IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第二十七話です。

・・・視点がちょっとバラけました・・・読むときには少しご注意を(汗)

今回、久しぶりにセッシーが登場。一人また何かを企んで・・・あ、それ束さんだ。
また、かなり長々と成っていますが今回も千冬先生による授業があります。ええ。尺稼ぎとか言われてますけど、一応重要な話ですからね!?

という事で、翌日の朝から喧しいSHRと千冬先生の授業。
そして、そろそろ最後のヒロインが出てくるんですが・・・何をするのやら。
ついで言うと、シャルもアレで終わりと言う訳ではありませんよ。向こうの義母さんがしつこいですからね。

IS主軸のストーリーもそろそろシリアスに突入・・・したい。はい、したいです!
そんでもってMGSシリーズからまた一人登場ですよ!

では、誤字脱字・駄文はご愛嬌。
それでも良いと言う方は
第二十七話、お楽しみ下さい。



No.27 「陰と影」

No.27 「陰と影」

 

 

 

 

深夜も回り、午前一時。

一夏は夜風に一人当たり、iDROIDを起動させオタコンと連絡を取り合っていた。

議題はフランス、そしてデュノアについてだ。

 

 

「聞いた話じゃ、フランスって軍への志願者が年々増加しているって・・・ホントか?」

 

『年々というよりも、戦争経済からの脱却で今まで均衡を保っていたフランス経済が悪化してね。まともな収入を見込めるのが公務員や軍のようなものだけになってしまった。他の分野は結構な余波を受けたそうだからね』

 

「確か、服飾とかもかなり撤退したんだったか」

 

『軍服やPMCが動きやすい物を作っていたって話だね。収益は戦争経済前の約二倍から三倍。けど、イギリスのレイブンソード倒産を皮切りに大中PMCが相次いで倒産。結果、かなり手広く行っていた事業の殆どが撤退したんだ』

 

戦争経済の終焉は、ドミノ倒しのように世界だけではなく多くの分野や文化にも影響が及び、かつて芸術の都と呼ばれていた首都パリも多くの打撃を受けた。

観光客の減少を始め、ブランド企業の赤字と倒産。それによる失業者の大量発生。

一つ二つと倒れたドミノは何時しか大きく崩れたのだ。

 

「そういや、大手ブランドが二年続いて赤字になったて話、ニュースでしてたな」

 

『タダでさえ物を捨てられない習慣を持つフランスだ。最近だと物価が下がって経済が更に混乱しているようだ』

 

「物に対する大切さは結構だが、後先考えて欲しいな」

 

 

『・・・で。話を戻すけど・・・』

 

「ああ。デュノア社。あそこ今はどうしてんだ?」

 

『君がその子から聞いたとおりだ。PMCや各国からパーツ修理や追加装備の受注を請け負っているから、決して不景気と言う訳じゃない。だが、新型機の発表はココ最近はさっぱりだ』

 

「どうやら本当らしいな」

 

『のようだ。他の軍やPMCの配備された日程とも照らし合わせたし、彼女の言った事に嘘はないんじゃないかな?』

 

完全にシャルルの話を信用しなかったのか、一夏は一応ではあるがオタコンにデュノア社について調べてもらっていた。

その結果はオタコンの言うとおり。彼はほぼ白なのではと言うが、一夏はどうにも信用ならない部分もあった。

 

「・・・・・・。」

 

『で、君は一体なにを疑問に思っているんだい』

 

「・・・やっぱり、どうしてデュノアのヤツが男として俺たちに近づいてきたのか、それがな」

 

『君のデータを取る為には男として近づかなければ遭遇する回数が極端に少なくなるからじゃないかな?』

 

「だとしても、デュノアの歳を考えれば無理なのは分かっていた筈だ」

 

『・・・まるで、何か別の意図が絡んでいる、そう言いたいのかい?』

 

「ああ。それに、デュノアの過去にやらされた事から考えたら、婦人がこんな事だけで納得するっていうのもな・・・」

 

『・・・もう少し調べる必要があるみたいだね』

 

「ああ、もしかしたら俺たちは何かを見落としているかもしれないからな」

 

『分かった。コッチはデュノア社と婦人について調べを続けてみるよ。イチカは彼女・・・えっと・・・』

 

「・・・シャルル・デュノア改め・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めまして、シャルロット・デュノアと言います。実は・・・女でした、ごめんなさい!!」

 

 

翌日の朝からステレオの驚愕の声が響き、一夏は耳障りに思い耳栓をする。

だが最近効果が薄くなってきたようで、また効果のあるような耳栓を買ってくるべきかと心の中で決めたのだった。

 

 

 

 

 

昨日のあの会話の後、シャルル・デュノアことシャルロット・デュノアは自分の正体を取り合えずは明かす事にした。

何時までも男と偽るのも無理がある。それにココでバレてもフランスが、ましてや婦人が口出しできる訳が無い。

手を出せばその瞬間、婦人は国際社会、フランスの社会に追われる身となる。

 

それに、今のシャルロットは絶対にデュノア社に戻ろうとは思っても居ない。

自分が他に生きることが出来るという道を探す為、自由を勝ち取るため。

決別と決意。その二つの意味があった。

 

 

「実は、訳あって男になっていたんです・・・ですが、その訳も一応は大丈夫になったので、改めて本当の自分としてこのクラスに入る事になりました。本当にごめんなさい!!」

 

その本人は男であれという縛りから解かれたからか、本来の性格を取り戻し生徒たちの前で謝罪していた。彼女達には悪意や悪気があったわけではない。しかし、突然男じゃなくて女だと言われたら、落胆するか期待を外してしまったからか気を悪くした生徒も居るかもしれない。だから、シャルはその意味も込めて精一杯頭を下げていた。

 

 

だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ・・・男になれる女の子・・・」

 

「これはまたいい素材が入りましたなぁ・・・」

 

 

「綺麗な身体だなぁ・・・無垢な子供のようだ・・・」(CV内海)

 

「大佐、何してんですか」

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

「あ、アレ?」

 

「デュノア。お前の経緯がどうであれ、事情がなんであれ、ココの連中はそんな事は気にしない。責める理由も無いし、寧ろそれを逆手にプラスに考える連中だ」

 

「・・・・・・。」

 

「ま。言えばお前は考え過ぎだ。ここの連中はかなりの大事じゃない限りは驚く程度で済む。こんな風にな」

 

考え過ぎだった。千冬の言葉と現状にシャルは目を丸くしていた。

否定的な表情や言葉を言う生徒は一人も居らず、逆にそれを良しとして別の事に考えをつなげたりとして話を盛り上げていた。

ポジティブというよりも自分のプラスになるように考える。それが彼女たちなのだと、シャルはこの時改めて、自分がどれだけ狭い世界に居たのかを実感した。

 

どれだけ人と交える事を恐れ、拒んでいたか。たとえ出来たとしてもその相手が片寄っていたのか。親によって意図的にされたというのが目に見える行為だけを受け続けていた彼女が、始めてまともな人と触れ合えた時だった。

 

「・・・・・・。」

 

「と言う事だ。こいつ等に頭を下げるほどの図の高さは無い。今までどおり。お前を一人の人として接するはずだ」

 

「・・・そう・・・なんですか?」

 

「立ち直り早い生徒が多いですし、大丈夫ですよ、デュノアさん♪」

 

「・・・・・・はい!」

 

これが本当の嬉しさというものか。シャルは周りの生徒たちの優しさに触れ、今までの何かを隠した笑みとは違った、本当の笑顔を見せて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて。今回も生徒会長として、見事に生徒の悩みを解決。うーん!実に嬉しい事ね」

 

「常日頃、仕事をサボる人がいう台詞ですか・・・」

 

その彼女の姿を遠目で見る楯無と虚。

彼女達の授業はどうしたのかと言われると、何でも一時間自習となったらしい。(理由は不明)

当然、一時間教室内でダラダラする気などない楯無は虚を無理矢理つれて行き、現在一年一組の教室が見える屋上に居るのだ。

 

「自習だからと言って私まで引っ張ってくるとは・・・はぁ・・・」

 

「まぁまぁ。偶にはこういうちょっとした非行をやってみるのも楽しいでしょ?」

 

「日ごろからやっている人に言われると、なんだか違う意味の重みを感じますよ・・・」

 

自由気まま過ぎる自身の主の行動に頭を抱える虚。

 

だが、だからこそなのだろう。

 

ふと彼女の頭にその言葉が過ぎった。だからこそ。だから故。

それが彼女なのだと。

 

 

「・・・ところで、『お嬢様』」

 

「なにー?いきなり辛気臭い話し方しちゃって」

 

「・・・実は今朝、『調査員たち』からある報告がありまして・・・」

 

「・・・・・・。」

 

虚の雰囲気に感化されたのか、楯無も先ほどまでの明るさを引っ込めて黙り込む。

直ぐに自身が醸し出す雰囲気を変えた楯無の目は、先ほどまでの明るさのある目をしておらず、鋭く冷静な冷たい目に変わった。何時かセシリアと話した時に見せた目と同じだ。

 

 

 

「ドイツの代表候補生。予定を繰り上げて来日してきたと」

 

「・・・早いわね。一週間は軽く上げたんじゃない?」

 

「ええ。本当に偶然の事だったので幸いでした。まさか向こうがここまで早く予定を繰り上げるとは・・・」

 

虚が肝を冷やすほどの事だったのだろう、それが良い方に出たので改めて彼女は胸を撫で下ろす。事実であることに嬉しくも驚いていたのだ。

しかし、一方の楯無は変わらずの表情で虚の顔を横目で見ると小さく息を吐き、話を続ける。

 

「試作機のトライアル、アレって向こうじゃ極秘裏に終わってたんだっけ?」

 

「予期せぬトラブル・・・と言うやつで遅れを取っていましたが、この様子からして恐らくは」

 

「今のドイツがよくアレに力を入れたわね」

 

「いえ、恐らくドイツ政府がやった事ではないのかと・・・」

 

「・・・・・・。」

 

虚の言葉に、楯無は無言になる。

予想が外れたからかではない。では、何か?と知りたかったからだ。

 

「実は政府の方もこの事は知らないらしく、何でも一部の研究機関によって行われた可能性がある、と」

 

「信頼できるの、それ」

 

「現地に調査員が送り込まれていたので、先ず間違いないかと」

 

「・・・・・・責任追及なんてごめんよ、私」

 

「は?」

 

「こっちの話。で、いま彼女は?」

 

「ナリタ国際空港を降り立ち、その後タクシーで国際ホテルに直行。今はそこから一歩も出てないとの事です」

 

「動かず・・・ね」

 

一体何を企んでいる。突然の来日をしたドイツ代表候補生に楯無は何時に無く焦りのようなものを見せていた。いや。心配なのだ。

もしかしたら、『自分は一手遅れてしまったのではないか』と。

 

「・・・虚ちゃん。今、ココ(学園)に居る『ウチ』の子ってどれだけ居たっけ?」

 

「・・・。確か、三年に私を入れて四人。二年に三人。一年に・・・一人」

 

「・・・その子達に伝えて。ちょっと見回りと調査をしてくれないかって」

 

「・・・お嬢・・・いえ、楯無様。一体どういう事で・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いえ、ね・・・コレ・・・・・・国際問題すっ飛ばした事態になるかもしれないわよ?」

 

「っ・・・・・・」

 

不味い。楯無は完全に自分が出遅れたと、何時もの冷静な顔から焦りの表情になっていた。その表情に、虚は今の状況がどれだけ深刻になりつつあるのか。それをその時始めて理解した。彼女が其処まで焦る表情を見せるほど、事態は不味い方に転げ落ちる。

それだけ彼女が過去にそんな顔をした時にはいい事など絶対に起こらない。

あるのはただ、最悪の事態だけだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくして。一組では既に授業が始まり、生徒達は教卓の前で教科書等の参考書を一切使わない千冬の顔をずっと見続けていた。

視線が痛い千冬だが、それでも教師としての責務は果たさなくてはならない。

その視線に耐えつつも彼女は今回の授業について語るのだった。

 

「現在、ISに使用されるコア。その総数は合わせて467。これが全て現在世界の主要国に分配されている。しかし、コアが均等に主要国に分配されていると言う訳ではない」

 

「一国につき一個じゃないんですか?」

 

「違うな。それほど世界も優しいものではない。いえば、コアは世界各国の力量を具現化しているからな」

 

皆仲良く平和にしましょう。そんな事を誰もが望むだろうか。

平等平和を訴える者も確かに居るだろう。しかし、逆に平等を嫌う、もしくは正しいとは思わない者も居るのもまた事実。

力ある者こそ強者。つまり、弱肉強食。

弱者には弱者の強者には強者の義務がある。貴族主義又は高貴なる者の勤め(ノブリス・オブリージュ)等、意思は異なるがいずれも共通するのは『平等』という選択肢は元より無いという事だ。

 

「力ある国がコアを多く保持し、力なき国には保持する事もできない。シンプル故に覆しにくい事実だ」

 

「強国だからこそ強力な力を保持して今の地位を確固たるものにしたい。逆に強国に従わざる得ない国はこれを得て少しでも国際的に地位と力を得たい。その結果の全てが、現在の各国の保持するコアの数ですね」

 

「コアの保持数が最も多い国は一般的には日本だと思われがちだが実際は違う。最もコアを多く保持しているのはヨーロッパ圏、『ドイツ』だ」

 

「ドイツがですか?」

 

生徒の一人が驚きの表情を見せると、他の生徒も小声でざわめく。

ドイツと言えばビールだなんだだけしか思い浮かばない彼女たちではあるが、現在のドイツはそれだけでは終わらない。

現在、一番国際的な地位を高めている国であり、強国となりつつあるもあるのだ。

 

「欧州圏で軍事力がある国は他にもフランス、イギリス、イタリア等も上げられる。しかし、軍の方針としての違い。国内の状況の変化などで力が一転してしまった」

 

「ドイツだけが・・・ですか?」

 

「そうだ。ドイツは日本と同様に軍の大体の目的は『自国防衛』。故に、海外派遣などは殆ど行われず、後方支援が殆どだった。その点は日本も同じだ。それがドイツが上位となった理由」

 

「海外派遣を行わなかったから、軍隊の消費浪費が少なかった・・・?」

 

「でも、昔ってPMCが多かったし、別に他国も同じだったんじゃ」

 

「そうでもない。確かに戦争経済時に多くのPMCが設立、その勢力を拡大してきたが実際に武力行為全てがPMC任せというわけはない。戦争経済前よりも出動回数は激減したが、軍も出動する機会はある」

 

(・・・出動の理由は身内制圧だがな)

 

戦争経済時、多くのPMC設立により軍の出動・配備・規模などが大きく見直し、改変され殆どの国家所属の軍では少数精鋭を中心とした特殊部隊を集中運用しその他の正規軍などは治安維持を目的として運用されていた。

分かりやすく言えば、少数精鋭の部隊の集中運用は錬度の高い兵士を中心に編成しコスト管理等を安くする為、逆に言えば兵士の数減らしを防ぐまたは数を減らしてその分の金を浮かせるなどの理由があり。

正規軍が治安維持を主目的としている、というよりされているのはデモや内紛などが発生した場合、物量戦に持ち込まれることが多いのでそれに対抗する為に頭数の多い正規軍が必要で、その運用の為の金が少数精鋭の特殊部隊よりも高く、馬鹿にならないために出来る限りの消費削減という理由があるからだ。

正規軍で内紛、戦争に参加するよりも治安維持の方がかえって金の消費は少ない。

 

要はすべて金が理由という事だ。

 

「その中で、ドイツを除くヨーロッパ各国は自国防衛の為に軍を組織しているわけではない。他国の戦争に介入したり自国内で起きたテロや紛争の鎮圧の為に軍を動かす事もあった。つまり、守りよりも攻めを重視していたのだ。しかし、逆にドイツは自国防衛が軍の目的な為に他国の戦争に関与したりは決してしない。国内のテロ鎮圧だったりでは動くがな。よって、攻めを重視する各国はそれによる戦費の消費が激しく、逆に国内の防衛、守りを重視するドイツとでは圧倒的に戦費の消費に差が出る」

 

「じゃあ・・・他の国も自国防衛に切り替えれば・・・」

 

「それが簡単に出来ればどの国も苦労はせん。いきなり『軍を自国防衛の為に運用します』と言えば、その国が財政に苦しんでいると言う事。特に戦争経済の時に多くの戦場に首を突っ込んだ欧州となれば直ぐに「はい、そうですか」と言って他国が首を縦に振るわけがない。腰抜けと同義だからな」

 

「だから、ドイツを除く各国は自国防衛などの理由で軍の戦費を抑えたくても、勢いに乗って行ってしまったことの責任等を後から知って、簡単に軍の運営方針を変える事が出来なかったんです」

 

「その結果、戦争経済後の余波はドイツも受けはしたがダメージ自体は他国と比べて少ない。国内に数社しかないPMCが倒産しただけで、実際の軍組織へのダメージも殆どなきに等しいからな。

結果。戦争経済で調子に乗っていたアメリカ、ロシアそして欧州各国等は大打撃を受けたが、自国防衛を目的としたドイツ。元々戦争経済に直接参加していなかった日本はダメージが殆ど無かったという事だ」

 

だが、ドイツもドイツでダメージかあったのは事実。

EUに加盟している事から連鎖的にダメージが行き渡るのは覚悟していたのだろう。

下手に調子づいた国々と違い、こちらは計画的な国家運営を行い、戦争経済の終わりが突然の事だったので国の情勢は混乱。確かであれば持ち直しは出来ているが、状況は芳しくないのやもしれない。

 

「現在、ドイツではEU加盟国からのISコアの受け入れ、また国内でのEU加盟国のIS開発の支援を行っている。これがドイツがコアの保有数が多い理由だ」

 

「じゃあ実際は少ないんですか?」

 

「いや。ドイツ自身の持っているコアの数も馬鹿にならん。EU加盟国から受け入れているコアの数を抜けば、確かに米国が勝つが、それでも上位に残る。それだけあの国は冷静であった・・・という事だ」

 

 

これがドイツか。数年前に感じた衝撃を千冬は今受けたかのように脳裏に思い出す。

客観的な情報しか知らない彼女が、自分の知る世界が見ていた世界が狭かったのだと痛感したのがドイツに一時期ではあるが入ったときだった。

モンド・グロッソでの一夏捜索の協力、その条件として彼女は捜索後にドイツ軍に特別訓練教官として入ることが約束されていた。

その間に、彼女は思い知ったのだ。自分の視野の狭さ、見ていた世界の小ささを。

錬度の高い兵士。充実した武器、装備、車両兵器。徹底した計画性。

そして、それによってか日本と変わりない市街地の活気。

 

当時、戦争経済の脱却により各国経済は破綻。失業者が溢れ、一時期は不景気の底にまで落とされていた。テレビでもその事が取り上げられ、かつて世界最強といわれていたアメリカの街から賑わいが消え、ゴーストタウンのような静けさが映されたこともあった。

戦争に依存した国の結末。それが画面の向こうに見えたあの有様なのだ。

だが、ドイツはそれと一転し戦争経済前と何ら変わりないとも言われた所もあった程に経済も安定しており、表立ってだけでも他国と違っていた。

 

 

(だから・・・なのかもしれんな)

 

 

だが、だからなのだろう。

そこで千冬はあるものを見せられたことがあった。

『メタルギア』。

元はアメリカで開発されていた二足歩行兵器で、今では世界の主要国にも極秘裏ではあるが保有している国もあるという大型兵器。

ISもこのメタルギアには勝つ事が出来ないと断言された事がある。

そして、その言葉は現実だった。過去にメタルギアが使用された戦闘の記録映像には十数機のISが束でかかってもメタルギアにダメージを与えられず、全滅したという結果が残されていた。

 

自分の知る中で最強だと思う兵器。それがああも簡単に蚊を落とすかのように死んでいった一部始終の答えに、その時は言葉が出なかった。

 

(メタルギア・・・それに打ち勝ったIS・・・大方、『アイツ』が作ったのだろうな)

 

しかし、それは僅か数年で書き換えられる。

ISがメタルギアに勝つ。しかもほぼ一人で勝ったとなれば誰もが疑うことだ。

それがつい最近、彼女の目の前で起こった事実。

 

その全てを連鎖的に思い出した千冬は一人思いふけて呟く。

 

 

 

「・・・面倒な事になる・・・か」

 

 

七面倒くさい事になる。現在進行形で面倒な事が更に面倒な事になるな、と千冬は独りため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃。

謹慎処分で授業すら姿を出す事が許されない生徒、セシリアは一人部屋の中でノートPCを使い何かを検索していた。

PCの扱いに慣れているのか、キータッチの速度は並の人間よりも上で画面には絶えずウィンドウ画面が開いては閉じ、または上から新しいウィンドウに被せられてとかなり広範囲にわたって検索をしているのが分かる。

 

口を開く事もせず、一人黙々とキーを打ち続けていたセシリアはあるデータを発見すると、その手を止めた。

 

「・・・・・・。」

 

そして、あまり使わなかったマウスを動かし、ウィンドウの山となった中からいくつかを表示。その表示されたウィンドウとにらみ合い、考え込むのだった。

 

 

「・・・・・・。」

 

つまりそう言うことか。自分でも聞こえるかどうかというぐらいの小声で呟き、映し出された情報をまとめて何かの答えを導き出したセシリア。

納得がいった答えに彼女の口は静かにつり上がり、冷たい笑みに変わっていった。

 

 

 

 

 

 

 

《 ピリリリリ!ピリリリリ! 》

 

 

「・・・。」

 

静寂の中からタブレット携帯がコールする。

誰かが電話をかけてきた。セシリアは携帯に手をとるが、表示された番号に彼女は眉を寄せる。

見たことのない番号がそこには映し出されていたからだ。

一体誰なのかと考える彼女は取り合えず先ずはと電話に応答する。

 

「はい」

 

『いやぁ、まさか単身でここまで辿り着くとは。流石にイギリス代表候補の中でも優秀といわれたお嬢ちゃんだ』

 

「・・・!」

 

知らない声だった。壮年の人物なのか話すスピードは少し遅い。また声も低いので男と分かる。

 

一度の台詞で相手が壮年の男であるのは理解したが、彼女の知人にその人物像が当てはまる人間は居ない。

自慢ではないが、彼女の知人は殆どが女だ。親の代から仕えてきた使用人たちも、訳アリ面子の女達。

軍では例の如く男女と入り乱れてではあるが、言葉を交わすほどの男など数える程度。なのでセシリアの知る男の中に該当する人物は居ない。それは直ぐに分かったが、問題が一つ残る。

ならば。どうして電話相手は自分の事を知っているのか。

自分の知る男は数える程度で男声の女なんて居るわけがない。

不審人物ではないかと思えるが、どうにもなにか可笑しい。まるで此方が知った事を喜んでいるようだからだ。

 

『軍のデータベースを経由してIS開発に関わった著名なヤツや変わったヤツを徹底的に洗った。だが、それだけでは無理だ。大砂漠の中から微粒を見つけるほどにな』

 

見つけてくれてありがとう。まるで彼はそうでも言っているかのようだ。

遊ばれている思わざる得ない状況にセシリアの顔は不満というよりも怒りに近いものになる。遊ばれるのは誰も好きではない。特に現状だと、何処の誰とも知らない相手にココまでとは言わないが、知ったかのように言われている。

気分の良い物ではないだろう。

 

「・・・・・・。」

 

『だが君はあるワードを加えた。それが功を奏し私にへと辿り着けた』

 

「・・・まるで私を見つけてくれるのを待っていたと言わんばかりですわね。いい加減名前の一つぐらい明かしてはどうですか、ミスター」

 

『おっと。そうだな、いい加減名無しのオヤジにコケにされるのにも嫌気が刺したきただろう。私でもそう思うよ』

 

「なら、貴方は一体誰ですか」

 

怒気が混じった声色でセシリアは携帯越しのスピーカーに冷たい殺気を放つ。

見つけたら直ぐにでも八つ裂きにしてやると言わんばかりの彼女の怒りが僅かながらにも漏れており、それを感じたのかスピーカー越しの男は一拍置く。

 

『・・・まぁそれだけコケにされたのが気に入らなかったという事だな。簡単な答えだよ。

私は君の求めている物を作っている男だ』

 

「私の・・・ッ!」

 

『ちなみに君の事については私のメール友達が知っていてね。彼女が色々と教えてくれたのだよ。多分名前のイニシャルを明かせば誰だか直ぐ分かると思うがね』

 

「・・・そう・・・そういう事・・・一本取られましたわね」

 

男の台詞に、セシリアは何かを察し納得した。

彼女が知りえている情報の中で、その答えにへと繋がるヒントが脳の中で自然と浮かび上がり、それがつなぎ合わされて一つの真実に繋がったのだ。

なら、彼がそこまで嬉しそうなのも。どうして自分の事を知っているのかも全て納得がいく極単純な答えなのだから。

 

『そう言うことだ。では、そろそろ本題に入ろうか』

 

「本題・・・」

 

『君が私を探していた理由だよ。謹慎の身でありながら私を探していた理由。大方、あの『坊主』の事だろう』

 

「・・・・・・なるほど。なら、色々と聞けそうですわね」

 

『まぁ知っているかどうかの話もあるがな。あと、私も個人的に君と君の機体に興味があってね。是非、君と話をしてみたかったのだよ、ミスオルコット』

 

 

「・・・なら。お聞かせ願いましょうか。ISの新技術・・・いえ。『人工筋繊維』について。

ミスターヴィルヘルム・フォークト」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何気ない日常を謳歌する者。

新たな道に足を踏み入れる者。

背後から迫る狂犬に構える者。

 

 

少年は知る由もないだろう。

歯車がかみ合い、動かなかった部分が動き始める。

見る暇もなかった場所が、姿を見せるという事に。

 

 

一夏の過去。千冬の過去。

姉弟二人の過去が襲い掛かり、物語はゆっくりと加速する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・お嬢様、調べがつきました。当たりです」

 

「・・・一応、どっちて聞くけど・・・どっちかしら?」

 

「前者です。後者のほうは現在、手の者が捜索を続けています」

 

「で。前者は見事大当たりと・・・面倒な事になったわね」

 

「彼女は一体、ココで何をする気なんですか。あんな物まで持ち出して・・・」

 

「そりゃあ・・・復讐でしょうね」

 

「・・・・・・。」

 

「全く・・・こっちはあのフランスっ子についてで忙しいのに・・・ドイツのウサギは年中殺気丸出しですかって。・・・虚ちゃん。捜索切り上げさせて頂戴。どの道時間が掛かるわ」

 

「了解」

 

「・・・あんな物が使えるとすれば・・・やることは一つよね」

 

 

 

 

 

 

復讐。ただ、その一つに駆られた少女が、気ままに吹く風を殺そうとその影を見せる。




後書きと言う名の、作者の叫び。


MGSV、何処で予約するべきかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?

と言うかPS4欲しいです・・・
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