IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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大変長らくお待たせしました。
久しぶりのIS×MGSの更新です。

といっても…まぁ少しつまんない話には違わないのですが…(汗
尚、この後はまた少しオリジナルストーリーを混ぜていく予定です。


それでは、第五十四話をお楽しみ下さい


No.54 「転換」

 

 

 

 

 

 

 

戦争が変わり果てた頃。そして、終わりを告げてから間もない時。

 

 

 

 

 

 

 

燦々と照り付ける日差しがあった。

いつもと変わらない様な、白い雲が泳いでいた。

 

雲に隠れた太陽によって影になった大地の下で今日も人は銃を撃つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこか近くの戦線で銃撃の音が聞こえてくる。

響くのは同じみのAK-47とSCAR。時折、狙撃や小銃といったのも混ざっている。

 

 

銃声、悲鳴、絶叫、勝どき、駆動音、飛行音、爆発、崩壊

 

 

様々な音が響き、声が通り、世界は彩られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「向こうで仲間がやられている。援護に向かうぞ!」

 

「おうっ」

 

隊長らしき男が数人の民兵と共にその場から走り去っていく。

他の戦線が苦戦しているらしく、無線機からは救援の声が悲鳴のように聞こえて来た。

どうやら押されている。仲間の危機感に汗を滲ませた男はその場に居た全員を引き連れて他の同志たちの救援へと向かって行った。

 

 

 

さしずめ話の内容はそういった感じだろう。

廃屋の中で息をひそめていた青年は、小さくだが聞こえた話し声に推測する。

反政府勢力と政府軍とPMCの連合部隊。

勢力は五分五分なのであとは練度の問題か、と他人の事を勝手にだが考え次に自分だったらどうするかと考える。

そこで生じた穴が、自分の抜け道となるのだから。

 

すると、右手首に付けた腕輪のようなものが骨を振動させ、無線機にコールが入ったと教える。

 

 

『戦況はどう?』

 

「今、近くの反政府軍が勝って他の戦線の援護に行った。ここ等はもう奴らの勢力圏だろう」

 

『分かった。政府軍とPMCの部隊はそこから西に中心になって守りを固めている。多分、散らばった兵士たちをかぎ集めて反撃に出ようとしていると思う』

 

「みたいだな。さっきからスライダーとかが飛んでなくて気味が悪い」

 

『直ぐに移動した方がよさそうだ。そこから北に向かってくれ。そこにも無いと分かれば、もう長居は無用だ』

 

 

了解ッ、と返事をすると一夏はM4の弾倉を確認して、そこから移動を始めた。

周囲が瓦礫などで埋まっているとはいえ、僅かに吹き抜けた穴や壊されたステンドグラスの跡から光が差し込み、人と同じぐらいの高さにある窓も殆どが壊れている。

そこから除かれれば自分がその中に居るとばれてしまう。

 

ならばそんな場所に長いする必要はない。無線機を切った一夏は、オタコンが指示した場所に向かい足音を消して歩き始めた。

 

 

 

 

今回も彼女の足跡を探しての潜入だったが、結局あったのは反政府ゲリラが使用していた洞穴だけ。完全な無駄足で、しかも一度見つかってしまった一夏は反政府ゲリラに攻撃を受けてしまい、左腕に銃弾を掠らせていた。他にも足や頬にも切られたり掠ったりした跡があるが、それはいつもの事として彼が自分勝手に頭の中で処理した。

 

「…今日はまだマシな方、か」

 

何時もなら何処かに穴をあけられるが、今回は運が良かったのか見つかっても銃弾が体内に打ち込まれる事はなく、全て掠った程度で済んでいた。

本当に運がいいのか、それとも相手が下手なのか。

いずれにせよ、今回はまだ運がいい方だと安堵かため息か分からない息を小さくついた。

 

 

 

廃屋を出ると日照りのように照らす太陽の下に姿を曝け出す。

まるで中世の暗殺者であるかのような外套を纏う彼は、腰だめにM4を持ち後ろにはナイフとハンドガンのFive-seveNと麻酔銃のmk.2はその下に置かれており、バックパックなども含めれば風格は十分にその姿だ。

彼の片耳には無線機のイヤホンが固定され、耳元で触れるだけで直ぐに応答できるのような仕組みになっている。

 

 

「さてと…」

 

周囲をぐるりと確認し誰か居ないか、何処かに気配がしないかと確認した一夏は直ぐに身を屈めて移動を始める。敵や人が居ないからと言って安堵してはいけない。何時、どこからどうやって敵とエンカウントするかもしれないのだ。細心の注意を払い警戒を怠らないようにする。スネークとの修行で彼に口ずっばく言われた事だ。

頭で分かっていても体が先に動いたりする一夏はそれに苦戦し、いつも失敗しては彼にため息をつかされていた。

 

外に出ると、より一層銃声が耳に響くようになり今まで聞こえなかった声なども明確になっていく。幾つもの銃声に加え、ヘリの駆動音やそこから放たれたと思われるミサイルの音。聞きなれた音に不思議と安心感を持った彼は、それに飲み込まれずに目標である北の合流地点へと向かう。

 

 

足音を消し、気配を消し、影の中を進む一夏は物陰に隠れながら時折後ろを警戒して進んでいく。

目的を果たし、長いは無用になったとはいえそれで焦ってしまえばご破算だ。

慎重に進み、戦地の銃撃を掻い潜ると適当に建物の中に入って思い出したかのように無線機で連絡する。

 

「…つい話の流れで聞きそびれてたけど、回収はどうするんだ?」

 

『西側は一応、政府軍管轄のヘリパットがあるからそこに。いつも通りカサッカで迎えに行くから』

 

「大丈夫なのか?いくら政府管轄の所って言っても…」

 

『ああ。だから、来たら直ぐに逃げるに限る』

 

「………なるほど」

 

 

どうやら事態は思っていたよりも深刻らしい。目線をそらして言ったオタコンの表情に察した一夏は寄り道をせずに真っ直ぐ帰ろう、とまるで子どものような考えで近くにあった穴の中に入っていった。

 

 

 

反政府軍と政府軍・PMCの両軍は市街地の西を中心に交戦を続けており、一度は優勢に思えた反政府軍も集結した戦力には勝てず、後退を始めていた。

旧式の戦車やRPGなどを取りそろえているとはいえ、相手は最新式の武器を湯水のように使う組織の軍隊だ。性能だけでなく、士気や練度、技術も関係し、次第にだが反政府軍の勢いは弱まり、ふたたび政府軍の攻勢へと転じていった。

 

 

 

 

そんな事も知らず、北の合流ポイントへと向かう一夏は再び廃墟の中を移動していた。

腰だめに構えたM4ではなく、腰に入れていたFive-seveNを構え、狭い一本道をゆっくりと進んでいく。

僅かだが漏れる光を頼りに進んでいく彼は、うっかり足を滑らせないかと心配に思いながらも、周囲に敏感になってじりじりと先に進んでいく。

 

 

 

「―――。」

 

 

ふと。足を止めた一夏は耳から不審な違和感を感じ、それに従って耳を澄ませる。

さっきとは違い、今までの空気の中に何かが混ざっている。その混ざっている何かまでは分からないが違和感の現況は意外と直ぐ近くに感じられた。

 

「………。」

 

腰に下げていたM4に手をかけ、ふたたび進んでいく。

もう直ぐ一本道が終わるというのに、それが終わってほしくないという恐怖感となにがあるのかという好奇心の板挟みに自分事ながら頭を悩ませるが、今は原因を調べて直ぐに逃げるべきだと判断した一夏は、角に着くと一旦呼吸を落ち着かせ手に力を入れ直す。

そして。一気にその奥へと足を踏み入れた。

 

 

 

「ああ…」

 

「ッ…軍人か…?」

 

片腕をなくし、全身から血を流している男は防弾チョッキやSCARを持っていることからPMCかと思っていたが、ドックタグがあるのを見て政府軍の兵士ではないかと思い近づいていく。

虫の息の兵士は焦点の合っていない目で一夏を見つめ、敵であると認識したのか腰のサブアームを抜こうとするが、それだけの体力が残っていないのか動かすのもやっとだった。

 

 

「…酷い傷跡だな…誰にやられた?」

 

「あ…ああ…」

 

「…?」

 

傷跡に目を落とし、一体誰にやられたのかと思ってみると傷跡は全て弾痕ではなく切り傷だけで、どれも的確な攻撃ばかりだった。

 

「この切り口…マチェットじゃないな…」

 

この場で見るには異様な傷跡に呟く一夏は、直ぐ奥で銃の発砲音が響いたので振り向き、そこから聞こえる叫びや銃声などに寒気を感じた。

叫びをあげる兵士たちよりも強く、そして冷たい殺気。いや、狂気だ。殺意というには生暖かい感覚があり、そこにはまだつけ入る隙というのがある。

 

「この先か」

 

M4とFive-seveNのロックを外し再び臨戦態勢に入る一夏は倒れた兵士をそのままにして他の兵士たちの叫びが聞こえる奥地へと足を踏み入れる。

立ち上がって行こうとした瞬間、死にかけの兵士が「行くな」と言っているかのように激しく制止させたが、その努力も無しく一夏は奥地へと進んでいき、彼が自分と同じようになるだろうと思いながら静かに目を閉じた。

 

 

 

そう。初めから、彼の助言か何かを素直に聞けばよかった。

なのに一夏は「その先を知りたい」という欲求に勝つことができず誰の制止も聞かぬままに足を踏み入れてしまった。

 

その先にある答えに、恐怖と後悔を持った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四肢を切り落とされ、叫びをあげる男たち。

首を切られ、絶命する者たち。

必死に抵抗しようと銃を撃つが当たらず、当たってもまるで痛みが無いかのようにそれでも動く相手に恐怖する。

そしてその最後の抵抗も空しく、彼らは命を落としていく。

 

 

それがそこにうつる光景

 

それを楽しむものが望んだ世界

 

斬撃による殺戮を楽しむ姿

 

 

 

それは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…箒?」

 

 

 

 

振り返った笑顔は、血にあふれかえっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ―――――――!!!」

 

 

刹那、全身に感じた恐怖に一夏は全ての筋肉を使って飛び起きる。

自分の身に迫りくるはずの恐怖に逃げるように。

だが恐怖は既に夢の中でどこか遠くに行ってしまったかのように現実味と共に薄れていく。次第に起こした体と周りの風景に彼はようやっと、さっきまでの出来事全てが夢だったと気づく。

 

 

「―――――夢」

 

しかしあまりに現実味を帯び、しかもリアルな感覚だったのでしばらくはあれが夢であると自分でも自覚できず、それが以前の記憶であるかのように思えてしまう。

あれが本当に夢だったのか、と。本当にそうであったかのように自問自答を繰り返してしまう。

 

だがそれでも、先ほどの出来事が全て夢である事に変わりはない。

その証拠に、彼の体は五体満足で頬には傷跡も残っていない。手持ちの銃も麻酔銃のM9だけだ。

 

「―――いやな夢だ」

 

頭を抱える一夏はそう言って自分の周りの様子を見回し、改めて状態を確認する。

 

どうやら自分はあの後(・・・)疲れて眠ってしまっていたらしい。

 

その証拠として、彼の隣には夢の参加者が居た。

 

 

 

 

 

「ッ―――」

 

急に思い出した事に寒気を感じ、一夏は僅かだが隣で眠っている少女から身を退く。

夢と現実は同一ではないのに、まるで意識までも彼女がそれに納得しているようで自分の身の安全を確保するように距離を取るが、途中で何かに止められて後ずさることができなくなる。

 

「手…」

 

次第に戻ってくる感覚とぬくもりに目を落とすと、自分の左手をしっかりと握る柔肌の手があった。無理に振り払おうとしてもその手は硬く離そうとはしない。手が岩か何かかのように硬く握られていた事に驚くが、段々と落ち着きができた彼は息を整えて少女の顔を窺う。

 

安らかに眠っている顔には涙の跡が残っており表情も少し悲しげだ。

しかしそれでも手は力強く、本当に眠っているのかと思うほど硬く握られていた。

 

 

「…散々…泣かせたからな」

 

無理もないと諦めた一夏は再び寝転がり、再び寝に入る。

恐らくは彼女が目を覚ますまで手が離れることはないだろう。ならば無理に離すよりはと諦める他ない。

 

今夜は帰れそうにないと、家に連絡し静かに目を閉じた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って。まだ寝ちゃ駄目よ。一夏くん」

 

「―――そろそろまともに寝かせてください。今何時だと思ってるんですか」

 

「男と女が夜の営みをする時間」

 

「そういう時間なんで直ぐに寝かせてください」

 

 

反対側から顔を覗き込む楯無に呼び起こされ目を開ける。

そろそろ零時を軽く回ったので眠りにつきたい一夏だが、最後にと言葉を付け足した彼女から一枚の手紙を手渡される。

 

「急遽刷られた今後の予定表。一応、校舎とかの復旧は予定通り完了するらしいから。あと、その他のイベントもろもろとかも」

 

「…行事についてはびっしり詰められていたんで分かりますが…妙に増えてません?」

 

「ええ。一年はどうやら今年は臨海とマッチ戦の前に見学学習に行くらしいわね」

 

「―――場所が…横須賀?」

 

「どうやら、入る前に空気だけでもって感じらしいわ」

 

「………。」

 

新しく記載された横須賀への見学。

この途中から割り込まれた予定に何かあるのかと思っていたが、直ぐに察しづいて言葉を返す。

 

 

「…今回の事件」

 

「当たり。お題目はテロ事件での友好国としての好印象獲得。けど、実際は査察でしょうね。あとIS列強国への圧力と日本政府への釘刺しの確認」

 

「でもって、俺の誘拐?」

 

「CIAとか?まぁあり得る話だけど…ね」

 

一応楯無たちが防いではくれるのだろう。ここで一夏が誘拐でもされてしまえば、後は影で動く彼女の思うがまま。世界はどうとでもなってしまう。

そんな事をいざ知らない世界各国は未だ癒えぬ傷を抉りながら覇権争いを続けているのだ。

 

「それか、箒ちゃんの誘拐とか?こっちこそ絶対にしないとは思うけど。政府とかにしちゃ上物の餌よねぇ」

 

「CIAが見たらちゃぶ台ひっくり返すでしょうけど」

 

「…ともあれ。ここからはより一層面倒事が絡んでくるはずだから。そういう時は迷わずヘルプしなさい」

 

「そうさせてもらいます」

 

それを最後に再び床に就いた一夏は目を閉じ、手を離さない箒の方へと顔を向ける。

そこへ割り込みたい楯無だが、今入れば確実に蹴りか何かを貰いそうなので渋々と諦めた顔で彼へと手を伸ばすが、一瞬気配で勘付かれたかのように思えたので本当に諦めて手を引っ込めた。

名残惜しそうな顔で見つめるが、そろそろ虚が何か言って来そうな気がしたので大人しく奥の部屋へと戻っていった。

 

 

恐らく。ここまでが全て演技だったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――さて。ここで堂々二人を誘拐しますか?」

 

刹那。静かに襖を閉じた楯無は小声でぽつりと呟く。

先ほどまでの名残惜しそうにしていた顔は何処へいったのか、一変して余裕気な顔になり繋がっている他の部屋の方へと目を動かす。

 

「別にいいんですよ。貴方がそうしたいのならそうすれば。ただし、私たちは当然追いかけますし、世界も貴方と彼らを手中に収めるために動く。

下手をすれば、立場は今まで以上に悪化…いえ、最悪のものになるでしょうね」

 

 

強く歯をかみしめる音に、微笑む楯無はそのまま言葉を紡ぐ。

 

 

「家族を、たった一人の肉親を思う事に異議を唱える気はありません。ですが、貴方は今の自分の立場を分かっていない。ただ自分の私情で動いた結果、どうなってしまったのかも見もしない。

貴方は彼以上に現実から目を背けた臆病者ですよ、ブリュンヒルデ。

 

―――いえ。織斑千冬さん」

 

 

唇が噛み切れそうなるほどの激怒を抑え、千冬は全身で抑制する。

分かったフリをして言うのはどっちだと。何もかもを知っているかのように話す楯無の言葉に怒りを沸き上がらせ、今にも殺意で殺してしまいそうな力を自分の腕に当てる。

そして。怒りを抑えた千冬は、静かに低い声で反した。

 

「餓鬼が―――」

 

「………。」

 

「私だって自分が何をしたのか分かっている。私があの日、ISに乗った事によって世界が戦争に転げ落ちていったのも。その所為でアイツらと言った戦争の被害者が居るという事を…

それを知らない、分かっていないとは言わせん。私だってその罪を意識している………!!!」

 

「だから貴方は、せめて戦死者だけでも少なくしようと。女尊男卑で浮かれる彼女たちに真実を知ってもらおうとして教師になった?」

 

「そうだだから―――」

 

「嘘が下手ですね」

 

軽く笑って一蹴された事に、千冬は心のどこかで何かが砕かれたように感じた。

今まで自分が必死に建てて守って来た壁が。あれから必死に立ち直り、その為に作った結晶が、楯無のたった一言で無残にも砕かれてしまった。

 

 

「貴方が教師になったのは別にそんな理由でも、国がどうのとかじゃない。

単に貴方は誰かに教える事と、子どもが好きなだけなんですよ」

 

「ッ―――」

 

「私は貴方の事を知っている。それは紛れもない事実。だから貴方が何を夢見、何を志したのかも知っている。彼からも聞いているんですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――あの人、本当は単に子ども好きなんだよ。昔っから。

 

―――俺たちがまだチビだったころ…

   一緒に近所の奴らと遊んでたりもしたし叱られたりもした。

   あの時のあの人の顔は、俺たち以上に楽しんでた

 

 

 

 

「単に子供好きという理由もあるけれども、その間に様々な理由ができてしまい、結果ここに入る時に学園長に言ったのは虚像の理由。そして罪滅ぼし。

大方、あの発情兎ちゃん(ラウラ)もその辺が理由ですよね?」

 

「それは…」

 

「そして。何より貴方は彼と箒ちゃんを誰よりも心配していた。それは今も変わらない。

片や戦争に足を踏み入れた姿で戻って来て、もう一人は自衛とはいえ暴虐を楽しむ人格が芽生えてしまった。どちらも自分の所為と考えた貴方は、この際二人を連れだしてしまおうと踏み切ろうとしている。

分かっていた事ですが、一夏くん並みにスカスカな理由ですね。彼も大概ですけど」

 

「貴様ッ…」

 

 

 

 

 

けどね。と話は釘を打たれる。

まだ彼女の話は終わっていない。

 

「ぶっちゃけ言えば貴方は一人でしょい込み過ぎです。別に戦争経済に突入する原因があの「白騎士事件」で成ってしまったワケではないですから」

 

「どういう事だ」

 

「…こういうのもアレですが。戦争経済に世界が向かって行くのは必然だったんですよ」

 

「なっ―――」

 

「「白騎士事件」はそれを早めただけ。あれは分岐点じゃなくて加速装置だった。ISという都合のいい兵器が登場した事によって、戦争への意欲が掻き立てられて政治家や軍人がそれを早める切っ掛けにしかならなかったんです。

だから別にISが出てこなくても、ゆるやかに戦争経済という時代に向かってはいたんですよ」

 

「………ッ」

 

「「ビッグ・シェル占拠事件」と「タンカー沈没事件」。そしてそこから更に二年前の「核ジャック(シャドーモセス島)事件」。

このいずれにも関与していた米軍。それがどういう意味かは理解していますよね?」

 

元をたどって行けば確かに全て米軍、米国へと至る。それは楯無が話した三つの事件だけでなくそれよりも前に起こった二つの事件も、米国が関与して更には米国こそひとつの原因とも言えた。

シャドーモセス事件では陸軍の新型メタルギア開発によって。

タンカー沈没事件は海兵隊の独断の新型の亜種メタルギア開発計画で。

そしてビッグ・シェル占拠事件では海軍が主導でビッグ・シェルとその下で建造されていた。

 

「独立以来、徐々にだけど力を強めていき、やがては世界最強とまで言われた軍事国家。けど、それは今や『かつて』というべき話。腐敗し、増大した軍部によって進められた計画はその悉くを持って失敗。

露呈された実体に、やがては国民だけでなく世界でさえも見放していく。

あの二つが失敗した時点で…いえ、モセス事件が発覚した時から緩やかにですけど戦争経済への道は動き始めていたんですよ」

 

 

全ては連鎖的反応だ。

モセス事件でメタルギアが開発され、そのデータが何等かの形で流出された。しかしそれでなくても「開発された」という事実が残れば、誰だってその痕跡を探し出し僅かな情報でも活用して自分たちのものにするはずだ。

陸軍が開発したメタルギアREX。そしてそのデータなどを元に開発されたRAY。

彼らは絶対的自信をもって危険な足場に踏み入れたが、それを失敗し「世界最強」という地位から引きずり降ろされた。

その後、女尊男卑の根源たるISがその椅子に座ったという人間もいるが、実際はたった一人の男がその椅子に座り続けていたのだ。

 

 

「米軍という一つの抑止力が消えたあの時。世界はひとつの転換期を迎えた。

米国、米軍に変わる新たな抑止力の模索。そしてそれまでのひと時の無法の自由。

今は辛うじて国連がその抑止力として代わりを担ってますが、それもいつまで続くのやら…」

 

 

ゆらりゆらり、とまるで力のない人形のように。されども人間のように動きながら近づいて来る楯無は、やがて千冬の目の前に立つと額に汗を滲ませていた彼女の表情を見て不適に笑う。

 

 

 

 

 

「もしかして。貴方は自分が歴史を刻んだ人間とでも錯覚していたんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那。乾いた音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

「―――――――。」

 

 

「はー…はー…はー…」

 

息を荒げ、背筋を曲げる千冬はそれでも必死に自分に言い訳し、自論を言い聞かせる。

目の前には直後の出来事のまま止まった楯無の姿があり、彼女の顔は横に向けられ頬は平手によって僅かに赤くなっていた。

 

 

「―――――私は…」

 

「………。」

 

「私は、そんな事のために…あの時「白騎士」に乗ったんじゃない…!!」

 

 

 

はじめは確かに軽はずみだった。彼女のいつもの事を付き合うために乗り始めた機体。

楽しかったと言えば事実だ。当然疑問だって持っていた。

 

だから自分でも少しずつ恐怖を持ってしまった。

 

行動。言動。考え。

少しずつだが見え始めた歪みに、自分でさえも恐怖していた。

 

 

 

だが。もう既に遅かった。

まるで子どもの遊びであるかのように世界を破滅される事を平然と行った彼女に、自分も関わってしまったのだ。

一歩でも間違えれば、何千何万という人間が死んだだろう。

それでも彼女にその意識はない。仮に人が死ぬと意識しても、その考えが違っていたのだ。

 

 

 

―――別にいいんじゃない? たかが(・・・)数億人死んでも。人類何十億も居るんだし。

 

 

自分は彼女の共犯者となってしまった。

今では英雄だなんだと持て囃されているが、結局はそれに変わりはない。

 

 

 

 

「―――私は止めたかった…けどもう止められなかった…

アイツはそれが当たり前であるかのように世界を壊すスイッチを押した。だから止めるには私しかできなかった…!!」

 

「………。」

 

「切欠は私たちだ…私たちが始めた事だ。

ISを作り、それに乗り、ミサイルを壊した。世界の均衡を破壊した。

これで罪を自覚するなという方がおかしい…!!」

 

 

彼らを巻き込んだのも、元は自分の罪だ。

その所為で彼女の妹は苦しい生活を強いられ、自分の弟は戦争によって歪んだ。

どれも辿って行けば自分に行きつき、そして罪になる。

いくら彼女の言葉が正しくとも、事実自分たちが加速装置となってよく多くの人を犠牲にしてしまったのも事実だ。

それを意識していない訳がない。

 

それが息を荒げながらも言い放った千冬の言葉だった。

 

 

 

 

「―――何が世界最強だ。何がブリュンヒルデだ。

結局はその根源たる者の看板。犠牲の上に成り立った名前だ…!!

だから―――――」

 

 

「だからどうだって言うんですか?」

 

 

 

 

 

それでも彼女は同情はしない。揺らぎもしない。

唯々。それが「そうである」という事だけを受け入れ、ふたたび口を開く。

逃げるように言い放った彼女を、もう一度引き戻すように。

 

 

「私は別にそんな話、どうだっていいんですよ。世界がどうのも犠牲がどうのじゃない。

 

 

 

 

織斑千冬。貴方が罪を見ているか否かの問題なんですよ」

 

 

 

 

 

「――――――。」

 

 

 

「貴方はその称号がその犠牲の上で成り立っているというのを理解している。

けど、貴方はそれによってできてしまった事実を見ようともしない。ただ見たとしても背いてばかり。

貴方に決定的に足りないのは「罪を認識しているか」です」

 

 

 

 

 

 

 

水に対してどう触れるか。それと同じだ。

普通の人間が、自分のやった事に関して「認識」し、「理解」し、「確認」することで初めてそれを自覚していると言える。

たとえ二本の指だけであっても、指はしっかりと水面につけられその深淵へと潜って行こうとしているのだから。

 

だが彼女の場合、それを見て理解しているのであっても認識していない。

普通の人間が行った事を直視しているのに対し、織斑千冬はそれを直視せず目をそらしている状態なのだ。

分かっていても背を向けている。もしくは向き合っているが、目だけを逸らしている。

分かっているからこそ、その目を逸らしている。

 

水の奥深くに何があるか知っているからこそ

彼女は表面を撫でるだけで、水の奥深くに手を付けることを拒んでいる。

 

 

 

 

 

「軍に居たから分かっている。実際に乗ったから知っている。けどそれはあくまで「理解している」というだけ。現実直視しているわけではない」

 

「―――――。」

 

「向き合っていても肝心の目はどこに向いているか…貴方は罪とは向き合っていても立ち向かおうとはしない。直視するのを恐れている」

 

 

自分がなにをしたのか分かっている。

どうなってしまったのか知っている。

だがそれを目撃したのか、と言われれば素直に答えることはできない。

 

 

「貴方は分かっていても…いや分かっているからこそ、触れたくない、見たくないと拒否している。自分も同じ同類になってしまうと恐れているから」

 

「………」

 

 

「綺麗事ではないのは分かりますよ。顔を見れば。けど、それはあくまで自分だけであって他者が知ればどうなるか…少なくとも、人によっては綺麗事しか並べられない潔癖の人間と見られてしまう。

でもだからといってその先にある世界に踏み込みたくもない。

貴方は自分が大量虐殺の根源であるというのが怖いのではなく、それを分かったうえで、のうのう生きている人間に成りたくはなかった」

 

だからあえて見なかった。

全て見てしまえば、そういう人間であると認識されてしまうから。全てを見ずにいれば、少しだけ楽だったから。

 

少なくとも、私はまだ人間であれると思っていたから。

 

 

けどそんな考えが子供じみていたのは分かっていた。

 

 

 

「人間いつかは他者を傷つけます。言葉であれ、認識であれ、意識であれ。

銃はそれが具現化しただけ。

誰かを傷つけたくないと言っても、必然として傷つけなくてはいけないのですよ」

 

 

「――――。」

 

 

「貴方はISによって多くの人間を殺してしまった。

ラウラという戦争の道具として生まれた子どもを作ってしまい。シャルロットという戦争に関係のない子どもを引きずり込んでしまった。

そして、自分の弟でさえもその世界に落としてしまった。

そう考えているのでしょう。

けどそれは間違い。酷な話ですけど、例えISが無くてもラウラは生まれていた。シャルロットは戦争に巻き込まれていた。

 

―――彼、一夏は武器を握っていた。

 

それを貴方は全て自分のせいだと思い込んでしまっていた」

 

 

 

本当はたったひとつの理由だけだというのに、自分は思い込んでしまい、そして恐怖してしまった。

その所為で作り上げられた虚像。それが怖くなって仕方がなかった。

ただひとつ。自分の願いだけを叶えられればと思った事が、思ってしまった所為でこうなったのだと。

 

ならば、それはそのままでいい。虚像は虚像のまま立っていればいい。

私はそれでも自分の願いのために。

そう思っていたが、彼女に突きつけられた現実は簡単にはいかせてくれなかった。

 

虚像であっても利用できるのなら問題はない。

だが虚像だけでは効果がないから、君も残るのだ。

 

 

 

その所為で現在(いま)の自分が出来上がってしまった。

本当は居たいと願う場所に立てず、居て欲しいと願う者たちは既にその場所には居ない。

白く優しい世界には居ない。黒く過酷な世界に彼らは立っていた。

本当は白い世界に居たいだけなのに取り戻したくても取り戻せない。

白と黒の境目。境界線(グレーゾーン)に居ることしかできない自分。

 

 

 

 

「貴方は見なくてはいけない。罪の結果を。その全てを」

 

 

 

もしかしたら。

 

 

 

私が知る人間。その全員が、向こう側(黒い世界)に居るのだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――一夏」

 

 





まだ本調子ではないので更新も遅れると思います。
ですが少しずつ進めていきますので。

それとfateのほうも時折更新しますのでよろしくお願いします。
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