IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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早いですが第二十九話です!

今回またもISサイド一色!全くどうなってんだよ俺の頭は!?
MGS要素ないぞ!!(泣)
ですが、自分的にそろそろ話は面白くなるかと思っています。
一夏とラウラ、そしてもう一人を中心に話は進んでいきます!
もう一人は誰か。皆さんは薄々絞られてるかと思います。
誰もアレでハイおしまいなんて事したらそのキャラのファンの皆さんに申し訳ないですし・・・

という事で、今回はラウラのあの性格の理由。
そして織斑先生との意外なことだったり・・・
逝くとこまで逝ってなんか「これ、いいのかな・・・」ってやや後悔しています(汗)
そろそろ夢見るライフも終わりだぜ!?

では、誤字・駄文はご愛嬌。
『それでも良い!』と言う方は
第二十九話、お楽しみ下さい。

・追記・
キャラの台詞を少し修正しました。本当に少しです。


No.29 「黒兎」

日が東へと沈み、日の光が消える。

明るい光で照らす太陽から、白く心地よい風と共に月の光にへと変わっていた。

静寂の光は幻想さを見せると共に儚さ、そして不安な空気を漂わせる。

見る者によって感じる空気が違う夜の世界。

 

昼から続いていた雨は一旦治まったのか、灰色の雲は一つもなく。夜の暗闇に染まった黒い雲だけが空を漂う。

もし今出ているのが月ではなく太陽であれば、今頃は晴れなのだろうか。

 

 

 

そんな事は関係ない。

天気について呆けて考えるのは馬鹿だけで十分だ。

今はそんな事は考える必要も意味もない。

今も、これからも。ただ考えるのは『あの人』のことだけだ。

 

 

 

自分を暗い闇の中から救い出してくれた。

自分の事を唯一分かってくれた人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりです。教官」

 

「ココでは先生だ。間違えるな」

 

「・・・失礼。織斑先生」

 

二年ぶりに会わせた顔。幼い顔の少女ラウラは改めて千冬に挨拶をしていた。

その類の人間らしく背筋を伸ばし、足を揃え敬礼する彼女の前には恩師である人物千冬が立つ。その千冬はラウラの表情と雰囲気に軽くため息を吐いた。

 

朝の時とはほぼ真逆とも言える振る舞いだったからだ。

 

純粋な赤い瞳とその瞳のある表情は機械の様に無感情だったのとは違い、人並みの感情である明るさを見せる。これだけでもかなりギャップのあるが、それもあって雰囲気は無情の逆。子供の様に純粋な笑みを彼女の顔はしていたのだ。

 

 

「で。わざわざ挨拶の為だけにこんな夜中に来たのか?」

 

「まさか。今回は少しお話しがあって伺わせて貰いました」

 

「・・・・・・いいだろう。入れ」

 

千冬はそう言い、ラウラを自室へと入れる。

抵抗感もない。今までと同じ(・・・・・・)なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人の行動や動き、癖。その一つ一つは意外にもその人の性格が現れやすい。

部屋もその一つ。言うなれば性格が具現化した場所だ。

 

例えば、見た目や見える場所などは綺麗だが実はタンスやクローゼットなどには人には見せられない物や、片付けが面倒だという事で無理矢理押し込んでいたりする。

性格で表すならば見栄っ張り。見た目だけ綺麗にしていれば押し通せるという表れだ。

だが裏に、前向きに考えれば、それだけ相手に対して気を使っているとも言える。

相手が気持ちを悪くするだろうからせめて、見栄えだけでもという意思の表れとも言える。

 

そして、それ以上に部屋がかなり散らかっているとなれば答えは簡単。

細かい事は気にしない。面倒事が苦手。

問題なければ別によし。

 

 

 

 

 

 

 

 

それが千冬の部屋の全貌である。

 

 

一言で言うなら『物凄く汚い』

しかしその言葉ですら生易しいという程の有様がラウラの目の前に広がっていた。

散乱する紙。恐らく資料の類だ。

それが机の上から下へと滝の様に落ちたのか、机の周囲だけが資料か何かの紙の海になっている。

その資料の海と隔たりを作っているのは無数に散乱したビール缶。そしてそのお供だろうつまみと、軽食の握りやサンドの袋。それが足場の殆どを占め足場という場所は見える限りでは僅かにしか残っていない。

 

そして。最後の安全地帯とも言えるベッドも既に千冬によって彼女だけが快適に思えるような有様だった。

大雑把にベッドの上に投げ捨てられている女物の着替えや下着。果てはISスーツも丸められていた。

 

正にゴミの大国。または千冬のユートピアとでも言えば良いのだろうか。

どちらにしても普通の人間なら絶句して一ミリたりとも入りたがらない世界だ。

高級ホテル並みの豪華さを誇る学園の寮一室も彼女にかかれば豪華の「ご」の時も無くなり、彼女の世界となってしまう。

 

 

「失礼します」

 

 

しかし。ラウラはその中へと躊躇せずに入っていった。

足を止めることもせず、ただ普通に彼女のゴミ屋敷へと足を踏み入れていったのだ。

何故そこまで抵抗感がないのか。理由は一つだ。

 

「・・・相変わらず、ですね」

 

「喧しい。早く来い。座り場くらいは作れる」

 

慣れていた。ラウラは過去にこういう事を経験しているのか慣れていたのだ。

だから彼女は何の抵抗も無く千冬の部屋に入れた。

これが何時ものことだと認識していたから。

 

「いえ。用件は立ってでも言えますので」

 

「・・・・・・。」

 

ラウラは適当に足の踏み場を見つけそこに立つと、ベッドに腰をかけた千冬と目を合わせる。多少手間が省けたと思い、椅子の片付けという名の散らかしを中止した千冬は腰かけたベッドの上で軽く息を吐くと改めてと、ラウラに問いを投げる。

 

「で。話しとは何だ」

 

「・・・貴方なら分かっている筈です」

 

「ッ・・・・・・」

 

 

 

 

「教官。戻ってきてはくれませんか。私達(・・)の所に」

 

「・・・・・・。」

 

眉を寄せる千冬。しかし対するラウラの表情は笑顔のまま。

余裕のあるラウラはそのまま淡々と自分の用件を言い続けた。

 

「貴方がココで治まるとは誰もが思っていない。女尊男卑とほざく女どもだって最低それぐらいは分かっている。貴方のような人を統べる人間。それも、私達を導いてくれる先導者。

 

 

ドイツ軍としてではない。私達の部隊が貴方を必要としているのです」

 

「・・・何かと思えばそれか。辞する気はないぞ私はココであいつ等を育てると決めた「それは嘘です」・・・何?」

 

割り込みを入れたラウラに千冬の表情は更に険しくなる。

まるで自分の突かれたくない所を突かれたかの様に、警戒をし始めていたのだ。

そして未だに余裕の顔であるラウラは彼女に迫り寄った。

 

「分かっているのですよ。貴方がどうしてこの学園に入ったのか。その理由を。能天気な餓鬼を育てる?そんな陳家な理由だけで貴方はココに居る筈が無い。それなら普通のハイスクールでも十分な筈です。無論。貴方のブリュンヒルデとしての名もあります。その守りとしては、ココが最適なのでしょうがね」

 

「・・・・・・。」

 

「教官。貴方がココに居る理由。それは一つだ。私情的な。誰もが予想する事の出来ない。貴方にとって大きな理由が・・・!」

 

「ラウラ、お前・・・」

 

 

 

「・・・イチカ・エメリッヒ」

 

「ッ!!」

 

「いえ。本名は織斑一夏でしたね。とっくに調べはついていますよ。まさかあの男がココに居るとは(・・・・・・・・・・・)意外でしたがね」

 

核心を突かれた千冬は目を見開き、僅かに心拍数を上げる。

しかし尚もラウラの話は止まらない。

 

「貴方がココに居る理由は極単純。人から見れば馬鹿げた理由です。そうでしょ?

 

 

姉さん(・・・)。貴方は織斑一夏と居たい。願わくばもう一度再開したいという理由の為だけにこの学園に入った。違いますか」

 

 

「ッ・・・!!」

 

核心。まるで心臓を素手で鷲づかみにされたかのような痛みが千冬に襲い掛かる。

幻覚的な痛みではない。現実に彼女の心臓はラウラにつかまれたかのように強く痛みを発していたのだ。

何が原因でここまでの痛みに襲われたのかは分からない。だが、少なくともラウラが核心を突いた瞬間に起こったのは確かだった。

 

「矢張りそうだったんですね」

 

「・・・・・・お前には関係の無いことだ」

 

「ええ。私にはあの男の事は関係もクソもありません。寧ろ・・・

 

 

 

 

 

 

 

目障りなんですよ。あの男が」

 

「・・・・・・!」

 

その瞬間。千冬の全神経を恐怖が駆け巡った。

今まで殆ど臆する事も無かった彼女がここまで恐怖に反応したのは過去に二度と無い。

恐怖の中心は他でもない、彼女の前に立つラウラからだった。

 

純粋な赤い瞳は突如、どす黒く濁りまるで暗褐色の更に黒くなった色にへと変化していた。

その瞳の色を見ただけで千冬は彼女が一夏に対しどんな感情を抱いているか理解する。

いや。理解するまでもない。見ただけで誰でも理解できる。

 

 

恨み、怒り、軽蔑、嫌悪、憎悪。そして果ての無い殺意。

 

 

負の念が混ざり合い、どす黒い『何か』が形成され、それが身体的にまで具現化していたのだ。血の涙の様に、負の感情が爆発した感情。

だが、ラウラのその感情はまだ爆発していない。

ギリギリの所で食い止められているのだ。

負の感情に侵された本能を機会を待つ為に意識が抑えている。

もし。一夏と相対する事になれば、その感情が爆発し何が起こるか分からないのは明らか。

 

「織斑の名を捨て、他者となったつもりでしょうがそんな事は無駄。現に今ここで貴方がそれについて苦悩している。だから、その苦悩を断ち切る」

 

「・・・ラウラ、一体・・・いや。何故・・・」

 

足場の無い場所なのにも関わらず、ラウラはその足場を気にせず千冬のもとへと寄り始める。その対象たる千冬は絶対に彼女がする事はないだろうと誰もが思う表情、恐れを見せていた。

ラウラの殺意。一夏への憎悪。

あのラウラが、どうして。

 

 

 

やがて、ラウラは千冬の前に立ち、再び口を開いた。

 

「ですが私も、仮にも人です。慈悲の心の一つは持ち合わせています」

 

「なっ・・・」

 

「貴方がもし、私達の部隊に戻ってくるというならば・・・彼も同行させるようにしましょう。勿論。相応の対応もします」

 

「・・・私を戦争の道具にでもする気か」

 

「まさか。私たちはただ指導者を求めているだけ。それが世界狭しと探しても貴方だけしか居ない。私達はそう判断したまでです」

 

「同じ理由だ・・・!」

 

「そうかもしれませんね。いずれは私だけでなく、ドイツ、そして世界にへと貴方は必要とされていく。かのビッグ・ボスのように」

 

「っ・・・あんな狂人と一緒にするな」

 

「狂人・・・ええ。私達は皆狂人なのですよ」

 

「なにっ・・・ッ!?」

 

話に気を取られていた千冬は、そのままラウラによってベッドにへと押し倒された。まだ躊躇や戸惑いなどもある彼女は、反応が遅れてしまいそのまま身動きを封じられてしまう。

両腕を押さえられ、両足はラウラの膝で釘打たれる。

馬乗りの体勢で身動きを抑えられた千冬は間髪入れずにラウラから意外な事をさせられる。

 

彼女は何の戸惑いもなく、千冬と口付けをしたのだ。

 

 

「んっ・・・?!」

 

それも妙に長く、更にしつこい口付けで窒息死するのではないかと言う程で、火照る身体と白くなった脳内によって千冬の思考も動きも停止してしまった。

舌を使い絡み合う肉体。性的欲求ともいえる感情が湧き始め、余計と思われた思考を白紙化させ火照った身体はそれによる発情を促す。

 

「・・・んっ・・・」

 

「っ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

主導権をとられた千冬は成すがままだった。

やがてラウラの口が漸く離れると、目一杯口から新鮮な空気を肺の中に吸い込ませる。

あの品行方正の姿は何処にも無く、ただあるのは流されるがままになってしまったひとりの女でしかなかった千冬。

そしてラウラは殺意の目は変わらず、千冬と交えた口から漏れる唾液を吸い取り不敵な笑みを見せていた。

 

「さてと。後はどうするか・・・」

 

「止めろ・・・」

 

「・・・それは無理ですね。久しぶりの戯れですし、それに・・・昔は貴方も乗り気だった・・・と言うよりも貴方から申し出ていませんでしたっけ、千冬姉さん(・・・・・)?」

 

「それは・・・」

 

「事実でしょ?身のぼろぼろだった私を救った貴方は、自分の悲しさと私の悲しさを埋めたいが為に・・・私をダシにして忘れようとしていた。あの男の事を」

 

「・・・だが、それとこれとでは」

 

「でしょうね。ですが貴方はそのお陰でしばらくではあるが苦しみを忘れていられた。私も同じです。貴方のお陰で苦しさを紛らわせられて、人並みの感情を知ることが出来た。だから・・・」

 

「私はお前が必要だと?」

 

「そうでしょ?昔の貴方はそんな事を忘れていられた。なのに今ではそれがぶり返して頭痛の種。早く直すに限る」

 

「ッ・・・」

 

全て事実だ、何もかも。彼女の言う事は何もかも自分がしてきた事実の過去。

自分の弟と重ね合わせ、互いに拠り所として認め合い、傷を舐めあっていた。

現実から目を逸らしてきた彼女が、ココで再びその代価を払う事になってしまう。

そして、千冬はラウラの顔を見て恐怖の色を濃くする。彼女の顔が少しずつだが発情の色を示してきたのだ。

 

「そろそろ私も限界です。さぁ。共に・・・」

 

「まっ待て!」

 

「嫌ですよ。姉さん」

 

このまま快楽に溺れよう。

ラウラの言葉と過去の経験からその先のことは容易に想像できた。

その所為か、精神が抵抗しようと考えても身体が抵抗を実行しなかった。一度知った快楽に溺れ、欲していたからだ。

内心千冬もそれは分かっていた精神の半分がその快楽を欲し、残る半分が快楽を拒絶する。

だが身体と精神の半分が欲しているのだ。彼女はそれを欲しているのと何ら代わりは無い。

 

気づけばもう抵抗を諦めていた。

このまま溺れてしまおうと。またあの快楽で忘れてしまおうと。

流れるがままになり、千冬は彼女と身体を交えようとする。

 

 

 

 

 

が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい。お戯れはそこまでよ・・・生意気ウサギちゃん」

 

「ッ!?」

 

 

刹那。ラウラは腰からハンドガンのUSPを抜き構える。瞬時に抜かれた銃は迷い無く第三者の声が聞こえた方に向けられ、同時に先ほど出していた殺意を再びむき出しにする。

千冬も間一髪の所で止められたのか安心していたが、一体誰が現れたのかと思い、ラウラの銃口の先を見つめる。

其処にいた顔と声。それをみて千冬は驚愕を隠せなかった。

 

「その声・・・お前!?」

 

「・・・随分と遅い挨拶だな。女狐」

 

「口は本当に達者ね。ドイツの軍人は口と技術だけが一人前なのかしら?」

 

制服姿ではあるが、今までとは違う凛とした佇まいではない。

冷静な、僅かに怒気のある空気を出す女。

 

楯無が鋭い目でラウラを睨みつけていたのだ。

 

 

「漸く出てきたか。更識楯無」

 

「ええ。貴方のもぐりこませた邪魔な鼠を殺るのにちょっと手間取ったからね」

 

「・・・ちっ」

 

 

「さ、更識・・・お前どうやってココに・・・いやそれよりも」

 

「あ。織斑先生はそのままで。明日辺りにそのえっちで恥ずかしい一部始終を明日の一面にしようかなと画策していますので」

 

「止めろ!絶対にだ!!」

 

「ええ。私も別にその子がしょうもない理由だけだったら別にぶちまけようと思っていたんですが・・・まぁ本性むき出してくれたので週間雑誌行きにしておきますよ」

 

相も変わらない気まぐれな言い方で千冬に脅しかけた楯無だか、そんな事をする為だけにココに現れたわけではない。理由は一つ。ラウラだけだ。

 

「で。改めでだけど。今日はウチの子が世話にならされたそうね」

 

「ああ。他愛の無い雑魚だけだったな。ISの技術はわが国と並ぶというのに、戦力だけはクソ以下だな」

 

「言うだけ言いなさい。けどね。落とし前とケリは付けさせてもらうわ」

 

苦無を指の間から出し、臨戦態勢に入る楯無。

珍しく彼女の表情は険しく、そして怒りに満ちていた。仲間を傷つけられたその恨みか。それともあだ討ちか。いずれにせよ彼女のあんな姿は見たことない。

あれが楯無のもう一つの顔か。普段の猫みたいな性格から一変したその表情と気配に千冬は何も言葉が出なかった。

 

が。ただ一人。ラウラだけは違った。

 

「フッ・・・フフフフフ・・・」

 

「あら。気でも狂ったのかしら?」

 

「・・・いや。ただ、貴様の・・・いや。貴様等のやり方があまりに杜撰だからな」

 

「ッ・・・!」

 

 

「ドアの前に数人。そして窓の外に一人・・・いや。屋上なども考えて数人。大体でも十人届かずの人数・・・四、五人程度か」

 

(バレてる!?)

 

ラウラの予想は当たっていた。

実際、千冬の部屋の前には二人。屋上に待機する一人と窓の外に一人。

計四人が現在千冬の部屋を包囲していたのだ。

 

「残念だか、私をどうかしようとは思うなよ。その武器で攻撃した瞬間。お前たちは木っ端微塵になるのだからな」

 

「は・・・?!」

 

「教えてやる。今、私の身体にはあるナノマシンが注入されている。私の視覚情報をデータ化して送信するシステムだ」

 

「・・・監視用ナノマシン」

 

「そうだ。今この会話も、私が貴様の前に銃をつきつけている所もリアルタイムで私の部下の元に送信されている。もし。貴様らが私に危害を加えれば、その瞬間私の部下があるスイッチを押す」

 

「・・・貴方ッ!」

 

「ああ。そうさ・・・」

 

すると、ラウラは空いている手を使い、ポケットから更に何かを取り出す。

そしてそれを躊躇無く千冬にへと突き刺したのだ。

何を突き刺したのだと顔を僅かに見上げた瞬間

 

 

 

《バチッ! 》

 

 

「ッ!?」

 

千冬の全身へと電撃が走る。突如高圧電流が身体に流れた彼女の身体の神経は麻痺し、電撃のショックで気を失ってしまう。

一歩間違えれば感電死させる危険もある行為だ。

 

「なっ!?」

 

「この人は渡さない。だが、聞かれては私達の信頼に影響する。だから・・・少しだけ眠ってもらっただけだ」

 

「スタンガン・・・念入りに持ち物検査してもらったって報告を聞いていたけど、そこまで用意周到とわね。一体ココで何をする気なのかしら」

 

「貴様なら薄々と分かっている事。といえば良いだろう」

 

「・・・・・・。」

 

 

余裕の態度を崩さないラウラ。そしてその彼女を警戒する楯無。

数の利があるというのに、楯無には焦りが見ている。人質(千冬)を取られ、更に自身の味方の配置まで読まれ、更に彼女に危害の一つでも加えれば自分諸共命は無い。

 

いや。そもそも道連れでこの場を勝とうという気が彼女にはあるのか?

考えてみればラウラの行動にはメリットが少なすぎる。

いくらナノマシンで自身の行動がリアルタイムで送られているからと言って、自身と人質を自分達と共に自爆させて何の意味があるのだろうか。

人質を取り、相手に攻撃の隙を与えない。それに関しては二重の策を張って自身の優位さを保っている。だが、問題はその守りが破られた時。

仮に楯無が攻撃してラウラに危害を加える。そして彼女の部下が何らかの方法で自分達を道連れにする。

そうした場合、彼女の目的は絶対に一方した遂げる事ができない。

 

ラウラの目的は話から纏めると二つ。

 

千冬をドイツに連れ帰ること。そして一夏を抹殺する事。

これを照らし合わせれば、ラウラが危害を加えられて自爆に近いことを行った場合高い確率で一夏の方は成功するだろう。

だが千冬の方はどうか。彼や楯無たちを巻き込むほどのことをすれば千冬も唯では済まない可能性もなくはない。

つまり。千冬だけが絶対に無害であるという保障がないのだ。

という事は。

 

 

(織斑先生だけを無傷で、かつ彼を殺せる確立が高い方法が彼女の手にはある・・・)

 

考えられるのはそれだけしかない。

千冬を無傷で一夏を亡き者にする。

それを出来る何かがラウラの手の内にある。それしか考えられない。

 

 

「では。窓の客人も、そろそろお帰り願おうか」

 

「・・・・・・。」

 

ラウラの腰からは新たに一丁の古い銃が姿を見せる。

モーゼルC96。ドイツ帝国時に作られた物だ。

小柄な者でも扱える銃なので身の丈が小さい彼女には持って来いだろう。

 

だが皮肉を言っている場合ではない。

何とか彼女が何を仕掛けたかだけでも分かれば、対策の施しようはある。

目線を僅かに窓側にズラした楯無はその向こう側にいる自身の腹心の行動を信じ、その場に留まっていた。

 

「残念だけど・・・そう易々と帰ると思っているの?」

 

「・・・・・・。」

 

「ウチの腹心は強いわよ。色々と」

 

 

ふむ、と呟きラウラは窓側に向けていたC96の構えを解き自身の足下に下げる。

見た限りどうやらその様で、窓の外からは物音一つ聞こえず微動もしない。

裏側で待機している虚がいまだに隙を窺っているのだ。

彼女も最悪ラウラが何を仕掛けたかだけでも知りたい。彼女が慢心で話してくれれば手の打ち様は絶対にあると信じていたのだ。

 

「・・・なら。教えてやろう。もし私に攻撃をすればどうなるのか、をな」

 

(よしッ!)

 

「・・・!」

 

 

読みは当たった。優位な立場であるラウラが彼女達の思考を更に鈍らせようと最後の手を使ってきた。

自分に危害を加えればどうなるのか。その答えを教えて、彼女達を動揺させようと言うつもりだ。

 

 

「随分と太っ腹ね。そこまで言って大丈夫なのかしら?」

 

「問題ない。お前等には絶対に手が出せないのだからな」

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

「セムテックスは知っているな」

 

「・・・プラスチック爆弾」

 

「そうだ。あれを仕掛けた。それも一つではない」

 

「タチ悪いわね・・・そんな事したら、確実に学園は吹き飛ぶ。最悪、国際問題にまで発展するのよ」

 

「問題・・・な」

 

国際問題を口にした直後。ラウラの口はつり上がり、またも笑みを見せる。

また自分が変な事でも口にしたか?と思っていたが、そうではない。

その台詞自体にラウラは笑っていたのだ。

 

 

「どうでもいい事だ」

 

「えッ!?」

 

「そうではないか。問題というのは全て後から生じるもの。後の事を一々気にしていては人も戦争も成り立たん。国際問題だなんだはその類だ。後から後からホコリの様に出てくる。そんな事。クソ喰らえと言いたいな」

 

「随分と勝手ね。そうなっては貴方が不利になるのよ」

 

「フッ。今更国を追われた所で、この世の生き方を失うわけでもあるまい。我らは軍人。戦うのが生業だ。戦場を渡り、自身の価値を売ればいい」

 

そうだ。今の時代、戦い方を身に付けていれば飯に困ることはまず無い。

あちら此方で戦争経済の名残である民族紛争や内紛があちら此方で行われているのだ。

PMCや傭兵部隊。果てはフリーの雇われ。または盗賊行為。

生き方は幾らでもある。

 

「国を追われても別にいいと?」

 

「私から言えば代表候補生など、ただの肩書きだ。必要なくなれば捨てても構わんし同属の誰かに渡しても別に気にはしない。私達にはこの人だけが居ればいい」

 

「・・・本当に恐れなしね。後になって怖くなりましたって言うのがオチよ」

 

「どうだろうな。案外、成功するやもしれんぞ?」

 

指導者(千冬)が納得してくれればね」

 

「納得するさ。あの男を消せば、この人の最後の拠り所は私になるのだからな」

 

 

(・・・・・・言うだけ無駄か)

 

狂信の目。それはシャル以上だった。

彼女が両親に依存しているならば、ラウラは千冬を神の様に祭り上げ信仰する。

絶対的に必要な存在。彼女は私。私は彼女の一部。

それがラウラの理念だ。

 

 

(妄信とか狂信とか、そんな甘っちょろいモンじゃない・・・自分の一部と思い込んでる・・・!)

 

彼女がどれだけ千冬の事で依存しているのか。彼女が千冬をどれだけ崇めているのか。

それがこの場でハッキリとした。生半可な覚悟や考えでは絶対に勝てない。

悟った楯無は悔しそうな表情と共に、窓の外に居る虚に呼びかける。

 

「虚ちゃん・・・撤収よ」

 

「ッ・・・」

 

「無理よ。私達ではね」

 

「・・・・・・はい」

 

 

虚は下がり、楯無も苦無を収める。

この場で戦うのは無理だと判断したからだ。

どの道、ラウラの思う壺なのか明らか。こうなっては何も手の打ち様がない。

 

「・・・悔しいけど、今回は退かせて貰うわ」

 

「良いだろう。私も興醒めした。互いに考えが一致している今は・・・共に退こうではないか」

 

(嘘仰い。どうせまだ居残るクセに)

 

未だに千冬の上に乗っているのだ人質の優位性はまだあるが、彼女もまだ諦めていないのだろう。

楯無は負け惜しみのように内心で呟き、部屋を出ようとする。

すると、ドアノブに手を置いた瞬間ラウラに呼び止められる。

 

「最後に。一つ伝言を頼みたい」

 

「・・・伝言?」

 

「そう。あの男にへのな」

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここはもう。戦場だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・私です」

 

『お嬢。一体どうしたのですか?』

 

「ちょっとした用事です。それより今何処に?」

 

『言われた品を届けに日本に来ています。確認が終わったのでウチのドライバーと一緒に其方に窺うところですが・・・一体なにか?』

 

「いえ。少し、その品の受け取り方を変えよと思っているの」

 

『・・・また余計なことに首突っ込まれてしまったんですか』

 

「そう言うこと。頼める?」

 

『・・・私はお嬢直属の使い人。何なりと受けますよ』

 

「よろしい。では、頼みますわよ」

 

『分かりました。ぐれぐれも爆破でコッチに来るなんて事しないで下さいね』

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・露骨にありそうな未来線を突いてきますわね。全く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動く。

己が企みの為。理念が為。目的が為。

少女達の思惑が渦巻く学び舎は、その思いがぶつかり合う戦場にへと姿を変えていく。




後書きと言う名の後書き。

ストーリーの都合上数人はオリキャラが出るかもしれません、ってか出ます。
そのキャラについて。そしてISサイドのメンバーについての設定もこのラウラの一件が終了次第投稿しようと予定しています。

また。タグもいくつか追加します。
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