現代の女子生徒の進学志望校の九割はIS学園。そしてその九割の中で進学できたのは、たったの一割弱だからな狭き門を潜った選ばれし者って自尊心持っても可笑しくはないと思うぜ」
「女尊男卑・・・嫌な時代になったものだな」
「仕方あるまい。戦争経済によって崩壊した世界情勢に火事場泥棒の様に割り込んできた女尊男卑主義者達は今や世界列強国の指導権の大半を握っている」
「確認されているだけでも、欧州各国の他にも、インド、オーストラリア、中国にブラジル。ロシアに日本。そしてご存知アメリカもその仲間さ。これからは多分、彼女達が自分達に都合のいい世界を作るだろうね」
「戦争経済での仕返し・・・とでも言う気か」
「ま。散々俺達男が道具の様にしてきたんだ。キレるのも無理ないとは思うが・・・」
「何時までも時代は続く物ではない。戦争経済然り。愛国者達然りだ」
「加えて、日本は戦争放棄を謳う国家で、戦争の飛び火が一番少ない国だ。戦争経済を関係なしと見ていたのにも不思議は無い」
「そんなお気楽国家に凱旋ね・・・嫌な戻りだぜ」
「そういうな。この任務は君が学園内で彼女を見つけることが第一の任務なんだ。嫌でもあそこに居なければ今度は何が起こるか我々にも見当がつかない」
「捕まえるチャンスはこれがラスト・・・なのかもしれないって事か・・・」
事は彼の考え次第だ。一夏が改めてやるならよし。やらなければ別の方法を探すまでだ。
だが、彼もその気は無い。それに、引けない理由もある。
それ故に、答えは一つだった。
「・・・分かった。日本に行きます」
「いいんだね?」
「・・・大丈夫。もう・・・大丈夫だから」
「・・・そうだな。君はもう表向きでは既に死んでいる事になっている。だから、それなりの用意はしてきたよ」
キャンベルは椅子から立ち上がると杖を持ち、既に考えていた事を彼らに告げる。
「イチカ君。君はエメリッヒ博士の養子として日本に戻る。名前はイチカ・エメリッヒだ」
「えっ僕の名前ですか!?」
「すまないな。難だったら私の名を使うという手もあるが・・・」
「アンタはメリルの後釜でも欲しいのか?」
「うっ・・・」
「そういえば、メリルは結婚して今は別居しているんでしたね。しかも居場所を告げていない所を見ると、戦場を駆け回っているか、何処かで静かに暮らしているか・・・」
「そ、そうだ。私は別にメリルの後釜などは考えていないさ。彼女はああやって幸せになったんだ。何も言う気はないよ」
「けど、居場所が気になるんだろ?」
「むうっ・・・」
メリルとは、キャンベルの娘であるメリル・シルバーバーグの事で、現在は別居している。
二年前に起きた事件の後に彼女が隊長を勤めていた『ラットパトロール・チーム01』のメンバーであるジョニー佐々木と結婚し、今は夫婦生活を送っているらしい。
スネークたちでも居場所は知らず、知っているのは彼女の元同僚達だけ。その為、キャンベルにも知らされておらず、聞こうとしても中々口を割ってくれないのだ。
それでボロが出たのか、キャンベルはぐうの音も言えなかった。
「オタコン。アンタは良いのか」
「何が?」
「名前だよ。こんなにも簡単に養子だ何だって言われるものどうかって・・・」
「別に。僕は構わないさ。サニーも養子にするって話も決まりそうだし、君も家族のようなものだ。別に異論はないよ」
「そっか・・・」
「話は纏まった様だな。スネーク、君も日本に行ったらどうだ?」
「俺も?俺は別に・・・」
「君の身体が日に日に不自由になっているのは分かっている。だからこそ、最後に戦いの無い人生も送るというのも悪くないだろう」
「・・・・・・」
「スネーク」
「・・・・・・」
「君は見たものを後世に伝えたい。そう言ったよね。だったら、世界の違いも見るべきだ。いい所も悪い所も。全てを知って、それを後世に伝えるって言うのも、君の一つの目的でもないかい?」
「オタコン・・・」
「それに・・・まだ少しサニーの目玉焼きは辛いからね」
苦笑交じりにオタコンはスネークを説得する。
スネーク自身、特に断る理由も無ければ賛成する理由も無い。いわば中立の立場の人間だ。
確かに、彼は見たものを後世に伝えたいという意思は持っているが、彼は悲惨な現実しか知らない。
この機会にその反対も見るべきではないか、と言うオタコンたちなりの配慮でもあった。
二人の説得にスネークは少し考え込むが、結論は直ぐに出た。
「・・・仕方ない。爺さんの身体の健康の為にリハビリプールにでも通うとしよう」
「ハハハ・・・」
「決まりだな。君達はノーマッドの補給後、日本に向ってくれ。住む家の住所などは封筒に入っている。」
「了解した」
「それとイチカ君」
「ってはい?」
「君の名前はエメリッヒだが、義父はスネークだ」
この直後。二人が吹き出して大きくむせる声をサニーとマドカは下から聞こえており、顔を見合わせていたのだった。
話が終わり、ノーマッドは補給を終えたのでラングレー基地を後にする。
キャンベルはその東に向うノーマッドの後姿をジープの上からずっと眺めるのだった。
(私達が残してしまった種。それが芽吹く前に・・・頼むぞ)
= ノーマッド機内 =
ノーマッド機内では一夏は二階でシャワーを浴びており、スネークはソファの上で寝転がっていた。
そして、その近くでオタコンがサニーとマドカに日本にしばらく滞在する事を話していた。
勿論、一夏が学園に入る事も、その為の用意も出来ていると言う事もだ。
「と言う訳で、僕等は日本にしばらく住む事になる。」
「に、日本ってお兄ちゃんが住んでいた国でしょ?」
「そうだよ。僕らは其処にしばらく居る事になる。」
「検査とかは大丈夫なの?」
「そこ等辺は大丈夫。ちゃんとキャンベルが手を回してくれたし、それに僕等は今は自由国籍になっている。国籍とかについては大丈夫って事さ」
「へー」
「へーってあんまり関心ないような言い方をしないでくれ、マドカ・・・」
「だってどう言えば・・・」
「アハハハ・・・あ、それと」
「?」
「実は、二人には向こうで学校に行ってもらいたいと思っているんだけど・・・」
「が、学校?」
「そう。サニーも他の子達とお話し出来るようになっておかないとね」
「・・・・・・」
《カン、カン、カン、カン》
「話、終わったのか?」
「あ、お兄ちゃん!」
シャワーを終え、白いタオルを首に掛け、黒長袖シャツとカーキの軍用ズボンを着た一夏が階段から降りてくる。
彼の姿を見てマドカは、直ぐに彼の許に駆け寄って抱きついた。
それをサニーは羨ましそうに見ており、オタコンはそれを微笑ましく見ていた。
だが、それで終わりではないと言う事を思い出し、頭の隅に思い出した事を置いておいた。
その隅に置いた事は直ぐに一夏の口から尋ねられた。
「オタコン。適性検査の結果は?」
「ああ。さっき丁度届いたよ」
オタコンがそう言うとパソコンの前に座り、サニーとマドカに話をする前に届いていた電子メールを開封した。
といっても一度彼が目を通しており、結果は先に知っていたのだ。
「かなり高いって程じゃないけど、適正検査は合格。これで準備はバッチリだ」
「・・・やっぱり、俺の遺伝子データが書き込まれていたって事か・・・」
「そうなるね。以前見つけた残骸が君に反応した。正直あの時は驚いたけど、あの時だったから別に不思議でもなかった。それに、彼女の事も考えると尚更だ」
ISの適性検査は二人が予想していた通り合格だった。
以前、ちょっとした事で一夏がラファールの残骸に手を触れた時があった。
その時に彼はISの適正が自分にはあると言う事を知り、同時に驚いていた。
世界で始めての男性IS操縦者。しかし、それを知っているのは現時点でスネークたちとキャンベル。そして一部の彼らの知り合いだけ。
それを詳しく解析したオタコンたちはどうやら一夏の遺伝子データがISに書き込まれていたと言う事を知ったのだ。
「で。問題は機体の方だけど、そっちも目処がついたよ」
「え、本当か?」
「ああ。ある研究機関が新型を開発したはいいけど、技術的な問題で中止に追い込まれてしまってね。その機体を改修するって事になったよ」
「って事は・・・」
「うん!」
「えへへ・・・」
「サニーとマドカも手伝ってくれるって事さ」
「・・・・・・お世話になります」
サニーとマドカのIQは一夏よりも遥かに上だ。
サニーは彼女の才能なのか、プログラマーとしての技能が高く、それは手ほどきを教えたオタコンでさえも認めるほど。
マドカは其れに対し、工学などの分野を得意としており、Mk.Ⅳの組み立てと改修は主に彼女が行っているのだ。
これにより、一夏は二人にこう言う所では頭が上がらず、二人に対しこの時ばかりは敬語でお礼を言う事にしている。
「・・・イチカ。少し聞いてもいいか?」
「ん、なに?」
「日本とは・・・お前から見てどういう国だ?」
唐突なスネークの質問に一夏は戸惑いを見せたが直ぐに自分が今、彼から見た日本をスネークに述べた。
それは今まで彼が思ってきていた日本とは全く違う答えだ。
「・・・平和な国さ。良くも悪くも・・・だけどな」
「そうなのか」
「ああ。戦争放棄を謳い、戦争から身を引いた国。それによって多分日本人は結構平和ボケしていると思うぜ。自分達に関係ない。巻き込まれる事の無い戦争経済。そんなのに彼らは関心の欠片もない」
「・・・随分な言い方だな。お前の民族なんだぞ」
「それでもさ。生きている限り関係の無い物なんて何一つ無い。戦争経済だってそうだ。そのお陰で今や日本は世界でトップの治安と技術力を持つ国家になった」
「エンジニア、プログラマーなどの実に半分は日本の工学科の大学を出ている。そして、其処からAT社だったり色々な所に就職する。正に僕等科学者の聖地と言っても過言じゃないさ」
「けど、その裏では戦争に関係ないからって醜い奴等がふんぞり返ってる。権力にしがみつき、金と権力を振るう奴等がな」
「・・・今は嫌いなのか」
「いや。それでも日本は俺の生まれた国だ。嫌い意味はない。寧ろ・・・いや。何でもない」
「・・・・・・」
何かを言おうとしたが、一夏はその先を胸の奥にしまった。
今話すべきことではない。そう思い、彼は暗い顔をしていたのだ。
スネークとオタコンもその先は追及せず、暗黙の了解なのか、それ以上何も話さなかった。
そして、そんな出来事が起こるノーマッドは日付変更線を通過し、夕日に沈む太平洋を横断するのだった。
= 日本 =
平和を謳う国、日本。
戦争経済の火の粉を浴びなかった数少ない国の一つであり、現在は世界最高の技術国となっている。
しかし。幾ら技術があろうと。平和であろうと。
人の精神までは治療も修理も出来ない物だ。
「・・・・・・」
織斑千冬は泣いていた。
かつて、世界最強と呼ばれたブリュンヒルデだが、今はこんな醜い有様となっている。
自室のベッドに籠もり、ビール缶と酒瓶に飲み溺れ、食事と言う食事は全てつまみだけだった。
寝巻きのジャージのままボサボサではあっても美しい黒色の長髪を散らせ、白く汗と涙が染み込んだ毛布を抱き枕代わりにベッドの上で寝そべっていた。
彼女がどうしてこうなってしまったのか。
それはたった一人の肉親を失ってしまったからだ。
ドイツで行われたモンド・グロッソに出場した彼女だったが、決勝戦開始と同時に彼女のたった一人の弟が誘拐。行方不明となる。
彼女が其れを知ったのは決勝での表彰式後。彼女は優勝の喜びを真っ先に弟に伝えたいとインタビューしていた。が。その弟が行方不明と知り、彼女の心は一気に墜ちて行った。
ドイツ警察の必死の捜査も空しく、彼の遺体は愚か血痕の一つでさえも見つからなかった。
そして、一週間後。正式に彼女の弟が死亡と言う扱いになった。
最初は受け入れられなかった。だが、彼の遺体も血痕も見つからないのは何故だ。
様々な議論と疑問が残ったこの事件だったが、ドイツ警察の上層部がこれ以上の騒ぎは治安に関わると言いがかりをつけて強制的に中止。
結果。彼女のたった一人の肉親は姿も無く消えたのだった。
絶望の底に突き落とされた千冬だったが、たった一つの生きる希望をある日見つけることになる。
それは彼女がドイツ警察などに世話になったと言う事でドイツ軍に一時期特別教官として配属された時だ。
彼女がたった一人だけ教えた部下が居た。
その部下はまだ幼い少女で歳では彼女の弟が生きていたらその位の歳だ。
おちこぼれと言われ、生きる意味を失っていた彼女を千冬は一人だけで指導した。
そのせいなのか。自然と彼女を自分の弟と重ね合わせる事が多くなった。
何時しか、千冬は彼女に自分の弟を重ね合わせ、妹の様に厳しく、時に優しく接していった。
それが彼女の、たった一人となった世界最強の最後の生きる意味だった。
「・・・・・・」
だが彼女はココに居は無い。
今彼女はドイツに居るのだ。
日本からでは到底会いに行く事は難しい。
そして、再び生きる意味を無くし、今に至るのだ。
「一夏・・・」
もう居る筈の無い弟の名を呟く。しかし、弟は返って来ない。
彼は死んだ。それが彼女に突きつけられた現実だった。
非情な現実を受け止める事はできず、彼女は現実から逃げようと、飲んでいたビール缶に手を取る。
しかしビールは既に無い。先ほど飲み干したのだ。
無くなったビール缶を乱暴に投げ捨て、彼女は下のキッチンにある冷蔵庫に冷えたビールを取りに行こうとする。
今や冷蔵庫の中身はビールとつまみ一色。
料理の出来ない彼女にとって最早冷蔵庫は単なるビールとつまみ入れとなっていたのだ。
「・・・」
深夜を回り、辺りはすっかり暗くなっている。
千冬は暗闇に慣れた目を開け、ゆっくりと身体を起こす。
ベッドの下には大量のビールと酒瓶。そしてつまみの袋カスなどが散乱していた。
それはまるで今の彼女の心をそのまま現したようなものだ。現実から逃げる為に酒とつまみに溺れる。
もうそれしか考える事出来ない状態にまで彼女は弱まっていた。
これが世界最強といわれた彼女の現在だ。
《ヴィー ヴィー》
「・・・携帯・・・」
しかし。その日々は終わりを告げるだろう。
たった一通のニュースによって。
「・・・・・・」
つまみの袋に埋もれたタブレット携帯を取り、千冬はロックを解除してニュースを見る。
其れくらいはまだ身体に習慣付いていたのだ。
その習慣のお陰で、彼女はその濁った目の色を再び輝かせる事になる。
「・・・え?」
たった一文。見出しの記事を見て、彼女は目を疑った。
其処には信じられない事実が、現在の彼女でも分かる現実が書かれていたのだ。
『世界初の男性IS操縦者。一部からはブリュンヒルデの《弟》ではないかと言う声も』
「・・・・・・・・・一夏・・・?」
夢の時間は終わりだ。ココからは、彼女の現実との戦いの始まりである。
と言う訳でプロローグでした。
初っ端から色々と疑問が残ると思いますが、其処は作中で分かったりします。
誤字脱字はザラですので出来れば報告してもらえると幸いです。
では、次回の第一話をお楽しみにです。