IS×MGS - Another Solid - 作:No.20_Blaz
長ーい!!説明不要ッ!!!
今回は何時になく長いです!!
ええ、これをやりたいが為にこんなに長くなってしまいました!!
けど後悔はしていませんッ!!!(オイ
個人的には後半からかなり熱い展開と成りましたが代償としてMGS要素が薄く……
ま、まあ潜入だけがMGSじゃないもんね!!(震え声)
と言う事でいよいよ戦闘の舞台は学園外へ!?
果たしてどうなる、いっくん!?(出血的な意味で)
それでは、誤字とかは時折ご愛嬌。
「それでも良い!」と言う方は
第三十八話、お楽しみ下さいッ!!
疑いたかった。
だが疑う余地が無かった。
耳元に聞こえる声は確かに何度も聞き覚えのある声。優しくも、冷たく、そして内心見下しているとしか思えないその声は、彼女の脳裏に嫌と言うほど焼きついていたのだ。
上下関係を無視し進言する。自分が失敗すればそれを皮肉と共に助けてしまう。
傍からすれば善意なのだろうが、彼女にとっては悪でしかない。
誰の助けも要らない。
ただ自分はあの人を守れる力と、あの人が居ればそれでいい。
その理想を、欠伸をするように彼女は踏み潰したのだ。
◇
「キサマッ……!」
『あら、随分とご立腹のようですわね。カルシウムは……ま、背丈からして足りてないでしょうね』
SOUND ONLYと表示された投影ディスプレイに目をやり、歯を軋ませるラウラが向けた目の先には廃棄されたアリーナの中で炎々と燃えるハインドの残骸が映っている。
ただ一撃で撃墜されたハインドにいまだ信じられないという感情が残っていたが、そんな事を考える余裕はない。
ハインドを一撃で、しかも狙撃だけで落としたセシリアが平然と生きているという事に、ラウラは不愉快極まりないという感情をあらわにしていた。
「――――ッ」
セシリアを危険人物であると早期に決めていたラウラは念入りに準備を整え、彼女が一人になった時間と場所に予め用意していた爆弾を使い、彼女を塵芥にするつもりでいた。
それは結果どおりだ。計画通りに彼女一人の時に爆弾を送り込み、逃げる隙も与えないようにした。
―――その筈だった。
なのに、現在こうして彼女の肉声と皮肉が聞こえてくるのは何故だ。
逃げる隙も無いようなあの時に、どうやって彼女は助かったんだ。
いや。そもそも、この聞こえてくる声の主は本当にセシリア・オルコットなのか?
音声を変えた別人であるのかもしれない。もしくは声だけが似ている赤の他人なのかもしれない。
声だけなら幾らでも誤魔化せる。
―――しかし、彼女にとっては残念なことだが、声の主は正真正銘セシリア・オルコットその人だ。
その証拠に、今のセシリアの髪は部屋での爆発に巻き込まれた所為か先のところだけが焼け焦げている。綺麗に纏まり色も美しかった髪だが、それが今では少し黒ずんでおり髪の先はコゲ落ちてしまったのか揃っていない。
何より、あの長く揃っていた髪そのものが原型をとどめておらず、肩にかかる程度しか残っていなかったのだ。
「………しかしまぁ、あんなところで爆弾を使用するとは。最悪人権とかは守るかと思いましたが………流石にそろそろなりふり構っていられないという様子ですわね、ラウラさん?」
『ッ………どうやってあの場から………』
「ああ。至極簡単な話しですわ。ISを展開して爆発から身を防いだ。以上です」
『そんないい加減な話で納得しろと?』
「―――それじゃあ、知りたい聞きたいと喚くお嬢様のために、特別にお教えしましょう」
『何ッ………』
皮肉の声が聞こえるディスプレイから耳を離さず、ラウラはセシリアが何処に居るかを探す。屋上に居るので向こうからは丸見えなのだろう。しかしラウラの場合は木々や建物が邪魔をし、殆どの見える場所が無い。
上をとった彼女だが、深夜帯の今は周囲が見えにくいという事を忘れ、油断してしまっていた。
『我が英国が誇るIS技術。それはアメリカを押さえトップに立ち続けています。その英国が開発した装備……実にシンプル過ぎて最初は疑いましたが……なるほど。採用の価値はありますわね』
「………。」
『―――まぁ勿体ぶっていても面白くありません。お教えしましょう。
―――盾ですわ』
「盾――!?」
『ええ。対重火器用の防御兵装。その盾を使用し、あなたの送った爆弾を防がせてもらいました。………お陰で髪と盾は黒コゲですが』
「たかが盾に……!」
たかが盾。しかしされど盾だ。大きさによっては彼女を守る事も可能。
恐らくセシリアの言う盾はそれほどの大きさの盾なのだろう。
(……本当に盾がなければ今頃皮膚がウェルダン焼きにされていましたわね)
彼女自身も最初は同じ事を思い一笑していた。盾は流石に時代遅れではないか、と意見しようかと考えていたが、そのお陰で髪が焼けた程度で済んでいる。
――盾も捨てた物ではない。
◇
―――数時間前。
話は爆破直後にまで遡る。
奇襲ともいえる爆弾に、咄嗟に気づいた彼女は窓へと走りISを展開。同時に盾を持ち、身を守るが爆風までは防げず、爆風に押され外へと吹き飛ばされてしまう。
緊急で展開した機体は爆破のショックか本人の思考不足か飛行することが出来ず、その巨体は紙ふぶきのように吹き飛ばされてしまう。
そして、飛ぶことも出来ないままセシリアは数メートル離れた場所の地面に叩きつけられ、機体から響く衝撃に彼女は意識を失った。
「ッ―――」
それから一分と経たずだろうか。
ゆっくりとだが意識を取り戻したセシリアは重くなった目蓋を開き、目の前に映る光景と鼻を刺激するニオイに思考を再度働かせた。
(……人工芝……火薬のニオイ……そうだ。私は――)
機体は既に待機状態に戻り、彼女の耳に収まっている。
何故こうなっているのか。何故そうなったのか。出来事を思い出し、自分なりの合点をいかせた彼女は、叩きつけられた身体にムチを打ちふら付かせながらも立ち上がった。
そして目の前に映る光景に数秒沈黙した後、重くなった口を開き、精一杯の皮肉を呟いた。
「……随分と派手な皮切りですわね。ラウラさん」
爆破された自身の部屋を見つめるセシリアの目は爛々と輝き、冷静な素振りを見せながらも殺気立っていた。
これが彼女の答えなのか。これを本気でやるつもりなのかと。
「学園内で爆破なんて……本気で戦争をする気……なんでしょうね」
気休めの冗談をぼやこうとしても正面に映る光景がそれを現実のものと認識させる。その所為か、無意識に笑いがこみ上げてくるが、笑い事にもならないし笑い事で済む筈も無い。
加えて、笑いだけではない。彼女の頬には冷や汗が流れていた。
「………さて、どうしましょうか。この場合、既に彼女の部下の方々が学園内にいるというのは確かだと思いますが……」
兎も角、先ずは現状を把握しなければならない。
どれだけの戦力がこの学園内に入り込んでいるのか。それを確かめなければ行動の移しようが無いと思い、刺していたハンドガンを取ろうとしたが――
「―――ッ!」
――無い。
彼女のももの辺りにあるホルスターに護身用として刺していたPPS。
普段肌身離さず持って居た銃が、収まっているだろうホルスターに影も形もなかったのだ。
「しまった……」
ホルスターに無い事に最初は驚いたセシリアだが、落ち着いて頭の中を整理しているうち、PPSがどこにあるのかを思い出す。
夜のフリータイムには外を出歩かない彼女は、シャワーを終えて紅茶を楽しんだ後に就寝するという決まりを自身で持って居た。
その為、就寝時に何かあったときにと思いPPSは枕の下に隠していたのだ。
つまり。あの時点でPPSは枕の下に隠されていて、爆破の時にはもう―――
「……おじゃんですわね」
恐らく爆破によって壊れたか、使えなくなっているか。
仮に使えたとしても今から取りに行くのは無理がある。
数秒考えたセシリアはあっさりと結論付けてPPSを諦める事にした。
別に特別、思い入れのあるものでもなく、そこまで重宝するというものでもない。
自身でもあっさりと切り捨てられたことには少々驚いていたが、いつまでも物に執着するよりはマシだろう。
「さて。なら、やる事は一つ……」
深く息を吐き振り返ると、アテも無く歩き始める。
どこに行こうが恐らく敵が居る。ならば適当に歩いて敵を探すのみ。
そんな考えに従い、セシリアは敵兵探しを始めようとした、その時だ。
「あ、ちょっと待って下さい
「――ッ!」
どこからとも無く少女の声が聞こえ、彼女を呼び止めた。
突然の呼び止めに驚いたセシリアは顔に驚きの表情を表したまま後ろへと振り返る。
「………。」
木々によって光が遮断された中で後ろを振り返るが、そこには僅かに差し込む月の光だけ。人の影すら見当たらない中。セシリアは小首をかしげどこから聞こえるのかと思っていたら、再び声が聞こえてくる。
「こっちですってお嬢―――って暗いから分からないんだった……」
「―――!」
今度ははっきりと声が聞こえ方へと振り返る。だがまたしてもそこには人の姿は見当たらない。
またしても間違えたのか、と思いたいが声がしたのは彼女が目を向けている方角に間違いない。
その根拠としてか、彼女の目の前にある茂みが不規則に音を立てていたのだ。
次の瞬間、音を立てていた茂みから―――
「ふうっ……」
「………。」
全身タイツの人間が姿を見せ、辛うじて見えている口元は溜息を吐いていた。
「よくぞまぁ見つけましたわね、
そして。ソレを見たセシリアは問答無用にタイツの人間を頭から踏み始めた。
「いだだだだだだ!!!」
「言っておきますが私は人に知人は居ても半漁人に知人は―――」
「わ、分かりましたって!!分かりましたからせめてゴーグルと頭のだけは取らせてくださいッ!!」
と、半漁人と呼ばれてしまった
元々そこまで長い髪だがどうやって隠れていたのか、それは元々ロングヘアーだったセシリアも疑問に思ったが先ずはと、現れた顔に冷たい表情で尋ねる。
「で。なぜ態々ダイバースーツでココに居るのかしら?」
「態々って……お嬢も分かっているでしょ?この学園内の様子を」
深い溜息を吐き、立ち上がった少女は背筋に手を伸ばすと、今まで閉まっていたジッパーを開けていく。
ジッパーを開けきり、中からは彼女の裸が……という事は無く、中からは彼女の
アリス・キャロル。
ある理由からその服を身に纏うことになったオルコット家のメイド。
そして。セシリアの専属メイドだ。
「最初は私も正面からって思いましたけど、ご覧の通り。警備もただ事ではなかったので、急遽海からにしたって事です」
「――海上の警備は?」
「ああ。割と杜撰でしたよ?お陰でここまで無傷でホイホイと進めましたし」
「………。」
「そ・れ・よ・り・もッ。頼まれた品。持ってきましたよ、お嬢」
セシリアが考え事をする傍で、アリスはダイバースーツの時から持って居た横長のケースを地面に置くと、なにやら錠の辺りを弄りはじめる。
なにかスイッチのようなものを押すと中に閉じ込められていた空気が吐き出され、僅かにだが隙間ができ、それを確認するとアリスは迷う事も無くケースを開けた。
「……アリス」
「はい?」
唐突に手を差し出したセシリアにアリスは首をかしげる。
手を伸ばせ?それとも何かを寄越せと言っているのだろうか。
考えるアリスに、じれったさを感じたセシリアは恥ずかしさを隠した声で呟いた。
「………銃を失いましたから」
「え、ああ……予備ね」
唐突な事に表情と思考が固まってしまったが、意味を理解したアリスは硬直を解くと彼女と同じく足のももにつけていたホルスターの一つから、銀色のハンドガンをセシリアへと差し出す。
スイス製のハンドガン、SIGのGSRだ。
「GSRですか…PPSよりかはマシですわね」
「嫌いだったんですか?」
「嫌い…というよりも女としてしか見られてないと思っていたので清々しただけです」
そして。時は現在へと至る―――
◇
「今、私は貴方を確認できる場所に居ます。ですが、そこからでは貴方は私を見ることは出来ません」
『ッ………』
「大人しく諦めてもらえれば、情状酌量の余地は無くもないかもしれません。ですが、これ以上のことを重ねるなら…」
モニター越しに聞こえるセシリアの言葉に、ラウラは鼻で笑い言葉を返す。
『罪は重くなる、か?馬鹿が、私の意思はとうに分かっているハズ――』
「ええ。ですから……」
音も立てず、静かに狙撃銃を構える。
そんなことはセシリアも分かっている。彼女の考えも。この一件の大よその結末も。
だからこそ、迷いはない。
躊躇の無いその意思を、セシリアは腹の底で溜まっていた物と共に吐き出した。
「容赦なく、貴方を撃てます」
『ッ―――!!!』
刹那。どこからか発砲音が鳴り響き、反射的にラウラは身を屈めた。
狙撃銃の発砲音。狙いは恐らく自分の頭だ。
後付した理由を考えるよりも先に身体が動き、生存本能を働かせた。
途中、頭部に異様なほどの寒気を感じたことに、どうやら回避できたようだと安堵する。
僅かなタイミングの差で間に合ったようだ。
(ッ……正面、廃棄アリーナの向こう側……!)
同時にセシリアの大まかな位置を割り出す事ができたラウラは、手持ちの双眼鏡で隠れつつも、姿を見せない相手を探す。
しかし疾うに移動したのか、セシリアの姿は見当たらずレンズから見えるのは月の影で黒く塗りつぶされた茂みや木々だけ。人の姿などどこにもなかった。
「チッ……!」
「外した…!」
「マジで!?」
一方、茂みに隠れて様子を窺うセシリアとアリス。
主自慢の狙撃が外れたと聞いて驚いたアリスは冷や汗を流しラウラの居る屋上の様子を確認する。幸い、まだ相手がこちらの位置を割り出しているだけなのでアリスもまだ冷静だ。
「反撃するかもしれません。アリス、適当に相手に気を引かせなさい」
「え゛っ!?」
しかし何をしでかすか分からない相手に正面から挑みたくないアリスは、セシリアの命令に嫌がるような声と本気なのかと疑うような顔で彼女に目で訴えた。
「……主の命令が聞けないのですか?」
「い、いやそう言うわけじゃ……」
「貴方もこういうのには
「遠まわしに「死ね」っていうのお嬢ぐらいですって……」
アリスがセシリアの無理難題に溜息を吐こうとした次の瞬間、彼女達の近くへと突然爆発音が響く。
驚いたアリスは無意識に防御の体勢を取り爆風から身を守るが、間髪入れずに今度は逆、更には前や後ろやと至る所へと砲撃が降り注がれた。
「ッ!?あの人、まさか……!」
「手当たり次第ですわね…!無闇に動いたら死ぬわ、直撃だけに集中して!」
「手当たり次第ってことは、当たる確率低いんじゃ………んなわけないか!」
再びM700を構えスコープを覗くと、屋上では何時の間にやらラウラがISを展開しレールカノンで構いなしの連射砲撃を行っている真っ最中だった。
銃身が焼けてオーバーヒートするのもいとわないそのやり方には、流石の彼女も肝を冷やす。
「ホント……昔っから駄々っ子ですからね……!」
だが、それが自分たちの位置を割り出すだけの攻撃ではないと知ることになるのは、向こうが動きを見せてからで、この時二人は知るのを遅れてしまう。
「ッ…!!お嬢、アリーナの方ッ!!」
「―――ッ!!」
何かに気づいたアリスの叫び声に最初は何事かと思っていたが、脳裏に浮かび上がった可能性にまさかと思いアリーナへと銃口を向けると、セシリアは自身が失念していた事に気づく。
スコープと弾幕の向こうに映る二人の人影。
誰かが担がれているという様子はどちらが誰かと考えなくても分かる。
「やられた…!」
「
スコープを覗き、担ぐほうに狙いを定めるセシリアだが、手当たり次第の弾幕の嵐に狙いが定まらず引き金を思うように引けなかった。
いつもならさっさと引くのにと、彼女の行動に苛立ったアリスは眉を寄せる。
「お嬢!?何してるんですか、速くしないと……!」
「―――!」
そんな事は分かっている。本当は怒号を発したいが狙いを外したくないセシリアは怒りを抑え引き金に指をかけていたが、その引き金は中々引く事が出来ない。
この引き金を引けばどちらが危険なのかを既に分かっていた彼女には、引く事に躊躇いを持っていたのだ。
(弾幕の所為で風向きが変則的すぎる……それに何時までも手当たり次第なわけはない、そろそろ向こうも位置を割り出すはず。時間も無い。
第一。いま私が引き金を引けば……!)
その戸惑いが隙を与えてしまい、ラウラは遂にセシリアの居る場所を突き止めた。
「ッ!!見つけたぁ!!」
「ヤバッ……お嬢ッ!!!」
「ッ……!!」
◇
場所は再び廃棄アリーナ内。
フィールドにはセシリアが撃墜したハインドが依然として炎々と燃え上がっており、機体内の様々な場所に引火したのか、時折爆発を起こしている。
しかしその赤々と燃え上がるハインドの姿をシャルは今、見ることが出来ない。
両手を押さえられ、足は体重を乗せられてあげるだけでも疲れてしまう。
うつ伏せに倒されているシャルの上にはラウラに似た銀色の髪をする少女が乗っており、彼女の片手には軍用のナイフが持たれていた。
「うっ……」
「はぁ……はぁ…………手こずらせて……!」
ハインド爆発時の隙を見てアリーナから逃げようとしたシャルだが、意識を失った一夏が文字通り重荷となってしまい、足早に逃げると事ができずに操縦していた一人に拘束されていた。
墜落時に大した怪我をしなかったようで、呆気に取られていたシャルに奇襲をしたとはいえ殆ど一方的に彼女を押さえ込んだのだ。
「まぁいいわ……!」
「………!」
抵抗もあったが、体力がなかったのか暴れることもなかった。
優勢となった今、慢心せずにいれば彼女へとナイフを刺す事は容易だ。
このチャンスを逃すまいと、ナイフを振りかざし心臓へと突き刺す―――
僅か数秒前。
振り上げた手は突然止まり、少女の動きはピタリと止まってしまう。
「―――?」
動きが止まった事に動揺したシャルは、力が抜けて手放されたナイフを見て何が起こったのかと様子を窺う。
呼吸はしているが、どこか不規則。目は見えていないので確認は出来ない。
ただ言えるのは、力が抜けた今、上に乗っていた少女は間も無く倒れると言う事だけ。
その予想通り、ナイフを手放した少女は人形のように脱力した身体を横たわらせシャルの上に倒れた。
「―――」
無気力に倒れた少女に驚きはしたが、シャルは倒れた少女をどかせてゆっくりと立ち上がる。まだ体力が回復していないのか少女一人をどかせるのにも苦労したようで少しながら息を切らし、膝に手を置いて深く息を吐いた。
「気絶……してる?」
顔を上げるも、目線を下げるとそこには先ほどまで自分の上に乗っていた少女が倒れていた。ぴくりとも動かないその様子に突然どうしたのかと思い、シャルはおずおずと近づこうとするが、咄嗟に誰かが呼び止めてしまう。
『待って!』
「ッ――!?」
突然の声に何処から聞こえたのかと周囲を見回すシャルは、右へ左へと頭を激しく振るい声の主を探すが、その声の主は自分から姿を曝け出した。
「って、無人機が――!?」
『あー……それについては後で話す!今は急いでココから逃げるんだ!』
「えっ……」
『今は電撃で気絶してるけど、直ぐまた起き上がる。その前に急いでココから離れるんだ!』
「離れるって…どこに―――」
その時。シャルはMk-Ⅳとの会話の傍ら、その場に一人足りない事に気づき目を見開く。
「―――そういえば、イチカッ……!!」
『ッ……!』
「ねぇ、イチカは何処!?知ってるんでしょ!!」
『ちょっ……!待って、今は……!』
彼の事を思い出したシャルは両手でMk-Ⅳを掴み、揺さぶりながら尋ねるが、Mk-Ⅳの向こう側に居るオタコンは自分自身が揺さぶられたかのように慌てふためき、どうすればと言えずにいたが、タイミングが良いと言うべきか車のエンジン音が聞こえてきた。
「―――この音……トラック?」
『トラック……ッ!!不味いッ、イチカを連れて行く気だ!!』
◇
一発の砲撃が木々へと放たれ、盛大な爆発音を奏でる。
だがそこには指揮者が望んでいた血肉の音は聞こえず、変わりに人が芝の上を転がる音が聞こえる。
手応えを感じられないラウラはハイパーセンサーで着弾した周囲を確認すると、こちらの様子を窺うため顔を覗かせるセシリアの姿が見えた。
どうやら間一髪で避けたらしい。
「……外した……!」
「―――。」
「し、死ぬかと思った……」
肩で息をしつつも、木の影からラウラの居る屋上を見つめるセシリア。
日常で見る彼女の澄んだ肌は土と泥そして火薬に塗れていたが、それでも美しさは損なわれない。ただの美しさとはまた違った美しさが、彼女からは醸し出されていた。
その一方で、同じく間一髪のタイミングで避けきったアリスは茂みに倒れこみ、やつれた顔で震えながら起き上がる。
生きているというのが不思議な様子で、生きていると思い深呼吸を何度も繰り返していた。
「あのトラック……ッ!お嬢ッ!!」
「ッ―――!」
呼吸を整え、安堵したアリスは偶然にも自分の視界が捉えたトラックに声を上げる。
このタイミングでトラックといえば考えられるのは一つだ。
セシリアも目線を下げてスコープで覗き込むと、確かに校舎前に不自然にもトラックが一台止まっていた。
民間業者のロゴが入ったトラックがこんな状況で来るか。明らかに向こうが用意したものだ。
「偽装バン…!」
「あんなのまで用意してるなんて…!」
「彼女のことよ、もう二・三台は待っているわ!」
「――ありえますね。で、どうするんですか?このままだと彼、連れて行かれますよ」
「止めるにも……ッ……先ずはこの弾幕をどうにかしないといけないわね」
スコープで覗く先にはトラックの後部扉から誰かが降りてくるのが見える。
軽装の女たちのカービンライフルを一丁ずつ。種別はSCAR-H、別名Mk.17だ。
的確な銃撃をしてくるその精度はかつて一夏が使用した時のようにフォアグリップをつけて簡易狙撃銃として代用している。
「SCAR-H…!グリップつけて精度を上げてるのか……!」
「ッ……マトモに出れば向こうに撃たれる……牽制できる?」
「………なんとか。けど、時間はそう稼げないっていうか、もう時間が無さそうっていうか……」
「―――ッ!!」
再度スコープを覗くと、二人を牽制している女兵士たちの後ろを先ほどアリーナから一夏を担いで出てきた女がトラックへと駆け込んでいく姿が見え、セシリアはアリスも聞こえるほどの舌打ちをし、狙撃しようとするが既に遅く、女と一夏はトラックの中へと消えていってしまった。
「遅かった……!」
「向こうは計算付くって所なんでしょうけど…そりゃこんだけやりたい放題してりゃなるって………ッ!お嬢、屋上から!」
一夏がトラックへと連れ込まれたのを確認したラウラはISを展開したまま屋上から飛び降りていく。飛行して一気に倒すか牽制するかと思っていたが、どうやら目的は達したようで飛行もせずに重力と機体の体重を頼りに落下していた。
「ええ……目的は達したようね」
「ってことは、ブリュンヒルデも
「さて。それは向こうが知っていることで、私の感知するところじゃないわ」
重力に引かれた巨体は一直線にトラックのボディへと落ちていく。
落ちるものが重ければ重いほど衝撃は強くなる。それはラウラのシュヴァルツェア・レーゲンも例外ではない。
彼女の機体も、そもそもISという機体も見た目に反しかなりの重量を持っている。
その機体が一応は頑丈であるトラックのボディへと落ちればどうなるか。
「―――」
ドズンッと、鈍い音が響き黒い巨体はボディへと着地する。辛うじてボディが頑丈だったからか、ラウラはボディ上に降り立ちISを解除する。
彼女が立つ足下は先ほどの衝撃によって凹んでしまい、一直線に沿っていた一面に大きな穴を作ってしまった。
だがトラックが無事ならそれでいいとばかりにラウラは気にも留めずにトラックの後部扉へと入っていく。
「撤収する」
「了解。スモーク」
ラウラの言葉に兵士の一人がスモークグレネードを投げ、セシリアたちの視界と射程を妨げさせる。
漸く弾幕がやんだと思ったら今度はスモークでの視界妨害と来て苛立つセシリアだったが、それでも銃を構え、引き金を振り絞った。
「あッ――!?」
「チッ……!」
「アリスッ!!」
「駄目、肩を掠っただけです!しかも大将じゃないッ!!」
「――――ッ!!!」
部下の一人が負傷したことに情けないと舌打ちしたラウラだか、今は撤退するが優先と負傷した部下を見捨てるかのようにトラックの中へと入っていく。
そして、その後に負傷した兵士を庇いつつ、牽制していた部下たちも戻っていきトラックは後部から勢いよく排気ガスを排出する。
「ヤバッ……逃げますよッ!!」
「―――――!」
トラックが動き出すと、セシリアは隠れていた木から姿を曝け出すが、その視界の先には動き出したトラックではなく別のものが映りこんでいた。
「―――デュノアさん……!」
Mk-Ⅳを抱え、トラックの後を追うシャル。
その姿を見たセシリアはトラックではなく彼女を追って走り始める。恐らく彼女も目的は似たようなもの。ならば行き着く先は―――
「まっ………待ってぇッ!!」
誰に聞こえることもない声を張り上げ、シャルは走り去ろうとしているトラックの後ろをついていく。
だがトラックのスピードは速くなり、間合いも段々と広がっていく。
それでも、ただ脇目を振らず、何も考えずに一心にトラックを追っていくシャル。
彼女の足はふら付き、鉛のように重たくなっていくが、そんな事を気にせず息が切れ肺が裂けようとも構わず、走り続けようとした。
そして。彼女が遠のいていくトラックに手を伸ばそうとした瞬間。
「―――わっ!?」
急に後ろから誰かに首元をつかまれ、シャルはその場に止められてしまう。
走る勢いを急に止められたシャルは首を絞められそうだったが、その場に立ち止まると自分の首元を掴んで止めた人物の顔を確かめた。
「―――オルコッ………」
「ストップです。デュノアさん」
「ッ……なんで!?どうして止めたの!?」
「………簡単な事です」
セシリアの言葉にシャルは正面に振り返り、足下を見る。
空白だった頭の中に浮かび上がった予想は、記憶を照らし合わせるかのように彼女の足下に映っていた。
「あ―――――」
「そこから先は………
彼女の足下には学園の正門の扉を引くレールが敷かれていた。
もし彼女がそこから一歩でも外に出れば、彼女は日本の法で裁かれる事になる。
それを分かっていたセシリアはそうはさせまいと息を切らしつつも彼女を引き止めたのだ。
「学園内では日本の法は通用しない。それは無論他国も同様です。今、貴方が一歩でも出れば、法によって裁かれるでしょう」
「………。」
「そんな事は私以上に彼が許さない。違いますか」
「…………。」
力なく立ち止まったシャルは両手で抱えるMk-Ⅳを強く抱きしめる。
そして、無意識に涙を流しポツリと呟いた。
「………でも………でも、僕が………」
「………。」
「僕が、イチカを撃ったから………」
「………それを日本で裁けば、貴方は罪人となるでしょう。ですが、それは今じゃない」
シャルを振り向かせ、セシリアは涙を流し俯く彼女の目を見る。
純粋に、心から悲しんだ目に、セシリアは小さく微笑み母親のようにシャルを抱きしめた。
「罪を償うのは……ちゃんと全てを出し切った時。今はまだ……ですから、信じて」
「………なにを?」
「勿論。彼が戻ってくるのをですわ」
「そんな………イチカが戻ってくるはずが………」
「―――大丈夫」
涙をいっぱいに溜めた目でセシリアの目を見る。
まるで自分の事のように自信に満ちたその目を見て、どうしてそんな目で居られるのかと彼女には疑問に思えて仕方がなかった。
しかし、それをまるで魔法のように信じさせる言葉をセシリアは優しく微笑んで紡いだのだ。
「彼は―――――絶対に私達のところに戻ってきます」
◇
= 首都高速 =
学園を後にしたラウラたちのトラックは、彼をどこへ連れて行くのか首都高速に乗っていた。
「………状況は」
「被害は数名の負傷者のみ。死者はゼロ。間も無く、学園外部を警戒していた二号車と五号車。八号車が合流します」
副官であるクラリッサの報告に眉を寄せたラウラは冷たい怒気を交えた声で彼女に問うた。
あまりに数が少ない。どうしてそうなったのだと、振り向かずに。
「……他の連中は」
「………連絡途絶。様子を見に行った者達も、応答ありません……」
「………チッ。仕方ない……現状の残存隊員で部隊を再編。奴を始末した後、明朝前に回収するぞ。この国の警察組織も動き始めてるからな」
面倒くさそうな口で言うラウラに唇をかみ締めるクラリッサは、先ほどと変わりない態度で了解するが、彼女の唇は本人でも分からない間に切れて血を流していた。
その彼女を笑うかのように無視して歩くラウラは前方のキャブへと向かい歩いていくが、途中ゴミのように捨てられるような状態の彼へと目を落とした。
「………。」
意識を失い、未だに彼の身体からは赤い鮮血が流れている。
このままにしておけばいずれ出血多量で死ぬだろうと分かっていたが、ラウラはそれを死っていてあえてそのままにしていた。
「………フッ」
そして。その姿を鼻で嘲笑い、ラウラはキャブへと姿を消していった。
「―――――。」
その後ろで哀れんだ目で彼を見る副官が居ると、知ってか知らずか―――
「状況は」
「今のところ問題は特に」
キャブに入ったラウラは運転をする部下に問い、助手席との間で立ち止まる。
助手席と運転席は数段上った上にあり、その下にラウラと彼女の部下が待機しており、万が一の時にはそこから応戦できるようになっている。
「ですが、どうやら地元警察が
「……展開が速いな。まぁだが、所詮はそれだけだろうがな」
助手席でノート端末を操作する部下が会話に加わり、他のトラックから送信された情報を照らし合わせてラウラへと報告する。
しかしそれを見透かしていたかのように鼻で笑い、ラウラは警察の事を気にしなかった。
「向こうの用意した守りは気にするな。目的地までそのまま行けばいい」
「―――よろしいのですか、一応は武装も……」
「あったとしても対人。こちらは戦争用に改造した車両だ。向こうの弾丸でどうにかなるワケがない。奴等の防衛線とやらは発砲せずに素通りだ。弾が勿体無いからな」
「………分かりました」
「―――ッ!二号車と五号車。八号車が合流します」
「来たか」
後方から二台。そして一般道路から一台。ラウラの部下が乗ったトラックが合流し、三つある車線をその巨体で埋め尽くす。
攻撃を受けた際、反撃をしやすいようにするためだ。
『こちら二号車。後方から警察組織の接近を確認。後方の牽制に入る』
「一号車了解だ。五号車」
『こちら五号車。右側からヘリの接近を確認。牽制します』
「……よし。八号車」
『こちら八号車。合流車線から来る車両を………えっ、何コレ―――』
流れるように連絡が入ったが、八号車のみ何かに気づいたようで無線越しから何か慌てている様子が聞こえていた。
ラウラは眉を寄せて訊くと、無線の向こうから驚いた様子で答える声が聞こえた。
「―――八号車。どうした」
『車両が一台接近。次の合流車線で目視出来ます』
「警察か」
『いえ。反応が……どうやら一般車両のようです』
「何―――?」
どこの馬鹿が上ってきたのだと、ラウラは運転手の気が知れないと段差を上がり左側の見える助手席へと行く。
「迎撃用意。威嚇程度で十分だ」
「り、了解――」
馬鹿の顔を拝むか、と呆れた様子で左側を見るラウラ。
しかし合流車線が近づくにつれて何か異様な気配を肌が感じ始めたのを機に、目を細めて車線を睨むように見つめる。
(……なんだ?この気配……いや、殺気か?しかし、これは……)
「合流まで3―――2―――1――――――!!!」
刹那。開けた合流車線から一台の車が飛び上がるように出てくる。
タイヤは地面に付かず、魔法がかけられたかのように今にも飛んでいきそうな
地面へと着地したプラドに、ラウラの背筋に寒気が走る。
それは部下たちでは感じられない何かだったようで、他は呆気に取られていただけ。
だがラウラだけは気配に気づいたのか、この時ばかり冷や汗を滲み出していた。
「ッ―――こ、子供!?」
プラドから出る殺気の元は彼女か?
違う。
ではプラド自体がか?
それもない。
では一体誰だ?
自分自身に問うたラウラは今まで感じた事のない殺気に息を飲み、無意識に手に力を込めていた。
恐怖に対する防衛意識。
しかしその意識の対象が誰なのか分からない。
そう思った時。意外なところで彼女は気づいたのだ。
殺気の大本が直ぐ近くにいたのだと。
子供でもない。あの車両でもない。
その車両を
そう。彼はラウラよりも強く。そして優しい。
彼女と同じく、過ちによって生み出されてしまった
それを知った彼は甘んじてそれを受け入れ、そして乗り越えた。
男は言った
―――新しい余命を探せ
男は告げた
―――自分のために生きろ
男は―――命令した
―――人として生きろ
ならばこれを自分のために。人として、自分の意思で余命を使おう。
背負わせてしまった不始末を、彼と共に終えるために。
一人で背負ってしまった彼の背を、もう一度立たせる為に
―――老蛇は 再び戦場へと舞い戻った。
「待たせたな」
オマケと言う名の後書き。
さて、今回も出てきちゃいました新オリキャラのアリスちゃん。
彼女についてはこのラウラ編を終えた後にIS勢と共に分けて設定資料を投稿する予定です。
ちなみにアリスちゃんは……まぁ、つおいです。(誤字にあらず)