IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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お久しぶりです!
いよいよIS×MGSの第三幕、Act.3の開幕です!!

…っていっても自分も上手くできるか少し心配気味です(汗
未だに誤字も多いですし。
もし誤字があれば皆さん、どんどんとお願いします。


さて。いよいよAct.3という事なんですが…
最初っからぶっ飛ばしてます。色々と。
もう「え。そうだっけ?」っていうくらいに。
詳しいこととかについては次回に持ち越すのでご安心を。
…ま。イキナリな話なんで付け足しとか色々と増える可能性が高いので、そこもご了承ください…(汗


それでは、Act.3の始まり、第六十話をお楽しみ下さい!


Act.3 Break world
No.60 「パートナー」


 

 

 

 

少し先の未来

 

 

しかし。それは過去にも同じことが起こっていたなど、誰も知る事はない

 

 

ただその時の出来事と、これから彼らが経験するであろう未来は

 

 

 

 

 

 

偶然にも、一致してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――。」

 

射撃訓練のターゲットを見つめる一夏は、浮遊している三つの的にM4を構える。

以前と同様に何もアクセサリーを付けていないのは素のままであれば銃の異常などが分かりやすいからだ。ありのままであるからこそ、重さやブレ、排莢などの細かな異変に気付ける。一応受け売りではあるが、特に反論もなかった彼はいつの間にか無意識にそうやっていた。

 

「…ふぅっ…」

 

 

小さく息を吐いて呼吸を整える。神経を研ぎ澄まし、両手に構えるM4をしっかりと握りしめてブレや反動で暴れないようにする。大げさと言えばそうなるが、別に急ぐようなことではないので出来る限り落ち着いて行うのが小さな決まり事だ。

 

 

「――――――!」

 

 

次の瞬間。一夏は狙いを定め瞬時に銃爪を引く。だが銃爪は長く押されず、数秒という短い間に引かれるだけで目の前の的をハチの巣に出来るほどの弾は吐き出されない。

精々二発三発が的に当たるだけで遠くから見ればすぐにわかるものでもない。それでも気にせずに数発撃つと直ぐに次の的。また数秒だけ撃つと次の的といき三つの的に小さな穴を作った。

これで終わりかと思われたが、最後にもう一つの的が現れ、それが三つの的を押しのけて前にせり出てくる。その的が現れると、待っていたかのように一夏はM4を構え、マガジンに残った弾を全てその的へと叩き込む。

連続で吐き出される銃弾の反動に腕が震えて狙いが逸れそうになるが、握りしめられた手によってしっかりと固められた銃身は必要以上に弾けることはない。

 

 

やがてマガジンの中の弾を全て使い切ると、出し切ったM4のトリガーを念入りに何度も引いてから銃身を下げる。撃ち切ったということでもう弾が発砲されることもないが、もしなにかのトラブルでということも踏まえ弾切れになった時には本当にないのかと銃爪を数回引くのが彼のクセになっていた。

 

 

「…少し右にズレたな」

 

無風だったのになと、自分の射撃の腕にケチを付けながら的を確認すると、確かに全体的に右に寄って弾が当たっている。

短く撃った的でも中心に当たってて入るがズレは言わずもがな。最後の連射も弾は中心に集まっているが、右と左で分断すれば右の方が多い。

 

「肩にへんな力が入ってるのか…いや、そういや昔もそうだったな」

 

VRだけでなく実際に実銃をつかった射撃訓練でも右寄りに撃ってしまうことがあった。恐らくは右で構えて撃つので目線がやや右よりになっているからだというのが当時教えていたスネークからの意見だった。

 

「少しは直った思ってたけど、考えが甘かったか…」

 

改正できなかった自分の短所に頭を掻く一夏は、ため息をつくと今まで纏っていた白式を解除。待機状態となった彼の機体は元通りガントレットとなった。

 

「射撃は…セシリアに頼むか…」

 

未だ欠点があると分かった一夏は、その克服のためにと計画を煉り始める。僅かな短所だが、それが原因で失敗することだってありえるので一層慎重になっていた彼は早速とばかりに誰に指導を頼むかを考えていた。

といっても自分よりも戦闘スキルが高い人間となれば学園内では限られて来る。特に射撃となれば恐らくセシリアを置いて右に出る人物はいない。

 

「…さて。普通に請け負ってはくれるだろうが…何をされるか…」

 

だが問題は相手がセシリアであるということ。典型貴族のようにチョロければさして問題もないが、彼が指導を頼もうとしているのは英国特殊部隊SBS出身の”貴族”だ。

他の貴族と違って場数と戦闘能力が違いのは明らかで、しかも思考は読みにくい。日本の狸(と思っている)更識楯無と軽く攻防を行えるのだ。そのせいで腹の底で一体何を考えているのか分からないという一抹の不安が無意識に頭の中に渦巻いていた。

 

 

「諦めて一人で自主練っていうのもアリだが…その場合、短所を克服できるかが問題だよなぁ」

 

色々と今後のことも踏まえ、どうするかと考えていたが中々決断には至れない。自分にとっては一長一短ということでどちらを取るか悩んでいた一夏は、更衣室で着替えを始めようとしたが

 

 

「はぁ…はぁ…!」

 

「ッ…!」

 

「あ…イチカッ!!」

 

突然、更衣室に入って来たシャルロットに誰なのかと警戒していた一夏は思わず目を丸くする。肩で息をして手には一枚の紙。それを長い髪を後ろで纏め、そろそろ熱くなって来ただろう長ズボンをはいていた彼女は、改めて見ると別の意味で大丈夫かと気遣ってしまう。

 

「シャル…どうかし―――」

 

「イチカッ!!」

 

そんな状態でまるでゾンビのように体を酷使して自分のもとに寄って来たので、思わず数歩たじろぐ。そのせいでこの後、彼は援軍というべきものが来るまで彼女に押されることになる。

 

「………。」

 

「あのさ…あのさ…」

 

「あ、ああ…」

 

「ッ………何も聞かずにここに名前を書いて!!!」

 

「………は?」

 

 

突きつけられた紙には上に僅かだが彼女の筆跡で書かれた名前が記されており、その下にふりがなと振られた名前を書くスペースがもう一つ存在している。

要はそこに名前を書いてほしいということらしいが、唐突にそこに名前を書けと言われても素直に聞けるものではない。たとえそれが知り合いからの頼みであっても彼のその答えは変わらない。

 

「…いや、何も聞かずにって言われても…第一、なんの紙かさえ…」

 

「あ…えっとそれは…」

 

息絶え絶えで全身から汗を吹き出しているが、それでも彼女にとって都合の悪い質問だというのが一目でわかるほど嫌な汗を滲ませているのが分かる彼はそれならばと質問を変えて尋ねる。

 

「なら、せめて事情を話してくれ。でないと…」

 

「あー…ええっと…その…」

 

目を逸らしても中々話そうとしないシャルは事情を話すべきかそうでないかと苦笑して誤魔化している。彼女にとっては話すに話しにくい案件らしい。

しかし決して話せないというほど顔は青ざめてはおらず、どちらかと言えば話せることだが話しにくいというような、彼女にとっては恥ずかしいような理由だからというように気まずい顔をしていた。

 

恐らく問い詰めても話すに話せないということで時間が掛かるだろう。

なんとなくだがこの後のことを予想できた一夏は、最悪彼女から取り上げてでも紙の内容を確認するべきかもしれないと考える。男が女からなにかを取り上げるというのは罪悪感があるが、そうでもしなければこの状態が変わることはないだろう。

 

「………。」

 

 

だが念のためにともう一度別の言い方でシャルに訊ねようと小さくため息をついて口を開こうとした、その刹那だ

 

 

 

 

 

 

 

「あ、居たッ!!」

 

「しかも二人とも居る!!」

 

「え、ホント!?」

 

突如更衣室の出入り口からまた別の女子の声が響き、その声よりも先に足音で気付いた一夏は顔を振り向くとそこにあった光景に思わず抜けた声で驚いてしまう。

 

「ゲッ…!?」

 

更衣室の出入り口にはまるで後ろから押し上げられているように女子生徒たちが溢れかえっており、今にも漏れ出てきそうな勢いで彼らを見ている。

一体何事かと戸惑っている一夏は次第に落ち着きを取り戻してはいたが、その勢いのある光景に身を退かせる。彼女たちの目をよく見るとまるで自分が捕まえれば巨万の富を与えられるという珍獣を見ている密猟者のような眼をしていたのだ。

本当に一体何が起こっているのかと思い目の前に居るシャルに訊ねる一夏だが、当人はイキナリ現れた女子生徒たちを見て涙目を浮かべて尻もちをついている。

一目でシャルもそのターゲットだと察した瞬間だった。

 

「…何なんだ…一体」

 

「………。」

 

よく見ると一夏にとって見知った顔が多く、手には恐らくシャルと同じ紙を手に持っている。

いや。全員の顔とまではいかないが、見える範囲で確認できる女子生徒は彼が知っている限り自分と同じクラスメイトばかり。幸いなのかは分からないが本音たち三人や箒たちといった友人関係の面々の姿は見えない。しかしそれでも何故一組の女子生徒がこうも集まってきているのか、一夏には第一としてそれが理解できなかった。

 

すると。その中で今にもというより今すぐあふれかえる女子生徒たちの中を誰かが潜り抜けてきているのが見えたので誰が出てくるのかと目を凝らした。

同時にそれで女子生徒があふれかえるのだろうと相応の覚悟をして逃走を計画していたが、その中から現れた彼女(・・)を見てその考えを止めた。

 

「ちょっ…と…ごめ…」

 

「ッ…鈴」

 

「い…ちっ…かぁ…!!」

 

まるで満員電車の中を潜り抜けているかのように姿を現した鈴はツインテールが若干崩れていたが、そんな事を気にせずに女子生徒の群を突破して更衣室へと入ってきた。彼女は他の女子生徒と違い手には紙をもっておらず疲れもどちらかと言えば走りより人込みの中を潜り抜けたことでの消費だったようだ。

 

「大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫…一応…」

 

「そうか…ところでなんなんだ、アレ」

 

溢れかえり未だ叫んでいる女子生徒軍を見て訊ねる一夏に、あああれね、と呆れ気味に言う鈴。

 

「まぁ…いわば競争ね」

 

「競争?」

 

「そ。誰が先にアンタと組めるか…ってね」

 

「…組むって…なにをだよ」

 

横目で苦笑しているシャルの姿を見て大体を察したのか、ため息をついた鈴は仕方ないといった様子でその理由を話し始める。

 

「なにをって…一夏聞いてないの?」

 

「なにを?」

 

「………。そりゃそこまで呑気でいられるわね」

 

「…? ……??」

 

「組むって言ったらペアでしょうが」

 

あのね、と子をしかるように腰に手を当てて言う鈴になにか重要な事を見落としていたらしいと考える一夏。

しかしペアと言われても彼にはさっぱりで、その顔に更に深いため息をつく。

 

「…予定表。見たわよね」

 

「ざっと見だがな」

 

「ざっと見なら覚えてると思うのだけど」

 

「だから…なにを?」

 

「………。」

 

完全に何も知らないと分かり頭を抱える鈴。彼の隣ではそれを知ったシャルが生気がぬけたように失笑している。

何がどういうことかと未だに理解していない一夏は首をかしげ、それを切欠に若干怒気の混じった声で鈴が言った。

 

 

「タッグマッチ。選手登録。開催日二週間後!」

 

「選手登録は自由で二人一組のペアを提出…」

 

 

 

 

 

「―――――ああ。そういうことか」

 

 

 

 

 

この瞬間。鈴は怒りで一夏の顔面にストレートを入れたいとどれだけ思っただろうか。しかしそれを我慢し頭を抱えた彼女は溜息をはいて呆れるしかなかった。

 

 

「そういう事かって…アンタねぇ…」

 

「仕方ないよ…だって事情も知らないと思うから」

 

「知らないわよ、この顔じゃ」

 

「………一体何の話だ? タッグマッチがあるってことは分かったが…それとアレとにどういう関係があるんだよ」

 

未だ何故入らないのかという疑問もあるが、とりあえずあの有様とタッグマッチとの関係性があると理解した一夏だが、二人の顔は先ほどのように唸ってしまう。

 

「…実はね」

 

「ちょっと…ね」

 

「………?」

 

話す事に戸惑っていた二人は、諦めたとばかりに話しにくそうではあるが語り出した。

 

「タッグマッチの選手登録は今日始まったの。まぁ…それは別にいいのよ。けど問題はそこから…」

 

「誰が撒いたのか分からないけど…実はある噂があってね。それが今のああいった状態になってるんだ…」

 

「噂? また変な嘘話か」

 

「なんだけど…今回はどうしてそうなったのか僕らでもさっぱりでね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――なんでも。アンタかシャルかと組んで優勝したら付き合えるらしい…ってね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那。一夏の思考は停止した。目の前ではまぁそうだわな、と呟く鈴が居る。

噂話が根も葉もないことである事。冗談にしても馬鹿すぎること。そしてそんな世迷言を信じてあふれかえっている現状。

 

 

 

「―――――誰だよ。そんな莫迦な話信じたヤツ」

 

「向こうのみんな」

 

「流した張本人は」

 

「新聞部の人の話じゃ、多分三年だろうって」

 

「………。」

 

 

 

 

 

世の中、本物の馬鹿が居るんだなと思った瞬間だった。

そんな噂話を信じるヤツもそうだが、そんな話を流して自分がどうこうなると思った人間の顔を見てみたいと思ってしまう。大方、彼は敵が多いのでどういう理由なのか、ざまぁないと勘違いしているのだろう。

実際は真逆で呆れかえっているだけだが。

 

「阿保らしい…」

 

「全くよね」

 

「流石に根拠がないよね…」

 

 

だがその所為で現状が面倒事になってしまっているのは事実だ。

生徒たちは出入り口にあふれかえり、自分とタッグを組んでほしいと頼んでいる。通るにはあそこしかなく、退路は完全にふさがれてしまった。無理にでも出ようとすればたちまち餌食となるだろう。

このままでは一夏たちは移動どこから脱出すらも出来なくなる。

 

「…ところで、俺は分かるが…なんでシャルまでもだ?」

 

「…いや…だってさ…」

 

一応彼女が女であることは生徒全員が知っている筈だ。特に一組の生徒は目の前で自分の正体を明かしたのでそれは承知のハズ。

なのにどうしてなのかと当人に訊ねると、未だ知らないという面々が居るのか、彼女が女と知ってたとしても構わないということで巻き添えを食らったのだと言う。

 

「潜入だからって男で入って来たから…そういう性癖の人に捕まって…」

 

「………いや、女だからって…まぁ別に否定しないが…」

 

「なんで寄りにもよって僕なのかなって…一応女だよ? 僕…」

 

「世の中、女が女を好きになるって話は別に珍しくもないでしょ」

 

「だからってぇ…」

 

 

斯くして学園の中で唯一の男子生徒である一夏と付き合いたいがため。男にもなれる中性的な容姿であるシャルを我が物とするため。生徒たちは根拠もない噂話を真に受けて襲い掛かって来た。

いわれのない理由でまた自由とナニかを奪われるのかと嘆くシャルだが、最早火付け人にでさえも収拾がつかない状態に打開策は殆どなかった。

 

「…で。鈴はそれを伝えに?」

 

「………ま。それもあるわよ。それも」

 

「他になにかあるのか?」

 

「………。」

 

顔を横に向かせて再び黙り込んでしまう鈴にまだ何かあるのかと思い頭をかしげる。

一夏の隣に居たシャルはその様子から理由を読んで、鈴を見る彼の顔を見上げた。

 

「…鈴?」

 

「…一夏」

 

ひとつ提案がある。そういって彼女は自分の上着のポケットの中に手を伸ばし、話し出した。それにシャルも入口にいた生徒たちも先を越されたと思いボリュームを上げる。

しかし今は鈴と話をしているということで彼は聞く耳を持たず、意識も彼女に向けていた。

 

「あ、あのさ…よかったらでいいんだけど…」

 

「タッグ、か?」

 

「え、ええ…ホラを真に受けてる連中よりかはアタシとかの方がいいでしょ? そんなやましい理由でタッグ組むワケでもないし…それに一夏とアタシの得意レンジは一緒だし…」

 

目を合わせずに言う鈴の言葉にまぁそうだな、と答える。

少なくとも一夏は(・・・)彼女に対して、噂話を真に受けるような性格ではないと言い切れる根拠があり信頼にも置ける。加えて言う通り、彼女との得意な武器のレンジは同じで互いに遠近両方に対応が出来る。コンビを組むのなら無難な相手だ。

しかし。そこに自分も忘れてはならないと伏兵が割り込んでくる。

 

 

「そ、それなら僕だって同じだよ!? まぁ専ら銃が基本だけど…近接戦闘だって出来るし!」

 

「………。」

 

(ゲッ…)

 

鈴の話に刺激されたのか声を出して立ち上がるシャルは自分も組みたいとばかりにアピールをする。それには一夏も魅力を感じているのかふむ、と考える様子で話を聞き、候補の中に彼女を入れた。

一方で鈴はなし崩しでも組めるかと思っていたが、やはりと言うべきかもう一人のコンビ候補が現れたことに焦りを感じていた。

 

「出来るのか?」

 

「うん。機体自体は変わってないし、装備は…まぁ多少変更したけど基本戦術には変わりはないよ」

 

「なるほどな」

 

鈴とシャルは共に遠近両方に対応できるが、シャルの場合は曲がりなりにも戦闘経験があるということと武装変更、そして未だ見せてないだろう武装などのアドバンテージがある。

鈴の場合は阿吽の呼吸でということになるが、彼女の場合は戦術などに適った動きをすることだって可能だ。

ならば、この場合でどちらが優位であるかと言われれば

 

「シャルもまた捨てがたい…か」

 

「ッ…!」

 

「グッ…」

 

候補にあがったことに素直に喜びの顔を見せるシャルは小さくガッツポーズをする。

自分の優位さが下がってしまったことに危機感を覚えた鈴は、やってくるたなとばかりにシャルをジト目で睨みつける。対した方も負けたくないといった顔で睨み返しており、一人の朴念仁の間では見えない火花が飛び散っていた。

 

(やるなお主…)

 

(僕だって負けられないんだよ…)

 

 

(さて…どうするかな…)

 

 

このままいけば恐らく一夏はシャルとコンビを組む。そうすれば彼らと付き合えるという噂話は誰の独走も無く一時の夢として消えていくという追加効果も受けられ、この場で渦巻く混乱も収拾がつく。それがシャルの目的だったのだと今更理解した一夏は、ならばと決断をする。

馬鹿らしい話だが、混乱を終わらせるにはそうするしかない。それにコンビの相手としても悪くはない。この二つを理由にしてシャルにコンビの話を受けようと口を開いた

 

 

 

 

 

 

―――が。

 

 

突然ブレーカーが落ちたかのように更衣室は暗くなってしまい、明るかった目の前がいきなり暗くなった事で目の順応が追いつけず、何も見えなくなってしまう。

しかし、そんな中でまるで彼女らを嘲笑う…いや嘲笑った声がどこからか響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

「むははははははははははははは!!! 無意味なことに頑張っててご苦労でごせぇますよ!

 

しっかぁし!! そんな話はこの私が許しませんッ!!!」

 

 

 

 

いつの間にか更衣室に入り、何が起こっているのかと狼狽えている生徒たちをよそにして、室内に響く声とその為のやり方に呆れる人物が一人。盛大なため息をつく。

こんなバカな登場を毎回して疲れないのかと内心思っていた彼は、突っ込む気力もないままにその流れに身を任せることにした。

隣ではシャルと鈴が他の生徒と同じく狼狽えてはいたが、なんとなく聞こえてくる声と様子に事の結末を予想し始める。

ああ。これはバカ騒ぎの一種なんだ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

「天岩戸も絹豆腐、ラブコールとあらば即・参上!

 

 遠からんものは音にも聞け! 近くば寄って目にもぷりーず!

 

 魔法JKラブリータマ…もとい…ラブリー楯無ちゃん、ここに天孫降臨ッ!!」

 

 

 

 

刹那。一夏はライトアップされた楯無にめがけてピンを抜いていないグレネードをISを部分展開してストレートに投げた。速度は速すぎて本人でも分からないが、推定で150は出でいたというのが後でわかったことだと言う。

が、この場ではそんな事はどうでもよく、直後にピンを抜いておけばなと軽く殺意を沸かせていた。

 

「うわぁ…」

 

「顔面顔面…ありゃ痛いっていうか鼻折れてるって…」

 

「大丈夫だ。でこに当てたから」

 

「それって脳が揺れて危ないと思うけど…」

 

 

直後に、どしゃっと崩れ落ちる音と共に誰かが痛みの声を出していたが、そんなものを聞かなかったことにした一夏は再び目の前の会話へと戻ろうとした。

 

「ちょっと待って…最近私の扱いひどくない?」

 

「妥当な扱いですよ」

 

「いや、ピン抜けたら爆発してお陀仏だけど…」

 

「ああ。抜けてたほうが良かったんですね」

 

(一夏…なんかあったの?)

 

結局、その後にバカ騒ぎを起こした張本人こと更識楯無が起き上がると、手に持っていたリモコンを使い更衣室の中の照明を全てONにする。

一応これで騒ぎは終わるのだが、その為に用意していたという彼女の本気さには鈴たちも驚くしかなかった。

なにせ、そんな騒ぎを起こすためだけに服装を制服から変えていたのだ。

 

「全く…折角借りて来たっていうのに、酷い事するわね」

 

「出てくるのならもう少し普通に出てきてください」

 

「うーん…まぁ考えてはいたわよ? けどそれじゃあ味気ないじゃない」

 

「味気ないとかじゃなくて…別にミュージシャンじゃないんですから」

 

起き上がり下着のホコリを払う楯無の姿に思わず目を見開き、頬を赤らめてしまう二人。動作としてはなんの変哲もなく、一夏の視点からは彼女の姿が見えない。しかし楯無の姿を完全に捉えていた二人はその姿こそに問題があり、彼女たちでも恥ずかしいと思ってしまうほどの光景だったのだ。

 

…なにせ、肩が見え、うなじが見え、山の上が見えている上半身。

 そして生の足をスラリと伸ばし、膝の辺りからしかニーハイを履いていない。

 だが問題はそこよりも多数存在する。ひとつは所謂ズボンといえるようなものを一切履いてないこと。もう一つはあまりに露出があり過ぎること。

 

 

 

 

そして何より、本人曰くそれが巫女服だということだ。

 

 

「………。」

 

「え…ええっと…」

 

 

「失礼しちゃうわ。人生、味は必要不可欠よ」

 

「貴方の場合、味が濃すぎるんですよ。何処の第六天魔王ですか」

 

「まぁ魔王より味が濃いのは自負してるわね」

 

「自重って言葉はないんですか…」

 

 

と、呑気に話をしている一夏だが、現在彼の後ろには際どい巫女服を着た楯無が居るが居て少しずつだがその距離感を縮めている。

当人は後ろを向いてないせいでそこまでの事を知る事が出来ず、制服かなにかでいるのだと勘違いしているようで、決めつけて向こうとしない彼にそれを教えるべきかと迷ってしまう。

 

(これって…教えるべきではない…よね)

 

善意というより、何となしに負けたくないという意地もある。だがそれ以上にあの姿をみてまた余計なことになるのではないかという不安が彼女たちの中を過っていた。

別に驚きはしない。だが、振り向いた瞬間また一つの嵐がそこから巻き起こるだろうと思えてしまう。なにせ後ろに居るのは人口嵐発生機のような人物で、彼をダシにして面倒事を起こすのは目に見えて明らかだ。

 

 

「―――と・こ・ろ・で。まさか私がこんなことの為だけに現れた訳ではないっていうのは分かるでしょ?」

 

「自分でそれを言いますか」

 

「でないと無視するだろうし、話も進まないと思うから」

 

「分かってるなら、言って下さいよ。その為に来たんでしょ?」

 

「………。」

 

横目で鈴とシャルの二人の様子を窺う楯無は、揃って彼にも楯無にも振り向いてほしくないという顔で見ていたので直ぐに察し付く。

どうやら自分の服装に気付いていないことに逆に気付いてしまった楯無は不敵な笑みを浮かべると獲物を見つけたかのように小さく舌を舐め回す。

それには二人も何か仕掛けてくると瞬時に理解し、後ろを向いて作業していた一夏に対し警告するべきかと慌て始める。

彼には気付いてほしいが気付いてほしくない。どちらにしても面倒なことに成ってしまう。そしてその先に絶対に自分たちが予想できない「嫌な予感」がある。楯無の顔と気配で一目で分かってしまう未来にどうするべきかと考えるが

結局、どの道詰み(・・)なのは変わらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…一夏君」

 

「なんですか」

 

「私と組んで」

 

「…なにをですか」

 

 

「なにをって。タッグマッチのコンビをよ」

 

 

「………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「――――――――――――は???」」

 

 

 

「………。」

 

 

一瞬。世界が凍り付いたような気がした鈴。

シャルも時間が止まったかのように思え、自分の耳を疑った。

それは一夏も同じことで、彼の手はたった一言によってピタリと止まってしまっていた。

誰もが動きを止めたその一瞬。だが、いち早く一夏が正気を取り戻したのか少し震えた声で口を開き、喉の奥から声を絞り出した。

 

 

「………えっと………それって………つまり…?」

 

「え? 文字通り私とタッグマッチのコンビを組んでって言っているの。っていうか組みなさい」

 

「………………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間。更衣室の中に盛大極まりない大声が響き渡る。

 

それは更衣室だけでなくアリーナの外にも響き、その周囲をうろついていた生徒たちはもちろん、見回っていた教師も一体何事かと体をビクつかせるほどの音量だった。

あまりに衝撃的な一言に大音量の声で驚いた女子生徒は、まるでそれが最後の力であるかのように叫び終えるとバタバタと倒れていく。当然気絶なのだが、この場ではどう見ても寿命を迎えたセミのようにしか見えなかったと、後に鈴は語った。

 

 

一方で喧しい音量に耳を塞いだ楯無は、倒れていく女子生徒に気にも留めずケロっとした顔で一夏の後ろ姿を眺めている。

当人である一夏は予想はしていたがと何とか受け止めていたが、何となく考えてしまった未来の結末に身を震わせ、背中へとずっしりと乗せられた見えない重りに押しつぶされそうになっていた。

 

 

「…いやいやいやいやいや…ちょっと待てよ…」

 

「………ッ…そ、そうよ…ちょっと待ってよ!」

 

頭を抱えて現実逃避をする一夏に釣られ、意識を取り戻した鈴は直ぐに納得できないと楯無に反論を投げつける。

いくらコンビを組めと言われても原則的なルールが彼女たちの前には立ちふさがっていたのだ。

 

「アラ、なにかあるの?」

 

「いや何かじゃなくて!?」

 

「…あ…そ、そうですよ! 原則として組めるのは同学年の生徒だけ。しかも今回は学年別でのマッチなんですから…組もうにも組めない筈ですよ!?」

 

今年から変更となったタッグマッチはそれぞれ一年から三年までの部に分かれて行われるようになっている。これは上級学年との格差や差別を無くすための措置で、過去に三学年でのマッチによって様々なアクシデントに見舞われたことからの反省点だというのはタッグマッチについて話が出された時に彼女たちも知っていた。

つまり、過去の三学年纏まってのタッグマッチは廃止になっていたのだ。

その為、助っ人として上級学年が下級生の試合に出来ることは禁じられ、その逆も一応ながら言語道断として禁止されている。楯無が行おうとしているのはそのタブーを平気で破ることに他ならなかったのだ。

 

 

「そんな事は承知の上ですよ。だって渋々可決したのは私だし」

 

「えっ………なら、なんで…」

 

「あら。話してなかったっけ? 確かに廃止はしたけど、あれ自体は残っているのよね」

 

「………え。それってつまり…」

 

「ざっくりと説明すると…」

 

 

 

確かに全学年合わせてのタッグマッチは廃止にした。それは確かなことだった。

しかし、その直後に内外からの圧力を受けてしぶとく存続していたのだ。学園内では女尊男卑に浸っている教師、生徒たちからの署名で(一部ズルもしていたらしいが)

外部からは各国の開発機関がそうしてしまっては他の機体との戦闘でのデータを得られないということで、技術的な問題が生じるということから。

互いに私利私欲が見えすぎていたが、どうにもそれを避ける事が出来なかった学園長と生徒会はそれを承認。ただし条件を変更しての存続となり、実際には生き残りというより分割されたという状態になったのだ。

 

 

「…じゃあ…」

 

「全学年でのタッグマッチはそのまま…ってことですね」

 

「けど、今言った通り条件がついたの。そうでもしないと、また格差が広がるだろうし…

 

 

…どの道、生まれてる亀裂は埋めることもできないし」

 

最後の一言だけは掠れたように小さな声だったので全部は聞き取れなかったが、楯無も全部を納得してそれを承認したわけではなかったということだ。

それでも全学年でのが残ったことに変わりはないし、一夏が誘われて無理にでも入らさせそうになっているという現状にも変化はない。

取りあえず、せめて言い訳や反撃の手立てが欲しいと思った彼は、なにが条件なのか、どうやったら条件に当てはまるのかを訊ねる。

 

「…条件っていくつあるんですか」

 

「特筆条件は合わせて四つね。この全てを守れば、基本誰でも出場は可能ってワケだけど、出る場合は責任を持ってくださいねってことで」

 

 

 

楯無の言う条件は以下の通り。

 

 

・出場する生徒自身が出場表明をする(自推でも可)。もしくは出場する生徒が同意の上で他の生徒が推薦(複数からの推薦も可能)

 

・出場する場合、生徒の属するクラスの担任(副担任でも可)から同意を得る事(ただし双方かでも問題はない)

 

・専用機所持の場合は専用機の機体名とステータスデータを提出。専用機を持ってない場合は学園側から特別にチューンされた機体を支給するので自分から宣告すること。

 

・タッグ相手の組み合わせは互いが同意の上で専用の用紙に記入、提出すること。尚、組む相手が別学年であっても可能。その場合は学年、クラスまで記入すること。

 

 

 

つまり相手に誰が誰と組んだか、どんな機体を使用しているのかを晒せばそれだけ相手が高学年であっても対応のしやすさはあるということらしい。

それがどれだけの効果を持つのかは不明だが、最低限一年などへのハンデとしては妥当なものだと言える。

しかし参加する場合は彼女の言う通り自己責任。実力に覚えのあれば参加すればいいというような形式で、それは同時に自分の力量をしっかりと認識しているという自己理解が求められるものでもある。いくら専用機に乗っているからといって自分を強者だと勘違いしていれば戦場であってもなくても早期に落とされるのは目に見えている。

 

 

「…でも。今の話が確かなら、一夏に無理やりコンビを組ませるのって駄目なんじゃないんですか」

 

「あくまで双方同意。なら一方的なのは…」

 

「まーそういうとは思ってたけど…実際彼には是が非でも参加してもらいたいのよね。というか、さっきも言った通り組みなさいってワケで」

 

「それを無理だって言っているんですよ。確かに、話としては面白そうですけど―――」

 

 

 

「あー言い忘れてたけど。織斑先生と山田先生には許可は貰ってますから」

 

「………………は?」

 

目の前にあった道に壁が立ちふさがったように思えた一夏。彼が気が付いて周りを見回せば、いつの間にか退路が少しずつだが断たれ始めていることに今やっと気づいてしまう。

彼の額に少しずつだが汗がにじみ出した。

 

「まぁ私もダメ元で織斑先生に頼んで、保険で山田先生に頼んだけど…なんと意外にもあの人も同意してくれたのよね」

 

目の前のことに信じられないと思う一夏だが、その彼の顔を読んでいたのか楯無は続けざまに言葉を投げる。

 

「まぁ織斑先生はなにか考えてのことだったらしいけど…それは当日になれば分かる話よ」

 

「…いや、だからって…俺の同意がないとエントリーできないのは分かってるでしょ」

 

「ええ。だからあとはそれだけ」

 

「それだけって…まさか…」

 

 

 

「本人直筆のプリントを見つけてコピーさせてもらいました」

 

「それ犯罪ですよ!?」

 

「同意もクソもないじゃない!!」

 

流石のことに鈴も怒りを露わにする。いくら参加させたい理由があっても、それは本人も同意も関係なく自分勝手に行ったことだ。

当然一夏自身もそれを訊けば猶更、納得もしなければ同意する気だってないと断言する。

 

「そんな事をするのなら、担任からの許可があっても参加しませんよ」

 

「うん。ま、冗談なんだけどね」

 

少しずつだが怒りを見せ始めている三人を見て遊びが過ぎたと思い苦笑気味になる楯無はその証拠として未だ彼の名前が記入されていない専用の用紙を見せびらかす。上にはシャルと同様に彼女の名前が書かれており、書かれてないことを証明する。

いくらふざけであっても、本人の名前を偽造するということには他人であってもそうそう納得がいくものではない。証拠として出された紙を見て一応は怒りを弱めた二人だが、まだ完全に許してもなく警戒を続ける。

 

「…で。まぁ確かに後は貴方からの同意とここに名前を書くので終わりなのは確かなの。データは名前とIDで何とかなるでしょうし」

 

「だからって、俺が素直にはいそうですかって言うと思ってたんですか」

 

「思ってないわよ。だから…」

 

 

再び女狐のような目つきで笑みを浮かべた楯無は、どこからか谷間の間から一枚の折りたたまれた紙を取り出す。

その取り出し方には思わず自分の体へと目を落とし悔しがる鈴が拳を作っていたが、それに気にせずに一夏の横にその紙を滑り落とした。

 

 

 

「―――これは?」

 

「貴方が参加せざる得ないための切り札。これを見れば、何を言おうと拒むことはできない。

 

…つまり。貴方に拒否権はないってことなんです」

 

「………一体どういうことで」

 

「見ればわかるわ」

 

拾い上げた一夏は折りたたまれた紙を開き、そこに書かれたいた文章に目を細める。

そこには以前起こった「あの事件」に関しての記録が報告書のように書き連ねられており、横からそれを除き見た鈴は何のことだかと首を傾げ、シャルはその始めの一文を見るや顔をビクつかせる。

以前、彼女が起こした大規模な爆破事件。その後に起こったドイツ軍の特殊部隊隊員殺害事件。表向きでは様々な情報隠蔽などが行われて海運業者と偽られていたが、そこに書かれていたのは真実の部分である、あの夜の最後の出来事についてだ。

 

反逆罪としてとらえた彼女を護送するため、また移送中に抵抗をさせないため、当時部隊を指揮していた男の命令で彼女は男数名がかりを相手にされ強姦。

また行為中には虐待に近い暴力も振るわれたらしく怪我もしていた。

 

しかし、同じく移送されていた負傷した一般人(・・・)一人が逃走に使用された車両から脱走。更には何者か(・・・)によって特殊部隊の隊員全員が射殺されたと言う。

 

一見すれば関連性があるのかと疑いたくなるが、それを見ていたのが事件に関わった当人であれば話は別だ。

実際、その何者かの正体は一夏であり、彼が隊員全員を皆殺しにしてしまったのだから。

 

 

「…これは…どういう意味ですか」

 

「遠回しに言わず直球で言うわね。実は、現場で使用された弾丸の口径と隊員たちが所持していた口径とが一致してないのよね」

 

「………。」

 

「で。何を思ったのか、使用された口径に近いっていう変な理由で貴方に容疑が掛かってる。当然、口径は違うハズだからそれを証明するために出て欲しい」

 

「…別に、それなら一年だけのでも問題はないのでは」

 

「それは私も思って反論はした。けど向こうが変な言いがかりをつけてきてねぇ…」

 

 

「言いがかり…?」

 

「そ。一年のところでなら、基本ISにまだ慣れてない生徒も居るから教師がピットに居たりする。だからその時に隠蔽工作をするんじゃないかーってね。おかしな言いがかりでしょ」

 

「なによそれ…馬鹿な話にも程があるわね」

 

「けど。実はもう一つ、理由があってね…こっちがメインなのよ」

 

「メイン…ですか?」

 

「そうなのよねぇ…一夏君」

 

急に話を振られた一夏は、俺に何か用かとばかりに振り向きはしなかったが怒っているという雰囲気を楯無に向ける。しかしそれを物ともしない彼女は反撃とばかりにもう一枚の紙を取り出した。

 

 

「…貴方…補給申請に手を抜いてますよね?」

 

「……………はぁ!?」

 

刹那。楯無の発言に驚きを隠せなかったのか一夏はとうとう彼女のほうへと振り向いてしまう。すると直ぐに彼の目線は顔から下へと下げられて全身の服装にいきわたる。

今まで制服かなにかだと思っていたはずの彼女の服装が露出の高い服であったことに今度は言葉を失ってしまう。

 

「ッ…」

 

「いやん♪ そんな熱い視線で見ないでよえっち♪」

 

「……………。」

 

 

「………一夏」

 

「イチカ…」

 

「………。」

 

完全に異性を見る視線だった彼に殺意を向けた目で両側から睨んでいる鈴とシャルの視線を感じたお陰で、服装から離れることができた一夏は改めて、それがどういう意味なのかと問い詰めるように食い掛かる。

 

 

「い、いや…そうじゃなくて…! 補給申請で俺が手を抜いたって…」

 

「いやぁ…私も最初はそんな莫迦な話がって思ったんだけど…実際あっちゃったのよねぇ…」

 

それが楯無が取り出したもう一枚の紙らしく、それを手渡すと一夏は慌てて中身を確認する。

一応兵器にもなれるISなので専用機の場合、実弾の補給は学園側が所持するものか場合によっては企業などから送られて来ることもある。一夏の場合は架空企業からで、実際はオタコンたちから送られて来る。

補給品が弾薬の場合、弾の口径とマガジン数、そして使用する武器の種類などを記述し、それを学園側と外部からの者であればバックアップしている企業に渡す必要がある。

 

 

「日にちは彼女がやってきた数週間後のこと。補給申請は貴方から出したものは確かに口径も明記されて間違いはなかった。

 けど、問題はその逆で外から持ち込まれた弾の中に明記がされていない口径の弾薬がひとつあった」

 

「明記されてないって………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――あ。」

 

「え。覚えあるの!?」

 

「い、イチカそんなの使ったっけ!?」

 

「い…いや、使ってないけど…」

 

 

恐らく。

ここで言う明記されていない弾薬というのは、以前マドカが弄ったスパスに使われる弾のことだろう。あれは彼女が威力強化のために作った特製の弾薬であり、他の銃開発企業では作られないものだ。

 

「多分。アレがなんかの理由で…」

 

「それが何処かからか漏れ出した…大方、そのタイミングはあの事件でしょうけどね…」

 

「………。」

 

「嘘ぉ…」

 

逃げ道を彼女に塞がれたと思っていた一夏だが、実際は彼女よりも上の国家に阻まれていたことを知り頭を抱えるが、あまりの事に卒倒寸前にまで意識が遠のきかけてしまう。

 

 

 

「斯くしてドイツから説明しろの一点張りで…しかも説明しなければ、っていうことで色々と指定されたってワケで…日本政府が」

 

「相変わらずの腰ね…」

 

「ホントよね…で。それを証明するために指定されたのが…」

 

「全学年でのタッグマッチ…」

 

「けど、それなら僕か彼女()でもいいんじゃないんですか?」

 

「それも言ったけど、その場合パートナーの弾を使ったりするかもしれないって用心深く言われて、一応そういったのを使わない子も推薦はしたけど結果は同じ。

 …向こうはある程度の素性を知っているからって強気になっているのでしょうね」

 

こうして結果的に一夏が出なければならないという酷いほど整った場が目の前に現れた訳で、あまりに都合のいい理由や言い訳がそろった現状にただ呆れてため息をつくしかない彼は辛く頭を抱えることしかできない。

当然、事実を話せば彼がそうなることを分かっていた楯無は話した直後に謝罪し両手を合わせて申し訳ないのポーズを見せていた。

 

先ほどまでの遊びの理由に今更だが理由を知ってしまった一夏は、とうとう八方ふさがりとなってしまい、後は折れるのを待つだけでしかなかった。

 

「…どうすんのよ」

 

「どうするっつっても…なぁ…」

 

「完全に詰みだもんね…」

 

最初は彼女が塞いだと思われていた道が、国がやったものだと知ってしまった彼にはもう選択肢は残されていない。

本来なら他の道もあるにはあるが、一夏の立場上あまり目立ったりすることは自身を危ぶめることになってしまう。そうなってしまえば何を理由に学園から追い出されるか分かった物でもない。

 

今になって済んだと思っていた出来事が尾を引いていた事に不意打ちをくらわされた一夏は分かり切ってはいたが、残ったたった一つの道に目を向けるしかなかった。

 

 

「…参加人数って決まってるんですよね」

 

「AブロックからDブロックの計八チーム十六名。現時点ではその半分だけど、今のところ参加表明したのは殆どが代表候補よ」

 

「要は実力で見せろって話で…」

 

「そういうこと。向こうも色々と都合とかが言いようだから、それに乗ってあげるのも一興じゃない?」

 

「―――…。」

 

諦めきった顔に濁ったような声が漏れる。それ以上何も言う事は出来ず、ただ頭を抱え込んでいたが、最早心が折れて反論すらも失せてしまった一夏は諦めたような言い方で返答した。

 

「どの道、もう俺に選べる道はないんでしょうに」

 

「残念ながら、ね」

 

「…分かりました。受けますよ」

 

「ちょっ…一夏ッ」

 

「変に受けた疑いだ、なら早めに晴らした方がいいだろ」

 

「………。」

 

無理に手を出さないというのもあるが、この場合は余計な容疑をかけられてしまう。なら、彼がとる道は一つだけ。その疑いを晴らすのみだ。

 

 

 

「同意、確かに申し受けました。―――――じゃよろしくね、一夏君♪」

 

 

 

 

斯くして。謂れのない容疑をかけられてしまった一夏は、その疑いを晴らさんがために彼女の申し出を請け負った。

条件はただ一つ。銃を使い、ただ己の実力をもって勝ってみよ。

矛盾しかないと分かっていたが、不思議とそれを否定する気もない彼の手は自然と紙の上を滑らせていた。

 




オマケっていうか戯言。

FGOでキャス狐はゲットできてない…というか名だたるレアはあんまり持ってないという現状…泣けるぜ。

あと。なんか結構話がIS寄りになってますが、後半になるにつれてMGSに傾いていく予定です。なにせタッグマッチですから…
MGSシリーズであっても…ね
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