IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第十七話です!

・・・大変です。長いです。今回だけで終わりませんでした。
どういうわけかRAY戦が四編となってしまい、私の目の前は真っ暗寸前です。
次回でどうにか終わらせます!!つか終わりたいです!!(切実)

後、そろそろ彼女についてのタグを出すべきですかね?
今回のでそう思ってしまいました。ええ。彼女です。

では、今回はRAY戦の中盤その二です。本当にそろそろ終わらないと皆さんに怒られそうです・・・

では・・・誤字脱字・駄文はご愛嬌。
それでも良いと言う方は
第十七話お楽しみ下さい。


No.17 「Rules of Nature」

 

 

 

 

 

 

 

 

一対一の戦い。

それは等しく互いの実力が明確に示される戦いで今の己が全て現れる一時の事。

互いの力・技・技術・知略・戦略。あらゆる能力全てが等しく発揮され、それらが勝敗を左右する。

置かれている状況、相手の情報、武器、行動パターン、それらを全て統合した次の相手の一手の予測。

 

イレギュラーの事態を撤した状況であれば尚の事。後は自分の全てを出し切るだけだ。

 

 

 

「・・・行くぞ!」

 

 

 

刹那。再戦の合図を踏み切り、彼は眼前に立ちはだかる巨体の相手に向かう。

それを合図に背中を合わせていた二人も地面を蹴り、有象無象の中へと飛び込んでいく。

 

互いに相手は存在する。

器大型の無人機と異型の無人兵。

 

ただ一度も敗走も諦めも考えず、唯無情に戦う者達にその身を投じる彼等に、敗北の文字はない。

 

あるのは唯、『斬』の文字のみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

《 ガシャッ!! 》

 

 

ミサイルレンジに入った一夏の姿を見てRAYのAIは一夏に対しAISとクラスター爆弾、そして六連装ミサイルの発射口全てから一斉射を行う。

クラスターで足止めして残るAISと六連装ミサイルでダメージを与える気だ。

 

だが、ミサイルを全弾撃ち出した時点で一夏の次の手は用意されている。

クラスターで足止めされるのならその前にRAYの懐に入ればいいだけの事。

瞬時加速で一気にRAYの元へと接近する彼に対し、クラスターなどのミサイルは全て空しく地面に着弾したのだった。

 

「先ずは・・・!」

 

 

一夏が瞬時加速で辿り着いたのはRAYの直下ではなくギリギリRAYが彼を見落とせるぐらいの位置。其処までしか今の状態では難しかったようで、一夏も届かなかった事に対し舌打ちをする。

 

(仕方ない。後はチャフで時間を稼ぐなりしないと・・・!)

 

 

RAYが精密なAIの塊であるならば少なからずチャフは通じる筈。左手にチャフを持ってRAYの足下から再び機銃か口に攻撃すると計画していた彼だが、RAYのAIもそれを何度も許すほど馬鹿ではない。

 

《 -----------!!! 》

 

「ッ!!」

 

 

彼がチャフを投げる前にRAYが先手を打ち、頭部を突きつけてきたのだ。恐らくRAYの頭突きだろう。だが、その巨体と頭部での頭突きでは最早頭突きと言うよりも鳥が餌を啄ばむかの様にも見えてしまう。

 

 

「ッッ・・・!!」

 

 

頭突き、と言うべき攻撃を見て咄嗟にチャフを中止した一夏は両手で刀を持ち、RAYの攻撃を防ぐ。雷電から教わった技で彼は『シノギ』と呼んでいる。

凌ぎと言うだけあって守りには適した構えで両手で刀を押さえ、敵の攻撃を受け止める事が出来る技で今の一夏ならRAYの頭突きも難なく防げた。

だが、それでも手に鉄の塊を押し付けられたので骨の髄に至るまでその衝撃が伝わってきていた。普通の人間ならまず骨が折れるだけでは済まないだろう。

 

RAYの頭突きを凌ぎきった一夏の前ではRAYが頭を壁にぶつけたかのように跳ね返って半歩たじろいでいた。大きなチャンスだと見た一夏はその隙に脚部に力を入れてジャンプする。

 

 

『RAYの装甲はブレードで切れる筈だ!そのままぶった切ってしまえ!!』

 

何時に無くテンションの高い相棒の声を耳に入れつつも一夏はRAYの頭部に辿り着く。

先ほどの頭突きの反動で体勢がまだ整っていないらしく、動きが止まっているようになっていた。

そのチャンスを逃すまいと一夏は刀を構え、RAYの装甲を数回斬撃した。

彼の言うとおり、奥までは届かないがRAYの装甲はまるで板の様に簡単に切断できる。

 

「おおおおおッ!!」

 

ダメ押しに蹴りを入れられ、更に後ろに後ずさったRAYはアリーナの観客席に足を取られて倒れていく。子供が後ろにこけた様に両手を回し、姿勢を保とうとしていた片足は宙に浮いた様に挙げられていてRAYは無人機としては見っとも無い、腹を出した犬の様に倒れたのだ。

 

「よしっ!」

 

『今のでRAYは当分起き上がれない!今の内に機銃を破壊するんだ!』

 

RAYの機銃は両肩に一丁ずつ取り付けられているので、今の所RAYに爆発による内部へとダメージを与えるのはそれと口しかない。

だが、今の転倒で機銃が下敷きになってしまっているのではと思う一夏だが、それはそれで好都合だ。

一夏は倒れたRAYの機銃などの装備を破壊しに接近する。

 

しかし。

 

 

《 ガシャン! 》

 

 

「ッ!?」

 

RAYの大腿部から更に機銃が顔を出し、その照準を一夏に向ける。

更に二丁の機銃に驚愕はしたが、逆に好都合だとも言えた一夏は眉を動かすと狙いをその機銃に向ける。機銃があると言う事は破壊すればダメージを与えられると言う事、つまり攻撃可能な個所が増えたと言う事だ。

 

「・・・なら好都合だ!!」

 

どの道RAYに攻撃を仕掛けるのには変わりない。一夏は狙いを肩の機銃から大腿部の機銃にへと狙いを変更し、接近する。

二丁の機銃が彼を迎撃せんと弾をバラ撒くが、弾が纏まっておらず、ブレる銃身によって弾は至る所にへと飛び散るような感じで弾が弾き出されていた。

 

 

多少の被弾は覚悟で一夏はRAYの大腿部へと肉薄していく。

機体のあちこちで銃弾が掠ったり当たったりする音が聞こえるが特に気にするほどでもない。

 

 

機銃から僅かに軌道を逸らし、一夏は機銃の真横に着く。ココからなら機銃の攻撃は間に合わない。間髪を入れずに一夏は機銃に狙いを集中。残るもう一つの機銃を破壊する為、一夏は今目の前にある機銃にへと横なぎに斬りかかる。その一撃を入れた直後、一夏は構えを解いて飛翔する。切り裂いたのは弾薬が詰められた場所なので誘爆でダメージがあるからで、その他にも長居すれば無人機の横槍を入れられるかもしれないので、それを防ぐ為でもある。

 

 

「後は!」

 

ジャンプをして距離を機銃から直ぐに離れ、残るもう一方の機銃を破壊する為に一夏は反対側に向うが、その為に機体を飛ばして行くと言う訳ではない。飛んでいけば妨害の攻撃もあるかもしれないし、何より機銃への攻撃がスラスターによるブレーキ等で遅れてしまい、反撃を受ける可能性が高いからだ。

 

ならばどうするか。足がある。人が猿人の時から活用してきた足。つまり。

 

 

RAYの腹部の上を走るのだ。

ただ走ると言うよりかは足で地面を蹴飛ばし、小さくジャンプする。所謂スキップに似たような動きの事でRAYの腹部の上を走る。ISである為、足が地面につく回数は通常よりもかなり少ない。

神速の如くRAYの腹部の上を走った一夏の目の前は既に反対側に辿り着いていた。

 

 

 

 

「獲った・・・!」

 

そのまま倒れるように機銃のある場所へと落ちる。

だが唯落ちるわけではない。彼の右手に持つ刀は瞬時に『突き』の構えを取っていたのだ。

貫通力が高く、リーチは『斬る』よりも長い。

後は力の入れ加減さえ問題なければ・・・

 

 

 

 

《 ガッ!! 》

 

「よしっ!!」

 

 

難なく貫き通すのは問題ない。

突き出した刀は容易く機銃へと突き刺さり、根元深くにまで入り込んでいた。

深く突き刺さった刀によって機銃が爆発するのにはそうかからない。一夏は体勢の立て直しと機銃の爆発に巻き込まれないために瞬時加速で距離を取った。

 

「これで機銃はあの肩の一丁だけ。後はRAY自体がコケてるし、その間に口にグレネードを打ち込めば問題は・・・」

 

 

しかし、そう都合よく行かないのが戦いだ。

 

それは一夏は眼前で起こった出来事に思わず面食らい、口を半開きにして唖然とした顔をしたからだ。

 

 

「ッ・・・!?」

 

『なっ・・・!?』

 

 

起き上がることの出来なかったRAYは背部のミサイルをわざと発射し、無理矢理自身の身体を起こしたのだ。爆発の反動と衝撃による勢いで無理矢理にもその巨体を起こしたのには本当にAIが行っているのかと疑いたくなる行動だったのだ。

AIならばフリーズするか果ての無い再計算をするかだと思われるが、このRAYのAIはそれとは違う、異常ともいえる行動に出た。

 

結果としてRAYは巨体を起こす事に成功はしたが、代わりに背部のミサイル発射管は全て使用不可となった。至近距離でのミサイルに巻き込まれたからである。

再び二足の足を地面につけたRAYは自身と言う脅威が再び現れたのを象徴するかのように咆哮する。

 

「・・・脳筋かよ、あのRAY・・・」

 

『常識外れもいい所だ・・・無茶苦茶すぎるよ』

 

「ああ・・・どうする?」

 

『こうなったら奴の足を完全にとは行かないけど止めるしかない。足だ。足の装甲を狙うんだ!』

 

「・・・分かった!」

 

 

一夏は次の狙いをオタコンが進言した足に定める。足の部分は未だ一度も攻撃をしていないので無傷の状態ではあるが、ダメージを与える方法が無いと言う訳ではない。

先ほどの頭部の装甲同様に高周波ブレードでなら表面の装甲は切り裂けるはず。皮を剥けば後は中にある実が姿を表す。其処からの攻撃でも本体自体にダメージは大きいだろう。

 

衝撃で無理矢理自身を立ち直らせたRAYは目標である一夏にゴーグルアイを向ける。その彼を移すモニターには機能が停止していたり一部の機能を残して後は損傷、脱落していたりと本体のダメージが表示されていた。

しかし、AIはその状態でも戦闘継続を決定。一部脱落したり停止したシステムを確認し残ったシステムでOSを再構築を行い、戦闘を可能な状態にする。

 

 

《 ------------!!!! 》

 

 

「っ・・・まだ元気とはな・・・!」

 

その止まらない勢いを示すかのごとく、RAYは膝部のクラスター爆弾を発射すると共に牽制の機銃を掃射。一夏の動きを徹底的に止めようとするが、彼も同じ何度も似た手を使われれば身体の方から慣れてくる。加えて機銃の弾幕は相変わらずバラバラな為、さして脅威とも言えないし、クラスターは爆発する前に破壊すればいいので右手にコルトを持ち正確な発砲で確実に撃ち落していく。

ISと機体OSの恩恵で射撃補正が高く、ブレも少ない。更に半オートエイムの為に捕捉も容易で、そのお陰もあってか一夏は一発で一つのクラスター爆弾の爆破に成功。

しかし、二発目は間に合わず空中で爆破してしまい子弾が頭から降り注いだのだが、一発だけであった為に飛び散った子弾の数は少なく、避けるのも容易だった。

 

「足獲った・・・」

 

 

クラスターと機銃の嵐を突破した一夏の前には僅かに動きを止めたRAYが立つ。

相手は機械であるので動きもそれなりの隙が見える筈で、しかも足下となれば踏みつけが精々限界だろう。その踏み付けをガードするか回避すればRAYは完全に棒立ちも同然の状況となる。

チャンスと見た一夏は一気に接近していき、RAYの左足へと向っていく。もう阻む物はない。そう思っていた彼だが、AIも其処まで甘くは無かった。

 

 

『ッ!!上だ!』

 

「えっ、足は・・・って!?」

 

オタコンの上への警告に一夏は足の攻撃はまだなのではと思っていたが、その振り下ろされる何かの影を見て声を裏返す。足の様な丸い影ではない、長くも丸々とした一本の影。

振り下ろしたのはRAYの太い腕だったからだ。

 

反応が間に合ったからか、一夏はスラスターを吹かし機体の軌道を変更させ間一髪で振り下ろされた腕を避ける。下ろされた腕には一機のスライダーと月光が巻き込まれており、まるで人が蚊かハエを叩き潰したかのように巻き込まれた二体も原型を殆どとどめる事無く押し潰され、月光に至っては人で言う血液となるオイルなどをぶちまけていた。

見てて気持ちの良い物でもないし、余り関心するものでもない。

だが、ただ言えるのはRAYの腕に潰されたら一巻の終わりと言う事。それを間一髪で回避した一夏は反応が速かったからでオタコンの警告もあって助かったのだ。

言葉にはしなかったが、彼も咄嗟に叫んだ相棒に感謝の気持ちを感じていたが今はそんな事を言う暇はない。

 

「あっぶね・・・」

 

彼の肌が一瞬の間に体温を下げ、心拍が異常に速くなる。恐怖を感じたと同時に安心感が身体への意識を取り戻させ彼からは身体だけが寒気があるような感覚となっていた。

だが、まだ生きていると感じているだけマシだろう。一歩遅ければ彼も月光やスライダーの様に潰されていたのだ。

それを考えるだけで彼の顔は青ざめ、間に合ってよかったと心の底から思っていた彼はその命を無駄にしまいとRAYへと接近。高周波ブレードを構えて大木の様に太い足にしなやかな細い刀を沈み込ませていき、鉄の足に何度も斬撃を加えていった。

一夏が足へと攻撃していると、通信でオタコンがRAYのデータを分析しソレを元に装甲の薄い個所を彼に伝えた。その場所は聞けば誰もが納得する様な場所だ。

 

『! 足首だ、足首の装甲を斬ってくれ!』

 

「足首?」

 

『ああ。其処の装甲が足の辺りでは一番薄い。隙を見てバラバラにするんだ!』

 

「なるほど・・・!」

 

足首は文字通り足の首となる個所であり、自由に動かす為には装甲を削がなければならない。だから必然的にその部分は薄くなる。考えて見れば当然の事だが、正直RAYの見た目では何処が人間での部位に当たるのかは分からない個所が多い。

今回の足首と言うのは恐らく足の少し上の色が違う部分の事を言っているのだろう。

其処は水中移動の時には一本の足となるので間接部の筈。

 

 

直後に一夏の居た場所にへとRAYの足が踏み落とされる。

無駄だと分かっていてもAIがそれが最適だと判断し、機体がソレに従って落としたが、結果は同じ。一夏は難なく回避し、隙を見て上昇。RAYの足の装甲を斬撃でみじん切りにしていく。

 

「片足一本ッ!」

 

鋏で切られた紙の様に装甲は必死につなぎ合わさっていたが、やがて全ての糸が切られると大小バラバラに切られて剥がれ落ちていくその有様に一夏は声を張り上げて叫ぶ。片足一本、先ずは獲ったりと。

 

剥がされたRAYの足は所々が赤く熱しており、高周波ブレードの影響と元から熱を帯びていたのだろう。その熱を帯びた場所は機械の足と言うのには程遠く、生き物とも言いがたい。布の縫い目の様に重なった鉄が線の部分だけ赤く発熱している。

人の肉の部分なのだろう。RAYは皮を剥がされた痛みに襲われ、空気に当たってもその痛みが引かないかのように足を振り上げた。人の肉と同じ、空気に触れれば余計に痛みを感じるのと同じの様だがRAYは感覚を切り離し、何事も無かったかの様にその足を再び地面に勢い良くつける。

 

 

《 ------------------!!!! 》

 

 

「っ・・・!」

 

咆哮したRAYは口を大きく開き、地面に立つ一夏を食べようとするかのように狙いを彼に定める。焦りとも取るべきRAYの行動に一夏は口を釣り上げる。同時にこれは好機だと彼はRAYの狙いが外れないようにあえてその場に留まる。

RAYが口を開けたと言う事はプラズマ砲か喰らうか何かだと思うが、RAYのAIは喰らい付きなどと言う行動を取る事はまず無い。喰らい付こうとすれば弱点を近づけさせて撃ってくださいと言っている様な事。一夏のチャンスに他ならない。

 

 

「貰った!」

 

グレネードランチャーを構え、その照準をRAYの口に向けた一夏は間髪いれずに銃爪を引こうとする。この機を逃せば次は何時なのか分かりもしない。

この絶好とも言えるチャンスには箒と鈴も目線を僅かにRAYに向け、最大のチャンスの機会を一目見ようとすると同時に一夏と同じく勝機を感じ取っていた。

 

「いける・・・!」

 

「やっちゃえ一夏ッ!!」

 

(勿論ッ!)

 

RAYのプラズマ砲がチャージされ始めた瞬間。一夏の右手の人差し指は銃爪に力を入れて引き始めていた。後は後ろまで引ききれば彼の勝ち

 

の筈だった。

 

 

 

 

 

『ッ!横だ!!』

 

「ッ!?」

 

しかし、突如彼の周りへとミサイルの群れが襲い掛かり攻撃を中止させた。

ミサイルの類はAIS。随分とご丁寧な事だと言いたいが、最大の勝機が妨害された事に戦場に立っていた者達は絶望感よりも先に疑問が頭を過ぎり、どうしてなのかと周りを見回す。

 

「AIS!?」

 

「えっ・・・けど、どうして・・・ッ!?」

 

鈴はその原因を見つけた途端、顔を青く染め上げ罪悪感に襲われた。

AISなどと言うミサイルを撃つ事が出来る兵器。月光はロケット弾が積載の限界である為にミサイルレベルの物は積載出来ない。では一体何が。

たった一つ。

 

 

 

 

 

黒い鳥型の無人機。スライダーだ。

 

 

「嘘・・・あの鳥!?」

 

「馬鹿な・・・全部落とした筈だろ!?」

 

「そ、そうよ・・・だって!!」

 

優雅に飛翔するスライダーを目に箒は怒りを交えた問いの目で鈴に睨むが、本人は依然として事実を受け入れられない顔だった。

それは、彼女がつい先ほど残るスライダー二機を撃墜したからだ。

多少荒っぽい行いだったが、スライダーの一機にワザと接近させ、其処を青竜刀を分断してスライダーに無理矢理刺す。そして、もう一機が鈴の行動の隙をと思っていた突き刺さっていたスライダーによって防がれてしまい、纏めて両断された。

これがつい一分ないし数十秒前の事。

唯一つ言えるのは、鈴が撃墜させたのはついさっきの事で彼女も総数のカウントはしていなかったが全機落としたのは確かだと言う事。

 

つまり、可能性の話ではあるが今一夏を妨害したスライダーは『居る筈の無い三機目』と言う事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!鈴ッ!!!」

 

 

「えっ・・・」

 

 

そして。その三機目に気をとられていた鈴は下から迫るロケット弾の嵐に気づけず十発近いロケット弾を全て直撃させてしまった。

 

 

「がっ・・・」

 

 

「ッ!!凰さん!」

 

「・・・!」

 

 

更に、撃ち落されて墜落していたところを鈴は月光の細い蛇の様なマニピュレーターで四肢を絡まれ、首を締め付けられて拘束されてしまう。

意識がまだあった鈴は締め付けられる痛みに意識を引き戻され、地面に叩きつけられずに数センチほどの地面との間隔に受け止められて彼女を縛る月光達に周りを囲まれてしまう。

首が絞められた痛みと苦しさに意識が一瞬遠のきかけるが、四肢の締め付けが無理矢理にでも彼女の意識を引き戻す。

 

「ああっ・・・!」

 

「くっ・・・待ってろ!」

 

彼女の有様を見て小さく舌打ちをした箒はそれでもほおって置けなかったのか彼女を助けようと向うが、直ぐに月光が立ち塞がり箒に対し緑の足で踏みつけようとする。

 

「っ・・・!!」

 

身を翻し足の攻撃を回避しつつも月光を突破した箒だが、その先にまた別の月光が立ち塞がり、彼女の道を阻む。

更にまた別の月光が現れ、彼女に両腕を使わせまいと鈴と同じ様にマニピュレーターを滑らせていき、縛り上げる。月光のマニピュレーターに捕まえられた箒の腕は月光から送られるパワーによって強制的に上げられ、マニピュレーターが強く縛れるようにさせる。

その有様だけでも見れば首切りの刑を言い渡された囚人の様。

更に両手に握られていた刀はマニピュレーターが腕を強く縛った事によって神経に血が行き渡らず、力が抜けてしまっていくのと共に離されてしまった。

 

「ぐっ・・・!」

 

 

「ッ!!ほう・・・」

 

 

『イチカ、前だ!!』

 

「しまっ・・・」

 

 

 

 

一瞬の緩みだった。一夏は二人の身を案じたがばかりに正面に対する警戒を緩めてしまった。今更後悔するのも、もうその時になってからでは遅い。

 

既にRAYの回し蹴りの足が彼の数センチ前に現れていた。

 

 

 

 

 

巨体の足が勢い良く振り回され、その足の回転だけで辺りに風圧が巻き起こる。

風圧でフィールドの砂が吹き上がり黄土色の風が一瞬だが見えて抜けていくが、その余りの一瞬の事と風圧の原因の前では吹き上げられた砂は唯の邪魔でしかない。

突きつけられる現実に彼女たちがしっかりと直視する為には、風も今は障害の一つとも言えるだろう。

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

「がっ・・・」

 

「ッ!いち・・・」

 

 

 

 

 

《 -----------------!!!! 》

 

間髪入れず。

RAYは咆哮と共にAISとクラスターを発射。

壁に叩きつけられた一夏は一瞬胆と共に吐き出した生暖かい血を吐いただけしか行動を起こせなかった。身体には異常とも言うべき重力と痛み、そして衝撃が走りそれがISであっても搭乗者に対して大ダメージを与えていたのだ。

其処からの一斉攻撃。待った無しの弾幕に一夏はどうする事もできずただミサイルと爆弾の雨に打たれるしか出来なかった。

連続する爆発音と共に爆煙が起こり、黒い煙と黄土色の砂が彼を覆い被せていく。

彼だけを狙う筈の火の雨たちは彼だけではなく周りの客席、地面、壁にまでその威力でぶち当たっていく。

その一方的と言う言葉では生温い惨劇に見る者達はただ言葉を失い、絶望する。

たかが人一人相手にここまでの事をするのか。失いかけた言葉をすくい上げ、無意識に近い少女は腹から力の限りの叫びを上げた。

 

 

 

「やっ・・・やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」

 

 

 

誰がやめるのだ。もう終わったのだ。

 

爆発音が鳴り止んだ時、それはまるで全てが終わったかのように静けさを取り戻した時だった。黒煙と砂埃が巻き起こる中、少女の言葉は再び消えていた。

騒音が消え去り、後には小さな石が転げ落ちる音とうっとおしくも心地の良い風。その場にはそれしか聞こえない。息を飲む事もできず、ただ見ることを強要されたかの様な瞬間、彼女たちの目の先には結果だけがあった。

 

 

 

 

「あ・・・」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

瓦礫の岩に白い肌が埋め込まれている。それは無理矢理埋められた物で所々には黒く汚れの付いた個所もあり、白く美しい姿は今は無い。

それが彼の末路とでも言うのか。彼女たちは物言わぬ少年に唯見つめるしか出来なかった。

言葉を失い、見る物に絶望し、自分に力がない事を悔いる。

 

だが、それが現実だ。強き者が生き残り、弱き者はその糧となる弱肉強食の世界。

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。それが野生の掟だ(Rules of Nature)

 

 

 

 

 

 

《 ---------------------!!!!!! 》

 

猛々しい咆哮を挙げ、勝者の雄叫びを上げるRAY。

その咆哮を耳にするが少女たちは未だに絶望を受け入れられない、受け入れたくないと拒みただ物言わぬ瓦礫の一部と成り果てた彼を見つめ続けた。

やがて、一人が静かに涙を流し首を横に振り始める。嘘だ。そんな筈が無いと口に出来ない彼女は静かに首を振り、搾り出すかのように精一杯の声を叫んだ。

 

「嘘だろ・・・なぁ・・・・・・いちかぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・・・。叫ぶ暇があれば身体を動かして彼の元に行けばよい事でしょ?篠ノ之さん』

 

 

「えっ?」

 

 

 

 

叫びと共に聞こえ声に箒は今にも嗄れそうな声で一言そう答えた。

刹那。箒の右腕を縛っていたマニピュレーターが糸が切れたように弾け飛び、強く縛られた痛みは消え去っていった。突然の事に思考が追いつかない彼女だったが何処からか聞こえる通信音声に我を取り戻す。

 

 

『右前方。ブレードを!』

 

「っ・・・お前、一体何処から」

 

『早く!詳しくは後ですわ!』

 

「・・・!」

 

声の主を知っていた箒は通信がまだ繋がっているのを見て問いを投げるが、相手は彼女を急かす様にノイズの混じった声で叫び、箒も考えるのは後にして彼女の言った方向に目を向ける。確かにその場所には打鉄専用の刀が転がっており、先ほど箒が月光に縛られた時に落とした刀だ。

刀を見つけた箒は地を這うかのように駆け出し、そのままの流れで姿勢を低くして刀を取りに走る。

月光も箒の動きに気づき、彼女に攻撃を仕掛けるが一手遅く彼女には届かない。

その隙に箒は素早く刀を手に取ると近づいていた月光の足を斬りにかかる。だが月光の太い丸太の様な足の前では専用刀も太刀打ちできない。締まった肉が鋭利な刃を受け止めるからだ。

だが、それを分かっていた箒は足を両断しようとは考えず、あえて半分か三分の一ほど斬る事にしていた。これなら刃こぼれを起こしにくく月光の姿勢を崩せるからだ。

 

 

「離してもらうッ!」

 

攻撃を仕掛けた月光の足を斬ると、箒は刀でマニピュレーターをなぞるように刃を擦らせてマニピュレーターを斬る。

これで彼女の腕は両方とも使えるようになった。自由になった箒は刀を両手で構え彼女を捕らえんとする月光達と対峙する。だが、相手は十体近くに対し此方は一人。流石に分が悪すぎる。

だから、当然人手が必要となる。

 

『凰さん。今すぐ頭を下げないと貴方の頭が身体とオサラバしますわよ』

 

「へっ・・・ってえっ!?」

 

突然の通信音声に気の抜けた声を出す鈴は、その台詞を聞くと声を裏返して驚く。

身体に異常な程の危機感を感じた鈴は反射的に頭を下げて声の指示通りにすると、何か鉄の板を突き抜けた音と共に鈴の後頭部に危機感と風が横切った。

一瞬の事であったが、身体の神経がコレまでにない程の恐怖を感じ取っており感覚は過ぎ去った後もしばらくは抜け切らなかった。

 

 

「・・・・・・?」

 

一瞬の恐怖を後頭部に感じた鈴は一体何があったのかとゆっくりと頭を上げる。自身の身に特に変化はない。空を切った風は過ぎ去ったのか彼女の周りはしんと静まり返る。だが、その変化は突然現れた。月光の一体がゆらりと倒れ、同時に包囲していた半数近くがその動きを止めた。

 

「・・・?一体どうしたって・・・」

 

『もう一体飛びますのでもう一度頭を下げておいた方がよろしいですわよ』

 

「は!?」

 

刹那。声の言うとおり、鈴を囲んでいた月光の一体がその主を見つけたのかジャンプをするが、飛んで直ぐに凶弾が命中し、玩具の様に宙回転をして数メートル後ろに飛ばされた。

 

 

 

 

 

《 カシャッ 》

 

「次は右手と・・・」

 

 

 

《 ズドンッ!! 》

 

 

スコープから覗かれた先には鈴の右手を縛るマニピュレーターが見えており、意識を研ぎ澄ました『彼女』はその糸を断ち切らんと銃爪を再び引く。

鈍く重い音と共に弾丸は放たれ、その音に気にもせずにボルトアクションを起こす。

 

 

 

そして、数秒と待たずに鈴の右手を縛っていたマニピュレーターは引きちぎられ、鈴の右手は自由となる。その一瞬の隙に鈴は目の前に倒れている青竜刀を取り、残る手足のマニピュレーターを斬っていく。彼女を支えた糸が全て切られると鈴の身体は重力に従い地面に落とされた鈴だが、縛られていたときよりも地面に叩きつけられたときの方が、どこか気持ちが良かったというのは彼女だけの話だ。

 

「っつー・・・」

 

『そのままの姿勢で。正面の月光を撃ちます』

 

「ッ!アンタ一体何処から・・・」

 

鈴の問いを無視し、声の主は正面から彼女を踏みつけようとした月光に確かな攻撃を当て、また一体の月光を沈黙させる。

その月光に当たった弾は鈴の足と足の間に着弾し、僅かにその場に穴が開く。

最早向こう側の一方的な出来事に鈴は通信越しに叫び、その相手に対しての問いを怒りの声で投げつけた。

 

「アンタねぇ・・・アタシは囮か!!」

 

『そうですわね。ぶっちゃけ、お二方は其処のヤモリ(月光)を狩る為には都合が良かったので』

 

「ッ・・・・・・!!!」

 

 

「・・・で。お前は何処に居るんだ?随分と用意周到な様子だが・・・」

 

『・・・そうですわね。篠ノ之さんはお気づきでしょ?さっきの月光の吼えた方向』

 

箒は声の主の位置が一度だけ分かった月光がジャンプしようとして撃たれた方向、其処に目を向けハイパーセンサーで拡大する。一見何も無いかのようだったが、一瞬彼女の視界に何かが光り反射した様に見えたので、箒はその場所を更に拡大させる。

 

「・・・なるほど。何処から撃ってるかと思ったが・・・」

 

 

拡大させた場所を見て箒は静かに納得の声を呟き、呆れた様子で返答する。

 

「・・・呆れて物も言えないな・・・・・・オルコット」

 

 

 

「ありがとう御座います。篠ノ之さん」

 

《 カシャッ 》

 

声の主、セシリアはそう言ってボルトアクションで薬莢を排出。熱を帯びた薬莢は彼女の足下に落ちて金属音を鳴らす。足下には数発の弾丸の薬莢が落ちており、先ほど落ちた弾以外は熱を失い鉄の本来の冷たさを取り戻している。

今までの援護射撃は全て彼女が撃っていた。其処に今更驚きはしないが問題は彼女がその為に使った長物だ。

 

 

「・・・イギリス製、長距離狙撃ライフル《AW50》・・・」

 

 

「つ、つまり・・・対物ライフル(アンチマテリアルライフル)・・・?」

 

「あの小娘・・・一体幾つ銃器を持ち込んでいるんだ・・・」

 

 

「局地的非常事態と言う奴ですわ。この際お堅い事を言えば負けだとも言えますし、それに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ彼は死んでもいませんわよ?」

 

 

 

= 勝手に殺すなよ。 =

 

誰かが声には出ない声を出し、静かに自身の身体を再起動させようとしていた。

四肢に血を流し、頭を上げ身体全体に痛みと共に力を入れる。力を入れようとするとズタズタの身体に激痛が走り、起き上がることさえも難しい。このまま死んでしまうのではないかと頭に絶望が過ぎる。

だが生きている。確かな証拠が今、彼の身体を駆け巡っている。

まだ死なない、死ぬわけには行かない。気力と僅かに残った意識を頼りに彼は出来る限り息を大きく吸い、そして叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「動けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!!!」

 

 

 

 




後書き(と言う名の何か)

・・・なんでRAY戦だけこんなに長くなってしまったのだろう・・・
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