IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第十四話です。

更新が遅れてしまい、申し訳ありません・・・
ちょっと製作に手間取りました・・・
資料を探し、グータラしていたので(おい)後時間も少なくて遅れました。言い訳ですみません・・・
ですがやっとMGS的な要素がココから戻る筈です・・・!・・・多分!

今回はいよいよVS鈴戦ですが・・・例によって例による事です。

皆!丸太(鉄のロケット弾を撃つやつ)は持ったか!?

では、誤字脱字・駄文はご愛嬌。
それでも良いと言う方は
第十四話、お楽しみ下さい。



No.14 「来襲」

事の始めは一夏と鈴の再開。

そこから過去の出来事が原因で騒動が起こってしまった。

騒動は無事治まったが、今度は楯無から鈴との対戦を言い渡される。

果たして一夏はどうなるのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って言うのが事のあらましで・・・」

 

「だからって態々紙芝居をしなくても・・・」

 

そんなボケとツッコミをする二人は、現在アリーナのピット内に居る。

楯無が自作の紙芝居を用意し何処から出したのかそれを使って事のあらましを説明。

事情は分かったがどうやってそんなのを出したんだと突っ込む虚に対し、楯無は変わらずのスマイルで誤魔化そうとしていた。

しかし、その彼女を無視して虚は事の原因である『彼』が居る場所に目をやる。

 

 

彼は自身の機体の前でアドバイザーとも呼べる『彼女』から相手の機体の情報を聞いている最中だった。

両者共に真剣な眼差しで話し合っており、彼女の手にはタブレット端末が持たれていた。

恐らくそれを活用して相手の情報を詳しく伝えているのだろう。

 

 

 

 

 

楯無から唐突に告げられたクラス代表同士によるクラス対抗戦。

それが今から二日前の事である。

元からクラス対抗戦は鈴が二組に入る時点で決まっていたらしく、話自体も前々から決まっていたらしい。ただ問題として一組のクラス代表が決まっていなかったという点が挙げられていたが、其処は一夏が代表となったために解消。結果問題が解決した事によりクラス対抗戦が行われることになったと言う事だ。

突然の事に一夏も当然驚き、拒否もした。が、既に話が纏まっている事と他に選択肢が無いと聞かされ、先に退路を断たされていた一夏は渋々承諾をしたのだ。

 

 

「・・・話としては無理矢理すぎますし・・・何故彼に拒否権を言わなかったんでしょう?相手との関係から考えて、このままぶつかり合ったら最悪彼は唯では済みませんよ」

 

「・・・そこはあの人の頭が考えているのでしょ。大方、僕が私が悪かったよって漫画的シナリオが」

 

「・・・それで済めば誰も苦労はしないのだが・・・流石に楽観的過ぎはしませんか?」

 

「そうね。彼女だって事情は分かって居る筈。いえ、寧ろ分かっている。だからって、これは流石に軽率すぎるわね」

 

「一体・・・彼女は何を考えているのでしょうか・・・」

 

 

(・・・本当に彼女は彼を殺す気?だったら始めからこんな事をする気はしない筈・・・)

 

楯無は扇子を口元に置き、一人考える。彼女もこの対抗戦には異議がある。幾ら何でもこれは無理矢理すぎはしないかと。

二日前の一夏と鈴の関係を見れば、今の鈴には一夏に対する恨みつらみの負の感情が殆どだ。それを今ぶつければどうなるのか。

それが結果最悪の事態になるのかもしれないというのは、あの場に居た者たちからすれば目に見えている。

更に、あの場には千冬自身も居た。そして鈴を叩いた。

たった二日前の、この出来事を忘れるほど彼女とて馬鹿でもあるまい。

 

では一体何故?

考える為の要素が少ないこの状況では彼女達も何を考えて千冬がこんな事をしたのかさえ分からない。

未だ憶測の域の答えを探し、楯無も準備を進める彼へと目を向けるのだった。

 

 

 

 

 

その目を向けられている彼こと、一夏はアドバイザーと言って現れたセシリアから相手機体の『甲龍』について説明を聞かされていた。

詳細な情報を頭に入れ、行動一つ一つについて頭の中で対応策を考える一夏は、その中でも最も厄介な武装である『衝撃砲』については彼女から注意されていた。

 

「・・・つまり。厄介なのはその衝撃砲だな」

 

「ええ。空気圧縮による『見えない弾丸』。ですが弾が空気である以上、周囲の空気に変化がある筈です。そこが回避などの秘訣ですかね」

 

「・・・一応対応策はあるし、何とかするさ」

 

相手の機体にある衝撃砲が最も注意すべき点だと覚え、それについても一応の対策を頭の隅に置く。見えない弾丸となるとその対策が通じるかどうか、まして使えるかどうかでさえも怪しい。

だから考えた対策自体を使えるとは思わず、それにその場でのアレンジを加えて対応する。それが彼の考えだ。

その場での対応策が同じ物で何度も通用するのはゲームだけの事だ。

アレンジをするなり別の方法を見つけるなりしなければ相手の手の内を全て読んだとは言えない。

もしゲームと同じ考えでいればどうなるかと聞かれれば、答えは一つだ。

『逆にその手を利用される』。

同じ策を何度も使えば相手もその策に対しての対策を立てる。つまりは堂々巡りと言う事になるのだ。

 

 

「所持している火器はハンドガンとグレネードランチャー。武器としては申し分ないですわね」

 

「ああ。グレネードランチャーは単発の火力もあるし携行もしやすい。ロケットランチャーよりかは使い勝手が良いからな。それに・・・」

 

「・・・?」

 

(後はサニー達からのを待つか・・・それに、アイツには悪いけど・・・)

 

もう一つの策は既にある。その策がうまく使えるかは自分の立ち回りと相手の状態次第だ。

それが出来れば使わなくて済めばいいが、と心配事をする一夏はその心配事の原因である相手の居るであろう反対側のピットへと目線をズラすのだった。

 

「・・・・・・。」

 

 

 

その彼の姿をしっかりと監視カメラが捕らえている場所。管制室では、その彼等と反対側で準備を進めている彼女の姿を見ている者達が居た。

一人はモニターの前に座り、異常が無いかとチェックしつつ一夏と鈴の姿を見て不安そうな顔をする真那。その後ろには指揮官の様に仁王立ちで幾つもある管制室のモニターを見る千冬。そして、最後にその中にあるたった一つの一夏側のピット内の映像を映すモニターを見つめる箒。

 

この三人がその場に居て既に十分近くは経つが、未だにまともな会話と言うのが無く、気まずい空気になっていた。気まずい空気というのになれない真那と箒は自然と手に汗がにじみ始め、恐怖というよりも圧迫感を感じていたのでそれを見かねた真那は、遂に千冬に対し思っていた事を訊くのだった。

 

「・・・あの・・・織斑先生」

 

「何でしょうか、山田先生?」

 

「こんな事、今更言うのも難だと思うんですが・・・」

 

「・・・・・・。」

 

 

「・・・いいんですか?幾らなんでも、この対抗戦は少し無理があるっていうか・・・」

 

「・・・・・・。」

 

「対戦相手同士が劣悪な関係の今の状態でやれば、確実にどちらかが本気で攻撃したりって言いますか・・・最悪、どちらがが大怪我をすると思うんです」

 

「・・・。」

 

胸の内を明かす真那は上手く説明は出来なかったが、この対抗戦に異議がある人物の一人だ。彼女の耳にも一夏と鈴のいざこざの事も入ってきていたから、この事を尋ねるのは自然な事だ。

彼女が言いにくいと言うよりも他の言葉では表せなかった事。それは、最悪どちらかが死ぬのではと言うのが千冬に訊く事の究極的な意味である。

 

彼女が結局は何が聞きたいのか、それを理解していた千冬は息を吐くとその問いについて答えた。

 

 

「・・・確かに、山田先生が述べたい事は分かります。ですが、だからです」

 

「え・・・?」

 

「私もあの娘についてはそれなりの付き合いがあるので分かります。あれは対話だけで納得する様なタチじゃない。一応、それなりの事はしましたが・・・アレは典型的な拳で語り合うようなタイプです」

 

「・・・拳って・・・」

 

「要は言葉よりも身体で分かるタイプですよ」

 

「・・・・・・。」

 

無責任とも取れる彼女の言葉に、真那は開いた口が塞がらなかった。

幾らなんでもと思う彼女だがそれは千冬だって分かっている。

自分が言った事が無責任とも、場合によっては最悪の事になるかもしれないのだと、ソレぐらいは彼女も分かっていた。だが、それだけしか出来なかったのだ。

最悪の事態を招くかもしれないこの手札だが、同時に彼女からすれば起死回生の一枚にもなるのだ。使わずにいるより、使うのが彼女の考え。だから彼女はその手を使った。

 

 

(ま・・・一応手は打ったが、どう転ぶか・・・)

 

 

 

「っ!エメリッヒ機、射出を確認。同時に凰機も出撃しました」

 

「始まるか・・・」

 

 

 

(・・・一夏!)

 

 

 

 

 

 

カタパルトから射出された一夏は、もう慣れきった感覚で機体を動かしスラスターで急停止を行う。足の底部に小型のスラスター二基を搭載し、急停止などに使用する事が出来る。

現代のISではスラスターなどは余り意味をなさないと思われるが、急停止や飛行の微調整の為には重宝する物だ。

そのスラスターで停止すると、一夏は正面に顔と目を向ける。

 

 

黒い赤の色をメインカラーとした『中国』の代表候補生専用機『甲龍』。

その機体を操る鈴の姿が今彼の目の前に移っていたのだ。

データ通り、肩部辺りに浮遊式の固定砲台が二基浮いている。あれが衝撃砲だろう。

 

目線を衝撃砲にズラす一夏は両側のを見終えたと同時に鈴からの専用回線での通信が送られてきたのに気づき、それに応答する。

 

「・・・逃げずに来たわね」

 

「・・・まぁな」

 

スピーカーからは冷たいが怒気が微小混じっているであろう声が聞こえる。

声に関しては特に思わず、一夏は簡潔に彼女の言葉に答える。

逃げれば唯では済まないし、元より彼も逃げる気は毛頭ない。今更そんな事を聞くのかと思う程だが、今の彼女からすればそう思っても可笑しくは無い。

 

「・・・もう何も言わないわ。アンタの事も責めはしない」

 

 

しかし、二の句に出てきたのは責めずの言葉だ。意外とは言わないが、彼女がこうもアッサリと許すのには一夏も違和感を感じた。だが、それは直ぐに消えた。それを直ぐに理解したからだ。

許したのではない。

 

言葉は元より不要だからだ。

 

 

「・・・そうか」

 

 

一夏もただ一言そう言って話を切り上げさせる。それは彼が鈴の言葉の本当の意味を理解したからだ。本当は彼女だって言いたい事は山ほどある。だが、それを上手く言葉だけでは説明できない。

 

だからこうするしかない。行動で示すしかない。

 

 

互いにそれを理解していたからか、交わす言葉は自然と消えていく。

まるで以心伝心ではないか。

二人を良く知る彼女は、歓声の中で二人の交わす言葉がなくなっているのに気づき、それが互いに理解したからだと自分も理解したのだ。

 

 

 

(一夏。アンタがこの二年で何があったのかは知らない。けどね、私だって許せ無い事だってあったの。だから・・・)

 

 

(鈴の気持ちも分かっていた。けど、俺は多分それを避けていたんだ。アイツの気持ちがそれでいいならって言い訳をして。逃げていたんだ。俺はアイツから。だから・・・!)

 

 

互いにそれぞれの思いを胸にしまい、得物に力を込める。

二人の得物はどちらも剣で力を込める手には汗がにじみ出ているのを感じる。

いや、にじみ出ているんだ。二人の気は手に持つ剣にではなく正面に立つ相手に向けられていたので、手に持つ得物への感覚は僅かな物だ。

敵意と戦意。似て非なる物を相手に向け、戦いの意思を示すその意思によって他の事には気が向けられない状態だったからだ。

 

二人の持つ得物にはゆっくりと反射的に力が込められる。互いの緊張感と興奮が手に、身体に現れていたからだ。『負けたくない』、『負ける気は無い』。

 

 

 

 

その二人の興奮が最高潮になった瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那。戦いのブザーが鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《 ギィンッ!! 》

 

一瞬の内に『瞬時加速』を繰り出した一夏は鈴に接近し、刀を横なぎに叩き込む。

その一瞬の事に意表を突かれた鈴はコンマの世界での出遅れに気づき、反射意識に従って剣を振り上げ、それが功を奏したか一夏の刀と鈴の青竜刀がぶつかり合い火花を散らした。

太刀筋が定まった攻撃と防御にと急ぎで振り下ろされた剣では鈴の青竜刀が弾かれるのは目に見えているが、半歩下がった鈴は反動を少なくして防御に成功する。

 

彼女の目の前では互いの得物が火花を散らし、金切り声を挙げていた。

甲高い音に鈴は妙に安心感を感じホッとしていたが、それでも彼女が置かれる状況が不味いのには変わりない。今は下がらねばと焦る鈴はその金切り声が遠くなり始めると同時にもう一本の青竜刀を振るい、一夏にあえて回避させる。そして刀の振りから続けて一回転し、その回転の流れを勢いに加えて急降下する。

 

(危ない・・・今のは千冬さんの『瞬時加速』・・・アイツ、もう物にしていたなんて・・・)

 

(反射的に剣で防御か。接近戦では骨が折れそうだな・・・だが。コッチには銃もある!)

 

 

一夏も鈴の後を追って降下し、刀を構えて再度接近する。

先に着地していた鈴の方は既に対応の準備が出来ていたのか、今度は失敗しまいと左手の剣で一夏に対し反撃をする。

 

刀と剣が再び交わり、火花が散る。しかし、鈴が右手に持つもう一本の剣を振るい一夏に攻撃したので、それを今更の様に思い出した一夏は間一髪の距離で剣を回避する。

今のは本当に危うかったと額に汗を垂らす彼は、回避するとジャンプとスラスターを使い距離を取る。ジャンプだけでも距離は取れるが相手が接近戦重視の機体の為、間合いは取れるだけ取ろうと言う事だ。

 

 

(得物が二本と一本じゃ流石に覆しにくいな。それに相手は専用機。衝撃砲だってまだ隠しているんだ。迂闊には出られないな・・・)

 

(スラスターまで使って距離を取るのは剣を恐れてね。んでもって十分な間合いで衝撃砲に備える・・・聞いていたけど、アイツの機体どんだけ動きが滑らかなのよ・・・これじゃあ衝撃砲が当たるかどうかでさえ怪しいわよ)

 

 

一夏に対して情報が開示された様に鈴にも一定の情報は開示されていた。でなければフェアではないし、鈴も其処までの余裕がある筈も無い。一夏に鈴の機体の武装情報が開示された様に鈴には一夏の機体の武器と全体デザインが開示されている。

当然その時に彼の機体が既存のよりも細身で人間の肉体に近いような物になっているというのは一目で分かっていた。

しかし、IS知識は豊富に持って居た鈴でもCNT筋繊維の事については疎かったのでその繊維が使われているというのは分からなかった。

 

 

「・・・手数よりも隙見せで勝負とするか」

 

「衝撃砲を使う気配は無いな。って事は幾分か余裕があるって事か・・・?」

 

瞬間、続いて動き始めたのは鈴だ。

彼女も接近戦が一夏の機体と刀からして危険であるのには承知しているが、それでも今は出来ないと駄目な理由がある。

 

 

「っ・・・旋回してからの接近か!」

 

「一夏さんが私との一戦の時にも使った戦法ですわね」

 

正面から行くのは愚の骨頂と、どこかで過激な事を敵味方問わず言う桜のオペレーターが居たが、そこは割愛されてもらう。

それが正に正論だ。鈴も一夏が以前やった事と同じく、旋回してから急停止し其処から接近と言う戦法に出たのだ。

目で自分を追わせ、急停止すれば目は自分がそのまま旋回し続けると意識してしまう。

急停止しその間に自分が相手の懐に接近すれば相手はいつの間にか移動したのだと焦ってしまう。

 

《 ガキンッ! 》

 

 

「青竜刀の連結。仕掛けるか・・・!」

 

千冬の予想は当たり、鈴は青竜刀を旋回しつつ連結させた。連結さえすれば攻撃時に刀に弾かれると言う事はまず無い。剣二本分の重さが相手の手に伸し掛かり逆に弾かれてしまうからだ。

仕掛ける用意は出来た。鈴は急停止し足を一夏にと向けて接近の準備をする。

急停止と同時に片足に力を入れ、強制的に方向転換し支え代わりとなっていた足で地面を蹴り飛ばす。瞬間加速までにないでしろ直線でのダッシュは出来る。

 

「来るか!」

 

「行くわよ・・・!」

 

連結した青竜刀を構え接近する鈴に一夏は刀を構えて応戦の用意をする。

彼女が旋回した時に急停止して接近するというのはある程度予想がついていたので僅かに目線をズラしただけで鈴が接近するのに気づいていた。

しかし実際正面からとなると間合いの取り方が難しいのもあり、一夏は迂闊には動けなかった。

それならば防御して鈴を自分と彼女の間合いに入らせるしかない。彼女の間合いにも入る事になるが、同時に彼の間合いにも入る事になる。後は剣での攻撃の速さに関してなら一夏の刀の方が連結した青竜刀よりも速い。間合いと先手を取れれば確実に一撃は入る。

 

 

「勝負・・・!」

 

「来い・・・!」

 

刹那、鈴は斜めから切り落とす様に青竜刀を振り下ろす。

彼女が斜めからの攻撃を仕掛けると分かると、一夏は青竜刀を防ぐ為に刀を構えて『シノギ』の態勢を取る。刀を横に構え相手の隙が見えると其処からのカウンターも入れられる構えで雷電が身に付けた技術の一つでもある。

 

 

シノギの構えを取り、一夏は鈴の青竜刀での攻撃を防ぐ。

二本分の青竜刀の重さが伸し掛かり高周波ブレードでも耐えれるかと思えるほどだが、ブレードは其処までヤワではない。彼の刀はしっかりと青竜刀二本を受け止めていた。

高周波によって火花が散り、交わる剣と刀からは金切り声が上がる。

何度も力を入れなおす度に火花が激しく飛び散り、彼等の視覚を一瞬光だけの世界にする。

今なら無防備な相手に一撃を入れられる。だが、一夏は両手で青竜刀を押さえるので精一杯。鈴も青竜刀二本の重さを片手の出力だけで持てる自身が無いので迂闊に動けない。

 

 

 

「・・・獲った・・・!」

 

「何っ・・・!?」

 

 

 

だがそれでいい。鈴は八重歯のありそうな歯を見せて余裕の表情になる。

にやけた彼女に一夏はどう言う事だと思うが、彼女の性格を考えて「まさか」の文字が頭に浮かび上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《 ガシャッ! 》

 

金属音と共に浮遊していた砲台の一部が可動。其処から砲門らしきものが姿を現し、照準を一夏へと向ける。その間僅か数秒の時の中で鈴は最大のチャンスであり賭けに出たのだ。

一夏にとっては、まさかの予想はココに来て大当たりが出る。だが、その当たりは彼にとっては最悪の当たりだ。

 

「ッ!あの近さで衝撃砲など使えば、アイツだって!?」

 

「衝撃砲自体は空気圧縮した弾丸だ。ビームや実弾と違って巻き添えの可能性はゼロだ」

 

「それじゃあ・・・!」

 

(ああ、不味いぞ・・・今のあの近さじゃ一夏にモロだ!)

 

 

 

 

 

「貰ったッ!!」

 

「くっ!!」

 

だが、一夏とてそう易々と攻撃を受けるほど馬鹿でもない。

重心をワザと後ろにずらし、鈴との鍔迫り合いを強制的に終了させようとする。

彼から重心をずらせば鈴は同時に青竜刀の重さで倒れ、照準にもブレが生じる筈。その隙に瞬時加速で逃げ切れればと重心をズラすと同時に一夏は瞬時加速を準備した。そして。

 

(今だっ!!)

 

刀と剣の間から火花が消え、二人の得物が離れたのが確認されると一夏は直ぐに瞬時加速を発動する。意表を突かれた鈴は反応が僅かに遅れる筈だ。その隙に距離を取れるはずだと信じていた。

一方で衝撃砲を発射しようとして一瞬の隙を見せた鈴は一夏による重心のズレで前かがみに倒れて行きそうになっていた。彼の突然の行動に鈴も混乱したが、彼が瞬時加速で逃げようとするというのは予想がついていたので、賭け半分で無理矢理衝撃砲を発射したのだ。

 

「っ・・・させるかッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

直後、アリーナのフィールドで突如爆発が起こる。

突然の爆発音に誰もが驚き、奇声を上げる者も少なからず居た。

その突然の事に一体何があったのかと驚きつつも冷静な態度を崩さなかった千冬は、その爆発の原因を真那に訊く。

彼女の近くに居た箒もどうなっているのかと彼女に尋ねたかった様だ。

 

「何が起こったんですか、先生!」

 

「わかりませ・・・いえ!どうやら、エメリッヒ君がアリーナの壁に衝突したようで、そのスピードで壁にめり込んだ様です!」

 

「めり込んだって・・・一夏が!?」

 

「・・・なるほど。恐らく、衝撃砲を凰が無理矢理発射してそれがアイツの瞬時加速と重なって姿勢を崩してしまったんだ。それでバランスが崩れたアイツは・・・」

 

「壁にめり込んだ・・・けど、そんな事が・・・」

 

「瞬時加速によって生じた方向は一方向。其処に衝撃砲の空気が加わって圧縮した空気がアイツに掠ったか何かで姿勢が崩れたのだろう。もしくは、アイツが衝撃砲に当たって姿勢を崩したか。いずれにせよ、大ダメージは免れないだろうな」

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っつー・・・また壁かよ・・・」

 

瓦礫を押しのけ、めり込んだ機体と共に抜け出そうとする一夏。

衝撃砲の風が僅かに掠った感覚があったかと思えば、刹那に彼の姿勢は突如として崩れた。それによって一夏は回転しながら壁に激突するという格闘漫画染みた状態で壁に激突したのだ。幸い、背中から壁に当たったので多少は耐えれはしたが、それでも彼と機体に対するダメージは大きな物だ。

 

セシリアの時といい、今回の鈴との戦いと言い、一夏は壁に好かれているのかと思いたくなる程で、内心ではため息を吐きたい一心だ。

 

「シールドエネルギーは・・・良かった、そこまでは減ってないか。武器は近くにあるし不幸中の幸いって奴か。にしても、衝撃砲だけで其処までコイツ(白式)の姿勢を崩せるか・・・?」

 

 

思えばと一夏は瓦礫から顔を出して今の状況となった原因を疑う。

確かに衝撃砲が発射されそれが一夏に掠ったのは確かだが、それだけでこの機体の姿勢を崩すほどになるのだろうかと。

一夏の機体はCNT筋繊維で出来た部分もあり、咄嗟の事でも姿勢は立て直せる筈、それが衝撃砲両方あわせ二門の攻撃でもだ。ましてスラスターも可動している様子があったので少なくとも跳ばされて壁に激突と言うのは不自然に彼は思ったのだ。

 

 

『運よくかわせた・・・って訳でも無いわね。どう?見えない弾丸をほぼゼロ距離で掠った感想は』

 

「痛いとかの適当な感想はさておき・・・どうしてこうなったのかを知りたいな、俺は」

 

鈴からの通信に答え一夏は余裕の声で話すが、未だに壁まで飛ばされた理由が分からない為に言葉は少し慎重に選んでいた。普通なら『何故だ』と尋ねる所だろうが、そこはあえて伏せておく。

 

 

 

「どうして・・・ね。薄々は勘付いてるんじゃない?」

 

『・・・・・・。』

 

 

一夏も薄々と幾つかの考えは既に上がっていた。

その中で彼が最も可能性があると思った予想で、考える中では飛びぬけて信頼性もあるし筋も通る答え。

それには彼も考えたくなかったが現実的にありえる事だと自分に言い聞かせ、自然と唾を飲み込んでいた。そうまでも彼が嫌と思う現実。答えとは何か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簡単な事。衝撃砲が倍になればいいのだ。

 

 

 

「衝撃砲の砲門が・・・!?」

 

「各二門!?と言う事は・・・」

 

「計四門の衝撃砲の砲門があると言う事か」

 

 

一夏も疑うべきだったと思うが、刹那の事でしかも危機的状況でもあった為に見落としていたのだろう。しかし、そのシンプルな理由を目の前に改めて言葉が出ず、信じたくても信じたくないと顔が語っていた。

管制室では自分も一夏と同じ場所に立っているかの様に驚く箒は、そのシンプルな理由であるがあまりに単純すぎる事に目では納得しているが頭の中では納得がいくか否かが分かれている状態となっていた。

彼女も、いや誰もがそのシンプルさに何も言葉が出なかったのだ。

 

 

「・・・ま。当然の反応ね。元々衝撃砲は各一門の計二問だったけど、このご時世よ。火力強化優先で元は追加装備として予定されていたパーツを増設してはめ込んだの。お陰でエネルギー消費は馬鹿になんないけど、火力は高いわよ」

 

「火力っつーよりもパンチとかの方が適切じゃねーか?」

 

「どちらでも。ただ・・・アンタにこの四つの見えない弾を避けきれる自信があるかは私は知りたいけど」

 

「・・・・・・。」

 

通信越しに鈴は一夏に言いつつ、ゆっくりと倒れ掛かっていた身体を起こしていく。

一応今も彼にだけにしか聞こえない回線での通信を行っている為、傍からみれば信じられないと思う事も話を聞けば再度納得する事だ。

話を聞き、一夏は眉を下げる。彼の表情は納得はしたが同時に複雑な心境を見せる顔だ。

 

何が言いたいかを纏めればつまり、纏めて言えば甲龍も元々戦争に使う為に開発された機体だと言う事だ。戦争経済が続いていた近年なら設計開発時にその事も視野に入れて開発されたとしても何ら可笑しくはない。

加えて中国の状態を考えれば尚更だ。

 

 

だが、今の彼にそんな事を悠長に考える暇などは無い。

今は目の前の事に集中せねばと一夏は再び刀を取ると、その刀を握る手に力を込める。

手を握るときよりも強く、そして固く。まるで負けたくないと言うよりも『楽しみたい』と言う快楽が溢れ出んとするような力みだ。

 

 

(衝撃砲は一度に四発。方向は一方向だから瞬時加速で避けられる事も出来なくは無い。だか、それはあくまで弾が見えればの話だ。四発の空気の弾が何処に来るのかまでは分からない。まして圧縮した空気が四つとなれば・・・正面から見れば前面全てが衝撃砲の弾って思えるな・・・)

 

衝撃砲による周囲の空気への干渉で、周りの空気も衝撃砲と同じ方向に移動する。

人が走って急停止すると走っていた時の風が自分を追い越す空気と同じ。周りの空気が衝撃砲に纏われるのだ。

 

(単純だからこそ、攻略も難しいが・・・手が無いわけではない。アイツもそれには勘付いて居る筈だ)

 

ならば衝撃砲に対する対応策は無いのかと言われれば無い訳でもない。だが、その方法も単純であるが故に成功率も少ないし、直ぐに対策を取られてしまう事だ。

 

その対策は二つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なら・・・)

 

 

「移動しつつの攻撃、ヒット&ランか・・・」

 

 

「やられる前に殺れ・・・か」

 

 

 

いずれにせよ、一夏が先手を取らなければその二つは実行できない。

前者はダメージ覚悟でなら問題はないが、後者であれば尚の事。後からでは言葉の意味も無い。

だが、それをあのスピードと奇襲性のある攻撃で取れるのかと聞かれれば、一夏はどうも言えないのが答えだ。

 

 

「なら・・・ダメージ覚悟でいくか・・・」

 

 

 

「やられる前にって考えは流石に無理があるわ。恐らく彼女は彼が瞬時加速で正面以外のいずれかに行く事を分かっている」

 

「逆に意表を突いての正面はどうでしょうか?大ダメージは確定ですが、運がよければ衝撃砲を仕えなくしますし」

 

「それで済めばこの戦いはとっくに終わっているわよ、虚ちゃん」

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

結論は出た。一夏は刀を構え、瞬間加速の用意に入る。

鈴も一夏の構えから攻撃の準備に入ったと気づき青竜刀の連結を解除する。

手数で防御を強くする為だ。

 

一夏に残された道は左右もしくは上からの攻撃。正面からは確実にやられるのは目に見えているので彼に残された鈴への接近方法はこれが全てだ。

どこに行くかと目を鋭く、彼から離さない。

 

勝負はこの一瞬。

その合図として一夏は瞬時加速を繰り出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筈だった。

 

 

 

 

「・・・・・・?」

 

 

「・・・?」

 

 

しかし。一夏は突如として瞬時加速を取りやめ、刀の構えも緩める。

そのイキナリの事に鈴も一体どうしたのかと驚いていたが、彼の作戦ではないのかと思い警戒は続けていた。

だが、それは一夏にとっては意味の無い事だ。一夏は完全に鈴をそっちのけで感じる『違和感』に集中していたのだから。

一夏は刀を左手に持つと右手で地面にへと手を置き、その姿勢でぴたりと止まってしまう。

何をし始めたのだと誰もがざわめいていたがその中でも一夏は地面に対して意識を集中し、何かを感じ取ろうとしていたのだ。

 

 

「・・・彼・・・止まっちゃいましたね?」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・あの、織斑先生?」

 

「・・・・・・。」

 

千冬も何か違和感と言うよりも胸騒ぎを感じ、おもむろに自分の心臓に手を置く。

その姿を見て真那は何がどうなっているのかと分かっていない状況で何をしているのか、何を考えているのかと彼と彼女に聞きたいが、とても聞けるような状態ではなかった。その為、彼女は焦らした様に二人の顔を行ったり来たりを繰り返していた。

 

「・・・・・・?」

 

「・・・ど、どうしたんですか織斑先生まで・・・?」

 

 

焦らされている感じが拭えない真那を見てなのか箒も何かを感じ取る。

胸騒ぎがすると言うよりも一夏と同じ違和感を感じるといった方で自分の身体の神経を研ぎ澄ましその違和感の根幹を探すが、その違和感の根は意外にも早く見つかり、箒はそれに対しての違和感を今度は覚えた。

 

「・・・地面?」

 

 

 

 

「・・・音・・・何か聞こえませんか?」

 

「音?何もきこ・・・」

 

「・・・・・・いえ。何かが振動している・・・」

 

ピットでもセシリアが空気を伝い何かの振動する音が聞こえてくるのに対して耳を澄ませる。虚も彼女に言われてからは分からなかったが、楯無が口にして改めて耳を済ませると不意に何か違和感のある音を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海風の音に紛れ、何か野太い様な音が聞こえる。

まるで鉛の様なものが重く感じる空気を切り裂いているかのように、聞いている自分たちもその重量感を感じる。

そして、その音がゆっくりと、しかし確実に近づき段々とその音が近づくと何かが揺れる。

何が揺れているのだといわれれば、唯一つ。地面だ。

 

 

 

 

《 カタッ・・・カタタタタ・・・ 》

 

 

 

「・・・・・・デカイ・・・」

 

「? アンタ何を言って・・・」

 

 

 

『不味い・・・これは・・・!?』

 

「オタコン・・・?」

 

『大変だ、イチカ!』

 

 

 

 

 

 

「えっ・・・何コレ・・・!?」

 

「どうかしましたか、山田先生?」

 

 

 

 

『今、衛星からの映像と今の状況から掛け合わせたんだけど・・・』

 

「大型の質量が一つ・・・この学園に向って急速接近しています・・・!!」

 

『イチカ、その質量の正体は・・・・・・!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那。一瞬の内に、海が膨れ上がり其処から黒い何かが顔を出す。

質量は顔を出すだけではなく、まるで生き物の様に飛び出し、ジャンプした。

 

大質量だった。水しぶきと共に一瞬にしてアリーナの一部は黒く塗りつぶされ、まるで太陽が雲に覆われたかのようだったが、雲に覆われたというより誰かに見下ろされているというのだ正しい。

 

上に居るのが雲と言う物ではなく。『生き物の姿をした何か』だったからだ。

 

 

 

「・・・何・・・アレ・・・・・・」

 

 

「アレは・・・・・・」

 

 

「嘘だろ・・・」

 

 

 

 

 

誰もが驚愕した。誰もが驚き、声が出なかった。

その一瞬が野生では命取りになると知らなかったからではない。

その姿に、その恐ろしさに誰もが言葉を失ったしまったからだ。

 

 

 

 

生き物の姿をした機械。人と兵器を繋ぐ金属の歯車。

 

 

人はそれをこう呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『メタルギア』と。

 

 

 

 

 

「・・・RAY(・・・)・・・!!」

 

 




後書き。

MGSと言っても潜入だけが全てではないですからね。
強制戦闘やアラートも醍醐味(デストロイ)の一つです。

え?これだけで済むのか?

済む訳ないですよ大将~
ちょっとあの平和ボケした少女達に色々とねー・・・
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