IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第二十二話です。

ようやく次に進む・・・のですが、今回はちょっとした寄り道です。
今回の大事な部分とも言える話。それが今回の話です。
過去の話で長々となっていますが、どうか最後までお付き合いをよろしくお願いします。

と言う事で今回は主人公である一夏の二年前の事。
つまり、MGS4の事件に関わった時の出来事です。
プレイしたり動画を視聴した方は「あ、ここだなぁ」と想像しつつ見ていただけると有難いです。

では、誤字脱字・駄文はご愛嬌。
それでも良いと言う方は
第二十二話、お楽しみ下さい。


No.22 「夢の過去」

 

今から二年前の事。2014年。

まだ世界が戦争経済の中にあり、『愛国者達』に統制されていた時代。

その『愛国者達』と滅ぼし、あらゆる支配から真に解放される場所『アウターへイブン』を作り上げようとしていた男が居た。

 

名はリキッド。リキッド・オセロット。

 

かつて『リボルバーオセロット』と呼ばれていた男である彼は自身に、ソリッド・スネークこと現在のオールド・スネークの双子の兄弟である『リキッド・スネーク』の右腕を移植しナノマシンとサイコセラピーによりリキッドの人格を移植。自己暗示をかけてリキッドの精神を刷り込んだ事により精神的なドッペルゲンガーとなったのが彼だ。

 

愛国者達の側に付きながらも密かに愛国者達を抹消しようと、そして一人の伝説の男を解放しようと、己が精神をも利用して戦った男。

その男と相反する男。それがオールド・スネーク。

スネークがオセロット達の真意を知るのは、彼らの最後の戦いの後。愛国者達とそのシステムが破壊され、世界が、一人の男が解放された時に知ることとなった。

 

愛国者達が支配した世界。時代。規範。その全てが崩壊した時。

それがトリガーとなり、新たな始まりが生まれたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その少し前。

最後の戦いが巨大戦艦『アウターへイブン(外側の避難所)』で行われている頃。ヘイブンへとスネークが突入する為、ハワイに駐留していた戦艦ミズーリが単艦で出撃。艦長はスネーク達と縁のある人物『美鈴』がミズーリと共に最後の戦いへと導いたのだ。

 

スネークや同じく突入したメリルとアキバことジョニーがヘイブンに突入した後。彼らを援護する為、ミズーリは大型の戦艦であり潜水艦でもあるヘイブンに並び、乗船してくる敵や無人機の迎撃に追われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スネークがヘイブンへと突入している最中、リキッド軍はその突入の援護をしたミズーリを排除せんと、配備されていた無人兵器と私兵部隊であるヘイブン・トルーパーの混成部隊をミズーリへと乗船させていた。

ミズーリにも敵乗船に対する防衛の為に隊員が配備されていたが、精神がやや不安定な為に逃げ出す兵士も少なからず居た。

そこでオタコンのバックアップとしてスネークに訓練されていた一夏はミズーリに乗船した敵を迎撃する為に自らも甲板に出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミズーリ甲板上では、乗船してきたヘイブン・トルーパー達を相手に米兵士たちが交戦を繰り広げていた。ヘイブン・トルーパーは特殊なヘルメットとボディースーツを付けており感覚と身体能力が強化されており、カタパルト無しでも高い跳躍が出来る。

忍者の様に俊敏な動きをする『彼女達』にとってはこれさえあれば乗船も容易なものだろう。

 

「また来たぞ!!」

 

「くそっ!数が多すぎる!!」

 

その強化された身体能力で跳躍するヘイブン・トルーパーたちは続けざまにミズーリへと乗船し、武装したP90を構えて戦闘に参加する。

それがスネーク達が突入してから延々続き現れては倒され、そしてまた現れるといったループを繰り返していた。確実にトルーパーたちは倒せてはいるが、その穴埋めをするかのごとく別のトルーパーたちが跳躍してくるので防衛側は次第に劣勢へと立たされたのだ。

 

 

「チッ・・・!」

 

甲板上にある遮蔽物を盾に一夏も銃を持ち防衛に参加していた。手持ちの銃はスネークから借りたMk.17ことSCAR-Hと米軍でも使用されているXM8。そしてハンドガンのFive-seveNは以前の任務でスネークがヘイブン・トルーパーから没収した物で、それを予備の銃として腰に付けていた。

 

「こなくそっ!!」

 

「無理に頭を上げるな!狙い撃ちに・・・」

 

 

『-------!!』

 

 

「ッ!月光だ!」

 

「誰か対戦車ライフル持って来い!!」

 

「了解ッ!」

 

ヘイブンが出現し最初は怯えて逃げ出す兵士も居たが、米国軍人としての意地を見せたのか、段々と落ち着きを取り戻し、冷静な指揮をする指揮官やその指揮官に指示され自分の役割を果たす兵士達が姿を見せ始めた。

システムに制御されずにもコンビネーションを駆使し劣勢ながらも善戦を続ける。

その姿に参加していた一夏は、少し心配しすぎたかな、と小さな笑みを浮かべていた。

 

「RAYが出てきた!後部甲板ッ!!」

 

「んなろッ!!」

 

しかし、劣勢であるのには変わりは無い。

敵との戦力差があるこの状況ではいずれ敵の攻撃に対応しきれず自然に防衛線が瓦解する可能性もある。

勝負はスネークが目的地である場所に辿り着くまで。彼がその場所に着いたその瞬間。彼らの勝ちが決まる。

だが、もしスネークが辿り着く事が出来なかったら。時間が間に合わなかったら。

 

そんな事を考えている暇はない。今は一分でも長くこの場を持たせる事が先決だ。

 

 

《 ズドォンッ!! 》

 

 

後部甲板の方から一発の轟音が鳴り響く。後部にある50口径の主砲がRAYへと火を噴いたのだろう。遮蔽物の陰から後部にはみ出たRAYの姿を見る一夏は主砲の砲撃により勢いよく登場したはいいが、直ぐに倒されてしまったRAYを確認すると一息つく。

先ほども一夏が防衛に参加する甲板にRAYが現れ、主砲で飛ばされるか口を開けた瞬間彼がドレビンから貰ったジャベリンやスティンガーで迎撃した所だ。

量産型のメタルギアであるRAYだが、弱点は元の試作型と同じ。口にミサイルを撃ち込めば倒す事はできる。

防衛を始めて約十分の所ではそう思っていたが、次々と現れるトルーパーと無人機、そしてRAYの攻撃に元から劣勢だった状況が段々と苦しくなり、弾も心もとなくなり始めていた。

 

「Mk.17は後三つ。XM8でも二つか・・・」

 

残るマガジンは数える程度。これが無くなれば後は腰にあるハンドガンだけだ。

XM8のマガジンを交換し一夏は自分の足下に、残るマガジン全てを置く。いちいち腰などから出して交換するよりかは早い筈だ。

 

「オタコン。スネークは?」

 

『もう直ぐだ。そっちは?』

 

「マガジンがそろそろやばくなりかけてる。コッチも時間は無いな」

 

『時間勝負だね。スネーク、大丈夫かい?』

 

『ああ。だが、目の前に大量のフンコロガシ(仔月光)が居て、どうにもな・・・』

 

「急いでくれよ。このまま行けば俺たちだけじゃない。世界が終わっちまうんだ!」

 

『何とかしてみるさ。そっちもなんとか持たせてくれ』

 

 

「無茶仰る・・・」

 

覚悟は出来ていた。だが、スネークが目的地に辿り着くまで持ちこたえられる保障はない。

敵が優勢であり残弾も底が見え始めているとなれば誰もが戦意を喪失しかねない状況だ。加えて途絶える事の無い敵増援。

 

「だが、覚悟は・・・とっくにできてる!」

 

相打ち覚悟で迎え撃つしかない。一夏はXM8を置き、Mk.17に持ち返る。残弾はまだ此方の方が多いからでフォアグリップをカスタムしているので命中精度は一夏からして此方の方が高いのだ。

遮蔽物から飛び出た一夏はMk.17を構えて発砲。グリップで手振れが抑えられているので弾の命中度はよく、数発で二人のトルーパーを撃破した。

 

「こっちも命かかってるからな。悪いが、容赦は無しだぜ」

 

一夏が銃を握り始めた時には戸惑いがあった。恐怖もあった。だが、今ではそれを感じない。寧ろ、それを糧として肯定し命を奪う事だと理解して握っていたからだ。

銃を持つと言う事がどれだけ重いことか。命を奪う道具としてどれだけ重いのか。

知らず知らずに銃を握り扱う事によって一夏はそれを知っていった。

 

「くっ・・・!」

 

グリップを握り冷静に狙いを定め銃爪を引く。

ブレがグリップによって少なくなっているので後はスコープから覗き込んで一発に絞って引けば弾を抑えつつ確実に相手の頭部に当てる事が出来る。言うなれば簡易狙撃銃だ。

 

「いいぞ坊主!そのまま狙撃を続けてくれ!此方で牽制する!」

 

「分かった・・・!」

 

劣勢の状況ながらも一夏達の陣営は安定している。冷静な指揮とそれをしっかりとこなす隊員達。数で劣る彼らだが、其処を取り戻しつつある感覚と連携で補い確実に敵を撃破していく。

トルーパーは牽制しつつ二人一組での挟撃。月光は文字通り足止めしつつ対戦車ライフルでの攻撃。RAYは口を見せたところにロケット弾。

ゲームの様に構築される敵への対応策に則り、隊員達は慌てず落ち着いた様子で敵に合った対応をする。だが、実際は小さな焦りを持っており、それが彼らの動きに出ていた。

何時までこの劣勢で持ち堪えられるか。何時になったらスネークが到着するのか。もしかしたら失敗したのか。

時折小さく過ぎる感情に揺さぶられる彼らは余計な体力を消費したのか息が荒れ始めていた。

 

一瞬でも気を抜けばその瞬間彼らは総崩れになる。

愛国者達によって管理されていた時には無かった懐かしいであろう感情を肝に銘じ、今にも崩れ去りそうな精神を支えて戦う。

 

「これで六人ッ・・・」

 

「敵のカエル兵(ヘイブン・トルーパー)の数が減ってきた・・・増援が出せなくなってきたのか?」

 

「分からん。だが、無人機はまだ居る筈だ。全員、気を抜くな!」

 

「「「り、了解ッ!」」」

 

 

「・・・オタコン。今、カエル兵が少なくなってきてるが、何かあったのか?」

 

『今、メリルと雷電達が足止めしている。多分それで余計な戦力が無くなってきたんだ』

 

「・・・なら。コッチは後は無人機だけだ。どうにかいける・・・かもしれん」

 

『分かった。コッチもそろそろ・・・ッ!!!』

 

通信越しにオタコンが息を飲んだ。

その小さな声に一夏は現在のスネークの位置を見ずに、オタコンに聞かずに特定した。

 

目的地にへと繋がる一本道。しかし、唯の道ではない。

人の細胞にある水分を蒸発させる、細胞膜をも貫き水分だけに襲い掛かる電磁波の風。

マイクロ波の風だ。

簡単に言い換えれば電子レンジの中に現在スネークはふらふらな状態で立っていたのだ。

指向性エネルギー兵器の一種であるマイクロ波。そのマイクロ波が常時流されている一本道を抜けなければ最終目的地に辿り着く事は絶対に出来ない。其処が世界を救う、この戦いを終わらせる場所だからだ。

しかし、当然のことながら生身の人間が行けば確実にその人間は死を宣告される。

だからオタコンは任務開始の直前にアルミ粒子をスネークが着用しているスニーキングスーツに厚く塗装し耐えられるようにしていたのだ。

 

だが、実際は頭部やマッスルスーツも兼ねている関節などには塗装は施していない。

技術的問題もあるのだろうが、何よりも

 

 

そのコーティングで防げるマイクロ波の量もたかが知れていたからだ。

 

 

「・・・頼む。スネーク・・・」

 

 

皆がいる、この世界を救ってくれ。

一夏は弱音にも聞こえる言葉を口にしようとするが、その時の彼にとってその言葉は自分が言っていい言葉なのかと思い、口にするのをやめた。

彼にとっての皆とは一体誰なのか。

サニー達か。それとも他の誰か。

 

 

 

 

 

 

 

 

それとも。別れを言えなかった自分の姉か。

 

 

 

「・・・・・・!」

 

考えを殺し、一夏は歯を強くかみ締める。

まだそんな事を考えていたのかと。

その考えを消すかのように、一夏は再びMk.17を構え謝意へぶつから顔を出す。

 

 

 

 

 

「・・・?」

 

その直後に見た甲板の光景は何かが違っていた。詳しくは分からないが、先ほど顔を上げた時とは違い何か違和感を感じていたのだ。

その違和感にはその場で戦っていた者達にも分かるほどで、一体何が起こっているのかとそれまで其処から隠れては銃撃を繰り返していたトルーパーたちが壁に使っていた場所を見つめ、警戒していた。何かの作戦か。それとも自分達が勝利したのか。

 

先ほどまでの戦いの緊張感とコンバットハイが、その小さな間の静寂によって火照る熱と共に身体から冷めていく。

しかし、息は依然として荒く隊員の中の一人は肩で息をしていた。

一夏の目から動きに無駄がちらほらと見えたところを見ると入って間もないか『システム』に依存しきっていたかのどちらかだろう。コンバットハイの状態は彼の方が長く続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《 カラン、カラン 》

 

 

 

 

 

「ッ!!!」

 

その静寂に気をとられてい所為で反応が遅れた隊員達。

しかし、甲板のウッドデッキに空のビンか何かが落ちる音が聞こえ、その音に一夏は真っ先に勘付いた。

スタングレネード。そしてスモークグレネードの二つだ。

 

「目を塞げッ!!」

 

「ッ!?」

 

「しまっ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の事だ。僅かにピンを抜くタイミングが早かったからか、先にスタングレネードが破裂し、其処から眩しい光が彼らの視界を覆った。

色とりどりに彩られていた視界はたった一発のグレネードによって真っ白な世界に変化し、音も視界も奪われてしまい、何も見えず聞こえずになってしまった。

 

反応が遅れてしまった隊員達はうめき声の様な叫びを上げ、なす術も無く視界と音を奪われてしまった。が、叫んだ本人である一夏は間一髪間に合い、目を瞑ると同時に遮蔽物へと身を隠した。

 

視界を奪われずに済んだ一夏だが、聴覚つまり音だけは守れなかった。

超音波の様な音が無防備な耳から鼓膜へと響き渡っていく。甲高い音が鼓膜を通じ身体の骨に響き渡り頭の中がグチャグチャにされたかのような酷い頭痛が一夏の身体の中で起こっていた。

 

「っ・・・!」

 

そして、スタンの光が消えると同時に今度は口と鼻が煙を吸い上げてくる。

僅かにタイミングをずらして投げられたスモークグレネードが底部と上部から静かな音と共に白い煙を出していたのだ。

スタングレネードによる光からのスモークによる煙の散布。徹底して自分達の位置を悟られたくないのか二重の妨害に一夏は何か仕掛ける気なのではないかと警戒していた。

 

「けほっけほっ・・・」

 

むせ返る喉を咳き込ませ、口と鼻の中から入る煙を無理矢理にでも吐き出す。

ようやく彼もスタンの僅かな光による影響から解放され、ゆっくりと目を開けると、辺り一面は白い煙が周りを覆い一面白い煙だけとなっていた。一応自分が隠れてるのに使っている遮蔽物と地面のウッドデッキは確認できるが、それだけだ。

何も見えない。これなら相手は上からでも正面からでも奇襲を仕掛けられる。

感覚を研ぎ澄まし、意識を集中させた一夏はMk.17を構えて周囲の気配を探る。

 

 

煙によって身動きが取れない以上、迂闊に動かず出方を窺うのが当然だ。

無闇に動けば好転する事もあるだろうが、それは極僅かな確率の話。普通に考えればそんな事は自殺願望と同義だ。

 

 

 

 

 

 

 

《 だんッ 》

 

 

「ッ!!」

 

だが、本当に自殺願望者なのか白く煙る中に誰かがウッドデッキに着地した音が地面から骨を伝い響いてくる。それと同時に小さく着地音も聞こえたので誰かが甲板に降り立ったのは確かだ。

一体誰が、と思いたいがこの場合だとトルーパーであるのが普通だろう。

寧ろ、彼女達以外に誰が着地するかと聞かれれば、思い当たるのは他には居ない。

兎にも角にも、一夏はその着地したトルーパーを相手取ろうと銃を握る手に力を入れなおす。まだ弾に余裕はある。それに、煙もまだ消えていないので此方から仕掛けても場所を勘付かれる事は無い。

仕掛けるなら今しかない。

 

 

 

だが。突如、一夏の背筋に悪寒が走る。

いや、これは悪寒じゃない。一夏の背筋に走り抜けたのは悪寒よりも恐ろしいもの、殺気だ。だがヘイブン・トルーパーたちの様な無情の機械的殺気ではない。

獲物を狙う獣の殺気。例えるなら自然界の捕食者の放つ気配だ。一夏の知る中でこれほどの殺気を放った人間は過去に一人しか居ない。と言っても、その一人の殺気はどちらかと言えば狂気で、これは純粋に殺意だけを持つ殺気だったのだ。

 

殺意に気をとられ、僅かに頭の中の思考が止まっていた一夏は晴れてくる煙の中で反応が出遅れた事に気づき、目が遮蔽物の向こう側が見える程度に顔を上げて銃撃戦の場所であった甲板の様子を確認する。

 

「居ない・・・!?」

 

誰も居ない。

甲板の上に確かに誰かが着地した音が聞こえた筈なのに、彼が見たときには誰の姿もなかったのだ。先ほどまで銃撃をしたりグレネードを投げたりしたヘイブン・トルーパーたちは恐らく向かい側の遮蔽物に隠れているのだろう。だが、それとは違うまた別のヘイブン・トルーパーがいた筈。

その本人は何処にいるのかと考えたその僅か。

 

一夏の脳裏にまさか、と言う言葉が駆け巡り顔を上空へと振り向かせた。

 

 

 

「ッ!!!」

 

 

確かに甲板には降り立った。だが、それがほんの僅かな間だけで彼女は其処から一歩も動かなかったのだ。前進も後退もせずに何処に消えたのか。

 

 

 

跳んだのだ。

 

 

 

「まずっ・・・!」

 

一夏が見上げたときには既に宙を舞っている最中だった。

着地の後、すぐにジャンプして遮蔽物に隠れる一夏達の上を獲ったのだ。身体能力が強化されるボディースーツを着用しているからこそ出来る芸当で、相当戦闘に慣れているのだろう。

そのヘイブン・トルーパーはジャンプし宙を舞っている最中に銃を抜き、ヘイブン・トルーパーの標準装備であるP90とFive-seveNを構え間髪入れずに乱射する。

 

「がっ!?」

 

「ぐあっ!!」

 

 

「ッ・・・!」

 

銃撃の雨に晒された隊員はやっと視界が戻ったと同時に銃弾に身体のあちら此方を撃たれ、絶命する。

正確な狙いはない。ただ敵に当てるだけという目的で惜しみなくマガジンに入っている弾丸を消費するその銃撃は弾切れを起こすまで衰える事はなかった。

 

上からの銃撃に一夏は横へ転がり回避するが、一発の弾丸が彼の腰の肉を抉り貫通。

乱射による集弾の悪さで広範囲に弾が散らばったからだろう。

加えて一夏は身軽な動きに対応する為に防弾チョッキは通常の物よりも厚さが薄い。

彼のチョッキも気休め程度の物でしかないのだ。

 

致命傷は避けたので一瞬の痛みだけで済んだが、それでも彼の身が危険な状態なのは変わりない。

乱射を行ったヘイブン・トルーパーは着地し同時に腰に刺しているマチェットを引き抜く。

動きに邪魔なのかマチェットを持つのは先ほどまでP90を持って居た右手で、マチェットを抜くと彼女はデッキを蹴り残る二人の隊員へと肉薄し斬りかかる。

 

「ッ!」

 

「コイツ・・・!?」

 

ようやく状態を把握した二人は接近する彼女に近づけさせまいとXM8の銃爪を引こうとするが、一人は間に合わずマチェットを喉に刺されて生命活動を断たされる。

もう一人は、一人が囮になってくれたので発砲のチャンスがあり銃爪を引く事が出来たが、銃口は彼女でも喉を刺された隊員でもない、ウッドデッキに当たっていき銃弾の焦げた跡だけがデッキに出来るだけだった。

 

「うわああ!?」

 

「・・・!」

 

 

殺される。恐怖に言葉が出ず叫びだけが口から吐き出される。

こんな所で終わってしまうのかと自分の最期を悟るその顔はただ迫る彼女に怯える男の顔だった。

 

「やらせるか!!」

 

「ッ・・・!」

 

しかし、体勢を立て直した一夏がMk.17をヘイブン・トルーパーへと構えて発砲する。

銃での攻撃に気づいたトルーパーは刺した隊員を盾に銃弾を防御。隊員から下がり、一夏からも距離を取る。

 

「今の内に下がれ!」

 

「っ・・・すまない・・・!」

 

間一髪救われた隊員は考える事もなく一夏の言葉を聞き入れ、足早にその場から下がり艦内へと後退する。

命を優先した隊員が艦内へと戻ると、甲板に残された味方は一夏唯一人だけだった。

他の隊員達は全員後部甲板だったり、艦橋また砲座などを守る為に出払っているので援軍などという心強いものはない。

唯一人。一夏だけが残されたのだ。

 

「・・・・・・。」

 

 

「・・・一人で三人も・・・あの動き、只者じゃないな」

 

場に静寂が流れる。Mk.17を構えつつも一度に三人も倒した相手に警戒する一夏。

マチェットとFive-seveNを構え、終始無言を貫くヘイブン・トルーパー。

どちらかが動けば再び戦いが再開される。一瞬たりとも気の抜けない状況に一夏はグリップと銃爪に指をかける手に力を込める。先制攻撃を仕掛けるつもりだからだ。

 

(相手の飛び道具は左手のFive-seveNだけ。P90は一メートルほど離れた場所に置かれている。弾数のある銃だが・・・)

 

仕掛けるには十分だ。

決意を決めた一夏は小さく息を吐き、一旦気を落ち着かせる。

相手も出方を窺っているからか動きは全くない。仕掛けるのは必然的に一夏になっていたのだ。

 

「・・・・・・!」

 

 

刹那。一夏はMk.17の銃爪を引き数発の銃弾を発砲する。

その再開の合図に相手も動き、先制攻撃である銃弾を避けてデッキに置かれたP90の元へとFive-seveNで牽制しつつも走り始める。

Five-seveNの銃弾を遮蔽物を使いある程度防ぐ一夏は弾切れとなったMk.17のマガジンを交換。P90を取った所に隠れつつ再び銃撃を行う。

その間にトルーパーはP90を取ると、同時に一夏からの銃撃に気づきP90を取るとそのまま走りつつマガジンを交換。空のマガジンを捨てると、重荷が外れたかのように動きが速くなり、一夏の懐に瞬く間に入ってしまった。

 

「ッ!」

 

先ほどのマチェットでの動きで分かった事で彼女は接近戦も慣れている。訓練をしているから誰でもそうなのではと思えるが、彼女の場合は訓練で身に付けた動きとは思えない戦いに慣れた熟練者の様な動きだったのだ。

同時に彼女がマチェットでの接近攻撃も予想しており、接近でのマチェットか銃撃でのP90かFive-seveNかで確率は二分の一。確実に仕留めるならマチェットで接近してくる確率が高いと踏んだ一夏は半ば賭けの様なこの状況に余裕を持っていた。

 

 

「よっしゃッ!」

 

「ッ!?」

 

賭けは勝った。一夏はマチェットの突きの攻撃をMk.17本体で防ぎ、隙をついての左手に腰に刺していたスタンナイフを抜き反撃に転じる。

マチェットの攻撃を防がれた事に一瞬焦りを見せたトルーパーだが、直ぐに落ち着きを取り戻しナイフでの攻撃を紙一重でかわしていく。

ナイフでの攻撃を尽くかわされる一夏は歯をかみ締めつつも、間合いを取らせマチェットの間合いから離れる。

 

「・・・。」

 

ある程度の間合いが取れると、一夏は落ち着いたのか肩で息をしつつも目線をMk.17へと落とす。マチェットの攻撃を防いだことで銃身に切り込みが入り、僅かにだが歪んでいる。

これでは使い物にならないと分かった一夏は足下にあるXM8を見つけると目線を上げてトルーパーへと向ける。

 

そして。なにを考えたのか、一夏は思い切りよくMk.17をトルーパーに向かい投げた。

 

「・・・!」

 

投げられたMk.17に相手は動じず、片手で跳ね除けると彼の攻撃手段がナイフだけとなったのでマチェットを構え一夏に肉薄する。だが、一夏にはそれだけの時間が稼げただけでも十分だった。

地面に落ちているXM8を回収し相手に乱射するだけの隙。一夏はそれが欲しいが為に使い物にならないMk.17を投げ、僅かにマチェットでの攻撃に転じるまでの時間を稼いだのだ。

 

XM8を回収した一夏は銃爪に指をかけて容赦なく銃爪を引く。

肉薄したこの距離だ。逃れる事は・・・

 

 

出来ない筈だった。

 

 

 

「ッ!?」

 

身を翻し銃弾の嵐から避けようとしていたのだ。

だが、間合いも近いために全ての銃弾を避けきるというのは出来はしない。

数発の被弾を覚悟して接近してくるその姿に、一夏はヘイブン・トルーパーが取るべき行動ではないと驚愕しつつも後ろへと宙返りで攻撃を回避。勢いが余ったからか甲板の端にある鉄パイプに頭をぶつけたのだった。

 

「いっ・・・!」

 

「チッ・・・」

 

 

「ッ!」

 

「援護する」

 

彼が頭をぶつけた事を好機と見て今まで隠れていたヘイブン・トルーパーが姿を見せ、P90を構えて一夏に向かい発砲しようとしていた。

だが、一夏も甲板全体を見渡せる端に居たので、ヘイブン・トルーパーたちが姿を見せたことに気づき、XM8の銃身下部に装備していたグレネードランチャーを彼女達に向かい発射。

小さなグレネード弾が一直線に向かっていき、その小さいながらも致命的な破壊力で隠れていた二人を纏めて吹き飛ばした。

 

 

「ッ!!」

 

「っ・・・片手はやっぱキツイな・・・」

 

 

 

 

 

 

「あああああああああああああ!!!」

 

「っ!?」

 

彼女達を吹き飛ばしたのが原因なのか、突如先ほどまで相手をしていたヘイブン・トルーパーが雄叫びの様な大声と共にマチェットとP90を構え再び肉薄してきたのだ。

叫びに驚くだけでもない。迫力と言うべきなにかが彼女から感じていた一夏は行動に迷いが出てしまい、彼女に隙を与えてしまった。

マチェットで突き刺しにかかる彼女に一夏は今度はXM8で防御。しかし、当たったのはXM8の銃身下部にあるグレネードランチャーで、銃本体よりも強度が無かった為か、マチェットが貫通し先端部が一夏の腹の辺りに突き出ていたのだ。

 

「くそっ・・・お前本当にカエル(ヘイブン・トルーパー)なのか・・・」

 

「っ・・・!!」

 

「こなくそッ!!」

 

命の危険であったからか一夏の生存本能のようなのもが働き、足で彼女の腹に蹴りを入れて無理矢理引っぺがした。だが、彼女はそこから問題なく体勢を立て直しグレネードランチャーに刺されていたマチェットを構える。

 

「っ・・・コイツ・・・」

 

そして。何を考えたのか、P90を自分の足下に捨てた。

予想外の行動の連続に一夏は本当に彼女はヘイブン・トルーパーなのかと疑いを持って居た。任務優先、無情無慈悲機械的な行動をする筈のヘイブン・トルーパーがココまで感情的な事をするのかと。

 

トルーパーが何故銃を捨てたのか一夏には分からない。こちらの銃によるアドバンテージを引き上げるだけの事に一体何の意味があるのか。

今の彼女が一体何を考えているのか分からないこの状態では迂闊な行動は命取りになる。

 

 

「・・・まさか・・・」

 

トルーパーは銃を持って居た手を腰に近づける。

それが一夏の思う「まさか」の答えだった。

 

 

その手に持たれていた物。もう一本のマチェットだ。

 

 

「・・・接近戦が好みかよ」

 

二本のマチェットを構え隙を窺う。機械的なヘイブン・トルーパーなら絶対に取る事のない行動だ。一体何故、と問いたい所だが彼女がそれを答えるとは思えない。

仮にも敵兵士。しかも制御されている人間だ。余計なことを話す事などないだろう。

 

だが、一夏もこのままやられる訳にも行かない。予備として腰に付けていたもう一本のナイフ。それを抜いて一夏は両方の手にナイフを構えた。

二本には二本。単純な考えだが、一本で戦うよりかはマシだろう。

 

「・・・いいぜ。悪いが俺も剣の関係で負ける気はないからな」

 

我ながらしょうも無い理由だな、と内心呆れるがどの道銃でどうにかなる状況でもない。

銃でそのまま戦えば接近を許し、対応が遅れて串刺しにされるのがいい所。

ならば同じ間合いで戦うまで。それが一夏の導き出した結論。

後は己次第だ。

 

 

 

 

「行くぜ・・・!」

 

「・・・・・・ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・!」

 

目が覚めた。意識が吸い込まれるように現実の世界に戻り、いつの間にか彼は夢を見ていたようだ。

現実に戻った一夏は今が何日か。あれから何日経ったのかなど思う所があったが、とりあえず先ずは身体を起き上がらせることが先決だった。

 

「・・・昔の・・・夢」

 

過去の出来事。それが何故今になってと疑問に思う。

別に特別何かがあった理由でもない出来事なのにどうしてあんな夢を見たのだろうか。

 

「・・・唯の夢だ」

 

そう。これは唯の夢だ。一夏は夢の記憶を頭の片隅に置きそう呟いた。

過去の記憶が夢として蘇っただけの事。今は気にする事ではない。

 

 

だが、何故か嫌にその記憶が頭の中にへばり付き、妙な感覚がしばらく彼の中をぐるぐると回り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では。今日から新しく入る転入生のご紹介です。えっと自己紹介をお願いします」

 

 

 

「はい。シャルル・デュノアです。皆さんよろしくお願いします」

 

 

 

「・・・・・・男?」

 

 

 

思えばそれが、一つの鍵となっているのだと一夏はこの時知ることもなかった。

何気ない事が、大きな事件に繋がると知らずに。

 

 

 




オマケ。

MGS4の事件当時前後一夏の行動。(おおまか版)

MGS4の数ヶ月前・・・モンド・グロッソで誘拐され犯人達に殺害されかけるも偶然にも別件で居たスネークに助けられる。その後訳あって厄介になる。
また、スネークに頼み込み戦闘訓練を受け始める。

MGS4・・・どこぞの組織がスネークを抹殺せんとマドカを投入。しかし返り討ちにされ、更には行き場を失ったマドカをスネークが回収。サニーと一緒に『一夏が』面倒を見る。この時の本人は「なんでさ」と叫んでいた。

スネークに鍛えられ、物覚えも良かったので大抵の技術はこの時点で既に習得する。
また、オタコンの護衛とバックアップ要員として南米のナオミ救出任務から参加。
本格的な戦闘はミズーリ甲板上が始めて。

ちなみにメリルの結婚式にも出席。この時メリルに腕相撲で飛ばされる。

MGS4の直後・・・様々な事情を知ったので日本に帰らず彼らと行動を共にするのを決意。彼らと共に世界を放浪する。また、スネークが引退したので、その後任としてオタコンをオペレーターに各戦地に潜入する。

IS×MGS(本作)・・・現在。ある人物を探す為にIS学園に入学。箒と再会し、鈴に殴られた。
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