IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第三十話です。

原作の一面一面がかなり長くなってしまい、先行きが不安になりつつあります・・・
このままの調子で無事に完結できるのだろうかと心配です(汗)

今回はいよいよ一夏とラウラの対峙。
更に意外なことも・・・ってまぁ、見る皆さんによっては「そういえばそうだったな」と思い出す人もチラホラいるんじゃないかなと。

では、誤字・駄文はご愛嬌。
「それでも良い!」と言う方は
第三十話、お楽しみ下さい。


No.30 「相対」

 

「私は兵器だ」

 

 

「俺も兵器だ。お前は自由か」

 

 

「私は・・・自由ではない。だが、生の充足は得られている」

 

 

「生と死。俺にはそのどちらも存在しない。あるのは起動と削除」

 

 

「私と同じだ。私も起動し、そしていずれ削除される」

 

 

 

 

「・・・お前は自由を欲しないのか」

 

「何故?」

 

「俺は欲しい。自由を手に入れて、何時か様々な事を知りたい」

 

「・・・私は」

 

「お前の自由はリバティか?それともフリーダムか?」

 

「・・・私にはそのどちらも許されない。私達は兵器だ」

 

「・・・そうか。では

 

 

 

 

 

 

 

お前は何者なんだ、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

 

 

 

たった一つの問い。

その問いに、彼女は答える事ことは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・私は兵士。私は兵器。なのに・・・」

 

なぜ答えられない。

今も昔も、その問いに対して自身の答えを口にすることが出来ない。

私は兵器。そう言えばいい。

私は兵士。そう答えればよかった。

なのに、何故それを口にすることが出来ないのだろうか。

 

「単純な答えの筈だ。なのに・・・」

 

単純な答えのはずなのに、どうして口に出せなかった。声に出なかった。

何度も自身に問いかけ、そして答えたはずなのにどうして答えられなかった。

 

どうして今も答えられない。

 

 

「・・・違う。私はあの人の一部だ。あの人と共に生き、戦う、武器だ」

 

 

 

そんな言い訳にも聞こえる理由に無理矢理自身を納得させる。

確かに自身は納得していないのかもしれない。

だが、それは恐らく『あの男』の所為だ。

 

「私があの人の一部であるから・・・あの人の意思を理解しているから・・・」

 

全ての原因はあの男だ。

あの男さえ居なくなれば、自分に対する答えは必ず出る。

 

 

 

「殺さなくてはならない。あの男。織斑一夏であったあの男を」

 

銃のロックを外すラウラ。

その銃口の狙いはただ一人。

己が、己の主たるあの人が迷う理由である男。

一夏だけだ。

 

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

 

ラウラが転入してきてから早二日が経つ。

その日、一組の空気はやや重く不安に満ちていた。

 

千冬が休んでしまっていたのだ。

理由は不明ではあるが、本人が直接言い出した事なので誰もがその報に驚きを隠せない。

彼女が仮病などすることはあり得ない。仮に体調不良だとしても昨日まで平然としていたのだ。あまりに急すぎる事ではないか。

様々な理由や憶測が飛び交い、生徒達の間に不安や疑問、そして不信感が生じ始めていた。

彼女は言うなれば学園の象徴的存在だ。生徒にとっては神にも等しい存在とも言える。

それがただ一日の休みであっさりと崩れるとなると、彼女がどれだけ祭り上げられていたのかが理解できる。

 

 

「・・・で。今日一日ほぼ自習となったと」

 

「うん」

 

「そうなるな」

 

結果、授業についてほぼ任せっきりである山田はどうするればいいのかと迷い、午前の授業は全て自習となってしまった。

元々上下関係がほぼ逆である一組の教師二人だ。彼女の授業がほぼ無いので生徒達も薄々は勘付いていたが、まさか午前中すべてが自習になるとは思いも寄らなかったようで一組の生徒はただ口をあけて呆然とすることしか出来なかった。

 

 

午前の授業すべてが丸つぶれとなったその日の昼休み直後の屋上。

箒とシャルの二人から聞いた鈴は自身のことでもないのに頭を抱えていた。

 

「大丈夫なの、この学園・・・」

 

「大丈夫だ。山田先生が慌てて職員室に戻って午後の授業の用意をしているらしい」

 

「今しているってところが可笑しいでしょ、事前に話は聞いてたんでしょ?」

 

「それが話自体は直前に言われたらしくって、山田先生もかなりテンパっていたようで・・・」

 

「・・・・・・。」

 

呆れて物も言えない鈴だが、それ以上に彼女の内心では不安があった。

千冬がこんな事で休むなど絶対にあり得ない。

誰もが思う事だが、鈴の場合はそう言いきれる理由と根拠があった。

 

一夏や箒ほどでないにしろ鈴も千冬とは多少の縁がある。彼を通して知り合い、心を開いて話せる相手。他の彼女を信仰する生徒よりも千冬の事を知っているつもりだ。

何気ない日常ではあるが彼女の性格を知るには十分な時間があった。その中で鈴は千冬がどんな人なのか自身の目で見て、ある程度は理解していた。

 

真面目で弟思い。厳しいが時に優しくしてくれる。

今回の休みで彼女を考えるなら、絶対に休まないと言い切れる。

あるとすれば有休を取るか休日であるかのどちらか。

断言できる。彼女は急に休んだりしないと。

 

 

「何か・・・あるわよね」

 

「え?」

 

「あの人の休みよ。あんなに元気だったのに今日になって休みますなんて・・・私には絶対に納得できない」

 

「そんな。仮病じゃないのは分かっているけど、誰だって急に風邪引いたりするし・・・」

 

「そうなんだけど・・・なんていうかこう・・・突然風邪を引かないっていう人だって見えるのよね。初見でも」

 

「それって鈴から見ての話なんじゃないの?」

 

「まぁそうなんだけど・・・」

 

言葉に出来ない鈴はどうしたものかと考えるが、それでもそれに合った言葉というのがなかなか頭の中から引き出されない。上手く言葉に出来ないというよりもそれに合う言葉が分からないとでも言うべきなのだろう。

そこに、箒が鈴の言葉を捕捉するように会話に入っていく。

 

「人の見かたはそれぞれだ。シャルがそう見えないと思えるものが、このチャイナにはそう見えるという事だ」

 

「・・・そうなのかな」

 

「ああ。現に私もそこのチャイナと同じだ。あの人が突然休むなどとは思えん」

 

「・・・・・・・。」

 

 

「っていうかさ、何よチャイナって。私には鈴って名前があるんですけど!?」

 

「五月蝿い。お前にはチャイナで十分だ」

 

「チャイナいうなもっぴー!!」

 

「っ!?人が気にしている(?)あだ名を・・・!」

 

 

そして二人はそのまま口喧嘩に突入。

周りの事を気にせず、大声を張り上げる二人は声が嗄れるのではないかと思えるほどの勢いで互いの悪口を言い合う。

典型的な悪口から互いの性格、容姿について。

更には名前を馬鹿にしたりとやっている事は子供の口喧嘩となんら変わりなかった。

 

「喧嘩するほどっていうけど・・・どちらかというと犬猿の仲なんじゃ・・・」

 

そちらの方が正しいのだろう。

実際、目の前でしょうもない口喧嘩を二人は続けている。

これで仲が良いとは誰も言えるはずが無い。

シャルはヒートアップするであろう二人の口喧嘩にただ深くため息をつくのだった。

 

 

 

「あり?りっひーまだ来てないの、デュッチー?」

 

そこに変わらぬマイペースさの本音が姿を見せた。

頬には昼食の直後なのか、何かの食べかすが付いており、それに気づかないのもそれがついているのもある意味彼女らしいだろう。

声を掛けられたシャルは振り向くと本音の頬に付いている食べかすが真っ先に目が行き、シャルはそれを自身の頬に指をさしてジェスチャーで本音に食べかすを教える。

気づいた本音は制服の袖で自分の頬の辺りについた食べかすを拭き取る。本当に今まで気づいてなかったのだろう。

シャルに礼を言った本音は、そのついでにとシャルの前に座り彼女に投げた質問の答えを聞く。

 

「うん、まだ来てないけど・・・どうかしたの?」

 

「ううん。りっひーとお昼一緒に食べようって誘ったんだけど、「先にアリーナで用事を済ませる」って言ってたから」

 

「それっていつ?」

 

「えっとさっきの自習の時だよ。りっひー申請していたみたいだから、何をするのかな?」

 

 

「・・・それ・・・多分、来ないと思うよ。僕らと約束もしていたから」

 

「うよ!?」

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

「折角、申請取れたっていうのに。気が乗らない・・・」

 

十秒メシで昼食を済ませていた一夏は、罪悪感を感じつつもアリーナのフィールドに一人立っていた。

 

元々前に申請していたアリーナの使用が許可されたので、以前届いた武器の試射を予てから行おうと思っていた彼なのだが、その当日である今日、箒と鈴に半ば強制的に昼食を誘われ、本音には一方的に楯無たちと共に昼食をしようといわれてしまったのだ。

他人から誘われた以上は出来るだけ誘いに乗りたいと思うの彼なのだが、アリーナの使用はこの機会を逃すと次との間が長いので、どうしてもアリーナを使いたいという事でシャルにだけ断りと詫びの手紙を本人が知らないうちに渡していたのだ。

 

シャルや箒、鈴たちには悪いとは思っている。本音も悪気があってではないのは分かっている。

だが、相手の答えを待たず強制的に、一方的に言われては相手のことをいくら思っていてもその相手のためにはならない。

 

そんな言い訳を頭の中で言い聞かせ、自分は半分悪くないと思わせていた一夏。

こればっかりは流石に邪魔されたくないという彼の意地なのかもしれない。

 

 

「だが。今は自由なんだし、やりますか」

 

今日を逃せば次はかなり先だ。だから時間の限り思い切りやろう。

 

子供のように無邪気な顔を見せた一夏は、軽く身体を伸ばすとアリーナの生徒が使用できる範囲のシステムにアクセスし今回の試射のターゲットである円盤の的を出現させる。

アリーナのシステムには銃の試射や近接武装の試しの為のターゲットが用意されており、それを使い専用機持ちは自身の武器の試射や訓練。量産機の場合はタイムアタックや同じく射撃訓練を行ったりすることが出来る。

今回の円盤の的は主に武器の試射や試しに使われるものだ。

 

 

「先ずは・・・!」

 

 

一夏が最初に使うのはM4カービン。

M16の後継として使われておりXM8と同時並行で採用されているライフルで様々なカスタマイズが可能な万能ライフルだ。

銃のオプションパーツ取り付け台であるレールにフォアグリップやグレネードランチャーを装備可能。スコープも中距離や遠距離などあり、豊富なパーツによる拡張性が最大の特徴だ。

しかし今回はあくまで試射が目的なのでカスタムパーツは一切無しの状態。

M4本来の状態で行う事になる。

 

「カスタムなしっていうのも新鮮だな。いつもパーツ付けたままだったし」

 

独り言を呟きつつ銃を構える彼は、銃の構えの感覚や銃自体に異常が無いかなどを確認し、それを終えると、深く息を吐き呼吸を整え意識を集中する。

 

「ふぅっ・・・・・・ッ!」

 

 

 

 

刹那。ターゲットへとM4の銃爪を引く。

数秒銃爪を引いただけで数発の弾が飛んでいき、ターゲットのほぼ中心へと当たる。

そして、それを皮切りに銃爪を引いては離すを繰り返し、何発かに分けて射撃を行っていく。

小さな花火が破裂するかのように発砲音が響き、リズミカルに発砲を繰り返す。

 

やがてマガジン一つの弾を使いきると、一夏はマガジンに弾の残りがないかを確認。

ターゲットの的のどこに、どれだけ当たったのかも確かめる。

どれだけの弾がターゲットの中心に当たったか。それが一夏の現在の射撃能力となる。

 

「・・・よし。問題は無さそうだな」

 

マガジン一つを使いきり、ターゲットには殆どの弾が中心部に命中。

命中率は高い、と思われたが中心から少し上を見ると尖った形のように弾が当たっていた。射撃時の銃の反動で銃爪を引いたまま上に銃口を向けていたようだ。

 

「・・・命中云々は追々直す事にしよう・・・」

 

自身の反省点を先送りにした一夏。

射撃の腕はどうやらそこまではよくない方らしい。

このままの調子で次の銃の試射はまともに当たるのだろうか。

M4のマガジンを入れ替え、戻した一夏は次のことについて心配する。

次はショットガンのスパスを使うからだ。

 

ショットガンは近距離では圧倒的威力を誇り、ロケット弾などを除けばその威力はスナイパーライフルと同等ないしそれ以上の威力を持つ。

但し、射程が短いのがネックで相手だったり的だったりの距離が離れれば離れるほどそのショットガン本来の威力は低下する。

 

「で。なんでスパスなんてチョイスしたんだろうな・・・」

 

その中でスパス12は銃自体が大きく、更に重量もかなりあるので取り回しが悪い。威力としては他のショットガンよりも高いものだが大型である為に狭い場所での取り回しが悪いのもネックの一つだ。

だが、反面その重量によって反動がマイルドになり、銃本体の耐久性も高いのがあげられる。

元より狭い場所で戦う事など無い彼にとっては、短所は重量による取り回しの悪さだけ。しかも使用するのは人の状態ではなくISなので重量での長所短所は共に無いに等しくなる。

 

 

 

「ま。気にする事は無いか」

 

新しく出現したターゲットに向かい、構える。

そして銃爪を引く、が

 

 

 

 

 

「うおっ!?」

 

引いた瞬間、先ほどよりも盛大な発砲音と反動が一夏にへと伝わる。

金属音よりも高く、耳から耳へ骨が音を反射させていく。ライフルの連射時の時よりも比べ物にはならないだろう。

反動も強く反射的に腕が反動を曲げて衝撃を吸収する。

動作による動きで衝撃を反動を軽くした、のだが・・・

 

 

「っ・・・これ火薬イジってるじゃねぇか!?」

 

普通のスパスでもここまでの発砲音と反動は無い。

考えられるとすれば明らかに誰かに火薬などをいじられた事しか考えられない。

でなければ、ここまでの威力もないし一夏の知るスパスは全て偽物だったと思われてしまう。

 

「くそっ・・・誰だよ火薬イジったの。スネーク、は無いか・・・てことはマドカか?」

 

そういえばと一夏は過去にあったちょっとしたトラブルを思い出す。

過去に似たような事があったのを彼は覚えていた。忘れようとしても忘れられない出来事。マドカがM4のオプションであるグレネードランチャーの火薬をイジり本来の倍以上の威力に改良した事があったのだ。

それによって一夏の目の前に立っていた廃墟が一発で崩れていった。

まるで砂と泥で出来ていたのか、それとももう建っているだけでも精一杯だったのかと思う程のだ。

 

「アイツ・・・後で連絡して問い詰めてやる・・・」

 

やっていい事と悪いことがある。犯人であろうマドカに対し雷を落としてやろうと考える一夏のその姿はまるで妹を叱る兄。サニーとマドカの面倒を見てきたのだ。

知らないうちに兄の様に振舞っていても可笑しくはないのだろう。

本人も恐らくそのことを自覚せず年上の人として彼女たちに接していたので、傍から見れば兄と妹たちの様に見える光景だ。

現に彼の周りの人間はそう見えてしまうと声を揃えて言う。

老兵、オペレーター、怪力人妻、大佐等など。つまり、彼の知り合いのほぼ全員がという事だ。

 

 

 

 

 

『またアンタ十秒メシで終わらせたのね』

 

「・・・!」

 

そこへ彼の後ろから聞きなれた声が聞こえてくる。

ため息と呆れた声に目線だけをずらすと、ISを展開した鈴と打鉄を纏う箒の姿が後ろから近づいていた。

 

「・・・・・・。」

 

「ったく、女の約束すっぽかしてまでも銃にご執心とはね。言い訳は聞かないわよ」

 

ゆっくりと彼の後ろに着地した二人は背を向けて立つ一夏に近づき、鈴は何気も無く彼に話しかける。

しかしその本当に何気ない、他意もない言葉である『言い訳(・・・)』に一夏は強く胸を締め付けられる感覚を感じていた。

 

「ッ・・・」

 

なぜ突然。その答えを自分は知っているのではないか。

自身への問いは自身への返答で解決した。いや。元から分かっていたことだ。

 

 

自分はまだ、言い訳を並べて彼女(箒)から逃げているのだ

 

 

何度も何度も手を差し伸べられている。なのにそれを自身の中で言い訳を並べて拒み続けていた。

 

彼女と自分とでは住んでいる世界が違う。

 

変に自分に言い聞かせ、交わす言葉を最低限にして彼女との関係を否定してきた。

自分の事に彼女を巻き込みたくない。自分の居る世界はあまりに非常な世界だから、彼女にこの世界に来て欲しくない。

本心を隠し、たとえ嫌われようとも、彼女だけは巻き込みたくなかった。

 

だが。

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

もういいんじゃないか。そう思えるようになった。

鈴との和解の時に思った事だ。

ただ一言、言えばいいのではないか。ただ一言謝罪を言えばいいのではないか。

まだ上手く言葉には出来なくても、それだけは言えるのではないか。

 

だから。

 

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

(一夏。後はアンタ次第よ)

 

拳を強く握り、決断する。

今言わなければこの後何時になるか分からない。

言うタイミングは今だ。

 

頑なに反発するかのような堅い口を開き、一夏は箒にへと『一夏として』その口を開いたのだった。

 

「・・・・・・ッ・・・俺は」

 

「・・・いち」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那。誰かが不敵に微笑んだ。

鋭く、冷たい殺気と共に。

 

「ッ!!!」

 

 

そして、まるで突然の事かのように彼ら三人の居た場所が爆発。

その一帯は砂煙が激しく舞い散り、僅かに遅れて爆風がアリーナの外へと駆け抜けていった。

 

 

 

完璧な攻撃だった。

これなら回避しててもダメージがあるのは確実だ。

笑みを浮かべる者は奇襲攻撃の成功に喜びを隠せなかったのか、今にも笑い出しそうな様子で爆心地を眺めていた。

 

が。その考えは甘すぎた。

 

 

「・・・・・・!?」

 

 

 

「っつー・・・」

 

「うっ・・・何が・・・」

 

「頭が痛い・・・一体どうなってんのよ?」

 

標的であった三人が五体満足な様子で爆心地から遠くの場所で頭痛に頭を抱えていたのだ。

あまりの予想外の事に笑みは消え、顔は驚愕の色を隠せていなかった。

 

「ッ・・・馬鹿な・・・!?」

 

 

 

 

「・・・ふうっ・・・二人いっぺんにはキツイな・・・」

 

 

「・・・瞬時加速ッ・・・!」

 

 

二人を抱え込んでの『瞬時加速』。それを可能としたのはただ一人。

一夏が殺気に逸早く気づき、瞬時加速を起動し二人を引っ張る形でその場から離れたのだ。

殺気に敏感であったがために功をそうした。

咄嗟の判断で二人を救えた事と二人が頭痛だけで済んだ事に安心した一夏。

そして彼は自分達を狙った攻撃が放たれた場所に向かい鋭い目で睨みつける。

 

「随分と・・・派手にやろうとするな」

 

「ちっ・・・!」

 

本当はあの一撃で終わらせるつもりだったのだろう。

予定が狂い、しかも彼らがほぼ無傷である事に苛立ちしか立たない。

不本意ではあるが完全にトドメを刺すまで攻撃をやめるつもりは無い。

今ならまだお荷物の二人は体勢を立て直せてない。仕留めるなら今だ。

殺意を再び彼らに向け、今度こそと砲口を向ける。

 

 

だが、今度はその攻撃を阻止する為にと、誰かが攻撃を仕掛けてくる。

攻撃は銃弾ではない。銃弾よりも大きく、強力なグレネード弾だ。

 

「ッ!?」

 

一発目のグレネード弾を皮切りに、更に数発のグレネード弾が連射される。

弾が大きいので避けるか撃ち落すかは容易なのかもしれないが一気にとなれば容易な事ではない。

程なくして避ける事すら難しいグレネードの一団は爆発した。

 

 

 

「ッ・・・グレネードランチャー!?一体誰の・・・」

 

『みんな、大丈夫!?』

 

耳元から通信機器を通して伝わる声が聞こえてくる。

オープンチャンネルの通信に耳を傾け、一夏は自身の機体に備わっているソリトン・レーダーの情報を頼りにその通信相手を見つける。

聞き覚えのある声だ。それも自分が最近知った声。

視界にその相手が見つかり、ハイパーセンサーで拡大すると、そこにオレンジのカラーリングをしたISが一機。ふわりと優しく浮いている雲のように飛び、その姿を見せつけるかのように近づいてくる。

 

「シャル・・・!」

 

「それがアンタの専用機・・・?」

 

「あー・・・まぁ言いたい事は分かっているよ」

 

(XM25。個人携行式のグレネードランチャー・・・さっきのはこれか)

 

苦笑交じりの顔のシャルが地面にゆっくりと降り立ち、手に持っていたランチャーを少し後ろにへと下げる。彼女がグレネードランチャーを撃ったのだ。

手に持たれているXM25は一夏の使用するダネルよりも小さいグレネードランチャーで、火力こそ劣るが取り回しの面ではこちらの方が勝っているのが特徴だ。

携行しやすく、扱いやすいのでカエル兵が使用していることがあったのを一夏は覚えている。

 

 

「けど、今一番聞きたいのは・・・」

 

「私達ではなく・・・」

 

しかし今はそんな事を考える暇はない。

誰が自分たちにへと攻撃を仕掛けたのか。

大方の目星はついているが、やはり最後には自分の目で確かめるしかない。

 

 

「たかがと思っていたが・・・どうしてなかなか・・・だが、所詮はそれだけか」

 

「・・・そろそろ色々と教えてもらってもいいんじゃないかな。君がここまで彼に固執する理由をさ。ボーデヴィッヒさん」

 

「・・・・・・。」

 

 

黒いIS。その機体をラウラが纏っていた。

右肩に装備されているレールカノン、あれで一夏たちを攻撃のだろう。

堂々と仁王立ちするその腕と足には先端の鋭い爪があり、人型というよりも獣人といったほうが機体の印象は合っている。

その他に見える範囲では武装は見当たらないが、黒く禍々しくも見えるその外見には威圧感があり、更に一夏は彼女の機体を見て驚愕の色を隠せなかった。

 

 

「・・・オタコン。見てるか」

 

『ああ。偶然見えたけど・・・どういう事かって自分でも分からないよ・・・』

 

通信越しに彼の視界を借りて画面に映る映像に言葉を失う言うになるオタコン。

大概自分も世間に出せば一部の科学者達が腰を抜かすような事をしでかしてきたが、今回ばかりは彼は驚かさせる側となった。

 

ラウラの機体には機械的な外見というのが殆ど見当たらない。

まるで人が鎧を付けたかのような外見と違和感の無さだったからだ。

人工筋繊維。彼女の機体の一部は一夏同様にCNT筋繊維によって出来ていたのだ。

 

「・・・一年前に見た感じと全く違う気がするが・・・」

 

『恐らく、君が派手に壊したからその序でに・・・じゃないかな』

 

「はた迷惑以外なんでもないな」

 

 

「間接が似ている・・・」

 

「ッ!人工筋肉ッ・・・!」

 

 

「オタコン。あの機体。まさかと思うが・・・」

 

『次期トライアル機『シュヴァルツェア・レーゲン』それと、国内ニュースを漁ったらビンゴだったよ。彼女の機体だけじゃない。ドイツは国内で秘密裏にISへの人工筋肉の採用を検討している』

 

「その先行試作機って事か」

 

『ああ。どうやら、あの一件の後に採用されたらしい』

 

「・・・つまりあのまま放置しときゃ・・・」

 

今更そんな事を言って結果が変わる訳でもない。

自分の行動に後悔しつつも、一夏は今起こっている事をと再び意識を集中させる。

 

「どけ。私が用があるのはその男だ」

 

「・・・一夏に何の用なのよ」

 

「貴様等には関係のない事だ。命が惜しくば大人しく帰ることだな」

 

殺気立つラウラは冷たく威圧感のある声で言う。

変わらずの殺気の矛先は当然一夏だ。

毛を逆立たせるほどの殺気に敏感に反応した箒は言葉すら出ない。

鈴も負けじと言い返すが、流石の彼女もラウラの殺気に押し負けて最早口だけ。

感じた事のない殺気に二人はただ圧倒されるだけだった。

 

「ハッ、冗談。誰が帰るもんですか」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・こちらも、お前の真意を聞かん限りは退くつもりはない。無論、言ったとしても退くとは限らんがな」

 

強がりの自分に身を任せて答える二人。

鈴の場合声が上ずっているので本当に強がりだけというのが見ただけで分かる。

それと違い箒は鈴よりかは冷静な表情で声も震えていない。

セシリアの一件で多少の耐性は持っているのだろう。それに彼女の話し方と態度からしてラウラから本気で一夏に対するのを聞きだすつもりだ。

こちらはこちらで分の悪い賭けだ。

 

 

「・・・烏合の衆が。そこまで死に急ぐか」

 

彼女にとっては生意気でしかない二人の答えに鼻を鳴らしたラウラは自身が出せる範囲の低い声で、一夏たちを見下すような目で呟いた。

負の念に彩られた目と声に一夏は背に重しを乗せられたかと思えるプレッシャーを感じ、息を飲んだ。

 

「・・・やる気だな」

 

『やる気だね。どうするの?』

 

淡々と呟かれただけであるのに、アリーナの空気は重苦しく一変する。

重苦しい空気は水の中を潜っているかと思う程に息苦しく、押し潰されそうで息をするだけでも苦しいほどだ。

それだけの殺気を出す相手、ラウラが一夏にどれだけの殺意を抱いているのかは計り知れない。

 

「やるしかないだろ。どの道自分の不始末だ。自分でしなきゃな」

 

だから。その言葉を脳裏に浮かべ、一夏は高周波ブレードを持つ。

自分が今の今まで見向きもしなかった事と向き合うときだ。深呼吸し息を整えた一夏は改めてラウラと目を合わせる。

変わらぬ殺意を纏う赤い瞳。幼い少女のような顔は見ているとなんだか揺らめいて見える。幻覚でも見えているのだろうか。彼女の顔が本当に人であるのかと疑いたくなるものだ。

 

 

「イチカ・・・まさか!?」

 

「下がってろ。アイツの狙いは俺だ」

 

「駄目ッ!彼女は君を・・・!!」

 

「・・・・・・。」

 

必死に止めにかかるシャルだが、二の句を継げる事は出来なかった。

分かっているからこそ、彼が一人で行くと言い出したのだ。分かっていないまま行くよりもまだマシだろう。だが、今回はどちらにしても駄目な事だ。

行けば最悪、一夏はタダでは絶対に済まない。

それを理解しているからこそシャルは止めようとした。そして、止めなかったのだ。

 

「ちょっ一夏!?」

 

「ッ!シャル、どうして止めない!?」

 

「・・・止めようと思った・・・けど・・・」

 

それでも彼は行くと決めたのだから。

喉の奥に飲み込んだ言葉は、今は自分にしか気づけないだろうという彼の意思だった。

後姿のまま黙り込んだ僅かな間。振り向こうとしたが、彼は止まる事をしなかった。

後戻りはしない。これは俺が決めた事だから邪魔しないでくれ。と言っているかのように語るその姿に恐らく後々気づくだろうと信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は兵士。障害は排除するのみ」

 

機械仕掛けのように呟くラウラ。だが、その胸中には今にも弾け出しそうなほど揺らめく殺意が今まさに湧き出ようとしていた。

少女の狩り、獲物は一匹。

さぁ。

 

クイコロソウ。

 

 

 




後書きと言う名の・・・やっぱり後書き

色々と作品について計画しているんですが、どうしようかと現在苦戦中です(汗)
とりあえずキャラの設定はメインキャラが粗方出揃ったのでIS側も製作しています。
機体については・・・追々かと
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