IS×MGS - Another Solid - 作:No.20_Blaz
お待たせしました。いよいよVSセシリア戦の始まりです。
セシリア戦は前後編の二つで今回はその前編です。短いですが。
そして、自分もでも思っていた以上に早くあの人が登場です。
と言う事で、今回はセシリア戦直前とその会戦です。
誤字脱字・駄文はご愛嬌
それでも言いという方は
第五話、お楽しみください。
日が経つと言うのは早い物だ。
一週間と言う間はあっという間に過ぎ、遂に当日となってしまった。
正直、対策と言う対策はまともな物は何一つ無いといっても言い。
それだけ一夏が当日までに出来る事がなかったのだ。
希望があるとすれば、それは唯一つ。彼のISだけだ。
「・・・・・・」
しかし、そのISは試合直前だというのに何処にも無い。彼のISはまだ届いてないのだ。
もしかして間に合わなかったのか。それとも何かトラブルがあったのか。
最悪の事態に進んでいく状況に、一夏はピット内でただ待つ事しか出来なかった。
「遅い・・・もう直ぐ試合が始まってしまうぞ・・・」
「アリーナは満員御礼・・・ココで打鉄ってのは完全に笑い話よ」
ピット内では楯無と虚も居ており、彼の機体が届くのを今か今かと待っていた。
このままでは一夏は最悪の事態になりかねないと感じており、他人のことであるのにも関わらず、虚は焦りを感じていたのだ。
何時彼の機体が届くのか。それを唯一心に待つのが彼等のできることだった。
(オタコン・・・サニー・・・マドカ・・・・・・!)
その彼のISを待つ者が他にも居た。
千冬と真那の二人だ。彼女達が彼の機体の受取人として行く事になっており、此方も虚同様に焦りを感じている表情だった。
「遅いですね・・・」
「・・・仕方ない・・・山田先生。一応最悪のケースも考えてラファールをアクティブモードで待機させておいてください。もし時間内に来なかった場合には・・・」
「はい、わかりま・・・・・・」
「? どうかしました?」
「いえ・・・その・・・」
《ブロロロロロ・・・》
「ん?車のエンジン音・・・」
「にしては・・・随分と音が重たいというか・・・」
二人の正面数キロ先には黒い影の車両が一台、猛スピードで此方に向ってきていたのだ。
車のシルエットの様だが、にしては上部に何か頭の様なものがついており、更には形状も一般車両とは程遠い。その此方に向っている車両に千冬達は冷や汗を流し始める。
「なんだ・・・?」
「お、織斑先生・・・アレってまさか・・・」
それがまさか《ストライカー装甲車》だったとなれば、驚くのも無理は無い。
《ブーブー!!》
『どいたどいたぁぁ!!!』
「ッ!?」
「嘘ッ、こっちに!?」
クラクションと共に外部スピーカーで声が響き、それでも装甲車は突っ込んでくる。
その刹那。ストライカー装甲車は問答無用のスピードで突進。正門のバリケードを持ち前の装甲で突き破り堂々と中に入っていった。その余りのスピードと突進に警備していた女性達は驚き、両サイドに回避。真那も思わず逃げ出すほどだった。
勢いよく中に入ってきたストライカー装甲車は、その巨体を一気に反転、今来た道の方に正面を向けさせ、同時にブレーキを掛けた。
地面にタイヤを擦り付け、コンクリートに黒いコゲ痕を残したストライカー装甲車は千冬のほぼ至近距離でその動きを止めるのだった。
「・・・・・・」
「な・・・何でストライカー装甲車が・・・」
「はえー・・・やーっと着いたぜったく。日本の交通はどうしてあそこまで厳しいのかねぇ・・・」
「キー?」
すると、装甲車の上部ハッチが開き、其処から誰か男の声がする。声のトーンからして何か愚痴ってい様子だ。更に、人とは程遠いサルの泣き声も聞こえ、一体何がどうなっているのかと全く身動き一つ取れなかった千冬は思っていた。
その彼女たちを他所に男は周りを見回すと自分が何処に居るのかを確認。余裕の態度を取っている男に千冬は何者かを尋ねた。
「えーっと・・・ココが学園で間違いないかっと」
「オイ、お前は・・・」
装甲車から姿を現したのは一人の男と一匹のサル。
しかも、男は黒人の肌にグラサン、そしてパンチパーマと言う明らかな
千冬の後ろから覗き込んでいた真那も男の顔を見て思わず「ヒッ・・・」と声を漏らしていた。
だが、その見た目とは不似合いのフランクな喋り方で千冬に質問で返した。
「ん?あー・・・もしかしてアンタが受取人の『チフユ・オリムラ』かい?」
「受取人?まさか、お前が・・・?」
「どうやら、その様だな。いやぁ間に合ってよかったぜ」
白い装甲車には彼の所属する会社のキャッチコピーが書かれている。
監視するという意味ではない。必要としている。必要とされていると言う事。
《 Drebins We have yours 》
貴方の必要とされている物を取り揃えています。正にそのキャッチコピー通りであった。
彼はその為にココに来たのだ。その隣には手にコーラの缶を持って飲みながら立つサルも居た。
男とサルは装甲車から降り立ち、悠々と彼女達の前に歩み寄ると、自己紹介をする。
「どうも。俺はドレビン。世界を股にかける武器商人だ」
「キー!」
「コッチはリトル・グレイ。・・・サルだ」
見れば分かる。千冬は突っ込みかけたがそれ以前に引っかかるワードがあった。
武器商人。
武器を密売したりする者が何故こんな所に、あんなに堂々と入ってきたのか。
多くの疑問などがあったが、取り合えず千冬は、まず先にそれを聞く事にしたのだ。
目を細め、警戒の態度を取る千冬。一方、ドレビンは先程と変わらずの気楽そうな態度で彼女を見て、聞いていた。
「・・・武器商人が何の様だ」
「つれないねぇ。折角アンタ達が・・・いや、あの坊主が待っている物を届けに来たって言うのに」
「坊主?まさか・・・!?」
「そう、そのまさか」
千冬の睨みに動じないドレビンがそう言って指を鳴らすと、誰も操作をしていないのに装甲車の後部ハッチが開放される。まるでマジシャンだ。彼の行動、話し方。その全てが何処かマジシャンの様な考えを分からせないという事に共通しているのだ。
武器商人といっても武器だけを売っているだけでは商売上がったりなのは確実だ。
だからこそ種類は豊富に揃える。豊富に揃えればそれだけそれを求める客が寄り集まる。
そして、それを現地で売るだけではなく届けたりもする。
だから、今回彼は届けに来たのだ。
「確かに届けに来たぜ。アンタ達が待っていた・・・ISをな」
「っ・・・!」
後部ハッチの中にはと言うよりも絶対に中に入らないはずのISのコンテナが格納されており、それをドレビンは更に指を鳴らして後部を開放。コンテナが出せるような状態にした。
無茶苦茶としか言えない状況に千冬達は言葉が出ず、対してドレビンはその状態の装甲車を見てため息を吐きつつ呟いた。どうやらそれなりにも不満の様なものはあったらしい。
「やっぱ装甲車じゃなくてトラックにしときゃよかったか・・・」
「キー」
「ま。兎も角確かに届け・・・」
「ま、待て!」
「? 何か問題でも?」
話に付いて行けなくなり始めていた千冬はドレビンに呼びかける。
本人は唯ISを届けに来ただけではあるが、千冬にとってはそれが問題だったのだ。
話が違う。一体どうなっているのだ、と頭の中は混乱し始めており、それを解決する為に再び彼に聞いたのだ。
「何故お前がアイツの・・・エメリッヒの機体を届けに来た?話では研究所からと聞いていた筈だが・・・」
「あー。もしかしてそっちの話聞いてなかったの?」
「話だと?」
ドレビンは話が通っていたと思っていたが実際は通っていなかったらしく、其れを聞いてドレビンは逆に千冬に問い、それを聞いて分からなかった千冬に対し、事情を説明したのだ。
「研究所の方が開発を頓挫させちまったからそれを坊主の知り合いに委託したんだ。俺はその知り合いから依頼されて運んだって訳」
「・・・・・・?!」
「その様子だと・・・話を聞かされていなかったらしいな。ま、仕方ないか。赤の他人だもんな」
「くっ・・・」
「取り合えず、さっさと其れを坊主の所に運んでやりな。それはアンタ達の仕事だろ?」
「・・・分かった。輸送、感謝する」
「ハハハ。怖い顔すんなって。綺麗な顔が台無しだぜ?」
「・・・・・・!」
終始もと遊ばれていたという感じだった千冬は口を強く締め、ドレビンを見ていた。
一方のドレビンも最後まで自分の態度を崩さず、千冬の睨みでも全く動じず、それ所か言葉を返すほどの余裕さで再び悠々と装甲車の運転席に戻っていった。
正にマジシャン。と言うよりも奇策師だ。相手をあざ笑うかのような一部始終に千冬は納得がいかず、その後姿を見ていた。
「キー!」
「え、くれるの?」
「ウホホッ」
その隣では真那がリトル・グレイの持って居たコーラ缶とは別の缶を貰い、リトル・グレイはそれを真那が取ると嬉しそうにはしゃいでいた。どうやら彼なりのアプローチらしい。
一方の真那は何がどうなっているのかと困惑していたが、唯一つ分かった事は「サルからコーラを貰った」と言う事だけだった。
しかし。そこで更にリトル・グレイはもう一つ手に持って居た何かを真那に渡した。
それがなんなのかとリトル・グレイから貰った真那は一度手にしっかりと握ると自分の手の中で、その何かを確認した。
「・・・カードメモリ?」
「帰るぞ」
「キー」
ドレビンの声にリトル・グレイは人間の子供の様な二足歩行で装甲車に戻っていき、ドレビンが乗り込んだ運転席の上にあるハッチの中に乗り込んだ。
もう帰ってくれ。と千冬は内心思っており、彼等の早期退散を願っていた。
だが、ドレビンはある事をやらないと仕事を終わったと感じないらしく、最後に千冬に向かい、以前使っていた合言葉の様な台詞を言ったのだ。
「Eye have you!」
自分の瞳を片手の人差し指と中指で指し、その後彼女の瞳にへとその指を指した。これが彼の別れの挨拶となっているらしい。
ドレビンがそう言うと直ぐに装甲車の中に消えていき、代わりにリトル・グレイが顔を出すとハッチを引いて閉めたのだった。
リトル・グレイがハッチを締め終えるとストライカー装甲車はそのエンジンを響かせ、再び白い巨体の動力を駆動させる。駆動した動力が温まるのを待たず、装甲車はその場から急発進し、来た道を駆け抜けて行った。
嵐の様に装甲車が去っていくのを教師二人は呆然と見ていたが、その時思っていた事は違っていた。
片や「二度と来るな」と。
片や「面白い人だったな」と。
「で。無事に届いたんですね」
「まぁ・・・そう言う事になりますね」
「開始まで後五分。急ぎましょう」
取り合えずISは届いた。それだけは確かだったのでそれを急ぎ一夏の元に届けた真那は楯無に事情の説明をし、彼女から話の要訳を尋ねられるとサルと戯れていたと言う事を伏せ、一応ココにISが届いたと言う事を確認した。
だが、ココで真那がある事を思い出し、一夏の傍に寄って何かを取り出した。
「あ、エメリッヒ君。これ」
「ん?これは・・・」
「なんか、貰ったのだけど・・・これ、エメリッヒって書いてるよね?」
「本当だ・・・それに、これって・・・」
真那が渡したのは先程リトル・グレイから渡されたカードメモリだ。其処には白い部分にエメリッヒと英語で書かれており、その下には「By オタ魂」と書かれていた。
一体彼が何の用でこんなのを渡したのかと思い気になった一夏は、iDROIDにメモリを差し込み、中身を確認した。
空中投影のモニターにはメモリに保存されていたファイルが表示される。しかし、ファイルの中身は音声データ一つだけでその他には何もなかった。
一体何なのかと思っていたが、一夏はその音声データが昨日更新されたというのを見て、思わずポケットからイヤホンを取り出し、それをiDROIDに刺し込んだ。
まだ向こうでは準備を進めている。彼女達には悪いがと思いつつも一夏はイヤホンを耳に付け、保存されていたたった一つの音声データを再生させた。
『・・・・・・あ、出来てる?』
『うん。出来てるよ』
再生ボタンを押すと、先ず最初に聞こえてきたのはマドカとサニーが録音機器で録音出来ているかを確認する声だった。
彼女達が何か言いたかったのは分かるが、一体何なのかと思いつつも一夏は音声を黙って聞いていた。
『えっと・・・先ず最初にごめんなさい。完成するのに手間取っちゃって・・・おにいちゃんの為に色々としてたら時間かかっちゃった・・・』
サニーが苦笑交じりに一夏に謝罪していたが、声からして少し泣いていると言うのが分かった。どうやら時間ギリギリまで彼女達が必死にISを改修していたかららしい。
すると、サニーに続き今度はマドカの声が聞こえてきたのだ。
『取り合えず、機体の改修は終わったけど、肝心の機体が初期状態のままなの。本当は最適化を終えてからの状態で渡したかったけど・・・』
「・・・あの二人・・・」
『け、けど!最適化までを最短にするように設定したから、一次移行までの時間は短い筈。後、動きは随時機体が最適化してくれるからそっちは気にしないで!』
「・・・・・・」
これが時間ギリギリまで引っ張ってしまった原因か、と一夏は納得していた。限られた時間の中でそれだけの作業を済ませた二人に、一夏は改めて二人の凄さを身に感じていた。
しかし、其処からサニー達の喋り方は必死に、何か言い理由でもするかのようになり、もしかしたら向こうで彼が怒っているのではと思っていた二人の顔が彼の脳裏に浮かんだ。
『あと・・・あと・・・そう武器!武器はジャックのを入れてあるから!!大切な・・・ジャックの使っていた武器を!』
「ッ!」
サニーの言ったジャックの武器と言うワードに反応し、思わずISの方へと顔を向けた。あの中に彼の得物が入っている。それだけでも彼にとっては心強い事であった。
段々とサニーが泣いているのが分かるようになる程、泣きかけている声が聞こえ一夏は胸が締め付けられる感覚が伝わってくる。二人が其処までしてでも必死にやってくれたのだと。
『・・・ゴメンね。お兄ちゃんの為にって頑張ったのに私達が出来たのはここまで・・・けど・・・私達頑張ったよ。お兄ちゃんの為に・・・精一杯。だから・・・』
『私達を・・・許してくれるよね・・・?』
まるで最後の言葉の様に泣きかけている声がイヤホンから聞こえてくる。
だが、其れを聞いていた一夏は悲しみを感じていなかった。寧ろ、彼女達の必死さと暖かさが十分に伝わってきたのだ。
「・・・ああ。ありがとう、二人共」
唯一言。今はココに居ない二人に対し、一夏は優しく答えた。
そして、イヤホンを取ると、再び外部からの音が彼の耳に入り、現実の世界へと引き戻されたのだ。
《パシュウ・・・》
コンテナが開かれると、其処から白い冷気の様な物が排出される。
iDROIDをポーチにしまい込み、一夏は開放されたコンテナの中身を見つめる。
サニーとマドカが必死になるまで改修した機体。その姿を見た瞬間、周りに居た者たちは息を飲んだ。
その中に格納されていた機体、ISは現存する機体とは全く違う姿をしていたからだ。
銀色の装甲が至る所に取り付けられ、背部には長い廃熱版の様なものが付けられている。
まるで鉄の鎧のようなその姿に誰もが目を奪われた。
銀色の装甲だからか。否、その機体の見た目、即ち美しさだ。
現存の機体の様な兵器らしさとは違い、本当に人が纏いそうな姿。
それをそのISはしていたのだ。
「これが、エメリッヒ君のIS・・・」
「見た目は中々・・・さて、中身はどれだけの物か・・・」
「・・・これが、俺の・・・」
『時間が無い。エメリッヒ、直ぐに機体に乗れ!』
「・・・了解」
一夏は千冬の声に我を取り戻すと、直ぐに着ていた制服を取り払うようにして脱ぎ捨てた。
既に中はISスーツに着替えられており、何時でも着替えられるようにとスーツの上から制服を着ていたのだ。
『背を預けるようにして乗り込め。後は機体が勝手にしてくれる』
「・・・・・・」
深くもたれるように機体に乗り込んだ一夏は其処から両手両足が固定される。
これで文字通り鎧の様にISは一夏の一部分となったのだ。
そして、彼の目の前が一瞬暗くなると、直ぐに元のさっきまで見ていた風景が見える。
どうやら、これがハイパーセンサーと言う物らしい。
各システムが起動すると共にスタート画面が映し出され、各所チェックと最適化が数秒で完了する。
その完了時の画面。其れを見て一夏は軽く微笑んだ。
何故なら、最適化完了の画面の背景は一夏の知る部隊のマークが映し出されていたのだ。
「FOXHOUND・・・狐でも狩れってか」
自分も戦場に出ているときに服にし確かにFOXHOUNDのパッチをつけていた。
だが、自分はその隊員でもないのに良いのか、とそれを設定したであろうココには居ない人物に突っ込みを入れた。
しかし、それをのんびりとする暇は無い。
もう既に時間は無いのだから。
『よし。そのままカタパルトに進め。両足を固定後3秒で射出される』
千冬の声を無線通信で聞き、一夏は返答はしなかったがそのまま歩いていく。
その動きは
「凄いです・・・彼、確か今回が始めての筈ですよね・・・」
「なるほど、VR訓練ね」
「確かに、それなら動きに納得はいきますが、問題は経験です。今の彼では・・・」
「分からないわよ。経験だけが戦場を生き抜く方法じゃないわ。運・知恵・技術。必要な存在は多くある。だから、勝負は分からないわ」
《カシュン、カシュン》
両足をカタパルトにセットした一夏は射出の体勢の為に重心を少し低くする。
それから3秒後、機体は勢い良く射出される。前面から重力が感じるが、それを一夏は全身に力を入れて姿勢を保たせる。
カタパルトから離れると、背部に装備されていたブースターを点火させ更に勢いを増し、その銀色の姿を日の目に曝け出したのだ。
日の光を眩しく思う一夏だが、白く光る世界は直ぐに消え失せてその外の世界を見せ付ける。
其処は大歓声響くアリーナで観客席には楯無が言ったとおり満員御礼の状態だった。
一夏は思っていた以上の賑わいに関心していたが、特に恥ずかしさなどは感じなかった。
それは正面に居る相手がそんな事をしている余裕の無い相手だったからだ。
セシリア・オルコット。彼女は蒼い機体《ブルーティアーズ》を身に纏い、まるで人を抱くかのようにして自分の装備であるスナイパーライフルを持って立っていた。
日の光が照らすこの場所でならはっきりと分かる。セシリアの目は濁っては居なかったが、何処か虚ろな目をしていたのだ。
一夏はその彼女の正面に立つようにしてブースターの出力を調整。地面に着地した。
其れを確認したセシリアは試合前にと言う事で彼にだけ聞こえる無線回線で話しかけたのだ。
『少しアクシデントがあったようですが・・・何とか間に合いましたわね、ミスター』
「ああ。待たせたなセシリア・オルコット。いや・・・
元
『あら。ちゃんと調べてくれたんですね』
「そりゃあね。アンタの名前、何処で覚えたかって思ってたら案の定だったさ。イギリス軍と政府の共同訓練。IS代表候補生訓練プログラム。その主席様ってな」
『良く出来ました・・・とだけ言っておきますわ』
彼女は元軍人であった。その理由はイギリスのIS操縦者に対する訓練プログラムの一環として正規軍の何処かの部隊に必ず配属され、三ヶ月の戦闘訓練等を受けるというからである。つまり、彼女だけではない。イギリスの代表候補生は必ず何処かの正規軍や特殊部隊に配属され、訓練を受ける事になっていたのだ。其れを知ったというより、一夏は薄々では分かっていたのだ。過去にイギリス政府と軍のメインバンクにサニーがハッキングを掛けた事があり、そこでその訓練プログラムと彼女の存在を知ったのだからだ。
「アンタのそのタチも軍人だったって言われたらコッチも嫌でも納得する。それに、持って居たPPSの事もな」
『・・・・・・』
「で・・・俺としてはアンタに聞きたい事は一つ・・・
実際に、訓練プログラム・・・いや、SESとして作戦に参加したって話は本当か」
『・・・ええ。過去に何度か。もう数は覚えてませんけど』
「・・・じゃあ、それによって・・・」
『当然。代表候補生の何人かは殉職しましたわ。けど、そんな事は始めから分かっていた事です』
「・・・・・・」
『あの時代で代表候補生になる事。それはつまり命を捨てる覚悟で望むと言う事。今の世界の列強国家の中では当然の事ですわ。女尊男卑に溺れる者達に代表となる資格は無い。寧ろ邪魔でしかありませんわ』
「随分バッサリと切り捨てたな」
『ええ。私も女尊男卑と言うのは好みません。人は同じです。弾が当たれば死ぬ。腕を飛ばされれば痛む。けど、ISだから大丈夫・・・そんな甘っちょろい考えなんて・・・』
「クソ喰らえってか?」
『当然』
「ま。同じ考えしてて良かったよ」
『そうでしょうか?私には貴方が同じ考えをしているとは思えません』
「・・・・・・」
『・・・さて。無駄話もここまでにしましょう。ギャラリーがお待ちですし』
「・・・だな」
刹那。二人はそれぞれの構えを取って臨戦態勢に入る。
一夏はまだ武器に何があるのか詳しくは知らないのでその場を凌ぐ為にCQCの構えを取る。
対してセシリアは持って居たスナイパーライフル《スターライトMk.Ⅱ》の銃口を一夏に突きつけ、何時でも先制攻撃が出来るようにと、トリガーに指を掛けていた。
(相手は此方と同じ・・・やり難いかもな・・・)
(では・・・お手並みを拝見としましょうか。ミスターエメリッヒ)
互いに会戦までの緊張感が高まり始める。
其れを感じてかギャラリーも煽るようなリズムを響かせ始め、それによって更に二人の戦意が高揚する。
感じる。指に、手に、足に、銃に。そして、自分自身に。
緊張が最高潮となったその瞬間。
会戦のブザーが鳴り響く。
「行くぞ・・・!」
「っ・・・!」
刹那。先制を取ったのはセシリアで、スナイパーライフルのトリガーを一気に引き抜く。
先に構えていたセシリアが先制を取るのは誰の目にも明らかだった。それ位を想像しなければ戦いには勝てない。当然、一夏はそれを予想し、回避の姿勢だった。
上半身の重心をずらした僅かな動きでライフルの攻撃を回避。そのまま接近していく。
相手が狙撃重視なら接近戦が有利な筈。セオリー通りではあるが有効なのは確かだ。
(先制、いただきッ!)
「・・・」
だが、其れぐらいは相手も予想しなければ弱点丸出しでは意味が無い。
一夏が接近してくるというのは第一に考えられる事だった。
だから、セシリアは左手に既に次の手を準備していたのだ。
「ッ!!」
「フッ!」
セシリアが目と鼻の先となった時。一夏はセシリアの次の行動に気が付き、攻撃を中止して重心を下げる。
それは、先程まで一夏の上半身があった場所に何かが振られたからだ。
小型のナイフ。セシリアはそれを《インターセプター》と呼ぶ。
本来はブルーティアーズの予備兵装だが、それを予備として使わないと言う事はこの戦いではないだろう。一夏の接近戦に唯一対応できる武器なのだ。
「あっぶ・・・」
「貰いました」
「ッ!!」
刃を外側にして振られたインターセプターをセシリアはそのまましゃがんだ一夏に向って突く。
この時一夏はまだしゃがんだ直後なので次の動作が行えず、ギリギリ身体を動かせる程度だった。次の動作。それは接近戦が失敗したので一旦距離を取ると言う事だ。
だが、この攻撃には間に合わない。
インターセプターはそのまま一夏の手近な腕に突き刺さる
《ギイィンッ!!》
と思われたが、一夏の機体の装甲によってその攻撃が防がれてしまい、其処から火花が飛び散った。
装甲の硬さににセシリアと本人である一夏も驚いていたが、その隙をついて一夏は一気にセシリアとの距離を取った。
「・・・」
「装甲に救われたぜ・・・」
セシリアも立っていた場所から後ろに下がりスターライトMk.Ⅱを右手で持ち、左手にもたれているインターセプターに目をやる。
インターセプターの刃にヒビは入っていなかったが装甲に当たった時にセシリアの腕にその振動が伝わったので少なからずのダメージはあるだろう。
流石に予備の武器である為に強度は其処まで強くないのだろう。
だが、それだとしてもあの機体の装甲の硬さは異常だ。
ISでもそこそこのダメージが入るはずなのに、あの機体にはその傾向が全く見られない。
「随分とお堅いですわね・・・」
「俺もだよ・・・」
驚きはしたが、所詮装甲が硬いだけと言う事だ。此方にはまだ手はある。
余裕を保ち、セシリアは次の攻撃の為に動き始めようとする。
其れを見て一夏も何か手はないのかと思い、自分の目のモニターに使えそうな武器や装備を探す。
サニーの話では『ジャック』の武器が入っている筈だと言うのを思い出し、装備を開くのだが
「・・・・・・!?」
直後。一夏は目を疑った。
其処には現状の彼にとって余りに非情な事であったからだ。
その現実を受け入れ、余裕を装う顔で一夏は呟いた。
「恨むぜ・・・オタコン・・・」
恐らく改修に参加していたであろう人物の名を言い、必死に頑張ったといっていたサニー達に申し訳ないのか、彼にその現実に対して八つ当たりしていた。
その理由はいたってシンプル。
『何も無い』のだ。
オマケ。
イギリスの代表候補生と訓練プログラムについて。
劇中で一夏とセシリアが話していた事ですが、セシリアに限らず、イギリスの代表候補生になる者は数ヶ月何処かの部隊に配属されて戦闘訓練を受けます。
この作品では戦争が続いているのでイギリス軍も時折出撃しているからであり、ISだけの経験だけでは現地での戦力と経験が不足していると判断されたので実際の軍隊に入り、その技術などを習得して能力を向上させると言う事です。
セシリアの場合SBSに配属されましたが、他にもSASなどに配属されたりと様々な所に配属されています。当然、セシリア達のような実動部隊に配属された代表候補生達は関係なく一部隊員として戦地に行きます。
それによって殉職した代表候補生も多く、候補生だけでもかなりの数がいたが、訓練終了後には既に指で数えられるぐらいしか残っていなかったです。
つまり、この作品でのセシリアは軍人上がりの代表候補生で実力は折り紙付きです。