IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第十二話です。

いよいよセカンド幼馴染登場。
ですが同時に新たな問題も浮上。
朴念仁の単細胞を通り越して今や彼恨みの対象ですね。今更書いて思いましたが。
そしてそして、一応ファーストだってそんじょそこ等の女子学生とは訳が違うんだよって面も今回見られます。
大人っつーよりもなんか・・・スンマセン。刀はしまってください箒さん。

と言う事でいよいよセカンドこと鈴の登場。ンでもって大問題の始まり。
果てさて、一夏はどうするのでしょうか?(すっとぼけ)

では、誤字脱字・駄文はご愛嬌。
それでも良いという方は
第十二話、お楽しみ下さい。

・修正・
話数タイトルが間違えてました。
スンマセンっした!!


N0.12 「幼馴染」

 

 

《 ドゴッ!! 》

 

 

 

 

 

わずかな一瞬の事だ。

鉛の様に重い音と共にその一撃は振り下ろされた。

 

その鉛の様な重い音を出したのは、大きく硬い鈍器でもましてや鉄でもない。

 

骨。人の骨が響かせた一撃。たった一回の、それでも強力な一撃の『拳』。

 

 

硬くもなければ弱くも無い、その骨はまだ成長途上の少女の骨。

 

 

その重い一撃を入れたのは他でもない、一人の少女なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故なったのか。話は今から一時間程前にさかのぼる。

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏とセシリア、そして本音は朝の朝食を済ませた後、教室へと向っていた。

一通り一日の授業の用意は出来ている為、直ぐに部屋に戻って荷物だけを纏めれば直ぐに向える事が可能だ。

 

流石に量が量だったので本音が少し手間取っていたが、本人はそこまで苦しい表情ではなく、寧ろ好んでのんびりと食べていたのだ。

二人もそこまで急ぎの用も無いので彼女と一緒だったが、一夏は時折周囲からの目線に当てられ、余り居心地は良くなかった。

未だ変わらない目線を受けるというのは流石に堪えるが、その中には興味の目というのもあり、何よりもその中に混じって殺気だった気配も感じられていたのだ。

誰もが彼を納得している、認めていると言う訳ではない。少なからず彼を認めない者も居るだろう。

しかし、彼に対しての強みというのを彼女たちは持ち合わせていないと言うのも事実。

故に彼を敵視する者達は陰口を叩くかそうやって睨みを利かせると言う事しか出来ない。

 

 

「・・・・・・。」

 

「余りいい気分では無かったようですわね」

 

「・・・まぁな。俺を歓迎していない奴等なんてこの学園にだけじゃなくてもゴマンと居る。けど、流石にただ見ているだけっていうのに・・・俺は腹が立っているだけだ」

 

「・・・同感ですわ。けど、ああ言う輩は隙あらば数で攻めてきますわよ」

 

「いいさ。その時はその時・・・正当防衛だ」

 

 

そう。気に入らない一夏を消す為には彼女達も手段を選ばないだろう。

もし一瞬でも彼女達が好機と見ればその時に攻める筈、ならその隙を素直に受け入れ正当防衛をするだけでも正当防衛と言い分だけは出来る。

場所が学園と言うだけあって色々と言い訳も出来る筈だ。

 

「余り過剰な正当防衛は駄目ですわよ」

 

「・・・善処する」

 

が、セシリアの言うとおり自分たちの力と言うのは一般人のそれを上回っている。

場合によっては骨を折ることだって可能だ。

つまり力加減を間違えれば相手を傷つける事もあると言う事、加減を調整して怪我無く事を済まさねば正当防衛も過剰防衛となってしまうのだ。

それを注意された一夏は苦い顔を浮かべて小さく唸る。考えが図星だったらしい。

 

しかし、どちらかと言えばセシリアに言われたくも無い事だ。

セシリア自身も過剰防衛と言うべき事を行ったのだ。相手は自分の幼馴染。それも本人が自分のその時の怪我の姿を見せたくないと言う程の有様にするほどのだ。

先程も楯無と一戦交えかけていた事もあり、正当防衛については余り彼女に言われたくないなと感じ、彼はため息を地面に向けて吐くのだった。

 

 

 

 

「本音。」

 

すると、何処からか彼女こと布仏本音を呼ぶ声何処からかする。

本音はその声に気づくと何処か何処かとくるくると回転するように周囲を見回して声の主を探す。しかし、彼女がそれに気づいたのはほぼ一回転を終えて先程まで向いていた正面に再び顔と目線を向けた時だ。

 

「何処を見ている。私は前に居たぞ」

 

「あ、おねーちゃーん♪」

 

「虚さん、どうしたんですか?」

 

珍しく立っていたのは本音の姉である虚。彼女は一夏達の前に立って本音を呼んでいたのだ。本人は別に何処に隠れていた分けでもなかったが、本音はあちら此方に目を向けていたので気づけなかったのだろう。

 

「少しその子に用事があってな。借りても良いか?」

 

「ええ。俺たちは別に」

 

「そうか。スマンな。本音、ちょっとコッチに・・・」

 

「うにゅ?」

 

抜けた声を出して本音はコミカルに首をかしげる。

何処までもマイペースな彼女だが、どうやら虚が重要な話があるというのを察して彼女の後をトコトコと音を立ててついて行った。

まるで高校生の彼女に対し本音は小学生の妹の様な光景だ。

その光景に一夏は「どう言う事だ?」とアイコンタクトでセシリアに語りかけるが、彼女も何の事やらと自分も分からないというポーズと共に首を横に振った。

 

 

 

 

 

「本音。今週末、また『向こう』に行くぞ」

 

話を先に切り出したのは呼び出した本人である虚。

場所を変え、人気の少ない階段付近で話をしており、ココには多少人は通るが其処までの人数が通るというのは先ず無い。それに場所と時間から考えてあまり遠くの人気の無い場所に行くのも効率的ではないのであえてココにしたと言う事だ。

 

一方の本音は周りを特に気には留めず、虚の言った『向こう』と言う言葉に思い当たる場所を思い出し、それを知った上で彼女に聞き返した。

 

「呼ばれたの?」

 

「ああ。お嬢様・・・いや、生徒会長達もだ」

 

「ふーん・・・いいよ~」

 

「スマンな。急な予定を入れて」

 

「ううん。私もあそこ行くの好きだからいいよ~♪」

 

「・・・本当に物好きだなお前は」

 

「えへへ・・・」

 

 

どうやら、虚の言う『向こう』と言う場所は彼女が好む所であるらしく、彼女もその時の表情は子供が好きな物を買ってもらう時の様に明るい表情だったのだ。

逆に虚はそこまで好むというほどの場所でもないらしく、呆れてため息を吐いていた。

 

 

 

 

 

 

その頃。一夏とセシリアの二人は先に教室に向っていたのだが、教室の手前で一夏はある事を思い出す。

それは今日の授業で使う教材を忘れてきたのだ。

それも一夏は余り読む気の無い電話帳と間違えるほどの分厚さの教材だ。

 

「・・・しまった・・・忘れ物した・・・」

 

「あら。一体何をお忘れに?」

 

「・・・電話帳並みのデカさのIS基礎知識の参考書」

 

「・・・ご災難を通り越して仕方ないとしか言えませんわね」

 

「って言うか第一何であんな鈍器を今更使うんだ・・・?」

 

「言ってませんでしたか?前にあの参考書に間違いが多数あったので其処の修正を加えて再度授業をすると」

 

「何時の時代の日本だよ・・・第二次大戦直後の日本じゃねーんだぞ・・・」

 

「ですが、それは今日しか使わないと言っていましたし、自己申告すれば誰かに借りられるのでは?」

 

あの人(呂布)がそれを許すとでも?」

 

「・・・・・・。」

 

最早一騎当千の三国志の英雄と言われても可笑しくないスペックを持つ彼女に対し、一夏も流石に逆らうのは躊躇う。最悪命が幾つあっても足りないと彼が思う程だ。

その彼女の異名を示す逸話は学園内に幾つもある。

その中でも特にふざけた生徒に対しては所持している出席簿で叩き、それだけで相手の意識を飛ばしたり。

IS用の武器を軽々と持って爆○破なるどこぞの半妖の犬の技を使ったり(後の事は嘘の可能性が高いが)

果ては忍者の如く俊敏に、かつ壁を走ったりそれが時速60キロ(一般乗用車のスピード)と同じだったりと、ほぼ嘘八百の出鱈目過ぎる話が幾つもある。

だが、その中には信頼性の高い話も幾つかあると言われており、最初の出席簿は別に出来ても可笑しくないだろう。

 

そんな嘘と真が織り交ざった彼女の噂を思い出し、セシリアは「それもそうか」と納得の表情でいたのだ。

 

 

「走ってもそう時間は掛からない。先に行っててくれ」

 

「・・・仕方ないですわね。了解です」

 

時間はそう掛からない。一夏はセシリアに先に教室に行くように言い、自分は元来た道を辿って忘れ物を取りに行こうとする。

セシリアは彼が忘れ物で戻る事に少し残念そうな顔をしていたが、後々の事を考え彼女はそれを了承。

一夏はその返事を聞くと一目散に元来た道へと走り出し、忘れ物を取りに戻った。

 

 

「・・・さて・・・」

 

残されたセシリアはどこか寂しさが湧き出ていたが、彼が直ぐに戻ると言う事を信じて先に教室に向っていく。

彼と共に居るときは嬉しい。彼の傍に居ると自然と心が安らぎを感じたのだ。

今まで感じた事のないその安らぎにセシリアは時折自分の心の奥底に眠っていた本心の欠片が浮き出て、彼の前にだけその本心を見せていた。

その本心は、セシリアが従軍時代に封じ込めていた感情。

本当に嬉しく、本当に安らぐ。子供の様な純粋な感情の数々が数年の封印からもう解かれ様としていたのだ。

 

 

「・・・・・・。」

 

 

それとは別に、彼を見ていると胸が熱くなる。

心臓の鼓動が早くなり発熱でもないのに顔が赤くなる。

 

これは何だ。

 

その感情を理解できない彼女は自分で自分に問うが、その答えは出ることは無い。

自分でさもその感覚を理解していないのだから。

 

 

「・・・・・・先を急ぐとしましょう」

 

 

 

 

 

 

何時もと変わらない教室。

入れば何か変わるかと思うが、実際は特に変化は無い。

しかし、小さな点で言えばその変化は幾つもある。

 

「あ、おはようセシリア」

 

「おはよう御座います、相川さん」

 

「あれ、本音は一緒じゃないの?」

 

「残念ながら、後で来ると思いますわ」

 

 

これも一つの変化。入学初日まで他の生徒達とはギスギスとしていたが、今ではそのわだかまりは解消され、普通に挨拶をしたり言葉を交わしたりする。

特に本音と共に居る事の多い相川清香や鷹月静寂とはそれなりの関係で他の生徒よりも距離感は近い。最も言葉を交わす事の多い人物と言っても良いだろう。

 

 

 

 

だが、変化の全てが良い事と言う訳でもない。

悪化すると言う事もまた変化の一つだ。

 

 

「・・・アイツは一緒ではないのか?」

 

「・・・残念ながら、忘れ物を取りに猛ダッシュで戻りましたわよ篠ノ之さん」

 

 

鋭く尖った目つきは明らかな敵意の印。まるで獲物を狙い威嚇する獣の様な目を、その眼差しをセシリアに突きつけるのは、ようやく完治した箒だ。

あの出来事以来、彼女はセシリアに一方的な敵意を向けており、特に目立った事はしては居ないがそれが逆にセシリアにとっては少しの気がかりとなっていた。

狙う機会をじっくりと待っているのか、それとも何か策を考えての事か。それとも、何も出来ないからただジッと睨むだけか。

焦りと言う程の事ではないが、彼女は一応にも一夏の関係者、しかもあのISの生みの母である『篠ノ之束』の妹だ。

無策と言うのはさすがに無いだろう。

 

そんな僅かな警戒心を持ち、セシリアは変わらずの性格で振る舞い箒の冷たい声の質問に何事も無かったかのように返していた。

敵意は無い。それを示す為の返答の方法だ。

 

確かにセシリアは警戒心を持ってはいるが、別に彼女に敵意があるわけではない。

最初は寧ろ邪魔だと思っていたぐらいだが、今は謝罪の意を込めて普通に接しようとしている。

それが彼女に届いていればの話ではあるのだが。

 

 

「・・・そうか・・・」

 

「ご心配なさらずとも直ぐに来る筈ですわ。それに時間もまだありますから」

 

「・・・・・・。」

 

 

「・・・相も変わらずの反応だね」

 

「そうね。二人共何かあったのかしら?」

 

外野メンバーは二人に一体何があったのかと気にはなっていたが、そのから先は何か不可侵領域の様な気がしてならず中々聞くことは出来なかった。

もし入れば何があるのか分からない。そんな恐怖とのラインが敷かれているようで、そのラインを踏み越える勇気がとてもではないが持てなかったのだ。

 

 

「そ、そういえばさ。今日二組に転校生が来るって話、知ってる?」

 

「転校生?こんな時期にか?」

 

「多分遅れてやって来たって感じだと思うよ」

 

場の空気が悪いと思い、相川は話題を変えて話を始める。

それには先程までにらみ合いの様な状態だった二人もその話題に喰いつき話に乗る。

ナイスタイミングと横にいた鷹月が胸を撫で下ろし、相川はそのまま話題をその転校生についてに変えたのだ。

 

「何でも、風の噂ではその転校生は中国の代表候補生なんだって」

 

「中国の・・・距離的に近くないか?別に特別遅れる理由などは無いと思うが・・・」

 

「・・・・・・。」

 

「さぁ・・・私も其処までは知らないし・・・向こうの事情がなんかじゃないのかな?」

 

「お国の事情って奴だね。私達が関知する所じゃないし、別に気にしなくてもいいんじゃないかな?逆に知っていたらなんか言われそうだし・・・」

 

無神経。とまでは行かないが、セシリアは彼女達の話を聞き考え事をしていたが、それは直ぐに終わったそうで納得がいったのか小さく息を吐いた。

 

 

「けど、ある意味丁度のタイミングだね。そろそろ時期的にクラス対抗戦の時期だし」

 

「そうか・・・確かウチがまだ決まっていなかったから・・・」

 

「そ。クラス対抗戦は各クラスの代表者で争うって形式だからウチのセシリアとエメリッヒ君での決定戦で少し間が開いていたの。だからその為の期間調整も終えてそろそろって聞いたけど」

 

「勝てばデザートフリーパス・・・これはやるしかないでしょ!」

 

「そうそう!しかも今の所一年での専用機はウチと四組だけ。四組を倒せば後は楽勝間違いナシよ!!」

 

「・・・流石にそれは過信すぎないか?幾ら専用機が一組と四組にしか無いからと言って、他のクラスが楽勝と言う訳も・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう。世の中そんなに甘くないわよ。それに、その情報はもう古いしね」

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

「うぇ?」

 

「誰だ?」

 

唐突に教室に響く声に集まっていた彼女達は周囲を見回す。

その中でセシリアは一人分かっていたかのように目だけをずらし、その声の主をぴたりと当て、彼女の目線に気づいた箒はセシリアと同じ目線の方に目をやった。

其処には見た事のない少女が一人立っていたのだ。

 

「フン。やっぱ何処も考えは同じって訳ね。けど世の中そう上手くは行かないのよ」

 

「えっ・・・誰?」

 

「見た事ない顔だけど、もしかして・・・」

 

唐突に現れた少女は、皮肉を込めた言い方で呆気に取られる彼女達に言う。

見たことのない顔と言うのは当然で、つい昨日の夜遅くに彼女は到着したのだ。

彼女の登場にどよめく生徒達だが箒は一瞬彼女が自分の目を見た事に気づき、警戒する。

そしてセシリアは一人納得していたようで他の生徒達を置いていくように彼女に聞き返した。

 

 

「・・・なるほど。貴方が中国の代表候補生ですか」

 

 

「・・・ええ。私は凰鈴音。中国の代表候補生よ」

 

「お前が・・・」

 

「その顔、アンタが篠ノ之箒ね。んで・・・」

 

 

「イギリス代表候補、セシリア・オルコットですわ。Ms.凰」

 

「よろしく・・・とは言わないわよ。『お嬢様』」

 

「・・・なるほど。別に私について何を言われようが私は何も言いませんわ。守備範囲でしたらの話ですがね」

 

 

一瞬にして二人の間の空気が一変した。

今、二人の間には見えない銃と剣が構えられ、臨戦態勢の様だったのだ。

 

鈴は完全にセシリアに喧嘩を売るような言葉で挑発して先制攻撃をしかけるが、セシリアは特にその言葉に怒りを感じず、鈴に忠告するように返答する。

どうやらイギリスに関してではなく彼女に侮辱を言えば何らかの反応をすると考えたからだろう。しかし、セシリアは其処までヤワではない。

罵倒を何度も言われたお陰である程度の耐性は持っており、鈴の挑発はセシリアにとっては皮肉にも侮辱の範囲にも入らない。

彼女の先制攻撃は唯の遊び同然の言葉と認識されたのだ。

 

「・・・随分ご立派ね。けど聞いたわよ?日本の生徒にイギリスの代表候補である貴方が負けたってね」

 

「・・・・・・。」

 

 

「ちょっ・・・」

 

「あー・・・それね・・・」

 

 

 

「・・・仕方ないですわよ、あの一戦は。相手が悪かっただけですから」

 

「・・・アンタそれ本気で言ってんの?たかが戦争の一度も経験していないこの国に負けて、アンタは『相手が悪かった』だけで済ましていいの?」

 

「っ・・・!」

 

「事実ですから仕方ないですわ。それに・・・情報が古いのはどうやら貴方も・・・いえ、貴方の方ですわね。凰さん」

 

「・・・は?」

 

 

威圧が加わる。セシリアの返しに鈴は眉を動かし睨むようにして彼女に言う。

今の一言はどうやら鈴の癇に障ったらしく、機嫌の良さそうな鈴の表情は一変して鋭く尖った睨みの表情になった。その一変と表情に、威圧感のあるその一言に誰もが息を飲む。

自分たちと大差ない歳の少女があれだけの威圧感を出せるのかと驚くのもあるがその威圧感に圧され言葉の一つも出なかったのだ。

 

だが、その中で唯一人、セシリアは余裕の態度で鈴に話していた。

一度言葉を交わした箒は薄々感じた。

 

言葉での戦いは彼女の独壇場だと。

 

 

 

 

「まぁ。そのことはどうでもいいですわ」

 

「っ・・・アンタ、一体どういう」

 

「今度は・・・私から一つ、貴方に質問させてもらいますわ」

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

「正直、中国から(・・・・)代表候補生が来るとは思っても居ませんでしたから」

 

「・・・何が言いたいのよアンタ」

 

「・・・では率直にお聞きします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方はどちら(・・・)の中国の出身ですの?」

 

 

「ッ!!」

 

 

「中国・・・そうか!」

 

「えっ・・・中国は中国じゃないの?」

 

セシリアの問いに鈴は無言ではあったが、その言葉と共に乗せられてきた感情に鈴は察し、焦りを僅かに見せていた。

そして、セシリアの言葉でようやく彼女の余裕の理由を理解した箒は納得し、鷹月は自分が知っている知識から考えて中国といえば中国ではないのか、『中華人民共和国』ではないのかと疑問に持つ。

それは当然かと今の日本人の疎さに改めて気づいた箒は鷹月に説明するように言う。

 

「確かに、世間は当然の事だと思い余り大事にはならなかったからな。そこ等辺の知識が疎くても不思議ではない」

 

「アレ、なんか私達って蚊帳の外・・・?」

 

「・・・一応説明はしよう。中国は中国でも、今の国としては中国は『二つ(・・)』ある」

 

「そう。北と南、二つの中国。現在、中国というのは二つに分裂しているのです」

 

 

 

中国が分裂した理由。それは実に様々な理由が複雑に絡み合っている。

しかし、それを解き簡単に説明するならば、中国分裂は幾つかの原因があると言う事が分かる。

 

その主な原因は『差別』・『文化』・『主義』。

この三つが主な原因となり、現在中国は二つ存在する。

 

制度・主義が全て一新した『中華連合』またの名を『南中国』。

対し、制度・主義は全て変わらずの方が誰もが知る『中華人民共和国』。そちらを現在は『北中国』と言う。

 

 

「・・・つまり。現在中国と言う名の国は二つあり、南北に分断されているという状態なんだ」

 

「あー・・・つまり、一口に中国と言えばどっちの中国か分からないと・・・」

 

「そう。だから別に他意はありません。私は貴方がどちらの中国から来たのか。それが知りたいだけですわ」

 

「・・・・・・。」

 

 

他意は無い。本当にそうだろうか。セシリアの表情に鈴は其処まで信じられるなどとは思って居なかった。顔が語っていたと言う訳ではないが、セシリアの表情に裏がある気がしてならなかったからであり、何より彼女の勘がそう言ってならなかったのだ。

今はセシリアに風が向いている為、下手な事をすれば弱みに付け込まれかねない。

其処までは考えていなかったが、何となしに何か自分が不利な状況に陥るかもしれないと感じていた。

だからと言って秘密だというのも・・・と間を置いて考えた鈴は決断を決めた。

 

 

 

「・・・どちらでもないわ」

 

 

 

「何・・・?」

 

「どちらでも・・・と言うと・・・」

 

 

「ええ。私の生まれは南北どちらでもないわ。生まれは香港よ」

 

鈴はありのままを語った。特に隠す意味も無いのかもしれない事であるし、もしかしたら逆転のカードになるやもしれない。だから、鈴はありまま、真実を語ったのだ。

 

 

「香港・・・なるほどな。確かにあそことマカオは特別行政区だったな」

 

「えっ?特別行政区って何・・・?」

 

「日本風にいえば自治区。つまり、その名の通り香港には本国とは別に行政機関が置かれていて、独自の制度や法律がある言うなれば国内の独立国。国としては本国の一部ではあるが自治権があるから其処だけは別の機関が管理するんだ」

 

「そう。香港とマカオは歴史上訳アリの場所で昔は欧州諸国の植民地になっていたの。その二箇所が返還されて特別行政区になった。お陰で問題は色々あるけどね」

 

「・・・・・・。」

 

 

「しかし、香港とはな。歴史を辿れば皮肉か・・・」

 

「そうね。けど正直私自身はアンタ(セシリア)に恨みは無いから別に気にはしないけど」

 

「それはありがとう御座いますわ。私とて昔の人達の恨みつらみや欲望をここまで持ってくる気なんてサラサラ無いですから」

 

「同感ね。そんな昔の問題引っ張り出すほどの事をする位なら国に反乱した方がマシよ」

 

腹の探りあいと言うよりも見えない戦争が二人の間に巻き起こっている感じであった。

睨みを利かせ、挑発的な態度を崩さない鈴。

仮面を被ったかのように言葉の一つ一つに何か裏を感じさせるセシリア。

その二人がぶつかり合って発生した空気に、外部で見ていた箒達は言葉も出せず、微動すらも難しかった。

彼女達にもその二人の間から放たれるプレッシャーの様な物に圧されていたからだ。

 

 

(・・・迂闊に手を出せばどうなるか・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし。その静寂はある事を切っ掛けに崩れる。

それは誰もが予想し得なかった事であり、結果であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ガラッ》

 

 

 

 

「あ、エメリッヒ君」

 

「ッ・・・!」

 

 

 

 

「ういッス。どうし・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那。二人はその声と後姿に絶望する。

 

一夏は彼女の後姿を見て『どうしてお前が』と。

 

そして。鈴は『どうしてこの声が』と。

 

 

 

 

 

「・・・・・・えっ・・・どうして・・・」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

信じられないと思いつつも鈴はゆっくりと後ろへと首を回して振り返る。

浮つき震えた声には、小さく息を飲む音もした。

 

それは彼も同じだ。息を飲み、額から汗を一つ流してただジッと棒の様に突っ立っている。

動けないのだ。其処に彼も信じたくない現実が居たのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・一夏?」

 

 

 

ゆっくりと振り向いた鈴は唯一言震えた声そう呟いた。

間違いは無かった。黒い髪にやや整った顔つき。数年前と殆ど変化は無い。

変わったとすれば目つきが少し鋭くなった所だけか、と。

 

その背丈、その髪。間違いないと確信した一夏は、自分の目を疑う鈴とは違い妙に落ち着いた顔をしていた。

彼女のトレードマークとも言えるツインテールとそのリボンには見覚えがあったのだからだ。それも数年前にもなるとつい最近の様に覚えている。

 

 

間違いない。彼・彼女だと二人は確信した。

 

 

そして、一夏は鈴に対し何か伝えようと小さく口を開いた。

迷いもあったが、兎に角伝えなくてはと。伝えなければならないと。

開いた口からは最初は何も聞こえなかったが、後から其処から声が発せられようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが。間髪入れずに鈴は言葉よりも、考えよりも先に身体が動いた。

まるで鎖のたがが外れたかの様に勢い良く身体だけが動き、自分の右手が、右腕が動いて一夏の胸倉を掴んでいた。

 

其処からは身体は為すがままに動き、胸倉を掴んだ右腕と身体が彼を居た場所とは反対側に向けて半身を捻って彼の身体を投げるように振る。

そして、そこから右手を離せば後は彼は投げられた動きの流れに身を任せて一歩二歩と足をふら付かせた。頭での考えが身体に行き渡らず、身体が自然と流れに身を任せていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。突き飛ばした右手に渾身の力を込め、鈴は迷い無くその拳を一夏にへと殴りつけたのだった。




後書き。

なーんか一夏が凄い恨みの対象になってしまいましたね・・・
後、オリジナルの設定として鈴の出身を香港にしました。
ちょっと後の話も考えての事なのでそこ等辺はご了承を。
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