IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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旅団だなんだを更新する前に、こちらを更新してしまった…

ということで、第六十三話です。


またもグダグダになりかけたっていうか、視点がバラバラだったりするので、そこはご了承を。
あと、タッグマッチ戦でってことですっかりと忘れかけてたんですが、皆さんが要望している水着回は…うん。Act.3内でやってみます(汗

さてさて。今回からかいよいよタッグマッチ戦の開始です。
といってもイキナリ誰かとかち合うってワケでもなく、「こんな感じ」っていう内容です。


それでは、第六十三話、お楽しみ下さい


6/19 こちらの手違いで先に六十三話を投稿しました。ので、前の第六十二話を投稿しましたので、最新話の報告を見て「可笑しいな?」と思ったら前回にバックをお願いします


No.63 「不条理」

 

 

世の中は理不尽なことや不条理といったことが数多く存在する。それがこの世界の成り立ちだと言われれば返す言葉もないだろう。

それこそ、ありはしないと答えるのは恐らくそれを知らない者たちだけ。

この世界では、理不尽が当然の事として「正当」なこととして認識されてしまうこともあるのだ。

誰かが「それが正しい」と言えば、自然と誰かがそれを正しいと「誤認」する。もしくは、それが正しいと思っている者たちが集まって、その正しさがより確かな物になってしまう。

そうなれば、その正しさ(・・・)正しい(・・・)ことになってしまう。

 

何が正しいか。何が正しくないか。

それは誰かが言った通り、自分が正しいと思う事が正しいのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…取り合えず、集められるだけの機体データと、開発された武器装備に関してのデータを端末に転送しておいた。けど、中にはペーパープランだけのヤツもあるから、完全に信用はできないけどね』

 

「いや。それでも何かの手がかりになる筈だ。ありがとうな、オタコン」

 

 

前夜。誰かに聞かれないようにと今回は相部屋のベランダで会話を行っていた一夏とオタコンは、明日に行われるタッグマッチ戦での参加者と登録された機体などのデータ。そして、その中で使用される武器装備に関してのデータを、オタコンたちに調べてもらい、それをiDROIDに転送して貰っていた。

敵の情報が何もなしで挑むよりも万全の状態で挑めば、そう難しいことではないと踏んだ一夏は、一週間前には既に頼んでいたが、それが今になって送られて来たことに向こうが苦労したということを労いの言葉をかけようと考えていた。

 

『しかし、一通り調べたけど、どうにもこれを使うのかって思える代物が多かった。実用段階ではないっていうのは分かってるけど、実用性を考えれば皆無なのがほとんどだ』

 

「そんなに、ネタに走ったヤツがあったのかよ」

 

『ああ。対拠点・要塞攻撃用接近兵装として、馬鹿にデカい質量型の大剣。そこに無理やり高周波を流して破壊力を高めてるって言うけど…』

 

「どこの竜殺しだよ…つか、どこが作ったんだよ。そんなヘンなの」

 

『覚えてないけどアジアだった気が…』

 

そんな実用性どころか使えるかさえも怪しい武器を作ったのが、同属であることを聞いた一夏は、恐らくあそこなのではと予想しながら、深いため息をつくしかなかった。

無駄なことに労力を使っているということもあるが、使えるかどうかさえも分かっていないのかという事に、製作者たちのふざけた様子が目に浮かんだ。

どうやら、頭の中が狂い始めていたのは現地だけでなく、それを作る側もだったらしい。

 

『ま、あまり気にはしないでおこうよ。だからって、それが絶対に驚異になるかなんてわかり切ったことなんだから』

 

「それこそ、分からないぞ。意外と使える相手かもしれないんだからな」

 

『笑って答えてるよ』

 

余裕気に笑っていた一夏に説得力がないと突っ込みを入れる。それだけ余裕があるということで、同時に勝利できるという慢心が見えすぎているのだ。

楽観視はするな、と彼の師は言うのだろうが、それにしても笑うことしかできないのもまた事実だ。

 

 

『けど、中にはワリと冗談にならない兵器もあった。それには気を付けてくれよ』

 

「どんなのだ…?」

 

『度を越えた火力を誇る、分裂式ミサイル。ステルスでありながら高い火力と追尾性を持つミサイル。チャージに時間はかかるものの、一度に三発のレールガンを発射できるもの。

そして、使用すれば一定時間機体の動きを止めてしまう広範囲攻撃型の電磁波』

 

「…ふり幅が極端だな」

 

片や開発者たちの趣味や私情が駄々漏れている実用性皆無なもの。だがもう片方は実用性どころか、場合によっては即戦線に出せそうな代物。

一夏の言う通り、ふり幅がかなり極端で使える物と使えない物がハッキリとしている。一目見れば、一言説明を聞けば、それが使えるかどうかでさえ直ぐに分かってしまうもののラインラップは、それが出来るからという余裕のあらわれなのだろう。

「別に、使えるものでなくても実験が出来る。誰にも邪魔されない」と。

だからこそ、実用性が皆無なものも最後まで作られて、この場に出されることもある。

まるでイベントか何かのように行っているが、忘れてはならないことはそれが正規で行われることではないという事。

互いの軍事力、技術力を見せ合い、技術を開示しないという表立った約束を破った行いだ。

マスコミであれば、直ぐに食いつくネタだが、当然国がバックに居るということで口封じや保険などの手段がとられているだろう。

 

 

『そんな所に君が入るんだ。今回のそのタッグマッチ。かなり荒れると思うよ』

 

「ああ。実験してるところに殴り込むんだ。開発者たちは怒り狂うだろうな」

 

自分たちの実験を貴重なデータ採取の場をぶち壊そうと言うのだ。当然、自分たちが丹精込めた物を破壊されるということもあるが、せっかくの場を壊されるのは誰だって嫌なこと。一夏たちはそれを実行しようというのだ。

傍から見ればどちらが悪いかなど分かったものではないが、違法兵器を堂々使っている相手と何のズル(違法)もなしの機体で挑む。わずかだが、一夏たちに正しいと言われる筋はあるはず。

 

『けど気を付けてくれ。君たちがそうやって正義の味方面して、国の大切な実験場を壊しに行くんだ。絶対に向こうから何等かの妨害行為があると思って、まず間違いはないだろう』

 

「分かってる。仮にも相手は国なんだし、それくらいはやって俺たちを消そうって気にはなるだろうさ。でも…」

 

 

―――果たして、そう簡単にいくと思うか?

悪人のように不敵な笑みを浮かべた一夏は、自信ありげに言う。

いくら相手が国で、なんらかの妨害があるとしても、それぐらいで止められるほど、自分も弱くない。妨害といっても、行う事は機体への破壊工作か、暗殺。それか揺さぶりといったものだろう。

そんなもので、果たして自分が止められると思っているのかと、失敗した時の各国の重役たちの顔が目に浮かぶと、その瞬間だけ画面の向こう側にいたオタコンでも、その顔が悪役のそれであることに失笑するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で。今回のタッグマッチ戦。観戦する国のお偉いさまは?」

 

「分かっているだけで、日・米・英・露・中・仏・独・伊・豪………計十数の国が、あの場に観戦に来る予定です。無論、気づかれないようにとダミーも含めて」

 

「通常の学年別のほうね。ご丁寧に、そっちに著名人を配置しているようだけど…」

 

「本命はこちらでしょうね。特に、米国には面子があるでしょうし」

 

カーテンで窓が閉め切られて、中の様子が確認できない生徒会室では僅かな明かりを頼りに二人の少女が最後の確認を行っていた。

一応、誰が来るのかというのを確認し、その場合に合わせて接待するのも彼女たちの役目で、人数が少なく人手が足りないということから、今回は特例として一般生徒からの増員も許されたと言う。しかし、具体的にどの国の誰が来るのかというのは会長である楯無が行うことで、現在それを虚と二人行っていたのだ。

 

「米国の威信…ね。未だ実態なきってヤツに縋ってるのね、彼ら」

 

今回やってくる各国の重役。関連があるとすれば、全員黒い噂が絶えない人物ばかりという所か。特に米国は新しく選出された大統領を始め、上院議員の面々で固められており、何処か何かしらの関係を持っていそうな者たちが名を連ねている。

曰くつきの新任大統領。軍事方面での噂が絶えない上院議員。過激派のような発言の多い者も居たり、女尊男卑反対を明確に発言した者も居る。

 

だが。その中で楯無の目に長く止まった人物がいた。

 

 

 

 

「…スティーブン・アームストロング…彼もここに来るのね」

 

「らしいですね。意外と言えばそうですが…」

 

「一度もISについては触れた事がない筈の男…ですもんね」

 

コロラド州上院議員、アームストロングは内政や外交、軍事などに関しては多くの発言を残してきたが、明確に彼がISについて語ったことは一度もなかった。それも間接的だったり遠回しだったりと直接触れることがない発言が大半を占めており、もしかしたら何か関係を持っているのか、その逆なのかと疑うこともあったが、今回参加者の名に列を連ねたことで一応の関係が持っているのだということは楯無たちも確信していた。

 

「…いかがしますか?」

 

「…無理に聞き出したりするのはNGよ。今は、明確に発言して証拠のある者たちからにして頂戴」

 

「――招致いたしまた。…それと」

 

何かまだ言いたげだなと虚を見ていた楯無は、なにかあるのかと目で訊いていたが、目を合わせずにどこかへと移動し始めた彼女の後ろに首をかしげるしかなかった。

虚が向かったのは一か所だけある閉め切られた所で、そこに手を伸ばすと、勢いよく両側へとカーテンを動かした。

 

 

「別に、防弾仕様なんですから、そこまでしなくてもいいのではないですか?」

 

「えー…別にいいじゃない。なんか面白そうだし」

 

「………。」

 

カーテンの向こう側から差し込む朝日に、眩しそうにしながらも答えた楯無に小さく唸り声のようなものを出すことしかできなかった虚は、そのままため息をつく。

大方、どこかの秘密組織っぽく出来るからという子供のような理由からカーテンを閉めていたのだろうと本音を隠す彼女に合わせて自分も、それで納得させていた。一応、それだけ済むような性格と考えをしているとは思えないので、本当に考えていた事は大体の予想をしていたが、それでは彼女がブーイングを言ったりと面倒になりかねないので、今回もまた虚は彼女に合わせることにした。

 

 

「面白そうであってもなくてもいいですが…本当に大丈夫なんですか?」

 

「何が…?」

 

「何がって…今回のタッグマッチです。向こうは違法、違反が常識の連中。対してこちらか何のハンデもない。あるのはただ―――」

 

「己の実力と愛機のみ。だからこそよ」

 

「………。」

 

 

だからこそ。そう言った楯無は、今まで座っていた椅子から二回ほど回転して立ち上がると明かりとは別方向に歩きながら笑う。

 

「違法・違反が常識。当然のレベルだというのに、私たちは実質それ以下の機体で挑む。もし、それに勝てばどうなる?

 今までの「常識」が、突然「非常識」「過去形」「それ以下」になったら…どう思うかしら?

 少なくとも、私はその瞬間に怒りで血管が破裂すると思うわ。だって、それが自分たちの自信の塊で、常識の例題だったのだもの。例題が壊されたら、新しい例題が現れる。自信の塊が打ち崩されたら、誰だって悔しくなる。

 私たちがやるのは、善意であっても悪人と同じソレよ」

 

いくら自分たちが「正しい」ことをしているのだとしても、それが絶対に他人にとっても「正しい」ことだと言い切れない。

楯無たちは「正しい」ことだと思われつつあることを「間違っている」と言わせるのだ。しかし既に「正しい」と認識し始めているこの場では、場合によっては自分たちが「間違っている」と認識されてしまうことも考えられる。

いくら自分たちが正しい事をしているのだとしても、やっていることは「常識」「当たり前」を破壊していることと同じで、秩序を破壊したのと同義だ。

つまり。人によっては楯無たちが「悪」とみなされてしまう。

 

 

「それでも、私たちはやらなければいけないのだけどね」

 

「…その場にいる者たちにとっては「悪」であっても…」

 

 

それが自分の信じた「正しい」ことなのだから。故に、その正しさを胸に彼女は戦うと決めたのだ。

 

「…それに、挑むのは私だけじゃないわ」

 

「………彼、今グラウンドで走ってますよ」

 

「わお。朝のトレーニングとは…本気で頑張ってくれるのね」

 

素直に嬉しいわ、と窓側に寄って喜ぶ楯無にやれやれと肩をすくめる。未だどこまでが本音でどこまでが偽りかを測り切れていない虚は、その猫とも霧とも呼べるような彼女の性格に唯々呆れることしかできず、付いて行くことしかできなかった。

 

 

「…頑張れよ。前線ではお前だけが、この人の頼りなんだからな」

 

 

 

本日。午前十時から、いよいよタッグマッチ戦が開戦する。

常識という嘘に塗り固められた中から真実だけを曝け出すために、一夏は一人、朝の冷たさが残るグラウンドを走り抜けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

同日、同時刻から開始されるクラス別タッグマッチと全学年タッグマッチ。

前者は各学年の代表生徒たちの実力をアピールしたり、三年の場合には就職時の履歴書代わりにもなる。

ISの操縦者として社会に出る場合、基本的に求められるのは即戦力とそれに対する精神力、忍耐力だ。いくら実力が備わっていても、精神的に幼ければ何が理由でアクシデントを起こすか分からず、逆の場合には戦力として使いものにならない。

近年、年を重ねるごとに増える女尊男卑主義者たちにより、実戦に出るIS操縦者たちや彼女たちを抱える組織は二つの問題を引きずっている。

 

一つは当然ながら女性たちの自意識過剰な振る舞いの数々。これはある意味、彼女たちを抱えるということはというリターンとして付いて来る問題だ。

 

しかし問題はもう一つ。それに伴う事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――近年。女尊男卑の主義主張が強くなることで、それに反比例してあることが右肩下がりに低下している。何か分かりますか?」

 

「…質か」

 

「そう。前線配備される女性、IS操縦者たちの練度、実力の低下…つまり、後年になるほど実力が弱くなっていくというジンクス」

 

そもそも、女尊男卑という主義は女性優位の社会から発展したもので、当然そこには今までの彼女たちの恨みつらみが籠っていることに間違いはない。

だが、その主義が唱えられ始めた時には、今では少なくってしまったある「考え」が備わっていた。それは、今となっては薄れていくもので、過去そう思うことは当然というものだ。

 

―――あの男たちには負けたくない。必ず復讐してみせる。

 

今まで長い歴史の中で生まれた男尊女卑。そしてそれが今でも形のみではあるが続いている。故に、その社会に不満を持ち、何時かはのし上がってやろう、復讐してやろうと言う意志を持つ女性はゴマンと居る。

つまり。その復讐心による向上力。それによって彼女たちには見返りとして実力がついてきたのだ。

そして、それが最も優れた最盛期は、あの戦争経済時。特に「ガンズ・オブ・ザ・パトリオット事件」の少し前までがその時期だと言われている。

戦術、戦略、知識、実力、そして能力や胆力。戦場に立つ兵士として、彼女たちはいつの間にかある種の完成をしていたのだ。

後年になって、その時期の女性兵士たちは大半が引退したり訓練教官として身をひいていたりと、今の社会、主義からは考えられない余生を送っている。

その為、彼女たちに訓練されたIS操縦者はかなり練度が高いと言われているらしい。

 

 

「ISが現れ、時代が戦争経済へと突入していった当時、即戦力としてISは必要不可欠になっていた。当然、裏では男性の意図があるのは見えていたのですが、大半は政治家、軍司令官や左官、将官だったこともあって、首輪は極めて緩いものだった。

 故に。戦場で必要とされたのは「男性が持つ能力」ではない。単純な「能力」のみが評価されることとなった」

 

「…当然といえば当然か。将としての能力があるものは、常に死を恐れない。俯瞰して采配するのではなく、兵士たちと同じ視点で指揮をする」

 

「俯瞰者は自分が安全ということで、保守主義ですものね」

 

それだけに、前線で鍛えられ、指揮官としても有能なものが生まれることが多い。訓練生として優秀であっても、前線でそれを活かせられるかというのが問題で、いくら有能な人材でもその時になって適格な采配をしなければいけない。

最盛期と呼ばれたIS操縦者たちはそういったものを知らず知らずに身に着けていたのだと、隣を歩くセシリアは言う。

 

 

「―――しかし、その先駆者たちによって女尊男卑の主義が固められていくと、そこからはその主義に間借りしていく時代になっていった」

 

「虎の威を借る狐か。確かに、最近はそういったことをニュースでよく聞く」

 

「ええ。あとはそれによって流れ流れて右下へ。過去の栄光はどこへやら…」

 

「当時、その時代を作ったIS操縦者は「戦乙女」と崇められていたらしいが、今のを見ると呆れかえるしかないだろうな」

 

 

―――それ故だ。

足を止めたセシリアはそう言って不適な笑みを浮かべる。

なにか真意を隠しているような表情なのは相変わらずだが、今回は少し違う。

 

「今では質と練度の低下は否めない。だから、軍やPMCは採用する人材の「評価」に目を光らせる。練度などの低下が絶対ならば、それを最小限にとどめるしか方法がないのですから」

 

「下がるのであれば、それを最小限にすることで、僅かでも質を持たせて他との差をつけるか。その結果が、今のIS操縦者たちの差か」

 

「差は人によって様々ですが、総合的に低下しているのだけは確実です。それだけに今のPMCや企業、軍は少しでも質のいい人材を見つける事に躍起になっている」

 

「…だが。これでは右肩下がりは確定だろうな」

 

その時、隣を歩く箒のセリフに一瞬だがセシリアの動きが止まる。

唐突に止まった彼女に、なにかあるのかと釣られて止まった箒は、そのまま彼女からの問いを受けることとなった。

 

 

 

「…一つ、確認してもよろしくて?」

 

「なんだ…?」

 

「今更聞くのもと思い、聞きませんでしたが…一応確認させて下さい」

 

「………。」

 

 

本人の意志が固まっているのは知っている。だがどうしてももう一度だけ聞きたいと思っていたセシリアは、自分らしくないと自覚しながらも彼女に訊ねたかった。

 

「―――本当に、あちらのタッグマッチに出るのですね?」

 

「―――。」

 

もう止めることはできないのだがと、分かり切って入る。だが軽はずみではないのかという心配が、どこからか彼女の中に現れてしまい、それが不安要素となっていつの間にかそんな問いを投げることとなってしまった。

全学年が入り乱れた違法上等のタッグマッチ戦。そこにただの量産機だけで挑もうというのだ。

傍から見れば正気の沙汰を疑うことだが、箒の返答はその沙汰を打ち崩すようなものだった。

 

「…当然だ。もう出場すると決めてしまったのだからな。降りる気はない」

 

その目に迷いなく返した箒は、ハッキリと言い、自分に出場を止める意志はないのだと言い切った。男に二言はないというが、女に二言はないと言うべき状態に、冷静を装っていたセシリアも固めた表情の中で深いため息をついた。表情が崩れて本心が漏れることはなかったが、内心では正気なのかと呆れてもいた。

 

「…なんだ、今更降りるとでも言いたいのか?」

 

逆にお前がそうなんじゃないかと自信ありげに返した彼女に対して、よくそこまで自信があるなと、今度は堂々と呆れてため息をつく。

 

「元気…というか呑気ですわね。貴方が思ってるほど、このタッグマッチは楽なものではないというのに…」

 

「………。」

 

しかし、だからといってもう彼女に出ることを止めろなどと言う権利はセシリアにはない。それを言っても無駄だというのが、今の当人の顔と態度で分かり切っていたのだ。

どこまで楽観的で、どこまでが本気なのかは大体の推測が立っている。本番になってどうなるかという様子を思いながら、最後は平静に戻った。

 

「その元気がどこまで続くか…見ものですわね」

 

「ッ……」

 

「頑張って、食らいついてくださいね? 一応、パートナーなんですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前九時半。

出場する生徒たちは、観客やVIPよりも早くアリーナ内に入って控室に集結している。機体の整備や最終調整などもあるが、大半は各国からの裏工作で違反兵器を受け取り、マッチングをしている。

その為、控室のスクリーンに表示された組み合わせ表を見る生徒は、数えるだけで十人いるかどうか。その他数名は、どうやら用意をしているのだろうと呆れるしかなかった。

 

 

「俺たちはっと…」

 

先に中にスーツを着込み、その上から仕様変更(・・・・)された制服を着ている一夏は、一人表示されている組み合わせで自分たちのペアがどこにいるのか。誰と戦うのかを確認する。

しかし、その確認は思いのほかアッサリと終わってしまい、彼らが何処なのかが一目で分かってしまった。

 

「…一回戦の初っ端…」

 

『災難と取るべきか、幸運と取るべきかだね』

 

「当然、災難だろ…」

 

初戦からという組み合わせに悪意を感じた一夏は、ステルス状態で横に立っているだろうMk-Ⅳ、そしてそこから介して通信を送っているオタコンの言葉に口元をゆがめる。

当然、恐らくは開催者側が意図的にそうしたのだろうということは明らかだったが、だからといってそれを抗議するほど、子どもでもない。出来上がってしまった組みあわせに反論することなく、対戦相手が誰なのかと確認する。

 

「相手は三年のコンビか…」

 

『当然といえば当然か。実力も保障は出来るし、なにより同学年ならスキルも差は少ないハズだ。まぁ…彼女らがしっかりと勉学を受けていたら…の話だけど』

 

オタコンの言葉を横に聞きつつ、一夏は視線を画面から人込みの中に移し替える。何処かからか、ざわめきの中に笑い声が聞こえ、更に目線を感じていたので、気付かれない程度に手首を弄っているフリをしてその視線の先を見る。

案の定、視線と小さな笑い声の主は二人の女子生徒からで見た目から三年、恐らく最初の対戦相手だろうというのは、その素振りから明らかだった。

 

「この分だと、学年が別のペアは俺たちぐらいかな…?」

 

『多分そうかもね。一年が他に居たら話は別だったかもしれないけど、二年、三年がほとんどだから常識としては同学年、ないし二年・三年のコンビだろう』

 

「けど、二年・三年の場合は能力的な差もあるし、今の状態だと組むことすらも怪しい。人によっちゃ、愚考って言われるかもな。

 ってワケで…」

 

消去法で、同学年で組む。というのが最後に残る。最も、参加しているのは大半が三年なので、仮に学年別に組むとしても、恐らく人数的な問題でまず組まれることもないだろう。

 

「どの道、三年と当たる確率は高いんだし、今更悲観してもな」

 

『向こうは自分たちが態の良い実験台だってことも知らないんだし、ここは思い切りしないと。それに、もしかしたら何かわかることがあるかもしれない』

 

「分かること…?」

 

『国の内情、上層部の動き。誰が誰と接点を持っているか…そして…』

 

「…それ以上は叶うことは無いと思うがな。兎も角、暴露出来るっていうなら、無罪証明のついでにやるとしますかね」

 

 

そろそろ用意を始めるか、とピットに向かおうとした一夏に、偶然にも別件を終えたばかりの楯無が、彼を呼びに来たのか目の前に現れる。今までと違い、普通に視界に現れたことに一瞬だが新鮮さを感じていた。

 

「組み合わせの確認、終わったかしら?」

 

「ええ。先輩は…?」

 

「私は今から。さっきまで、VIP様たちに挨拶していたから」

 

「VIP…誰が来てるんですか?」

 

気になってしまった一夏は、間を置かずに考えていたことを直ぐ口にする。

別段VIPに気を付ける気がない彼は、念のために誰が来ているのか知りたくなっただけで、子どものように反射的に訊ねてしまった。他意がないのは確かだが、その所為で楯無に何か気になっていることがあるのかと思われてしまった。

 

「………そうね」

 

チラリ、と横目で周囲を確認する楯無は誰かに聞かれてはマズイと思ったのか、口にすることを渋ったが、小声ならと思って一夏に顔を近づけて耳打ちで話す。

聞かれたり、その様子を見られただけでも何を理由に騒ぎ立てられるか分からないので、彼女は顔を近づけた瞬間に名前だけをハッキリと正確に、早口で言った。

 

 

「―――。」

 

「―――ッ…アームストロングが…?」

 

「シッ…変に騒がれると大変だから、後はピットまでの道中で」

 

「………。」

 

一回戦の初っ端ということで直ぐにピットに向かわなければならない。それを利用し、一夏と楯無はそそくさと逃げるように控室を後にする。

傍から、特に三年からすれば恥ずかしくなったのかという様な見え方だったが、二人がそんなことを気にせず、別のことで離れたことをその場にいるほぼ(・・)全員が知る事はない。

ただ一人、楯無たちとは別でVIPたちと挨拶を交わしていたセシリアを除いて。

 

「………。」

 

「…どうした」

 

「いえ。別に」

 

一夏たちのことなので、と他の三年が思っていることとは別のことで出て行ったのだと理解した彼女は、余計な詮索も予想もせずに自分たちの対戦相手が誰なのか、他に誰が居るのかを確認する。

といっても、自分たちを除けば、殆どが三年なので名も知らない相手が多く、彼女らと当たる確率は高い。しかし、セシリア・箒ペアは一回戦は三年ではなく、数少ない二年ペアとだった。

 

「…一回戦は二年とですか」

 

「こういう時だけ、変な運が回るものだな」

 

「三年と当たりたかったのですか?」

 

「…欲を言えばな」

 

今まで、ここまで話した事や表情を現したことのなかった箒に、観察するような目線でセシリアは興味深そうに彼女を見ていた。

過去には牽制して口数も自分の場合はそこそこ少なめだったが、タッグマッチということでペアを組んでからは明らかに人並みの会話を長く続けられている。正直、当分は会話も短く続かないものだと予想していたが、何を思ったのか馴染んだように言葉を返す彼女に、思わず目をくぎ付けにされていたのだ。

 

「………なんだ?」

 

「…いえ。珍しいと思いまして」

 

「珍しい…?」

 

当人も無意識の内だったので気づかなかったのだろうか。何を言っているんだと、首を傾げて再び正面に顔を向けた箒は、もし勝った場合の次の対戦相手が誰なのかを既に確認していたりと、また自分の世界に戻っていった。

今は普段気遣っていることよりも、目の前のことに集中しなければならないようで会話も普通と言えるようなものだ。

 

(自信はあるが不安もある…はてさて、実戦ではどちらに転ぶのでしょうか…)

 

 

自分もと思い画面の組み合わせを見ると、一回戦の一夏たちの試合がもう直ぐ始まるということで、あと数分で画面が実況のものに変更されるという表示が出ていた。

 

 

 

 

「なんで…っていうか、上院議員が来ていいのかよ…」

 

「大統領の付き添いで、その側近だったり右腕だったり…自分の息がかかった連中を固めようって算段でしょうね。実際、来ている面々の大半はそういった感じの議員たちよ」

 

ピットに向かうまでの道を急ぎ足で歩く二人。時間までは若干の余裕があったが、一夏は話題の所為で無意識に歩くスピードが速くなってしまい、楯無もそれに付いて行っているという状態だ。

 

「それに、中にはISとの関わりの深い議員だって居る。ココに来る理由としては問題がないレベルよ」

 

「そういう奴に紛れてってなると…逆に浮くんじゃ…?」

 

「そうかもしれない。けど、軍事方面に向きつつある今なら、軍事系にだけ明るい人物であっても呼ばれる可能性がないわけではない。ISはスポーツの一つとして現在は踏み留められているけど、それはもう形骸化を始めているし、軍事としての認知が強まっている。変に最小限の知識を持つより、何も知らずに軍事力だけを考えてっていう意見も、別に無意味ではないわ」

 

物事にいくつかの「視点」が存在するように、一方向だけを見て結果を固定させないようにするためには、その対象と近い関係を持つもの、ISであれば軍事、ロボット技術などが関係しているので、仮にISについての知識がなくても、別視点からの意見ということで新鮮味を持つこともある。

ISを知っているからこそ回答は似たり寄ったりだが、逆に知らなかったり、多方面にも詳しいと、その解答は変化する。

 

「一つの分野に集中したものではなく、それ以外の関係のある分野からも知識や技術は必要よ。でないと、欠陥だらけのものになってしまうから」

 

「…だから、ISに詳しくなく、軍事方面に強いっていうアイツがここに来た…か」

 

「…理由はそれだけでもなさそうだけど」

 

 

会話をしなつつピット内に入った二人は、直ぐに準備に入る。といっても、二人の機体は専用機ということで待機状態から通常のものになるだけで、さして時間が掛かるわけではない。

既に相手側も用意が出来ているようで、カタパルトから射出された姿が反対側からでも見えていた。しかも、一目見ただけでわかるような改造がなされており、片や武装を、もう片方は機体そのものに何かが取り付けられていた。

 

「兎にも角にも。今は目の前のことに集中、集中。初っ端から負けたなんて、笑いごとにもならないわ」

 

「笑いごとにならないのはどっちだか…」

 

白式を展開した一夏は、ぼやきながらも腕を動かして自身と機体の調子を確認。機体はともかく、自身も特に問題はないと見て先にカタパルトへと向かった。

 

「病み上がり最初の試合だけど、大丈夫?」

 

「平気です。病み上がりに無茶するのは慣れてますし」

 

「男の子してるわね…貴方も」

 

試合前に色々と聞かされたり、気を付けろと言われた一夏だが、だからといってそれが今に影響するわけではないと切り捨てて、目の前の敵に意識を向ける。別に、今回が病み上がりで最初の戦闘というわけではない。加えて、過去に何度もこういった状態になったことのある彼の体は、既に慣れ切っており、痛みは恐らく意識か何かで忘れているような状態だった。

 

 

「…まぁ、別に彼らが何をする気なのかは知らないこと。今は目の前に集中ね」

 

このイベントの裏で何が起こっているのか。それは今の楯無には知った事ではない。今は自分が、それを知らないという道化を演じるだけ。力量差を知らずに、演じる番狂わせを彼女もするだけだ。

 

 

 

 

 

 

『えっと…彼女たちの機体…片方は試作のスラスターやブースターを装備しているね。機動性は飛躍的に上昇、おまけに瞬間時速はマッハ3だそうだ』

 

射出され、フィールド内で対峙するように止まった一夏は、何処からか様子を見ていたのかタイミングよく通信を入れたオタコンからの情報を耳に入れる。誰かに傍受されるのではと思うことだが、回線は特殊な物で一夏たちが許可しない限りは誰も聞くどころか傍受もできない。加えて、暗号やパスワードなども使用していることから、仮に気付かれても簡単に傍受までにはたどり着けないものだ。

 

「もう一機は?」

 

『敵機のレーダーを妨害、更にはFCSにトラブルを起こさせるジャマーだ。聞けばはちんけだけど、それによってセンサーの誤作動やFCSへのハッキング、それによるIFFの書き換えや消失…いわば、相手の目と手を奪うものだ』

 

「なるほど。目と手を奪って、一方的に背後などを奪い攻撃する…か」

 

となると、攻撃と防御に分かれて戦うのかと思っていた彼に、そうでもないとオタコンが盗んだデータを視ながら答えた。

 

『それにジャマーの機体は一部武装などが使えなくなるけど、銃撃などは問題なく行える。つまり、二機とも攻撃できるってことだ』

 

「それで相手を痛ぶるってワケか…開発したヤツの顔がみたいな」

 

『この後の連中はみんな、そんな奴らさ。途中でキレないでよ?』

 

「これくらいでキレるかよ」

 

呆れかえりはするが、それをインチキだと今更怒る理由もない。それを承知の上で彼は今その場に立っているのだ。インチキが常識、当然のことだという場に、インチキ(常識)を何一つとして持ってこない愚か者として。

 

 

『念のために、彼女にもデータは送っておくかい?』

 

「頼む。つってもそれじゃあ気付かれる可能性あるから、俺から送るよ」

 

『分かった。データを転送する』

 

 

自分だけ知っておくのもと思ったのか、一夏は入手したデータを楯無へと送る。

送られた本人は相手の機体の違反物のデータが彼から送られてきたことに、どうしてと考えてしまったが、彼のバックなどを知っていることから大体の理由などを推測、自分なりの理解で了解した。

 

『データを受け取ったわ。ありがとう』

 

「中にはペーパーだけのもあるんで完全に信用はできませんが、ないよりはって思いましたんで」

 

『…まぁ、逆にそういった情報があるから攪乱されやすいってこともあるけど…一応、情報の一つとして受け取っておくわ。貴方から送られて来たデータってことで』

 

「………。」

 

一体どういう意味だと思っていたが、感覚だけで薄々と理解してしまった一夏は、それ以上何も言葉を返すことができなかった。

 

すると、彼の表情を見てなのか、相手の三年がオープンチャンネルで通信を送ってきた。

回線が開かれると、最初に笑い声のようなものが聞こえ、彼女たちが今でも余裕げであることは、聞かなくても顔を見れば明らかだが、声も聞くと完全に慢心しているとしか思えない。

そして、彼女たちは一夏たちの予想通り、慢心しきった言葉を飛ばしてきたのだった。

 

 

『あらあら。随分と勇気のある一年生なのね』

 

『ホント。男子だからって勝てると思ってるのかしら、仮にも私たち三年生よ?』

 

「………。」

 

余裕気に笑い声をこらえているのが分かる一夏たちは、それでどうという事にもならず、ただ頭を掻いたり、見る気にもなれないので目を瞑っているぐらいしか返すことはしなかった。

 

『それに。いくら専用機だからって、それで勝てるとも思えないし?』

 

『そうそう。いくらなんでも、私たちを甘く見過ぎよ、ボク?』

 

既に勝利を確信してしまっている三年二人に、ため息をつこうにも逆になにを言われるか分かったものではないと面倒に思っていた一夏は、いっそのこと回線を切ろうかと考えていたが、それだとまた変な揉め事に発展してしまうそうなので、オープンのまま黙っておくことにする。

その様子に怯えではないが、どうするかと焦り考えているのでそれどころではないと、誤認した彼女たちは、自分たちが絶対に勝つということを前提に彼らに「最後の警告」を言い渡した。

 

『別に、怖かったらリタイアしてもいいのよ? それでも勇気をもって出てくれたんだから、私たちは馬鹿にしないわ。私たちは』

 

『ええ。何もハンデやズルをせずにここに来てくれた。それだけでも一年には勇気を与えてくれると思うわ』

 

「………。」

 

『だから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっさと死になさい』

 

 

満面の笑みで勝利に心酔した彼女たちは「さっさと負けろ」と言う。

本当は彼らが邪魔で仕方ないのだが、彼女たちにとっては自分たちが今使っている兵器を早く使いたいと、それを使って圧勝したいという好奇心から笑顔に変わってしまっていた。

どの道、なにをしても自分たちが勝てると思っていたので、相手は逆に負けるという確信しかもっていなかった彼女たち。

 

だが、別段そんなことで表情を変えるほど一夏も気にはしていない。負けるからせめて顔だけはという訳ではない。

ただ普段通り、どう戦うかということを考えて既に脳内ではシュミレーションを始めていたのだ。

 

『………あら。声もでないのかしら』

 

『違うわよ。きっと、どうやったら勝てるのかって無駄な努力をしているだけよ』

 

『無駄は酷いんじゃないかしら? 彼だって、こんな状態でも頑張ってくれてるのだから』

 

「………。」

 

既に自分たちの勝利は揺るがない。それが絶対の結果だと、根拠もないことを信じ切っていた彼女たちだが、試合開始のブザーがなる直前

 

 

「…更識先輩」

 

『…結果は出たかしら?』

 

「ええ。推定………………二分ってトコです」

 

彼のあることへの未来予測、そしてそれまでの使用時間が算出され、楯無に言い渡される。

聞かれた当人は未だに目をつぶっているが、それを聞いた瞬間に笑みを浮かべる。

 

『三十秒は早くならない?』

 

「無理ッス。そこまでコイツとのスキルや動きは合わせられないので」

 

『なるほどね…試合が終わったら、私が色々とレクチャーして挙げましょうか』

 

「…お断りいたします」

 

 

 

 

『………はぁ?』

 

「…ん?」

 

『アンタたち…馬鹿なの?』

 

「馬鹿って…なにがです」

 

一夏のきょとんとした目に、先ほどまでの笑顔が消えて苛立った顔に変化する。

しかも、彼らはそれがどういう意味だと、疑問符を頭の上に浮かべており、それが更に彼女たちを煽っているようで気分を悪くした。

 

 

『ハッ。これで本気で勝てると思ってるワケ? それとも本当に馬鹿なの?』

 

「………。」

 

笑い飛ばした三年二人は、まぁいいわと罵倒を後にする。直後にブザーが鳴り、その瞬間に自分たちは勝利への道を一直線に進むのだ。止まることも、変化することもない勝利の道は彼らに絶対の敗北をもたらす。

罵倒したりするのはその後で十分だろうと、彼女たちは試作ブースターを吹かし、ジャマーを起動させる。

 

 

 

 

そして。その直後にブザーが鳴り響き、彼女たちは勝利へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――どう思う?」

 

「どう…とは」

 

「今回の優勝候補だよ、このふざけた戦いの」

 

ああ。と今まで気にしていなかったのか、椅子に深く座り込んだ男の言葉に後ろに立っていた大男は、深くかぶり込んだ帽子の奥で口元を釣り上げる。

 

「そうですね…まぁ、現状は第一候補として、彼らが」

 

「…「ジャックもどき(・・・)」か」

 

「ええ。動きもよいし、何より戸惑いがない。殺しの才は十分にあると思いますがね」

 

「殺しではない。一応は戦いだぞ?」

 

「おっと、失礼…」

 

まるでジョークを言いあうように笑う二人。しかし、すぐに「ですが」と帽子をかぶった男が笑うのをやめて自分の考えを続ける。

 

「ブラックホースは居ますがね」

 

「アイツの妹とかいう女か」

 

「ええ。それと、もう一人。元強化兵の彼女が」

 

「…使えんと思うがな」

 

「いえいえ。ああいう奴ほど、本性は残忍です。ため込んだ怒りを糧に…」

 

 

帽子の男の考えに、ふむと顎に手を置く。確かに、言われてみればと彼の考えも分からなくもなかったが、それでも椅子に座る男の考えは変わらず見方を変える気もなかった。

他人がどう言おうとも、それはあくまで他人の考えだ。それが自分の考えになるわけでもないし、彼の場合はその所為で自分の考えが直ぐに変わるわけでもない。

ただあくまでも帽子の男の意見として、一つの戯言(・・)として受け取るだけだ。

 

「しかし、今年も雑魚(・・)が多いですな」

 

「年々、IS操縦者の女どもは地位と権力に縋り、寄生しつつある。お陰で質も実力もただ下がるだけ。虫唾が走るだけで済むことではない」

 

「同感です。ですが、今年は特にひどい…これでは無駄なだけだ」

 

愁いた顔で横に振る帽子の男に、流石にそれには同意見なのか男も同情したような言い方で答える。

 

「まぁな。これでは何のために兵器となったのかわかったものではない。兵器をロクに扱えん奴らに使われては、ロクな世界にはならん」

 

「思い描く世界に…ですか?」

 

「それもある。だが、それにも限度というものがある。アイツらのやることはタダの馬鹿が暴れているだけ。子どもの飯事にすぎん」

 

「理想とは程遠いですな」

 

「ああ。だから…今回のアイツらは非常にありがたい」

 

「ええ…特に彼らがペアで組んでくれたことも…まるで私たちの意図を読んでくれたかのようだ」

 

「…お前もそう思うか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――サンダウナー」

 

刹那。目の前で起こった轟音と砂煙に、椅子に座る男「スティーブン・アームストロング」と、帽子を被った男「サンダウナー」は悪魔の様な笑みを浮かべ、目の前で起こった出来事に喜び、称賛していた。

目の前の出来事に誰もが唖然とし、驚愕、戦慄したその場で、ただ二人、笑みを浮かべていたが、誰一人として彼らに目を向けることはできなかった。

なにせ、彼らが目を向けた先には、その場いたほほ全員が予想しえなかった結果とまっていたからだ。

 

違法兵器の使用前提というズル(・・)を前提にして行われるタッグマッチ。つまり、ズルをすることが当然のこととなっている。

当然なことであれば、それは自然と常識、つまり基本として成り立ってしまう。基本という絶対の中心物になってしまえば、そこから派生することが正しいことであるとされてしまう。正しい事、基本がそれを中心としてしまっているからだ。

 

 

 

 

―――では。もし基本から、常識から外れた場合はどうだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――え」

 

基本的なもの。常識という枠組みから外されたもの。人はそれを常識外と呼ぶ。

常識外の定義は、基本にとらわれない事。つまり、あるべき基本が別のものだったり、そもそも無かったりする。

当然だと思われていることは、その考えを者にとっては当然ではなく。常識だと思われていることも、人によっては常識ではない。

 

「―――」

 

 

全くの常識外。例題の一つはこうだろう。

 

 

 

自分たちが前提としていことが、目の前で悉く崩されったこと

 

絶対とされていたものが、容易く崩されたこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二分……………十一秒」

 

「お疲れさま。十一秒のオーバーね」

 

 

 

開始と同時に瞬時加速。一気に彼我の距離を詰めた一夏は、攻撃の役割を担うだろう試作ブースターを搭載したほうを撃破(・・)

斬撃と同時に、片腕への負担を覚悟に片手でのショットガンをほぼゼロ距離で発砲。動く暇もなく茫然とするしかなかった彼女は、ただ棒立ちの状態で彼の攻撃を全て受けるしかなかった。

それが約四十秒から五十秒前後のこと。

直後に、もう一機を楯無が急襲。僚機の撃破というより、攻撃を受けた事に反応が出遅れてしまったので、全てに遅れが生じてしまい、接近を許してしまう。

接近武装であるランスの突きを受けて姿勢を崩され、そのまま地面へと突き落とされる。直後に僚機との距離が近かったことが災いしたのか、近くで既に撃破し終えていた一夏に、次弾を装填されて散弾の嵐に。

 

 

動くどころか、反応すらもできなかった彼女たちは僅か約二分半という間に全滅した。

 

 

 

 

 

「………あれ?」

 

 

「さてと。これで先ずは、見せびらかしは出来たってことで…」

 

 

 

 

 

さぁ。ここからが本番だ。

番狂わせを行い、彼らの「正しい」を崩してやろう。

 

 




・後書きという名の酒の飲み会とかでやりそうな愚痴。

ぶっちゃけ…ヒロインで誰が特に好きっていう概念がないんですよね…
なんででしょ?
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