IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第十八話です!!

今年最後のというか投稿が送れてすいません!!
色々と立て込んでいたのでようやく完成しました!
取り合えずこれでAct1は無事終了。
来年の一月から、つまりRAY戦の後日談からAct2に移行します!
Act2もよろしくお願いします!!

と言う事で今回はRAY戦の終わりと、そのころの彼女です。彼女は多分見たら分かりますw

では、今年最後のですが・・・
誤字脱字・駄文はご愛嬌
それでも良いと言う方は
第十八話、お楽しみ下さい。


No.18 「斬撃」

 

 

 

「動けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!!!」

 

 

 

 

刹那。咆哮にも似た叫びを挙げ、男は痛みと軋みを身体に感じつつも己が身体を目覚めさせんと力を搾り出す。

痛みと苦しみと骨の軋みが彼の全身へと襲うが、それ以上に痛み以上に力がわきあがるのを感じる彼は痛みを痛みで抑え、全身に力を入れて重りの様な自身の身体を起こそうとする。

 

(けど今動けば確実に一夏さんはRAYに狙われる!)

 

(このままでは一夏があの怪物に・・・ッ!)

 

しかし、今の彼は風前の灯も同然。一歩でも間違えれば目の前のRAYにトドメをさされるのも不思議な事ではない。

だからこそ次が勝負。一夏はそれに賭け、瓦礫に埋もれた自身の身体を無理矢理にでも起こすが彼女たちも分かっている通り今一夏が起きれば確実に目の前のRAYの餌食となる。

 

 

《 ----------------!!! 》

 

 

 

「ッ・・・マズイッ!!」

 

プラズマ砲を充填するRAYはその照準を一夏に向け、トドメを撃とうとしている。今の状態と距離でプラズマ砲が撃たれれば一夏は死ぬ。いや、最悪塵も残らないだろう。

焦りで落ち着いた思考の出来ない箒はどうするべきかと考えるが、打破できる方法が見当たらない。このまま月光の相手をして一夏を見殺しにするのか。

 

そんなのはゴメンだ。もうそんな事をしたくない。だが、どうすれば。

堂々巡りの頭の中で彼女は必死に考える、しかし見つからない。

 

「・・・・・・・・・・・・ッ!!」

 

絶望に似た感覚に襲われ自身の足下を見ようとした、その時だ。

箒は足下に移しかけた目をもう一度持ち上げ、一瞬だが目に映ったものを再度確認する。

一瞬の事が正しければもしかしたらと彼女の中で小さな希望が見え始める。

 

「あれは・・・!」

 

「グレネードランチャー・・・さっきの足攻撃で落としたのですね」

 

「・・・ってまさかそれ使ってどうにかしようって訳じゃ」

 

『でなければ彼が死ぬだけですわよ。やるだけの価値はあるかと』

 

「・・・仕方ないわね・・・!」

 

 

『篠ノ之さん、急いでグレネードランチャーを!今ならまだ間に合います!』

 

「だが、使用権限はどうなる?アレは持ち主が許可をしなければ・・・」

 

『其処はどうにかしますわよ、彼が!』

 

「・・・分かった。お前に賭けるぞ、一夏ッ!」

 

最後の希望。箒はそれに向かい一気に加速する。距離からすれば箒が一番近く打鉄のスピードでも直ぐに取れる位置だ。

このチャンスを逃しはしまいと一心に箒はグレネードランチャーに向かう。

その後をどうするかは分からない。考えてもいない。だが、この場を逆転できると信じている。今はそれを信じ、箒は向かう。彼の元へと

 

だが、月光達がそれを阻まんと咆哮と共に彼女を追撃、妨害しようとする。

当然の事ではあるが、この状態で妨害をされるとただの邪魔でしかない。対策もでき、パターンも読めた相手を強敵と言う事はない。唯の練習相手か障害だ。

一体目が箒の前に立ち塞がり、回し蹴りを彼女に叩き込もうと回転する。

完璧すぎる動きだが、だからこそ隙はある。回し蹴りをした月光に正面から向かい、そのまま受けるのかと思われたが、彼女は身を屈めて足を前に突き出す。

月光の足は彼女の上を通過し、攻撃は空振りに終わった。

 

「危ない事をするわねアイツ・・・」

 

『貴方も言えた口だと思いませんが』

 

「うっさい!」

 

通信越しに喧嘩をする二人は狙撃と接近戦で月光を一体ずつ確実に片付けていく。

鈴は青竜刀を月光の首の辺りにへと横なぎに斬り、その後ろから機銃で攻撃しようとしていたヤモリにはセシリアのライフルで頭部を打ちぬかれる。

 

 

「あと少し・・・!」

 

その隙に箒はどんどんとグレネードランチャーの落ちている場所に向かい、同時に一夏とRAYの居る場所にへと近づいていく。一夏が落とした武器なので自然とRAYに近づくのは当たり前だが、今の彼女はそれを意識せず唯目的の物を得る為に前に進んでいくだけだ。

 

 

《 ----------------!! 》

 

 

「ッ!またか・・・!?」

 

再び牛の様な咆哮を挙げるだが、その月光は先ほどまでのとは違いマニピュレーターで打鉄専用の刀を持って居たのだ。使用権限によって本来なら強制的に手を離させる筈だが、無人機相手に痛覚は無いし電撃はマニピュレーターの部分で遮断される。

軽々と刀を持つ月光を前に箒は舌打ちをして刀を構える。刀で受け流してやり過ごすつもりだろう。

 

『邪魔で生意気なヤモリですわね』

 

しかし、其処にセシリアがライフルで狙撃。刀を持った月光はこれといった活躍もせずにその機能を停止させた。あまりにアッサリとした最後だがそんな事を気にする余裕も無ければ同情の余地も欠片もない。

奪われた刀を持つと箒はそのまま一直線にグレネードランチャーを目指した。

 

 

が。其処に最後の妨害が入った。

 

 

《 シュルッ 》

 

 

「しまっ・・・!?」

 

残った月光の一体がグレネードランチャーを奪い取ったのだ。

目的の物を取られた箒はココまで来てそれは無いだろうと絶望しかけていたが彼女の機体のスピードは止まらない。そして目の前の月光は箒にグレネードランチャーを取らせまいと装備していたロケット弾を向けた。

このまま進めば月光のロケット弾に確実に当たる。そうなればこの賭けは負ける。

もうヤケクソだと思い、箒は特攻の如く月光に突撃していった。

 

 

「何持ってんのよ、このゲテモノヤモリ!!」

 

すると、後ろから彼女も思っていた本心を叫ぶ少女が両手に持って居た青竜刀を投げつけ、月光の頭部にへと直撃させる。

当てられた青竜刀はそのまま頭部に突き刺さり、反動を受けた月光は頭を上げて空へとロケット弾を放つ。それがその月光が持つ最後のロケット弾だとは彼女たちは思いもしない。

 

「とっとと離せ!!」

 

月光が頭を上に上げて再び下げようとした時、既に箒は月光の前に立っていた。

両手の刀を月光の装甲に突き刺し、マニピュレーターが掴んでいたグレネードランチャーを無理矢理奪い取る。

頭に四本も剣を突き刺された月光はそのまま機能停止を起こし、マニピュレーターにもパワーが伝わらなくなる。グレネードランチャーは箒の手に渡った。

 

「後ろからの攻撃はレディに対して失礼ですわよ、ヤモリさん」

 

その箒を後ろから攻撃しようとしていた月光を狙撃したセシリア。だが、遂に彼女の居場所がバレてしまい、月光の一体がセシリアのもとへと飛び、彼女を倒さんと他の月光も向かった。

 

「っ・・・あら、大勢で女性を相手にするなんて無粋極まりないですわね!」

 

距離が近すぎる為にライフルを捨てたセシリアは腰からスコーピオンを取り出し、月光の足に乱射する。

しかし、月光はソレぐらいの弾ではビクともせず、打ち込まれた弾は肉に阻まれるか弾き返されてしまう。月光は足の対したダメージを負わずに彼女にへと詰め寄っていく。

 

「矢張り無駄ですか・・・」

 

撃つだけ無駄なのは分かるが牽制程度にはなると適度に撃ちつつセシリアはその場から撤退する。

そして、月光達の攻撃を避けつつ奪い取っている最中の箒達へと僅かに目を逸らした。

 

「後は其方でご検討を・・・」

 

 

「後は・・・!」

 

『一夏さん!グレネードランチャーの使用権限の解除を!』

 

「ッ・・・分かってる・・・!」

 

気力で起き上がろうとする一夏は左手を動かし投影式モニターを出現させ、小刻みに震え手でモニターを操作する。

銃火器などの使用権限は所持者によってでしか解除は出来ない。例外として開発スタッフなどが解除可能の場合もあるが、所持者が変更すると言う事もある。一夏の場合だとサニー達が設定したのをそのまま使用しており、解除のコードもサニー達から聞いているので変更はない。だからこそ、武器の使用権限解除は現状一夏が許可しない限り撃てないのだ。

 

 

「・・・残念だったな、RAY。お前の相手は・・・俺だけじゃなさそうだ」

 

一夏がそう言い、左手で操作していたモニターの決定キーを押す。

それが使用権限解除の証拠。

箒が月光から奪い返したグレネードランチャーの上には『LOCK』と表示されていたが一夏が解除した事により『Unlock』と表示が変更され、武器の使用が可能となった。

 

「ッ!」

 

「今だっ!!」

 

 

「コッチを向け怪物ッ!!」

 

 

箒の叫びにRAYが反応しプラズマ砲を充填しながらその巨体の顔を振り向かせる。

それがRAYのAIが侵した最大のミス。そのまま彼女に撃てばいいとAIが考える事ではない事を考えてしまい彼女たちにチャンスを与えてしまった。

 

一瞬の緩みが命取りとなる。それが野生の世界だと知らずに。

 

振り向いた先には箒がグレネードランチャーを構えていた。手は振るえて恐怖と不安がより小刻みに手を動かし照準をブレさせる。しかし、鋭い眼差しは目の前の恐怖の対象をそむける事をせず、僅かな時ではあるがしっかりとその目に立ち塞がる怪物を刻み込み、力強く銃爪を引いた。

 

 

 

放たれた一弾は真っ直ぐにRAYの開いた口へと向かって行き、金色に光る閃光の中にへと姿を消そうとしている。しかし、その閃光は来る物全てを傷つける。

望まずとも向かって行った一発の弾は閃光に干渉しやがて

 

 

 

 

光に溶け込む前に弾けた。

 

 

 

 

 

《 ---------------------!!!! 》

 

 

グレネードランチャーの弾がRAYのプラズマ砲の発射口に直撃。想像以上の大爆発が発生した。しかもプラズマ砲を充填している最中だった為、チャージしていたエネルギーも誘発した事によりRAYの口は大火災となったのだ。

口の爆発を痛むかのように吼えるRAYは痛みに苦しむ人の様にもがき、たじろい、そして油断した。

 

 

「今だっ、一夏ッ!!」

 

 

「ッ!!」

 

瓦礫の中から白く汚れた姿の騎士が姿を現す。

それを駆る彼は口を切り血を流していたが今の彼の身体はそれ以上のダメージを負っている。時間は無い。ココが彼の勝負時だ。

 

怒り叫ぶRAYは一夏にトドメをと持ち前の太い腕を振り下ろす。

だが、その腕は彼に届かず、彼は痛手を負ったというのに変わらないキレのある動きで攻撃を回避。RAYの腕は地面に叩きつけられた。

そして、何を考えたのか一夏はその腕を握るかのように持ち始めた。

 

コイツ(白式)がその気になれば・・・テメェなんざ・・・!!」

 

RAYの腕を持つ一夏の白式からは青白い光が各所から発せられる。

不規則な瞬きを放ち、時に強く、時に弱く光る。だが、段々と光は強くなっていき、それはやがて一つの稲妻へと変化する。

それがまるで彼の力の様に段々と強く光ってく。

 

 

「・・・・・・。」

 

「な・・・・・・」

 

 

「えっ・・・ええ!?」

 

「------!?」

 

 

「まぁ・・・」

 

「あらら・・・」

 

「あれは・・・」

 

 

誰もが目を疑い、言葉を失う。それが現実なのかと。これが今の科学なのかと。

そして。これが彼のISの力なのかと。

 

 

 

 

 

 

「ぶん投げられんだよぉぉぉぉぉ!!!」

 

刹那、小さな戦士は大きな巨人を天高くに放り投げた。子供が玩具を遊んで投げたかのように鉄の兵器は小さな人に投げられたのだ。

 

 

「あ・・・ああああISで・・・あんな巨大兵器を投げた!?」

 

「・・・・・・。」

 

 

 

『奴を逃がすな!一気に畳み掛けるんだ!!』

 

「おうっ!!」

 

 

 

天高くに投げられたRAYは完全に想定外の自体に混乱する。AIは『理解不能』と結果を出し、計算するのを諦めていた。

その隙に、思考のある人間、一夏は数秒ほど滞空するRAYのもとに接近し刀を構える。

銀の刃を容赦なくRAYの腕に差し込み、そして胴体に向かい剣を刺しつつ滑り出す。

重力のない空で最早何処上か下かは分からない。だが、一夏はしっかりとRAYに掴まっている。そして滑っている。それだけで今は十分だ。

 

やがて、重力で何処が下なのかを改めて感じ始めた時には一夏はRAYの腕から離れ、少し上を飛んでいた。腕から滑ったことによって胴体に辿り着いた一夏はもう用なしと刀を離し、RAYの胴体と腹が見える上に居た。RAYの後ろにはアリーナが見えており、距離からしてそう離れていない距離だと分かった。地面につくまでもう時間は無い。

 

「っ・・・!」

 

だが、心配ない。もう極める。

最後の瞬時加速を行い、一夏はRAYのあごの辺りに着く。その時には彼の刀は両手でしっかりと握られ頭の少し上にあった。

其処から彼は一文字切りでRAYを斬ったのだった。

 

 

 

 

 

 

トドメの一撃を喰らったRAY。その巨体は壮大な音共に地面に叩きつけられた。

余りのことに戸惑っていた者達も居たが、命の危機とばかりに直ぐ様影から離れたのでどうにか下敷きにされるのは免れたようだ。

 

天から落とされた鉄の巨体は地面に叩きつけられると微動もせずにその動きをとめた。

いや、既に動きを止めていたというのが正しい。彼が最後の斬撃をした瞬間、RAYは生き物で言う死を受けたのだ。

全身には夥しい傷跡を残し、生き物の生存競争を全うした。

抗えない命のやり取りにRAYは負けたのだ。

 

 

 

 

 

そのRAYから少し離れた瓦礫のもとに一夏は着陸した。身体がまだ痛む様子だが動き自体に支障は今の所無いようだ。

地面に足をつけた一夏は重力と共に重く伸し掛かった疲れと痛みに襲われ、激しく深呼吸をした。

 

「はー・・・はー・・・はー・・・・・・はぁぁぁ・・・」

 

『大丈夫かい?』

 

「・・・身体がダルい。つか死ぬぜコレ・・・」

 

『・・・それでもどうにか奴を倒す事が出来た。だろ?』

 

「ああ・・・どうにか、な・・・」

 

そう言って一夏は倒れたRAYの居る方に目を向ける。

仰向けで倒れるRAYは至る所に痛々しい後を残しており、それが実質たった一人のISによって付けられた傷と言うのはにわかに信じがたい。しかし、それを彼が今し方やり終えたのだ。嘘だと言って直ぐに忘れられるかと言われれば忘れられる記憶でもない。鮮明に、確かに刻まれたその記憶をどうやって消せというのだと。

 

 

 

「っ・・・」

 

身体を無理に動かしていた一夏はその動きが止まった事によって身体が忘れていた痛みを再び思い出させる。腕や足、膝や肩。彼も至る所にダメージを負い、立っているのが精一杯の状態だ。忘れていた痛みは段々と強くなっていき、一夏の顔は苦しそうな表情へと変化していく。

 

「最早立っているのが精一杯の状態ですわね。一夏さん」

 

「・・・ああ。足がガタガタで動かすのも難しいぜ」

 

瓦礫が所々に散乱する観客席の中を通り、セシリアが近づく。手には先ほど持って居た銃は無く、素手の状態だ。弾切れを起こしたので何処かに捨てたか。それともまだ持っているのか。いずれにしてもそれは今は関係のない事だ。

その彼女の直ぐ後にフィールドの壁から登ってくる箒と鈴が顔を出す。落ちてきたRAYに驚いていたのか顔は随分と疲れ切っていた。外からも宙に浮くRAYの姿が見えただろうが彼女たちは直ぐ近くに居て一歩遅ければ踏み潰されていた。生存本能に従い一心に逃げた結果からがら助かったのだ。

 

「随分とお疲れのようですわね、お二方」

 

「あ、当たり前でしょ・・・アタシ達はあのデカブツの直ぐ近くに居たのよ・・・そんで踏まれそうになるし・・・あー・・・疲れたって言うか死ぬ所だった・・・」

 

「まぁ。いっそ、そのまま死んでおけば楽だったものを・・・」

 

「セシリア、黒いぞ顔が」

 

「勝手に死なすな。貴様こそ、ほぼ丸腰で良く生きてたな」

 

「あら。私は今はほぼ丸腰なだけで月光は全部倒しましたわよ?」

 

「・・・は?」

 

「証拠にあそこで伸びてるのがその月光ですわ。頭部ユニットに四・五発ずつ叩き込んでおきましたので、もう起きないでしょう」

 

そう言ってセシリアが指差す方に一夏達のもとに近づいてきた箒達は歩きながら確認する。確かに其処にはセシリアを追っていたらしき月光達が倒れており、中には頭部が丸々吹き飛んだ月光や足が片方ない者も居た。

ソレを見た鈴はセシリアの素性を疑い、本当にイギリスの貴族風娘なのかと信じられないもの無理はない目で見ていた。実際貴族風な佇まいだが中身はしっかりと鍛え上げられている。生身で戦えば十回戦って稀に一度だけ鈴が勝てるかだろう。

 

「・・・ホント、アンタ一体何なのよ・・・銃もってるし、ドレスみたいな服で凄く動くし腹黒いし・・・」

 

「一言多いようですが今回は許しておきましょう。次は腸を抉り取ってミキサーにかけますから」

 

「・・・・・・ゴメンなさい・・・」

 

「・・・・・・。」

 

黒い言葉に鈴は顔を青ざめさせて一夏の後ろにすがり寄る。黒い言葉と共に鈴に向けられた殺気に怯えて今にも泣き出しそうな顔で、その隣に居た箒もセシリアから数歩後ろに下がった。下手すれば殺される。そんなギャグにもならない事が頭を過ぎり一度は果敢に向かって行った箒も蹴り飛ばされた出来事を再び思い出し喉にこみ上げていた唾を飲み込んだ。

 

 

 

が、その時だ。セシリアは目を大きく見開き、何かに驚く顔をした。

一瞬何に驚いているのかと思う一夏達だったがセシリアの声に一夏が反応した時にようやく理解する。

 

「ッ!?一夏さん!!」

 

「・・・・・・ッ!?」

 

ゆらりと彼等の足下から黒い影が昇ってくる。しかし、それは日陰ではない。もっと小さく、近い物。殺気に似た何かを背筋に感じた一夏は「まさか」と声に出なかったが直ぐに後ろを振り返る。

 

 

 

 

 

其処にはあまりにも近い距離にRAYの顔があった。

 

 

「なっ、コイツ!?」

 

「まだ動くの!?」

 

(・・・・・・!?)

 

 

 

 

《 ------------------------!!!!!! 》

 

 

 

一夏達との距離は五メートルもない。どうやってここまでこれたのかと驚くところだろうが、今はそれ所でもない。RAYの頭部が彼等の直ぐ近くにある事だ。その大きな頭部を前に四人はそれぞれの驚き方で目を疑い、半歩たじろぐ。

そして、RAYがまだ生きていると示すように彼等に向かい大音量の騒音ともいえる咆哮を彼等に放った。鉄と鉄が軋み、今にも外れそうな音がしておりその音を聞くだけでも人間は反射的に耳を塞ぎ、背筋に鳥肌が立つ。だが、それ以上にこの距離ではRAYに全員食われてしまう。プラズマ砲の恐怖は無くなったが噛み付いたりは出来る筈だ。

それに警戒した一夏は気力切れを覚悟して刀に残る力を全て流す。

 

 

 

だが。

 

 

 

 

 

「・・・・・・へ?」

 

 

「・・・・・・?」

 

 

『・・・止まった?』

 

 

 

RAYは咆哮を鳴らし終えると、口を大きく開いたまま動きを止めた。

咆哮の後に何もない事にそれぞれは何も起こらないのかと警戒しつつも守りを解いていく。

フェイントでの噛み付きかと一夏も警戒していたが、それから直ぐに通信越しにオタコンが呟いた。

 

『・・・・・・機能停止を確認した。もう・・・死んでるよ』

 

「・・・・・・。」

 

彼の言葉を待っていたかのようにRAYは静か頭を力なく落とした。生き物が最後の抵抗をとするかのようにRAYも最後の咆哮を挙げたが、それが最後の行動となって倒れ伏した。

RAYからすれば無念ともいえる咆哮。その声は今も耳の奥に響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= ??? =

 

どこかではない何処か。其処は薄暗く、周りの世界はほんの僅かしか照らされない。

殆ど全てが闇に覆われた世界。居れば自然と不安が心に積もり始めるだろう。

だが、『彼女』はそんな場所に慣れきっている。もうそんな場所に何年も居続けたのだから。

薄暗く光る一室で彼女はその僅かな光の源を見続けていた。

青白く光るその源。喜びもしなければ悲しみもしない。ただ無情の顔でその源を見続けていたのだ。まるでその奥にある物のように。

 

 

静寂をやぶったのは一つの機械音、と言っても自動ドアが開いて閉まる音だけだ。

しかし、自動ドアが閉まった直後ににコツコツと甲高い音を立てながら誰かが歩いてくる音がしてくるのだ。ドアが開いて閉まったと言う事は誰かが入ってきた。その誰かはその暗闇では全く見る事が出来ない。

ただ鉄の地面をヒールか何かで歩くような音と共に入ってきた誰かは唯一つの光へと歩いていく。

その誰かも光に用があるのか。違う。その誰かは光のもとに居る彼女に用があったのだ。

 

 

「・・・・・・。」

 

入ってきた誰かは彼女から一メートルほど離れた場所で立ち止まる。

そして、光の近くにいる彼女よりも先に自分から話しを切り出した。

 

「報告します。IS学園に送った『メタルギアRAY・カスタム』が先ほど倒されました」

 

「・・・。」

 

「機体損傷レベルは『大破』。ですが、修復可能の状態で沈黙しました」

 

「・・・データはどうかな?」

 

「滞りなく。スライダーからもデータ収集を確認。現在無事に帰還しました」

 

「・・・データ解析とRAYのAIユニットはどうなってる?特に・・・」

 

「データ解析は今し方始めて70%までクリア。現在別ターミナルに保存しています。AIユニットにつきましては時限式の自爆装置を積み込みましたので取り出して二十分で爆破の予定です」

 

「・・・ま。上出来かな。データは取れたし。『粗大ゴミ(RAY)』は片付いたし。マイナスは特にないって事でいいのかな?」

 

「結果としましては・・・ですが、スライダーについては見られた可能性も・・・」

 

「ああ。大丈夫。万が一の時には自爆させるから。あれ安いし脆いし」

 

「・・・・・・はっ」

 

「後はコレと貴方のが完成すれば第一段階は完了って所だね」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・ぶぅ・・・何か言ってよー」

 

「・・・何か・・・と言われましても・・・」

 

「・・・はぁあー・・・ホント残念だねーもう少し感情に起伏があったら面白いんだけど・・・」

 

「申し訳ありません、マスター」

 

「ああ。別にいいよ。私だって始めてだったんだし、それに会話できるだけでも無問題だよ」

 

「・・・。」

 

光のもとにいた少女の様な振る舞いをする『彼女』は軽い口調で入ってきた『少女』の話しを聞く。少女の声はまだ若く、歌声にでもすればいい音色を出す声だろう。

その彼女に対して感情の起伏がある声で話しを進める彼女は踊り子の様に回転しつつ少女に抱きかかり、特に苦しそうな表情もせずに少女はその場に立ち続けていた。

無情ともいえる声を出す少女と喜怒哀楽のある声を出す彼女。

 

片やは以前とある場所に居た筈の科学者。名を篠ノ之束。

変わらずの表情とスタイルで少女に豊満な胸を抱きつけている。その重みもあるのか少女は少し立ちづらそうだ。

その束に抱きつかれているのは黒く長い髪を腰まで伸ばし純粋な赤い瞳を持つ少女。

黒く足下まであるコートを着込み、手には滑り止めの指ぬきグローブをつけている。

そして目。その目は少女の様に幼い目ではない。鋭く、冷たい。その少女というべき歳の娘がする事はないであろう冷酷の目。

 

ある者なら、その目をこう言うだろう。

 

 

「戦士の目」と。

 

 

 

「・・・で。他に報告は無いかな?」

 

その彼女に対しても束は持ち前も明るい表情を崩さず、自身が彼女よりも上の立場であるかのように目を見ても恐れずに尋ねる。彼女の目を見ても、その姿を見ても感じても動じないのか、と聞かれれば彼女は「何故?」と返すだろう。

それは、束が彼女に対して危機感も恐怖も持っていないからだ。あるのはただ純粋に彼女の事を信用しているだけ。

そして、その束の信用に答えるかの様に、少女も束に対し少し苦しそうではあるが話を続ける。それは彼女が現在束によって首周りを彼女の腕が絡ませていたからだろう。

その為に彼女と束の距離はかなり近く、少しでもどちらかが動けばぶつかり合いそうな間隔だ。

 

「デンバーからの報告で戦力の供給は順調。例の物もあとは微調整のみでロールアウトを待つだけと」

 

「ふむふむ。まぁあっちは結構順調だったしそれぐらいは当然かな」

 

「・・・それと・・・」

 

「ん?」

 

 

 

「例の『ラシュモア』の一つの居場所が判明しました。独国の政府最重要機密施設の最下層。システム自体が独立していたので内部構造は把握できませんでしたが、そこにあるのは確実です」

 

それが聞きたかったのか、束は彼女のその報告を聞くと顔には出さなかったが上機嫌になったという感じた。そして、小さな間を取り報告に対しての返答をする。

 

「・・・そっか。これで後は一つと。中々に上々な進み具合だ・・・」

 

「あと、マスター」

 

「およ、まだあるの?」

 

「はい。

 

 

 

 

 

 

『研究対象《ナンバー4》』が出立。一週間で日本に到着の予定です」

 

「・・・おやおや。ようやくですか」

 

「はい。予定よりもかなり遅れての出立です。それに《ナンバー3》の存在を国内で確認しました」

 

「・・・ナンバー3・・・どうやって雲隠れしていたんだか。まぁ現れたんだし良しとするけど。4と3は何時学園に入るのかな?」

 

「ナンバー3が恐らく四日後。ナンバー4は出立からの予定を計算して十日後かと」

 

「・・・・・・。」

 

「手を打ちますか?」

 

「・・・いんや。当分静観。しばらくは観察だよ」

 

「・・・了解しました」

 

研究対象については先ほどよりもあまり興味を示さない表情だった。だが、その報告を聞きたかったというより内容ではなく「その報告があった」と言う事に興味を示していたかの様な表情だったのだ。内容は適当に聞き流し、進展があったと言う事だけが本当は聞きたかったと言わんばかりに。

 

 

 

「さてと。報告も聞いたし、そろそろ作業再開としますかね」

 

報告を聞き終えた彼女は、少女から絡めていた腕を離して再び光のある方に目を向ける。

そこに彼女の言う作業があるのだろう。投影式のキーボードが彼女の手元に現れ、その周りに幾つかのモニターも表示され、直ぐ様束は作業に取り掛かる。

絡められていた腕を離された少女は、息苦しかった状態から開放されて呼吸を小さく整えており、どれだけ彼女が辛抱していたのかが伝わる表情だ。

といっても表情自体はそこまで変わっては居らず、眉と頬を僅かに動かした程度。あまり自身の感情を表に出さないらしく、『マスター』と呼んでいた彼女にその表情は見せたくないらしい。

 

「・・・・・・。」

 

しかし、整っていた彼女の呼吸は一定に達すると再び荒れ始める。

空気を吸い体調は整っている筈なのに呼吸は荒れて肩で息をし始めていた彼女は、頬を赤らめて全身に熱を帯びていく。風邪の様な類ではない。もっと別の状態。

『禁断症状』とでもいうのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター・・・」

 

 

「ん?どうし・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

束が少女の小さな呟きを耳に拾い、振り向いた瞬間。既に少女は束の目の前に立っており、両手を彼女の肩に乗せて動きを封じていた。僅かな出来事に束の表情は先ほどの明るさは消えて驚いた表情を見せていた。

 

 

 

そして刹那。少女は束の喉笛へと噛み付くのだった。




オマケと言う名の後書き。

今年の投稿&Act1はこれで完了です!!
では皆さん、よいお年を♪

カズ「セイ・ピース!!」

一夏「いや、アンタ出てないだろ」
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