IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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今年最後の第五十一話です。

うん。サブタイについては知っている人は何も言わんでください。調べて知ったけど…うん。字体的にいいかなって…(汗

さて。今回はラウラのその後です。
彼女がどうなったのか。そして今後どうなるのか。
…時間が無かったのでちょっと雑だったり変な部分があると思いますがそこは…ね。

ちなみに次回は出来ればセッシーか鈴かの過去に触れる話を少々しようかなと…
で、もう少し挟んでその後に水着回でも…できるかな…


それでは今年最後のとなりましたが、第五十一話をお楽しみ下さい。


No.51 「白雨」

 

 

 

 

 

 

ラウラ・ボーデヴィッヒは死んだ。

それは戸籍上であり形式上の事ではあるが、彼女の精神もそれを受け入れていた。

狂気に惑わされ、ただ一つの目的のために後付けの復讐に怒りを燃やしたが、同時に彼女は自分の対価がどれだけの物かを知らず、結局は自分によって自分の身を滅ぼすこととなった。

 

そして彼女は再認する。

自分はただ、あの人と一緒に居たかったのだ、と。

誰かも縛られず、邪魔されず。ただ一緒に居たい。

組織にも束縛されない自由が欲しかった。

ただ一人見て欲しい人が居た。

 

その為に全てを擲った

その所為で全てを失った。

 

 

 

 

そのお陰で今の自分が居る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリの機内は静寂に満ちていた。

誰も何も話そうとはせず、誰も振り向きもしない。

ただ目の前の空を眺め、目的地にたどり着くまでを待ち続ける。

彼女も、その中で椅子に座って黙り込む。別に話すことも無ければ言うべき事もないし反論や抵抗も持たない。ただ目的の場所につくまで従うだけ。

 

それが自分のやった事の罰だと思っていた。

散々勝手をしてきた自分がそのあとも自分勝手に何かできるなどと思ってもいない。

罪を償い、過去の行いを贖う。それが『ラウラ』のやるべきこと。成すべき事だ。

 

 

(これから自分はどうなるのだろうか…そういえばあの男から聞いていなかったな。私があの決闘の後どうなるのか………が、まぁ別にそこまで考える事もないか)

 

最悪、何処かの軍なりそれに近しい組織なりに放り込まれたり、身が尽きるまで酷使されるというのが自分には性に合っている。

一夏との決闘の後、すっかりと落ち込んでしまった中で思うのはそうした自分が思う大罪人の末路というものだった。

事実上かつての自分が死んでしまったので終身刑や死刑にされることはないが、それでも自分が私怨のために自己中心的な事を行い続けたので楽にさせてくれる事などないだろう。

 

 

「………。」

 

さて、目的地は中東か、南米か。激戦区に放り込まれたり無理難題も押し付けられるはずだ。覚悟を決めよう。

小さくため息を吐いて起こるだろう事に決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――まるで地獄に行こうって顔だな」

 

操縦席の方から男の声が響く。

静かな中で放たれた第一声は壮年の男が心内を知りつつも嘲笑ったかの様で、急に機内に響いた言葉に目を丸くした。

今まで静かだったから、というのもある。しかし、まるで自分の心の中を覗いていたかのような物言いに見られたように感じたラウラは小さく声を漏らす。

 

「行先は大方、レバノンかエチオピア辺りか?それとも、大胆にホワイトハウスでも行くか」

 

陽気にジョークを言う男に、不機嫌になったラウラは眉を寄せる。

自分は真面目に考えているんだ。ふざけるのも大概にしろ。

一応今は黙っているが、場合によっては力ずくで黙らせる事も考えた彼女は手に小さな握りこぶしを作る。

立場が違うのを知らずにへらへらと笑う奴というのは今も昔も好きではない。自分の視点でしか物事を見ず、判断もしない人間。自分がそんな目に合っていないのにあったような口調で話すというのは彼女にとって許しがたい人間の一人だ。

 

「ッ…」

 

「だが、お前さんの考えは残念ながら外れだ。そんな所に放り込めば死ぬ事はおろかそれ以上の事を味わう事になるからな」

 

「………!」

 

分かったように言う言葉は段々と一つの姿を見せ始める。軍人という雰囲気ではなく、どちらかというと気さくな男性。一般人という感じだ。

しかも悪意のようなものはなく、本当に陽気に明るく接してくれているように思え、次第に彼女の中にあった小さな苛立ちはもみ消されていく。

 

「安心しろ。お前を軍のような所に送る気はない。それは向こうと彼女(・・)の意思で決まったことだからな」

 

顔の半分だけだが振り返った男は口元に髭を蓄えたロシア人だった。

もっとも、顔つきからして元軍人のようにも思えるが、話し方からはそうは思えずとても商業的なもの。言えば本音を隠しているような言い方だが、その本音も悪態を吐くようなものではない。

本当にジョークで気を和ませたかっただけなのだろう。

 

「ッ………一体―――」

 

「話通り、どこに行くかは聞いてないようだな。結構だ」

 

「えっ…」

 

パイロットの肩を叩き「頼むぞ」と声をかけると、男は席から立ちあがり後ろへと動き始めた。本来は機内で動くのは危険だが、それを平然と行うのは元兵士だからだろうか。動きなれた足運びに関心するが、それ以上に機内で堂々と動く事にラウラは驚き平気なのかと目で訴えていた。

だがそれでもずんずんと音を立てて近づく男は、やがて両端で向かい合う席に腰を下ろすと一息ついて顔を向かい合わせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――改めて。PMSCs(民間軍事警備会社)マヴェリック・セキュリティ・コンサルティングIncの社長のボリスだ」

 

ずいっと突き出された太く黒い腕に少し戸惑ったラウラは同時に彼が社長であることやPMC(・・・)であることに驚いていたが、やがて頭の中が落ち着いて来ると伸ばされた手を見つめて小さくぼやいた。

 

「…なるほど。結局はそこか」

 

「………。」

 

「まぁ…PMCでも構わんさ…私もそれぐらいしか能のない―――」

 

「―――勘違いしているな。お嬢さん」

 

直ぐに間違いの訂正を求めたボリスにラウラの目が言う。

何が間違っている。結局、私にはコレしかないんだ。

そう投げやったような顔と表情に呆れた彼は、言い訳でもするかのように話をつなぐ。

 

「ウチはPMSCsで軍事だけを請け負う奴らじゃない」

 

「同じだろ?PMSCs、民間軍事警備会社だ。組織の目的としては殆ど変わりはない」

 

「……相当やさぐれてるな。聞いてた以上だ」

 

頭を掻きラウラの様子に悩ませるボリスは、言い訳がましいのを承知で彼女に説明する。

 

 

「確かにウチはそういう奴らと同類だが、業務は選んでいる。まぁ代わりに収益が少ないのは事実だがな」

 

ボリス曰く、マヴェリック社は主に武装・動員解除、社会復帰や要人警護などを専門に行う組織で最小限の戦力のみを投入するというクリーンな会社であるらしく、現地で警備などを行う社員も他と比べればかなり少ない。いわば普通の警備会社に似たようなものらしいが、ラウラにはどうしてもそれが他と同じとしか思えなかった。

やさぐれているというのもあるが、彼女の経験がそれを強く推していたのだ。

 

「今の時代、過剰に戦力を投入するPMCが後を絶たずそれが原因で小競り合いも起こることだってある。だからウチはそうならないように最小限の戦力のみを投入し業務を行う」

 

「それでも結局は戦場に立つ」

 

「仕方のない事だ。俺たちが赴く場所はそういう所。そして、俺たちはそうする事しかできない。その場所ではな」

 

「………。」

 

「しかし、だ。ウチは社会復帰も業務の一つで、戦場以外でもやれる事はある。戦う事だけが全てじゃないからな。

それに、戦場に立つと言っても、それは自分たちが戦う意志を示した刻だけだ。最小戦力のみを送り、業務を限れば戦闘になることも少ない」

 

「それは理想だ。そうなるだろう、というな」

 

「そうかもしれん。だが実際俺たちはそうしてきた。そしてここに居る」

 

淡々と切り返すボリスにラウラは次第に追い込まれていくように思ってしまう。

敵意はないが、それでも確実に自分の周りを狭めているというのは感覚だけでも分かってしまうのだ。

 

「それに。PMCって名乗る奴らの全員が戦争と金が好きなだけじゃない。そうする事でしか生きる道もない奴だっている。過去の出来事からな」

 

「ッ……」

 

「組織の方針も十色だ。馬鹿みたいに戦争が好きな連中もいれば、金に靡く連中だってゴロゴロいる。

だがな。偶に俺たちのような組織だっているんだ。

職を失った奴らを養うためにっていう奴らや、自分たちの信念のためにこうする事で活動する奴らも。みんながみんなそうである訳じゃない」

 

兵士だって同じだ。それを任務として人を撃つのも居れば、快楽として銃爪を引き続ける奴もいる。

そして、中には敵であるにも関わらず助けたり撃たなかったりする馬鹿も居る。

そう。自分を助けた男のように。

「生きているか」と死にかけた体で助けたアイツのように。

 

「―――。」

 

「お前さんは見ていた世界が狭すぎた。当たり前といえるような世界だけを見せられ、それだけが全てと言わされてきただけだ。

だが本当の世界は広い。社会もだ」

 

今まで自分が見て来たのはそのほんの一欠けらだけでしかないとボリスは言う。

自分が見て来た事が世界の常識であり全てであったと認識していたラウラは、少しだけ彼の言葉に違和感を覚える。それが間違っているや、そんなワケはないという否定ではない。

ただ小さな興味が無意識に沸き上がっていた。

 

「だからこそ、お前さんは社会に出て学ばなくてはならない。世界の事、自分の事。今まで見えなかったことや知らなかったことをな」

 

「それ、は…」

 

「彼女からの注文は一つ「ラウラに社会を学ばせろ」だ。流石にハイスクールのような事はしないが、それ以前に学ぶべきことはたくさんある」

 

再びボリスは手を差し出す。

右も左も方向が分からず、ただ風でも流されるように彷徨っていたラウラの手を引くように、彼は笑って見せた。

 

 

「永久就職だ。他の社員と同じく働かせるが、給料は出すぞ。お前さんは今日からウチの社員だからな」

 

 

 

異様ともいえる一言。だが、ラウラは不思議と出された手と言葉に喜びを感じ、小さく笑って返す。

なるほど。これが自分の用意された贖罪への道か。と歪んでいながらも素直に思う。

未だ矛盾や疑問が残っていたが、やがてそれが進むべき道であると納得すると、その手を握った。

 

「罪人なんでな。働かせるのは骨が折れるぞ」

 

「望むところだ。人ひとりまともに扱えんようでは社長失格だからな」

 

 

奇妙な関係を結んだ二人は笑いあい、そして宣戦布告した。

互いに、簡単に折れるような奴じゃないぞ、自分は、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…という事は、面接は合格か、社長」

 

「まぁそうだな。生意気な所もあるが、まぁ働いていれば弁えも覚えるだろ」

 

二人が(一応は)手を結んだことに安心したのか、隣に座っていた黒人の男が軽い口調でボリスに訊ねる。

一応私服の人間であったので戦闘などできるのかと思っていたが、ラウラの予想は外れ社長の口から左右二人の紹介が始まった。

 

「紹介しよう。ウチの社員で作戦立案や事前調査を行うケヴィン。元はNGOでDDRをやっていた」

 

「よろしくな、嬢ちゃん」

 

「………。」

 

見るからに軽い性格をするケヴィンの前職に意外さを感じるが、見た目が筋肉質であるためそれも出来るかと思っていた。

しかし実際運動音痴だと知ったのは彼女が入ってしばらく経ってからで、またいずれの話だ。

取り合えずもラウラの彼に対する第一印象は軽い性格だが能力はあるという事だ。

 

「で、反対側に居るのは…」

 

「…オイ、コートニー?」

 

「…あ、すみません…」

 

「………抱きたい?」

 

「今すぐ」

 

「ッ!?」

 

ケヴィンの冗談に真顔で答えた白人の女性、コートニーはそれがボケなのか本心なのかと三人が疑うほどアッサリと言い、ラウラには背筋に悪寒を感じさせる。

単に子供好きであればいいのだが、どうにも自分を見る仕草に変な感じを覚えた彼女は僅かにケヴィン側の方へと腰をすり寄らせた。

 

「…同じく事前調査やデータ記録、現地コーディネートを行うコートニーだ。最近ウチに入った新人だが、仕事ができるのは確かだ」

 

「ま、偶に天然入るから気にするな…って難しいな」

 

「あ…ごめんなさい…」

 

自分の中に入っていたコートニーは直ぐに気が付くと恥ずかしげに苦笑する。

素も入っているような気もしたが、一応はこちらが彼女の本来の姿なんだろうと納得する。そうでもしなければ一瞬漏れ出た先ほどの姿が本心で最悪社内で目を合わせないか逃走するしかない。なにせ一瞬彼女の目が危険な色をしていたのだ。

 

「改めてよろしく。女の社員が居ないから助かるわ」

 

「………。」

 

「取り合えずは今紹介できる奴らはこの二人。本社に戻ればあとのメンバーを話すが…」

 

そういえば、と考えるボリスは確認のためにケヴィンに訊ねる。

どうやら他に紹介したい者も居るようだ。

 

「ケヴィン。アイツ(・・・)はどうしてる」

 

「確か…今はギリシャの方に主張じゃなかったか」

 

今、あそこは色々と騒いでるからな。と付け足すケヴィンにいつの間にか端末を操作していたコートニーが簡潔だが更に補足する。

どうやらそこで彼らの言う『アイツ』が仕事を行っているようで、激務を行っているらしい。

 

「ええ。ギリシャ政府の要人警護を三日前から。あと二日は戻らないと思います」

 

「なら、アイツとは帰ってからだな」

 

「………?」

 

「ウチの一番の稼ぎ手でな。お前さんも一度は聞いたことのある奴だよ」

 

自分事のように得意げに話すボリスに、どうやら相当気に入っているか使える人間だと見る。他の二人にも彼女が聞くとほぼそれと同一の答えが返ってくるが、ケヴィンはそれに「見たら驚くぜ」と、コートニーは「一言でいえばいい人よ」と言いどちらも好感を持つ相手だというのを話だけでも分からせる。

それだけ話が上手いのか、ユーモアがあるのか。もしくは上っ面だけの奴なのか。

いずれにしてもそれは会えばわかる事かと思い、その場では考えなかったがこの時もう少し考えたり期待を持ったりしなければまた色々な意味で裏切られる事はなかっただろうとあとで後悔する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マヴェリック社はアメリカに本社を置く組織で、ボリスの言う通り規模としてはやや小さい。一般的なPMCや警備会社に比べればひと回りほど人数は少ないが、その分装備や機材などに回す資金があるようで設備などに関しては他よりもかなり充実し、ヘリや車両、武器装備に関しても新型とまではいかないが良質なものが揃っている。

中でも通信機器周りに関しては特に金を掛けたようで、会社規模とは不釣り合いな新型のものがそろっていた。

 

 

「さて。ヘリの機内では簡潔に説明したが、ウチの業務についてもう少し説明しておこう」

 

格納庫の中を移動するラウラとボリスは端末を用い、業務だけでなく説明しきれなかった事も歩きながらだが話し始めた。

端末はボリスから支給された物で、外見や基本機能などは一般の物と大差ないがキャパシティや通信機能、セキュリティに関しては軽く凌駕する。素人のハッカーやもどきが入れば確実にカウンターを受けてサーバーを破壊する、と豪語したが、どうにも受け売り的な感じが否めないラウラはとりあえずスペックだけを受け入れ納得していた。

 

「武装・動員解除、DDRだけでなく要人警護、更には現地兵士の訓練を行う事も請け負っている。だからウチでは直接の戦闘介入は業務外で請け負わないようにしている。組織の規模からそこまでの事は無理だからな」

 

「…サイボーグはどうなんだ」

 

「それでも数に限りもあるし限界だってある。実際、サイボーグ一人で一国の軍隊を壊滅できるなんて話もないだろ」

 

「…たった一人の兵士に軍事要塞国家が滅ぼされた事はあるがな」

 

「そりゃそういう奴だからだ。残念だがウチにはそんな超人は居らんよ。居るのは全うな社員のみ」

 

格納庫から外へと向かう間、端末を操作しつつ周囲に目を配るラウラ。

誰も自分の事を気にも留めていないが、それ以上に彼女は不思議だなと思う事に疑問を感じていた。

アメリカ、ネバタ州に本社があるというのに社員の殆どがアメリカ人のようには見えなかったのだ。先ほどのケヴィンやコートニーはアメリカ人だと直ぐに分かったが、格納庫に居る社員の大半はどちらかと言えば欧州系やアフリカまじりが多く、アメリカ人は居ないに等しかった。

 

「…アメリカ人が少ないな」

 

「気が付いたか。まぁ元々は東欧や中東の連中が多いからな」

 

「………そういう事か」

 

彼の言葉に何か納得したのか、独り言のようにぼやく。

察してくれて何よりだ、と答えたボリスはどうやら彼女の考えと自分が何を言いたいのか伝わったのを理解したのか軽く笑い、天気のいい青空の下に出る。

外の天気は良く、白い雲が呑気にゆったりと飛んでいる。そんなのに耽る意味も理由もないが、ふと見上げると燦々とした光が当たり昼下がりというには少し熱くも感じた。

 

「さて。詳しい事は端末にも乗せてるし、質問があればいつでも言ってくれ」

 

「ん…」

 

特にはない。と答えたラウラにボリスは腰の辺りを漁り、刺していた銃をラウラに差し出す。武器なども全て取り上げられたので丸腰だった彼女は差し出されたものを見て私のか、と目で訊ねる。

しかしその答えよりも先に、彼はある事を告げる。

それは会社員であれば当たり前の「仕事」だった。

 

「では、さっそくだがお前さんにある仕事に当たってもらう」

 

「…入ってまだ二日の私をもう、か?」

 

「信用していないと思っているか。それもいい。が、残念ながらお前さんの位置情報はナノマシンで常時確認させてもらっているし、場合によっては簡単に身柄を抑えられる。それだけは忘れてないだろうな」

 

「無論だ。だが私をそう直ぐに引き離すような事をする、というのが分からなかっただけだ」

 

「言っただろ。ウチは人数が少ないんだ。手の空いている使える人間がいればすぐに使う。当然のことだ」

 

 

 

「…いいだろう」

 

銃を受け取ったラウラはその状態とマガジンを確認する。

SVインフィニティ・ファイヤーアームズが製作した1911のクローンモデル。巷では『レースガン』と呼ばれる物で、元は競技用拳銃だがそれを実戦用に改造したタイプだ(MGS4で登場したのと同タイプ)装填弾倉は十九発プラス一発。場所によっては跳弾も可能だ。

また彼女に合わせて作ったのかグリップも難なく握り込められ、至る所改修された跡を残していた。

 

「初仕事だからな。至って簡単だ。さっきのケヴィンがサンフランシスコである荷物を受け取っている。今回はその輸送護衛任務だ」

 

「わかった」

 

「詳細については追って端末に入れる。まずは目的地に向かってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリでの移動から陸路に変わり、本社のあるネバタから移動。西部にあるカリフォルニア州、サンフランシスコへと向かう。

同乗するスタッフは七人。内六人は武装し、残る一人は運転手として最低限だが装備している。

また再び長い移動の旅となるが、長い移動には慣れている彼女は道中文句を言う事もなければ何も話すこともせず、ただ黙って車内から見える景色を眺めていた。

暇な事であり憂鬱でもある。その理由は目的地であるサンフランシスコにあり、道中車内で更新された任務の詳細情報についてだった。

 

 

 

(…軍事力で頂点を取った国も、今やメディアと女に引きずり回される時代か)

 

軍や政府の力が形骸化し弱まった時代。今やメディアが全てと言っても過言ではなく、政治家が干渉するというのも不可能になり、弱みを握られてしまっている。

なにをどう報道するのか、というのももはや彼らの思うがまま。その為、捏造記事が報道されても地元政府が弱みを握られている所為で介入できないという事になってしまうが、同時にそれが原因でメディアと政府の間にいざこざを起こすことも多い。

市民を扇動し地元メディアに攻撃させたという事件もアメリカの中では新しく、当然犯人が政府であるのは誰の目からも明らかなことだった。しかし嘘の報道をするメディアに愛想をつかしたというのも事実で、細く脆いが硬くもあると言った中途半端なままメディアは頂点に立ち続けているのだ。

 

今回の輸送任務はそういったバックがあり、コートニーから転送された情報に彼女は頭を痛めるばかりだった。

米国が保有するISコアの輸送。

そして元評価試験用だったものを軍用に転換する。話としては事実なのだが、ネット新聞などではそこから根拠もない事に繋げられたり「きっとそうだ」と言うような過剰妄想が延々書かれた記事などもある。

 

 

(廃れたものだな。時代も)

 

何が嘘で何が事実か。もはやそれでさえも意味をなさなくなっている。

それでも現在は確かな事実のみを頭の中にしまい込み任務に臨もうと、ラウラは付くまでの間少し眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

政府やメディアがそうであれば、軍も次第に形を失い力のみとなってしまう。

かつては世界最強と言われたアメリカ軍も戦争経済やそれ以前の出来事が原因で完全に国際的な権力を失ってしまっている。

単純な軍事力で言えばビック5が滅んで以降は一時的に勢力を保持しているが、それも束の間の事だと誰もが言う。大手PMCや新技術開発を積極的に行う科学先進国。そしてISの技術が進む国に追い越され、軍事的順位も順番替えを起こす。

 

 

そして。そんな世間の波に間借りするだけの人間も増えてくる。

 

「…話は分かったな」

 

「…ああ。嫌と言う程な」

 

「全く…社長も嫌な仕事を受けたモンだ」

 

心底うんざりすると言った顔でため息をつくケヴィンは輸送貨物の格納が行われている現場を眺めぼやいていた。いくら仕事とはいえ、客の態度には嫌にもなってしまう。

 

格納されているのはISのコアで、元は試作機運用のために使われていたものだったが、軍備削減と女尊男卑主義の議員の圧力によって軍用に転換される事が決定した。

一応は新型機に搭載される予定だが、輸送する物がコアだけで代わって別のモノ(・・)を運ばされることになる。

その新型機を受領することとなるIS操縦者。しかも出来上がった女尊男卑主義の塊だ。

 

「コアだけならまだしも…我が侭なお嬢様付きとはな」

 

「…経歴は分かっているのか」

 

「ああ。つかこんな経歴なら別に他でもよくねぇかって位だぞ」

 

 

コアと運ぶ荷物の女性は上院議員の娘で所謂「サラブレッド」という才能と権力の塊だ。子供のころから馬術や学問を学び、将来は親と同じく議員になるはずだったが、本人は自分の才能に酔ってしまい様々な職業を転々としていた。最近では親のコネでハリウッドの女優もどきになっていた様子で、更にその後には居心地が悪くなったのかまた親のコネで軍に入隊。更にコネを使い自分の部隊を作り上げるなど自分勝手な事ばかりを行って来た。

これには流石の軍も異議を申し立てるが、政府内で圧力を加えられ不問に。逆に異議申し立てを行った将校を彼女が犯罪者として捕まえるという凶行を行ってしまい、更に米軍の名誉を地に落とすどころか泥を塗ったのだ。

 

 

「どこに居ようとも迷惑人に変わりはない。何時かは本人がそれに飽きてまた被害が増えるだけだ」

 

もはや権力に甘えられた女であるのに呆れたラウラはそう吐き捨てると大詰めに入っている作業風景を見つめるが、目線は作業ではなく個人に向けられていた。

我が物顔で腰に手を当てながら眺め、まるで王女であるかのような雰囲気を自ら出している一人の女性。今回のもう一つの輸送対象だ。

どうにも近寄りがたく、誰もその所為で近づかないが考えは同じで誰もが面倒毎に巻き込まれたくないと思ってるからこそ、あえて彼女から半径数メートルは離れていた。

 

「みんな避けて仕事が進まん…」

 

「いざという時は捨てる覚悟をしておけ」

 

「………お前、そのおっかない考えどこで学んだ」

 

「―――独学だ」

 

 

そろそろ輸送準備も整うと見て二人は輸送に使うトラックに乗車しようとするが、その直前になって更に彼女の凶行を目の当たりにすることになった。

 

「ッ…」

 

「ん?ああ…!?」

 

思わず上げた声はケヴィンの目の前にあった。

なんと、彼らが乗車するトラックに彼女の友人らしき女が二人、堂々と乗っていたのだ。

これには流石の彼も驚くしかなく、苛立ったラウラも我慢も限界だったのかケヴィンを連れて女性に問い詰めるため駆け寄った。

 

「あら。どこに居たのかと思えば…何をしているのさっさと輸送を始めなさい」

 

「の前に一つ。そのお二人は」

 

「私の友人。軍のね。別に問題ないでしょ?追加のお金は払うから」

 

「…護衛はお前ひとりだと聞いたが」

 

「気が変わったのよ。一人じゃ寂しいし………馬鹿な奴らがなにをするか分からないから」

 

そう言って脅しなのか堂々と銃を見せつける女性にケヴィンは頭を掻きつつラウラを見る。彼女も考えは同じだか、それを顔には出さず小さな吐息だけで堪えさせると嫌々ながらも返答した。

 

「………良いだろう。ただし、他二人は元より対象外だ。身の安全は保障せんぞ」

 

「―――貴方たちがそれを行う勇気があればね」

 

「………。」

 

自信たっぷりだなと余裕げに笑う女性を見て軽く笑い飛ばす。

そして行くぞ、と声をかけるとケヴィンに文句の一つも言う暇も与えず運転席側に入っていった。仕事だから納得しているのかと思っていたが、彼女に背を向けた瞬間ケヴィンはその表情に悪寒を走らせた。

 

 

 

 

―――精々今の内は粋がっておくがいい。そうしていられるのも今の内だ

 

この上ないような悪魔の笑みを見せる彼女の頭の中では一体何を考えているのだろう。

ただそう考えるだけでも悪魔に背中から見られているように思えたケヴィンは直ぐに考えるのをやめると同じく運転席の方から乗車した。

行先はDC。ワシントンだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で。俺たちを使った理由はなんです?」

 

『簡単な事だよ。向こうからの指示でな。身内であれば問題はないし何より彼らは私に対しての『借り』があるからな。そこを突いたら承諾してくれたよ』

 

「ですが相手は上院議員だ。動かすのも苦労したでしょ」

 

『いや。娘の事を国内外のメディアやネットに流すとチラつかせたら受け入れてくれた。どうやら、娘を溺愛しすぎて周りが見えていなかったようだからな』

 

「…貴方も人が悪い。知れば彼女はキレるでしょう」

 

『そこは自業自得だ』

 

「ま、そうでしょうね…」

 

誰かとライブ通信を行っていたボリスは、自分のモニターにチャット式のメールが入ったのに気付き「失礼」と一声かけるとそちらに集中する。

相手は現在運転中と思われるケヴィンからだ。

 

 

―――女性客二名増加。説明求む。

 

 

「………話をすればなんとやらか」

 

『輸送物かね』

 

「ええ。どうやらお供を二人連れて来たらしく、しかもご丁寧に武装しています」

 

何処で撮影したのかは定かではないが、添付された画像には防弾チョッキなどで装備を固めた女兵士がP90をちらつかせている様子が映されていた。

見栄っ張りなのか馬鹿なのかと呆れるボリスはキーを操作し簡潔だがケヴィンに納得できるようにと説明を行う。

恐らく愚痴は言うと思うが、何も言わないよりはマシだろうと。

 

 

 

 

―――向こうなりの監視の目と釘刺しだ。気にするな

 

 

「…それで。その話は本当なんですね」

 

『カリフォルニア知事に聞いてみたが確かな情報だ。目的は君たちが運ぶ荷物の強奪。

その為に彼らは、手段を選ばない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気にするな。という返答に唸るケヴィンは目線をずらして隣の席に座る者たちの機嫌と様子を窺う。

乗っている車両が大型であるためか一列に三人座れる席に男一人と女が二人。

運転席の直ぐとなりには両うでを組んで沈黙するラウラが、そしてその隣の窓側には女性が外の景色を眺めていた。

後部座席には彼女のお供というべき二人の女性兵士が座っており、ボリスに送った画像の通り一目で兵士と分かるほどの装備を身に纏っていた。

 

まるで戦時中か戦場に放り込まれたようだ、と思う彼はその中で自分と似たような服装をした人間が居るだけまだマシかと、晴れない複雑な心境を胸に長く続く道路を眺めながら運転する。

しかし既に二時間この状態が続くとなると精神的に滅入ってしまい沈黙ですら疲労となってしまう。ある意味我慢比べだったこの状況で最初に口を開いたのは案の定、女性からだった。

 

「ところで、貴方」

 

「………。」

 

「あなた、ISに乗ったことは?」

 

挑戦的というより挑発的な言い方で訊ねる女性に「下らん」と内心で一蹴するラウラ。しかし僅かに抵抗心があったためか意地の悪い言い方で切り返す。

 

「さて…どうだったかな」

 

「………。」

 

「乗ったと言えばそうなのかもしれんが…あれはそうと言える事だっただろうかな」

 

もったいぶる様な言い方に小さく舌打ちする女性。態とだと誰もが分かる言い方に苛立ち、自分の中で彼女を格下として認定し、見下したような言い方に切り替える。

 

「ああそういう事。あなた、どうせアレでしょ?IS学園…とやらに言ったけど、使えないしロクに成績も出さなかったから捨てられた。大方そういうトコでしょ?んん?」

 

「………。」

 

よくそんな妄想ができるなと呆れるラウラ。

そしてよくそんな事を堂々と言い放てるなと、胃に痛みを感じたケヴィン。

少しずつだが車内の空気は二人によって悪いものへと向かっていく。

 

「さぁな。『乗った』という事で言えば紛れもない事実だが…お前の言う『乗った』の意味と果たして同じかどうかな」

 

「…どういう意味よ」

 

「言葉通りだ。お前の言う『乗った』は「ただ乗っただけ」なのか、それとも『乗って戦場に出た』のか。そのどっちかと私は言っているが…お前の言う乗ったは確実に前者だろうな」

 

「ッ……」

 

口元を歪め不愉快そうにラウラを見始めるが、それが彼女の思うつぼ。本人は余裕げな涼しい顔で目も合わせていなかった。

自分の事を全く見ないという事が気に入らなかった女性は直ぐに怒りの沸点を上げ、それが爆発する一歩手前までとなる。自分の事を過大評価していたが故、自分に対し絶対の自信と誤解を持っていたのだ。

 

「アメリカ軍はイギリス、ドイツと並びISの技能に関しては世界トップクラスだ。ドイツは技術などで補い、イギリスとアメリカはそれぞれ特殊部隊に候補生を放り込む事で実戦経験を学ばせ、戦闘能力や技術能力だけでなく精神的にも鍛え上げる。

 

―――だがお前はどうだ?

 

戦場にロクに出ず、命が惜しいからと引きこもり自分の身の周りを固めてお姫様ごっこだ。そんな奴が国の上に立つのなら、愛国心はあるが力はない人間のほうがまだマシだ」

 

 

「なん…です………って…!」

 

 

「分からないなら言ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の力で何もできん奴が、偉そうに上から物を言うな」

 

 

 

 

 

 

刹那。

女性の腰からM9が抜かれラウラの頭に突きつけられる。

怒りが頂点に達したのだろう。汗を滲ませ、冷静さを失った顔は怒りに満ち。握られた手はしっかりと、だが小さく震えていた。

全部図星だ。何も言わず、振り向きもしないがラウラはケヴィンにそう告げているようだった。

 

「ふー………ふー………」

 

「た、隊長…!」

 

「お前たちはそこの男に突きつけなさいッ!!」

 

冷静さを失い、怒りに身を任せる彼女の姿に戸惑いつつも後部座席に座っていた二人は指示に従ってケヴィンの後頭部に銃口を突きつける。

もう既に後先を考えないのかと呆れるラウラは彼の苦労も知らずに口元を釣り上げ微笑む。

 

 

安全装置(セーフティー)、かかっているぞ」

 

それにはケヴィンも思わず目を動かす。

確かにラウラに突きつけられている銃のロックは外されておらず、それは軍人なら誰もが、ましてや軍に一度居た身から一目でわかる事だというのに彼女はそれを分からず、更には認めずに自分が銃のロックを外していると強調した。

 

「黙れッ!!私を誰だと思ってるッ!!!」

 

「………。」

 

「私は…私は貴様のようなPMC崩れの候補生もどきとは違う!!私は列記とした立派なIS操縦者。そう私は―――――!!」

 

 

 

 

 

「―――安全装置も外さない馬鹿な女だ」

 

女性の怒りが頂点に達する。ラウラへの殺意があふれ出し頭部に鮮血を咲かせようという意欲に駆られ銃爪を引こうとする。

しかし、その刹那。車両に装備されていた警戒システムの警報が鳴り響く。

 

 

「ッ!後ろからの警報…!?」

 

「………!」

 

直ぐにモニターを使い後ろの状況を確認すると、背部にあるカメラから送られてきた映像から数台の車が自分たちの車両を付けて来ており、更にその中の数台は荷台の所を改造し機関砲を搭載していた。

簡易的な装備だが、機関砲の威力は今でも十分に脅威足り得る。

 

「どこの連中だ…!?」

 

「装備がバラバラだ…奴らPMCか」

 

「ご同輩がウチに一体何の用だって…!」

 

「狙いは一つだろうな」

 

軽く笑いながら答えるラウラにまさか、と返す。

積み荷の事を知っていて彼らが襲うというのなら話は分かるし、一緒に乗せている女性を拉致するというのでは理由不十分だ。それならテロリストや誘拐犯が行う事でわざわざPMCに行わせることじゃない。

つまり、狙いはただ一つ。元々の輸送物であるISコアの強奪、とみて間違いないだろうと言う。

 

「正直、この女に利用価値はないからな」

 

「なっ…」

 

「だろうな。誘拐犯とか愉快犯ならまだわかるが、PMCが出て来たとなれば誰かに雇われた」

 

「大方依頼主はコイツの上院議員に敵対する奴らとかだろう。そして狙いはコアと、序でのコイツの排除、といったところか」

 

「随分物騒なこって…!」

 

自分の価値が論外である事に絶望する女性を背に、ラウラは反撃の用意をする。武器は腰にある『Race Gun』一丁だけだが、やり用によっては戦えないこともない。

 

「装備は…M16にM37。それとM2機関砲か」

 

「車両を撃つのならもう少し火力も欲しいだろうよ。けどRPGが無いだけマシか」

 

「隠しているだけかもしれんぞ?」

 

「アメリカのPMCはそこまで隠したがりじゃねーさ」

 

既に戦闘準備を整えている状況に戸惑うお供の二人。一方で女性の方は自分に利用価値がないと言われてしまい、放心状態だったが、やがて開き直ったかのように反論する。

 

「ば、馬鹿な事を言わないで!私を誰だと思っていの!?上院議員の娘よ!!殺せば父の意向で奴らを―――」

 

「お前の父がそれで素直にそうしてくれたら、そうだろうな」

 

「え―――」

 

 

バックが誰か分からない以上無駄な推測をするべきではない。

加えて、仮に彼女を消して父が報復に出たとしても、同じ政治家によって口封じをされたりメディアのいい餌になったりが精々の所。報道されたとしても彼女の思い描くエンドストーリーになることなど絶対にありえないと言える。

 

「自分勝手にやって来たからことの不始末とツケだ。それを知らず、認めずで済むことなど絶対に無い。

貴様はそうやって自分で自分の首を絞めているんだよ。全ての結果とツケを後回しにしてな」

 

「―――――。」

 

「死んで不始末を帳消しにしようというのもできん事だ。それはお前の子や関係を持った者たちに飛び火する。つけられた火は誰かが消さない限り、永遠に燃え続けるのだからな」

 

「そ、そんな事―――」

 

「なら、答えは現実に聞くのだな」

 

 

 

機関砲の発砲音が響き渡る。

突如鳴り響いた音に怯えた女性は自分の背に銃を向けられ、更には殺されそうになっていると今になってようやく理解する。

生かすことも、半殺しにすることも、凌辱する事もしない。ただ当たり前のように殺される。仕事だからと割り切られて撃たれるのだと。

 

「機関砲を撃ってきやがったッ!!」

 

「車両の装備は」

 

「タイヤは防弾。装甲も同じだ。けど武器なんざねーよ」

 

「当然だ。そんなのは最早装甲車だからな」

 

女性と立ち位置を変わり窓側に寄ったラウラはバックミラーから後方の様子を確認する。

後ろから一台の車がスピードを上げて前に進み、後ろには機関砲装備の車が二台とPMCの社員が武装して窓から銃を向けているのが二台。計五台が迫りより、彼らに銃を向けていた。

しかも、今近づいている車両からはショットガンのM37を構え、扉側へと突きつけていた。

 

「ッ…!」

 

片手だというのに軽々とショットガンを放ち、運転席側は散弾の雨に晒される。つけられていたドアは数発の攻撃で破壊され、付け根から剥がれていく。自分たちの守りが破壊され身を晒された事に焦り、怯えた彼女たちはそこから引き下がり、散々威張っていた女性もその姿は何処にもなく怯えきっていた。

 

「チッ…!」

 

「ひっ…」

 

「容赦ねぇな…!」

 

 

「牽制する、奴らの方に寄せろ!」

 

「お前、俺まで殺す気か!?」

 

「速度を上げて寄せればいい。コッチが頭を取れるのだからな!」

 

もう戦うしかない。不本意だが自分が生きるためにはとケヴィンは彼女の指示に従い、法定速度を超して先ほど攻撃してきた車両との間を詰める。

まさかいきなり詰めてくるとは思っていなかった彼らはタイヤに巻き込まれないようにと距離を取り、予想通り少しずつだが速度を落としていった。

 

影が後ろへと下がったのを見ると、ラウラは反撃に転じ素早く銃を車へと突きつけた。

狙いは左側にある運転席。しかもRace Gunの弾は跳弾するので当てるのは容易い。間髪を入れず二発撃ち込み、まさか跳弾するとは思っていなかった運転手は最期にその銃が競技用であった事に驚きながら絶命した。

 

「今だ!一気に引き離せ!」

 

「言われずともッ!」

 

絶命した運転手に驚くも直ぐに助手席の社員が運転を替わり体勢を立て直す。

しかし助手席からの運転なので速度が落ちる事は否めず、先陣を切っていた車は後ろへと下がっていった。

その隙にラウラたちは速度を上げてPMCの車両群から距離を離す。

 

「社長に連絡しろ!ヘリでも呼んでもらわねーとキツイぞ!!」

 

「それしかないか…!」

 

陸戦からの援軍よりもヘリの方が制空権を取れることから提案し、考える間もなくラウラは肯定する。

 

「ッ…!」

 

その間に再び攻撃が始まり、今度は機関砲と小銃を混ぜた一斉攻撃が行われ車両は一方的なダメージを受ける。

銃弾が車両の装甲に穴をあける音に怯える女性は中心部で縮こまってしまい、抵抗する事すらもしなかった。それには後ろで見ていた二人もあきれ果て、小さな舌打ちで吐き捨てる。あんな奴が私たちの上に立っていたのだと。

 

「くそっ…!」

 

「撃てッ!」

 

だが、だからと言って直ぐに反撃に転じてしまった彼女たちに思わずラウラは制止を呼びかける。銃弾の嵐の中、首を出すという事は―――

 

「な、待て―――」

 

次の瞬間、助手席側から反撃しようとしていた女兵士は首を出した瞬間に脳天を撃たれてしまう。撃たれた彼女の体はそのまま力を失い、風に飛ばされて外へと放り出されていった。

 

「オイ、後ろの奴を―――」

 

 

「がはっ!!」

 

ケヴィンに制止を呼びかけるも既に遅く、彼もバックミラーで顔を撃たれた音と共に絶命した兵士の姿を目に焼き付ける。窓の上に上半身だけを振ら下げた体は、そのまま車によって生じた風に拭かれ後ろへと靡いていた。

 

「素人が…!」

 

「どうする…社長との連絡は…?!」

 

「…無理だ」

 

短い間を置いて答えたラウラに何故、と問うケヴィン。

ラウラの持つ端末には恐らく指令車両のような車から出される妨害電波の影響で狭い範囲だが連絡できないようになっていたのだ。

 

「範囲は短いが…どうやら此方の通信を妨害できるほどの物らしい」

 

「その端末、妨害電波をブロックできるだろ。復旧は」

 

「二十分」

 

「マジかよ…」

 

復旧は行うが、それまでに車両がやられてしまえばアウトだ。

今でも続いている攻撃の中でタイミングを見て反撃しているが、ラウラ一人とハンドガン一丁ではカバーしきれない。

相手の車両は四台。そして先ほど運転手を倒した車両も段々とだが追いついて来ている。

もし五台全てがまたそろえば今度こそ確実にアウト。確実に自分たちの車両が落とされる。

 

「他に武器は」

 

「確か、後部座席の中にあるって聞いたが…」

 

彼の言葉を信じ後部座席へと滑り込むと助手席側の座席の方から手あたり次第に探り始める。背もたれの後ろを触り、下へと手を滑らせると座席の下に本来ある筈のないレバーを見つけ、一体何なのかと思い引き上げてみる。

すると、背もたれと席のクッションがドアのように開かれ、中から一丁のブルパップ式のライフルとマガジンのセットが姿を見せた。

 

「ステアーAUGか。マガジンは四つ…元のを入れて五つか」

 

「なんで車を改造するかね…」

 

「こういう時のためだろ」

 

ボルトを引き弾を運ぶと弾幕の切れ目を狙って銃を持つ腕だけを出す。

一気に銃爪を引くと軽い発砲音と共に弾が吐き出され後ろで待ち伏せていた筈の車に反撃を食らわせる。反撃がハンドガンからライフルに変わったのに驚くが、それでも一人だけというのには変わりないので余裕の状態を崩さなかった。

 

「ッ…やはり一人では…!」

 

このままではキツイか。流石に一人で多人数を正面から相手取るのには無理を感じたラウラだが、後はこうするしか抵抗の方法はない。

二十分間堪えて通信が回復。その後援軍を呼ぶという手はあるにはあるが、それは攻撃が始まって差ほど時間が経っていないほど有効率や成功率は高い。しかし戦闘始まって既に三十分は経過し、復旧にはあと十分近くは必要となる。

その十分間、絶対に守り切れるという自信は残念ながら今の彼女にはない。

経験と状況からこの手の状態でまともに戦って勝てる勝算などないと脳内ではじき出されてしまっているのだ。

 

「ッ…そろそろ防弾タイヤも限界だ…!」

 

「チッ…!」

 

 

そろそろ覚悟を決めるか。マガジンを取り出し、新しいのと交換する。

あとはマガジン四つとハンドガンが三回分。それだけで相手にしろというのは無理にもほどがある。しかしだからと言って死んだ女兵士たちの武器を使おうとしても当然ながらID銃だろう。管理された武器を無許可で使う事はできない。実際使えないただの塊りだ。

 

「…そろそろ腹を決める」

 

「マジかよ…」

 

「どの道、頭を潰さないとどうにもならん。なら、いっそ―――」

 

 

死を覚悟していくのが当然の事。今更怯える必要もない。

そんな事をしているのはそんな覚悟がない奴だけ。自分はそんな奴と同類は御免だ。

 

弾幕が五月蠅く響く中、ラウラは深呼吸をして息を整え、気持ちを落ち着かせる。

あの中を隊長と妨害電波の根源、そして可能であれば機関砲を撃つ社員も倒すという無理なやり方。失敗でなくても運が悪ければ当たって死ぬ。

そんな事を無意識に自分に課せた彼女はステアーを構える。

目的地や町まではまだ距離もある。人が来ることも先ずない。

 

だから。あとの事も考えずに―――

 

 

 

 

 

 

(…短い人生だ)

 

覚悟を決めたラウラは銃と共に弾幕の中に飛び出す―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その覚悟が、もしかしたら少し。まだ早かったのではないかと思わせる事が自分たちの前に立っていたのに気づかずに―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コアもないのに機体だけはできたのか」

 

『ああ。と言っても新型パーツを寄せ集めただけの奴だがな。それでも性能で言えば第三世代に肩を並べるがそれ以上に仕上がった』

 

「それは別に構わんが…いいのか?」

 

『何がだね』

 

「人工筋繊維と言い、今回といい…見返りを求めるアンタがタダでこうするのも気持ち悪く思えてな」

 

『…まぁ前者は気にするな。キッチリと対価は受け取っているし、君たちの方には少しデータを取ってもらおうとね。それに新型と言っても所詮横流し品だ』

 

「………で、機体名は決まったのか?」

 

 

『ああ。名は「セタンタ」だ』

 

「セタンタ?ケルト神話の英雄の幼名じゃないか」

 

『まぁな。いずれ化けるかもしれんし…そういう奴に成り得るからな』

 

 

「…二つの雷、か」

 

そういう事だよ。と笑って返す科学者の顔に皮肉さを感じたボリスは、そのせめてもの反撃とばかりに軽く笑い飛ばす。

ある意味のジョークか、それとも本心で願っていたことなのか。そんな事を思う彼は、数日後には帰ってくるはずだった友人であり社員の事を思い浮かべながら彼の言った言葉をつぶやいていた。

 

 

 




後書きという名の何か。

…後半から雑になりましたすみません…
さて兎にも角にもこれで今年の更新は終了。来年も執筆しますが、ちょっとまた短編を書くかも…

で、IS×MGSについては前書きで話した通り。
また以前のテープについては完全別物として投稿しようかなと考えています。
キャラの設定につきましても新年に順次投稿する予定です…が…
何分量があるので分割します…ハイ…

そしてAct.3ですがこちらも以前の通り。その為Act.2以上に長いストーリーになってしまうと思います…というか成ります絶対。
タッグマッチして臨海して学園祭して…殺戮のユートピアして上院議員して…


カズ「…うん。それまだ先だよな?」

二年後です。



という訳で…皆さんよいお年を…!


カズ「セイッ…ピィィィィィィィ」

千冬「せいっ」

カズ「ゲイ・ボルグッ!?」

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