IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第三十一話です。

そろそろ存在感が薄くなりつつあったMGS風味が段々と取り戻され始めると思います。
なにせラウラですからね・・・(汗

今回はVSラウラ戦。調子が少し悪いので駄文が更に酷くなっているかと・・・
そして最後にはあの人も・・・?

では、誤字・駄文はご愛嬌。
「それでも良い!」と言う方は
第三十一話、お楽しみ下さい。


No.31 「黒雨」

市内某所。

時間は一夏とラウラの私闘が始まる少し前の事だ。

人気のある街道の道路わきに一台のプラドが停車。一見どこにでもありそうな風景だが、恐らく近くで見ればそうは思えなくなるだろう。

その運転席で一人の老年の男が周囲に目を光らせ、何かを探しているようだからだ。

白髪と老いた肌と老人そのものだが、目つきは老人とは呼べるものではない。

鋭く輝きのある目は老人が壮年の男であるかのようで、その見た目とは不釣合いの生き生きとした目をしていた。

 

それは、彼ことスネークが壮年の歳だからだ。

外見は確かに老年なのだが、それは彼の遺伝子的問題で急激に身体に老化が起こった事で、彼は実際はまだ壮年の歳なのだ。

 

 

「・・・・・・。」

 

スネークがプラドの運転席から長めていたのは外の風景ではない。

彼は監視していたのだ、彼の鋭い蛇のような目が見つめる先にある一台のトラックを。

 

「あれか・・・」

 

間違いないな、と呟きスネークは視界に捕らえた一台のトラックを見る。

見るのは別に何の変哲もない大型のトラックだ。しいて言うなら、少しコンテナの部分が大きいというぐらいで、その他を除けば普通にどこにでもあるような大型トラック。外装も一般的なのと同様にシルバー一色と、本当にどこにでもあるトラックだ。

が、スネークはそうは思っていない。彼の目にはそのトラックが他のトラックとは違うように見えている。

どんなに偽装を施しても、彼にはその跡だけでトラックが偽装したと見抜けるのだ。

 

「他にも数台・・・矢張り中隊規模か」

 

 

事の始まりは偶然彼が耳にした一夏とオタコンとの会話からだった。

彼の入った学園に遅れて転入してきたというドイツの代表候補生。出自が特殊部隊で、しかも若くして隊長である。聞けば天成の才がある子なのかと思えるが、どうにも彼の脳裏ではそれで済む筈が無いと訴えていた。

詳しく聞けば聞くほど彼の記憶に結びついた何かに引っかかり、悪い予感を感じさせる。

そこで、彼は友人であるキャンベルに連絡し、彼女の身辺について調査してもらった。

 

そして。彼の疑問はその調査の報告で晴れ、彼は行動に出たのだ。

 

 

「・・・子供にしてはやることが大袈裟・・・いや、彼女のような子だからか」

 

今のスネークの脳裏には「依存」の言葉が浮かび上がっている。

彼も以前は様々な物に依存していたが、今ではその依存はもう残っていない。

タバコも以前は定期的に吸っていたが、健康に悪いと事件の後を境に止めた。

自身で決心すれば軽い依存はどうにかなるのだ。

 

だが、それが過度の依存だったらどうだろう。

「これが無ければ生きていけない」。

そう言われれば全人類は依存していると言ってもいい。

食事に依存している。睡眠に依存している。

生きたいという生に依存している。

 

だが、過度の依存というのはそれを投げ出してでも欲する物の事を言う。

 

 

彼女(・・)の場合、何に依存しているのか。

客観的に見れば、彼女の依存しているのは二つ。

 

ある者を自分の物にすること。

ある者を抹殺すること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在、IS学園では一夏とラウラの私闘の火蓋が切って落とされていた。

 

 

 

最初に動いたのは一夏。機体の機動性を活かし、相手に照準を合わせにくい動きでラウラにへと接近する。

先ほどのレールカノンを警戒しての事で、接近されてはラウラも迂闊にレールカノンを打つことは出来ないし出来たとしても照準を合わせにくい。

レールカノンを打たれるという危険性は縮まる距離と共に低くなる。

だが、ラウラは元より動くつもりなどない。

 

彼女の機体は一夏の機体(白式)よりも機動性は高いとは言えないし、何より固定武装であるレールカノンが重りにもなっている。

加えて機体の装甲は白式よりも重装甲。これは白式とシュヴァルツェア・レーゲンの機体コンセプトの差によって生じている事だ。

戦闘行為だけでなく動作の一つ一つもこうして相手の情報を手に入れる切っ掛けになる。

この場合だと分かる事は一つ。それぞれの機体のスタイルだ。

 

 

 

「矢張り接近戦だけか」

 

一夏の行動を呼んでいたかのように呟いたラウラは左手からサブマシンガンのMP7を取り出す。二人の感覚が一夏の接近でかなり迫っていたので、それに対する弾幕と牽制としてチョイスしたのだろう。

 

「ちっ・・・!」

 

MP7から吐き出される弾丸の雨は一夏にへと降り注ぐが、その弾幕は一点集中ではなく、雨のようにあちら此方へと降り注ぐ本当の雨のような弾幕だった。

集中の弾幕ならまだしも、拡散の弾幕だと威力が低くとも必ずどこかに当たる。

また、雨のように目や口に入るのではないかという恐怖もあるので、無意識に動きが鈍くなってしまい、足も段々と遅くなってしまう。

 

「銃火器での牽制をしなかったのが仇になったな」

 

「ッ!!」

 

空いた右手にラウラはもう一丁別の銃を持つ。

見た目はライフルか何かと思えるが一夏はその銃の外見に見覚えがあり、それが切っ掛けとなったのか反射的に動きにブレーキをかけ、更に足で地面を蹴って後ろへと後退する。

彼の居た場所へは先ほどの弾幕の雨よりも強力な散弾の嵐が地面を抉っており、一夏の背筋が凍った。

 

(CAW・・・!!)

 

「読まれた?」

 

だが一発外しただけだ。

ラウラはそこから更にアサルトライフルの様に散弾を連射し逃げる一夏を散弾の嵐で追いつけようとする。

強烈な反動もISによって減少し、MP7もまだ弾は十分残っている。

今度は逃がさないとばかりにラウラは両手の銃を乱射していく。

 

「くそっ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

一方。

離れた距離で二人の私闘を見守る箒、鈴、シャルはハイパーセンサーを使い一体二人がどんな戦いをしているのか、どうやったら割り込めるかとそれぞれの考えを胸にただ彼ら二人の戦いを見ていた。

 

「あの形状・・・H&KのCAW?」

 

「ショットガンにしちゃあよく連射できるわね」

 

「あれは連射式ショットガンで昔のようなポンプアクションのとは違うんだ」

 

「まさに現代風のという事か」

 

「そうだね。けど、どこであんなのを手に入れたんだろ・・・」

 

ラウラが使用しているCAWは連射式ショットガンとしては試作のもので、正式に採用された物ではない。その為、生産も極少数で彼女がドイツ軍人だからという事だけで容易に調達できるものではないのだ。

極少数のみ生産された試作銃は、大抵はその銃の製造元が管理するのが基本。

それが外部に出ただけでも技術データを盗用される恐れもある。

なので、そもそも彼女がその銃を持っていると言う事自体があり得ないのだという事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『CAWを持っているなんて・・・連射式ショットガンの中でも強力なやつだ!気をつけて!!』

 

「抉られた地面みりゃ分かるよ!」

 

回避し続ける一夏は、彼の居た場所を抉り取るCAWの後を見て焦りを見せる。

MP7の銃撃だけでも恐ろしいのに、それ以上に強力なCAWの威力に警戒は全てそちらにへと移ってしまう。あれを喰らってしまってはと掠り、被弾するMP7の弾には意識がいかず、無意識にCAWの散弾の嵐のみを見てしまう。

それを好機と見たラウラは少しずつ距離が離れていく一夏の姿に再度レールカノンを稼動させた。

 

「貰った!」

 

「ッ!」

 

黙ってやられるのは嫌だ。意地を張った一夏はコルトを持つとラウラにへと牽制するが、所詮はハンドガンの威力と威嚇程度の攻撃。戸惑い防御に転じる必要も無い。

動じずレールカノンを構えたラウラは一夏に照準をロックすると間髪入れずに発射した。

 

「ぐっ!!」

 

 

だが、一夏は半身を捻りカノンの爆風で攻撃を回避。

大打撃を与えられない苛立ちにラウラは大きく舌打ちする。

 

「チッ!!ならば・・・!」

 

「くそっ!スパス!!」

 

『Call.SPAS12』

 

反撃に転じる一夏は手持ちの銃火器の中で最も火力が高いものであるスパスに持ち替え、ラウラに狙いを定める。火薬をイジッて威力がとてつもないものだが、死にはしないだろうという軽はずみな考えで一夏は構えてしまい、銃爪を引こうとしていた。

 

「たかがスパスで勝てるか!!」

 

「どうかな・・・!!」

 

勝てるかどうか分からない。だが今はやるしかない。

戦闘でのコンバットハイで頭の回転が疎かの状態である彼は後先をまともに考えられる状態ではない。兎も角今はと現状の打破を優先している。

このままではいずれ倒れるのは目に見えている。

そう思われたときだ。

 

一夏との戦闘に気が逸れていたラウラはドコからか放たれた空気の弾丸が迫っているのに気づけなかった。

 

 

 

 

 

「ッ!!」

 

咄嗟に防御の体勢を取り攻撃を防いだラウラは、その僅かな間に誰がこの攻撃を行ったのかを察し付いた彼女は次の行動を予想し、カウンターを行う。

次に来る攻撃が接近戦の攻撃だと予想し、手持ちのCAWを構えた。

 

「衝撃砲・・・鈴ッ!?」

 

 

空気の弾丸。それを撃てる武装を持つのは現状一夏が知る中では一人。

鈴の甲龍が持つ衝撃砲だ。そして、その衝撃砲を除けば鈴に残された攻撃方法は一つ。

青竜刀での接近戦のみだ。

 

(読まれた!?けど、接近戦ならこっちが上よ!)

 

次に接近してくるのを読まれたことに驚きはしたが、既に青竜刀を構え振りかざそうとしている鈴とCAWを構えようとしているラウラ。状況からすれば鈴の方がワンテンポ速く、確実に攻撃が入る。

勝利ではないにしろ鈴は優位に立ったと確信した。

 

「はあっ!!」

 

「・・・!」

 

 

 

 

 

 

が。それが鈴の慢心でもある。

 

 

「・・・愚か者め」

 

「えっ」

 

ラウラの呟きが聞こえた直後。鈴の身体は大きく揺さぶられる。

強い衝撃とそれによる痛みは絶対防御でどうにかなるダメージではない。

内部的な痛みで、ISでも抑制は難しい。

そして、頭もシェイクされた鈴は余りの気分の悪さにたん(・・)を吐いた。

 

「が・・・あっ・・・」

 

一体何が起こった。

ハイパーセンサーでしか確認できなかった箒とシャルは何故突然鈴が弾き返されたのかと驚きが隠せなかった。

近くで見ていた一夏は違う。驚愕の表情は変わらないが同時に背筋に悪寒を感じていた。

 

人型であるIS。だがその攻撃はまるで化け物かなにかではないのか、と思えるほどに。

 

ラウラの機体からの攻撃。それは幾つかの小さな有線式ワイヤーのブレードによる反撃だ。

しかもその現れ方は機械的な直線のものではなく、生物的な曲がりを見せた攻撃で攻撃自体がラウラ自身によるものなのではないかと思える見え方だったのだ。

 

 

「先ずは一匹」

 

「ッ!!!」

 

「鈴ッ!!」

 

予定が狂ったがいいだろう。不敵な笑みを見せたラウラはそのままワイヤーブレードで鈴を拘束。四肢を抑え首を引き千切るかのように締め付けた。

あまりの一瞬の出来事に驚く暇も無く一夏は拘束された鈴の名を叫ぶ。

 

「がっ!!」

 

「ッ!!チャイナッ!!」

 

「そこまでだ。全員動くな」

 

「ッ・・・!?」

 

ありきたりの言葉で全員に命令をするラウラ。

だが、その言葉には強い命令力があるのは確かな事。現に動けば鈴がどうなるのかを三人は大体察し付いているからだ。

問題はそれ(・・)を今ここで彼女が平気で行えるのか。

行えばどうなるのか。それは彼女でも分かっている筈。

 

「無鉄砲な奴だ。よくコレ(・・)を中国は寄越したものだな。単なる宝の持ち腐れに他ならん」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・なら、お前はどうする気なんだ」

 

「どうする?さてなぁ・・・どうするだろうなぁ?」

 

挑発的な答えに箒は口を強く締め、ラウラに鋭い睨みを利かせる。

それでもラウラの見下したような表情は変わらず、まるで鈴を玩具のように四肢をあちら此方へと引っ張ったり強く締め付けたりを続ける。

神経を逆撫でするその行為に、一夏は険しい表情は変わらないが内心では怒りが爆発する寸前。しかし、それでは彼女の思う壺であるのは明白なので、必死に理性で抑えている。

 

「貴様ッ・・・」

 

「・・・。」

 

 

「情報通り、か。なら、この娘を解放するには・・・分かっているよな、織斑一夏」

 

「ッ!!」

 

 

「・・・・・・。」

 

答えは一つだ。

一夏は険しい表情のまま、黙ってISを解除した。

彼女の目的が一夏の死であるのなら、武装解除ではなくISの解除であるのは当然のこと。

そして、もう一度ISを展開しない為に・・・

 

 

「待機状態のISを捨ててもらおうか」

 

「・・・。」

 

「イチカッ!」

 

「・・・・・・。」

 

念には念をと言う訳か、ラウラは一夏に白式を腕から外させ横にへと捨てさせた。

前に捨てれば走って取れるし、後ろなら後方に待機している二人のどちらかが取るだろう。

その事も予想し、徹底した相手の無力化を行うラウラ。

 

「ゆっくりとこちらに来い。手は見えるようにな。もし動けば・・・」

 

「・・・。」

 

歯を強く締める一夏は、彼女の言うとおり一歩一歩ゆっくりと歩き、手を広げてラウラのもとにへと歩いていく。

 

「ッ!かはっかはっ!!」

 

「ッ!!」

 

「あ・・・!」

 

鈴の咳き込みに一夏の表情は焦りの色を強くする。ラウラのワイヤーブレードによって首元を締め付けられている鈴は脳に十分な酸素が送られていない状態となっている。

これが長く続けば酸欠になってしまう。そうなってしまっては事態は最悪な結末となってしまうのは明らか。

焦りを隠せない一夏はある程度の距離を近づくとラウラを睨む。

 

「もういいだろ・・・ソイツを離せよ」

 

「・・・さて。どうするかな。貴様を殺すのが先か・・・それともコレを離すのが先か・・・」

 

だが状況がラウラに有利な事には変わりは無い。

余裕の表情を崩さないラウラは焦らす言い方で彼らに挑発し、冷静さを欠かせていく。

 

「・・・貴様、こんな事をして自分が唯で済むと思っているのか。もしどちらかを手にかけるのなら、お前はドイツの代表候補としては・・・」

 

「それがどうした」

 

「・・・えっ」

 

箒とシャルは彼女の言葉を疑う。

彼女はドイツの代表候補を降ろされてもいい、と涼しい顔で言ったのだ。話を言い出した箒も正気なのかと疑いたかった。

だが疑う余地もない。彼女の目が本気なのだと言っていたのだ。

 

たかが(・・・)代表候補の地位だ。そんなもの、そこらの犬にくれてやってもいい。私にはさして興味の無いものだからな」

 

「なら、どうして代表候補になった・・・!」

 

「簡単なことだ。私が利用したかった。それだけだ」

 

「・・・・・・。」

 

それだけの事と一言で片付けた彼女に本気なのかと叫びたいほど、箒は彼女が正気かどうかを疑いたかった。

代表候補というのは単純に言えば国に認められるほどの実力を持つ人間の事。

国内に居るIS操縦者の中でもトップに立ち場合によっては最高の名誉にもなる。

なのにラウラはそれをただ利用したかっただけと一言で捨てた。

いくら世界や人が誉れ高い名誉だと言っても、それが全人類統一の見方にはならない。

ラウラの様に利用するだけと捨てる物だって極稀の確率で居る筈。

だが、実際に聞いて見なければ実感が湧かないのも確かだ。

 

 

「ふむ・・・貴様がそこまで私の失墜を見たいというのなら・・・良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その男の前に、この女を殺すとしよう」

 

「ッ!!」

 

「なっ!?」

 

「えっ・・・!?」

 

 

 

「ッ・・・!!!」

 

狂気の笑みで決めたラウラの背部から一本の尻尾のようなものが動きを見せた。

ゆらりと動くその尾は、まるで本物のよう。しかし、実際は機械で出来た偽物。

証拠に尻尾の先端部は三つのマニピュレーターが芽のように顔を見せていた。

 

(Mk-ⅡやⅢと同じマニピュレーター・・・まさか、あれで絞め殺す気か!?)

 

 

違う。あそこまで上機嫌のラウラが絞め殺す程度で満足するはずが無い。きっと何か別の策があるはずだ。

一夏の脳裏に理性とは別の本能的な感覚が働き、彼女が絞め殺しを選ばないと否定する。これといった根拠もないが、不思議と否定する意味も見当たらない。

まるで先のことを予想したかのようだ。

 

 

「では、始めるか」

 

ゆらめくマニピュレーターは背部に出現した武器に触れた。

マニピュレーター専用の持ち手のあるその武器は、既存の武器という概念からすれば意外ともいえる。だが、意外であるが故に威力は計り知れない。

特に、その武器全体が武器(・・・・・・・)ならば。

 

 

「ッ・・・チェーンソー!?」

 

(高周波付きか・・・!)

 

高周波を流したチェーンソーは風を切り、うねりを上げてその姿を見せつける。

持つ部分は尾のマニピュレーター用のみで普通に人が持てば危険な物なのは違いない。余計なものは無く、ただ刃とそれを纏めるのみとシンプルな構造だ。

チェーンソーの刃は先が赤く発熱しており、一夏の使う刀同様に高周波が流されている。鉄板なら簡単に両断できるし、場合によってはISの装甲も簡単に切り裂いてしまうだろう。

 

そんなものを鈴に使われたらどうなるかと言われれば、答えはわかりきっている。

 

鈴の命が危険だ。

 

 

「ッ・・・!」

 

「ほう・・・では、自分の最期を目に焼き付けるか」

 

「鈴ッ!!」

 

一夏の叫びに意識が戻った鈴は目を開けて全身に力を込める。

まだ抵抗するだけの気力の体力は残っているようだ。

 

「ぐっ・・・!」

 

「どこを抉られたい。腹からか?それとも頭か?」

 

「だ、れが・・・!!」

 

「・・・威勢だけはまだ張れるか。なら、その頭からにするか・・・!」

 

それが仇となってしまったのかラウラは口元を歪め、攻撃場所を決定した。

高周波チェーンソーで鈴の頭を切り裂くつもりだ。

 

「ッ!!!」

 

そして、間髪入れず高周波チェーンソーが動き、鈴の首に目掛け鋭い刃を振りかざした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、チェーンソーは大きく軌道を逸らし、鈴の頬を掠め通過した。

 

「・・・!?」

 

「えっ・・・」

 

「攻撃?どこから・・・」

 

赤く熱された刃は鈴の首にへと行かず、横槍の一閃によりその軌道を大きく外してしまう。

本来鈴の首に届くはずだったチェーンソーは勢いを殺す事ができずにそのまま鈴の通部を通過し、彼女の頬を掠めると後ろ髪の辺りで静止した。

死を覚悟した鈴も横を通過したチェーンソーを見てどうなっているのかと戸惑いが隠せなかったが、何にせよ生きているという確かな事に喜び、震えながらも大きく息を吐いた。

まだ生きている。激しく動く心臓と味のある呼吸に、鈴は生きていることを確認した。

 

「・・・・・・!はぁ・・・」

 

「・・・・・・。」

 

 

問題は彼女を助けた攻撃が一体どこから放たれた攻撃なのか。

一体誰があのチェーンソーに攻撃を行ったのか。

周囲を見回す箒とシャルはハイパーセンサーでドコから攻撃が行われたのか、一体誰が攻撃したのかと居るだろうその人物を探す。

ただ一人ラウラだけは殆ど動かずただ首だけを動かしただけだ。

彼女には分かっていたのだ。その攻撃が一体誰の攻撃なのか。何処から狙撃(・・)したのか。

 

 

「ッ・・・邪魔をするか・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『あら。大義名分を失うよりかはマシだと思いましたから・・・どちらかと言えば助けたと言ったほうが適切ですわよ、ボーデヴィッヒさん』

 

「助けた・・・?ふざけるなよ・・・!!」

 

 

 

「ッ!」

 

 

 

「一体何のつもりだ・・・・・・・・・・・・セシリア・オルコットッ!!」

 

ハイパーセンサーによって拡大させた映像。

其処には青いIS、ブルーティアーズを纏い狙撃ライフルを構えるセシリアがアリーナの端ギリギリの距離に立っていた。

やがてセンサーに映るセシリアはその場で小さく溜息を吐き、オープンチャンネルで彼女達や一夏にも聞こえるように本音を暴露した。

 

『・・・正直に言えば、その酢豚()には死なれては困るのです。事は出来るだけ穏便に済ませたいですし』

 

「・・・イギリスが中国に貸しか恩でもあるというか」

 

『まさか。恩も貸しもありませんわ。それに恩があれば仇で返しますし、貸しがあれば利子を付けて返させます』

 

「・・・つまり。貴様とこの娘とは何ら関係は無い、という事だな」

 

『そうなりますわね。』

 

上機嫌だったのが一気に落とされたせいで、今のラウラの表情は怒りに満たされていた。

あからさまな殺意をむき出しに冷静な表情をするセシリアに肌でも伝わる殺気を向け続けるが、その向けられた側であるセシリアの表情は眉一つすら動かなかった。

全く動じない表情に不愉快さを感じたラウラは、周りに人が居るというのを忘れもう一つの顔を見せる。

狂気を纏った生徒としてではなく、一人の軍の人間として。

 

「・・・大きく出たな、オルコット中尉」

 

『大きくも何も・・・今の私達は軍人ではありませんわ。ボーデヴィッヒ少佐』

 

(少佐・・・階級はセシリアよりも上か)

 

自らの素性の一部を明かしたラウラは、今は周りの事など気にはしていないのだろう。

例え自分の素性を明かそうとも彼女なりの方法で黙らせたりすればいい。今の彼女にはそれだけセシリアとの会話に注意が向いているのだろう。

 

「さて、どうかな。貴様の祖国ではわが国同様に代表候補の命令は軍から下されていると聞いているが?」

 

(・・・!)

 

歪んだ笑みを浮かべ、ラウラは傍から見れば重要とも見れる事実を口にした。

それでもセシリアの表情は崩れない。小さく溜息を吐くと正論を言い返す。

 

『・・・だからと言って、今の私達が一介の学生であるのに変わりはない筈。それに、この学園では例え国連であろうとも干渉は出来ない独立国。ここでどう振舞おうが、目的さえ果たせば別に問題ない筈ですが』

 

「・・・目的・・・か。私も同じだ。目的を果たす為にココに居る」

 

『私情にしか聞こえませんわね』

 

「貴様に言われたくないな。私情でこの女()を救おうとしている兵士崩れに」

 

『・・・いい加減、ココを前の職場()だと思ったりするのはやめて貰えませんか?今の私達は唯の学生。兵士ではありません』

 

「確かに今は学生と言う仕様も無い肩書きに縛られている。だが、兵士としての精神は忘れていまい」

 

『・・・・・・。』

 

セシリアの表情が僅かに崩れる。彼女も薄々とは感じていた、分かっていたことだ。

どんなに偽っても自然と身体や心に染み付いた馴染んだ事を平然とやってしまう。

一夏と始めて顔をあわせた時もそう。彼女はあの時、僅かに鼻を動かし一夏の身体に染み付く火薬などの匂いを嗅ぎ取っていたのだ。

だがだから何だ。何が言いたい。言葉にはせず目で訴えるセシリアにラウラは続けて語る。

 

「現に貴様はあの時(・・・)と同じ様に狙撃で私の邪魔をした。学生だなんだと言い掛かりをつけているが、貴様も所詮私と同属」

 

『本性むき出しの貴方に言われたくない台詞です』

 

「・・・・・・。」

 

 

 

歪んだ笑みのまま黙り込むラウラ。

やがてその沈黙は破られ、彼女の口からトーンがばらばらの笑い声が不敵に聞こえてきた。

 

「は・・・ははははは・・・・・・はっはははは・・・・・・」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

「・・・堕ちたな。セシリア・オルコット」

 

『・・・何時までも進歩の無い子兎には言われたくありませんわ』

 

 

 

 

 

 

 

刹那。ラウラの尾に突いたチェーンソーが再起動。マニピュレーターは後ろから鈴の首を切り裂こうとその刃を落としていく。

再びラウラが動いたのを察知し、止まっていた者達はそれぞれ動きを見せる。

箒は足を蹴りラウラに向かい接近。

シャルは牽制にと銃火器を取り出し。

そして一夏は、またセシリアが攻撃を防いでくれると信じ投げ捨てた白式へと走り出す。

 

 

チェーンソーと首との距離が十センチも無くなった瞬間、セシリアは再び精密な狙撃でチェーンソーを弾き飛ばした。

 

「ッ・・・!!」

 

『そろそろ縛りプレイも終わりにしましょう』

 

「ちょこざいな・・・!」

 

威力の高い狙撃を受けたチェーンソーは弾き飛ばされた勢いのまま地面を削りとり、流れに乗ってラウラの足下で止まる。

再び苛立ちを見せたラウラはチェーンソーを動かし、自身は両手に持つ銃を構える。

これならどれか一つを弾かれたとしてもと、軽い考えだったが、それでも鈴にトドメを刺すことは出来ない。

 

下からシャルがグレネードランチャーで攻撃し更にもう一度セシリアが狙撃でチェーンソーを押さえ込む。

鈴をも巻き添えにしかねない攻撃だが、絶対防御の機能を信じシャルはラウラに向かいグレネードランチャーの銃爪を引く。

 

 

「なっ!?」

 

グレネードランチャーの攻撃に驚いたラウラの思考は僅かに乱れ始める。

尻尾に付けたチェーンソーが弾かれたと知らず、グレネードの爆発に顔を守ってしまい、彼女の視界は一時的に暗くなってしまう。

 

「貰ったぞ!!」

 

「ッ!!」

 

阿吽の呼吸で見事な連携を見せ、動きが止まった隙をついて箒が一気に肉薄する。

狙いは一つ。鈴を縛るワイヤーブレードだけだ。

 

「くっ・・・!」

 

爆発で動きを止められていたラウラは箒の接近とワイヤーブレードへの攻撃に気づけず、彼女にブレードを斬る隙を見せてしまった。

剣の腕ではこの場に居る誰にも負けはしない。そう言い表すかのように箒は速く鋭い斬撃でワイヤーブレードを全て切り落とした。

 

「・・・!!」

 

「ッ!」

 

このまま追撃が来る。ラウラは警戒し、次の攻撃に対応するため両手の銃を構えるが、箒はラウラの予想とは違った行動に出た。

斬撃をして追撃に転じるかと思ったが、箒は地面に足をつけると同時にバックステップで後ろに下がってしまう。

 

(追撃ではない!?)

 

後ろに下がった事に驚くラウラだが、そこに追い討ちをかけるように次の攻撃が放たれた。

箒が下がったと同時に、ラウラの銃二丁へと黒い一閃が貫かれたのだ。

串刺しにされた二丁の銃はそのまま黒い物体と共に飛んでいくと、ピット内の壁へと突き刺さった。

刺さる物を持つ武器を持っているのは現状ラウラの目の前に居る箒の打鉄だけ。だが、箒の武器は今も視界内にしっかりと映っている。

なら思い当たるのは一つだけと僅かに目線をピットの下へと落とした。

 

(あの男、何時の間に・・・!)

 

ピットの下で白い腕を部分展開した一夏が高周波ブレードを彼女が持つ二丁の銃目掛けて投げつけた事に、ラウラの思考は更に混乱していく。

精密な投擲も然ることながら、そこまでの流れを一瞬にして成立させた彼ら四人の連携は、彼女でも予想できない、意外としか言えないことだった。

 

「チッ・・・!」

 

このままでは劣勢になる。

状況を見極めたのか、ラウラはバックステップを踏むと手にスモークグレネードを持ち、直ぐ様ピンを抜き、自分と箒との間に投げつけた。

 

『スモークです!』

 

「ッ!」

 

セシリアの声にすぐ近くに居た箒は深呼吸で息を溜め、口を強く締めて呼吸を止める。

そして、目を閉じ煙が入らないようにしてスモークの対策を十分にとる。スモークグレネードは煙で目を見えにくくしたり咳き込ませたりして相手の動きを止める物だ。

ならば自分から目を閉じ口を閉めれば一瞬自身の動きは止まるものの、行動の回復は僅かに速いはず。

 

箒がスモークに対し防御の構えを取ると間髪入れずグレネードは爆発する。

中身は火薬ではなく煙なので爆発は僅かなものだが、火薬に代わり大量の煙が入っているので視界を遮ったりするのには十分な威力だ。

破裂した中から大量の煙が噴出しピット内だけでなくフィールドにまでその煙が舞い散る。

中身をいじられていたのか、それとも元々それだけ詰められていたのか。

今はそんな事を考える余裕など誰一人としてなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくしてまた別の場所では、一人の女性が衛星電話を使い誰かと衛星を経由して会話を行っていた。

二人の話し方からして親しくも信じていないという関係だろうか、話す女性の声は何時もより少し低いめであった。

 

「・・・で。アンタの仲間が彼女達に武器などを横流ししたと」

 

『商談の詳細については俺も知らない。互いに深く詮索しないっていう決まりがあるからな』

 

「けど、大体のは予想はついてるんでしょ?」

 

『・・・まぁな。品の大きさや数。コンテナが送られてきた場所から考えるに・・・・・・軽くドンパチ出来るってぐらいだな』

 

「・・・。」

 

『しかもそれをあんな場所(・・・・・)で使うのなら・・・軽く半分は廃墟になっても可笑しくない』

 

決め付けたかのような言い方に頭を抱える女性は呆れた物言いで話を続ける。

これで頭痛を感じたのは三度目だ。

 

「よくそんなのを国内に持ち込めたわね」

 

『向こうで何らかの手を打ったんだろうな。でなけりゃ今の日本国内に密輸するなんて不可能だ』

 

「・・・それで、他には?」

 

『G3A3とFALを数丁と数千万発のマガジン。ワルサーのWA2000とスティンガーを30ほど』

 

本当に戦争でもおっぱじめるのかもなぁ、と笑いながら話す相手に気楽でいいわね、と言い返したいが話の路線が逸れてしまうのとそれだけ言う気が無いというのもあってか不快溜息を吐いて電話越しに籠もるような声で言い返す。

 

「・・・さぞ儲かったでしょうね」

 

『ああ。久しぶりに大量に買ってもらえたからな。お陰で向こうからしつこく受け渡し場所を設定させられたがな』

 

「・・・いいわ。なら、私のも頼める?」

 

『いいぜ。ちょうど今、日本に滞在中だからな』

 

「それでスピーカーの向こうからピアノの音がするのね」

 

『ハハハ・・・サルはアウトだって言われたがな』

 

「当たり前でしょ。公共の場でサルを持ち込むなんて大道芸やる馬鹿ぐらいよ」

 

『なら、俺はその馬鹿って事か』

 

「・・・・・・いい加減にしないと、今度あったら鉛球撃つわよ」

 

『おー怖っ・・・んじゃ俺はそのためのAE弾をサルに渡して運ばせるとしますか』

 

「手なずけて一生返さないと思うけどね」

 

そう言い残すと女性は苛立った様子で電話を切る。

荒っぽく電話を切った女性は、また深い溜息を吐き頭痛のする頭を抱えて座り込む。電話相手とはどうあっても慣れる相手でないしそもそも、好かれるような性格ではない。掴みにくい性格というやつだ。

だが腕と実力は確かだ。戦争経済が終わった今でも当時のスタイルを崩さず商法のみを変更して今も世界中を渡り歩いている。

 

だから彼女も安心して銃弾の調達も出来るのだ。

 

「全く・・・行くわよ!」

 

「へ!?あ、はいッ!!」

 

女性が立ち上がり、荒っぽく叫ぶと近くで別件の用事をしていた男が飛び上がるように驚く。いつもこんな感じで疲れるのも事実だが、それでもほって置けない理由がある。

女性が男に声を掛けると、男は彼女の後ろを子供のようについて行った。

まるで主従関係のようだが、これが夫婦だと言われれば誰も信じることは出来ないだろう。

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