IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第二十六話です。

久しぶりにMGSPWを新しいデータでまた始めてクリアしました。
いやぁ、久しぶりにやったら面白かった


ザドルノフ捜索が。

・・・あの脱走フェチ、面白かったなぁ・・・・・・ネタにしてみるか?


と言う事にもなりませんが、今回もちょっとギャグありのシリアス話。
シャルルの過去と事情の一片について語ります。
果たしてシャルルの運命は如何に。

では、誤字脱字・駄文はご愛嬌。
それでも良いと言う方は
第二十六話、お楽しみ下さい。


No.26 「表と裏」

 

 

部屋に戻ってから何があったか一夏は思い返す。

 

 

 

まず。部屋に入って違和感を感じていた一夏は、タイミングよくシャルルが声を掛けてくれたので気のせいだと思い、その場から動いて以前も使っていた窓側のベッドに荷物を下ろした。

そして、室内のシャワールームに居るだろうシャルルと会話し、その中でシャワールームの中に備え付けられてあるシャンプーが空であったのを思い出し、換えを貰っていた一夏はシャルルが居るにもかかわらず、シャワールームに入る。

すると其処には女体の肌をタオル一枚だけで守っているシャルルがいた。

 

その姿に一言の感想を述べた一夏は、突如混乱したシャルルに右ストレートを入れられようとする。

しかし、一夏はそれを回避。これで後はシャルルの気を落ち着かせれば終わり、なのだが・・・

 

なんとシャルルはシャワールームの壁を突き破り、更には貫通させたのだ。

その豪腕と威力に硬直した一夏は、その後鈴が現れるまでそのままの状態だったと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問題。

一夏は何処でどう間違えたでしょうか。(By MSF副司令官)

 

ヒント : 一夏は令呪で自害しません。て言うかサー○ァン○じゃねぇし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り合えず問題はどうでもいいわ」

 

「そうだな。回想で十分だ」

 

「うん」

 

閑話休題。

あの後、取り合えず落ち着きを取り戻したシャルルはジャージ服に着替え、一夏も簡単にズボンと黒シャツに着替える。

まだ恥ずかしがっていたので互いに別の場所で着替えた二人はそれぞれのベッドの近くに着替えを置く。別の事を考えていたのでどうやらかなり落ち着きを取り戻したようだ。

そして、大事になると言う事でドアの鍵を閉めた鈴。

 

こうして、部屋には一夏、シャルル、鈴の三人だけとなった。

 

一夏とシャルルは椅子に座り、鈴は一夏の寝ているベッドの上で足と腕を組んでいる。

その事を特に気にせず、一夏はシャルルとは目を合わせず、逆に目を閉じて考え込んでいる。

一方、反対側に座るシャルルは日常や授業などで見せたやや男っぽい動きや仕草をせずに女の子がするような座り方で、内股り足を見ながら黙り込んでいる。

 

そんな状態になってそろそろ二分は経つ。

その二分が異様に長く感じられるシャルルはどうするべきかと頭を働かせる。しかし、状況が状況なのでどうする事もできない。どうしたらいいかも分からない。

まだ混乱している頭の中に期待をもてないシャルルは話を切り出してくれるだろう二人を待っていた。

 

 

そして。最初に口を開いたのは、一夏ではなく鈴だった。

 

 

「・・・じゃ。改めて・・・何処から聞いたらいいかしら」

 

「・・・。」

 

「デュノア。なにか言う事は」

 

「・・・えっと・・・もう分かってるけど・・・実は僕・・・女なんデス・・・」

 

 

 

「「まぁそうだろうな(ね)」」

 

 

 

「ええ!?」

 

「なに驚いてんのよ」

 

「い、いや・・・」

 

何故、今まで男だと言い張っていたヤツが女だと言ったのにそれだけの反応で終えたのか。

シャルルにはそれが全く分からなかった。

普通ならもう少し信じたくないという反応をするところかもしれない。

中性的な顔をしているシャルルだから男であると信じられなかったから?

クセや仕草が可笑しかったから?

理由を思い浮かべるシャルルはそれだけでは分からないと、一夏達に問いを投げる。

 

「どうしてそんなに、平然と・・・っていうがボクが女だって・・・」

 

 

「「気づいてた(わよ)」」

 

 

「・・・・・・・・・。」

 

平然と述べられた真実にシャルルは言葉を失った。

まるで自分がここ数日やっていたことが全部無駄だったようではないかと言わんばかりの言葉に思わず涙目になる。あまりに淡々と、しかもあまり表情を変えない二人の顔にシャルルの心では何かが崩れ落ちたような気がした。

 

「え、な、え・・・どうして・・・どうやって・・・」

 

「・・・そうか。アンタ、そう言うことね」

 

「え・・・?」

 

「アタシ、中学は日本だったから、丁度の体格の変化って見られた時期なのよね」

 

「・・・・・・。」

 

「所謂、思春期の変わり目ってこと。一夏も運動してたから体格も結構変わったからね」

 

「そうか?」

 

「・・・喧嘩して運動して大怪我すりゃ、そりゃ嫌でも体格は変わるわよ」

 

「そんなので変わるとは思えんがな」

 

 

「・・・で・・・え、エメリッヒさんは・・・」

 

 

「・・・匂いだ」

 

 

「・・・は?」

 

 

 

「デュノアの匂い。男みたいな汗のある匂いってのが無かったからな。それに、歳の割りに体格が子供っぽかったから。まぁ、鈴と似たような理由だ」

 

「・・・・・・。」

 

結局の所、歳が不味かったのだ。

思春期を過ぎているというのに身体や顔立ちが其処まで未成熟というのは、何かしらの理由が無い限りあり得ない。生まれつきの何かか、成長スピードが他よりも遅れているか。だが、後者は運動や食事をしっかりとしていれば少しずつ男性の体格になるだろう。

だがシャルルにはそれが無い。歳もそれなりで見た目も健康的なのに男と言われたら逆に不自然に思う。

 

だから、最後に考えられる答えは一つ。

 

 

『シャルル・デュノアは男のフリをした女』と言う事だ。

 

 

 

「俺の知り合いにも中性的な顔立ちの人(雷電)は居るが、その人は体格は男だ。だから、その人には悪いが、その人を元に考えて俺はお前が女じゃないかって思った」

 

「・・・・・・。」

 

 

「と言う事で・・・結論言えば、とてもじゃないけど男には見えないって事ね」

 

「・・・・・・ハハハ・・・そっか・・・」

 

 

理由を言われたシャルルは、納得したのか小さく笑みを見せた。

その顔は参った、という降参の意味も込められていた。

二人には敵わない。そう思ったのだろう。

 

取り合えず男女問題については解決したと言う事ではあるが、問題はその先だ。

どうして男装をしてまでこの学園に入ったのか。

 

「で。改めて聞くが・・・どうして男と偽ってこの学園に入ったんだ」

 

「別に女でも代表候補なら問題はないんじゃない?」

 

「・・・うん。代表候補なら、別に僕も適正はあったし普通に入るって手も・・・あったと思うよ。けど・・・」

 

「別の理由・・・か」

 

「・・・・・・。二人は、僕の名前で気づいた事ってある?」

 

「名前?」

 

「そう。僕の名前。シャルル・デュノア・・・」

 

シャルル。フランス語の男性名だ。

名前までも偽って入ってきた。シャルルはそう言いたいのかと思う鈴だが、そんな簡単な理由では男として学園に入った理由にはならない。では一体どうして、と思っていたとき、一夏が口を開く。

 

 

「やっぱり、お前・・・」

 

「えっ・・・?」

 

「・・・気づいたんだね」

 

「ああ。聞くまではあくまで仮説だったがな。だが、お前のその言葉で確信した」

 

「やっぱり?」

 

「・・・一夏、どう言う事よ」

 

「・・・簡単だ。男と偽ってまで学園に入りたかった理由。いや。入らされた理由(・・・・・・・)は、恐らくシャルルのオヤジさんだ」

 

「・・・父親・・・デュノア・・・・・・あ!」

 

 

「そう。僕は、フランスのIS開発企業『デュノア社』の人間だよ」

 

 

デュノア社。

IS技術が発達し、コア以外の部分が開発可能となり、それは新たなビジネス・事業となり、多くのIS関連の企業が立ち上げられた。

中にはそれ以前にあった企業が新事業としてISの事業を取り入れるという例も少なく、あのAT社もその一つで無人兵器を作る傍ら、ISにも手を伸ばしているのだ。

 

デュノア社はその中でIS開発が企業単位で可能となった時に創設された企業の一つで本社はフランスにある。

そのデュノア社を代表するISといわれれば誰もが声を揃えて言う機体がある。

 

現時点、ISの第二世代機の中で最も優秀といわれる機体『ラファール・リヴァイヴ』

その開発企業がデュノア社なのだ。

現時点で稼動可能となっているISで約六分の一がこのラファールといわれており、その活動範囲は世界をまたに駆けている。

更に、採用されている国や軍も多く、PMCでもISはラファールが殆どだ。

一夏が潜入する戦場でも空を飛んでいたりミサイルや銃を乱射していたりするのは大抵がラファールで、他の機体はほぼ稀といえる。

 

 

そんな企業の、しかも社長の娘がどうして男装して学園に入ったのか。問題はそこだ。

 

 

「どうして、そんな企業の令嬢が男と偽ってココに入ってきたのか」

 

「そ、そうね。確かに・・・って一夏、まさか」

 

「大体の予想は付くが・・・実際はな」

 

「・・・。」

 

「シャルル。どういった理由でお前はココにやってきた」

 

「・・・ざっくりと言えば・・・本社、つまり僕のお父さんから、ある命令を受けたんだ。今、デュノアは経営不振だからね」

 

「経営不振って、そんなに売れ行き悪いの?」

 

「そう言うことじゃないよ。売れ行きって言うか、修理やパーツの需要はあるよ。けどね」

 

 

「次世代機か」

 

「そう言うこと」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・鈴。お前のISは第何世代だ」

 

「え。第三だけど・・・それがなにか関係あるの?」

 

「ラファールの世代は」

 

「第二」

 

「つまりはそう言うことだよ」

 

一夏とシャルルが何を言いたいのか。

それは次世代機や新型機を開発する為の研究が行き詰っている事。つまり、現在デュノア社は次世代という壁に当たっているのだ。

技術の進歩がある現在、世界各国では第三世代の試作機が生まれている。

セシリアのブルーティアーズ。鈴の甲龍。そして一夏の白式。

いずれも次世代に当たる第三世代機の試作機で、そのデータ収集の為に彼女達は学園に訪れているのだ。

だがシャルルはそれとはまた別の理由でこの学園に訪れた。

それが『次世代機の技術を持ち返る』と言う事。つまり、半ばスパイのような事をして技術を持ち帰れと言う事だ。

 

「ラファールは第二世代機で、現在も世界各地にある。だが、現在のISは第二世代から第三世代に移行しつつある」

 

「・・・。」

 

「いくらラファールが傑作だなんだって言われてもそれを上回る機体を開発すればいい。そうすれば新しい世代、第三世代が姿を現してくる。そして、何時しか第三世代が主流となる。そうなれば・・・」

 

「・・・・・・。」

 

「負の連鎖となって、会社は倒産する。つまり、デュノア社は終わる」

 

「え・・・」

 

「何時までも低性能の機体を使うなんてこと、小規模のPMCか国家で無い限りはないし、最悪テロリストとかに使われるって事もある。次世代にシフトすることで旧世代の値段ってのは急激に下がっちまうからな」

 

「だから、経営不振となったデュノア社は適正のある僕を学園に送り込むことで・・・」

 

「アタシ達の機体のデータを持ちかえろうと言う事に至った・・・ね」

 

「うん」

 

「じゃあ。別にアンタじゃなくてもいいんじゃない?会社ぐるみなら適正のある人雇って送り込んでにすれば」

 

「・・・そう。けど、僕の所はそうはいかなくてさ・・・」

 

「・・・・・・。」

 

「どうしてよ」

 

 

確かに、いくら適正があるからと言っても社長の令嬢をスパイとして送り込むというのにはどうしても納得のいかない鈴。そんな事をする位なら別に、誰か別の人を雇うかなにかして送り込めばいい話ではないのか、と言うのだがシャルルはそれを聞くと表情を暗くした。

 

「簡単だよ。親の言う事には素直に逆らえないんだ」

 

「・・・・・・。」

 

「親の・・・?」

 

「僕はね、父、つまり社長の愛人とに生まれた子なんだ」

 

「浮気相手って事?」

 

「そ。エメリッヒ・・・君」

 

「面倒なら一夏でいい。俺も難儀しているからな」

 

「・・・イチカ、君なら知ってるよね。デュノア社長には婦人が居るって事」

 

「ああ。他の企業との交渉や広告活動に力を入れてるって位だが顔はポスターで見たことがある」

 

「・・・・・・そ、そう」

 

「・・・?」

 

 

「僕は愛人である母さんと社長である父の間に生まれた。けど、浮気相手が企業の社長って事で僕らは余り公には出れなかったんだ。だから、僕と母さんはフランスの片田舎のボーヌに引っ越した」

 

「ボーヌ。フランス東部か」

 

「親戚がそこでワインを作っていたから、そこを伝手にね。決していい生活を送れていたってわけでもないけど、不自由がなかったのも事実。けど・・・」

 

「・・・。」

 

 

「母を亡くして、世間が戦争経済に入ったある日、僕は父に呼ばれた。別れてからなんの音沙汰も無かったのに、いきなり僕を呼んだ。もうその時に理由は大体分かっていたよ」

 

「自分がISの関係に付くと?」

 

「父がISの開発企業を運営しているからね。それ以外は思えないよ。その後、本社で適性検査を受けた僕は、正式にデュノア社のISテストパイロットとして登録された」

 

「一企業のテストパイロットか。だが・・・」

 

「話を聞いた事が無いのも無理ないよ。公には伏せられてたし、何より・・・」

 

「お前が浮気相手の娘だったから」

 

シャルルは小さく相槌を打った。

本当はそこから先は話したくも無かったのだろう。だが、今は話すべきなのだ。

そう決心していたシャルルは、口を止めず話を続けた。

思い出したもくない、あの辛い日々を。

 

 

「本社には僕にとって義理の母が居てその人は僕を酷く毛嫌いしていたんだ。愛人の子、泥棒猫ってね」

 

「器の小さい女ね」

 

「まぁ・・・ね。義母と父には子供が居なくって、その事も僕によく言っていたんだ・・・」

 

 

 

『どうして私達の間に子供が出来ないのに、あんなクソみたいな女にはこんなヤツが居るのよ!!』

 

 

 

 

「・・・義母は僕を子供とは思ってもくれなかった。それどころか、僕を何度も殺そうとした」

 

「えっ・・・!?」

 

「あくまで全部未遂だけどね。けど、正直怖かったのも何度かあった。酷いときには一人で戦場に放り込まれた。そして、僕に会社が肩入れする方の勢力に、身体で売り込んで来いって」

 

「それって・・・立派な犯罪じゃ・・・!?」

 

「別に罪にはならない。一般人が戦場に居る。そんなのは運が無いか戦闘に巻き込まれたからって事で幾らでも言い訳できる」

 

「けど、身体でってアンタ・・・」

 

「・・・。」

 

半ば娼婦のような事をしてでも会社に貢献してこい。大方、婦人が彼女に言った言葉はそんな所だろう。浮気相手との間に生まれた子が女なら『女としての全てを失わせる』。男なら戦場に放り込んで自然に死ぬのを待つつもりだったのだろう。

鈴の器の小さい女という言葉を少し変えて使えば、保身と利益が第一の人物だと直ぐに分かる。

ココでは語られないが、シャルルの台詞からは自分の欲と保身に忠実な人間であるというのが一夏のイメージだった。

 

「そして二年前。IS開発は次のステージ、第三世代に移行していった。当然、デュノア社も第三世代開発に力を注いだ。けど、肝心の技術が無かったんだ。その時の、今のデュノアには」

 

「第二世代のラファールが馬鹿売れしたから?」

 

「うん。お陰で生産ラインはパンク状態で当時は生産ラインの確保とライセンス整理、注文国への出荷とかで手が足りていなかったからね。国の支援もあったけど、正直変わりは無かった」

 

「文字通り『焼け石に水』ってわけか」

 

「落ち着いた後になって自分達が時代に遅れたと知った。父たちはどうにか遅れを取り戻そうと必死に研究を行ったけど、イマイチ決定打に欠けるアイディアが殆ど。加えて、各国が第三世代機のデータ収集、つまり第三世代試作機の完成と聞いた時にはもう焦りしかなかった」

 

「だから・・・」

 

「そう。僕が学園に入ってデータや技術を収集、それを持ち返ると言う事になった」

 

「・・・・・・。」

 

「これが僕が男と偽った理由。そして学園に来た理由だよ」

 

 

「つまり、話を全て纏めれば・・・」

 

 

・デュノアは自分の母親の死後、父親に呼び出されISのテストパイロットとされた。

・そして同時に義母からは虐待まがいの殺人未遂の行為を何度も行わされた。中には人権をも無視した事もあり、明らかに殺意があるのは明らか。

・一方でデュノア社はラファールの売れ行きに酔いしれてしまい第三世代機の開発に大きく遅れてしまう。

・その遅れた分を取り戻すため、丁度よく一夏が現れたのでそれに便乗し二人目の男と偽って学園に入学。

 

そして、何故他でもない自分であるのかというのが・・・

 

 

 

「最終的にこれもお前の義母さんの命令って訳だ」

 

「・・・そう。言い渡したのは父だけど、内容を聞いて一発で分かったよ。これはあの人が進言したんだって」

 

「・・・人権以前にこれって単なる八つ当たりじゃないの。浮気されるわ子供がいないわ、全部自分の責任なのに、それをアンタに当り散らしてるだけじゃない!」

 

「そうなるの・・・かな?」

 

「そうなるのかなってアンタね・・・」

 

いくら自分の夫に浮気相手がいたから、自分に子供が出来ずに苛立っていたから。そんな理由で彼女にそこまでの事をする理由になるのか。

抑えきれないほどの怒りが鈴の中から湧き出し始め、その怒りはこの場にこの国に居ない彼女の母親にへと向けられる。

自分の子でないから愛情を注げない。だからと言って物のように扱う理由になるのだろうか。

親からの愛情。この場でそれを知る数少ない人物である鈴は義母の行いに激怒する。

 

だが。それを聞いた方はどうだろう。

 

 

 

「八つ当たりでもいい。物の様に扱ってもらってもいい。僕が必要とされているなら・・・それで僕は満足だよ」

 

「・・・は・・・?」

 

「デュノア、お前・・・」

 

「父の愛人の子だって事で、あまり人と関わりを持てなかったんだ。だからずっと一人だった。何年も何年も。けど、僕が父に呼び出された時。不思議と嬉しかったんだ。父が、お父さんが僕を必要としてくれたんだって・・・!」

 

「・・・・・・。」

 

 

喜び。彼女のその感情が磨耗していた。

どんな非道な事でも自分を必要としてくれている。それだけが自分の存在理由なんだと、父や義母からの命令にすがりつき、自分が必要とされている事だけを思う。

悲しくも嬉しいその顔に、鈴は言葉を失った。

そして一夏は彼女の目に何もいえなかった。

狂信の目。縋り付く余り、シャルルにとって父と義母は別の意味で居なくてはならない人物となっていたのだ。

 

「アンタ・・・」

 

「・・・。」

 

「だから・・・だから僕は・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁまぁ。そう結論を急がずに。先ずはゆっくりと深呼吸をしなさい♪」

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

「えっ・・・?!」

 

「・・・鍵、どうしたんですか。先輩」

 

 

「マスターキーを借りてきました。全く問題ありません!」

 

そこに風のように気づけば一人の人物が会話の輪の中、更には部屋の中に入っていた。

ご存知、生徒会長の更識楯無だ。

 

いつも見る制服姿ではなく学園指定のジャージ服を着込むその姿に、一夏はなにも言わず、代わりに鈴が尋ねた。

 

「・・・なんでジャージ?」

 

「むぅ・・・元はガウン一枚で彼の部屋にしん・・・おっと突入するつもりだったんだけど、虚ちゃんに止められちゃって・・・」

 

「侵入って言いかけましたよね。貴方」

 

「さて。なんの事やら、このキャ・・・楯無ちゃん分かりません」

 

「・・・もういいわ。話してて疲れる・・・」

 

 

 

 

「さてと。改めましてシャルル・デュノアちゃん。つまり貴方はこう言いたいのね。

 

 

 

 

『自分には帰る場所はあそこ(デュノア社)しか無い』と」

 

「・・・・・・。」

 

「まぁ。話から考えるに、大方元住んでいた家は売り払われたとかじゃないの?」

 

「はい・・・荷物は預けられているといわれてますけど、実際どこにあるのやら・・・」

 

「で。退路も断たれた貴方は結果として無理難題を押し付ける両親のもとしか戻る場所が無いと」

 

 

 

「・・・だってそうでしょ?唯一戻れる場所が親の居る会社。どんな理由でも、どんな待遇でも親のもとに居られる。それが子供の幸せじゃないんですか!?親に子が必要とされた何が悪いって言うんですか!!?」

 

「そりゃ普通逆だからよ、デュノアちゃん。親が子を必要とするんじゃない。子が親を必要とするのよ。自分の目標に向かっていくためにね」

 

シャルルがそれでも親の元に居続ける理由を聞く楯無。

それを聞いた彼女は動じず、即答で返事をする。それは一夏と鈴から聞いても正論だ。

 

寧ろ、シャルルが可笑しい、いや可笑しくさせられていたのだ。

そこまでしか選択肢を与えず、選択肢を狭めた。

これでまともに今までのことの不満を打ち明けてくれればよかったが、病み切ってしまった彼女にはまともに考える事は出来なかった。

 

「正直、聞いてて言葉も出なかったけど、法廷にかければ罪状のオンパレードよ、それ」

 

「あ、やっぱり?」

 

「ええ。特に戦場に子供を放り投げるなんて事は非人道的。意図的にやらされているから十分証拠になるわよ」

 

「自ら望んでならどうするんですか」

 

「そこは親に罪ぶっ掛ければ問題なしよ」

 

「・・・随分すっぱりと酷いこと言うわね、アンタ」

 

「悪人には倍返しして其処から更に倍プッシュしろって言われてるから。後、男なら一夫多妻去勢拳。女なら適当に人身売買でも」

 

「寧ろ先輩が犯罪犯してますよ」

 

「大丈夫よ、証拠擦り付ければ」

 

「そんな、親に・・・!」

 

「デュノアちゃん。いい加減目を覚ましなさい。貴方が居るべき場所はあそこではない」

 

「えっ・・・」

 

「と言っても、本当に何処に居るべきなのか、それは私でも分からないけど。家売り払われてるぐらい徹底しているからねー・・・」

 

 

 

「なら、僕の居場所はやっぱり・・・」

 

「切り捨てなさい。あそこは貴方にとっては天国でも地獄でもない」

 

「・・・必要とされるから居る場所・・・さしずめ、お前にとってデュノア社は天国の外側(アウターヘブン)だ」

 

「アウター・・・ヘブン・・・」

 

「天国でもあり地獄でもある。だからどちらでもない。だから・・・何も変わらない」

 

そう。戦う事しか出来ない者たちが唯一生の充足を得られる楽園。

シャルルも同じだ。どんな非道なことでも、それで始めて喜びを感じられる場所。

生きていられると思える場所。たった一つとなった帰れる場所。

だが、結局は何も変わることは無い。

 

「・・・それでもいい・・・居場所があるのなら、そんな場所でも・・・」

 

「あら。けどアウターヘブンよりかはマシな場所はあるわよ?」

 

「えっ・・・」

 

だから変える。楯無はそんな殻に籠もったシャルルを引きずり出そうと、その為の小さな糸を彼女に差し出した。

 

「IS学園特記事項・第二十一条。本校在学中の生徒は如何なる国家・組織に帰属しない物とする。少しはしょって言ったけど、ぶっちゃけ言えば、在学中の三年間は貴方はフランスだろうが国連だろうがPMCだろうが狐だろうがが口は出せない。つまり」

 

「三年間は・・・自由、と言う事?」

 

「そう。この学園はいわば一つの中立国。一企業が偉そうに上から目線で身勝手な行動をすることも出来ないほどの暗黙の了解を世界各国は承知している。つまり。もしデュノア社が勝手に手ぇだしたら、その瞬間フランスは一日と待たず火の海になる確率は言わずもがな」

 

「じゃあ・・・!」

 

「まぁ三年間は貴方の身の保障と自由は約束できると言う事ね」

 

「・・・なら、その間に他の方法を」

 

 

 

 

 

 

 

「簡単に出来ると思うか?」

 

 

しかし、その小さな糸の色。それが本当に白い純粋な色で、彼女が助かるだろう糸になるだろうか。

糸に手を掴もうとした時、一夏は彼女達が喜ぶ中に口を挟んだ。

 

「シャルル。一つ聞きたい」

 

「・・・。」

 

「もし。仮に三年間お前の自由が保障されたとして、『その後(・・・)』はどうする?」

 

「・・・・・・!」

 

「その後・・・」

 

「そうだ。三年間なんて物で安心してたらすぐに足下をすくわれて、またあの婆さんの居る会社に逆戻りだ」

 

 

その後。

一夏が一番聞きたかったのは『現在(・・)』ではなく『未来(・・)』についてだった。

三年間の間に他の道を探せばいい。そんな考えではこの世の中を生きていくことは出来ない。

それは彼が一番よく知っていた。

現在も大切だが、その未来も重要だ。現在(いま)を優先してしまっては未来(その先)は確実に苦しい物になる。

何より。今の世の中、ノープランではその人の未来は確実に決められてしまう。

戦争が日常となった世界。道は一つだ。

 

 

 

「フランスには他にも外人部隊もあるし、会社から逃れるといわれてノープランだったら嫌でも何処かのPMCや軍隊。果てはゲリラにでも入れさせられるのがオチだ」

 

「・・・・・・。」

 

「今の時代。人生設計がかなり重要視されている。キチンと決まった将来や目標を持たなけりゃ、僅かな失敗や甘さで軍関係に放り込まれる」

 

「そんな事って・・・」

 

「ある。実際、アメリカやヨーロッパでは多くの若者達が夢を持って居たのに、僅かな気の緩みや失敗。いい加減さで道を踏み外した者も多い。しかも、今は戦争経済の名残や残り火が世界各地に広まっていて軍関係に手が足りていない。軍隊に入れられなくても大手PMCや開発企業の下働きにさせられるって、以前テレビでも取り上げられていた」

 

現実、戦争が日常となってしまったこの世界では戦争で稼ぎを得るという方法も一つの手段として確立され始めている。

大手PMCに入社し、コントラクターとして働く。または前線でなくても後方支援や業務など。開発企業だと下働きなど。

そしても場合によっては戦場に立たされる。

それが今の最低限の働き口だ。

 

つまり。いくら三年の自由があるからと言ってもその間に未来の事について準備をしておかなければ、確実に会社に戻される、またはそれと似た場所に入らされるという事になってしまうのだ。

 

「・・・・・・。」

 

「三年は長いようで短い。あっと言う間に卒業、ノープランなんて事になったらお前は確実に前の生活に逆戻りだ」

 

「・・・・・・。」

 

「無理して今考えろって言う訳じゃない。ただ、お前が自由になりたいって言うのなら・・・俺は手を貸す」

 

「・・・・・・。」

 

現在のことに夢中で未来の事を考えられていなかったシャルルは、顔を上げると小さく、そして深く息を吐いた。

落ち着いた。焦りと興奮で踏み外してしまいそうだったが、彼の言葉で改めて冷静になれた。彼女はそう言って一拍置くと、泣きそうな声で言う。

 

 

「・・・そうだね。正直、僕は今ノープランだよ。ずっと父や義母の元に居るのが全てだって思っていたから・・・未来の事なんて・・・自由の事なんて考えた事も無かった」

 

「・・・。」

 

「・・・ねぇイチカ。僕でも・・・自由になれるかな?」

 

「・・・自由(フリーダム)なんてものは与えるものでも願うものでもない。勝ち取るものだ」

 

 

 

「・・・なら・・・なりたい・・・僕は・・・自由になりたい・・・!」

 

 

 

そうして、シャルルは堪えていた涙を流し、自由を求めた。

ずっと心の奥で叫んでいた言葉を始めて外にだして、口にした。

自由になりたい。そういった彼女の心は、今までの中で最も嬉しく、開放感のある気分だった。

 

「・・・・・・。」

 

「やれやれ」

 

 

「けど、正直お前。将来どうするか考えてなんだろ?」

 

「・・・うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったら・・・・・・ウチ来るか?」

 

「え・・・?」

 

 

「「『・・・・・・・・・。』」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「『ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!??!?!?!??!?!』」」

 

『何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!!?!?!?!?!?』

 

 

「・・・え?」

 

「うん?」

 

『・・・・・・。』

 

 

彼の爆弾発言にその場に居た二人と一機、そしてドア越しに一人の叫び声が夜遅くの寮の中に木霊するのだった。




オマケと言う名の後書き。

以前コメント欄で「他の強力な武器」は出ないのかと言われましたがご安心を!!
四蓮ミサイル、マシンガンという名のショットガン、人攫い風船内臓のカールグスタフに地雷!

楯無「果てはこの私が彼と永遠の愛を!!」

スネーク「王の軍勢!!」

MSFスタッフ「「「然り!然り!然り!!」」」

楯無「やったろうじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


・・・まぁアレは置いといて。他の武器はちゃんと出す・・・と言うか、一種の強化的な話として順次登場または入れ替えにする予定です。
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