IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第五十話です。



始めに。モッピー好きのファース党の皆さん。
ここまで引っ張ってしまってごめんなさい。
ようやくモッピーこと箒との関係に一つのケリがつきます。
まだ一つという事で未解決な部分とかもあったりしますが、ここでやっと進展していく…ハズです。


さて。段々とフェードアウトしていたMGS組も次回辺りから復活の予定。
次はラウラのそのあとを書こうかなと思っています。
それに…このActでは存在感がそこそこ薄かった彼にもスポットが当たるかも。その彼とは…多分、人によっては「あ、コイツかな?」って思う人物だと思います。
具体的にどこで出すのかは決まってません。が、一応出す予定です。
それと、残る三人(セシリア・鈴・シャル)も順番にメインとした話を作る予定です。

それでは第五十話、お楽しみ下さい。


No.50 「思い」

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し巻き戻る。

 

 

 

 

 

 

 

楯無が記した場所にたどり着いた一夏は、門前に立つと自分が来るべき場所が本当に正しいのかと疑いもう一度手に持ったメモの内容を確認した。

だが地図に間違いはなく、確かに自分の目の前にある建物が目的の場所だ。

 

「…流石は」

 

 

それが和風の趣がある屋敷であれば、誰だって疑うはずだ。

 

「金持ちが考える事は分からんな…」

 

頭を掻いてスネークのような事を言うと、門の周りを見回して監視カメラがないかと探す。

恐らく自分が来ることも考えてカメラは稼働しているだろうし、今のご時世を考えればそれくらいはあるだろうと思い見回してみると、案の定一つだけだが巧妙に隠れた監視カメラを見つけ、軽く手を振った。

 

「あのなぁ…」

 

間髪を入れずに扉が開く音が聞こえ、目を向けると中からため息を吐いた虚が顔を見せる。

声の近さからして初めから近くに居たのだろう。

 

「別にそんな事をしなくても、叩けば私が出ていたぞ?」

 

「いや…流石にそれは不作法かって思って」

 

「しょうもない所で生真面目だな、君は」

 

取りあえず入れと手招きをされた一夏は軽く苦笑して応じる。

始めてきた場所であるのでどうすればいいのかと分からないのは彼女も分かるが、それならそれで大体こうであろう、と思う事を実行すればいいのではないか。

変なところ気遣う奴だなと少しだけ彼の本性を見れた虚は軽く笑い吹かし、奥へと歩く一夏の後ろ姿を眺めていた。

 

 

「………。」

 

始めて屋敷というのに足を踏み入れた一夏は玄関前だというのに早くもその雰囲気に飲み込まれていた。

何度か和風の邸宅というのを見たり入ったりはあったが、いずれも趣だけで至る所最新技術が混ざって「和」という感じを壊していた。一応、生まれが日本である彼にとってはどうにもそれが慣れない所であり不満点でもあった。

しかし、ココはどうだろうか。一目見ただけでわかる筈のセキュリティの類が全く見られず、それ以上にありのままの植物の香りが漂ってくる。

 

 

「…ああ。これは」

 

昔嗅いだことのある匂い。

懐かしさもあり、趣がある空気に心なしか頬を緩めた一夏は長く続く石道を辿り屋敷へと歩を進めた。

 

「家が家なのでな。こうして昔のを残しつつ改修を重ねているんだよ」

 

「作られたのっていつ頃ですか?」

 

「もう随分昔だと聞く。最初に建てられたのが江戸末期でその後震災や空襲で数度修繕を行って今の状態にまで成っているとの事だ」

 

「マジですか…」

 

「お嬢様の家が所有するこういった類のものは、昔からのというが殆どでな。一応、妹が住んでた一般家屋もあるが…」

 

「妹…?」

 

「うん?話してなかったか。あの人には似た顔の妹が居てな。本人は否定しているが、かなり機械工学に秀でた才能を持っている。けど、本人が姉と自分を比べてしまってそれが十二分に発揮されないというのが実際の所だ」

 

彼女に妹が居たというのに驚き、一体どんな人物なのかと話しを聞きつつも見た目を脳内で想像する。

彼女と似た顔で機械工学が得意。しかし自分と姉を比べるという事からあまり自信家ではないのだろう。また少しでも相手が優れていれば羨み、嫉妬する。

 

 

―――アレ。なんでだろ。俺、真っ先にオタコンに似てるって思ったんだけど

 

 

恐らく何となしに一夏の目からはそう見えていたのだろう。

彼には姉は居ないし、サニーたちが優れていても嫉妬はしない。むしろ驚く事が多い。

なのにどうして自分はそう思ったのだろうか。それはしばらく彼の頭の中にしつこくこびりついていた。

 

「……?…??」

 

「…?どうした」

 

「いや…ちょっと知り合いに似てるなって思ったんですけど、別に似てる所がないのにって…」

 

「ふむ…外見じゃないか?」

 

まぁ女体化したらあるいわ。じゃねーよ

となぜな一人でボケて突っ込むという意味不明な事を考えていた彼は、その時に遠くからの視線に気づけず誰かが見ているとは思ってないまま入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内装は一夏から見れば昭和の雰囲気があり、天井の照明も橙色に近いものだったので旧式の電球を使っているのだと見ずにわかる。

だが、それも玄関だけの話で中に入って楯無の居る一室に入ると、更に時間が巻き戻されて江戸時代にでもタイムスリップしたかのように明かりがロウソク一本だけという質素なものになった。彼女曰く、夜は節電させられているらしい。

 

「困ったものよねぇ…伝統とかそういうのじゃなくて唯の経費削減目的なんだから」

 

「良いんじゃないですか。昨今、電気消費量は年々増え続けてるって言いますし、日本じゃ電気料金を上げるなんて話も持ち上がってる。無駄削減ですよ」

 

「だからって流石にコレは…無くはないわね」

 

まんざらでもないという顔で言う楯無に一夏は目線を横にずらす。

なぜか彼女の後ろには白い布団が敷かれており、近くに置かれた机にはティッシュ箱が真新しいままで置かれていた。

それには虚もあきれた顔で一夏は分かっては居たが、念のために彼女に訊ねた。

 

「…で。貴方は何をしようとしてるんですか」

 

「決まってるでしょ?こんなシチュエーションならやる事は一つ!」

 

目を輝かせた楯無は腕を組んで舌を舐め回す。

完全に学園で相部屋であった時の顔だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目指せ既成事実!狙うは一発必中、そして速攻なる愛の―――」

 

刹那。一夏はCQCを本気で叩き込み彼女の言う愛のなんとやらを速攻で破壊した。

 

 

 

 

「ぬぎゃっ!?」

 

「誰がそんな事するかい。というか貴方コレをR指定にする気ですか」

 

「メタい話いうとマジで既成事実を作りたいです。というか、楯無ルート成就させたいの!!」

 

「お断りです。誰がそんな事で童貞捨てると思いますか」

 

「クッ…流石ね一夏君…ガードが厚いわ…」

 

布団だったからか、それとも彼女の身体的な事なのか。

本気で叩きつけたなら背中などに激痛が走り気絶でもするかと思っていたが、逆に彼女は平然とした顔で起き上がり本当に何事も無かったかのように切り返す。

一応は只者ではないとは分かっていたが、実際こうも見せられると彼女の本性というのを疑ってしまう。タダの策士ではないし似非の忍でもない。もしかしたら、と。

 

 

「…で。そろそろ本題に移っても?」

 

しかし今回はそんな事をしに来たのではない。自分だって用事を済ませるために来たのだ。

自由奔放にただ遊びに来ましたという様な幼稚な考えとは違う。

一夏はこの話を延々続けていたら彼女が主導権を握ってしまうだろうと思い直ぐ目的である本題に入る。

楯無も名残惜しそうな顔をしていたが、一拍置くと気を落ち着かせて切り出す。

 

「―――じゃ、まずはデュノアちゃんの一件から」

 

シャルロットと親であるデュノア社長とのいざこざ。フランス政府をも巻き込んだ壮大な親子喧嘩は結局どうなったのかと思っていた彼に小さな吐息が吐かれた。

 

「取り合えず。彼女がフランスに強制送還されるという事はなくなったわ

フランス政府にも正式に話は通したし余計な事を言わないように釘刺しはしておいた。もう向こうからの敵は基本考えなくていい」

 

「………。」

 

「機体についても正式な手続きを踏んで実質的彼女の所有物となったけど、大本はフランスのまま。政府からの命令となった場合は国連でもないと言うこと聞くしかないわね」

 

 

 

 

さぁこれで全部。貴方の聞きたかった事よ

と、さも言いたげな顔で言い終えたが聞く相手の顔は晴れるどころか納得しきっていない様子で目もふざけた時に見せる時よりも冷ややかだった。

そんなワケある筈ないだろ。と目が言い僅かだが怒りのようなものも漏れていた。

あくまで他人事、私の知った事ではないと言いたいような顔だったからか。それとも、包み隠さずに話をしなかったからか。いずれにしても事実は言うべきなのだろうと呆れたかのようにため息を吐くと

 

「―――――そう怒らないで頂戴。言っておくけどコレふざけてないから。別に貴方が他人の家庭の事情を知るのも意味ないし、そもそも首を突っ込むべきではないでしょ?」

 

 

「…それでも、だ」

 

「………。」

 

 

なにヒーロー頑張ってるんだか、と本気で呆れはしたが彼の要望ということでか、間を置かずに語った。

 

 

「―――手を切ったわ。あの子自ら」

 

「ッ…」

 

「デュノア社長は社員のためを選び、最後まで社長として振る舞った。

当然といえば当然でしょ?

数千の社員と一人の大切な娘。秤にかければ確かにどちらも捨てがたいけど、それはあくまで彼が一人の人間。男として考えたならよ」

 

「…だから社長は」

 

「もう彼女の母親も居ない。今の妻も行方不明。言えば枷が外された状態だから調子には乗ってるんでしょうね。

けど、彼は結局として社長という立場を選び、天秤に賭けられたものから感情を捨てた。

数千の人と一人の小娘。しかも、背景を考えるなら………答えは簡単よ。

彼は男ではなく社長を選んだ。だから、彼女は自ら離れた」

 

淡々と語られた言葉はそれを最後に区切られた。

もしかしたらと心のどこかで考えていた一夏の中に現実が重く、そしてゆっくりと伸し掛かり、俯いて言葉を失う。

そうなるだろうという可能性を分かっていたからか、不思議と辛さなどはあまり感じられなかった。ただ彼の中でそうなったという事実だけが静かに受け入れられたのを感じやがて小さくため息を吐いて返答した。

 

「…そう、ですか」

 

「………。」

 

自分なりに責任感はあった。あそこで撃っていればと後悔はしていないが、少なくとも自分が関わり自分の最も知る人物が起こしたこと。そしてそれが遠因となった事。

それを理由に、彼も結果というのを知りたいと思い、そして聞いたのだ。

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

「…これで、一応だけど彼女は自由の身。あとは本人次第よ。けど、あまり余計な茶々は入れないし、貴方も入れない事。それだけは約束して」

 

「…はい」

 

 

聞き終えた一夏は襖に手を置き、部屋から出ようとする。だが、その直前に話題となった本人がどうなっているのかと最後に訊ねた。

 

「そういえば、シャルは…」

 

「今は寝てるわ。この所、色々とあったから本人も疲れるし、寝かせてあげなさい」

 

「…分かりました」

 

聞きたい事を聞いた一夏は廊下に出ると、最初に辿って来た道へと体を向けて歩こうとしたが

 

「ちょっと待って」

 

楯無はそのままの音程で呼び止め、一夏に対し聞き返す。

 

 

「―――まさか。帰る気?」

 

「………。」

 

本当は分かっていたのではないかと言う顔で訊ねる彼女に、一夏は間を置いて声を絞り出す。

分かってはいる。と

 

「…けど、俺には―――」

 

「…会う資格がない?」

 

「ッ…」

 

散々相手にせず冷遇したのだ。前の出来事で共闘したり一度はよりを取り戻せたとしても、もしかしたら自分を見る目が解っているのかもしれないという小さな恐怖があるせいでどうしても踏み切れなかった。

 

「いつまで怖がってるの。このままの関係を続けてしまったら、貴方はこの先…」

 

「………分かっては…いるんですけどね」

 

今までは最後には腹を決めて来たのに彼女の時にはどうしてもその最後を踏み出せない。

 

「…変に、意識してるっていうのは分かってるんですけど…」

 

「………。」

 

意識しているのだろうか。それとも。

考えれば考えるほど頭の中は混乱し適格な言葉が見失われていく。

 

「ただ…怖いのかもしれない。アイツが、俺をどう思っているのかを」

 

思う度に苦しくなる。考える度に辛くなる。

大切に思う人だからこそ。

どんなに変わっても、どんなに偽っても

大切な人たちへの思いだけは変わらなかった。

強がり、苛立ち、自虐

そのどれにも当てはまらない言葉に、どうすればいいのかと迷う。

きっとそれは

 

 

 

 

 

 

 

「…してるわねぇ」

 

「―――え?」

 

「…別に」

 

 

鈍感や奴ほどモテるのだろうか。この世界は

そんな事を思いながら、楯無は一拍置くと独り言のようにつぶやく。

 

「…反対側の廊下を歩いて三つめの左の角。その先の離れに居るわ」

 

「………。」

 

早く行って来いと眼で言っているのは分かったが、それでもと自分の意識が反論してしまう。彼女に何と言えばいいのか。どう接すればいいのか。

言い訳のように頭の中に並ぶ言葉にしばらく沈黙するが、やがて覚悟を決めたのか頭を切り替えたかのように目を見開き体を反対側へとひねった。

 

 

その先に居るであろう彼女に会うために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今でも迷いがあると言えば事実だ。

会うとは決めたものの、なんと言えばいいのか。何を話せばいいのかと言うのに関して頭が真っ白なのだからだ。

 

 

「………。」

 

面と向かって話をするのはいつ以来だろう。学園に入ってから、再会してから一度も話していないのでもしかしたら本当にあの日以来なのかもしれない。

学園で会うよりも前、自分がまだ一桁の年頃の時に剣術に精を出していた時。丁度モセス事件の後の辺りだったろうか。それぐらいに記憶を掘り返さないと自分の中では彼女との「会話」というのが彼には思い出せなかった。

 

学園に入ってからは一方的な無視と避けるという行動が殆どで、危険な目にあわせないようにとしてきたが、最近はどうにもそれが裏目に出ていると感じている。

代表的なのを上げると入学直後に起こしたセシリアとのいざこざ。そしてその次に鈴が来て彼とのクラス対抗戦の時に急襲したメタルギアRAY。無人機がひしめく中で彼女は無謀を承知で訓練機の打鉄で参戦。

RAYとの闘いは下手を踏めば彼女も死んでいたのかもしれない。いや、死んでいただろう。

なのに彼女はどうしてそんな危険を冒してまで戦いに加わったのだろうか。

普通に考えれば思い当たる理由はある。が、一夏はその他にもう一つ、恐らく箒自身が気付いていないのかもしれない無意識下での理由を感じていた。

 

 

「………もし、かしたら」

 

時代の所為か。それとも必然的にそうなったのか。

考えたくもないが、それもまた自分らのせいなのだろうかと思ってしまう彼は、深く自責に呑まれかけた瞬間それでもと反論。

 

 

「……会えばわかる、か」

 

全ては彼女と会えばわかる事だ。どんな事になろうともそれが自分で決めたことで、後悔するのは後でいい。

今までだってそうしてきたのだ。

 

「………大丈夫かな…って」

 

ちゃんと話せるだろうかと軽く苦笑し本番での事を心配する一夏は次第に楯無が言っていた離れに近づいていき、その大きさに少し驚いていた。

普通離れというのは一部屋あれば十分なのだが、目の前にあるのは大部屋一つと個室が二つほど合わさった一軒家程の広さだ。

 

「………どんだけ金持ってるんだ、あの人の家」

 

更識の家の謎が深まったのに一夏は頭を掻き、彼女の底の深さに改めて恐ろしさと疑問を感じ、次からは警戒していこうと決心した。

かなりどうでもいい事なのだろうが、それが性格と相まって本気でそうしなければという決断に至らせたのだ。あのラウラでも女狐と呼んだほどだ。底は計り知れない。

 

 

 

 

「…さて」

 

楯無への接し方を改めている内に一夏は箒の居る部屋の前にたどり着いた。

気が付けばその場に立っていたので意識を思考の中から釣り上げる。

足を止めると襖の奥から僅かに光が漏れていた。まだ彼女が起きているという証拠だ。

さてここまで来たぞと頭のどこかから言われたセリフに、一夏は鼻で呼吸を整える。自分なりの返事、ここからが本番。さてどう出るか。

 

 

―――行くか

 

 

音もなく歩を進め、襖に手をかけた彼は静かに戸を開けて、漏れ出す中からの光に目を細めた。

僅かな瞬間、自分の中で違和感を感じていたのに気付いた(・・・・)のに気付けずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――一夏(エモノ)………?」

 

 

止まっていた針は進むのではなく

無理やり剥がされ、そして

進んだ先にねじり込まれていた

大量の異物と共に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――お驤様。なぜ、彼女の事を言わなかったのですか?」

 

「…さぁて。何のこと?」

 

とぼけた顔で答える彼女に、虚は沈黙するが直ぐに何を言いたいのかをハッキリと彼女に突きつける。

 

「…篠ノ之の事です。彼女の前科。それを何故、彼に話さなかったのですか」

 

「ああ」

 

「アレの状態は話を聞くだけでもわかります。似たような状態の奴(シャルロット)が近くに居るのですから。それに、もし何かのはずみでそうなってしまえば…」

 

「彼は死ぬ?」

 

「ッ…」

 

直球。それも即答で答えた楯無にじゃあ何故と追及する。

彼女だって分かっていない訳ではない。しかし、それだけで判断するのは未熟と言えることだと言い返す。

 

「甘い甘い。大甘よ、虚ちゃん。そんな事で彼が死ぬような性格と体の持ち主ですか」

 

「ッ…しかし…」

 

「確かに。今の彼女、篠ノ之箒は危険な状態であるでしょう。なにが原因でキリングマシーンと化するかも分かりません。

けど。それを自分で制御しなければ…この先あるのは破滅だけよ」

 

自分の事は自分でなんとかする。ごく当たり前の事を論ずる彼女の意見は正しいのだろう。

しかし箒はなにが原因で外れるか分からないという欠陥点を持つ。過去が強姦や自分の弱さへの恨み、自虐などからだったが今回はもしかしたら一夏に関する事で起こってしまうのかもしれない。虚にはそれが一番の心配事だったのだ。

 

だが楯無は言う。

貴方お母さんじゃないのだから。彼らの事は彼らで任せる。彼ら自身の事を誰かができるはずがない。と

 

 

 

直後。屋敷の奥から何か木材が倒され、壊された様な音が響いた。

 

 

 

「ほら、始まった」

 

 

子どものじゃれ合いを聞いているかのように、愉しげな笑みを浮かべ彼女は言う。

何も手出しはしない事、と―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

襖が倒され、一夏は大部屋から個室へと転げる。体勢を崩しての転倒だったので一瞬頭が揺さぶられるが直ぐに立て直して応戦の構えを取る。

 

「っ…」

 

膝と太もも辺りが妙に痛むのは無理な体勢からの立て直しか、それとも襖に当たったからか。それとも、傷が開いたのか。

いずれにしても大したものではないと切り捨てた彼は冷や汗を滲ませながら眼前の()に目を当てる。

絶対的な余裕か、この上ない笑みを見せている。

 

 

「…なんで…」

 

何故こうなってしまったと後悔する一夏は歯を強くかみしめる。

真剣に僅かだが付着した血を舐め取る相手に哀れんだ目を向けるも、当人はそんな彼の顔が理解できないのか満面の悦を見せている。

元より彼がそんな顔をする意味が分からない。意味もないのにどうしてそんな顔をするのだろう。

 

 

―――私のために血を散らしてくれるだけなのに

 

 

 

 

 

篠ノ之箒は笑う。それが普段の顔であるかのように、頬の筋肉は塊り小さく飛び散った血は指で拭き取られた跡がある。だが手や袖には血が拭き取るために汚された跡はなく、まだ清潔なままだった。

 

「ち……」

 

「ッ…」

 

唇が少しだけ動くが、ただ一言言っただけで再び固まってしまう。

口を動かす必要がないのか。それともそれが基本なのか。

いずれにしても、今の彼女にまともな会話というのはできる筈がない。

脱力したように下ろされた腕には舐め切られていない血の跡を残す刀が握られ見た目からまだ十分に切れ味を持っている。

お陰で彼の頬と右肩には切られた跡が残った。

 

 

 

 

自分を見た瞬間。それが当然かのように刀を振るい襲い掛かって来た。

一夏も殺気に関してはそれなりに感じるほうだと自負していたが、今回彼女との対峙した瞬間にはそれが感じられず、しかもそれがタイムラグで認識してしまった。

殺意が空気に溶け込み「それが当たり前の事」と認識してしまいそうな空気。戦場でも感じたことのない感覚に迷いはましたが、直ぐにそれを理解し自分の置かれた状況を再認する。

箒は自分を斬る気で、自分は斬られそうになっている。彼女に迷いなどない。その証拠にこの上ない笑顔で楽しんでいるのだ。

 

右目を赤く染め上げ、殺意よりも快楽に溺れた瞳は獲物を見る。

体の中にたっぷりと溜まっている赤い鮮血を見るために。それをあの時のように食べたいがために。

殺意よりも快楽、そして快楽よりも…これは食欲とでも言うのだろうか。

肉食の動物が獲物を追うように、箒もその摂理に従い本能に従って一夏に斬りかかった。

 

 

「ッぁ!!!!」

 

「いっ…!」

 

紙一重で腰に刺していたスタンロッドを抜く。ナイフであればまだ耐えられただろうが、スタンロッドは言えばスタンガンのようなものなので耐久性は高くない。彼の身に迫っていた一撃をずらすと音と共に崩壊していく。

刀はそのまま畳に突き刺さり得物が使えなくなった事に好機と見て組みかかろうとするが、それよりも速く彼女は空いた左手で首元をつかんで叩きつける。

一夏が刀の攻撃を防ぐか避けるかというのを先読みしていたのだ。

 

「かっ…!」

 

畳に押し付けられた一夏は反対側の手で刀を引っこ抜くのが見えたのに危機感を感じ、彼女に暴力を振るうという罪悪感はあったが、それよりも自分の命を優先し両足で腹から蹴り飛ばす。

 

「ッ!?」

 

「ッ…すまん…!」

 

こうなったら実力行使しかないと踏み切り、腰から麻酔銃に改修されたM9を抜き取る。サプレッサー付きの麻酔銃は一発毎に手動での排莢が必要というMk.2と似た欠点を持つが麻酔効果については同じように扱える。

つまり、頭に当てるなりすれば当然眠るということ。しかも非殺傷武器なので彼女が死ぬことはない。

その理由もあってなのか、一夏は迷いなくM9のロックを外すと箒の頭に向かい銃爪を引いた。

 

 

だが、その僅か一秒足らず後に彼らの間に変な音が鳴り響き、更に畳などに何か刺さったような音も聞こえた。

一体なんだと思い彼女の方を見ると、撃ったはずの麻酔弾がどこにも見当たらず何事もなかったかのように起き上がっていた。外してしまったのかと最初は思い、スライドを引いて排莢そして再び頭に向かい撃つが

 

「…だぁ……」

 

「ッ!?」

 

無駄、とでも言いたかったのだろうか。今度はハッキリと彼の目の前で真実が映し出される。彼女が刀を軽く振るって麻酔弾を正確に両断していたのだ。

今度は外の木と壁に当たり、切られた弾は壁と木に抉り込まれていた。

 

「嘘だろ…!?」

 

「ふっ…!」

 

小さく息を切り再び彼女が肉薄する。

今度は体勢を整えて転がり回避に成功するが、彼女も二度同じ手は喰らわないのだろうか畳までは突き刺さらず直前に止まって表面だけを掠り取る。そして逃げる彼を追い地面を蹴る。

 

「ったくッ!!!」

 

それは一夏も同じ。同じ轍は踏むまいと左手にピンの抜かれたグレネードを構え、彼女の目の前に向かい投げつけた。その間にスライドを引いて排莢、次弾を装填する。

M9の次弾装填までの足止めかと思われたが、箒がグレネードを斬ると案の定中から大量な煙幕が発生し彼女の視界と獲物を失わせる。

 

「――――!」

 

(今だ…!)

 

辺り一面が煙に包まれ何も見えなくなった。これではどちらも動けないと思われたが箒は助走をつけて屋根瓦に掴まりそのまま上に退避する。

口にくわえていた刀を再び手に持つと獲物がどこに行ったのかと辺りを見回し、影を探す。

だが本人は何処にも居らず一体どこに行ったのかと周囲をぐるりと見回す。物陰に隠れたか。それとも室内に退避したのか。

答えはそのどちらでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…やっぱ床下は使えるな)

 

 

途中、草履などを置く石に頬を擦ってしまったが無事に逃げ込めたのでよしとするか、と呼吸を整える一夏はおおよそ個室の下辺りに逃げ込み、体勢を立て直していた。

あのまま室内に逃げ込んでいたら最悪彼女が追って来ていただろうし、物陰に隠れても見つかる可能性は高い。そこで和風建築の穴である広い床下を利用し彼はその下に隠れる事にしたのだ。

結果、彼の身はすっぽりと中に入り体勢を立て直すには十分な時間を確保できたという事で、彼はその間に自分の手持ちを確認しどう打って出るを考えていた。

 

(さて。こっからが問題。逃げ込めたはいいが、この状態じゃあ出てくると絶対に殺られる。

アイツの様子を見るからに殺意…いや、こっちを狩る気は満々だ。逃がす気ゼロ。

当然俺だって黙って殺されるほどヤワでもないし死にたくもない。つか、こんなので死んだら絶対に嫌だ。後世絶対に思い出す。

 

…まぁ、独り馬鹿話はさておいて、だ。状況確認をするか。

 

 

相手の得物は刃渡り十数センチの刀一本。

敷地は大体一般家屋(小)ほどと庭園に囲まれ、隠れるのにはある程度使えるが、上から見られたらアウト。

多分、アイツは部屋じゃなくて屋根に退避してる。そうすればこっちの位置もつかめるだろうし、中心部に隠れればある程度は姿を隠せる。どこからでもこちらを攻撃できるというアドバンテージがある。

ただし、降りるまでの間ががら空きだからその間に撃つって手もあるが…正直俺はそこまで早撃ちでもない。

 

何より。ココに逃げ込みはしたが…ここからだと打って出る事は不可能に近い。それまでに見つかる可能性が極めて高いからな。

 

武器はM9とスタンロッド。そしてグレネード(スモーク・スタン・通常・チャフ)を各二つずつ。スモークはさっき使って残り一つ。スタンロッドもおじゃんだ)

 

 

一応は身の安全を確保したが。代償として一夏は攻めの手立てを失った。

彼がどんな方法で出るにしても普通に出るというやり方なら絶対に相手に見つかって背中から刺される。というのが彼の予想した結末だった。

だが、彼もそこまで馬鹿でもないし追い込まれてもいない。やるにしても方法は他にいくらでもあるのだ。

 

が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那。

 

一夏の顔と僅かに間を開けて組んだ腕の間に一本の銀色の剣が突き落とされた。

 

しかも最も切れやすい部分は彼の顔に向けられており僅かに鼻の辺りの空気が切られたように感じた。途端、彼の顔にはびっしりと冷や汗か吹き出た。

 

 

「うそ…だろ……………!?」

 

 

信じられないとは思うが、彼女は音もなく部屋に入りそして一夏の居る場所を当てて刀を落としたのだ。

それには彼も驚くことしかできず溜まった汗と共に這いながら逃げ出した。

 

(見つかった…!?)

 

直ぐに刀が引き抜かれ次にどこに落とされるかと周囲の気配を探りつつ外に出るため移動を始める。

ただの当てずっぽうか、それとも本当に気配を探り当てたのか。いずれにしてもこのまま床下に居続ければ一方的に攻撃されてしまう。

そうしている内に次の攻撃が振り下ろされる。

 

「ッ…!!」

 

今度は脇腹辺り。しかし外れたと分かると直ぐに刀は抜かれ、またどこから振り落とされるのかと神経を尖らせるが、今度は大体の位置をつかんだのか今度は両手でしっかりとつかみ確実に仕留めに来る。

 

「ゲッ!!」

 

顔を持ちあげまたスレスレを通った刀を回避する。

どうやら先ほどの攻撃で大体の位置を掴んでしまったようだ。

このまま真っ直ぐと進んでも出る前に仕留められるか出た瞬間にトドメを刺される。

一夏が思考を働かせようとするが、そんな暇を与えず箒は容赦なく刀を振り下ろした。

 

 

「―――――!」

 

今度こそ仕留めた。

しかしそう思えたのは僅かな時だけで、またしても外れたと気付いた彼女は一体なぜかと苛立ちを見せ始めていた。

 

「ッ―――」

 

先ほどの攻撃で位置は大体把握したしスピードも読んでいたなのにどうして外してしまったのだろうか。

疑問に思った彼女は目線をずらすと直ぐにその答えに行き当たった。

進む事が全てではない。特にこの場合ではただ進むだけではいつかやられる。だから獲物は進んだのではなく、横に避けたのだと。

 

 

 

「ッ………ッ………ッ………」

 

息を殺して呼吸を整える一夏は間一髪、刀の横で倒れていた。

一か八かの賭けを行い、刀の攻撃を横に転がって回避したのだ。単純に進むだけだと考えていた彼女なら恐らく横に避けるという考えは現状持ち合わせていないのだろうから。

お陰で賭けは一夏が勝ち、無事に回避する事が出来た。

 

 

(…クソッ…傷が開いたか…)

 

だが、一夏はその代償として前の事件で痛めた腹部の傷を開かせてしまったようで脇腹に声にならないほどの激痛が走っていた。

 

「急いで…!」

 

刀が再び抜かれ、足音が数歩だけ動いた音がする。

進まず転がって避けた事に気付いたようだ。

僅かに体をずらし腰のウエストバックを漁り、いざという時の反撃と回避の用意をして残り数メートルの床下から移動を始めた。

 

 

「――――!」

 

獲物が動いた気配に気づき箒は狙いを定める。

今度は逃がさない。

片手ではあるがさっきよりも腕に力を入れ、目は透視しているかのようにそこに居るだろう獲物を見定める。

 

 

―――一撃で仕留める。

 

 

狩人が槍で獲物を突き殺したように、彼女も渾身の力と共に刀を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――ぇ」

 

だが、またしても一撃は外れてしまい刀は深く畳の底に刺さってしまった。

確実に仕留められるという自信が外れてしまった箒は苛立った顔で歯を噛みしめ、なぜ外れるのだと当てもない怒りに身を燃やしていた。

当たらず避けつつける、当たりもしない刀の刺しにずっと「何故」と自分の中で叫び続ける。怒りで頭が沸騰し破裂しような程、ただずっと自分でもなに「誰か」に対し当たり続ける。

 

「ッ―――――」

 

もう一度。もう一度だ。今度こそ

獲物を仕留めたいという執念に駆られる箒はもう一度突き刺すために刀を抜こうとするが彼女の腕は僅かな違和感に間違いを見落とさなかった。

刀を抜こうとしているのに抜けない。さっきまで簡単に抜けていた筈のが急に岩でも持っているかのように重くなってしまった。どんなに力を入れても僅かに動くだけ。

一体下で何があったのか。

 

彼女の中でそれが苛立ちから確信になったのは一夏が反撃に転じようとしたその瞬間にだった。

 

 

 

 

 

「もらっ………!」

 

「ッ………!」

 

右手で刀身をつかみ、左手でグレネードを投げる。

床下から外へと飛び出したグレネードは先ほどと同じく中から大量の煙を吹き出した。

 

「ぁ………!」

 

視界が煙に覆われ、ふたたび身動きが取れなくなると刺さっていた刀は緩くなり簡単に引き抜かれる。しかし突然の事だったので姿勢を崩してしまった箒はそれから立て直すために僅かな時間を割いてしまう。

 

その隙に一夏は床下から一気に抜け出し彼女を止めるために室内へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2006年。シャドーもセス事件が影で行われたのから一年が経ったある日。

二人の小さな少年と少女は縁側に座り、空を見上げていた。

稽古の休憩の最中だったが、唐突に少年がこんな事を口にする。

 

 

「俺、将来みんなを守る様なおとなになるんだ」

 

「…みんな?」

 

「ああ!みんなさ!」

 

「それって…正義の味方ってこと?」

 

「ううん。正義の味方っていうより………みんなを守る人間になりたいんだ」

 

「…やはり正義の味方だ」

 

「違うって!俺が言いたいのは…なんていうかその…」

 

 

曰く。少年の言う正義の味方と少女の思う正義の味方では定義が違うのだ。

少年のいう「せいぎのみかた」は万人を助けるための救済装置ではない。そんな事は絶対にできはしないのだと諦めていたのだ。

だから、少年は言う。

 

―――俺の言う正義の味方は、自分の大切な人たちを守るための正義の味方なんだ、と。

 

 

 

途中から意味不明な説明に頭をかしげていた少女は、結局ただ一つの事だけを理解してその場を収めた。

 

つまり。私はその対象の中に入っている。

もし私になにかあれば、彼という「セイギノミカタ」が助けに来てくれるのだと。

 

 

そう。何かあれば必ず助けに来てくれると、そう信じていた。

あの日まで―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静寂が支配する。

 

破裂、発砲、破壊音が響いていた世界は終わりをつげ、夜にふさわしい静かな世界が広がっていた。

白く光る月明りが縁側から差し込み、雲の奥から白い満月が顔を見せ黒に塗りつぶされていた室内を僅かだが照らす。

 

 

 

しかし、耳をすませば小さな声が聞こえてくる。

小さく、ハッキリ、速く、荒い

疲れ切った息が奥から伝わってくる。

二人の小さな息が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――。」

 

「………。」

 

 

月明りに照らされた室内は僅かに荒らされた跡がある。

隣の部屋と隔てる戸の下には手放された麻酔銃が転がっている。マガジン導入部の近くには僅かに切られた跡があることから刀か何かで手放されたのだろう。

 

 

そして奥の部屋へと続く襖は倒され、その間には二人の青年と少女が居た。

 

至る所に傷のある青年が地面に伏せられ、その上には刀を持った和服の少女が跨っている。

傷ついた青年はなにもすることも無ければどうする事もできず、ただ少女がどうするのかという決断を待っていた。

彼の命は風前の灯。少女は片手で刀を持ち、のど元に突きつけていたのだ。

 

乱れてしまった髪の奥で少女は小さく息を吐き続ける。

赤い瞳は目の前で自分の決断を待つ青年が映り、こう語っているように思えた。

 

―――さぁ。あとはお前次第だ。どうするかはお前の勝手だ。刺すも切るも全てはその手で…

 

 

 

 

 

 

「―――――――。」

 

諦めたかのような顔。受け入れるかのような目に少女は強くかみしめる。

怒りでそうしたのではない。未だ続いていた「何故」がここで出て来たのだ。そして、それが深い悲しみとなり固まっていた口元を動かした。

 

 

 

 

 

「――――で――――んで――――――なんで――――」

 

 

「………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで………いなくなったんだ………一夏ぁ……………!」

 

 

深い悲しみが彼女の心を溶かす。

それはやがて水となり瞳の奥からあふれ出す。

悲しみの心を表す雫がゆっくりと彼女の中から零れ落ちた。

 

 

 

「ずっと………まってたのに………きっとくるって………しんじてたのに………!」

 

 

溶けた心からあふれ出す言葉はずっとしまい込んでいたもの。

清流のように流れる涙と共に彼女は吐き続けた。

 

 

 

「―――――。」

 

 

「………こたえて………なにかいって………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何か言ってよ、一夏…

 

 

 

お願い…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ごめんな。ずっと…待たせて」

 

「ッ………!」

 

「ずっと…一人にして、ごめん。けど…もう…大丈夫」

 

血の滲む傷口に滴る雫は痛みを感じはしたが、不思議と傷が癒えるように思えた。

青年は言う。彼女に対し、贖罪の言葉を。

ゆっくりと手を伸ばし頬を撫でるほど、無意識に彼は口を開き心から喜んだ顔でそう答えた。

彼は言う。一度は約束を破ってしまった自分を許してくれるか、と。

 

少女の回答は一つだけだ。

 

 

「――――ああ………!」

 

 

溢れる涙を流し続け、少女は彼の胸に顔をおとす。

ようやく戻って来た。それ嬉しさと悲しさが涙として現れた。

心の中で溜まっていた辛さも、悲しさも、恨みも、喜びも

今この瞬間に全て流れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀が音と共に落ちていく。

大声で泣き叫ぶ箒に、一夏はただ静かにその体を自分の腕で包み込む。

大丈夫。もう忘れたりはしない。今度はちゃんと守ってやるから。

声にならない言葉を言い、一夏は泣き続ける箒をしばらく抱き続けていた。





後書きという名の何か。

長くなってしまった…色々と詰め込み過ぎて長く…
ですが取りあえずこれで箒との関係は進みます。取りあえずは。
それに翌々思えばIS陣営のヒロインたちの過去をいじり過ぎてかなりぶっ飛んだものになってしまった…
ま、今更ですが。
けど安心を!多分大丈夫です!!


カズ「それよりもさっさとカズラジ。進めろい!!!」

Blaz「年内いけるかな!!!」


多分無理だったら分割したキャラ設定になる予定…
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