IS×MGS - Another Solid - 作:No.20_Blaz
色々と立て込んでいて執筆活動が上手く進まず、更新が遅れてすみません……
現実の忙しさとちょっとしたスランプみたいなのに手こずってしまいました(汗
けど、ココから面白くなると思う所!
頑張らなければ皆さんに支給されたM4やらM16やらに撃ちぬかれる!!!?
さて。ラウラをどうしましょうかねぇ………(ゲスッチ顔)
では、今回は対黒ウサギ隊の後半。
ココからはシャルも絡み始めます。ラウラとは関係ないですけど、彼とは因縁浅はか
………おっと。ココからはネタバレでした……
それでは、誤字は時折ご愛嬌。
「それでも良い!」と言う方は
第三十五話、お楽しみ下さい。
複雑な気持ちだった。
素直に喜ぶべきなのか。それとも驚くべきなのか。
怒るべきなのか。
矢張りか、と思うべきか。
◇
「この階を上がれば、生徒会室だ。とりあえず目的地はそこだ」
「うん。分かった」
『・・・。』
負傷した楯無の傷は時間が経つごとに広がりつつあった。
元々、包帯で巻いた程度なので止血よりも出血を遅らせる程度しか効果は期待できないもの。負傷した個所そのものには手をつけていないのだ。
焦りつつも冷静に、周囲に気配を配り進む一夏は後ろに居るシャルに目的地を伝える。
場に慣れているのかシャルも小さく頷く。
「・・・・・・。」
が、如何せん彼女にも慣れない事があったので、一夏に尋ねた。
「・・・あのさ、イチカ」
「なんだ?」
「・・・コレって一体・・・」
「これって・・・
救急ダンボールと寒冷地用ダンボールか?」
(またダンボール・・・しかも救急って・・・)
そう。現在、一夏は楯無と共に救急ダンボールと呼ばれるダンボールの中に入っており、その後ろには過去にスネークがシャドーモセスで使用していたダンボールに被ったシャルがついてきているという状態だった。
この奇妙奇天烈な状況にシャルはどうにも納得できず、顔はしかめっ面の状態だ。一体なぜダンボールなのだろう。と思うシャルだが、それを聞けば長話になるのは確実。
なんとなくそれを悟った彼女は、聞こうにも聞けない今をむず痒く思っていた。
「心配すんな。この救急ダンボールなら多少なりは怪我人には効果的だからな」
「・・・そのダンボールが?」
「ああ。素材に特殊な木と葉を使用していて、気を落ち着かせる効果があってな。その香りが鼻から身体に染み渡らせるんだ。だから、多少は気分は落ち着いたはずさ」
「・・・そうなんですか?」
「まぁ・・・さっきよりかはマシね。特に彼の背中の汗が・・・」
「ボケてたら血が余計に出ますよ」
「それは言わないで・・・薄々と意識が遠のいていく感じがしてるから・・・」
ちなみに、この救急ダンボールは過去に
これを見てスネークは子供のようにはしゃいでいた事もあったようだ・・・
本当に効果があるのかどうか心配なシャルは一夏と同じダンボールに入る楯無に尋ねる。
余裕の色は先ほどよりも見えなくなってきているが、落ち着いているのは確かなようだ。
「・・・けど、これからどうするの?監視カメラだって欺ける保証はないんだし・・・」
「ああ。大丈夫、そこは考えてるから」
「・・・え?」
◇
時を同じくして。屋上で一人陣取っているラウラは常時開いている通信を使い、副官と連絡を取っている。
投影式のモニターを見つつ行う通信は、そのモニターの横に「Sound Only」と書かれている画面からで、ラウラ自らモニターを顔を合わせての通信を拒んでいたのだ。
「奴等は?」
『現在、校舎内を移動中。ルーク7と8が迎撃に向かっています』
「・・・反対側にルーク1と2を向かわせろ。挟撃で仕留める」
『ですが、そんな事をしたら屋上付近の守りが・・・』
「要らん。どうせココに来る奴など、奴等以外には居ない」
『・・・・・・。』
大した自信だな、と思うが実際にはそうなのだ。
生徒は全員学生寮の中に閉じ込め、残った抵抗勢力は一夏たちと数名のみ。
しかもISを起動したとても彼らにはデメリットしかない。
屋上の周りには対空デコイが配置され、その中心にラウラが立っているのだ。
デコイが爆発した瞬間に気づかれるし、仮に狙撃したとしても彼女の身長と周りに張られたフェンスによって弾丸は容易に当たらない。
何より、デコイが爆破されればラウラが気づいて迎撃するのだ。
どうやっても一夏たちがISを使うという手段はまず無い。それを知ってか、彼は校舎内に入ってから一度もISを部分展開さえも行っていない。
「それに、迎撃用のトラップは仕掛けた。駒を使うくらいならトラップに任せる」
『ッ・・・・・・』
以上の点から、ISを使ってショートカットするという方法は考えられないと判断したラウラ。トラップに頼るというより、トラップで十分というのが彼女の本心だ。
なので、そのトラップを誤作動させたり利用して使う兵士はかえって邪魔。
迎撃に向かわせても問題はないという事らしい。
まるで全てを知っている預言者のように語るラウラの態度は冷静そのもの。
しかし内心では順調に事が進んでいるので嬉しくてたまらないという状態で、それを必死に押さえ込んでいるのだ。
「貴様は口答えしなくていい。事は順調だ」
『・・・・・・はっ』
「報告はそれだけだな。切るぞ」
『―――了解』
通信を切ったラウラは、再びモニターにへと目を向けた。
一夏たちが今どうしているのかと気になって仕様が無いのだ。彼らがどんな足掻きを見せてくれるのか、それを見て彼女は愉悦の笑みを浮かべていたのだった。
「・・・ほう、動きを見せたか」
◇
「けほっけほっ・・・」
「ふうっ・・・逃げ切れたな」
「いや、逃げ切れたけど、けほっ・・・アレ何!?」
煙たい煙を咳き込んで吐き出すシャルと後ろを見て追っ手が来ていないのを確認し一安心している一夏だが、シャルは咳き込んだまま一夏に声を上げて訊く。
もうダンボールでは驚かなかったが、まさかあんなことになるとはと彼の頭の中が正気かどうかを知りたいほどだったようだ。
「あれは中にスモークグレネードと同じ機能を備えたダンボールでな。中から爆発を起こすか外側から壊させるか、被っていたダンボールを取られるかで自動的に発動するんだ」
「いや、それは分かってるけど・・・」
「いやぁ俺もアレには何度も助けられたぜ。アフガンやサウジアラビアとかでは情備品だったからなぁ」
「・・・・・・。」
あ。駄目だ。彼には
目を爛々と輝かせ、子供のように嬉しそうなその表情はシャルにとっては異常でしかない。
たかがダンボールになんでそこまで熱く語れるのだと一夏の正気を疑うが、彼の目は他人から見れば
なにせ実際に効果があり、実用性があると分かっているからだ。
ダンボールに笑うものはダンボールに泣く。
一夏曰く、名言だと言う。
「さてと・・・思い出に耽るのもこれぐらいにして、先に進むぞ」
「え、ああ・・・うん」
「そろそろ楯無先輩の意識が消えかかる頃だ。早く手当てしないと出血多量でお陀仏だからな」
「―――。」
一夏の声に反応したのか、楯無は小さく頷かせる。
その姿に、流石に呆れていたシャルも一瞬で気を引き締めなおす。
先ほどまで元気だった彼女が今は何も言わずただ首を傾けるだけというのは、それだけ気力に余裕が無いという事。
彼の言うとおり、タイムリミットが近いようだ。
「生徒会室までは、この廊下を抜けるだけだ。俺は先輩をおぶって行くから、後ろは頼む」
「―――わかった」
肩を貸していた楯無を自分の背中に背負った一夏は、その状態のまま頼みを言う。
女を一人背負っているのだ。体重が軽くとも両手でしっかりと抱えておかねば姿勢は安定せず、落としてしまう。
迎撃よりも移動を優先とする状況なら、足に負荷がかかってもしっかりと動かせる背負いのほうがいい。
その判断が正しいと同意したシャルは、首は動かさずに返事をした。
それでいいのか?
誰とも分からない声が、誰かの脳裏を過ぎる。
これでいいのか?
本当に、これでいいのか。
誰にかは分からない問いかけを投げるその表情は、嬉しくも、どこか悲しいもの。
突き刺さった疑いの意思に、拳は強く握り締められた。
◇
月明かりが最も強くなる時間になり、月の見える窓からは優しい白い光が差し込む。
光に当たるだけでも心が落ち着くようだが、それはあくまで余裕があったならの話。余裕が無い今は、その月明かりでさえもうっとおしくも思えてしまう。
影で見つかるかもしれないという恐怖。
その影が今にも襲い掛かってきそうなと、寂しさは恐怖心を駆り立たせる。
静寂の世界に照らされる月明かり、見方を変えればこんなにも嫌なものだとは。
「・・・・・・ふうっ」
気を落ち着かせるために小さく深呼吸をする。
先ほどまで神経を尖らせていたからか、深呼吸をすると張り詰めていた気分が溶かされていくように思える。
激しく正常に鼓動を打っていた心臓は、少しずつ何かが抜けていったかのように落ち着きを取り戻していき頭の中は一旦白紙となったが、それお陰か気持ち悪さが消えていくのを感じた。
落ち着いたお陰で気分がスッキリしたのだろう。
しかしそれでも気は抜けない状況なのには変わりは無い。
自分たちは身動きが取れず、動こうにも負傷者が居るのでその場から離れにくい。
何より、今は収まっている、少し前にここで銃撃戦を行ったばかりだ。
証拠として自分が腰を下ろしている場所の周りには大量の9mmの空マガジンが散らばっている。
「マガジンは残り三つ・・・そろそろ打ち止めにしてもらわねば・・・」
持久戦となればこちらが不利なのは確実。だからと言って打って出るのは愚考だ。
となれば後は援軍が来るのを待つしかない。
奇跡のような確率だが、最早その奇跡に頼るしかないのだ。
運があるのかないのか。自分史上の大賭けに出よう。
「―――ッ!」
直後。辺りに配っていた神経が何かを感じ取る。
垂らしていた釣竿の浮きに魚がかかったように確かな手応えを感じ、その魚が自分の近くに居ると察し、持って居たハンドガンのUSPに力を入れた。
居る。誰かが今、自分の後ろに居る。
辛うじて気配と自分との間に厚さ数センチの扉が挟まっているので、こちらが動くタイミングは大きなアクションをしたとき以外には分からないはずだ。
仮に扉ごと撃つという事もあるだろうが、それなら扉から離れればいいもの。
反撃のしようはある。
「・・・・・・。」
小さく音を立てずにUSPを額の辺りに当てる。銃に祈りを捧げているかのように構え、数秒の間、その構えのまま静止する。
神経を研ぎ澄まし、気を落ち着かせ、呼吸を整える。
僅かに荒い呼吸だが、それは無理矢理にでも抑えれはいい事。
刹那の間、思考が回ればいい。ただそれだけを思い、グリップを持つ手にゆっくりと力を込めた
次の瞬間。ほぼ無音のまま立ち上がり、扉の裏側へと銃を突きつけた。
「ッ―――!!」
しかし裏側に居た人物は銃を向けていなかった。人を背負っていて手が空いていなかったからで、同時に向ける意味も無いと分かっていたから。
其処には、両腕でしっかりと楯無を背負った一夏が驚き気味の表情で立っていたのだ。
「―――君か・・・」
「ええ。無事で何よりです、虚さん」
胸を撫で下ろした、そういきたかったが仮にも主である楯無に銃を向けたことに面目が無いと思ったのか、虚は銃を下げると苦い表情で頭を掻いた。
「・・・とりあえず、皆無事だ」
「皆・・・?」
「ああ。だが今は速く入ってくれ。また何時連中が来るか分からんからな」
思う所は皆あるのは確かだ。だが、今はそれを話している時ではない。
また何時来るやも分からないのを警戒し、一夏は小さく頷く。
楯無のこともある。それに、他の理由もあって自分たちはココに来たのだ、と考えるよりも先に顔を動かす。
扉を大きく開けて彼らを生徒会室内に入れた虚は、次がないかと警戒しつつ分かると直ぐに扉を閉めて鍵をかけた。
「会長をそこの椅子に。今、救急セットを持ってくる」
「はい」
思えば、一夏は生徒会室に入るのは始めてで、薄っすらと月明かりに照らされる室内を見て彼は「本当にココは生徒会室なのか?」と疑いたいような光景が広がっていた。
部屋の一帯全てを言い表すなら、会議室とでも言うべきだろう。
円形に囲まれているテーブル。一席ずつに設けられた小型モニター。
窓側には彼女らしいといえばそうなのか、「会長」と達筆で書かれた札が置かれ、一つだけ質の違いそうな椅子があった。あそこが生徒会長の椅子なのだろう。
「・・・・・・。」
しかし、そこまで連れて行く余裕もないので一夏は手近な椅子に楯無を座らせると救急セットを持ってきた虚に立ち位置を代わる。
救急セットのボックスを見て本来医療施設などで使われそうなものだな、と眺めていた一夏は楯無を虚に任せ、その間、ぐるりと辺りを見回す。
二つほどの席に散らかった資料と彼女が日常で使用していると思われるペンケース。
その位置から数歩歩いた程度の所にある扉の前には、全く逆と言うべきものであるのか、薬莢とマガジンが大量に散らかっていた。
どうやら本当に今まで仕事をしていたらしく、急襲された所為で今まで動きが取れなかったのだろうと理解した一夏は、ステルス中のMk-Ⅳに楯無が言っていた無線機などを探させ、その間また攻撃がないかと警戒する為、扉の近くへと戻っていく。
一応もう一人戦える人間は居るが、それをあえてカウントせず、一夏は扉のドアノブに再び手を伸ばそうとした。
「―――ッ」
その時。近づきつつ周りを見回していた一夏の視界に、偶然一人の少女が入ってくる。
虚でも楯無でも、ましてやシャルでもない。
体育座りの状態で顔を下に向ける少女が一人。怯えながら壁際に座り込んでいた。
小刻みに震え、現実を逃避するその姿に見えていないだろうと思っていたのか、一夏は哀れんだ目で彼女を見つめた。
「・・・察してくれ。彼女は巻き込まれたんだ」
「・・・・・・。」
「私達のような人間ではない。ただ、この不毛な戦いに巻き込まれた被害者だ」
「・・・はい」
すると。
『・・・!』
小さなモーター音を必死に響かせ、Mk-Ⅳが激しく動く。
一夏がドアノブに手をかけようとした直前に気づき、激しく動くのを見るとノブから遠ざかり、Mk-Ⅳのところへと駆け寄っていく。
「あれっ・・・イチカ?」
「虚さん。ココに無線機とかってあったんですか?」
「ん。ああ・・・確か予備の電話回線なら繋がっていたはずだ」
「よし・・・!」
駆け寄った一夏とシャルは、非常時にのみ使用することと書かれていた小さな扉の中にMk-Ⅳがすっぽりと入り、中から電話回線の受話器を持って現れたことに一夏は小さくガッツポーズをし、シャルはタダ単純にMk-Ⅳに驚きを隠せなかった。
「えっ小型の無人機!?」
「他の奴には言うなよ。一応秘密だからな」
「・・・・・・。」
Mk-Ⅳから受話器を受け取り電話をかけようとする一夏だが、この電話回線が本当に大丈夫なのかと、そう尋ねるように目線を向ける。
アイコンタクトで理解したのか右手にあたるモニターを起動させ、今し方解析し終えた電話回線の状態を表示する。非常用というだけあってか、電話回線は直通のようだ。
「直通回線か。プッシュフォン式なのは一応の事か、それとも・・・」
「回線自体は独立しているようだね。これ、一応地下から電話線を繋いでるのかな?」
「多分な。地上が災害でやられた時の為に用意してるんだろうけど、この場合地震でアウトってケースがある。だから、
手を伸ばし、連絡を取ろうとした一夏だが、その手は一旦止まってしまう。
そして、何を見たのか苦笑交じりの顔でモニターに目を落としていた。
「―――?どうかしたの・・・?」
「・・・いや。この回線、本当に特殊だと思ってな。地下の回線がやられた場合、アクセスポイントを通さず衛星を直接経由して連絡を取るって方法もあるらしい。テロ対策の為としちゃ、ちとやり過ぎだと思うがな」
「・・・テロ対策?」
「防犯対策なら分かるか?まぁ仮にも国営だ。無人機のUAV位は当たり前だと思っとけ」
「・・・・・・。」
一夏たちが回線を使い電話をかけようとしているのに気づいた虚。楯無の応急手当を終えたのか、彼らのもとに寄って行く。
「何処に連絡する気だ?」
「取りあえずは
「・・・それは分かるが、最悪あいつ等は目撃者を全て消すぞ?」
「あいつ等だって弾薬が無限にあるわけでもないでしょ。それに、その最悪が起こった場合、自衛軍だって出てくる可能性が高い。そんなのに構うほどの余裕もない筈だ」
「・・・確かにそうだが―――」
「加えて、今は丁度第二次の帰宅ラッシュ。警察には緊急車両としての優先権はあるけど、ココに来るまでに最低四十分は必要。面倒事を伸ばすぐらいは出来ます」
「・・・まさかイチカ、その四十分で・・・」
「・・・狙いは元から俺だ。それに、
「ッ・・・一人で彼女と戦う気なの!?」
もし一夏が救急を呼んだ場合、爆破事件が起こったとなれば当然ながら警察だってついてくる。その場合、警察などがココに来るまでの時間は彼が計測し逆算したところ四十分程度だと分かった。
緊急車両の優先権が無ければもう少しは時間は稼げただろうが、それは無理な事。相手は一応国家権力持ちだ。
彼がもし、その手に持っている電話回線で連絡をしたのならば、残り四十分の間にラウラを倒すか、学園内に居る全兵力を無力化しなければならない。
誰の目から見ても、圧倒的に分の悪い賭けだ。
「無茶だよ!だって・・・だって彼女、イチカを殺そうとしているんだよ!?」
「だったら俺が行けばいい話だ。絶対に負けるって保障も確証も無い。―――ま。勝てるって根拠もないけどな」
「分かっててどうして!?」
「分かっているからだ。俺が原因なことも。俺がやらなきゃいけないって事も。全部分かっちまったからだ」
「―――ッ!!」
必死に止めにかかるシャルの言葉を冷静に返す一夏。言えば勇ましい事なのだろうが、やることは無謀に変わりない。
相手はISを主戦力とした特殊部隊。現状どれだけの人数が居るのかも分からない。
加えてその大将が彼の命を狙っている。殺す為なら非人道的とも、外道とも言われても構わない。そんな相手だ。
「彼我兵力差はざっと一対十か、それ以上。残り四十分でそれを全て掻い潜って彼女のもとに行くなど・・・」
「誰も正面から行こうとは言ってません。一応対策は考えています」
「それでも勝てる保障もないんだ、ココは篭城するなりして・・・」
「出来ると思いますか?容赦の無いアイツが・・・篭城で黙って兵糧攻めをすると?」
「ッ・・・・・・」
する筈がないでしょ。断言した一夏に二人は返す言葉もなかった。
彼を殺す為には手段を問わない。その彼女が黙って篭城戦をすると思っているのかと聞かれれば、それは多分無い。と答えられる筈だ。
爆破と殺害容疑。そしてテロ行為。
やれば出来る事を平然とやってのけた彼女に今更迷いも何もない筈。
爆破するなり、校舎を倒壊させるなり、やり様は色々とある。
「なら、打って出るしか・・・残されてない筈だ」
逃げ続けるという方法も考えたのだろう。
しかしそれはそれで詰みになる確率が高い。
相手の戦力が詳細的に分からない現状で逃げても包囲網などで包囲されてしまうのが精々の所。かえって戦況が悪くなるだろう。
なら、彼女の望みどおり。自ら打って出るほか、方法は残されていない。
「確かに
「でも・・・それでも・・・」
「それでも、なにかある筈・・・か。考えはしたさ。けど、正直相手が相手だ。もう正攻法で行かなきゃ・・・この事態は収拾しないだろう」
「・・・・・・。」
「・・・大将をどうにかすれば、確かに下の連中は大人しくなるかもしれん。だが、その大将がなにをするかわからんのだぞ?」
「ええ。けど、それこそ「それでも」ですよ。なりふり構っていられません」
これは俺のケジメだから。
吐きかけた言葉を喉の奥に飲み込み、一夏は救急へのダイヤルを押した。
もう決めた事だから、と言い表すかのように番号を押した彼に、虚は小さく溜息を吐き、シャルは崩れるように地面にへたり込んだ。
呆れた、悲しんだ。負の感情が複雑に入り組み、どうすれば良いのかと頭の中はかき回されてしまった。
「―――。」
「・・・・・・。」
「・・・もしもし。ええ・・・救急車をお願いします。至急で。
こちらで爆発が起こってしまったので―――」
さぁ。時計の針を動かそう。
「連中は?」
『現在、一室に立て篭もり、既に七分が経過。観測班の報告では恐らく、敵戦力の合流と援軍の要請かと』
「・・・警察組織か。ココまでどの位だ」
『副隊長からのデータを逆算して約四十分。最短距離を使用しても三十七分は掛かります』
「よし。お前達はそのままそのポイントで生徒会室を監視。狙撃班の到着次第、室内の残りターゲットを全て射殺しろ」
『・・・了解。通信終了』
今更なにを躊躇っているのだ。
通信を終えたラウラは相手の部下の戸惑いに不愉快さを覚え、表情を歪ませた。
そもそもラウラは彼女達に戸惑いを持たせる気などない。それよりも感情自体が邪魔だと思っている。
戦場では、戦争では感情など無意味なのだと知っているからだ。
だから徹底して感情を殺させ、戸惑いを無くし任務を完遂させる。
戸惑ってしまえば小さな狂いが生じ、それが失敗に繋がってしまうのだ。
「駒風情が。迷うぐらいなら死を選ぶのだな」
何より。ラウラは自身の部下全員をタダの駒としか見ていない。
『こちら第二観測班。対象の籠もる部屋に変化があります』
「・・・何だ」
『・・・敵の退出を確認。数は・・・二人』
「・・・・・・。」
タイムリミットは約四十分後。
それまでにラウラを倒すか、押さえれば一夏たちの勝利。
その前に彼がやられれば、その瞬間ラウラの勝利。
「・・・動いたか」
さぁ。
校舎内を走って駆け下りる一夏。先ほどの潜入時の静けさとは逆に激しく身体を動かし、大きな音を立てて階段を飛び降りていた。
その後ろには彼のスピードについてきているシャルがいる。時折振り返っては前を向き、後ろに追撃が来ていないかを確かめていた。また、一夏との間合いを取り、衝突を避けるためにも足を止めて息を整え、後ろを振り向いていたのだ。
逆に一夏の前ではMk-Ⅳがモーターを全開にして走っており、偵察の役割を果たすというよりも囮的な状態で小柄なボディを震わせている。時折転びそうになったり、転んだりと危なっかしい様子が多々あるが、そんな事は構い無しとばかりに脇目を振らずに駆け下りていた。
そう。二人と一体のチームは真っ直ぐと屋上に向かわず、一直線に校舎内から脱出しようとしていたのだ。
『―――!』
階段を下りきり一階の廊下に差し掛かった時。Mk-Ⅳはステルスを解除し、突然動きを止める。そして、今度はゆっくりと警戒するように階段付近から一本道の廊下へとカメラアイを出す。
今まで急ぎ足で降りてきたので多少警戒が疎かになっていると思ったのだろう。
更に先ほどの大きな足音で敵が先回りしていると予想し、ステルスを解除して自身を囮に使おうとしていたのだ。
『・・・・・・。』
カメラアイをゆっくりと壁際から出して様子を窺う。
映像を拡大させ、反対側に敵が先回りしていないかと確かめているその間、一夏とシャルはMk-Ⅳの後ろに辿り着いていた。
「・・・ふうっ」
「・・・一気に降りてきたけど・・・大丈夫?」
「気づかれるのを承知で来たんだ。バレるのは当然だ。ただ、今は全力で逃げるの優先だがな」
「・・・・・・。」
元より自分が囮であり狙いであるのだ。
別に気づかれたとしても、それはそれで好都合な事。彼個人が狙いであるなら彼が場所を変えれば敵もそれに付いて行く。やりようによっては人的被害を抑えられる。
自分が狙いである事を逆手にとり行動する一夏の頭の中は、現在何処に敵を集めるか。何処が被害が一番小さいかを思案していた。
しかし、その前に一つ。彼には確認せねばならないことがある。
「・・・それより」
「―――。」
「どうして付いて来たんだ。狙いが俺だけだってさっき言った筈だ」
何気なく話しかけていたシャルだが、一夏にはそれが納得いかなかった。
何故シャルがついてきているのか。どうしてあのまま生徒会室に残らなかったのか。
生徒会室を出てから腹の中で抱えていた不満を吐き出し、目で威圧するその顔は日常では見ないだろう、険しく冷たいものだ。
その目つきと威圧感にシャルは圧されはしたが、怯えと恐怖を唾と共に飲み込み申し訳が無いという表情で言い返した。
「・・・うん。聞いてたし、分かってる」
「なら―――」
「けどね。僕だって何の気なしにココに来た訳でも、付いて来た訳でもないんだ。僕にだってちゃんと・・・理由があるんだ」
「ッ・・・」
「それが何なのか。どうしてこうなっているのか・・・全部終わったら、イチカ達に打ち明けるよ」
彼女の迷いの無い目に、一夏は目を見開いた。
それなりに威圧感を入れて言ったのだが、それを物ともせずに言い返した事と彼女が全てを打ち明けるといった瞬間。自然と彼の脳裏に「降参」の文字が浮かび上がった。
強い意志に驚いたのか、それともそう言い返したからか。自分でも上手く言葉に出来ない感情に一夏はただ小さく溜息を吐くしかなかった。
「・・・・・・わかった。それまでは・・・聞かないでいてやる」
「―――ッ!」
「ただし。約束しろよ、シャル」
「絶対に無事でいる事。無理はしない事。この二つは、絶対に守ってくれ。いいか?」
「・・・分かった」
小さく拳と拳をあわせ、約束を誓った二人。
リスクもリターンも関係ない。二人とも無事で居る事がこの場での優先目標。
それまでは互いに互いの背を預けるだけだ。
Mk-Ⅳが廊下側は異常はないと判断したのを確認し、一夏たちは追いつかれる前にと逃げるように校舎を後にする。
狙いである自分が校舎内から出れば中にいる楯無たちへの危険性はかなり低くなる筈。
何より外の地形を利用して戦えば戦況は有利になると思ったからだ。
そして。校舎を後にした一夏とシャルが向かおうと決めた場所。それは・・・
「閉鎖されたアリーナ。取りあえず其処に向かうぞ」
「・・・オッケー」
以前、メタルギアRAYとの戦いで大きく損傷し閉鎖されたアリーナ。
誰も居ないだろう場所であれば暴れても問題は無い。
そうと決まればと、一夏は夜風の吹く空の下を風を切って走り出した。
閉鎖されたアリーナまでの距離は走れば十分とかからない。
反撃の用意は出来たとばかりに、彼は一心不乱に駆け抜けていく。
(・・・不味い・・・
精神の苦しみに耐え続ける少女が後ろで出遅れていたと知らずに。
「・・・時間が・・・ない・・・・・・イチカ・・・!」
タイムリミットまで、あと三十八分。
後書き。と言う名の一言。
コナミと小島プロダクションとの対立が深まって、色々と制裁をしているようですが………ぶっちゃけMGSを削除したらコナミって何が残るんでしょうね?
パワポケとかはありますけど、それやウイニング系とかが頑張ってきてくれたから何とかしてこれたのに………これって先の事を分かっていてコナミはやったんでしょうかね。
正直、どちらも心配です……