IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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皆さん、大変長らくお待たせしました!!
なんとか最新話を制作することに成功したのですよ!!(泣

本当は四月に出したかったですけど色々とあって五月になってしまいました…
兎も角! 今回で無事にAct.2.5は完了。いよいよ次回からAct.3です!

まだ少しグダグダになると思いますが、そこは生暖かい目でお願いします!


それではAct.2.5最後の話をどうぞお楽しみ下さい。


No.59 「出会い」

 

 

 

オタコン。

スネークの相棒ことハル・エメリッヒに着けられたニックネームだ。

オタク・コンベンション。日本でいうオタクと同じで、彼の場合はかつてアニメオタクだったことからその名で呼ばれている。

愛国者達との戦いに入ってからは嗜むことも少なくってしまっていたが、長い戦いから開けた今は、少しずつだが再び様々な時代のアニメを観賞するのが彼の少ない楽しみのひとつだ。

好みはロボット系。それが理由でメタルギアを開発したのだというのだから、彼の情熱は並々ならないものだ。

ちなみに。最近見ているアニメはダンボールの中で小型のロボットを戦わせるのと白い一角獣のロボットが色々な場所で戦うのがメインらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなオタコンだが、年中家に引きこもっているのかと言われればそうではない。

一夏曰く、偶に出かけることがある。

マドカ曰く、行く場所は大抵はぐらかす。

サニー曰く、時々大きな袋を下げて帰ってくる。

そしてスネーク曰く、多分四人の中で一番プライベートの出費が多いのがコイツ。

 

つまり。時折プライベートで出かけることもある。少し前までの窮屈な生活から解放されたお陰か、かなり羽と足を伸ばしているようで、一夏はある程度、彼がどこに行ったかを把握できていると言う。

オタクであるからこそ、彼が好きなものが分かっているからこそ、ホームベースである一夏にとって想像は容易なのだ。

 

 

 

 

…前置きはここまでにして。ぶっちゃけ何が言いたいのかをハッキリと言おう。

現在のオタコンの居場所。それは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様、おまたせしました♪」

 

「ああ。ありがとう、美しいレディ」

 

 

 

 

 

 

時折思う。どうしてああいうのに彼らは弱いのだろうかと。

精神的な疲れを癒すため。それとも新たな交友か。はたまた新たな極地を開拓するためか。

最後のは兎も角としても彼らが何故そうしたものに心血を注ぐのかは、体験していないオタコンにとって理解しがたいものであり未知の領域でもあった。

だからといってそこに踏み込むほど甘えを持っていない。なので彼はもう一つの栄えているものや、それに近くも遠いジャンルに手を伸ばし、今日もそのための見分を広めるためにこの街に訪れていた。

 

 

「…毎回通るけど、居心地悪いな…」

 

首都圏にある電脳と娯楽の街、アキハバラ。俗にいうアキバのオタク御用達の地だ。

しかし彼に用があるのはああいった「萌え」に走ったものではない。

サブカルチャー的な文化と共にある電子系の世界。デジタルの世界があってこそ、今のサブカルチャーの大半はあると言える。

彼の目的は大半がこれで、様々なパーツを買いにこの街に訪れる。多種多様、新旧様々なパーツが手に入るのはここ位なのだ。

 

 

(通らないように回り道…もいいんだけど、それはそれで面倒だ)

 

だが通れば通ったで道でビラ配りに絶対に捕まえられる。なんとか振り払っても数分後にはまた別の店から、目的地に着いても同じようにされることもある。

始めて来てからずっとそんな目にあってしまっていたので、心底うんざりとしてしまう。いくら客寄せのためとはいえ、しつこく何度もというのは流石に怒りを覚える。客を人間としてというより、金と人気のための糧としか思っていないようなのがほとんどだ。

ならばそこを通らなければいいと言うが、それも難しい。回り道をすればそれなりに時間が多く必要になるのだ。

 

 

(さて。今日は…)

 

そんな憂鬱さを頭の中に過らせながら、オタコンは今日も二次元の世界が彩る街を歩き、目的のものを探しに出かける。

今回はとあるパーツ探しが目的だ。

 

 

「ええっと…」

 

彼らが使用するPCなどの機材といえば殆どが今を行くような最新式のもので、こういったマニアックな場所には縁がないかと思われがちだが、逆に彼にとってはここは重宝するべき場所だ。

パーツの種類だけでなく、数や信頼性などネット販売に比べれば比較的容易。しかも場合によっては安価だったりする。資金面では困っていないが、こういった事はいつか後に繋がる。何かの修理費、改修費、巨額の売買など彼らの立場上そうしたことに直面しないとは言い切れない。

 

「アレと、コレと…それと…」

 

パーツにも種類があり、出回っている店によっては数も違う場合だってある。店を変えてはパーツを見たざめ、どれが自分が求めているものかと探していく。

 

「…取り合えずは」

 

店は似たようなパーツを出していても微妙に違う場合だってある。それに中には場所が離れていてそこでないと手に入らない、なんてこともままある事だ。

兎も角、彼はその場で手に入れられるだけのパーツを買い、気だるく店番をしている店員からパーツの入った袋を受け取る。簡潔ではあるが、これがオタコンが外出すれば大抵行うことだ。

 

「…ネットよりかは安心かな」

 

少し前に経験したことを思い返しながら、今日の目的を果たした中身を確認する。専門的なパーツが幾つかそのままで入れられており、清潔感はないが逆に何もされてないままの無骨さが妙に味になっている。

だがそれではビニールの袋が破れるのではないかと、僅かながら不安も過っていた。

 

 

 

 

用事を済ませたオタコンは、真っ直ぐに帰路へ付きつつも何か言ってみたい場所はないかと自身に問うように辺りを見回す。

一応は自身の好むジャンルが集中しているような場所だ。視線が動かないわけもない。

だが興味がないという訳でもなく、逆に絶対にここに寄ろうという場所もない。過去の出来事からか以前のようなのめり込むようにハマることはなく、もはや趣味の一環として、観賞するようになっていた。

 

 

 

 

「…よし」

 

小さく呟くと足を一つの建物へと向ける。

気分が乗った。少し寄り道をしようと、彼は近くで目に留まった店へと踏み入った。

ゲーム、DVD等を扱う家電店の分店だ。家電ではなく、その地域の特性かサブカルチャーをメインに取り扱っている店で彼も二度ほど訪れたことがある。

余談だが、一夏曰くオタコンはゲームは得意ではないようで専らアニメ観賞専門という。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に口から深いため息が出た。

少し生暖かいその空気には体内にたまっていたストレスやらが混じっていたらしく、肩の荷が下りたというより脱力感があった。本当は今出すべきではないが、出てしまうという感覚。今年の一学期に入ってから、溜まっていたものが少しだけだが漏れだしてしまっているのかもしれない。

 

 

「………はぁ」

 

斯くして今後に不安しかなかった織斑千冬は二度目のため息と共に職員室へと入る。すると、室内に入った瞬間に彼女はある事に気付く。

風景の中に少し寂しさを感じたのだ。

 

「ッ…そうか…」

 

ぽつりと、今思い出したように呟いた千冬はいつもなら顔を向けて挨拶するだろう人間が今日に限り居ないことを思い出して頭を掻く。反射的に、いつもそうすることから行うはずだったことだが、それが今回はない。

クラスの担任、山田真那は本日有給休暇をとっていたのだ。

 

「休暇、か。そういえば溜まっていたな…」

 

新学期が始まってまだ数か月だが、正直今でも休暇の使い道を殆ど思いつかないのが彼女の実際だ。家に帰ろうとも、自宅は自分の所為でゴミ屋敷ならみゴミ帝国。寮の部屋も似たような物でゴミのユートピアだ。だがだからと言って行きたい場所というのもない。

 

「………。」

 

 

 

だがもし。強いて上げるのであれば、彼の居る場所。

そこに一日ないし半日だけでも居たい。それが今の彼女の願望だ。そして願わくば、と。

だが今は叶えられぬ夢であり、届かない現実でもある。

 

 

「………ッ」

 

不意に耽ってしまった夢物語に希望を抱きそうになったが、直ぐに現実へと意識を引き戻し今やるべきことをとデスクに座る。そして、少しの間だが浸れたというだけで願望を忘れるように向かい合うのだった。

 

 

「…忘れろ。今は…」

 

今はそんなことを思い出している時ではない。

自身にそう言い聞かせ、再びその場での自分に戻る。今はそれが自分自身なのだからと。

一息をつけ、いざ仕事にとりかかろうとした時、千冬はふと偶然にも隣の真那の席が視界に入った。

何かデスクの上に置いてあると思い、顔を寄せると

 

 

「…イベント…?」

 

何やらサブカルチャー系らしきもののチラシが一枚無造作に置かれており、それを目にすると、思い出すように呟いた。

 

「…そういえば、アイツこういうのが趣味だったか」

 

以前、彼女と趣味などについて語り合ったことがあり、その時の記憶を思い出す。

恥ずかしそうな赤面顔で、口ごもるように話してくれた自分の趣味。一笑することもなく、ただそれが彼女の好きなことであるのだと知った千冬はそれを笑いのネタにはしようともせずに聞き入れていた。

 

 

―――自分はこういった二次元系が好きなんです

 

それが、恥ずかしがりながらも告白した彼女の趣味だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大抵、場違いの場所に踏み入ると人間は必ずといっていいほどある仕草を行う。自分と同類、つまり似た境遇や見た目の人間が居るかどうかという仲間探しだ。

ある程度それに慣れていたり、度胸のある人間ならばそこまで気にはしないが、気弱でなくても辺りからの視線や浮いた感覚にアウェー感を感じるのと同じだ。

誰が見てなくても見られているような感覚。自分が周りの人間とは違うのだと無意識に感じてしまう感覚。

人間、自分と似たような人間が居なければ難しいのだ。

 

 

 

 

―――が。

 

 

 

 

 

 

(―――――まさか、悪魔の悪戯…とかじゃないよな)

 

 

目の前に現れた同族。しかし、それは彼にとって幸か不幸か。

つらいジンクスを呼び覚ますような出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――時間を少し巻き戻す

店舗へと入り、目当ての物がある場所に踏み込むオタコン。

入った瞬間から店内放送や流れる音楽、そして辺り至る所で流れるゲームのPVや紹介映像。

そういった騒音を聞き流しつつ、寄り道の目的であるDVDの売り場へと向かう。なにが安いか、ポイントがどうとか。大抵そういったものが流れる放送に一々耳を傾ける人間はそうはいない。

ただ黙々と目的の場所、自分が見たい、買いたいと思うものがある場所へと進んで行く。

 

ずらりと並んだDVDのパッケージの棚。ジャンルやシリーズごとに整理された商品は、全てではないが値段が手書きで書き記されている。しかも、その手書きで書かれている価格は他の中古等を売っている店よりも安価で、かなり手が出しやすくなっているのも特徴的だ。その代わり安価になるだけの理由はしっかりとあり値段と共に注釈が書かれている。僅かに曲がっていたり、傷がついていたり。通常の売り物であるなら廃棄されることだってある商品だが、だからこそそれをあえて承知の上で売るのが安価である理由だ。

 

 

「さて…」

 

だが、彼が訪れた場所は大手の家電店に名を連ねることからそこまでの損傷などがある商品は置かれず、いわゆる中古と呼ばれるような品と新作が半々となっていた。

そんな中を目ぼしいものは無いかと探し歩き、巡っていくオタコン。彼の記憶が正しければ最近興味を持ったアニメの新作がそろそろ入っているはずなのだ。

 

 

 

(―――あった)

 

目の前の新作の棚に、目当てのものが置かれていた。値段こそ市場で出回っているのとあまり遜色ないが、それでも見つけられたことに若干の嬉しさと優越感があり、既に買った後のことを考えつつも迷わず手を伸ばした。

 

 

 

 

しかし次の瞬間、彼は自分の視界に映っていたはずの誰かが近づいていることに気付けず、しかも距離感から自分とほぼ同じ場所同じ方向を向いて手を伸ばしていると気づけなかったせいで互いの手が同じDVDに触れあってしまった。

同じパッケージに触れて動かないことに気付き、一体どうしてなのかと考えること一秒足らず。互いに顔を合わせた瞬間にそれを理解し察した二人は驚き、戸惑った顔でほぼ同時に手放してしまう。

二人が持つことで宙に浮いていたパッケージも同時に手放したことで支える力が無くなってしまい、地面へと落下。軽いプラスチックのような音が二人の間で響き、止まっていた思考が再び動き出した。

 

 

 

「あっ…ご、ゴメンナサイ!?」

 

「あ…いえ…こちらこそ申し訳ない…」

 

日本語での謝罪にまだぎこちない発音で返すと、オタコンは一瞬だが地面に落ちたパッケージを拾おうとする女性の姿を上からだが眺めた。

おっとりとした雰囲気とそれに合うかのように整った緑のショートヘア。明るい目の服装は彼女の性格だろう。そして女性として整ったスタイルと目が合った瞬間だが見えた顔はまだ眼鏡をかけていたがまだ少し幼げにも見えた。

 

 

その姿に一瞬、彼女(・・)の幻影が見えたように思えた。

 

 

「………。」

 

「…あの…なにか?」

 

「えっ…あ…いや…」

 

 

奥に映り込んだまやかし(・・・・)に戸惑いながらも直ぐにそれを否定する。

それはただの幻影だ、と。

 

拾い上げたパッケージを手に、立ち上がった彼女の姿を見て僅かだが視線を逸らしながらも目を合わせる。

純粋無垢というのだろうか、澄んだ瞳で見つめる姿は背丈が自分よりも低いことから年下の妹のようにも思えてしまう。実際それだけの歳の差があるのかもしれないが、この時まだ赤の他人として出会ったので知る事ができなかった。

 

 

 

 

 

 

…そして、時は現在へと至る。

 

 

 

 

 

 

 

「すみません…これここ等辺じゃ中々なかったので、見つけた時に嬉しくってつい…」

 

「…気にしないで、僕も同じようなものですから」

 

改まって謝罪する彼女に、自分にも罪はあると言葉を返す。実際、彼も理由は言葉通りで手に取ろうと瞬間には次のことを考えていたのだ。口に出すようなことではないが、既に勝利を確信していたのは慢心となんら変わりはない。

確実になるまで気を緩めてはいけない。もし緩めればその時が最後だ。

いつか彼の相棒がかっこつけのように言ったのであまりいい気がしていなかったという顔を思い出しつつも、今は目の前の彼女とのちょっとしたトラブルの収拾に意識を向けた。

 

が。気が付けば目の前に居る彼女は少し意識がハッキリとしていないのか呆けたように自分を見ており、オタコンはなにかあったのかと気遣うように訊ねる。

 

「あの…」

 

「…えっ…ああ………」

 

「…大丈夫…?」

 

「はい…大人の外人さんと話すのは初めてですので…」

 

「………!」

 

大人の外国人と話すかどうかはさておき、自分を外人であると見抜いたことに少し驚いた。

自慢する事ではないが、オタコンはややアジア系に近い見た目であるらしく、それはアジア人である一夏からもお墨付きを貰っていた。

曰く、目を見ない限りは判別はしにくいらしく、眼鏡もかけていることから後ろ姿からは分かりにくいとも言われた。顔つきや目は外国人のようであるということから、正面からしか分からないという事に少し傷ついたことを思い返す。

 

 

「…えっ…もしかして違い…」

 

「…いや…知人にアジア系に近い髪の色とかしているからって言われたので、こうも簡単に当てられたことに少し驚いて…」

 

「…そうなんですか?」

 

「ええ…一応、生まれはアメリカですから…」

 

「ああ、やっぱり。外人さんだからもしかしてと思いましたけど…」

 

「…でも、よく僕がアメリカ人だって気付きましたね」

 

「それは簡単ですよ」

 

 

笑顔で答えた彼女に目を丸くする。純粋に笑っているだけだというのにどこか抜け目のないような感じに見えてしまい、それはどういうことなのかと言わずに訊ねてしまう。

 

「日本語。少しカタコトでしたから」

 

「あ…」

 

発音の違いというわけだ。英語と日本語は発音の仕方に違いがあると以前何処かのテレビで言っていたことを思い出した。顔だなんだと言う前に、彼女はその覚えたばかりのようなカタコトの日本語で外国人なのではないかと推測したのだ。

事実、それは正しく、オタコンはアメリカ人であるという事が彼女の中の情報に追加された。

 

「…顔だ何だって言う以前の問題ですね」

 

「ですが、結構お上手ですね。長いのですか?」

 

「いや、知り合いに日本人が居るので…」

 

興味ありげに反応する彼女の姿に眩しく思えたオタコンは、そろそろ適当に話しを切り上げるべきかと考え始める。

今はこうして話しているが、二人とも元は自分たちが欲しかった物のために偶然出会っただけで、しかもその品は現在彼女の手にある。ならばここは身を退いて日を改めるべきだろう。

 

「…よければソレ…貴方に譲りますよ。僕はまた日を改めるので」

 

「え…あ…でも…」

 

「女性のものを未練がましく強請(ねだ)るのは流石に僕も恥ずかしいですから」

 

主導権は彼女にある。ならば、ここは男として身を退くのが当然だろう。

女性のものを無理にでもねだったりすれば、それこそ人間としてというより男としてどうこうになる。オタコンにも最低限、そういった考えは持ち合わせているので大人しく引いて話の幕を引こうとした。

だが、相手である彼女が優しかったからか彼の予想とは違った結果へと転がってしまう。

 

 

「ですから、それは貴方に…」

 

「…あ…ありがとうございます。でも…」

 

「………?」

 

「やっぱり、譲ってもらえるだけだと私も図々しいというか…なんとというか…」

 

「………。」

 

「だから…その…」

 

 

 

 

 

 

 

―――ああ。なんでこうなったんだろう。

 

 

自分の性分を呪いながらも、オタコンは彼女からの申し出を断ることもなく聞き入れたのだった。

 

 

人、それをデートと言う…かもしれないシチュエーションになると、薄々勘付きながら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直、オタコンか乗り気でないのは理由がいい加減だからや、あまりに強引だからではない。

その理由を理解できるのは彼自身を加えて数人程度。しかも更に詳しくとなればたった一人しかいない。

彼なりの理由。それは相手が女性であるからだ。

 

 

(困ったな…)

 

 

さてどうするかな、と成り行のようになってしまった状況に頭を抱えるオタコンは、どうやって現状打破をするべきか考える。

彼女も本当は申し訳ないと思ってはいるが、それが今の行動に拍車をかけている。悪意や裏があるわけではない。ただそれでは自分が納得しないし、相手も曇った気持ちのままになってしまう。

そうなってしまうのは彼女自身が受け入れなかった。

 

(変に断りを入れたら結構根に持つタイプ…かな。参ったな、やりにくい相手だ)

 

無理に断りやありもしない別件を言ってしまえば、根に持つというより自分の失敗だと引きずってしまう。

自分の所為だ。自分がもっとああしていれば、と後悔と反省がほとんどを占めて更に引っ込んでしまう。何度も何度も、そうしてきたせいで前に出てはいけないんだと思い込んでしまう相手だ。

 

 

(なら、方法は一つかな…)

 

 

諦めて彼女に付き合う。もはやそれしか方法もないだろう。

適当に合わせるのではなく、言葉をうまく使い分けて彼女を傷つけないようにする。傷つきやすいというよりも自分から傷つけやすいのであれば、それに合わせて上手く傷つけないようすればいい。

それが現状で彼が導き出した最良の選択肢だ。

 

 

 

 

 

 

「―――そういえば、まだ名前を言ってませんでしたね」

 

唐突に少し前を歩いていた彼女が苦笑しながら顔を振り返らせる。今更なことを思い出してしまい気まずい顔で頬をかく姿に、オタコンも忘れていたことのように気付いた。

 

 

「私、山田真那と言います。一応、こう見えて教師をしています」

 

改まって振り返り自身の名前を名乗る彼女に釣られてオタコンも自分の名を名乗ろうとするが、名乗ろうとした瞬間に彼の中にある意識がそれをせき止めてしまう。

 

「―――。」

 

自分でもどうしたのかと思ってしまうが、直後に自分のことを思い出してしまい「そうするべきか」と躊躇してしまったのだ。もう何年も前のことだと言うのに無意識にそれを心配してしまった自分に馬鹿らしく思ってしまうが、それでもその考えとは違う何かによって、彼の口から出た言葉は変えられた。

 

「―――僕は…」

 

「………?」

 

 

「…うん。少し恥ずかしいから、今は「オタコン」って呼んでくれ」

 

「オタコン…ですか?」

 

「友人とかに使われてるニックネーム。ちょっと自分の名前をこういう所で名乗るのが恥ずかしくって…」

 

実際は今でもお尋ね者なのかもしれないというちょっとした心配に自分の本名を明かすことに渋ってしまう。

後で知った事だが、「愛国者達」が崩壊した今ではもう指名手配はされておらず、表向き行方不明扱いとなっていた。恐らく、二人にかけられていた罪状の一部が捏造されてたり、本来彼らの罪状でないものがあったことからの格下げ認定だ。

 

 

「…なんだか、親しみやすいというか…呼び慣れた名前のように思えます」

 

「そうかな…?」

 

「そうですよ。だって、その名前を言って嬉しそうですから」

 

柔らかい笑顔で言ったことに自分でも分からなかったオタコンは、そうだったのかと驚いた様子で苦笑し自分の顔に触れる。確かに少し頬の肉が動いているように思えるがそれは自分が苦笑したからだろうと気付く。

彼女の言ったその時の顔は自分が苦笑した瞬間に消えてしまったのだ。

 

「………。」

 

「あ…違いましたか…?」

 

「…いや、もしかしたらそうなのかもって思ってね」

 

「えっ…?」

 

「…正直な話、僕は自分の名前が嫌いでね」

 

「本名が…ですか?」

 

「うん。親は願いを込めてって言ってたけど、僕の親は揃いも揃ってロクデナシでね。特に父親は酷かった」

 

 

曲がり角に入り、大通りから外れた二人。小道ではないが一方通行の道路の端を並んで歩いていく。

人気はない。まるで世界で生き残った人間が彼らだけなのかというほど周りには不思議と誰も居なかった。

 

「…しかも、あろうことに僕の名前は僕に対する願いじゃなかった。単に自分の夢を…自分の願望をただ僕という人間に与えただけだった」

 

「………。」

 

「父は確かに本当は別の意味を込めたのかもしれない。

―――けど、それが絶対にそう受け止められるって、意味をちゃんと知ってもらえるって誰も保障できない」

 

本当はもっと科学者であっても、それらしい意味があったのだろう。だがオタコンはそれ以前に自分の名前がとられたオリジナルと、その内容を知ってしまった。

その瞬間、彼の父への感情は少しずつ怒りに変わっていたのかもしれない。

いくら理由が正しくあっても、そのオリジナルを知ってしまえば幻滅してしまうのだ。

オタコン。ハル・エメリッヒの名前の由来。

それが「2001年 宇宙の旅」に搭乗するAI(・・)「HAL」から取られていたことに、彼は後に相棒であったスネークに怒りと共に思いの丈をまき散らした。

当時オタコンのことについて家庭の面では知らないことが多かったスネークは当時、その話を切り出され怒りをあらわにした時のことを今でも鮮明に思い出すと語った。

 

 

「…難しいですよね。人間って」

 

「あ…」

 

次第に思考に耽ってしまい半分ほど思っていたことを口に出してしまい、今更になって沈んだ声にようやく気付いたが、既に遅く隣には自分の話に沈んだ彼女の姿があった。いつの間にか自分の世界に入ってしまっていた彼は目の前の状況が本当に見えていなかったようで、改めて入ってくる情報に気を落とす事しかできなかった。

 

「…申し訳ない」

 

「いえ。私も少し強引すぎたっていうか…すみません、あまり言いたくないことを…」

 

言いたくなかったのは事実ではあるが、だがなにもとオタコンは言い訳を付け足そうとする。しかしその場に限って都合のいい言葉が見つからず、口ごもってしまった彼は掠れた声でしか返答することができない。

 

「………いや」

 

「ビックリしたんです。自分の名前が嫌いだって言った人…私の中じゃそうそう居なかったですし…」

 

本当ならここで僅かな疑問に問うべきところなのだろう。しかし、場の空気を悪くしたと思い他のことに考えが向かなかったオタコンにはそこまでのことに気付く余裕もなく、ただどうやってこの場を打開するかを考えるのに精一杯だった。

 

 

「…ごめんなさい。なんか重い話にしちゃって」

 

「いや、謝るのは僕だ。無理してくれたっていうのに、それをぶっちもんにしようとしたんだ」

 

「ぶっちもん…」

 

「え…ああ…ちょっと知り合いに若い子が居てね。その子がよくそういった少し違う言葉を使うんだ」

 

「…そういえば、今ご家族は?」

 

「今は…えっと…」

 

指折り数えて数えるが、実際メンバーは彼を入れて五人。しかし彼らを家族と呼ぶべきか親友、友人、同居人と呼ぶべきかと変なところで考え込んでしまう。

だがこの場合は彼らをそう呼ぶべきだろうと思い、オタコンは結論を出す。

 

「五人…かな、僕を入れて」

 

「へぇ…」

 

「といっても、みんな変わり者でね。老人臭のしない老人と、やたら家事スキルのある朴念仁、最近になって性格が変わり過ぎた子と、そこに妙に馴染んでいる子が一人…ってね」

 

「老人臭がしない…っていう人は?」

 

「…なんて言えばいいんだろ。見た目とかは老人なんだけど、こう…動きの一つ一つが若いっていうのかな」

 

「あー…年老いてるけどまだ全然体が動くっていう」

 

そうそう。と答えるオタコン。当然、言っている人物は元相棒のことだが事実であることと今までの印象や経験から否定することができなかった。

なにせ彼の前では現実や常識といったものがアッサリと覆されてしまうのだ。

 

「今でも体にガタが来ているのに良く動くんだよねぇ」

 

「見かけによらずってやつですね、私も何度か思い知らされました…」

 

「最近の老人って結構アクティブだから、色々な意味で困りものだ」

 

「「全く、最近の若いもんは」って言葉ではいいませんけど、行動でそれを示すところが余計にというか…そういうところは言葉で言ってほしいところですよね」

 

「老人って行動より言葉ってイメージだから、もう少し経験からの言葉も欲しいと思うんだけど、そこは察しろっていうのがね。向こうの手心だっていうのは分かるけど、少しは口で伝えてもいいんじゃないかって思うよ」

 

「まぁ、そこを若者の力で頑張れって言いますけど、私たちもそこまで頑張るのに時間がいるっていうか…そうホイホイ出来るものでもないですし」

 

全く最近の老人は、と聞こえてないのをいいことに溜まっていた不満をここぞとばかりに吐き出す二人。自然と会話に気を取られていたせいで自分たちがどこにいるのか、なにをしていたのかというのがいつの間にか忘れていき、気が付けば二人は本当に関係を持っているかのように苦笑し話を弾ませていた。

 

 

「…そういう…えっと…」

 

「………?」

 

「山田さん…だっけ」

 

「はい―――」

 

「貴方の家族は…?」

 

「………。」

 

しまった。マズイところを踏んでしまったかと思わず目を逸らし、気にしないでくれと言おうとしたが、それどころか彼女は気恥ずかしい顔になっており薄く赤らめた顔は話すべきかそうでないかを裁決している最中だった。

しかし、恐らくオタコンが自分の家族について話してくれたからだろう。彼女の中でも裁決が決まったそうで勇気を振り絞ったかのように話し始めた。

 

「実は…会ってないんです。ここ数年」

 

「え…?」

 

「実は私…自分の進路を決めるときに親の喧嘩して…両親が私の事を思って反発してくれたのは分かるんですけど、当時の私にとってそれは夢を壊されてるのと同じで…結局それが嫌なばっかりに変に強がって…それっきり」

 

「出て行った?」

 

「はいぃ…」

 

本当に恥ずかしかった。というより思い出したくなかったのだろう。彼女にとって親と喧嘩した理由が今となっては馬鹿みたいにしか思えず、それが理由で今まで話す事を渋っていたらしい。

だが聞いていた方はそれ以上の理由で家を出てしまったと言うに言えず、今は奥に閉まっておこうと話す事をしないでおいた。

きっと今の彼女が聞けば戦慄するか自分が馬鹿だったと余計に責めるだろうと。

 

「そんなに揉めたの?」

 

「…まぁ…時期が時期であったんで…それに、最終的な職業を聞いたら目の色変えて猛反発して…」

 

「…もしかして」

 

この近くで学校の教師をしている。最終的になにに成りたいかを聞かれ、それに反発された。そして日本という国。

この三つだけでオタコンは一つの答えへとたどり着いた。

 

「…ISの操縦者…いや、代表候補生…かな」

 

「あっ…」

 

「―――なるほどね」

 

図星であるという顔にオタコンは頷く。

彼女が技術者としてならばまだ両親は許せただろう。だが、実際に乗るとなれば最悪戦場に駆り出されるということだってあり得る。恐らくそういったことについて恐れていたのが理由で彼女の代表候補生への道を反対したのだと。

日本の体制からそうなることは先ず少ないと分かってはいるが、もしかしたらという「if」に彼女の両親は考えてしまったのだ。実際のところ、日本はそんな事をする気など当時はサラサラなかったが今となっては少しずつ外国への派遣という意見が増えてきている。

更に代表候補にもなれば企業ないし軍、つまり自衛隊へと入る事が出来る。そうなれば一般の職よりも給料面での優位さは言うまでもない。

 

「戦争経済当時、日本は戦地への支援物資を送るために自衛隊の派遣を検討していた。けど、憲法第九条と国内での反発を理由に結局断念。最低限の護衛隊のみを派遣し一応は穏便に済ませた」

 

「まぁ確かに自衛隊…公務員なら給料が良いですから考えはしたんですけどね。でも私がそこまで言ってないのに親が絶対に自衛隊に入ると思ったらしくって…」

 

「本当はテストパイロット志望だったってこと?」

 

「ええ。それなら国内で活動するだけですし、よほどの事でない限り戦場には出ない。親にも心配をかけないだろうって思ってたんですけど…考えが甘かったっていうか…」

 

なにを基準として彼女の両親がそう思い至ったのかはオタコンにも分からない。

だがそれでも何となく、彼には両親の気持ちが解らなくもなかった。

 

「まぁ…両親の反発も分からなくもないさ」

 

「なっ…それって…!」

 

「別に君が考えなしだとは言ってないし、問題はそこじゃないんだ」

 

「………。」

 

「二年前までの戦争経済当時。世界の約半数以上は戦場と言われていた。その為、世間ではいろんなところで戦場広告やマーケットが行われていた。戦場はもちろん、貧困地域、隔離地区、旧都市。そして発展途上国や列強国の道路の電柱だって。

戦争は、日常のひとつだったんだ」

 

「それは…」

 

「IDで管理され、感情も抑制され、機械が動くかのように進んで行く戦争。かつての世界はそんな戦場にあふれかえっていた。戦争で失われる命は金になり。金は新たな戦争を生む。資材は新たな兵器を生み、壊れた兵器はまた新たな資材と兵器の礎となる。

あんなに嫌だった日常が、今はもうどこにもない。代わりに無差別と言えるような戦争が舞い戻ったけど」

 

「………。」

 

「人も、兵器も、戦争も管理された世界。聞いただけでも誰でもそんな世界に入れさせたくはないって考えるさ。

―――君の両親はそんな世界に君を入れさせたくなかったんだと思う」

 

「…管理された世界に…ですか」

 

「うん。けどそれ以上に反発した理由は多分、そうやって機械的な世界に入って死んでしまうってことを恐れたからだと思うんだ。ひと昔みたいに乱雑で粗悪な戦いがあって、そこで死んでしまうんじゃない。機械のように戦って、ウイルスだったからって削除されるみたいに死んでしまう。それが嫌だったから…なんじゃないかな」

 

「それは…そう…ですね。けど、親がそこまで考えてくれたのかは分かりませんケド」

 

「それでも多分君を戦場に…戦争に関係するってことを許せなかったんだと、僕はも思うな」

 

 

 

独り言のように言った。

今ではIS、インフィニット・ストラトスに対する見方は初期と戦争経済突入前のと現在のとでは決定的と言える差がある。

登場当時、ISは未知の新兵器、新技術として見られていた。

そして、それを平和利用と偽り、スポーツでその圧倒的力を見せつけ、世界を女性優位の社会にしようとすることもあった。

だが今では既にそれは形骸だけになり、ISは兵器であるというのが一般概念だ。

既にかつて開発企業に回されていたコアもその七割が軍用に転用。更に一部がPMCに渡るという状態になっている。

そして、IS学園に渡る代表候補生たちの使用する機体も後に軍用として量産が期待されるもの。

 

 

「ISが出て間もないころ。私は、一度でいいから乗ってみたいって思ってたんです」

 

「一度だけ…?」

 

「ええ。誰かに乗せてもらうだけでもいい。それでも良いから、空を飛んでみたいって」

 

「…空を…か。今となっちゃヘリや飛行機があるけど―――」

 

「ISってパワードスーツみたいに飛行するから、それに憧れて…」

 

「下手すりゃ落っこちるってこともあるんだよ?」

 

「そ、それでも乗ってみたいって当時は思ってたんです!」

 

子どものように恥じらう彼女の姿に苦笑して謝る。だが当時であれば、そんな考えをする子どもや若者が居ても可笑しくなかっただろう。少なくとも、目の前にいる真那もそれ一人だった。子どものように、アニメやゲームの世界であったものが現実になった時、一度でいいからと子どものようにはしゃいだころ。そんな夢にあふれた時は人類史ではいつだってあった。

しかしそれは既に過去の出来事となっていて、今ではそんなことは笑い話にしかならない。

兵器は兵器。変わる事はないと誰かが言う。

夢があふれた後には絶対に現実という風に吹かれ、消え去るか弾けてしまう。

 

「戦争経済ってなって世間じゃISは兵器だ。暴力装置だって酷い言われようで…私が昔思ってたのは嘘だったんだって思い知らされたんです」

 

「戦争経済当時、ISの戦線投入によって戦局が一気に覆された戦争…第二次湾岸戦争だね。ニュースで見たけど…酷いってモンじゃなかった」

 

…実際、元相棒はそこに行って一か月ほど地獄を味わって来た、という本人の嫌味を思い出す。

 

「たった三機のISが戦場を飛び交い、手に持った武器だけで戦車や軍事施設、そして兵士たちを薙ぎ払っていく。ニュースじゃ規制されてたけど、偶然見つけたサイトでそれを見て…本当に絶望したんです」

 

「…だったら、何故君はそれでもISに乗ろうと思ったんだい。そうなればどの道―――」

 

「そうなるって分かってたんです。何時かは戦争に駆り出されるんだろうなって…けど、そんな事に気付いたのは本当に後。それでも私は…諦めきれなかったんです」

 

「………。」

 

「他のことも考えましたよ。でも、私がやれること。やりたい事は何一つなかった。ただISに乗りたいって言う事を除いて」

 

「―――だから、それでも目指すと決めた…か」

 

「才能ないなって思いもしました。でも…自分が本当に出来ることがそれしかないって思ってしまったときに…私の道はもう無意識の内に決めてしまってたみたいなんです」

 

才能がないのではない。他に才能を見出さないようにと自分からセーブしていたのではないか。彼女がISに憧れた瞬間に、自分にはそれしかないと無意識の内に思ってしまった。だから他の才能を花開かせその道の障害にならせてはならないと。気付かないうちにもう一人の自分がそういって抑えていたのかもしれない。

 

「―――後悔は…してないのかい?」

 

「―――え?」

 

「…君なら普通に教師をすることだってできたハズ。なのに…」

 

「それを今しているんですよ。後悔した分を取り戻そうって」

 

「………そうか」

 

少し、遠くなったように思えた感覚に寂しさを感じるがそれでも距離は近く思えた。少しでも手を伸ばせば、もしかしたら届くだろうというような距離。

不思議と、オタコンは彼女と、真那と離れることはないと無意識にそう思えて仕方なかった。いつか感じた時のように。

 

 

 

「…君は―――」

 

 

「あっ…もうこんな時間…!」

 

「えっ…?」

 

「実は今日外出時間決められてて…もう直ぐ帰らないと間に合わなくって…」

 

唐突に言い出したことにどうしていいまで言わなかったのかと思ってしまうが、彼女がそう言って焦りだしたからには言うのも野暮だと思い、オタコンはならすぐにと背中を押す。

 

「…今からなら間に合う?」

 

「はい。モノレールに乗ればすぐに」

 

「わかった。なら、ここでお別れだね」

 

「えっ…そうなんですか?」

 

「うん。偶々この近くだからね」

 

本当に偶然にも自宅に近かったことが幸いしたが、下手をすれば知り合いの誰かに見られた茶化されるんじゃないかと薄々気にしていた。特に相棒二人には何を言われるのやら。

周りの様子を窺いながら早く帰った方がいいと進言し話を締めくくったオタコンだったが、なにで思い出したのか真那は今になってある事を言い出した。

 

「あ…」

 

「うん…?」

 

「………これ…ありがとうございます」

 

「え…ああ…」

 

そういえばと思い彼女の胸元を見ると、元々の切欠であるDVDが握られていた。赤らめている恥ずかしそうな顔はそれを改まっていうことに勇気を持ったようで、感謝を述べた時にはホッと安堵の息を吐いている。

結局なし崩し的に彼女のものとなったが、そこまで未練がましく思わないオタコンはすっかりその場でのDVDのことについて諦めていた。

 

「なんか結局私が肌身離さずみたいになっちゃって…」

 

「構わないさ。それに、君のほうがそれを欲しがってたようだし…」

 

「えっ…あっ…!?」

 

「最初にあった時、そんな顔してたから」

 

もしそれが真実ならとその時の無我夢中だった自分を思い出した真那の顔は恥ずかしさのあまり沸騰し始める。どうやら自分でも物欲のあまり自分がどんな様子だったのかさえ覚えてなかったようで、それを聞くや否やそうだったのかと赤くなった顔で俯いている。

 

「ほ、本当にありがみませんでした!?」

 

(ありがみ…)

 

なんだか神様みたいなお礼の言い方だなと思いながらも、それ以上のダメ出しをしないことにするオタコンは苦笑いをしてその場をやり過ごす。本当にもらえたことが嬉しかったようで、その嬉しさと親切さに呂律が回らなかったのだろう

 

 

―――と思っていたオタコンだが、実際はもう一つ理由があるのだが、それは今のところ目の前で慌てている彼女にしか分からないことだ。

 

 

 

 

 

 

「―――えっと…本当に…ありがとうございます。その…オタコン…さん」

 

「…さんは…多分要らないかな」

 

 

 

 

 

 

 

この後、無事に時間内に学園に戻れた真那。

一方のオタコンは遅くなったという事でサニーに問い詰められていたと言う。

 

そして、二人の関係はこれを切欠に始まったのだ。

 

 

 

 

 







オマケ。


「…パワードスーツよりもEMPSのほうがよかったですかね…」

「…ゲーム、したの?」

「あ。しました。ご馳走様です」

「面白かった?」

「ええ、とても…」


カズ「声優同士かっ!!!」
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