IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第三話です・・・

IS中心となってしまったんですが・・・大変です。何か書いていたらキャラクターの一人の性格が変わってしまいました・・・
何でこうなったのか書いた自分でも不明です。
取り合えずその対処の為、タグに原作キャラの性格改変を付けておきました。
その為、若干一名の性格の変化にご了承ください。

そんな今回は授業風景とクラス代表決定の話。そして、一夏の部屋の決定と早くも彼女達の登場です。また、他作品同士のキャラでちょっとした関係も追加しました。

てな訳で、誤字脱字・駄文はご愛嬌。
それでも良いと言う方は
第三話、お楽しみ下さい。


No.03 「協力者」

 

 

 

さて。ココで一夏の装備を確認しよう。

武器は今の所二つ。

麻酔銃のmk.2とMk.23 『SOCOM』を一丁ずつ。

マガジンは両方とも三つずつ所持している。

加えて、投擲武器としてグレネードがスタン・スモーク・チャフをそれぞれ二つずつ。

 

そして。彼の作戦を支援する為に再度組み上げられた遠隔機動端末型メタルギア、通称Mk.Ⅳ。先ほど使用したステルス迷彩とiDROID。

 

 

これが現在の彼の所持している装備の全てだ。

と言っても、彼が常に持っているのはSOCOMとiDROIDの二つで、後の全てはMk.Ⅳに格納しているか、手持ちのリュックサックに入れている。

 

SOCOMは後ろ腰のホルスターに入れられており、その姿を隠すの様にして刺されている。

一方で、iDROIDとステルス迷彩は腰左右のポーチに入れられており、iDROIDだけは見えやすいようなデザインになっている。

 

 

「本当ならM10位はほしい所だが・・・この際贅沢は無しだ」

 

頼れる武器は銃が二つ。後は自分の腕だけだ。

そう言ってSOCOMのロックを外し、再び後ろ腰に刺し込む一夏。

ココは戦地ではないので現地調達は無理な話だ。

となれば、出来るだけ見つからずに潜入し、無駄弾を使わず、敵を殺さず。

正にノーキル・ノーアラートを絶対条件とした潜入任務となるのだ。

 

 

「・・・・・・」

 

それを思うと、彼も身震いをする。

彼にとってその絶対条件は未だ達成した事の無い条件だったのだ。

各地の戦地では必ず一回は見つかってしまう。

それも、民兵然り、PMC然りだ。

 

何故そうやって毎度毎度見つかるのかは彼にも不明だが、ノーアラートが今まで成功した事がないのは事実だ。

それを今回成功させられるかどうか。

それが今回の彼の最大の難題点である。

 

「・・・考えたって仕方ない。コッチにはステルス迷彩がある。多少は何とかなる・・・よな?」

 

 

どう考えても絶望だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業五時限目。

生徒達の大半は昼食のお陰で昼寝をしたり、欠伸をする者が相次ぐが、このクラス、一年一組は違った。副担任が千冬だったからだ。

憧れの彼女の講義を聴かないのは絶対損である。

彼女達は重い目蓋が落ちそうになるのを必死に堪え、彼女の講義を聞いていたのだ。

 

その彼女が初日に行う講義。

それは最も最近の出来事『戦争経済』についてだった。

 

 

 

 

「戦争経済。それは国家間で行う戦争ではなく、その戦争を民間の軍事企業が請け負うと言う事で行われる戦争の事を斥す。民間の軍事請負企業、PMCが正規軍に変わって戦争を行い、それを利益とする。それが戦争経済の大まかな概要だ。

その為には先ず何をするか。それは情報操作だ。戦争なくしてPMCは無し。つまり、まずは情報を操作して戦争を起こり易いように促すのだ。そして、戦争の勃発。これでPMCの出番となると言う事だ。

これが世界各地で行われ、市場が開拓されていった。そうして戦争経済は世界各地に広がって言ったと言う事だ。

 

唯一国。この日本を除けば・・・だがな」

 

 

「先生、それってどう言う事ですか?」

 

無垢な生徒が挙手して千冬に質問をする。

それを千冬は何の疑問も持たず、彼女質問に答えた。

今時の青年はそんな事も知らないのか、と思いつつ。

 

 

「この国日本は、二つの後ろ盾があるのを・・・貴様等は知っているか?」

 

「二つの後ろ盾・・・?」

 

「そうだ。一つは、第二次世界大戦、つまり太平洋戦争後から続く日本の三大原則の一つ『戦争放棄』。これが第一の後ろ盾だ。専守防衛を旨とし、永久の戦争行為を禁止する。つまり、自分達からは戦争を起こさず、起こったとしても最小限の行動で沈静化に当たらせていく。戦争。つまり戦い事は相手あっての事だ。相手が無ければ、相手が戦う気が無ければ、戦争などは起こらない」

 

「じ、じゃあもう一つは・・・」

 

 

「・・・『核の傘』」

 

「っ・・・!」

 

「日本が入っている核の傘。これがもう一つの後ろ盾だ」

 

 

一夏の割り込んだのに、千冬は彼に目を向ける。

目の奥までは見れなかったが、彼の目は冷静だったのか分かった。

彼の表情が無情そのものだったからだ。

 

「核の傘とは、核保有国が非核保有国に対して行う機能の事。非核保有国に核が撃たれれば、それを核保有国であり、傘の大本である国が撃った相手に撃ちかえす。これを宣言する事で非核保有国への核攻撃を抑止する。これが核の傘だ」

 

「・・・そうだ。未だこの地球上で最強の大量殺戮兵器として核弾頭が頂点に立っている。今や、一発撃てば世界は終わるとまでな」

 

「・・・ISと比べたら・・・どうなります?」

 

「論外だ。IS程度では核をどうこうする事などな。まさか、貴様らは絶対防御で助かる。なんて馬鹿な考えを持っているのではないだろうな?」

 

「・・・・・・」

 

「甘ったれるな。この世に完璧の物などは存在しない。それか核であれ、ISであれだ。ISがあれば何でもできる等と思っていたら大間違いだぞ」

 

 

当たり前の話だ。

現在、地球上で最も危険な兵器。それは何時の時代も変わらない、核である。

 

それをISだけでどうにかできると言う話は過去には無い。

だが、一夏は其れに似た報告は耳にしていた。

今から一年程前の話だ。

大気圏外へと打ち出して性能テストをする筈だったロシアの核弾頭が、偶然通ったPMCのIS部隊によって撃ち落されたと言う報告があったのだ。

理由はその空域を経由して戦地に向っていたIS部隊だったが、核ミサイルの実験が通る空域で行われると言われ、それに腹を立てた彼女達が、最強=ISと言うのを知らしめる為に独断で出撃したと言う話だ。

 

その結果が目に見えていると知らずに。

 

 

当時、そのPMC達を輸送していた輸送機のパイロットが語った言葉がある。

 

 

 

「彼女達は、まるで死にに行くかのようにして向っていき、上空で光と共に消えていった」と。

 

残ったのは、その後、十年以上かけて放射能除去が行われる予定のISだけだったらしい。

全てが万能と言う訳ではない。

慢心によって、彼女達は命を無駄にしたのだ。

 

 

 

 

「これが現在、わが国を守る二つの後ろ盾だ。これのどちらかを抜ければ、この国は戦争に転げ落ちていく。今わが国は世界との微妙なバランスで平和を保っている。これがあるから、今私達はこうして生きていると言う事を・・・忘れるなよ」

 

 

 

授業終了後。

思っていた以上のリアリティのある話に、彼女達はまるでお化け屋敷のあとの様な表情で話し合っていた。今まで他人事とも思っていた事が、急な現実味と共に襲ってきたのだ。

それを受け止めきっただけでも良しと言うのだろう。

 

 

 

「・・・・・・」

 

箒も、教材を片付けている時に改めて現実を知ったという顔をしていた。

自分は一歩出た外の世界をあまりに知らなさ過ぎたと。

そう思うと、今まで思っていた事が、馬鹿馬鹿しくなったのも事実だ。

だが、それでも彼女は気になっていた。彼女の前に座る、彼の事を。

 

 

「・・・何故だ・・・一夏・・・何で・・・」

 

 

彼女が其処まで言う事。それは今から数時間前、二時限目の事である。

生徒達の自己紹介と言う事で遅い自己紹介が行われた時間。

彼女の希望にヒビが入った瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イチカ・エメリッヒ。日系二世だ。親は、元AT社の社員していました。特技は・・・まぁ特にありません」

 

(・・・エメリッヒ?織斑ではないのか?)

 

一夏の事情を知らない箒は、彼の自己紹介に戸惑っていた。

顔も、声も、何もかも彼女の知る『織斑一夏』ではないのか。と。

しかし、彼はその名を口にしなかった。代わりに彼は、別の性である『エメリッヒ』を名乗った。

一体どうしてなのか。何故彼は織斑と名乗らなかったのか。

多くの疑問が、彼女の上に伸し掛かり、彼女の頭は混乱する一方だった。

 

そして、それは彼の肉親も同じだった。

 

 

 

(エメリッヒ・・・AT社の社員だった・・・一度調べる必要があるな)

 

姉であった千冬は、彼が口にした台詞をしっかりと記憶し、後で調査するべきだと判断した。

アームズテック社と言えば現在はATセキュリティ社として多数の軍事兵器を排出する軍事会社だ。月光(IRVING)などといった現在配備されている無人兵器は全てココが大元となっており、言うなれば世界的大企業の一つ。

日本にもその支部を置いており、企業組織の大きさを窺える。

その企業に勤めていた人物がさっきの男なのか、と疑っていた千冬だが、実際は違っている。

(デイビッド)はどちらかと言えばAT社からは目の仇にされている様な人物だ。

しかし、それを彼女は知らないので、そう勘違いしても不思議ではない事ではある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時が戻り。現在。

事あるごとに面倒事に巻き込まれるという彼の性格がココで遺憾なく発揮される事になる。

 

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「ん。アンタは・・・」

 

彼の前には金色のロールヘアーの少女に呼び止められ、呼ばれた一夏は彼女の顔を見てどこかで見たことのある顔だと思い、記憶の中を漁っていた。

すると、以前ネットをサニー達と漁っている時に見た顔だというのを思い出し、少女の名前を言ったのだ。

 

「えっと・・・イギリス代表のセシリア・オルコットだっけ?」

 

「あら。良くご存知で。流石に他の人達とは少し違うと言う事ですわね」

 

「・・・・・・何か用か?」

 

「まぁ・・・貴方が私の事について知っていたので、本来の目的は果たしましたし・・・今回は挨拶程度ですわ、ミスターエメリッヒ」

 

「・・・・・・そりゃどうも」

 

挑発的な態度に面倒臭がる一夏。

こんな態度をした人物などは世の中にゴマンと居るのを知っていたので、見るのに飽き飽きしている。

しかし、どうやら彼女は違っていたらしい。

 

「一つ、お聞きしてもよろしくて?」

 

「・・・何でしょうか、お嬢様?」

 

「・・・貴方、経験は?」

 

「・・・は?」

 

「人に・・・当てた経験は?」

 

 

「っ・・・!?」

 

 

(コイツ・・・)

 

「・・・・・・」

 

侮っていたのが間違いだったか。

少し近くによってセシリアは彼に対してだけ聞こえる音量で尋ねる。

セシリアの目は迷い無く一夏の目を見ていた。どうやら其処から彼が実戦経験があると言う事を見て捕らえたらしい。

それには一夏も真剣な顔つきに変え、彼女を見る目を変えた。

だが、其れぐらいで真実を語るほど彼も馬鹿ではない。

ココは騙し騙しではあるがと思い、彼は嘘を言ったのだ。

 

 

「・・・ある訳ねーだろ。こちとらステイツ育ちだっての」

 

「・・・そう・・・なら良いですけど・・・」

 

(勘付いてる・・・?まさか・・・)

「一応・・・どうしてか聞いても良いか?」

 

「理由・・・そうですわね。似ていたんですの」

 

「・・・?」

 

「フフフッ・・・では、御機嫌よう」

 

 

不適な笑みと共にセシリアは去っていき、まさかと思い、一夏は去る彼女の後姿を警戒しながら見ていた。

彼女は自分が実戦経験があると読んでいる。恐らく、彼女が最後に言った言葉は、確実に。と。

 

その彼を後ろから戸惑いの目で見るものが居た。箒だ。

僅かに聞こえた言葉に耳を疑ったが、彼の反応からしてどうやら本当なのだろう。

 

彼女の言葉、『人に当てた』と。

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。そんな出来事のあった休憩時間は終わり、六時限目。

LHRの時間に、各クラスのクラス代表を決定する事になり、誰にするかと言う議題になっていた。

クラス代表はクラス対抗戦などに出る者の事であり、同時に学級委員でもあるらしい。

 

 

「再来週のクラス対抗戦に向けて、そろそろ代表を決めたいと思う。自薦他薦は自由だ。但し、自薦の場合は自分の腕に自身がある奴だけにしろ。クラス代表は言うなればそのクラスの実力そのものだからな」

 

まるで国同士のパワーバランスを争うゲームだ。

一夏にとってクラス対抗とはそう言う見方だった。

各国をクラスとし、その実力を争う。

正に世界の戦争の縮小版だと。

 

 

 

「はい!私はエメリッヒ君を推薦します!!」

 

「あ、私も!!」

 

すると、彼の後ろからは自分を推薦するという声が多数上がり、一夏は頭が痛くなった。

男子だから強いと言う訳でもあるまい。

第一自分はと言う前に、彼は立候補を辞退しようと言うのだったが・・・

 

「あの、俺は別に・・・」

 

「他薦されているんだ。覚悟を決めろ」

 

「っ・・・当人の意見は無視かよ・・・」

 

「他薦とはそう言うものだ。違うか?」

 

「・・・・・・」

 

小さく舌打ちをして一夏は頭をかく。これだから物事を軽視する奴等は。と彼女達に愚痴の一つでも言ってやろうかと思っていた。

しかし、そこでも面倒事は起こるものだった。

 

 

 

「織斑先生。一つ提案があるのですが」

 

「何だ、オルコット」

 

「実は、失礼ながら私は自薦したいと思っています。そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

願わくば、彼とクラス代表を賭けて戦わせてくれませんか?」

 

 

 

 

 

「っ・・・!」

 

「何っ!?」

 

「・・・・・・」

 

セシリアは堂々と立つと、そう言ったので教室内の生徒達はざわめいた。

それを予期していたセシリアはそのまま彼女達を無視し、一人千冬にへと提案を持ちかける。流石の千冬も声にはしなかったが、この事に驚きを受けていた。

 

「このまま彼が代表になるというのも彼にとっては不遇極まりないでしょう。だからといって私も立候補したいのは事実。ですので、ココは代表を賭けて一戦交えるというのでどうでしょう。勝てばその者に。負ければ諦める、と」

 

なるほど。考えが読めたぞ。

一夏の頭には彼女が何を考えているのかを理解した。

彼女が狙っているのは三つ。

一つはクラス代表の席の確保。

二つ目は自分の実力を試す事。

そして、三つ目に彼女が勝つと言う事は、自分は彼女以下の実力だというのを知らしめられると言う事。

つまり、一夏に最初から拒否権と逃げ道を塞いだと言う事だ。

そして、このまま拒否しても、戦いに負けては結果は同じ。

一夏は彼女に蹴落とされるだけ。と言う事だ。

 

 

「オルコット、それは・・・」

 

「いかがですか、ミスター」

 

「・・・・・・。」

 

どの道拒否権は無い。なら、ココは負けを承知でも戦うべきではないのか。

無理に受ける必要は無い。私が何とか言うから。

 

二人の違った考えの表情に対しセシリアは余裕の表情をする。

どの道一夏に拒否するという権利は無いに等しい。

ならば。

 

 

「・・・良いぜ。他薦に拒否無し。仕方ない

 

 

 

 

 

 

 

 

受けて立つ」

 

 

立ち上がった一夏は、同じく立っていたセシリアと向き合い、彼女の提案を呑んだ。

それには千冬も箒も正気かと疑った顔で彼を見ていた。

だが、彼は本気だ。男のプライドとかと言うちゃちな理由ではない。

彼にも成すべき事がある。それまではこの地に歯を食いしばってでも残らなければならない。

それが彼の決断の理由だ。

 

 

「有難う御座います。では、先生・・・」

 

「・・・仕方あるまい。予定日は来週の月曜。場所は第三アリーナだ。この一戦でクラス代表を決定させる。両者異論はないな」

 

「ええ、勿論」

 

「・・・無論」

 

「よし。では来週の月曜、クラス代表を賭けてオルコットとエメリッヒには試合を行ってもらう、以上だ。それと・・・オルコットは後で来い」

 

 

賽は投げられた。

セシリアが勝つか。一夏が勝つか。

全てはその一戦で決まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・どういうつもりだ。オルコット」

 

「どういう・・・とは?」

 

「惚けても無駄だ。貴様、アイツに恥でもかかせたいのだろ?」

 

誰も居ない別室に連れて来られたセシリアは千冬に質問を迫られていた。

幾ら教師であったとしてもこんな事は許されるはずは無い。

しかし、それでもセシリアは物ともせず、冷静な態度を保っていた。

 

「恥・・・ですか。確かに、彼が負ければそうなりますわね」

 

「・・・何?」

 

「・・・ハッキリ言いましょう。私は彼に恥をかかせる為に態々決闘を提案した訳ではありません。そんなに愚かだと思っていましたか?」

 

「・・・・・・」

 

「私は・・・唯知りたいのです。彼の実力を彼の正体を」

 

「・・・お前、何を・・・」

 

「織斑先生は気づいてなかったのですか、彼の目に」

 

セシリアはそう言うとロングスカートのポケットから、何かを取り出す。

それは9×19mmのパラベラム弾。つまり、一般的な拳銃などで使う実弾だった。

其れを見て千冬は目を見開き、セシリアはその弾をテーブルの上に置いた。

 

「彼。実戦経験がありますわよ」

 

「・・・何を言って・・・」

 

「分かるんです。私も、そう言う()に居たので」

 

「・・・・・・」

 

「彼の手の平。目つき。癖。何年とまでは詳しく調べないと分かりませんが・・・彼は戦場を生きていた。それは確かですわ」

 

「・・・いい加減にしろ・・・一体何の根拠が・・・」

 

「今の言葉を信じたくない・・・当然ですわね。けど、何時かは知る事になりましょう。彼の事。彼の正体を」

 

 

セシリアの冷徹な言葉に千冬は顔が青ざめていき、心拍が速くなる。

そして息が荒れていき、体温が下がるのを身体で感じていた。

信じたくない。彼女の身体が全身で拒絶反応を起こしているようだった。

まるでその事実を受け入れたくないと言う事で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だ。

 

 

 

《ピンポンパンポーン》

 

 

 

『織斑先生。直ぐに職員室にお戻りください。繰り返します・・・』

 

 

「あら。先生、読んでおられますわよ」

 

「っ・・・・・・ああ・・・」

 

「・・・・・・」

 

顔全体に汗が吹き出し、ようやく現実に戻ってきた彼女の意識は、彼女を陥れた少女の無垢な声でハッとした。

荒れた息を整えると、セシリアに帰っていいと告げ、一人その部屋を後にしようとした。

が、ドアの前に立った彼女はセシリアに顔を向けずに、唯一言注意した。

 

「・・・オルコット。みんなの前でそれを言うなよ」

 

「ええ」

 

そう言って千冬がその部屋を後にすると、セシリアは実弾を取り、それを右手の指でイジリながら呟いたのだ。

 

「・・・少しやり過ぎだったかしら?」

 

その無垢な言葉に、彼女はどれだけ戦慄したのか。

それが彼女とセシリアとの決定的な違いなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃。職員室に戻った千冬は呼び出したのが真那だと知り、彼女が居る学生寮の前に訪れていた。

其処には彼女と一夏が立っており、一夏の顔を見てある事を思い出したのだ。

 

「・・・で、話とは?」

 

「はい。実は彼の部屋の事でして、相部屋と言う事は先に話しておきました。ですけど、誰と割り当てるかと言うので迷っていまして・・・」

 

「・・・空いているのは確か、篠ノ之の所の1025号室だった筈・・・」

 

「はい。ですが、ついさっきになって相手が決まったと・・・」

 

「何?」

 

「で、織斑先生にどうするべきかと判断を仰ごうと思いまして・・・」

 

「・・・篠ノ之の相手は誰になりましたか?」

 

「それが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、織斑先生。此方からのご通達が遅れてしまいました」

 

「・・・貴様は・・・」

 

千冬達の許に二人の少女が歩み寄ってくる。

一人は水色の髪をして手には扇子を持つ学生。背丈から大体二年か三年の様だ。

もう一人は眼鏡とヘアバンド、そして三つ編みをしている。彼女も同じく背丈はその位だ。

彼女達の姿を見るや、千冬は眉を顰め彼女を見ていた。

しかし、それでも水色の髪をした方の少女は猫の様な表情を崩さず、初見となる一夏に挨拶をしたのだ。

 

「初見ね、ミスター。私は更識楯無、この学園の生徒会長を勤めております。コッチは会計兼補佐官の布仏虚ちゃん」

 

「よろしく頼む」

 

「・・・どうもッス」

 

「まさか、山田先生・・・」

 

「はい・・・実は、あっちの布仏さんが篠ノ之さんのルームメイトに・・・」

 

やっぱりか、と頭を抱えた千冬。

どうやらルームシェアは彼女がやった事らしい。その証拠に、彼女の顔はかなりご機嫌の顔をしていたのだ。

だが、それでは違反だというのは当然の事。千冬は彼女に対し反論するのだが・・・

 

 

「・・・お前ら、幾ら生徒会のメンバーと会長だからといって、やっていい事と悪い事が・・・」

 

「ご心配なく。既に虚ちゃんの元ルームメイトには話をつけましたし、篠ノ之さんにも先程通達しました。そして、学園長にも今し方」

 

「・・・・・・」

 

「この様に話を通してきました」

 

楯無はそう言うと一枚の紙を取り出し、彼女達に見せ付ける。

文面からして学園長の許可書らしい。

ココまで用意周到なことに対し千冬は何も言う事が出来ず、歯を強く縛って彼女に睨みを利かせていた。

その彼女を他所に、一夏は楯無に尋ねたのだ。

 

「ってことは・・・先輩が俺の?」

 

「そう言うこと。これからよろしくね、エメリッヒ君」

 

完全に彼女の独壇場だ。それには補佐官と言っていた虚も呆れた様子でため息を吐いており、肝心の本人は嬉しそうな顔でウインクを見せていた。

しかし、未だに納得の出来ない者も一人。

当然の如く千冬である。

 

「・・・寮長に話を通さんとは・・・お前も随分と・・・」

 

「それでしたら、私が先に先生に言おうかと思っていたんですけど、生憎不在だったので。で、私は同じクラスの山田先生に言っておいたと言う事です」

 

「・・・・・・」

 

つまり、彼女がセシリアを呼び出しておかなければ楯無から話は先に聞けていたと言う事だ。それについては彼女もどうも言う事は出来なかった。

恐らく、先に聞いてたとしても、何らかの用意もしていたのだろうと。

 

「と言う事ですが、謝罪はさせていただきます。先に話を言ってなかったのは事実でしたし」

 

「・・・もういい。分かった。と言う事で、エメリッヒ」

 

「ういッス」

 

「今日から相部屋は彼女だが・・・嫌だったら直ぐに言え。即日につまみ出す」

 

「あら怖い・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

楯無のほぼ独断とも言うべきルームシェアが終わり、結果一夏は楯無との相部屋となった。

不満が残っていた千冬だが、学園長の意向ともなれば反論は出来ない。

渋々彼女も了承し、事態は一応の終息となった。

 

 

そして、一夏と楯無が部屋に向う途中の事だ。

 

同じ部屋である一夏と楯無、そして彼女の付き人である虚。彼ら三人が移動している時に、一夏はある違和感に気づいた。

 

 

「・・・・・・」

 

 

どこかで感じた事のある気配だと思っていたが、どうやら彼女らしいな。と。

朝の時に感じた違和感は彼女達の視線の事だったのだ。

一夏の後ろに居る虚の気配が、あの時の彼の後姿を見る気配と同じだったのだ。

つまり、楯無が自分の監視か何かを虚に命じ、それを一夏は感じていたと言う事だ。

 

「・・・・・・」

 

違和感の正体に気づいた一夏は楯無に対し警戒するが、その気配に気づいた楯無は軽く笑うと一夏に言ったのだ。

 

「心配しないで。私達は味方よ」

 

「・・・・・・」

 

「ま。そう言って『はいそうですか』って信じるほど馬鹿ではないものね」

 

楯無はそう言いって扇子を広げ、其処に書いてある「心配無用」と言う字を彼に見せ付ける。それを見て一夏はますます警戒し、彼女に睨みを利かせ始める。

まるで自分を知っているような物言い。気に入らないのも事実だが、何処か掴みにくいのも確かだ。

そして何より、彼女が嘘を言っているような気配ではないと言う事だ。

 

 

「言っておくけど、今私をどうこうしようってのは止めておいた方がいいわよ。虚ちゃん、貴方と同じで腰に刺してるから」

 

「ッ・・・」

 

楯無の明るい声の警告に一夏は目を後ろに少し向ける。

確かに、彼の後ろを歩く虚から小さく金属か何かに触れる音がしていた。

しかも、それは銃の類に触れた時の音だ。

そして、何より一夏は目線を再び楯無の方に戻すと、彼女に違和感を感じたと同時にそれが何かを理解した。

彼女も腰に銃を持っている。

その証拠に腰の動きに違和感が感じられていた。

銃を腰に置いている為に動きに若干のクセがあるのだ。

 

しかし、彼女が手につけてない所を見ると、使う必要が無いのか、使った事が無いのか。

一夏は後者だと予想していた。

 

 

「なら、貴方が信じる話にしましょう」

 

「信じる話?」

 

「ええ。私はある人に貴方への協力を頼まれた。学園内でのサポートをね」

 

「・・・更識さん・・・貴方は・・・」

 

 

「それを指示・・・いえ、頼んだ人。そう・・・

 

 

 

 

 

 

 

ロイ・キャンベル元大佐よ」

 

「っ・・・キャンベルさんが!?」

 

「ええ。詳しい事については部屋の中で話しましょ。」

 

 

 

 

 

 

一夏は楯無の後についていくと、彼女との相部屋である部屋に着き、其処に三人とも入っていった。

中は高級ホテル顔負けの豪華さで、流石は国営と関心すると共に税金の無駄遣いだと感じていた。

その中で楯無は二つ並ぶ勉強机の内、入って奥の椅子に座り、一夏と面と向き合った。

そして、後ろでは虚がドアに鍵を閉め、ドアの近くで一人見張りをしているのだ。

 

「・・・さっきの話。大佐と・・・キャンベルさんと知り合いって・・・」

 

「事実よ。私からして彼はおじ様だもの」

 

「お、おじ・・・」

 

とうとう娘程の年の女(ローズマリー)に飽き足らずこんな女子高生までにも手を出したのか。と呆れる一夏に楯無は軽く笑うと、自分の台詞に訂正を入れた。

 

「おじ様と言っても血とかの関係はないわ。縁があってそう呼んでいるだけ」

 

「縁?」

 

「実は、私の家系の人間がかつて彼の指揮する部隊に所属していたの」

 

「大佐の・・・ってまさか、FOXHOUND!?」

 

 

FOXHOUND。それは米国に存在した単独潜入諜報活動を主に行う特殊部隊である。

かつて伝説の英雄であるビッグボスが組織した特殊部隊であり、単独潜入諜報活動を主に活動した組織でかつてソリッド・スネークが所属する部隊でもあった。

しかし、ビッグボスが起こした『アウターへブン蜂起』でビッグボスが総司令官から降りると、其処に当時副司令官であったキャンベルが総司令官に任命、彼の主導に人工衛星を使用したハイテク部隊に生まれ変わったのだ。

更にキャンベルやソリッド・スネークの除隊後はソリッドの双子であるリキッドが主導となり、極端な少数精鋭の部隊に変更。

彼が首謀者となって起こした『シャドーモセス島事件』の後に組織は解散となったのだ。

これが特殊部隊FOXHOUNDが辿った結末である。

 

 

「そう。丁度彼が司令官の時にね。けど、その後に彼が除隊して部隊の元主要メンバー達も一斉に解散。その後元主要メンバー達は散り散りに故郷や他の部隊に戻っていったの。それで、その後最近になってその伝手を頼りにあの人が久しぶりに顔を出したと思ったら・・・」

 

「俺への協力を依頼された・・・と」

 

「そう言うこと」

 

 

つまり。元FOXHOUNDの隊員であった彼女の家の人間が居て、その彼を頼りにキャンベルが一夏への協力を彼女達に依頼した。と言う事だ。

もう二十年も前の事をよくお互い覚えていたな、と関心する一夏だったが、個人的な疑問を持って居たので彼女に尋ねたのだ。

 

「・・・じゃあ、更識先輩は何時からあの人と?」

 

「そうね・・・もう九年も前だったかしら。あの人が元隊員であったウチの人に用があって一度か二度来たことがあったの。その時よ」

 

「九年前・・・タンカー沈没事件の年か・・・」

 

シャドーモセス事件は2005年。現在は2016年の為、事件はもう十一年も前の事である。

彼女がキャンベルと出会ったという九年前だと、丁度『マンハッタン沖タンカー沈没事件』の年で、後の『ビッグ・シェル占領事件』にも繋がる事件のあった年だ。

その年となると、既に愛国者達が本格的な活動を行っていた時であったので、恐らく諜報の幅を利かせたいと言う事で彼女達の所に訪れていたのだろう。

 

「タンカー沈没・・・私もその事件はよく覚えている。マンハッタンの海が向こう数年魚が住めなくなって環境汚染が深刻化した、と親や知り合いの大人たちが騒いでいた」

 

「そうね。その年が最初で最後のあの人と最後に会った記憶だったわ。けど、最近になってあの人が尋ねてきてね。私達に協力を依頼したの」

 

「・・・・・・キャンベルさんは何て?」

 

「『これから君達の所にやってくる青年に協力してくれ。彼は今、世界を守ろうとしている』ってね」

 

「・・・・・・」

 

「正直私も虚ちゃんも最初は嘘だと思っていたわ。けど、色々と聞かされて見せられて・・・嫌でも信じる事になったわ。もし、貴方が探している人が見つからなければ・・・」

 

「・・・最悪世界は再び地獄になる・・・そう。最悪、戦争経済・・・いや。それ以上の事態に世界は転がっていってしまう・・・」

 

 

一夏の口から重く語られた最悪の結末(エンディング)

それはかつての出来事よりも想像を絶する物だという予感だった。

戦争経済以上の事態に世界が転げ落ちていく。

その先にあるものとすれば、この時の彼には一つしか思い浮かばなかった。

 

 

核戦争。まさに人類の終焉である。

 

 

「戦争経済では兵器の全てが管理されていた。けど、今はもうその管理システムは存在しない。戦争経済の終わりと共に無くなってしまった」

 

「じゃあ、最悪核が使われたら・・・」

 

「スパイラル・・・つまり、核戦争・・・それが俺の考える最も最悪の結末です」

 

核戦争ほど、現在の文明全てを焼き尽くせる兵器は地球上存在しない。

他にある兵器は人に対して、戦車に対して、そして兵器に対してしか効果が無い物ばかりだ。

その中で核を撃つ為の兵器はかつては存在した。

しかし、それも今は存在しない。あるのはその亜種だけだ。

 

 

「管理システム・・・SOPの事ね」

 

「そうです。今までの兵器は全てSOPの管理があっての事。それが無い現在では容易に核を撃つ事が出来る。世界は逆戻りしたと言う事です」

 

「・・・覚悟はしていたが、其処までとはな・・・」

 

「ちなみに聞きますが・・・先輩達は何処までキャンベルさんから聞きました?」

 

「何処まで・・・ね。SOPの事や一般常識は知っていたわ。けど、その裏で一人の人物が米国に決起を起こそうとしていた。って所かしら」

 

 

つまり愛国者達の事はまだ知らないのか。

SOPシステム、正式名『サンズ・オブ・ザ・パトリオット』はその名の通り愛国者達が武器などを管理する為に作り上げたシステムの事だ。

そして、彼女の言う一人の男。それはリキッドに他ならないだろう。

彼が愛国者達に対して決起を起こした。と言うのではなく、米国に決起を起こした。

どうしてキャンベルが其処を伏せたのかは不明だが、恐らく彼女達を深入りさせない為だろう。彼なりの気遣いと言う事だ。

 

 

「なるほど・・・一応あの人も全部話したってことか・・・」

 

(・・・あの人は何処か隠している雰囲気だったのは確かだけど・・・一体何を隠しているのかしら・・・)

 

「兎も角。先輩達が協力してくれる。それは確かなんですね」

 

「ああ。私も会長もそれを了承した。だが、この事を知っているのは私と会長の二人だけだ。それだけは注意してくれ」

 

「ええ。他言無用でお願いします」

 

協力してくれると言う事を再確認した一夏は胸を撫で下ろした。

これで幾分かココでの活動が楽になる筈だ。

だが、それは同時に彼女達を危険に晒す事にもなる。

 

一夏の心の中では安心と苦労がまた増える事になった。

 

そして、取り合えず事情を説明してもらう為に、一夏はiDROIDを起動させ、キャンベルへと連絡を取ったのだった。

 




オマケ。

一夏のリュックサックについて。
原作では学校指定のカバンを持って居た一夏ですが、この作品では黒いリュックサックを使っています。(ちなみに許可は貰っている)
ホールドベルトは細く、片手で両方持てる位の横幅でサイドは無し。
口を紐で絞めるタイプで中の底面と背を付ける側とに隠しチャックが付けられており、其処に武器類やMk.Ⅳを入れたり出来ます。ただ、Mk.Ⅳは重いので基本は入れていません。
一応大きさは全教科の教材とノートが入り、更に余剰スペースが僅かにあるぐらいでかなり使いやすい物となっています。
ちなみに、これはとある人物からの貰い物であり、オーダーメイドです。
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