IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第十一話です。

大学の受験が完了し、無事合格したので取り合えずホッとしています。
これから再びペースを取り戻すと思いますのでよろしくお願いします。


さて。今回は潜入の翌日の朝の風景がメインです。
大半がギャグパートとなっていますのでそこ等辺はご承知を。キャラ崩壊多分激しいので。
そして最後にはあの人も顔を出します。
次からはそろそろセカンド幼馴染も本格的に出す予定です。

では、誤字脱字・駄文はご愛嬌。
それでも良いという方は
第十一話、お楽しみ下さい。



No.11 「翌朝」

 

 

深い闇に沈む感覚だ。

 

 

周りにはまるで何も無い。

あるのは唯々『無』だけ。

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

何も見えず、何も感じない。

しかし、その世界は何かぬめりのある水が充満しているようで少しでも身体動かそうとすると、ぬめりに引っかかって微動だけでも重く感じる。

水の中に居るのでは息が出来ないのでは、と思うがそうでもない。と言うよりも息をする必要自体が無いのだ。

 

息もしない、動けもしないこの状態。

別にこのままで居ても何も問題は無いだろう。だが、唯々ジッとし続けるというのは流石に無理もある。これを認識できていると言う事は意識があると言う事だ。意識のある状態でこうやってじっとしているというのは性には合わない。

それに、この闇の中に居続けるというのも何かいけないという気がする。

 

そう思い、重く感じる腕にムチを打ち手を動かそうとするのだが、何故か思うように腕が動かない。それは、腕というよりも自身がこのままでいいという意思と動かしたいという意思に挟まれ、中途半端な動きで止まってしまっているからだ。

 

 

「・・・・・・。」

 

 

そんな中途半端なことで良いのかと思うと、それで素直に納得するような性格ではない。

だから、『彼』は縛られるように重く伸し掛かる何かが乗せられたこの状況でも、それでも彼はその腕をありもしない天の空へと伸ばしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識がまだはっきりしていないからか、目蓋を重く感じる。

その目蓋の所為で視界が真っ暗なのは先程と代わりは無い。

しかし、感覚は違う。匂いもだ。

 

さっきまでは暖かくも無ければ冷たくも無い。そんな場所に居たのだが、今は少し冷たい風が、何処からか吹き込んで自分の肌に当たっていく。

風は心地よく、僅かに潮風を運んでくるのには今までに無い新しい匂いで、まだ慣れていない。

 

そんな風が何かを運んだような気がしたのか、自然と目蓋の重さが消え失せていき、彼はその重たかった筈の目蓋をようやく開けたのだった。

 

 

 

が。正直開けるべきではなかったのだろうと言う後悔も直後にするのだったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、彼の開いた目蓋に最初に見た景色が、今までの様な少し模様の掛かった白い天井でもなければ、時折イタズラに現れる水色の髪でもない。

金色のロールヘアーと青いカチューシャをした彼女が、まるで天井にぶら下がるかのようにして覗き込んでいたのだ。

 

 

「・・・・・・ん?」

 

 

すっとんきょうな声を漏らした一夏の声は僅かに裏返っており、寝起きの状態であると言う事が見て取れた。寝起きの彼にはその声が丁度いいというのだろうか、彼は直ぐに目を大きく見開き、寝起きの頭を問答無用でフル回転させる。

そして、現在全くの意味不明な状態であると言う事に、どうしてこうなったのかと焦りも感じている。

 

思い出せるのは、昨夜に一夏がこっそりと部屋に戻り直ぐに制服とバッグに消臭剤をかけた後にシャワーを浴び、そして眠ったと言う事。

行動からすれば単純な物ではあるが、時間はその時は一時を回っていた筈だ。

起きているのは自分か警備の人間くらいだろう。

 

しかし、現状はこうなっている。

どうしてこうなったのだろうと一夏は戸惑いの顔をしているのだ。

いざ起きてみれば、最初に目に飛び込んだのはセシリアだ。

服装は制服、きっちりと髪も梳いて用意万全の状態でほぼ彼が何時も見ている彼女の姿その物であるのに間違いない。

 

 

 

 

 

「あら。起きましたか?」

 

「・・・何・・・してんだ?」

 

「殿方が喜ぶ『膝枕』と言う奴です」

 

 

・・・どういう事だ?

完全に状況に置いて行かれそうな一夏は、頭の後に遅れて体の感覚が戻り始めているのに気づき、再度辺りの状況を確認する。

改めて一夏は、自分の頭が置かれているのが昨日使っていた羽毛の枕ではなく、柔らかい女性の肌の上に置かれているというのに気づき、不意に手を動かそうとする。

しかし、動けば何かロクでも無いことが起こりそうであったので微動して直ぐにやめた。

では肝心の枕は何処だ?安眠の友である枕は何処に行ったのだと一夏は未だに自分の顔を覗き込んでいるセシリアに訊いた。

 

 

「・・・セシリア。俺のベッドの枕は?」

 

「私の下ですわ」

 

 

制圧されていた。一夏の安眠の地であるベッドの上は、気づけば彼女に制圧されていたのだ。残されたのは自分の上に掛けられている毛布だけ。最大の友である枕は現在彼女の下にクッション代わりとして座られている。

頭を置く場所だ。さぞかし座り心地は良いのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を言っている場合ではない。

一夏は改めて、どうして彼女がココに居るのかと言うのを思い出した。

今までセシリアが居る事と枕が占領されている事にしか気が向かなかったが、改めてココが自分と楯無の相部屋だというのを思い出し、彼は寝起きの身体を起こしてセシリアに尋ねる。

 

「つか、どうしてこの部屋に居るんだ?先輩は?」

 

「彼女は現在シャワー中。ですから、針金を使って入ってきました」

 

「それ不法侵入だな」

 

ボケとツッコミの即席を行い、一夏はセシリアのスキルに内心では呆れつつも驚いていた。

キーピックなんて物はちょっとやそっとじゃ出来る物ではない。しかもそれが十代の少女となれば最早言葉すら出ることも難しい。

それを平然と行った彼女はきょとんと目を丸くして一夏に言い返した。

 

 

「不法侵入だなんてそんな・・・ココは学生寮ですし、第一ココには日本の法も通じませんから」

 

「けど、不法侵入だっての。第一、どうしてセシリアが俺の部屋に来るんだ?別に外で待つって事だけでも・・・」

 

「・・・・・・まぁ・・・色々とですわ」

 

「・・・色々?」

 

 

僅かな一瞬だが、セシリアが目を逸らした。何か隠している。

それに気づいた一夏は自分もセシリアから目線をズラし、自分のリュックなどの私物が置かれている場所にその目を向ける。リュックなどは全て自分のベッドの横に置かれているが人目にはつきにくい場所なので早々見つけられるものでもないのだが、相手はセシリアだ。徹底的に可能性のある場所から潰してリュックを見つけたとしても不思議ではない。

しかし、彼女は一体何を探そうとしているのか。

まさかと思い、一夏はセシリアに対して問いを投げようと彼女に目を合わせるのだった。

 

「・・・まさか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まさか・・・彼を寝取りにでも来たのかしら?」

 

 

刹那。背筋が一瞬凍りつく様な寒気が走る。

その声には相手の顔を見ずとも分かる、威圧感と言うものと殺気が漏れていたのだ。

しかも、その殺気は今からでも殺しに掛かりそうなほど強大で、彼がその声の方に振り返るのを躊躇い、更には向きたくないという程の殺意が出ていたのだ。

戦場渡ってまだ二年だが、彼も殺意と言う物は重々知っていた筈だった。

だが、この殺意は今まで感じた殺意とは違い、何か拘束力のある様な感じだ。

 

それでも、一夏は自然とブリキの玩具の様に軋む様な音を出すかの如く自分の首を殺意のある方に方向転換させる。

でなければ殺されると感じたのだ。何故かはわからないのだが。

 

 

 

「・・・・・・せ・・・先輩?」

 

 

 

方向転換した方角。其処には白いタオル一枚だけを身体に巻きつけ、水色の髪から小さな雫を滴り落とし、トレードマークともいえる扇子を持った楯無が居たのだ。

それを見た瞬間。一夏は今まで感じた事の無いプレッシャーの様な物を感じ、こみ上げていた唾を飲み物を飲み込むようにしてのどの奥に再び流し込んだ。

一夏はココまで竦んでいるのにも関わらず、隣に居るセシリアは余裕の顔を崩さない。

寧ろ、「あらま」と声を漏らしてギャグの漫画の様に驚いた顔でいたのだ。

 

 

「へえ・・・私を出られないようにしてその間に彼とイチャイチャしようって気だったの?だから態々シャワー室の扉を鉄板(・・)なんかで固定させていたのね」

 

「あら。思った以上に長いシャワータイムでしたので案外簡単に作業は出来ましたが、まさかいとも簡単に突破するとは」

 

「ええ。思ってた以上に硬かったから思わず自分の専用機を使ってしまったわ。だから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死ぬ覚悟は出来てるかしら二人共(・・・)?」

 

 

 

笑っていない。表情は笑っているが、目と気配が笑っていない。殺意が吹き出して部屋を充満するかの様な濃さの殺気を出す楯無の目の色はセシリアの時以上に虚ろでハイライトも無かった。

オタコンが言っていた。アレをレイプ目とまたはヤンデレと言うのだそうだ。

後者は恐らく違うと思うが前者は正しいだろう。一夏が遠くから見ても分かるほどに目は濁っており、更には殺気が駄々漏れだったのだからだ。

 

 

 

「・・・え・・・二人?」

 

 

と言うよりもどうして自分までカウントされているのだろうか。

状況からして明らかに自分が被害者であるのにも関わらず何故か自分もカウントされていると言う事に気づいた一夏は楯無にそれを恐る恐る尋ねたのだが

 

 

「えっと・・・どうして俺もカウントを?」

 

「問答無用です」

 

 

話が通じていなかった。どうやら完全に一夏も共犯者たと言う事にされており、言い訳の一つも通じるような状態ではなかったのだ。

最早死ぬしかないのかと言う程に一夏のこの状況での立場は危うい物になっており、しかも説得も時間もなく楯無が仕掛けようとしていたのだ。

 

 

「せめて、苦しまずに逝かせてあげる・・・!」

 

(殺すの前提かよ!?)

 

 

最早お構いなしの楯無は扇子を広げ、それを自分の顔の前におく。

唯の扇子か、それとも何か仕掛けがあるのか。いずれにしても今の状況で謝りだけで済むような状況ではないと言う事なのは事実。

 

楯無が扇子を軽く振るうと、持つ手には何時の間にか鉄の鋭い何かが顔を出し、その鋭く尖った先端部を見せ付けていた。

彼女の家系が故の武器なのか、忍具と呼ばれる武器である『苦無』そのもので、それが更に扇子から三本、計四本の苦無が彼女の扇子から現れたのだ。

 

 

「苦無!?」

 

「そんな古風な武器をお持ちとは・・・何処から出したのかしら?」

 

「知る意味はないわ。ココで貴方を殺るんだから」

 

「無断侵入でそれは無いんじゃ・・・」

 

「ちなみに貴方は後でお説教(物理)です」

 

「・・・無茶苦茶だ・・・」

 

 

呆れ果てる一夏だが、それだけで状況は進展しない。寧ろ悪化するだけだ。

最早何が起爆剤でこんな事になったのかでさえも分からない事になりつつあった状況。その状況は更に悪化の一途を辿る。

 

 

「・・・無断侵入については謝りますわ。ですが、私だって死にたくはありません。ですから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実力で対抗させて頂きます」

 

「・・・マジかよ・・・」

 

 

そう言ってセシリアは何処から出したのか、新たにスコーピオンと呼ばれる短機関銃(サブマシンガン)を取り出したのだ。そのロックを平然と外す姿と表情に一夏は頭が痛くなり、幻覚の頭痛がする。

セシリアも平然とした表情とは裏腹に完全に戦う気満々であるのだ。

 

「あら。マシンガンなんて恐ろしい物を・・・」

 

「飛び道具には飛び道具。道理は適っていましてよ?」

 

「・・・なら、その通りに串刺しにしてあげる・・・!!」

 

「あら怖い・・・なら!」

 

 

 

 

 

どうしてこうなるのだろうか。

 

その状況から楯無は更に左手にも四本の苦無を何処からか取り出し、完全武装態勢を取る。

対してセシリアもPPSを構え、瞬時に片手でロックを外す。

 

最早、事の始まりは関係なし。

殺意満点の二人が銃と暗器を構えるという状況になっていた。

この勝手に進行する状況に一夏は遂に諦め、頭を抱えているしか出来なかった。

 

 

「・・・もう勝手にしてくれ・・・」

 

 

 

 

「いざ・・・!」

 

「来なさい・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ガチャ》

 

 

「失礼します、かいちょ・・・」

 

 

その二人の戦いが会戦しようとしていた直前。偶然にも楯無を迎えに来た虚が入ってくる。

しかし、その状況を見て彼女は一体何がどうなっているのかと絶句していた。

 

片や風呂上り姿の生徒会長で現在はタオル一枚を巻いて苦無を両手に持っている。

そしてもう片やは片手にマシンガン、左手にハンドガンを持ち殺意満点の顔で生徒会長に照準を向けている。

 

そしてその近くに呆れて何も言えない青年が一人。

 

 

 

 

カオスここに極まれり。ソレを見た虚は数秒ほど静止し、次の行動をロードする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を朝っぱらからしているんですか貴方たちはぁぁぁぁぁ!!!!」

 

そして。即刻鎮圧を開始したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早一時間後。

戦闘一歩手前の状況であった部屋の外では現在、制服に着替えた一夏とセシリア、そしてその彼等の目の先には虚に引きずられてどこかに連行されていく楯無が居た。

楯無は子供の駄々をこねる様な言い方と状態で引きずられており、正に母親に引きずられる子供その物だったのだ。

 

「いーやー!!虚ちゃん許してってばー!!」

 

「駄目です!第一、貴方昨日仕事すっぽかして明日の朝すると言ったでしょうが!」

 

「私まだゴハンがー!!」

 

「朝食は持って行きます。諦めてください!」

 

「いやーん!!私だって彼とゴハン食べたかったのにー!!」

 

 

 

「はぁ・・・」

 

「・・・仕方ないですわ。諦めるとしましょう」

 

「・・・・・・。」

 

 

まだ諦めていなかったのかと呆れる一夏。セシリアの内心は彼女にだけにしか分からないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の食堂は一日の食事の中で一番清々しく、それでいてか静かな事もある。

朝食を抜いたりするという生徒も居るからか朝の席は他の時よりも少し空いている感じが見受けられるのだ。

朝の食事を抜く理由は様々な理由があるらしいが、大抵は女性なら誰しも気にするであろう体重だ。見た目を細く見せて健康的に、かつ美的に見せるというのが目的であり特にソレを理由に三年生が居ない事もしばしばある。

しかし、実際健康上では朝の食事を抜くというのは健康バランスを崩しかねない事になる。

 

少し入り込んだ話になると、朝の朝食前にはブドウ糖と言う成分が最も不足する時であり、其処にブドウ糖を多く含む炭水化物、つまり一般的に食べられている朝食の代表的な物の白米やパンといった物を食べる事でそれを補給するのだ。

よって、そのブドウ糖を補給すればどうなるのか。結論から言うと、集中力が上がるのだ。

甘い物を食べると頭が冴えるなどと言う逸話の様な話の事を言うものでその逸話は紛れもない事実なのだ。

逆に朝食を抜けばどうなるのか。それは実に簡単、集中力を欠く事になってしまうのだ。

 

 

その人物が今日の虚だったというのは、ココだけの話ではあるが。

 

 

 

 

食堂に顔を出す一夏とセシリア。

物の数日で朝の風景になれた二人にとって少しガラガラ感のあるココはもう馴染みの場所だ。ココの食堂と言うのは一般的な日本の学園内の食堂と何ら変化は無い。

食権を買い、それを出して食事を貰う。違いがあるとすればバリエーションがとても豊富と言う事か。

唯、その食権でどれを食べるのかと言うので大抵迷うのが販売気前に数人は居る。

その中には見知った顔が一人は必ず居ると言う事もだ。

 

「あ、りっひーとせっしーだ~」

 

「布仏か。おはよう」

 

「あら、今朝はお一人ですか?」

 

「あははは・・・二人共先にゴハン終わって行っちゃったー」

 

相も変わらないマイペースな本音が販売気前で何を食べるのかと迷っていた。

流石に何時も同じ物と言うのは飽きが来たのだろう。しかし、ココには思った以上にバリエーション豊富な為に逆に迷う者も多く居る。

どれにするか。どれも美味しそうだな。これも食べて見たいな。

そんなどれもこれもに興味を引かれ、迷い迷って時間ギリギリになると言う者も居る。

それが一夏の目の前に居る彼女もその一人だ。

 

しかし、逆も然り。

迷い無くコレと決めた物だけを食べるという者も少なからず居る。

それが一夏とセシリアだ。

 

 

「・・・二人って毎日同じだけど厭きないの?」

 

「別に?」

 

「同じ食べ物を毎日と言うのは慣れてますから」

 

「ほえー・・・」

 

 

そう言って迷い無く食権を買う一夏とセシリア。

それには本音も思わず声を出して尊敬するが、別にそんな事で一々尊敬されると言う事を彼等はしている訳ではない。

寧ろ、それが彼等の日常と言うべきことだ。

毎日同じ食事を食べれる。それだけでもありがたいことなのだと

 

片やは戦場を渡り歩き、毎日カロリーメイトなどを主食とし。

片やは軍に属していたからか食事自体はあるがその食事は粗末な物。

まともな食事にありつけると言うのがどれだけ素晴らしい事か、それを身にしみて知っていた二人はそれ以上の要求と言う物が無く、ただ毎日同じ物を食べていたのだ。

 

 

 

 

 

二人の朝食は彼等の間では馴染みの物だ。一夏は和風の白米と味噌汁、そして塩鮭と最もポピュラーなラインラップのメニューを。セシリアは一夏ほどの量ではないが、フレンチトーストをチョイスしている。トーストの他にも、程よい冷たさがアクセントのバニラアイスも乗っている。暖かいトーストをほお張り、アイスで口の中を冷やすという決まりの様な食べ方もあるらしい。

 

一方でその二人と一緒に食事を取ろうと思い、本音も少し慌てて食権を選ぶ。

選んだのはハニートースト。甘い蜂蜜とフレンチトーストよりも大きめのアイスが乗って、更に其処にチョコソースが彩り豊かに塗られている。

食欲を注ぐのは間違いないが、朝にしては少し大きい。食べ切れるのかと心配になるセシリアだが、どうやらそれは無いらしく、良く見れば一口サイズに切り分けられており、女性の片手でも簡単に持てるぐらいの大きさに成っていたのだ。

食べ方も考慮されていると言う事で朝に食べる物としても問題は無いのだろう。

 

 

「・・・のほほんさん。それ食い切れるのか?」

 

「大丈夫~♪前に食べた事あるから~」

 

「何時だ?」

 

「先週だよ。その時りっひー達居なかったからね~」

 

 

そういえばそうだな、と一夏は先週の出来事についてを思い出して食堂で堂々と食事を取る程の余裕が無かったのだったのだと思い出す。先週といえばセシリアとのクラス代表決定戦のあった時だ。あの時は対抗策を考えたりなどをしていたので屋上で軽食で済ませていたのだ。それが今やこうして対戦相手と平然と食事を取っている。

まだセシリアとの代表決定戦から一週間しか経っていないと言うのを改めて実感し、時が経つのが早い物だと老人ボケしたように思いふけていた。

 

「そういやそうだったな・・・」

 

「りっひー何おじいさんみたいな事言ってるの?」

 

「一瞬顔がぼけ老人の様でしたわよ」

 

「・・・アイツのボケが移ったか・・・」

 

「アイツ?」

 

「・・・知り合いの爺さん。最強のな。」

 

 

 

 

 

 

 

「へっきしッ!!」

 

「スネーク、風邪かい?」

 

「いや・・・多分、誰かが噂しているんだろ」

 

「誰かって・・・そんな事あるわけないだろ」

 

「・・・だと良いんだがな」

 

 

 

 

 

そのボケ老人が何処かでくしゃみをしていたが、それは一夏の耳には届かない事。

唯の噂だと信じる彼が、それを言わなかったのかもしれないからだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの朝食を取った三人は揃ってテーブルに着く。テーブルは丸い窪みに入ったかのように弧状のソファの中に入っているかの様にセットされており、複数人で入れば確実に中に入った人物は端側の人に退かせてもらうか、端側の人が食事を終えるまで出られない。それを知ってか知らずか、一夏は先に中に入ってしまい、そのサイドを少女二人に挟まれた。一夏を中心に右隣に本音、反対の左隣にセシリアが座っている状態で、一夏は二人のどちらかが食事を終えない限りは出ることは出来ない。しかし、食べる量からして先にセシリアが終える筈だと一夏は予想しある程度の余裕は持って居た。

 

無論、セシリアは速攻で食べ終えるなど欠片も思っていないのだが。

 

 

 

「~♪」

 

袖で手を隠した本音は、珍しく袖をまくって自分の手を見せた。

余り自分の手を見せない彼女であるので珍しい事なのだと思うが、やっている事は其処まで珍しい事ではない。

本音の手は一般の女子生徒よりも少し小さい。また、見た目も柔らかそうで赤ん坊の手が大きくなった様な感じだと横目で見ていた一夏は思う。

 

その手の主はハニートーストの一切れを口に運ぶと嬉しそうにその一切れをかみ締めている。ほお張ったトーストは良い甘さが口に広がり噛めば噛むほど旨みとが引き出る。

暖かいトーストとその上に塗られた温めのチョコソース。其処にスプーンで乗せられているバニラアイスを更に口に入れれば旨さは更に倍増する。

 

 

「ホント・・・旨そうに食べるな」

 

「高校生というよりも小学生染みているといいますか・・・幼い所がありますしね」

 

 

「~♪」

 

 

 

嬉しそうに食べる本音の姿を見て苦笑する一夏、すると今までの慣れの所為かその目線と聴覚は別の方向に向けられる。それは、何処からか聞こえるテレビからの音声だ。

時間の確認ついでに一般知識を生徒達に身に付けようと導入したテレビは、大画面の液晶で何処からの席でも見えるような場所の壁に付けられていた。特注品の物らしく、それに似合うだけの解像度もあるらしい。お陰で端側に居る生徒も殆ど正面からと同じ色合いで見ることも出来る。

丁度、朝のニュースの時間と言う事でテレビには日本の有名テレビ局の女性キャスターと男性キャスターが今日のニュースを伝えている。日本でも全国に放送する人気のチャンネルらしく、生徒達も食事そっちのけでテレビに食いかかっていたりしており、ニュースと言うよりもキャスター目当てだというのが人目で分かる。

その中で一夏はキャスターはどうでもよく、そのキャスターが報じているニュースについて喰いついていたのだ。

 

 

『次のニュースです。日本時間の今朝、アメリカからコロラド州の上院議員スティーブン・アームストロング氏が予てから予定していた日本との文化交流の為、首都国際空港に到着。

政府官僚の出迎えと共に防衛大臣などと硬い握手を交わし、日米の関係を再開させる一歩を見せてくれました。現在米国内の政府が混乱状態が続き、国際的地位も危ぶまれていると言われている昨今、各国へと米国上院議員が来訪し多国間の関係を取り戻すと共に米国内の結束力などをアピールする為ではないかと思われ、日本はその中でも早い段階の国であるとの事です。

アームストロング氏は総理などとの会合の後、日本国内にある横須賀軍事基地を訪問。更に、そこで行われていたラグビーに参加するなど、今までの上院議員とは一風違ったものを見せてくれました。以前、アームストロング氏は大学生時代にアメリカンフットボールをしており、ポジションは当時と同じクォーターバックを担当。正にアメリカ本場のアメフトを見せつけ、閣僚たちを驚かせました』

 

 

 

「あのオッサン、どこかで見た気が・・・」

 

 

食事の手を止めて一夏はテレビに映る大男の顔を見る。

その男は政治家とは呼べないがっしりとした体格で、スーツ姿であっても日本の政治家の様にスレンダーだったり太り気味だったりとは違う角ばった体格がスーツの下からもはみ出ていた。

 

「アメリカ、コロラド州上院議員、スティーブン・アームストロング。最近になってテレビに出始めた議員の一人ですわね」

 

「内部分裂手前の米政府の中で、一人だけ明確な行動を示している・・・そんな議員だっけか」

 

「それもありますが、何と言っても彼はアメリカの権威の象徴である軍備拡大を明確に発表した最初の一人。それが今から五ヶ月前の事ですから、名前を知らなくても顔ぐらいは知っているでしょう」

 

「つまり、それで日本の基地にご訪問って事か」

 

「意見がごった煮の状態である現在、それを纏める為の先導者。それが功をそうしたのか、今の彼に付いて行くという議員は米国内に彼方此方に居ますわ」

 

「・・・随分詳しいな、セシリア」

 

「ええ。一度近場で見た事ありますから彼を」

 

「本当か・・・一体どうやって?」

 

「以前、彼はイギリスの首都にも来た事があったので、その時に私達が護衛と警備をしたからです」

 

「今をときめく議員様って事か。間近で見た時の印象は?」

 

「・・・ゴリラですわね」

 

「・・・・・・ああ・・・」

 

 

 

 

『日本を見て、私は悲しんだと同時に喜びました。

 

日本の力は、魂は衰えを見せていない。いや、逆に強くなっている。

 

ISと言う新しい物が出現し、それによって技術革新を得たこの国は、今や中国やロシアを追い抜き我がアメリカに追いつこうとしている。その技術の進化は目覚しい物です。

 

しかし、同時に私は悲しい。それによって生じた女尊男卑の波を一番強く被ったのはこの国だ。それによってIS開発に力を入れる余り、本来国を守る組織である自衛隊、自衛軍の力が日に日に弱まっている。これではいずれ、法に従わない無法者(デスペラード)達に国を滅ぼされるのは明白であります!

 

だからこそ!今こそ、日本と共に新たな力を共有し、共に歩んだあの日をもう一度を実現したい!

だからこそ!!私はこの国日本との外交に積極的に取り組む所存であります!!』

 

 

 

「・・・・・・このオッサン・・・なんだか変っつーか・・・」

 

「彼の言っている事は言うなれば力で全てを制する。実力主義者・・・とでも言うのですかね」

 

「・・・見た目に違わぬゴリラって事か」

 

「ああいう人が将来大統領になると言われると、世も末だと思いたくなりますわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくして。

とあるホテルのスイートルームでは一人の男が着替えのカッターシャツに袖を通し、自分用のネクタイを締めつつ一夏達同様のチャンネルのテレビを見ていた。

慣れた手つきでネクタイを締め、長い間ネクタイを使っているのが窺える。

そのテレビには丁度アームストロングが映っており、彼の演説にポツリと呟いた。

 

「・・・まぁ上々と言った所か。表はアレぐらいで丁度良いだろう」

 

締め終えたネクタイから手を離し、男は一人用のソファに体重を掛けるように座り込む。

大柄の体格に似合うような音と共に座り込んだソファはそれに反発するかのように柔らかく、しかししっかりとしている。

高級感のある部屋には相応しい座り心地だ。

 

「しかし、この国は変わらんな。政治家どもは相も変わらずゴマをすって俺たちに、アメリカに縋り付く。其処まで金と権威が欲しいだけの連中だったとは・・・改めて虫唾が走ったよ(・・・・)

 

 

 

「まぁまぁ。其処まで怒らなくても、いずれ奴等はわかる筈だよ。金と権威だけでは自分わ守れはしない。戦えもしない。法と言う囲いの中でしか使えない偽りの剣を振るうだけの奴等にはね」

 

「全くだよ。結局、世の中は力だ、権威ではない。

 

圧倒的カリスマ、統率能力。

 

洞察、指揮能力。

 

そして身体、戦闘能力。

 

これを全て物にした奴は過去に十人と居ない。

英雄であり大罪人、ビッグボスはその中の数少ない一人だ」

 

「・・・ビッグボスにでも成りたいの?」

 

「まさか。俺にはカリスマも統率力もない。だが代わりに力と政治力はある。それで穴埋めは幾らでもできる」

 

「ま、そうだねー後しばらくの辛抱をすれば君が願っていた戦争って奴をおっ始められるしね。それまでは穴埋めでどうにでもなるよ」

 

「・・・ところで、そっちはどうなっている?ココに居ると言う事は報告の一つでもしに来たのだろ?」

 

「あ、そうだった。すっかり私もここの座り心地に忘れそうだったよ」

 

「おいおい頼むぞ。数年後に予定している作戦の成否はお前の手に掛かっているんだ」

 

「えへへ・・・ま。とりあえずCNT込みでの改修は可能。ISにもそれを搭載できるって事実が立証された事だし、当分は同時並行で進めるって所だね」

 

「試作機は出来たのか?」

 

「まだだよーん。だってまだ調整に手間取っているからねー・・・ねー?」

 

「・・・・・・。」

 

 

「・・・まぁいい。それより、サイボーグ兵士についてだが」

 

「ああそっちはライン乗ってるからそれなりの数は出来る筈だよ。ご注文どおりのバリエーションでもあるしね」

 

「最高だよお前はやっぱり。聞いたときには疑いたくなったが・・・それがまるで嘘の様だ」

 

「へっへーん!だって君が私に最高の設備と資金を用意してくれたから十分な実験と開発が出来たんだし、結局は私のお陰って事だねー!」

 

「それ俺を褒めてないよね」

 

「それに。私だってサシで君と殺り合ったら絶対に死ぬって事は分かってるし、そんなしょーもない理由で死にたくも無いからね」

 

「・・・取り合えず、理解はしてくれていると言う事が分かって嬉しいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これからも頼むよ。 篠ノ之束」

 

「ふっふーん!この天才束さんに任せなさいって!!」

 

 




オマケ。

IS学園、原作との違い。

ISの物語のメイン舞台であるIS学園。其処は原作とは少し違ったりしている所が多々あります。
まず、今回語られた食堂での大型テレビ。テレビに夢中でゴハンを食べるのを忘れるというのも考えられましたが、新しい情報を知るという機会では朝食などの食事時間で食べながら覚える事もできるので導入しました。
ちなみにチャンネル変更は可能ですが、普段は食堂の人が管理しています。
ラウンジは生徒達が雑談をしたり生徒会などが話し合いをしたりと様々な事に使用する場所で、以前にあった一夏のクラス代表祝いもココで行ったり出来ると多目的室的役割を持っています。ちなみに多目的室は別にあります。
そして、現在作中では語られていませんが、教師の許可が下りれば使用可能となる射撃演習所も完備。練習用の銃が数丁ある程度ですが、ちゃんと使えます。

そして何より一夏が潜入したなぞの場所。それが今後作中で明かされる事になる・・・かも?
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