IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第三十三話です。

いよいよラウラ編の山場。一夏対黒ウサギ隊との戦いです。
戦力差のある状況で一夏はどうするのか!?
果たして結末は・・・


・・・これでやっとMGSっぽくなる・・・かな?
なって欲しいと願いたいです、ハイ(汗


では、いよいよ対黒ウサギ隊戦です。
果たして一夏は勝てるんでしょうか。と言うかまた大怪我するんでしょうか(笑)


それでは、誤字・駄文はご愛嬌。
「それでも良い!」と言う方は
第三十三話、お楽しみ下さい。



No.33 「交戦」

No.33 「交戦」

 

 

 

 

 

時間を少し遡り、事の始まりの直前。学生寮の廊下を一夏は走り抜けていた。

堂々と正面から入るという事をせずに、彼は裏口から管理人である千冬の部屋を先に確認に向かい、その後に生徒たちの部屋が集中する場へと抜けていく。

遠回りであった為に足に震えが走り、疲労を感じる。しかし、鍛えた足だ。まだいける。

そう信じ、一夏は足に鞭を打って廊下の一本道を走っていった。

 

(多分、今は・・・!)

 

 

オタコンの言葉と自分の予感。

確信するには不十分な要素だけだが不十分な要素だからこそ、この場で最も考えられる事。

思いつく物語(シナリオ)

 

いち早く向かった千冬の部屋に彼女は居なかった。居ないとなれば向かった先は職員室かセシリアの居る部屋。

彼女は謹慎を堂々と破ったのでその説教がてらと思っているのだろう。

 

「くそっ・・・少しは自分の事も考えろよな・・・!」

 

昔からそうなんだから。続けて口から出ようとした言葉に、一夏は言葉を詰まらせる。

 

「―――――ッ」

 

今更何を言っているんだ俺は。思い出した記憶に苛立ち、口を強く締める。

自分から行った事なのに、それを今も時折思い出しては自分を責める。未だに過去を思い出してはという事を彼は何度も続けてきた。

 

だからこそなのだろうか。

一夏の心臓の心拍はいつもよりも速く、そして激しく動いていた。

脳裏を過ぎる予感。「もしかして」と思う最悪の事態。

無意識に速くなっていく鼓動に一夏の体からは余計な汗が吹き出し、体力が消耗される。

それでも彼は走り続けた。居るであろう場所に。居るだろう人物を見て確かめる為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時。すべてが始まった。

 

 

 

 

 

刹那。轟音と共に大爆発が起き、爆風と振動が辺りへと響き渡った。

突然の事に驚いた生徒たちは悲鳴をあげ、戸惑い、焦り、慌てる。

何が起こった。どうしたのと叫び、戸惑う生徒達が一斉に外に出始め、何が起こったのかと自分の目で確かめようとする。

 

「なにがあったの!?」

 

「わかんない!けど、この揺れって地震じゃないし・・・」

 

「上の階・・・なんか変に焦げ臭くない?」

 

「上でなにかあったの!?」

 

 

 

「・・・・・・!」

 

まさか。背筋が凍った一夏の脳裏に最悪の事態が過ぎる。

音。振動。臭い。

一夏には覚えがあった。

爆発。それも軍用の火薬のだ。

 

「くそっ!!」

 

考えるよりも先に体が動いた。

一夏の足は前へと動き、悲鳴と痛みを訴える足の声を無視し、彼は一心に上の階、十階へと走っていく。

階段の中間に差し掛かると、妙に視界が悪くなり鼻から焦げ臭いニオイが吸われてくる。

爆煙の臭いとそれによって焦げた物の臭い。思いつくのは木材か鉄材か。

しかし今は考えている余裕は無い。

一心不乱に走る一夏は十階に辿り着き、廊下に出ると眼前に映った光景に目を疑った。

 

「ッ・・・!!!」

 

そこはまるで火事の事故現場だった。

火の手が上がり、人は怯え、勇気あるものは手と足を動かし、傷ついた人を助ける。

遅かった。既に爆発が起こった後で多くの人が被害に合ってしまい、重傷や怪我。火傷を負ってしまっていた。

 

「お構いなしか・・・!」

 

やったのは十中八九彼女(ラウラ)だ。軍用の爆薬を使える人物となれば確かに自分やセシリアも居る。だが、精神的に考えれば。今爆破なんてものを行う気があるのは彼女一人だけ。

それも、他人を巻き込むほどの威力を持つ爆破を起こすのはと考えれば余計にそうとしか思えない。

何より。

 

「っ・・・壁二つを貫通・・・パイプ爆弾でも使ったのかよ」

 

現場に駆け寄った一夏はその爆発現場を目の当たりにして動揺と焦りしか感じる事ができなかった。

爆破された部屋一つだけでは済まず、左右二部屋。計四部屋が爆発に巻き込まれた。

時間的に丁度生徒たちが部屋に居る時間で中にはシャワーを浴びていた生徒も居たようで、裸体のまま運び出されていた。

 

「あ!エメリッヒ君ッ!」

 

「鷹月。相川と本音は?」

 

「二人共、ちょうど大浴場に入ってたから大丈夫。それよりこれって・・・」

 

青ざめた表情の鷹月に一夏は無言のまま後ろを振り返る。現場がその証拠だ。

沈黙の答えを聞いた鷹月は未だにこの現実を信じられなかった。

 

「こんな事って・・・これじゃまるでテロか何かじゃない・・・」

 

「・・・テロ、か」

 

その方が正しいのだろう。

どんなに彼女達が戦争だなんだと言っても、やっている事はテロリストと変わりない。

平気で他者を巻き込み、目的の為なら多大な犠牲をも厭わない。こんな事をしてまでも彼女は自分たちを消し、そして手に入れたいのか。

 

「・・・鷹月。この部屋って誰が使ってた」

 

「・・・・・・。」

 

唐突な一夏からの問いに戸惑った鷹月。

こんな時に一体どうしてと思ったが、彼の問いを聞いて彼女は思い出す。

そういえば、と頭の中に思い浮かんだ記憶。

部屋の割り当てを彼女は以前山田から聞いたことがあった。面白半分で彼女から聞いた話で、彼女から一組のメンバーがどの部屋に割り当てられているのかを聞いた事があったのだ。

その時の記憶を思い出し、鷹月は部屋のナンバーと其処に割り当てられていた一組の生徒を照らし合わせた。

 

その時だ。

それを思い出した瞬間、彼女の体温は急激に低下する。

青く冷め切った顔をし、酷く動揺した顔に一夏は呟いた。

 

「・・・まさか」

 

無言となった鷹月はこくりと頷く。

そして、冷たくなってしまった唇を動かし、そこに誰が居たのかを打ち明けた。

 

 

「・・・オルコットさん」

 

「・・・やっぱりな」

 

当然のことだ。

セシリアの事を実力的に、性格的に理解していたラウラなら真っ先に仕掛けてくる。

現在学園内に居る生徒の中で彼女が最も危険視する人物と考えれば、何が何でも彼女(セシリア)を潰して少しでもイレギュラーを回避する事を考える。

彼女を知っているからこその決断。知っているからこそ

 

ここまで行うのか。

 

 

(くそっ・・・この分じゃ学園自体既にアイツの手の内か。なら・・・!)

 

先手を既に打たれてると考えた上で行動するしかない。

この爆破で自身が後手に回っているのは明らかだ。今から巻き返すには自分が咲きに先手を打たれたという事による反撃として行動するしかない。

 

「鷹月。先生は?」

 

「えっと・・・霜月先生を電話で呼んで、その後先生の部屋に備え付けられていたっていう救急セットを持ってきて・・・その後、数が足らないからって今取りに・・・」

 

「・・・入れ違いになりゃいいんだけどな」

 

「えっ?」

 

彼は一体何を言っているんだ。一瞬彼の言葉の意味を理解できなかった鷹月だが、次の瞬間。一夏は鷹月の肩を軽く叩くとその場から走り出した。

 

「鷹月。絶対寮から出るな」

 

「へっ!?」

 

 

前もってリュックを回収していた一夏は既に装備を整えていた。

自前で持ってきていた装備全てをリュックの中にしまい込み、マドカにはオタコンに直ぐに知らせられるように端末の前で待機してもらっている。

事態が緊急を要しているので、何かあれば直ぐに連絡してMk-Ⅳに反応がある筈だ。

尤も。通信が出来ればの話ではあるが。

 

 

「あれっ、携帯の電波が届いてない?」

 

「うそ?アタシのは・・・ってアレ!?」

 

 

「・・・携帯類はアウトか。こっちはどうだ?」

 

iDROIDを取り出して電波を確認すると、iDROIDの方は無事らしくアンテナはオールグリーン(問題なし)通信自体には支障はないようだった。

携帯の電波は全て妨害されて外との連絡はおろか、学園内での連絡も出来ない状態にした所を見ると、学園内での事態を外に知られたくないのだろう。

だが、学園内の人間は絶対に異変に気づく事も恐らくその事も織り込み済みの筈だ。

 

「やることは一つだな」

 

巻き込まれてしまったのだから仕方ない。

大方彼女の考えはその辺りだろう。

この学園が自分たちの独壇場となった今、今までの平和な考えは通用しない。

まるで自分たちがルールだと言わんばかりだ。

iDROIDを片手に、彼女の考えを推測していた一夏はその考えを元に更に彼女の行動を予想する。

 

「だけど、俺が衛星から直結で連絡を取っているのは分かってる筈・・・」

 

一夏の使うiDROIDは国内の電波のアクセスポイントを介さず、衛星と直結して連絡等を行うことができ、たとえアクセスポイントに繋がらなくとも衛星さえ無事であれば衛星を介して連絡やネットの閲覧などが可能になっている。

そのため、アクセスポイントには依存せずアクセスポイントを経由しても可能だが、非常時。特に今のような状況であっても衛星に直接電波を送る事で通信などが可能になっているのだ。

 

「衛星をおさえてないって事は・・・気づいてない?」

 

その衛星への直接通信が可能という事は一夏が衛星へと直接通信を行う手段を持っている事を彼女が知らないだけか。それとも知っててなのか。

憶測の域を出ない考えに頭を使っていても仕方が無い。

今は走るだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「考えは正しいが・・・遅すぎたな」

 

「ッ―――!!」

 

歪んだ笑みを浮かべた声が聞こえる。

悦に浸り、笑いを隠せない少女の声が背筋を走り、一夏の体を反射的に振り向かせる。

だがそこに声の主は居ない。

 

「ッ!?」

 

「その様子ではどうやら、あの女狐は言わなかったようだな」

 

「何をだ・・・!」

 

「・・・分かっている筈だ。ココは法に守られた世界ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはもう、戦場だ」

 

戦場?ふざけるのも大概にしろ。

隠せない苛立ちを一夏は思わず怒号として吐き出してしまいそうになるが、ギリギリの所で自身の怒りを抑えこむ。

まだ怒るには速い。ここで怒りを露にすればそれこそ彼女の思う壺だ。

怒りを押さえ込み、それでも溢れ出そうになる意思を抑えて一夏は拳を強く握り何処にいるかもわからない彼女に言い返す。

 

「テメェ・・・!」

 

「物は序でだ。ココの連中は私が処分してやる。こんな奴等に使われては宝の持ち腐れだからな」

 

「ッ!!」

 

何処から声が聞こえているのかを漸く聞き取った一夏はその方向に顔を振り向かせる。

そこには愉悦の顔で自分を見る一人の少女。この爆破の犯人であるラウラが堂々と立っていたのだ。

彼女を見つけたとばかりに一夏の足は無意識に動き出し、彼女を取り押さえようと接近するが、ラウラは身軽にバックステップで下がり一夏から距離を取る。

小動物のように軽々と動くラウラは一夏を嘲笑い、その場から逃げ出す。

 

「待てッ!!」

 

「ふっ・・・」

 

人ごみが増える中ラウラは蛇のようにすり抜けて人ごみの中を走っていき、対して一夏は周囲の人間にぶつかりながら進んでいる為にどうしても差が開けてしまう。

するすると人ごみの中を通っていくラウラはいち早く抜け出すとそのまま学生寮が出ようと出口へと走っていく。

一方で体力を消耗し人ごみで余計に体力を使ってしまった一夏は彼女が抜けて一分ほど後になってようやく抜けだす。しかしその時点で彼の息は上がり始めており、一夏は膝に手を付いて呼吸を整えた。

 

「くそっ・・・!」

 

余計な体力を消費してしまったと後悔する一夏はある程度呼吸を整えるとラウラを追うために再び走り出そうとした時。一夏の前に見慣れた人物が姿を現した。

 

「一夏ッ!」

 

「鈴・・・」

 

「一体何が起こったの!?イキナリ爆破なんて!?」

 

爆破の噂を聞いて飛んできた鈴は、偶然見つけた一夏に何が起こったのかと事情を尋ねるが今の彼にそんな事を話す余裕も時間もない。

それに恐らくという彼の予想が頭を過ぎり、鈴の質問を無視し一夏は少し荒い息のまま鈴の肩に手を置く。

 

「ッ・・・どうしたのそんなに息切らして・・・」

 

「・・・鈴」

 

「え・・・」

 

 

 

 

「・・・すまん・・・・・・千冬ねぇと箒のことを頼む」

 

 

 

「え、ちょっ・・・」

 

「絶対に二人から目を離すな。お前も寮の中から絶対に出るな。いいな」

 

「一夏、一体なにが・・・」

 

「・・・・・・。」

 

 

質問に答えないまま、一夏は鈴を押しどけるように彼女を移動させ、ラウラを追うために再び走り出した。

 

 

 

「――――。」

 

「ッ・・・」

 

唯一言を彼女の耳元で言い残し、まるで今生の別れのような声で呟いた彼の表情は、なにもいい訳が出来る筈が無いという顔だった。

 

 

覚悟は出来た。

ココからは(戦士)の俺だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学生寮から出た一夏はリュックサックの中からMk-Ⅳを取り出す。

いや。出ようとしていたMk-Ⅳを出してあげたと言ったほうが良いか。

ようやくながら相棒が動いたのだ。

 

「オタコン・・・!」

 

『ゴメン、遅れて。話はマドカから聞いたよ』

 

「いよいよあいつ等の頭がトチ狂った。セシリアの部屋を爆破しやがった」

 

『ああ・・・正気の沙汰じゃない。彼女たちは・・・』

 

モニターに映るオタコンはラウラ達が本気なのかと疑いたくて仕方がないのか、頭を抱えていた。声も低く、自分の事の様に絶望した顔だった彼に一夏はリュックの中から銃を取り出し、ロックを外すと腰にさし込み、何時でも応戦出来るように用意する。

 

「あいつ等が本気でココを爆破して皆殺しにする気なのかは、正直どうでもいい。先ずは頭を押さえたい」

 

『ああ。彼女は今何処に?』

 

「校舎側に行ったのは見えた。多分・・・」

 

 

一夏がラウラの居るだろう場所を言おうとした時。学生寮の出入り口から突然シャッターが下ろされた。

 

「ッ!」

 

『何だ!?』

 

完全にシャッターが下ろされた出入り口に近寄った一夏は、シャッターを開けられないかと下から引き上げようとする。

だが予想以上にシャッターの重さがある為、持ち上げるどころかは微動だにせず、一夏は諦めてシャッターから離れるしかなかった。

 

「・・・オタコン。これって・・・」

 

『警備システムじゃない。これは意図的なものだ・・・』

 

「誰かが学園のシステムをハッキングした・・・」

 

『誰かというより、彼女達だ。どうやら前もってシステム制圧の為の準備をしていたようだ』

 

「どういう事だ」

 

『・・・これを見て』

 

オタコンが言うとMk-Ⅳのモニターを自分の顔から別の物に映しかえる。

空から見た地上の映像。どうやら衛星からの映像のようだ。

 

「正門の警備員の女たち?」

 

『実は、彼女達は警備員じゃない。全員、彼女(ラウラ)の仲間だったんだ』

 

「何っ・・・」

 

『調べた結果、彼女達の情報に誤差があってね。どうやら元々の警備の人達は前もって殺されていたらしい』

 

「何時の話だ!?」

 

『僕らがこの学園に来る一週間前のことだ。多分、彼女は元からこの学園を粛清するつもりだったんだよ』

 

「んな馬鹿な・・・」

 

ならば自分はその序でではないのか。恐らく一夏が来るという事を直前まで知らなかったラウラは突然現れた彼に予想外の事態ではあったと動じはした。だが、彼女(千冬)の事情を知っていたラウラなら、予定を加筆・修正して一夏の排除も学園内で起こす事に盛り込むはずだ。

 

いや。それよりも早く、ラウラが知っていた可能性もある。

一夏が大々的に報道されたニュース。

匿名だったにしろ、噂だったり憶測だったりが流れたあの時なら可能性として考えただろう。

 

いずれにしても一夏が学園に入ろうとも彼女の予定も準備も変更は無かった。

そしてイレギュラーも無かったのだ。

全ては予想の範囲内。正に一夏たちは手の上で踊らされていたのだ。

 

『詳しい事は分からない。けどこれが正しかったら、彼女達は既に学園内に大量の武器や装備を配置している筈だ』

 

「武器や装備ったって何処から・・・」

 

『思い当たるだろ?一人だけ』

 

「ッ!まさか・・・」

 

『そう。ドレビンだ』

 

武器商人であるドレビンなら武器装備を調達する事は容易な事。

数を揃えるも金さえあれば事欠かないだろう。

彼にとってはテロリストであれ民兵であれ、国家であれ。金さえ払ってくれれば武器を提供する。常に中立的立場で商売だけを行う。

 

『どうやら彼、まだ日本に居たようでね。スネークが偶然遭遇したんだ』

 

「アイツが話したのか?」

 

『ああ。「俺の仲間(ドレビン)が彼女達に武器装備を提供した。お陰でかなり儲かったよ」ってね』

 

「あんのヤクザ(893)・・・」

 

武器商人がどっちつかずであるのは当然のことだし、有難いものでもある。

だが、それが時としてこんな事を起こしてしまう事だってある。分かっていたが、流石に実際にとなれば一夏も舌打ちをしてイラつくほど嫌な事だ。

 

『兎も角。今は彼女の私兵に気をつけながら彼女を見つけよう。このままじゃ彼女が何をしでかすか分かったモンじゃない』

 

「全くだ。アシスト頼むぜ。オタコン」

 

腰に刺したSOCOMを持ち、一夏は深呼吸をする。

念じるように目を閉じ、深く息を吐き出して気持ちを落ち着かせる。

ココからは戦場。戦いの場だ。

気持ちを切り替えなければ死ぬ。

 

「・・・よし」

 

 

問題ない。ただその一言を自分に言い聞かせた。

鋭い目と冷たい気。冷静な雰囲気。

人であった彼はその一瞬で戦士に戻った(・・・)

これが本来の。今の自分なのだと。自分が納得したような感覚だった。

 

「行くか」

 

『彼女は多分校舎のどこかだ。先ずはそこからだ』

 

「ああ」

 

 

 

 

 

静寂に満ちた夜の世界。

その中、一際異質な気配を漂わせる建物があった。

普段生徒達が登校し、その腕と技術を培う場所。

学園の校舎に一夏は静かに潜入した。

 

『・・・静かだね』

 

「けど、それに反比例して気配は駄々漏れだ」

 

壁に背を預け、見つかりにくい場所に隠れた一夏は静寂さとは相反する気配。殺気を肌に感じていた。

それも一人や二人ではなく、かなりの人数の兵士がどうやら校舎内には居たようだ。

 

『参ったね。何処から探す?』

 

「・・・生徒会室か放送室か。はたまた屋上か・・・」

 

『虱潰しに行ってたら朝になってしまう。其処から優先的に潰して行こうか』

 

「だな。一番近いのは放送室。次に生徒会室だ」

 

『OK。マップの設定をした。Mk-Ⅳが先行して偵察するよ』

 

「頼む。見知った場所だが、何処から出てくるか分かったモンじゃねぇからな」

 

 

自身に皮肉を言う一夏は、小さく笑いゆっくりと立ち上がった、その時。

一夏の前の壁に数発の弾丸が掠められた。

 

「ッ!!」

 

『なっ!?』

 

 

壁を僅かに抉り取った弾丸が撃たれた方向に対して、一夏は身を隠して連射される銃撃を壁に隠れてやり過ごすしかなかった。

無秩序に撃たれ、地面や壁に当たるその攻撃は直ぐに牽制であるのは分かった。そして、その銃撃を行ったのは他でもない

 

 

「っ・・・この腐れチビウサギッ!!」

 

 

「はっ!弱い犬ほどよく吼えるというが、貴様は正にそれだな!!」

 

 

何処に当てようとも考えず、タダ引き金を引くラウラは銃撃音と共に聞こえる一夏の怒号に笑って答えた。

壁に隠れているので互いに互いの姿が見えないのだが、一夏はラウラが今も愉悦の顔で引き金を引いているのだろうと、ただ銃撃が止むのを待っていた。

 

「テメェに言われたかねぇよ!ガキのクセして一丁前に威張ってんじゃねぇぞ!!」

 

「その言葉、そっくりそのまま返させて貰うさ、織斑一夏ッ!!」

 

笑っている。喋り方で確信した一夏は苛立った様子でどう反撃するかを考えていた。

いや、言うよりも彼女にどう吠え面をかかせるかと言う子供的思考でしか考えていない。散々馬鹿にされ、コケにされ。あまつ、幼馴染を殺そうとし、更には自身の姉を拉致しようとしている。

そろそろ一夏も我慢の限界だったのだろう。喉のことを考えず怒号を叫んでいた。

 

(ッ!銃撃がやん・・・)

 

しかし銃撃は止まなかった。USPの弾を撃ちつくしたラウラは片手でマガジンを排出し、もう片方の手でモーゼルを使い弾幕を張っていたのだ。

彼女が二丁の銃を持っていると知らなかった一夏は咄嗟に再び壁の奥に隠れ、やり過ごすしかなかった。

 

「くそっ!!」

 

「はははっ!良いザマだな!!」

 

「ッ――――――!!!」

 

煽りに煽られた一夏は押さえきれない怒りを何処にぶつけるければと怒りが頂点に達していた。

押さえきれない怒りに、彼は近くにあった壁を殴る事で落ち着かせるしかなかった。

 

『イチカッ!』

 

「分かってる!分かってるけど・・・」

 

『ッ!銃撃が!』

 

するとオタコンが銃撃が止んだ事に気づき一夏に今だ、と進言する。

元よりそのつもりとばかりに一夏は壁から飛び出していく。銃撃が止んだ今なら距離は詰められる。素早く飛び出した一夏はSOCOMを構えて対面に立つ人影を目に入れる。

余裕の表情でモーゼルを構えるラウラに一夏は銃を構え、直ぐ様引き金を引いた。

 

「ふっ・・・」

 

だがまだ余裕の様子であったラウラは小さく笑うとその場から動き、階段の方へと移動した。

 

「待てッ!!」

 

『ッ!イチカ、ストップッ!』

 

しかし彼女と入れ替えに今度は階段から二人の兵士が姿を現し、アサルトライフルで再度弾幕を展開させて一夏は動きを止めてしまう。オタコンの声に速く気づき間一髪のタイミングで今度は柱の後ろに身を隠し、銃撃をやり過ごすしか現状は方法がなく、柱に隠れたいちかは小さく舌打ちをした。

 

「ッ・・・!」

 

『FAL!?ベルギーのカービン銃だ!』

 

「んな古い武器使ってるのかよ!?」

 

Mk-Ⅳのカメラに映った銃を識別したオタコンは、彼女達が使っている銃に驚き一夏も彼女達が一昔前の銃をよく使っているなと、別の意味で関心していた。

FALは1940年から50年代にかけて設計された銃で、銃自体の名前はフランス語から取られている。尚、この銃を製造したメーカーはFNハースタル。後にFive-seveNやP90を開発したメーカーだ。

 

『セミオートじゃ命中精度は高いからね。こういう場所での使いまわしはどうかと思うけど』

 

「古い銃でIDから逃れたか。それとも、単に装備が不足していたからか・・・考えるのは後だ!」

 

リュックの中からグレネード系を一つ取り出した一夏は、直ぐに安全ピンを引き抜き、彼女達が居る方向へとグレネードを大きく投げた。

 

 

「ッ!」

 

「私が撃つ」

 

空中を舞ったグレネードに速く反応した二人は、一人が防御体勢。もう一人はライフルを使い空中でグレネードを狙撃しようとしていた。

空高く舞い、今にも爆破しそうなグレネードを狙撃しようとすると言うことは簡単に出来ることではないが、既に何度も行ったことだ。慣れた感覚でライフルを構え、直感と感覚を頼りに引き金を引くだけ。

 

そう何発も撃つ必要は無い。一発で十分だ。

そう言わんばかりに、ライフルを構えた女兵士は一瞬の隙を見て引き金を引いた。

空中で撃たれることが一夏の思惑だと知らず。

 

 

 

「ッ!?」

 

「しまっ・・・!」

 

見事弾丸はグレネードを打ち抜き、空中で破裂した。

が、それが最初から狙われていたと知らなかった二人は撃ったグレネードの種類が一体何なのかを見る事が出来ずそれが災いし、二人の動きは一時的に封じられる事になった。

 

「くそっ、赤燐弾!?」

 

「いや、これは・・・!」

 

投げられたグレネードから溢れ出たのは大量のスモーク、だけではない。

同時に散布された微粒子のプラスチックフィルムなどが視界一面に降り注ぎ、通信機や暗視ゴーグルなどにノイズを走らせる。

これを同時に出来るグレネードは一つ。その名の通りと言えるチャフスモークだ。

 

(くそっ!対赤燐を読まれていたッ)

 

スモークグレネード対策に赤外線ゴーグルは用意していたが、それも使えない今は自分の耳と感覚だけが頼り。身動きが取れない今、相手がどう動いているのか。どれだけ近づいているのかを知るために感覚を研ぎ澄ます。

 

 

(ッ!足音が遠のく・・・矢張りこの場をやり過ごすか)

 

耳から一夏の足音が周囲の壁などに反射し、地面を強く踏んで走る音が聞こえる。

足音の大きさと深さからして男の足音で、彼に間違いない。恐らく転進して反対側にある階段に向かい走り始めたのだろう。

単純だが打倒な対応だと言える。だが、それ故に読みやすいのも確かだ。

 

「弾幕を張って前進する」

 

「・・・!わかったッ」

 

チャフでゴーグルが使えない以上は目視で動くしかない。

もう一人に小声で伝えると、マガジンをリロードし弾幕を張る用意しFALを構える。

二人共その場で立ち止まっただけなので、向いている方向に変わりはないので前進すれば一夏の居る方向に走れる筈だと思い、二人はFALで弾幕を張りつつ一夏が逃げただろう道へと向かっていく。

 

が、スモークの中を突破した瞬間。彼女達の目の前に信じられない光景が映し出される。

 

 

「え―――」

 

 

「そおいッ!!」

 

刹那。

女兵士の目の前には白くしわのある学生服のズボンが現れ、顔を目掛け一直線に迫った。

一瞬の間、何が起こったのかを理解できなかった彼女は、その後脳を強く揺さぶられ、意識を失う。

 

「がッ―――」

 

「ッ!?」

 

一体なにが起こった。

もう一人の女兵士は彼女の変わりに動揺し、頭の中を真っ白にしていた。

(一夏)は逃げたのではないのか。

常識と思える回答と、その回答たる現実との差に彼女はその間信じられないという考えしかなかった。

どうして彼が今自分の横に居て、もう一人の頭を足で蹴り飛ばしているのだ。

自身の疑問を頭の中で叫び続け、現実に起こった事を否定する。

 

一夏は逃げはしなかった。確かに彼女達のいる方向とは逆の方向に走ったのだが、それは逃げる為ではない。

助走を付け強力な蹴りを彼女に喰らわせる為に、一夏は一度後ろに向かって走った。それは同時に相手に自分が逃げたと思わせる為でもあり、視覚情報の一切が遮断されたスモークの中なら、足音だけで判断せざる得ない。

更に思考時間に余裕がないのもあり単純な予想しかできないという事もある。

人のその場での判断力をよく知っているからこそ出来る芸当で、それを一夏は感覚で知って身に付けたのだ。

 

(このまま・・・!)

 

「しまっ・・・」

 

突然の奇襲攻撃に呆気に取られたもう一人は、僅かな間の反応が遅れてしまい次に思考が再開されたのは一夏が自分の間合いに入っていたときだった。

 

「あ―――」

 

蹴りの直後の流れに乗り、一夏は一回転する。

そして、その回転の勢いを加え足に力を入れて爆発的加速を生ませる。

流れに乗った行動にどう対処すれば良いのかと思考していたが、それは呆気とあまりの展開の速さについて来れず、遂に凍結(フリーズ)してしまった。

 

 

負けた。

それがその場で彼女が思った最後の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クラリッサ。そちらはどうか」

 

『司令車両は特には。現在、ランスロー(一夏)の様子はこちらのモニターで確認しています』

 

「奴は今どこだ」

 

『お待ちを。今は・・・一階から二階に上がり、真っ直ぐ放送室に向かっています』

 

「よし。奴がトラップ(・・・・)に掛かったらルーク5と6を向かわせろ。ルーク3と4はもう放っておけ。」

 

『・・・はい』

 

 

暗い夜の世界に一人立つラウラは無線機を手に持ち、今し方副官との連絡を終える。

冷徹な物言いで命令するラウラにクラリッサはスピーカー越しに息を飲んだ。それを聞こえていた彼女だが、彼女には正直どうでもいい事だった。

誰が死のうが、誰か倒れようが関係ない。

目的を果たす為の駒に情など要らない。

死ねばそれだけ。価値は無い。

 

ただ彼女だけが生きていれば良い。

ただあの男が死んでいれば良い。

 

その為なら屍の海が出来ようとも構わない。

ラウラにとって、彼女(千冬)の価値はそれ以上なのだから。

 

 

 

「――――――ああ・・・ああ・・・」

 

思うだけで身体が震える。思い返すだけで全身から力が抜けてしまう。

鮮明にすればするほど身体が火照り、呼吸が激しくなる。

 

「もう直ぐ・・・もう直ぐです・・・」

 

快楽と興奮が身体を駆け巡り、心を熱くする。

力が抜け、火照る身体の熱さはやがて快楽となる。

肌に触れる服が、風が、毛を撫でて更に快楽を増徴させる。

 

「待ってて下さいね、姉さん・・・今、その世界から連れ出してあげます・・・私達がいるべき世界・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アウターヘブンへ―――」

 

興奮と快楽に溺れた少女は身体を震え上がらせる。

もう直ぐ、全てが終わるという確信の無い結末を延々と脳内で再生させながら

 

狂気をも快楽に変えて―――




後書き。

至極どうでもいい事ですが、この状態のラウラが千冬と二人っきりだと発狂ウサギとなって襲撃(意味深)します。
・・・何言ってるんだろ、俺・・・
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