IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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あけましておめでとう御座います!第十九話です!!

いよいよ、今回からAct.2へと移行。物語は大きく・・・といっていいのか分かりませんが変化していきます!!
Act.2はAct.1以上に面白くなっていく予定です!皆さんこれからも応援よろしくお願いします!!

今回はAct.1の最後RAY戦の後。ちょっと早めのあの人が登場です。
一夏たちがあの後どうなっているのか。そして、そろそろどうにかしようと一夏も動きます。

では、誤字脱字・駄文はご愛嬌。
それでも良いという方は
第十九話、お楽しみ下さい。


Act.2 Summer Memory
No.19 「戦いの後」


 

 

 

 

「・・・いいか、■■■。お前は兵士ではない。そして、そもそも戦うべき人間ではない。戦う必要なんて始めから無いんだ。それでも・・・お前は戦いへの道を選ぶのか?」

 

 

・・・。

 

 

「・・・・・・そうか。だが、それはお前が背負うべき業ではない。なのに、お前はどうしてそれを背負ってまで戦おうというんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

・・・それは、俺達の所為でもあるから。俺の・・・俺達が起こした事だから。

本当は俺の罪では無いのかもしれない。けど、間接的に俺だってその原因の一つだ。

こんな世界にしたのも、あの人をあんなのにしてしまったものも。

 

「・・・・・・。」

 

何事も全ては小さな出来事が切っ掛けだ。

この世界も、俺が戦いを選んだ理由もそう。全ては小さな出来事が始まりだ。

 

「だが・・・」

 

俺は。

 

 

 

あの人の様に、現実から目を逸らす気は無い。逸らしたくない。

 

「・・・・・・。」

 

あの人が現実から目を逸らしたのは、自分をずっと責めていたからだ。

だけど、俺にはその責めるべき事が無い。

あの人が全ての切っ掛けを創ったのに対して、責めているように。

その所為で表舞台から姿を消したように。

 

俺には責める物なんてものは何一つない。

だからって、このままのんびりと終わりだなんてのも嫌だ。

自分には関係のない事だと言ってずっと他人ぶっているのこそ、まさにな。

 

戦争を間接的に変えたのも。社会を変化させてしまったのも。

少なからず俺にもその責任がある。

多くの人の人生を狂わせてしまった原因。そしてその責任がな。

 

「・・・その責任を取るために。変わりにお前が死地に行く・・・?」

 

 

・・・さてな。本当は・・・もっとシンプルな理由かもしれないがな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・白い天井だ。暗い世界から重い目蓋をゆっくりと開けると、其処には少しだけ汚れかホコリがこびり付いている白い天井があった。

手を伸ばせば届きそうな距離で、まるで僅かな隙間しか天井と自分の間にしかないかのような近さ。

いや、違う。手を伸ばしても届かない。

手を伸ばせば、届きそうだった天井は目の焦点が元の調子を戻すと一気にかけ離れていった。離れたというよりも元の景色に戻ったと言うべきだ。

 

「・・・・・・ココは・・・?」

 

天井を見ててずっと気がつかなかった彼は、焦点が戻り止っていた思考が再起動すると、まず最初に思うべき疑問を小さく呟いた。

ココは何処だ。私は誰だと古典的なボケを言うつもりはないが、自分が今何処にいるのは全くと言って分からなかった。

身体を動かそうにも身体の方からロックをかけられ、動きが止めらているかの様に動く事もままならない状態で幸いにも動く口を使い、誰が聞くとも分からない声で呟いく。

 

 

「保健室。ようやくお目覚めですわね、一夏さん」

 

「・・・セシリア?」

 

「あ、今は動かない方が身の為ですわよ。身体の至る所にダメージがあるようですから」

 

そう言って変わらぬ表情、奥底が見えない明るい顔でセシリアの声が聞こえ、顔を覗かせた。一夏の首は動かそうにも拒絶反応を起こすかのかのように動かず、その動きの一つ一つに巨大な重りが付けられている感覚だった。

その重りに首を動かすのを諦め、一夏は僅かに開く口でセシリアに尋ねる。

どうして自分が保健室で寝ているのかと。

 

「保健室・・・俺は一体・・・?」

 

「・・・記憶の障害ですか。仕方ありませんわね。突然倒れたんですもの」

 

「倒れた?俺が?」

 

「・・・その様子ですと、本当に覚えてないようですわね」

 

「・・・・・・ココとの間の記憶が曖昧だ。俺は確か・・・」

 

 

一夏が覚えている記憶はRAYを撃破し、完全にRAYの動きが止まった辺り。其処から先の記憶が殆ど無く、何があったのかは全く覚えていない。

それを承知してか、セシリアは小さくため息を吐くと、彼に対して失った記憶の部分を説明し始めた。

 

「メタルギアの撃破後、一夏さんは突然倒れました。原因は身体各所の負傷と過度の疲れ。

肉体的にも疲労が溜まっていたようですわね」

 

「・・・それだけか」

 

「付け足すとすれば、更識会長曰く『機体ポテンシャルに耐えた反動』との事。無茶な動きと連続の瞬時加速が機体そのものが耐えても身体が耐え切れず、その糸が切れて気絶した・・・と言う事です」

 

「・・・・・・。」

 

「一応、機体は一夏さんが気絶したので自動的に解除されて、今はIS専用の整備室に置かれています。機体そのものは殆ど外的ダメージはありませんでしたわ」

 

「そうか。見た目以上に頑丈って訳だな」

 

「そう言うことですわね」

 

つまり自身の身体が白式の動きの負荷に耐え切れなかった。

確かに、自身でもあの動きはかなり無茶があったとも思える。殆どISによって成せた動き。

それを幾ら鍛えているからと言って、耐え切れる物でもない。耐え切れるほうが異常なのだ。

 

「・・・!」

 

異常、と言う程でもないが一夏はあることに気がつく。

それは、自分が今までどれだけ眠っていたのか。あの後RAYはどうなったのか。

聞くべき事は沢山あったが、それよりも小さなことだが彼が気になることがある。それは自分の腕の部分の毛布が少し湿気ているからだ。

それもセシリアの座る方向とは逆の方向。範囲は小さいがまだ濡れている所からしてさっきまで誰かが居たと言うことだ。

 

 

「・・・つい先ほどまで、彼女が付きっ切りで泣いていましたから。丸一日は」

 

「丸一日・・・」

 

それに気づいた一夏を見てセシリアは表情は変えなかったが不満げな話し方で、その濡れた個所について話した。彼女とは恐らく箒。もしくは鈴の可能性もあるが、今の彼女との関係ではそれは薄いだろうと思い、彼はまるで今も彼女が居るかのように想像していた。

 

だが、その時彼女が一体どんな顔で泣いていたのか。それだけが、どうしても彼はわからなかった。

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

丸一日。それが一夏が眠っていた時間。

その一日、二十四時間と言う時間は人によっては短いようで長い。

意識を集中させていたり、眠っていたりする者は短く感じ、逆に何も考えず暇を持て余していたりすると長く感じる。人それぞれによる体感時間は違えど時は平行に、そして平等に流れる。

その長くも短い時間を使い、荒れたアリーナを元に戻そうと尽力する者たちが居た。

 

「改めまして。民間軍事警備会社『マヴェリック・セキュリティ・コンサルティングInc』の代表社長を勤めています、ボリス・ヴャチェスラヴォヴィチ・ポポフと言います」

 

「織斑千冬です。今回はご苦労様です」

 

「いえ。遥か極東の地にまでウチの様な企業を使ってもらえるだけでも有難い。それに、奴とは多少因縁がありますからな」

 

「・・・・・・。」

 

アリーナから少し離れた距離にある、軍用トレーラーや装甲車が集結する場所に千冬は今回のアリーナ襲撃を行ったメタルギアの回収と護送が行われようとしており、護送時の警備を担当する民間軍事会社ことPMSCsの社長であるボリスに挨拶を交わしていた。

軍事が主体のPMCとは違い、PMSCsは警備などを主にしている。その中で実績が確かな企業として今回マヴェリック社が選ばれたのだ。

 

「・・・随分と派手に暴れたようですな、奴は」

 

「ええ。幸い、被害はほぼゼロでしたがこのアリーナは当面閉鎖となります」

 

「修復の目処が立たないと?」

 

「それもありますし、今回あれに随伴した無人機の回収と廃棄。そしてアリーナ自体の修理を考えると、上も頭を抱える額だったそうですから」

 

「当然といえば当然ですな。今の日本でも其処までの余裕も無いでしょうに」

 

「加えて国連も返事はNO。結果、取り合えず無人機の廃棄とアレの引渡しだけを決めて、後は閉鎖と言う事です」

 

 

「・・・その原因となったあのメタルギア。一体誰が倒したのですか?」

 

「・・・・・・実質、一人のIS操縦者が、です」

 

「っ・・・!?」

 

「・・・私だって未だに信じらない。しかし、それを一部始終見てしまった。そして、理解してしまった・・・」

 

「・・・・・・。」

 

「常識に囚われすぎて、何時しかその中でしか判断できなくなっていた・・・唯自分の見える世界で、知っている知識だけで。その全てを知った風に思っていた。こんなにも世界が目まぐるしく変化しているのだと知らずに」

 

言い訳とも聞こえるその言葉に、ボリスは口をつぐんだ。ブリュンヒルデと呼ばれた彼女が一体どんな人物かと彼は期待を持っていたが、それは良い意味で外れた。彼女はまだ人なのだと。自身の小ささを知る、今の時代には数少ないであろう女であると。

女が最上の至上主義でもなく、その主義を更に悪化させた差別主義でもない。

男も女も同じ。上も下もない同一の存在。

今や世界の女性のほぼ大半はこの主義に偏りつつある世の中でそれを実質巻き起こした人物。彼女も心の底は同じ考えかと思っていたが、他の女よりもまだ考えている方だったと言う事だ。

 

「・・・・・・今や、世界は戦争と言う経験を経て様々な技術を発展させ続けている。医学は勿論、ロボット技術、航空、軍事、食料・・・今の時代を取り巻くありとあらゆる物の全ては・・・戦争で成り立っているといっても過言ではない時代です」

 

「戦争経済による発展と衰退。等価交換、とでも言うのですかね。人類の発展の為に何かを犠牲にしないといけない。全てには対等に対価を求められる」

 

「ええ。ですが・・・」

 

「・・・。」

 

 

「私の対価は・・・まだ払い終わってないのかもしれません」

 

「・・・と言いますと?」

 

「恐らく・・・いえ、ISはこの先絶対と言っていいほど発展するでしょう。戦争だからと言う訳ではなく、もっと別の理由で。私はその発展を間違った方向に向けさせないように、努力をするだけ、それが今できる唯一の事だと・・・私は思っている」

 

(・・・彼女なりにこの時代にしてしまった事実を受け入れていると言う事か。だが、それを間違った方向に向かわせない。それがどれだけ無謀なのかは・・・まだ彼女は知らないのだろうな)

 

まだ若いな。とボリスは口には出さなかったが、横目で彼女の話す姿にそう感じた。

考えも理想も現実的だが、まだまだ未熟な面も見え隠れしていると、まるで子供を相手にしているかのような考えをしていた。

すると、その彼のジャージのポケットからバイブ振動が響き、彼はポケットに入れていた無線機を取り出し、応答ボタンを押して返事をする。

 

「こちらボリスだ」

 

『社長。メタルギアRAYの積み込みが完了した。後は、準備が完了し次第AT社の日本支部に護送するだけだ』

 

「分かった。ウチの連中をコンテナ船の上部甲板に向かわせとけ。それと、奴の場所にもだ」

 

『了解』

 

短い会話を済ませたボリスは直ぐに無線を切る。無線での会話は応答から終了までだと十秒にも満たない会話時間で手際の良さを窺える。

ソレぐらいは普通なのではないかと思える所だが、普通なら他に報告はなどと念入りに確かめ聞く。それを聞かずに切ると言う事は向こうから更に報告をすると言うのが普通だという事だ。

 

「積み込みが完了しました。後は被害報告の提出等だけのようですが・・・よろしいですか?」

 

「・・・分かりました。それと・・・」

 

「ええ。あれの腹の中に居た人型は其方に一任するようです。あの機体は貴方たちの方が詳しい」

 

ボリスの言う人型。それは、RAYが学園の襲撃を行う直前に破壊した人型兵器の事で詳しい事はまだ不明だが、人型の損傷状態や一部が湿気ているところから水中で襲われたというのが現在分かっている事だ。

政府はその人型については学園に一任すると言う事にしたが、本心ではその人型も『没収』したかったというのが本音なのだろうと千冬は考えていた。

しかし、事の重大さで考えれば何処にも属さない物であり、且つISよりも多く解明されて研究や開発が進んでいるメタルギアの方が責任を余り問われないと言う事でメタルギアだけを回収するという事にしたのだと、情勢から考えれば誰でもそれは分かる事。見えすぎた建前を立てて被害を最小限にするのが目的なのだ。

 

「・・・分かりました。人型の移送は此方で行うが、よろしいか?」

 

「ええ。手伝える事がありましたら何時でも言ってください。人手は足りていますからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で。結局メタルギアは日本政府の命令で回収されたと」

 

「ええ。取り巻きの無人機も纏めて。全部AT日本支部に引き渡される予定ですわ」

 

「無人機も?なんでだ」

 

「・・・IFFを調べた結果。無人機が何処の所属なのか不明だったから」

 

「・・・・・・!」

 

IS学園の夜間警備を行っている無人スライダーなどは全て所属は一応は国許である日本の所属となっている。その為、識別は全て日本のものに統一されている、筈なのだがその識別が所属不明だというのには確かに疑問点である。無人機運用に当たっては国であっても企業であっても、ましてや傭兵組織であっても割り振られた識別番号を無人機に登録するのが最低限の決まりとなっている。それを無視すれば違法所持として罰せられる。つまり、世界を敵に回すも同義なのだ。

 

それを学園の無人機が発していたとなると学園側に責任を問われるのは当然のこと。

一夏は動けないからだなりに慌てた様子でセシリアに尋ねるが、本人はその話を読んでか彼の言葉を最後まで聞かずに返答する。

 

「じゃあ・・・!」

 

「ですが、『無所属』ではなく『所属不明』と返しているので現時点ではそのことについては保留となっているようですわ」

 

「保留?」

 

「無所属と言う明確な答えではなく、自身の所属すら答えられない状態。それをどうするのかと言う事で詳しい事はAT社での解析待ち、と言う事らしいですの」

 

確かに話の筋は通る。無所属は自分が何処にも属していないと明確に示しているのに対し、所属不明は自分が何処に所属しているのか、していないのかさえ分かっていない状態だ。

何処の物とも分かっていない無人機の事の責任を学園に押し付けてもその事を返されるのは見えきっている。だからこそ、もっと詳しく調べて何処の所属だったのかを分からせるために今は保留にしたと言うことなのだろう。

 

「・・・どっちも出自不明か。はっきりしない事が多いな」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・どうかしたか?」

 

「・・・いえ。何も・・・」

 

本当にそう思っているのか?

セシリアは自分が座る椅子から僅かに見える彼の顔を見て思う。

目などは見えなかったが、話し方などからして彼の言葉を疑うところが幾つかあったからで、まるで何かを隠しているかのような、そう思えたのだ。

これで分かった事は唯一つ。

互いに敵対しているとは思っていないが、同時に全てを明かしているわけではないと言う事だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏の目覚めから数時間後。

時間は経過し、時と共に日も陰り西の空は段々と夜の顔を見せ始める。

夕暮れ時の空は何処空しく、それでいて幻想的な光を見せてくれる。東の空は赤く燃える太陽が沈みつつ、西の空には白くもまだ光を発していない月が昇り始め空の色を変えようとしている。

 

あれから数時間経つ。セシリアから自分が寝ている一日の時間に何があったのかを聞かされた一夏は、事態が一応の終結をしたと聞き小さく息を吐いた。RAYによって学園に何らかの影響があるのではないかと考えていたが、其処は学園側がしっかりと対応したので問題は無かったようだ。

 

「・・・ふうっ・・・」

 

一夏の意識が戻り、本人もある程度回復したと言う事でセシリアは今はその場には居ない。

彼の意識がもどった事を千冬達に報告する為だ。

別に保険の教師だったり連絡をすればいい話なのだが、生憎と彼女は携帯と言う物を所持していない。また、千冬本人が報告に来るようにと彼女に言い渡していたので嫌でも彼女は報告に行かなければいけなかった。

また彼の事について報告を出来るのは今は彼女だけで、他の生徒達は今回の一件でしばらく部屋で待機を言い渡されている。更に保険の担当である霜月も事件での怪我をした生徒達の手当てに出ているので、現在保健室には彼だけ。

 

 

「・・・オタコン?」

 

の筈なのだが、一夏はその場に居る筈の無い人物の名を呼び尋ね呟いた。

こんな所に彼がひょっこりと顔を出すはずが無い。だが、もう一人の男は本当に顔を出しそうで怖いが、と思っていることが事実になりそうで一夏は不意に背筋が冷たくなる。

しかし、今は呼んだ方に出てもらわなければ困る。今すぐにでも現れて、頼みたい事があるのだから。

 

『・・・誰も居ないかい?』

 

「・・・多分な。俺はこのザマだから見ることは・・・多少は出来るけどな」

 

すると、一夏の足下から小さなモーター音が響き始める。

今まで聞こえなかったのは、彼に呼ばれるまでは待機状態でずっと潜んでいたからだろう。

足下から聞こえるモーター音はその音の中心を移動させ、ベッドの下から出てくる。ちいさな黒いロボット、Mk-Ⅳが隠れていたベッドの下から姿を見せた。

 

『身体の方は大丈夫かい?』

 

「ああ。こうして縛られてるけど・・・っと・・・」

 

『えっ!?む、無茶しないで!!まだ動いちゃ・・・!』

 

「平気さっつー・・・流石に過度な動きは無理だが、松葉杖付いて歩く位は出来るって」

 

『・・・はぁ・・・君といいスネークといい・・・随分と丈夫過ぎる身体だね。一度調べてもらうかい?』

 

「結構。身体は鍛えているだけだ」

 

身体のあちこちに包帯を巻かれている一夏だが、実際のダメージはそこまで酷くないらしい。彼の身体に巻かれた包帯の半分近くは既に治っていたり問題の無い個所に巻かれているので彼にとっては半ばコスプレでもさせられているような状態なのだ。

ISの絶対防御、それが身体にへと直接伝わるダメージを軽減し、外からは酷い傷に見えても中身は然程問題はない様になっているのだ。と言っても、矢張り幾つかの個所は本当に痛いらしく、まだ身体は完治していないのは事実だ。

 

それには画面越しのオタコンもただ大きくため息を吐く事しか出来なかった。

彼の師の立場の男は怪我や身体の限界に達しようとしてでも身体にムチ打って任務に就き、その弟子たる彼は相手に心配させまいと強がりを言う。しかし、思われている彼からすれば本当に問題は無いと言い張る。これ位で根を上げては生きていけない。そんな彼も身体にムチ打って痛みが所々から伝わる身体の上半身を起こした。

 

 

「それより、オタコン。あのRAYのデータ。しっかりと録ってるか?」

 

『勿論。今し方スネークにも見せたけど、彼も驚いていたよ』

 

「だろうな。で、スネークの方からは」

 

『RAYの近代化改修プラン・・・とは呼び難いってさ。火力は桁違いだけど、見た感じ大型兵器やISを主眼としているのが分かる。対人にするならナパームの一発でも入っている筈だってね』

 

「・・・確かに、スペックとしては火力も動きも桁が違った。そしてAISとかを装備していたけど、一対多の印象がミサイルだけに集中していた所を見ると・・・本当に対ISを意識した設計の武器が多すぎる」

 

『クラスターにAISそして機銃とプラズマ砲。相手や攻撃範囲を固定しているのが多い。そして・・・』

 

「何か分かったのか」

 

『ああ。今、米国の国防省にアクセスしてみたけど、RAYの改修プランとに若干の違いがあった』

 

「違い?」

 

『米国主導で行われるRAYの改修計画は左腕に多目的榴弾、右腕を大型ブレード。そして背部には六連装発射管をそのままにAISと膝に対艦・対戦車ミサイル。頭部は襲った奴同様にプラズマ砲といったプランだそうだ』

 

「・・・ほとんど違うな・・・」

 

頭部のプラズマ砲は襲撃したRAYも装備していたが、背部は改修前と同様の通常の六連装ミサイル。膝は対艦・対戦車ミサイルではなくクラスター爆弾だった。

そして何より、腕の違いが大きい。

襲撃したRAYは両腕がAISの詰まったミサイル発射口を装備していたがオタコンが言ったプランのは左腕が多目的榴弾。そして右腕一本丸々がブレードと大型兵器だけではなく障害物などを破壊する為の対拠点用と多岐にわたる任務をこなせるような設計となっている。

 

「・・・ワザと・・・だよな」

 

『ああ。多分、分かっててだと思うよ。彼女は』

 

一夏のバックアップをしている者達がその気になれば、このような調べ物が簡単に分かるのは彼女も承知の筈。だからか、彼らには自分たちがそう推察すると分かってて改修したように思えてならない。いや、それが正しいのかもしれない。

彼の知る彼女は、分かっていてもそれを覆す結果を見せ付けてくる。

彼らが調べれば違いが分かるというのを分かっていても、それを承知でその範囲で覆す事を起こし、相手の度肝を抜かせる。

 

「・・・取り合えず、大佐の所にもデータを送っておくか?」

 

『ああ。スネークに見せた後にデータをキャンベルの元に送信した。メールの暗号化キーは僕等だけしか知らないコードにしたし、防壁はサニーが組み立てた。早々見られる心配はないよ』

 

「ならいいけどなっ・・・」

 

『っ・・・イチカ、何処に行くつもりだい!?そんな身体じゃ・・・』

 

「大丈夫だ・・・ちょっと痛いけどな」

 

そして彼もオタコンの度肝を抜かせる様に、彼はMk-Ⅳのカメラの前で傷ついた身体を無理矢理立ち上がらせた。まだ治りきっていない身体の一部が力を入れると痛みを走らせ悲鳴を上げて彼の動きを妨げる。重力によって地面に立つ人間は自然と立つ為に力を入れているので必然的に身体には力が入り、それが常時彼の身体に響いてくるのだ。

 

「肋骨か・・・この痛み」

 

『そんな無茶して、何処に行く気だい・・・!?』

 

「・・・ちょっとした用事だよ。俺にとって大事な・・・」

 

『・・・・・・。』

 

「直ぐ戻ってくる。だから、ココで待っててくれ」

 

唯そう言って一夏はその場から立ち去ろうとする。しかし、身体からは未だ癒えぬ傷から痛みが走り、立っているだけでも精一杯の状態。一瞬でも気を抜けば倒れるのは誰の目からも明らか。

それでも彼は立ち上がり、地面に足をつけるその姿はこの場では無意味に近い行動。悪く言えば死にに行くのと同じとも言える。無理矢理にでも身体を動かし続ければ何時かは身体は崩壊する。それでも彼は一体何処に行く気なのだろうか。

呆然としてその姿を見ていた男には、まだ全ては理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は代わり、学園内ではあるが其処は一年一組の教室。

千冬が副担任を請け負うクラスの部屋だ。

しかし、現在の時刻から放課後の時間であるのは明らかであり、何より生徒達は現在学生寮で待機を言い渡されていた。他の生徒が居たとすればただでは済まされないであろう。

 

だが、その中でも教室の鍵は開いていた。誰かが鍵を開けたからだ。

そして中からは数人の人の気配がしている。犯罪者ではないのは確か。でなければば鍵はこじ開けられて居る筈だからだ。

 

「さて。お前等三人、どうしてこうなっているのか・・・分かっているな?」

 

「「「・・・・・・。」」」

 

まるで補習授業でもするかのように、ある理由で呼ばれた三人は彼女の目の前の席に座っていた。と言うよりも座らせられていたと言った方が正しいだろう。別に彼女たちは正座だろうが立ってでもだろうが構わないのだから。

何より、選択肢と言うのは彼女たち三人には無いに等しいからだ。

眼前には三人の内二人の担任である千冬が。その後ろ隣には心配ではあるが口を挟む気は無い山田。更に、本来呼ばれる理由の無い生徒二人が廊下側に立たされ、片方は頭に真新しいコブでも出来上がったかのように頭を撫でていた。

 

「オルコット、篠ノ之そして凰。幾らお前等訳アリメンバーだからと言って、自分たちがどれだけ危険で馬鹿な真似をしたのか分かっているのか?」

 

「・・・・・・。」

 

「それは・・・」

 

「あの時は・・・その・・・」

 

千冬の前にはRAY襲撃時に一夏と共に迎撃ら参加したメンバーが座っており、その内二人は彼女のプレッシャーに圧され言葉が途切れ途切れとなっていた。

その中で一人だけ動じず、黙り込んでいる者が居たが千冬はその一人については後回しとする事にして、話を進めた。

 

「言い訳は聞かん。大方、エメリッヒが心配だったからとかそこいらの理由だろうからな」

 

「・・・・・・。」

 

「っ・・・・・・。」

 

 

「・・・では、一人一人聞いていくが・・・凰」

 

「は、はい・・・」

 

「何故あの時、エメリッヒの警告を無視した?」

 

「・・・え゛っ・・・アレ、聞いてたんですか・・・」

 

「ああ。オープンチャンネルで一からな」

 

「・・・・・・。」

 

今更ではあるが、その事を知った鈴は恥ずかしくなり顔を赤くして目線を下へと落としていた。自分でもあの会話が丸聞こえだったなどと今知ったのだ。

冷静になった今では何であの時、と後悔してはいるが同時に妙な達成感が彼女の中にはあった。

 

「危険なのは当然の事。だからアイツもお前を逃がさんとして下がる事を言った筈だ。なのに、お前はアイツの言葉を無視して攻撃を始めた・・・」

 

「ううっ・・・」

 

「下手をすればその顔のガーゼぐらいでは済まなかったぞ」

 

鈴の頬には真新しいガーゼが張られており身体の所々には小さな傷が残っていた。

スライダーのAISを直撃で喰らいはしたが、絶対防御が働いたお陰で自身へのダメージは最小限で済んだ。もし、千冬の言うとおり、下手を踏むか運が悪ければ彼女も一夏の様にベッド行きとなっていただろう。唯、行かされる側だとまんざら嫌と言う訳でもなさそうだが。

 

「加えて、そのまま月光の群れとの戦闘・・・お前、月光の蹴りの威力を知っているか?訓練された兵士でも当たり所が悪ければお陀仏だ」

 

「うえっ・・・」

 

「・・・その顔だと知らずにと言う所か。お前の性格からして肌で危険性は分かっていたようだが、実際の威力を知ってたらだとどれだけ無茶な事だったか・・・」

 

「で、でもあいつ等をほっておくのも・・・」

 

「だからと言って正面からタイマン張る馬鹿がいるか?」

 

「・・・・・・。」

 

正論を言われた鈴は圧力に負けて次の言葉を言えなかった。

下手を踏めば大の男でも死を宣告される。幾らISに絶対防御があるからといってノーダメージになるわけも無い。月光の足の攻撃でISの絶対防御によって軽減するダメージは半分にも満たないのだ。当たり所が悪ければ腕が骨折したり骨が破損したりと内部にもダメージが伝わる。無敵ではないのだ、ISの絶対防御は。

絶対に相手の攻撃を防ぐシステムではない。搭乗者へのダメージを防いだり軽減するだけのシステムだ。

どんな攻撃を防げるシステムであれば、今頃世界は女社会になり一部の者達の独裁政治の世界となっているだろう。

 

 

「・・・・・・で。その馬鹿に付き合った篠ノ之」

 

「・・・はい」

 

「正直、お前は凰よりもタチが悪いぞ。分かっていて戦線に参加するなどな」

 

「・・・・・・。」

 

続いて、鈴の隣に座る箒に目をやった千冬。

鈴とは違い、彼女の目は覚悟をしていた目だった。彼女もこれ位かこれ以上の事は覚悟してあの場に加わったのだろう。

それは千冬も分かっていた。だが、その加わる場所が今の彼女には危険過ぎた。

無情の無人機たちが犇めく戦場に自ら望んで飛び込んでいったのだ。まだ実力など幼子といえる彼女には鈴以上に危険と言えるし、無謀にも程がある。

 

「打鉄はあくまで訓練機として開発された機体だ。性能自体も他の第二世代機とは見劣りするし、何より稼働時間にも問題がある。多少技術でカバーしていたが、余り得策とは思えんかったが」

 

「・・・・・・。」

 

「篠ノ之。助けたいという事も分からなくもない。だが、自分が死ねば元も子もないのは分かっていただろ」

 

「・・・それでも・・・」

 

(・・・・・・。)

 

「それでも・・・ほっとけなかったんです。あんな無茶をしでかす二人を・・・」

 

「・・・・・・。」

 

僅かに声が震えていた。箒の言葉の一つ一つは震え怯えているというより、搾り出した中での言葉というのが強い。

箒が千冬に怯えるというのは出会ってから一度もない。それは彼女が千冬を信用しているからで、怯えるのは千冬が箒に対して本気で怒っていた時ぐらいだ。

だからか、何か別の理由があったのではないかと思っていたが、今はそれを聞く場ではない。

何より、彼女にとって厄介な人物が後に控えているのだ。

 

「・・・もう少しマシな理由を持って来い。理由不十分では此方も処分のしようがない」

 

「・・・はい」

 

「・・・・・・。」

 

あまりに理由が不十分な二人。無我夢中も分かるが、それにしては無謀が過ぎる行為だ。

ISと言う鎧を纏っていたとしても一夏の様な怪我を負っていたのかもしれないし、最悪死にいたる事もあり得た。今回の一件は運が良かったというべきだ。

 

 

 

「・・・さて。覚悟は出来ているか、オルコット」

 

「・・・まぁそれなりには」

 

そして。最後の一人。一番の問題児と彼女がとる人物。

対物ライフルを使い、月光を撃破したセシリアは前の二人とは違い冷静な態度と表情を直ぐさず日常と然程変わらずの様子で千冬に言葉を返した。

サラリと言葉を述べるセシリアに千冬は不愉快に感じていたが、それを爆発させるにはまだ早い。ココで怒れば彼女に返しをするチャンスを与えるのと同じだからだ。

その為か鈴と箒の時よりも慎重に言葉を選ぼうと考える千冬の姿は二人と話していたときとは態度や声色が一転しており、すぐ隣に居た二人は態度の変化に表情をあまり変えなかったが驚いていた。

 

「今回のこの二人との戦闘参加よりも、お前には先ず聞きたい事がある」

 

「分かっています。どうせ、私の持っている火器を全て教えろ。とでも言うのでしょ?」

 

「分かっているじゃないか。正直に話してくれたら、私もお前の本国に詳しく報告できるからな」

 

「・・・・・・それは難しいですわね」

 

「・・・。」

 

「ただ。火器についてはアレで全部です。それは保障しますわ」

 

「では、ココでその全部を出してもらおう。後は此方で預かり向こうに返すからな」

 

「・・・それが難しい、と言えばどうですか?」

 

「何・・・?」

 

 

(えっ・・・ってか火器って!?)

 

(アレだけの火器を持ち込んでいるのに今までお咎め無し。まさか・・・?)

 

 

「ココまで言えば先生には予想が付く筈だと思いますが・・・」

 

「えっ・・・まさか、オルコットさん・・・」

 

「はい。銃火器の全ては私の私物。そして、この事は既に本国・日本と学園の方には既に通達済みです」

 

「っ・・・!?」

 

 

「あら。やっぱしまだ話していなかったんですね、学園長は」

 

「・・・更識・・・お前は聞いていたのか」

 

「ええ。ですが、学園長の方から織斑先生に直接通達しておくと言っていましたので、今までは分かっていると思っていましたから」

 

「・・・・・・。」

 

千冬を嘲笑うかの様に驚愕の事実を述べるセシリアと楯無。セシリア自身の所持している火器の三つ全ては千冬の知らない所、知ることの出来ない所で既に話が通っていたと言う事に千冬はまたしても彼女たち二人に出し抜かれたと拳に力を込めていた。

楯無はその千冬にセシリアの火器所持についてを説明すが、その説明は場の空気からして蛇足の様にも聞こえた。

 

「特例措置として彼女に火器の所持は許可していますが絶対厳守として人に向けて発砲しないこと。火器を常に携帯しない事。弾の補給は国内全てで禁止、無論本国からもです」

 

(もっとも、二つ目については恐らく彼女は守っていないだろうがな)

 

そして、その会話中に虚が思った厳守の二つ目を守っていない事。これは確かなのだろうかもしれないが、彼女が毎日持ち歩いているかについては分からない。

あの箒とのいざこざまで彼女は一度も抜かずに刺していたと思われるので絶対に毎日持ち歩いているという事もあるかもしれないが、彼女の行動を毎日確認しているわけでもないので確かではないのかもしれない。どちらにしても確かな証拠がないので答えを知っているのは本人だけと言う事になる。

 

 

「・・・。では、少し話しを変えよう。何故お前はISではなく対物ライフルで応戦した。対物ライフルの威力なら、軽く搭乗者の脳天を貫く事さえも簡単だ。もし、お前が謝って二人・・・あるいはアイツに当ててしまったら・・・どうするつもりだった」

 

「それは問題ありません」

 

「・・・。」

 

「だって、私狙撃には覚えがありますから」

 

 

絶対的自信。それは彼女の揺ぎ無い力の一つ。

そして、たった一つの彼女がココまで生きてこれた知恵と授けてくれた人との証。

話したとき、セシリアの言葉には強い自信に満ちていた。彼女にとって狙撃、スナイパーというのは自分が誇るべき唯一つの力だからだ。

 

同時に、唯一つのある人物との思い出でもあるのだから。

 

 




オマケ。

メタルギアRAY・カスタム
ご存知、天災兎こと篠ノ之束が改修したメタルギア。
近代化改修機とは違い、対ISを前提として改修されたと推測されている。
その為、対拠点である右腕のブレードはなく、代わりに両腕がAISミサイル発射口となっている。その他、膝部にクラスター爆弾。機銃は命中性を重視した物が取り付けられている。

彼女が何時何処で改修したかは全くの不明。
スペックは現存のRAYを上回るが、動きがAIにあるまじき非効率的なアクションが多いためイーブンとなっている。

一夏達によって倒され、AT日本支部に引き渡された。
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