IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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どうも。第五十八話です。

さて…今回も何を話したかったのかということで途中から少々脱線…
しかも文面的に何を言いたいのかというのが定まってないという…(汗

ですがもうそこは割り切って出す事にしました。
書き足していけばどうなるのか分かったものではないですから…

かなり身勝手だとは承知の上ですが、どうかそこだけはご了承を。


それでは前回で予告した通り、今回は事実初登場となる更識簪がメインの話です。

…途中で少し食われてるケド



そこは気にせず第五十八話、お楽しみ下さい!(逃げた)


No.58 「更識簪は傍観する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――少女は立つ

 

 

 

 

 

 

暗いくらい舞台劇場の上

ぽつりとひとつ、スポットライトの当たる場所に立つ

 

 

 

少女は一礼する

 

挨拶としての礼儀

そしてこれから私たちを付き合わせるという謝罪の意を込めて

 

 

 

水色の髪を光に反射させ、どこにでもある眼鏡をかけた彼女は一礼を終えるとこう言い始める

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――これは、私こと更識簪が記録した一人の男の物語」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁさぁ、物語の始まり始まり

何処からか鳴り響く拍手を音楽にして、彼女は一人語り出す―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――監査対象 No.0016-001 「織斑一夏」 の 記録

 

 

 

 

・私が彼のことについて語り出す前にひとつだけ言っておこうと思う

 これはあくまで私個人が見た事であるため、主観的、かつ証拠不十分なことなどが記載されている。

それらの個所が今回は多く見られるので留意されたし

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の監査対象は今や各国からその注目を浴びる男、織斑一夏についての記録報告である。

担当は更識簪。記録内容は彼の活動記録等。

 

国籍・日本

年齢十六

身長・・・cm

体重・・・kg

 

学園へは日本政府からの要請で入学。しかし裏では国連からの推薦があった模様。

現在は一年一組に在籍。同クラスのクラス代表となる。

世界で初の男性IS操縦者。使用機体名「白式」

 

経歴

2000年ごろ都内で生まれる。当時、姉こと織斑千冬と両親二人の計四名の家族と同居。しかし姉が中学進学後に両親は行方不明に。以後、姉の千冬は年齢を偽りアルバイト活動を実施。その傍らで当時幼かった彼を育て、更には勉学を行っていた模様。

その間から2013年ごろまでは殆ど外部からの関係を断ち、姉がアルバイトをしている間は自宅で家事を行っていたが。これは姉が家に帰ることが少ないことと当人の性格、そして弟を外部に出さないということからの判断だと思われる。

織斑一夏本人は小学生の頃に篠ノ之道場に入りびたり同道場で剣道を学ぶ。この頃にISの創始者である篠ノ之束の妹である篠ノ之箒と出会い関係を築いた模様。

 

2006年に「白騎士事件」発生。当時本人は事件に関わっておらず織斑千冬、篠ノ之束の二名による実行が確実。以後、篠ノ之箒が保護下になると同道場を辞め、2013年まで部活動の一切を行わずにいた。

その後は近隣の一般中学校に進学。同校では現在、中国の代表候補生である凰鈴音と関係を築いていたらしく当時の同級生が悪友として彼らを認識していた。

理由は定かではないが家庭内、恐らく姉との確執などの精神的な問題があった模様で近隣住民からそれらしき事があったとの証言もある。

有益な証言の一つとして、姉の職業に関することについて問われていたという事から織斑千冬は当時彼に対して自身の職業を偽る(ないし詳しく話さない)をしていたらしく、それが軋轢を生んだ。

尚、織斑千冬はその後の2011年から13年の事件までの間、研修員として学園に来校。この時に学園での教師を薦められた。

 

 

2013年。モンド・グロッソ開催。

織斑一夏は同大会決勝戦開催日に誘拐される。

現地警察等からの推測から誘拐犯の目的は織斑千冬の優勝妨害が目的だった模様。

実行は大会中の開始直前の男性トイレで行われた。その後、数キロ離れた場所で潜伏場所が特定地元警察と共に突入するも誘拐犯は全員死亡。誘拐された本人は現場にはなく、その後の捜索と現場の織斑一夏本人の血痕の量から死亡と断定。遺体は事件当時完全な行方不明として処理された。織斑千冬は捜索続行を進言するも時間と失血量等や警察、そしてドイツ政府からの事情説明によって打ち切られた。

以後、織斑千冬は地元警察協力の恩を返すという理由から一年間ドイツに在住しドイツ軍IS部隊の臨時訓練教官に任官。この時にラウラ・ボーデヴィッヒと関係を築いた。

 

 

その後、現在に至るまで織斑一夏がどこで何をしていたのか不明。

しかし、2014年某日に南米で織斑一夏らしき人物が映った写真を発見。顔などの照合からほぼ確実とされている。

当時の彼は誘拐時に着けていた衣類を着ておらず、軍用のジャケットと耐熱の外套。装備一式とアサルトライフルで武装しており(添付画像参照)友軍のヘリらしきのを護衛し現地を潜入していた工作員の回収と撤退の支援を行っていた。

ヘリは工作員回収後更にもう一人の協力者を回収。ヘリ内には少なくとも計五人は搭乗していたと見られる。

 

二度目に改修された協力者は照合不能。しかし織斑一夏たちが最初に回収した工作員、並びに研究員らしき女性は照合と一致。

工作員は額に巻いていたバンダナとその動き、発声音から「ソリッド・スネーク」ではないかという可能性が高い。ただし工作員の頭髪は白く、仮にソリッド・スネークであるなら年齢が合致しない。

もう一人はナノマシン研究者である「ナオミ・ハンター」と判明。当時、本人がどこにいたのかは不明とされていたが、ヘリに収容されたところを見ると南米に潜伏していたと思われる。

以上の事から、織斑一夏ならびにソリッド・スネークらしき工作員はナオミ・ハンターの回収が目的だったのではないかと推測される。

その後ヘリの行方は不明。捜査網に反応がなかったことから、移動式の拠点で移動したのではないかと推測され、その候補として大型の輸送機ではないかという可能性が高い。

現地にはヘリを収容した大型輸送機があったと言われ、それが彼らの移動拠点であると思われる。

 

以後、織斑一夏の行方は再び不明。

次に現れたのは2015年、ドイツでの研究施設襲撃と中東の民族間の紛争地帯に、織斑一夏と思しき人物が確認されている(添付画像参照)

 

 

そして2016年現在、三月に国連から織斑一夏の入学推薦とISの適性データが日本政府に提出される。一週間後、推薦は受諾され織斑一夏は入学を許可される。

四月、入学一週間後にセシリア・オルコットとクラス代表をかけての模擬戦を実施。勝利し、クラス代表に就任。

尚、模擬戦には中空装甲らしきものを纏い参加。模擬戦中に最適化させたという前代未聞の行為を行っている。また、機体は各部に新型の人工筋肉であるCNT筋繊維を使用。他の機体とは一線を画したポテンシャルを持っている。

武装は現時点で判明しているだけでも自動小銃・拳銃・擲弾・グレネードランチャー・散弾銃といった多様な銃火器に加え、高周波ブレードを使用。遠近どちらにも対応した万能機となっている。

 

 

 

- IS学園入学後からの記録報告 -

 

IS学園入学後は織斑一夏を中心に様々な事件が発生。

殆どが彼に関係することによって引き起こされている。

 

入学後、クラス代表決定のためにセシリア・オルコットとの代表決定戦を実施。これは相手側であるオルコット本人からけしかけるような形で仕掛けたとのこと。

クラス代表戦直前まで織斑機は届いてなかったが開始ギリギリのタイミングで受領。最適化も行っていない初期状態での戦闘を余儀なくされた。膨大な数の中空装甲に覆われ飛行能力も封印されていたが最適化に伴いパージされ多数の機能が解禁され、その後は形成を逆転させ勝利を得た。

が、現在でも何故中空装甲を覆い飛行能力を封印していたかは不明。

 

 

その後。中国代表候補生である凰鈴音からの申し出でクラス対抗戦を実施。

しかし突如太平洋側からメタルギア「RAY」が来襲。更には所属不明の無人機が乱入し一時はアリーナ内での混乱が発生。その間、学園全体のシールドは何者かによってハッキングされた可能性が極めて高い。その証拠に事件当時学園内のシステムの九割がハッキングを受け、外部ないし学園内のマスターからの命令も一切受け付けなくなっていた。

その間、生徒非難が間に合わない間にメタルギアは織斑一夏を襲撃。無人機群と共にアリーナ内のフィールドに居た凰鈴音共々攻撃を開始。

織斑一夏は彼女の他に同じく一組である篠ノ之箒、セシリア・オルコットと共闘し無人機群と戦闘。

その内でセシリア・オルコットはIS無しで事前に持ち込んでいた対物ライフルで支援。篠ノ之箒は学園内に配備されていた量産型IS「打鉄」を使用。残る織斑一夏と凰鈴音はそれぞれ専用機体を使用しメタルギアと交戦。

最終的には織斑一夏の手によってメタルギアは機能停止する。

 

 

近年、軍事評論家と退役軍人らが物議を醸した書物「近代の軍事兵器の力」ではISとメタルギアの戦力比は7:1と評されていた。これは精神的な問題ではなくIS一体が保有できる武装火力とメタルギアが搭載する火力との差と、飛行する機体にはほぼ必ずと言っていいほどのジンクスである装甲の薄さとメタルギアの防御力の差。そして、単一による制圧力の差が決定的理由となっている。

搭載火力が制限されているISは飛行能力によって制空権を奪取するのは簡単ではあるが、メタルギアほどのペイロードと火力、そして防御力を持ち合わせていない。

逆にメタルギアはその反対の長所を持つが、無人機であるための判断能力の差や巨体による隠密性の低さ。何より、現代ではCNT筋繊維によってサイボーグ技術が確立され始めているので旧世代の遺物と称され始めている。

またコストも若干ではあるがメタルギアの方が高く、整備性も同じである。

 

評論では典型的な議論として「ISとメタルギアが正面から交戦すればどちらが勝つか」という議題がある。

そこでは「正面からではメタルギアが有利」とされ、仮に戦力比以下で交戦するのであれば条件付きでなければ難しいというのがもっぱらの意見とされている。

機体損傷の具合、搭載している弾薬の残数。地形、気象、ISが所持している火力、そして練度。これらのハンデがあることでIS側への勝算が傾くとされている。

 

しかし事件当時、メタルギアと交戦した人数は戦力比には及ばない四人。しかも一人はISを未使用で無人機と交戦していた。更に実質メタルギアRAYと交戦していたのは織斑一夏ただ一人。

つまり、彼は戦力比を大きく覆してメタルギアと交戦、勝利した。

 

 

 

 

 

そして某月。

学園に二名の代表候補が転入。

一名はフランス代表候補性シャルル・デュノア。しかし後に性別を偽装していたことが発覚し、事件後は元の名であるシャルロット・デュノアに変更、現在も在校している。

 

もう一人はラウラ・ボーデヴィッヒ。彼女が後の事件を実行した実行犯である。

ドイツ軍に従軍していた時から過激思考の多い人物で、特に織斑千冬に対し並みならぬ執着を持っていた。また作戦時にも過剰な行動で味方陣営への被害や必要以上の被害などを起こしている。来日当時、要危険人物として監査対象となっていたが、それを掻い潜るように行動。その後は何も行動を起こさずに居たがその間に事件への準備を整えていた模様。

 

 

転入から直ぐにラウラ・ボーデヴィッヒは行動を開始。

織斑千冬の部屋に来訪し彼女に学園を去って自分たちと来るようにと勧誘。しかし本人は拒絶したことから強硬手段に転じるも途中に介入したことから、その場は撤収。しかし去り際に事件実行を予期させる発言をしたことから既に実行の準備を終えていたと思われる。

 

後日、アリーナにて射撃演習を行っていた織斑一夏と篠ノ之箒、凰鈴音、シャルロット・デュノアに対し無警告で攻撃。

一時は凰を人質にとって優勢であったが、途中でオルコットが介入。その場での戦闘はボーデヴィッヒ撤退で終了する。

発言内容からボーデヴィッヒ本人は織斑一夏に対し私怨を抱いていたようで、これまでの証言と情報から目的は姉である織斑千冬である可能性が高い。

また英国の訓練プログラムとして軍に所属していたオルコットを危険人物としてみなしていたようで、その対処も同時に行おうとしていた。

 

同日の夜。オルコットの部屋に対し小包型の爆弾が送られ、直後に爆破。

これによって周囲の部屋の生徒数名が重軽傷を負ったが、死者はなし。オルコットも爆風によって吹き飛ばされただけで軽傷だった模様。

同時刻に校舎へとボーデヴィッヒが指揮する部隊が突入。同じく危険人物とみなされた更識楯無の居る生徒会室を攻撃。

またその間に電気系統とシステムを一時的に制圧させる。

一連の出来事が全て織斑一夏殺害を目的とした事から織斑本人が校舎へと突入。途中でデュノアを回収し一度生徒会室へと合流する。この時に校舎内を逃走していた更識も回収したが負傷のためにその後は生徒会室に放置。

事件の発生から事の重大さを知らせるために生徒会室に隠されていた非常回線で警察と救急隊を要請。その間に織斑・デュノア両名は再度移動しメタルギアRAYとの交戦で破壊されたアリーナで籠城戦を試みる。

 

しかしその直後に何らかの理由で織斑が負傷。更にパーツレベルで搬入していたMi-24「ハインド」を使用し殺害しようとするが、ふたたびオルコットの介入によって失敗。負傷した織斑を拉致し学園外に逃亡する。

尚、同時進行で織斑千冬確保を試みていたようだが、未然に何者かに阻止されたらしく詳細は不明。

その後オルコット、デュノア両名は事前に用意していた方法で学園外に出て追跡を実行。またその中に負傷していた更識も入っていたと言われているが詳細を報告しないことから不明。

 

 

学園外に逃亡したボーデヴィッヒ以下彼女の指揮する部隊はその後、国連の査察部隊と遭遇。更にドイツ政府と一部軍幹部によって排除命令が行われ、味方部隊からの裏切りによってボーデヴィッヒはドイツ軍に確保される。

その後、国外脱出までの間の口封じとして凌辱されるが、何者かによって特殊部隊隊員の全員が射殺される。

この時、射殺した実行犯は恐らく織斑一夏ではないかと予想。止血量から考えにくくもあるが、現場に残っていた血痕などからその可能性が高く、また特殊部隊の使用していた武器と織斑がISで使用していた武器、そして入学以前の資料から彼ではないかということになる。

 

事件後、ボーデヴィッヒは国籍を除くほぼすべての財産を剥奪。また戸籍上死亡扱いとなるが、裏で国連からの取引で米国内にある民間警備会社に就職したとの情報がある。現在確認中ではあるが、国内での監視カメラからの映像を入手。情報の信憑性は高いものとされている。

 

 

戻って事件後、織斑一夏はその状態から直ぐに最寄りの総合病院に緊急入院。

命には別状なしとしていたが一週間ほど眠っていた。その後に退院。

医師からはもう少し回復を待つべきであるとされていたが、本人の驚異的な回復が原因でその短期間で回復したのではと推測される。

しかし本人の血液や皮膚組織からナノマシンらしきものは検出されず、信じがたいことではあるが自己回復による治癒ではないかと思われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――以上が、織斑一夏に関する記録、そして活動報告です」

 

『………』

 

漠然と。かつ詳細とまではいかないが、ありのままの事を報告した簪に四方を囲む浮かんだモニターから小さな唸り声が聞こえる。

流石に少し大雑把すぎたかと自負しているが、それでも事実は事実でありのまま起こったこと全てを報告せよと言われたので、彼女に非があるとは言い切れない。

だがそれでも周りで沈黙する者たちはどうしても言葉を出さなければならないという使命感に頭を悩ませることになった。

 

 

『…分かってはいた事だが…更識簪…』

 

「はい…」

 

『内容が簡略であることは理解している。が、これは全て事実か?』

 

「一部調査中のものもあります。が、大筋は事実です」

 

『…で。この有様か』

 

「………」

 

報告した内容の事についてか、それとも彼女のやり方について責めているのかは分からない。だが、どちらにしても彼女が非難されるのは変わりなく、彼女自身もそう思ってしまう。

だから、それを察してかもう一人の人物が慰めるように言葉を渡す。

 

『別に、貴方のことを責めてるワケじゃないのよ。ただ、私たちにとって改めて聞くと信じられないって事が多くてねぇ…頭を抱えることが精一杯なの』

 

『……………。』

 

『…一人爆睡してるケド』

 

「…ですが、起こったことは全て事実。信じられないと思いますが…」

 

『私だって信じられないわ。けど、実際この身で実感したことだから…受け入れるしかないのよ』

 

『………』

 

 

四人の内、二人が議論するように言葉を交わすが最初に口を開いた人物は後の人物の事をよくは思っていないようだ。それは二人の間から出てくる空気と話す声で容易に察することができる。

だが、そこに割り込むかのように三人目、最後の一人が口を開く。

 

 

『今は、そういった議論を後にしましょう。まずは、今回の議題である監査対象の織斑一夏について。それを知るべきです。

彼の行動、経歴を詳しく知ってから議論をしても遅くはないでしょう』

 

『ですが…』

 

『賛成です。どの道、それを話さねば議題も進みませんから』

 

『………』

 

『決まりですね。では、更識簪。続いては彼の行動について、先ずは報告。そして貴方から見ての主観的意見を述べて下さい』

 

「…分かりました」

 

 

 

 

 

= 監査対象について =

 

 

「まず、普段の彼の行動、性格についてですが端的に言うなら「どこにでもいる人間」というのが第一印象です。

年齢相応の落ち着きと対応。そして判断。

弱みがあるとすれば口数が少ないことと、思う事をあまり口にしないことからの押しの弱さ…でしょうか。クラス対抗戦の切欠はそれが原因だったと聞いてます。

それと根が正直なためか嘘にも弱いかと」

 

『それって個人的主観?』

 

「…そうでもあります。ですが、他のクラスの人間からの意見も擦り合わせた結果、そうであるという可能性が高いだけです」

 

『押しが弱いって言うけど、シャルロット・デュノアのことではズバズバと事実を口にしていたわ。多分、人によって…恐らく、関係が深い人物に対してはってことになるんじゃないかしら?』

 

『貴様の考察は後でいい。今は報告が先だ』

 

『…簪、続けて』

 

 

 

「…はい。人間関係はほぼ円滑。クラス内では得に篠ノ之箒、シャルロット・デュノア、セシリア・オルコット。他三名を加えた面々でいることが多く、そこに二組から凰鈴音が加わっているといった感じです」

 

『あの子たちって結構仲いいのよねぇ。本人も嫌いだって感じでもなさそうだし』

 

「その中でやはり気になるのが…」

 

『最初のクラス代表を決めるときにけしかけたセシリア・オルコット。それと、もう一人オルコット同様に過去の関係、接点がないと思われるシャルロット・デュノア…か』

 

「セシリア・オルコットに関してはこちらが調べた情報によると、どうやら初見から彼を睨んでいたようです」

 

『…睨んでいた?』

 

「ええ。証言からでまだ本人からとってはないのですが、なんて言うのでしょうか…類は友を呼ぶって言うか…類を以て集まるって言うべき…でしょうか…」

 

『同族だと感じている…? だが、彼の家計は貴族のような立場では…』

 

『恐らく…というか。彼女が言いたいのは中身よ。彼の中身…彼の本質』

 

「………」

 

『…どういう事だ?』

 

 

 

 

『…簡単よ。ココから連想できること。同じ存在、同じ立場だった者。

元は戦場に居た兵士同士…ってね』

 

「………!」

 

『………なるほど。空白の二年…』

 

『彼女の言葉。そしてシャルロット・デュノア。この二人が…彼の過去を知るキーパーソン…なのかもしれないわね。けど、今はそれは後回し。まずは報告を聞きましょう、ね?』

 

「………。」

 

『………仕方ない…簪、続けて下さい』

 

「では…続けて彼の行動と関係ですが…

第一に言うのであれば、彼はあえて生傷のつくほうを選ぶというタイプです。

それを裏付ける証拠として、メタルギアの襲撃事件。そしてその後のテロに繋がり、いずれも負傷と言う形で終わっています」

 

『そうそう。別に怪我するのが怖くないっていうより…自分から飛び込むタイプなのよね、彼』

 

『善意であるが故に、自ら傷つくも厭わぬ…か?』

 

「恐らくはそうでしょう。善意であるからこそ、自らが傷つくことを道理としている。だからこそ、襲撃事件ではあえて単独での戦闘を行ったともとれます」

 

『…単に邪魔だっただけじゃない?』

 

「えっ…」

 

平然と言葉を吐く一人に対し、思わず声を漏らす簪。

それは彼女でも考えていなかったひとつの推理だった。

 

 

『彼は兵士であったからこそ、メタルギアに対する対抗策を持っていた。そして、それを単独で撃破ないし撃退できる方法を持ち合わせていたからこそ、単独で戦闘に臨んだ。

つまり、単独と複数でなら、経験皆無の複数戦より自身だけでも経験しているということから単独で挑めば勝算はあるって事じゃないかしら?』

 

「…だから、あの時戦闘に参加していた面々は邪魔だった…と…?」

 

『あくまで仮説だけどね。本人もそこまでウザったく思ってなかった筈だし、邪魔というより介入してほしくないってだけだと思うわよ?』

 

「………。」

 

『いずれにしてもだ。それはつまり彼が対メタルギアの心得を持っているということだ』

 

『ええ。だから真向からタイマンで挑んだものね。出なければ、無謀でしかないし』

 

『…こうなると、ますますあの男が兵士であることに疑いが持てなくなってくるな…』

 

『事実ではあるでしょうね。実際、それを裏付ける行動と能力、そして判断を持ち合わせているんだし。それに、銃の扱いや動きにもそういったクセが残ってるようだし』

 

『…詳しいんだな』

 

『私も見ているからね』

 

すっかりと蚊帳の外になりつつあった簪は再び会話の中に入っていると実感を持ちたいという意地から更に割って入るように報告を続ける。

 

 

「―――その彼のIS搭乗時間ですが、入学前の手続きによる資料では三百時間。一般的な訓練期間とほぼ同等の時間は乗っているとされています。ただ、あくまでこれはVR訓練での話で実機での活動はクラス代表決定の試合が初めてです」

 

『…覚えがいいということか』

 

「かもしれません。試合開始直後と終盤とでは動きのクセに差が見えます。機体の最適化もあるでしょうが、本人が試合中に骨格や筋肉の動きを自然と最適化しているのだと、私は思っています」

 

『まるで生きたISね彼』

 

「…これも、兵士としては…」

 

『さてな。そこは私でも知らん』

 

『…だからって、私もよ?』

 

互いに牽制し合うような言葉が二人の間を飛び交い、顔を合わせていないというのに簪はその間から漂う空気に気分を悪くして腹の辺りをさすっていた。

話には興味はあるが、だからといって互いに険悪なムードにすることだけは勘弁してほしい。映像の奥に居るであろう人物にそう訴えるように見ていた彼女に、今度は見かねてなのか再び仲裁の言葉が割り込まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――そこら辺についてはいずれ話しましょう…今は彼を調べるにあたり重要な部分だけを取り上げていきましょうか』

 

「重要な…ですか?」

 

『ええ。ズバリ、現在の彼の立場。そしてそのバックに誰が居るのか、よ』

 

 

そうだ。元を辿ればこの話も、この報告も大まかにはそういったことが理由となっているのだ。誰もが少しでも調べれば出てくるものではない、もっとその奥に眠る真実を知るために。

そこに行きつくファクターは彼の行動。言動などを調べれば山ほど出てくる。

そして。それらを一つにまとめて浮かび上がる問いの言葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――貴方は一体何者なの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて。そんな彼が生傷絶えないことをしても平気でケロっとしている理由ということで、今回はそれも含めていくつかのテーマを用意しました』

 

『テーマ?』

 

『ええ。かん…更識簪ちゃん、お願いね』

 

「…はい。今回のピックアップテーマは二つ。彼こと織斑一夏のISについて。そして、彼が行方不明だった「空白の二年間」についてです」

 

そのテーマが上がった瞬間。顔がなくても、画面の向こうから難題に頭をひねり唸り声を出す姿が想像できた。

簪もそれは同じことだが、もしかしたらここでそれが解決できるかもしれない。もしくは少しは進展するかもしれないと、組織の力に縋るような思いで臨む。

 

『ISについては…まぁ多少はつかんでいるが…』

 

「―――倉持技研が新世代機として開発していましたが、技術・資金不足等によって開発は中止。それが現在は改修されて彼の手に渡っています」

 

『技研からは』

 

「聴取したところ、開発は別の場所に引き継ぐと通告されたので途中までの機体とパーツ一式を纏めて譲渡。以後の消息は不明です」

 

『…で、誰がそれを通告したの?』

 

「日本政府からです。なんでも防衛省絡みだったので詳しくは聞けなかったと…」

 

『…防衛省…自衛隊か?』

 

「それはないかと。横須賀基地で抜き打ち査察を行いました(・・・・・)が、機体が受け取られたという記録、証言は一切ありませんでした」

 

『自衛隊でないのは確かね。でなければアウトすれすれのあんな機体出さないだろうし、第一出所が知られれば自分の物だってわめくわよ』

 

『確かにな…だが自衛隊でもなければ何処だ。民間企業でもあんな機体を改修することも、出来ないだろうし資金もない。個人であっても論外だ。それだけの維持や資金が動けば誰だって気付く』

 

『なら…誰でしょうね?』

 

『………』

 

口を強く締めて怒りを抑える。見えていないというのにそれだけがハッキリとしてしまい、それぞれ違った表情を見せる。笑みを浮かべ、無情であり、苦痛に思う。

イマイチ纏まりのない者たちだが、同じ組織に居るということは事実。そしてそれが今まで続いていると言うのも確かだ。

だからこそ、その空気を返るために先陣を切る。

 

「…AT社はどうでしょうか。あそこであれば資金、技術等に問題もなく設備も整っています。改修するなら…」

 

『であれば、何処かの企業が気付いてるハズよ。仮にも分社がいくつもあるのだから』

 

「ッ………」

 

『…と言っても。今ではそれが有力かしらね』

 

『だがATであるなら、それこそ本社に送ったりする筈だ』

 

『まぁねぇ…』

 

『………』

 

『けど、出自は何処であれ聞きたいことは他にもある…でしょ?』

 

ふと、その言葉が自分に向けられたかのように思えた簪はぽつりと呟くようにその言葉に答える。

 

「…人工筋繊維、ですね」

 

『そ。現在、ISへの技術転換が期待されているCNT筋繊維。現状ではドイツは実験を終えて運用していたようだけど』

 

「近年登場したサイボーグ技術の応用でISの関節や筋肉に代用して運用する…理論としても提唱され、それの実用性は高いとされていますが…」

 

『…問題があるの?』

 

「ええ…CNT筋繊維は現状ではかなり高価な素材です。それに、仮に実装してもそれに対するメンテナンスとコストが馬鹿になりませんし、ISは基本飛行しての運用が当然のことですのでむしろ防御力などの低下を招くとして採用は保留されています」

 

『…にしては巷では実装するって噂があるけど…』

 

「…サイボーグ技術の確立と発展で、可能であると鵜呑みにしているだけです。実際はそういった問題もあるし、スポーツとしての範疇を超えるということで採用は慎重です」

 

『むしろ、それ使って戦争したいっていうおバカが居るだけの話よ』

 

 

実際、女尊男卑の大半はそういった根も葉もない噂を鵜呑みにしているというのが殆どだ。そうすることで自分たちの地位が高まる。力が手に入る。そういった妄信と妄想に取りつかれた結果、今のような世間になってしまっている。

CNT筋繊維は確かに魅力的ではあるが、簪の言った通り一長一短の代物ともいえるのだ。

 

 

『…それも、もう一つの議題と、もしかしたら関係がある可能性があるのかも…しれませんね』

 

「もう一つ…」

 

『空白の二年…ですね』

 

『その間にコネクション作ってたなんて言うけど、二年でそこまでの事は…』

 

「で、出来るのでは…」

 

 

 

『『『……………。』』』

 

和やかな雰囲気になってしまった気がするが、一人がせき込んで元に戻し話を続ける。

 

 

『まぁ…あながち出来そうにも思えるけど…』

 

『だが…それでも、二年でそこまでのコネクションを作れる奴か?』

 

『分からないわよ? 案外、意外なところで意外な人と…ってこともあるんだし』

 

「戦場…ですか…」

 

『出会いは戦場で…ロマンチックというよりもバイオレンス映画ね』

 

もしそれが本当であるなら運命は感じるが、確かにロマンは感じないだろう。むしろ、よくあるアクション映画のように出会い、交わり、そして生き抜くといったようなものだ。

 

『…話を戻す。二年という期間、資金的な意味では無理がある。それは技術、資材としてもだ。だからといって彼がその二年でそれだけの事が出来るコネクションを出来るなど…』

 

『…案外、可能かもよ』

 

「そんな…さっき出来ないって…』

 

『私は一度も否定はしていないわ。あくまでそういった可能性があるってだけ』

 

『…根拠は…なんだ』

 

 

 

 

 

『…根拠ね。根拠というほどでもないけど、そう言える理由はあるわ』

 

「…それは?」

 

『仮に彼が兵士であり、戦場に立っていたのだとしたら…国連のPMC査察部に遭遇した…なんてこともあり得るかもしれないってね』

 

『………』

 

確かに、一夏の知り合いとしてメリルたちがそれに該当する。

しかし実際は一夏はその更に知り合いであるスネークと邂逅したのであり、生身で戦場に放り込まれたということはない。

それを知らなかったとしても、その仮説はその場にいる全員が頭を抱えるものだ。

 

「それは…えっと…」

 

『ま。あくまでって話よ』

 

『だろうな。どれだけの天文学的確率なんだ』

 

PMCの内部監査部といっても戦場はコロコロ変わるし、その全てに監査する部隊を送り込めるほどの人員だってありはしないだろう。

つまり、それは同時に運が悪ければPMCや民兵に捕まったり、最悪戦場で死んでしまうということと同じ。また、見つからないようにが基本原則らしいので見つけることも容易ではない。

 

『…仮に』

 

『ん…?』

 

『………。』

 

「………。」

 

 

『仮に…彼がそれだけのコネクションを持つ人間と出会っていたら。どうなると思います?』

 

『それは…』

 

『それこそ天文学的…というか、銀河の中からとかで特定の星見つけるレベルだと思いますよ?』

 

今までの話を総合して言えばそれだけの技術を持つ人間ないし、そういった知識を持つ人間との友人関係を持っている人間と一夏は出会っているということになるが、それこそ確率的に不可能に近い話だ。

 

「でも…そうしなければ説明もつきません」

 

『…更識、お前なぁ…』

 

『まぁまぁ…けど、私も彼女と同意見よ。そうでなければ、機体のことも説明は難しいし、仮にそれが不可能であったとするならば…それこそ可能性という話はゴマンと出てくる』

 

「………」

 

『戦場で今に至るまでの協力者と邂逅し、その力を使って機体を手に入れた…か』

 

『大筋で言うなら、ね。けど確かにそこまで運のいい話もないでしょうし、そこは本人から聞くなり家宅捜索するなりしないとねぇ』

 

「それこそ問題ですよ…」

 

『冗談よ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

議論は続く。だが、それではいずれ話題が逸れて別の話にすり替わっていたりすることも考えられてしまう。

そこでまとめ役らしき人物は小さくため息をついて頭の中を一度リセット。その場に力ったかのように広がっていく情報を大雑把だが纏めることにする。

 

 

『…一旦、拗れた話を纏めましょう』

 

『織斑一夏に関しての重要点。空白の二年とそれに関係する人物関係』

 

『あと、機体について。それが二年間と関係しているかどうかね』

 

「機体の方につきましては方法次第で調べることは可能かと。ですが問題は…」

 

『空白の二年間、あの男がどこで何をしていたかだ。唯一の手掛かりとなるのは南米で撮影された写真一枚だけ』

 

調べるにも問題という問題が多すぎる。

資料がないこと、情報が少ないこと、大っぴらに行動が出来ないこと。

活動しようにも制限が多く、迂闊に動いてしまえば彼女たちは間違いなく窮地に立たされる。

 

『…いっそ思い切って南米に飛ぶ?』

 

「ウチは国内活動が主ですから、向こうの許可がない限り海外への出張は無理だと思いますが…」

 

『だからと言って、家宅捜索も難しいだろう。我らは警察組織ではないのだ』

 

『というか警察に見つかったら私たちお縄を頂戴されるわね』

 

『私に話しを振らない…兎も角。現状、引き続き彼のことを監査し調査する必要がありますね』

 

『それについてはお任せを。私たちが網を張ってますので』

 

網は網でも虫取り網のように思えて仕方のない簪は溜息をつくとそれに合わせて肩を落とす。ただの報告だけだというのにこれだけの時間と疲労がたまってしまったのだ。

 

『簪。申し訳ないけど、もう少し彼の事を視ていてくれますか?』

 

「はい。ですが、第三者からの干渉もままありますので…」

 

『完全とは言いません。兎も角として彼の機体、経歴といったものに関係することを報告してください。上の人たちには…私から報告しておきます』

 

「ありがとうございます…」

 

『気を落とすな、更識。ただの監査任務と思っていたが、私も考えが甘かった。こうなると増員だなんだも考えるが…』

 

『あ。じゃあウチに予算を』

 

『誰が貴様なぞの生徒会に金を回すか。貴様の方は学園管理だろうが』

 

『いやいや。そうじゃなくて組織としてのポケットマネーを―――』

 

(―――見苦しい…)

 

 

身内であることに恥ずかしさを感じながらも、簪は出来るだけそれを表に出さないようにと迷惑そうな顔でその場をごまかす。

しかし画面越しでも顔を見ていなくても自分がどんな顔をしているのかは向こう側にいる彼女(・・)にとっては容易に想像できることだろう。

 

だがいずれにしても、あと少しでこの報告も終わる。場の空気が少しずつ纏まりと終わりに近づいていると感覚だけで理解していた。しかしそれが絶対でもないし、もしかしたら居残りという典型的なこともあるかもしれない。

兎も角、早く終わってほしいと切に願い始めた簪は張りつめていた集中の糸を緩めていた。

 

『増員でなくても措置はとる。更識、すまんがしばらくは』

 

「あ、はい。任せてください」

 

『…失敗したわ…やっぱ私の下に置いておく―――』

 

『黙れ。お前の方は主不在で苦労しているのだぞ』

 

またも口論が始まってしまうと予想したのか、まとめ役らしき人物は大きくせき込むと全員の注意を集め、今回の締めくくりをする。

 

 

『…兎も角。私たちはあくまでも織斑一夏、彼のことについての調査と監査を継続。また物理的干渉は厳禁とします。

我らは国の敵であるなら討ちますが、それが確かでない今は静観するのみです』

 

『―――承知…』

 

『―――仰せのままに…ってね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…了解しました。「()」」

 

 

 

 

 

『我ら「御所」は影なるもの。それを忘れぬように―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はぁ」

 

 

疲れたため息が口から吐き出される。

そのまま疲れと共に魂まで抜け落ちるのではないかというほど長く、そして疲労感のある息は空気の中へと消えていく。

 

更識簪は、暗い一室で付けていたヘルメット式のVRモジュールを外すと普段からつけている眼鏡をかけ、目の前の風景を見つつ疲れた目と頭を休めた。

VRを長時間使っていたことが原因ではないが、頭と肩はすっかりとこってしまい、女にはあるまじき行為と承知してぐるぐると肩を回す。精神的な疲労が肉体的に置き換わってしまったかのようで、肩へは重荷が伸し掛かるような疲労感と重さがあった。

 

 

「疲れるなぁ…」

 

ぽつりとぼやくと香りのある畳に寝転がり、昔ながらの木造の天井を眺める。

疲労感もあるが、時間がすっかり夜になってしまっているので睡魔がどこからと襲い掛かってくる。目蓋は重くなり意識も遠退いていくので体中の力が抜けていき睡眠へと移っていく。

 

 

「けど、報告書も書かないと…」

 

声を出して床を寝転がる姿は、まるでOLが仕事帰りで疲れているかのようだ。実際、それに近しいのであるから仕方のないことで、簪本人もそういった感じなのだろうなと自負していた。

何せ目の前の机には大量の資料と紙の数々。その隣には栄養ドリンクと来ているのだ。OLというよりも同人活動に勤しむ少女の私室といった方が正しいだろう

 

 

 

「………落とす…どっちも…落とす…」

 

 

実際そうであるのだから否定もできはしないのであるし。

 

 

「うわぁ…やっぱ今回は止めとけばよかった…今回の報告だってあったんだし…一年だから余裕だってないのに…っていうか他のみんなどうして同じなのに余裕があるのよ…」

 

完全自分の私生活と環境に根に持つが、だからといって環境が改善されるわけではない。

しかしそれでも彼女に残された時間は色々な意味で少ないもので、文字通り寝る間も惜しいものになっている。

 

「…ダメだ。今日も完徹しないと…」

 

睡魔に負けず、意識を保った簪はため息をついて起き上がると少し寝ぼけている頭を動かしながらも完徹の準備に入る。

資料等はあるが、長期戦になるためそれに対する装備が必要だ。

 

 

「―――コンビニ行こ…」

 

今日も共に戦うリゲインを買いに、簪は自室を後にする。

どの道、今の彼女にとって少しは外に出なければ気分が晴れもしない。

今は少しでもモチベーションを立て直すために冷たい空気を吸いに出かけるのが、長続きの秘訣であるらしいのだから。

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

深いため息を吐いて夜の世界へと繰り出す。

その日は、ただ買い出しに出ただけだというのに少しだけ胸騒ぎがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…で。ここに残って二人っきりの話は…なんですか』

 

『…別に、なんてことのない話よ』

 

『………』

 

『ただ…ちょっと気になってね』

 

『気になる…?』

 

『ええ。思えばって言う切欠からの疑問………どうして、彼は今姿を現したのかな…って』

 

『…時期…ってこと…?』

 

 

 

 

 

 

『―――名前を変えて、身分を偽って。過去から遠ざかって。

 

別に、話が確かならいつでも彼は戻ってこれた。なのにどうして今なのか』

 

 

『…何か…裏があるってこと?』

 

 

『…話は聞いてた。もしかしたらだけど…あの人が関係しているのかも…しれないわ』

 

 

『あの人………まさか―――』

 

 

薄々とは予想はしていた。だが、本当にそうなのだろうか。

ただ真実が理解しているというのに、どうしても納得がいかない。

信じたくないのだ。その先に何があるのか。

どす黒い向こう側に一体何が隠されているのか。それを知りたくないと、恐怖していた。

 

 

 

 

 

 

 

「―――――カンナちゃん。これはあくまでも仮説。無理に信じなくても…」

 

 

「…それがもし虚像であったとしても…彼の目的はそれしかないわ」

 

 

「いやよね…想像なんてものでも予想できないことって…」

 

 

 

 

 

 

 

黒い向こう側に一体なにがあるのだろうかは分からない。

 

だが、何処かで歯車が回るような音がした。

 

 





後書きという名の雑談。

さて。予定としてはあと一話ほどでAct.2.5も終わり。
いよいよAct.3に以降します。

タッグマッチ、臨海。そしてオリジナルへ。

物語は少しずつですが動きだします。


…ですが、その前に少し最後の休憩の話を次回に…



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