IS×MGS - Another Solid -   作:No.20_Blaz

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第六話です。

ちょっと話が長くなったので今回は中編となります。
なのでセシリア戦は次回で決着にしたいと思っています。
今回は完全ISパートですのでMGS要素全くゼロですが、其処はご割愛ください。

で。感想でも皆さん気にしていたダンボールですが、どうにか話が纏まり始めているので何とか近い内に出ると思います。ちゃんとした理由付きですが。

と言う事で今回はVSセシリア戦の中盤です。この作品のセッシーはかなり黒いですw


では、誤字脱字・駄文はご愛嬌。
それでも良いと言う方は
第六話、お楽しみ下さい。


No.06 「覚醒」

一夏対セシリアの試合が始まってまだ五分と経っていない。

だが、状況は誰の目から見ても分かりきった事だった。

 

 

 

 

 

「ぐわっ!!」

 

幾つも降り注ぐ閃光に、一夏はただひたすら回避だけに専念していた。

ブースターをフルに活用し、弾道の予測位置を割り出して其処から避けられるようにと。

 

一方のセシリアは空中で距離を取ってスナイパーライフルで狙撃を繰り返していた。

相手が接近して来た時の為に常に左手にはインターセプターが持たれており、その状態でもしっかりとライフルを構えて狙撃を行っていた。

 

「・・・意外にしぶといですわね」

 

現在まで一発も当たらないと言う事に最初は苛立っていたセシリアだが、段々と相手の状態が読めてきたのかその苛立ちが無意味とわかり、再び冷静になって狙撃を繰り返していた。

 

何故ここまで一夏は唯の一度も反撃を行っていないのか。

それは簡単な事だ。

 

反撃を『しない』ではない。

 

 

 

『出来ない』のだ。

 

 

 

「クソッ・・・武器も装備もなしってマジかよ・・・!」

 

一夏は機体の一次移行を待ち続けながらセシリアの狙撃を回避し続けていた。

彼の武器も、装備も現在何一つとして使えない。使う物が一切無い状態だった。

正に(ネイキッド)の状態だった。

しかも、彼に科せられたハンデはそれだけではなかった。

 

普通ISは飛行能力を有しており、その高い機動力を空中でも活かせるようになっている。

その為、どこぞのモノアイのロボットに無いにしろ空戦力としてはかなり貴重な存在でもあるのだ。

高い機動性と充実した火力。それがISの強みの一つだ。

 

しかし、一夏の機体には其れが無い。

火器の一つもなければ飛ぶ事すら出来ない。

あるのは硬い持ち前の装甲だけ。

 

正にドン亀とも呼べるべき機体だったのだ。

 

 

「相手が狙撃重視でコッチは接近戦。セオリーなら格闘のCQCだが・・・」

 

 

「CQCは相手も習得している。つまり、相手は接近戦でCQCが来るのを知っている」

 

「初陣初っ端から大変な事になったわね、彼」

 

他人事の様に一夏の奮戦を長めている楯無。一方の虚は彼の劣勢状況に自分が戦っているわけでもないのに焦りを感じていた。

その二人の見るもの。一夏を見ているのは共通していたが、注目している点が違っていたのだ。

 

(あの装甲の硬さ・・・幾らあのナイフが予備の類だからといってほぼ無傷と言うのは・・・まさか?)

 

 

 

 

 

 

「ジャンプは出来る・・・なら、空から引き摺り下ろすか!」

 

装甲と機体の現状を見て、これ以上の長期戦が不利だと判断した一夏は、機体の性能をフルに使って彼女を地面に引き摺り下ろそうと考えていた。

空中が駄目でも地上戦ならどうにかなる。

どの道この現状では出来る事はこれだけである。

 

「仕掛けるなら、そろそろ・・・」

 

 

 

仕掛けに出た一夏は一旦セシリアの視界から離れようと周囲を旋回し始める。

それを追撃せんとセシリアはスナイパーライフルを構え、一夏の少し前に照準を当て狙撃を繰りか返す。

このあまりに一方的な試合に生徒達は次々と疑問が浮上し始めていた。

何故彼は反撃をしないのか。

武器がまだないのか。それとも使える間合いではないのか。

 

それとも。怯えたのか、と。

 

 

答えは武器が無いと言う事だが、外から見れば怯えていると見られても可笑しくは無い。

女尊男卑主義者達からすればそれしか見れないからだろう。

 

 

 

しかし、仕掛けるのはココからだ。

 

 

刹那、セシリアのライフルのスコープから一夏の姿が消える。

セシリアは一夏が接近戦に入ったと気づき、スコープから目を離すとインターセプターを構える。そして、彼女がスコープから目を離した時には既に一夏はセシリアの数メートルの間合いに入っていたのだ。

 

(来る・・・!)

 

 

一夏の接近戦が来る。それを悟ったセシリアはインターセプターを構えて接近戦の構えをする。その構えを見て一夏は僅かに微笑んだのだ。

 

「っ!!」

 

「遅いッ!!」

 

 

 

刹那。一瞬にして一夏はセシリアの右肩に自分の左手を置いて右のスナイパーライフルを使えないようにし、更に残った右手でセシリアの左手に持たれていたインターセプターを奪い取ったのだ。

インターセプターを奪い取る事が目的だったと知り、セシリアは意表を突かれたがそれが無意味に近いことだと言うのは分かっていた。

 

現存のISにはあるシステムが搭載されている。それは武器の管理システムだ。

システムの概念としてはSOPに似ており、一体のISが持つ武器の管理は全てその母機が管理している。母機がその武器を使用すれば、銃弾が出る。しかし、逆に母機でない機体が使おうとするとシステムが反応し、発砲出来なくなったり剣などは強制的に手を離すような電撃が走るなどがある。

つまり、この場合だと一夏が例えセシリアのインターセプターを奪い取れたとしてもそれをセシリアが許可しない限りは一夏に使用権限はないのだ。

 

 

それを知ってか知らずか、一夏はインターセプターを奪い取った。それだけは事実だ。

だが、彼の攻撃はそれだけで終わりはしない。

ふと、セシリアに左へと流される感覚が感じられ始める。それは自分が投げられようとしていたからだ。一夏は肩を掴んでいる左手だけでセシリアを地面に叩きつけようと投げ落としていたのだ。

 

 

 

「うぉりやっ!!」

 

「ッ!!」

 

左手がフリーとなり、右手が使えなかったセシリアはそのまま投げ落とされる。

それに続き、一夏の機体も滞空時間が切れたのか地面へと重力に引き込まれるようにして落ちていく。

このまま追撃を続ける。一夏はそのまま格闘戦で一気に追い込もうと握りこぶしを作り、セシリアにストレートとジャブを入れようとしていた。

 

しかし、ココで一夏の右手に痺れが走る。

インターセプターの使用権限が発動し、一夏を拒否。電撃を発生させたのだ。

痺れを感じた一夏は反射的に手を離してその手を見る。

インターセプターは直ぐに手から離れて宙を舞いどこかに飛んでいった。

 

それを隙と見たセシリアはそのままの状態で反撃に転じる。

ライフルを構える暇も無い。インターセプターは宙を舞う。残る手札も時間が掛かる。

なら、自分を武器とすればいいのだ。

 

「隙ありですわよ!」

 

「しまっ・・・」

 

一夏がその次の台詞を言おうとした瞬間であった。

彼の正面には青に何かが迫ってきていたのだ。

まさか青い狸が落ちてきたわけでもあるまい。

その青い何かを見て、一夏は次のワードを急遽変更したのだった。

 

「オーバーヘッ」

 

 

 

 

刹那。空中で一夏はセシリアにオーバーヘッドを喰らわされ、鈍い音と共に壁と言うゴールに叩きつけられた。流石にISと言うだけあって威力は馬鹿にならない。蹴り飛ばされた彼はそのまま壁にめり込んでしまったのだった。

 

 

「うわぁ・・・」

 

外から見ていた真那はそれを痛そうな目で見ており、背筋になんとも言い難い感覚が走っていた。まるで自分が喰らったかのようで体にも痛みではなくかゆみが伝わっていたのだ。

 

まさかのオーバーヘッドシュートに誰もが驚き、何も言葉が出なかった。

洗練されたIS操縦者ならこんな事は朝飯前だろうが、ココに居る者達はそんな事はとてもではないが出来ず、する機会も無い。

この瞬間に、二年生・三年生の日本生徒達は改めて自覚した。

自分達では到底彼女に、海外の国家代表に勝てる事は先ずないだろうと。

誰もが自分達が行ってきていたことが全て序の口であった事に改めて気づいた時でもあった。

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「しののん・・・大丈夫だよね・・・」

 

「・・・ああ・・・」

 

その中には箒も居た。彼女は席が無かったので立ち見で観戦する事にして出入り口の直ぐ近くに陣取っていたのだ。其処には彼女の他に同じクラスのメンバーであり、虚の妹の布仏本音も居た。一夏の居ない間に知り合いと言う関係にまでなっていたからか、箒は彼女の心配そうな台詞に耳を傾けて答えていた。

今の自分ではこれしか出来ない。そう思い、箒はもう一つの心配と共に彼の戦いを見守っていた。

 

「一夏・・・」

 

 

 

 

 

「っ・・・つー・・・」

 

一方、フィールドでは壁に叩きつけられた一夏は装甲に救われたのか大したダメージも無い様子だった。

こればかりは装甲に救われたと思い、取り合えずめり込んだ壁から抜け出そうと思い、機体を動かした。めり込みは其処まで深くはなく、手で支えれば何とか出られるぐらいだ。

取り合えず脱出しなければ話にならないと思い、一夏は両手で機体を前面に押し出す。

所々に深くめり込んだりしていた所があったが、何とかなるだろう。

 

 

その彼の様子を見て余裕があったのか、セシリアは優雅に着地し一夏が脱出しようとしているのを眺めていた。完全に舐めきっている。一夏でなくても誰の目からも明らかだ。

だが、それも納得がいくと言えばそうだろう。

一夏はまともに戦える状態ではない。武器も無く、空も飛べず。ましてやCQCも効果は薄い。

こんなハンデのオンパレードでは相手であるセシリアも舐めるのも当然だ。

だからそこのこのハンデなのだろと言われたら誰だって納得する。

現状、戦いと言うよりも子供と大人気ない大人との戦いの様な状況だからだ。

 

 

だからだろうか。セシリアはこの間を利用し、彼に通信で尋ねたのだ。

 

 

『ミスターエメリッヒ。貴方に一つお聞きしたい事があります』

 

「・・・なんだ」

 

『貴方と・・・篠ノ之箒さんはどういったご関係でしようか?』

 

「・・・・・・」

 

唐突に何を聞き出すんだ。と一夏は眉を細める。

しかし、何故彼女がココで一夏に箒の事について尋ねるのか。

いや、それよりもどうして彼女なのか。と其れが真っ先に彼の頭の中に浮かんだ。

ココ(IS学園)に来てからは一度も彼女と話をした事は無い。彼女から接触しようとしてもその間に自分はステルス迷彩で姿を消していたりして彼女から離れている。

 

彼女が何か言いたいと言う事は一夏でも分かっている。聞きたい事が多くあると言うのも分かる。

だが、今の自分が一体彼女に何と言って話せばいいのか。何と言って彼女と会えばいいのか。それが今の彼には難しく、どうしても見つからなかった。

 

だから、傍から見ても自分と箒との関係はゼロの様に見られる筈だ。

なのにセシリアはまるで一夏と箒が知り合いである事を知っているかのように彼に尋ねたのだ。

何か変だ。セシリアの言い方に違和感は感じられない所を見ると、質問自体は純粋な事でとあるのは確かだ。だが、何かぬぐい切れない感じが一夏にはあった。

だからだろうか。一夏はそれを踏まえて彼女との関係はゼロであるという嘘を貫く事にした。

 

 

「・・・さぁな。別に関係と言うものは何も・・・」

 

『・・・そう・・・そう言う事ですか・・・』

 

 

それが何か彼女に確信を与えたとは知らずにだ。

マズイ。と一夏の頭に警告が鳴り響き始める。

先程の回答でセシリアは何かに気づいた。それが何なのかは分からない。

 

それがまさか直ぐに現れるとは、一夏は思いも寄らなかった。

 

 

『貴方は彼女に対してドライですが・・・向こうは相当貴方にご執心のようですわね』

 

「・・・何?」

 

『以前、私は彼女にお説教を受けてしまいましてね。「お前は彼をなんだと思っているのか」と。』

 

「・・・・・・」

 

 

何を言っているのだコイツは。

何の事も無いセシリアの言葉に、一夏は何か違和感を感じ始める。

別に本心を当てられた訳でもない。なのにこれほど嫌な感じがするのは何故だ。

まるでこの先の結末を知っているかのような感覚が一夏の全身に駆け巡り始める。

心拍が上がり、汗が垂れ、呼吸が荒くなる。

何かに締め付けられるような感覚だ。

 

「・・・一体何を言って・・・」

 

『貴方は彼女との関係を否定しているようですが・・・彼女はまだ捨て切れてないようですわね。お陰で、子供の戯言を長々と聞かされる羽目となりましたが・・・』

 

「・・・オイ・・・何を言って・・・」

 

『戦いの事も知らない女が、上から偉そうに説教を垂らす・・・ちゃんちゃら可笑しくて笑えもしませんでしたわ』

 

「・・・セシリア・オルコット・・・テメェ・・・」

 

『だから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しお灸をすえさせましたわ。自分の愚かさを知らせる為に』

 

「・・・まさか・・・・・・」

 

 

『私の真後ろの出入り口』

 

 

「え・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

思わずその背振の場所を見る。

信じたくない。嘘だと信じつつ、彼はセシリアの言葉の方へと目を向けた。

 

そして。

何かに気づいたのだ。

ここ数日、彼女は姿を見せなかった。虚も何も言わなかった。

何故だと思い続けることがあったが、彼女なら大丈夫だと信じていた。

だがココで知ってしまう。

いや。言えなかったんだ。とココで確信した。

 

ハイパーセンサーによって一夏の目には出入り口も鮮明に見える。

だから見えてしまったのだ。

 

 

「・・・箒?」

 

「・・・・・・!!」

 

 

見られてしまった。箒の顔は正にそれだった。

一夏は彼女の顔を見て衝撃を受ける。いや、衝撃しか来なかった。

 

 

 

 

 

 

それは、彼女の顔が痛々しく多くの傷を負っていたからだ。

初日で見たあの綺麗な顔は殆ど原型を残していない。

片目はパッチを付け、頬などには絆創膏を張っている。

額の辺りにはガーゼが張られ、其処からの細菌の侵攻を防いでくれている。

そして腕などにはガーゼの他に白い何かが張られている。恐らく湿布か何かだろう。

 

数日見る事が無かったのはコレ理由だった。

彼にこんな姿は見せられないと言うちゃちな理由ではない。

現実と言う悪魔を知ってしまったからだ。

だから出られなくなった。現実と言うのを知り、怖くなってしまったのだから。

 

 

 

「あ・・・」

 

「・・・しののん?」

 

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・」

 

 

何も言葉は出なかった。互いに見た見られたという感覚だけで後は何も無かった。

ただ無に近い何かが、二人の頭を覆っていたのだ。

 

 

『別に同情する理由はないでしょう?貴方と彼女とは住む世界が違う。私達は戦場に生きる者達。彼女はそれを外側から唯傍観するだけの臆病者。違いますか。

 

 

 

戦争生活者(グリーンカラー)

 

 

一夏の表情に対し、セシリアは何の感情も無く彼に語りかける。

彼女と自分達とは住む世界が違うのだ。それを教えただけだ、と。

その彼女の顔は正しく悪魔の微笑みだった。

不敵な微笑みは見る者に幻覚でも見えるほど魅力的で、まるで微笑みと共に魔女の様な笑い声が聞こえるほどだった。

 

 

 

 

 

 

それが彼のリミッターを解除させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ッ!!」

 

刹那。その僅かな間に一夏はセシリアの目の前に迫っていた。

その一瞬の出来事にセシリアも驚いてはいたが、何よりもその一瞬の行動に外から見ていた千冬も驚きが隠せなかった。

 

「あれは・・・瞬時加速(イグニッション・ブースト)・・・?!」

 

その一瞬の内に彼我の距離を詰める技。そうなると彼女の頭の中にはそれしか思い浮かばなかった。

瞬時加速。文字通り瞬時に相手に接近したりを可能とする業である。

 

 

「何時の間に・・・アレだけの距離を!?」

 

「隠し玉って奴ね」

 

瞬時加速で一夏はセシリアの間合いに入り込んでいた。距離からすれば数キロあるかの距離だが、それを一瞬となると驚くのも無理は無い。

奇襲性に特化した技。それを読むことが出来なかったセシリアも彼の行動には動揺が隠せなかったようだ。

 

そのお陰か、セシリアは直ぐに防御などに転じる事ができず、彼の攻撃を許してしまった。

一夏の攻撃。それはシンプル故に直ぐに使える拳で殴るという攻撃だった。

 

 

「っ・・・!!!」

 

しかし、それを僅かに顔をズラしてセシリアは回避。紙一重でその鋼の拳を避けた。

その紙一重も紙一重。彼女の頬の肌に触れるか否かと言う程の距離でセシリアは回避したのだ。

 

その一瞬の攻撃。その攻撃には何か悪感の様なものも感じ、セシリアはその気配のする方に目を向ける。

其処には獣と言うよりも蛇の様な細く鋭い目つきをした一夏が居た。

その目には情と言う類は何一つ無い。あるのは唯、殺意だけだ。

 

 

一撃をかわされただけで一夏の攻撃は終わりはしない。

其処から更に追撃の拳がセシリアの前に突き出されたのだからだ。

大型のスナイパーライフルを持つセシリアに連続の回避は難しい事だと思われていたが、それを再び紙一重で回避し、セシリアは間一髪全てを回避しきる。

このままでは連続で攻撃を喰らう。セシリアはこれ以上の攻撃を防ぐ為に『ある策』を用意して距離を取ろうとしていた。

それを一夏が逃すわけが無い。やっと相手との距離が詰まったのだ。ココで失敗すればまたさっきのワンサイドゲームに逆戻りだ。

 

だが、その前にと一夏はセシリアに対して通信越しに言い返した。

 

『確かに・・・俺達は戦争生活者(グリーンカラー)だ。俺と・・・アイツと居る世界は違うさ。けどな。だからってアイツをあそこまで甚振る理由になるのか』

 

「・・・どうでしょう。ですが強いて言うなら、正直もう少し部を弁えて欲しかったですわね」

 

『・・・・・・そうか。言いたい事はそれだけか』

 

「・・・・・・」

 

『なら。俺から一つ言わせて貰う・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

テメェにだけは言われたかねぇよ、この腹黒野郎(ブラックカラー)ッ!!!』

 

 

怒りの籠もった一夏の言葉にセシリアは目を丸くした。

あそこまでハッキリと言われた事に目を丸くしていたが、やがてクスクスと笑い始めた。それには言った本人も不愉快に感じ、怒気を纏った声で彼女に聞いたのだ。

 

「・・・何が可笑しい」

 

『・・・いえ。今までそこまでハッキリと物申した者は居ませんでしたから・・・腹黒野郎(ブラックカラー)ですか・・・フフフッ・・・』

 

その時だ。セシリアの纏うオーラが一変した。さっきまでの余裕そうなものでも、不敵なものでもない。まるで狂気を纏った魔女。

その笑みだけでも見るものに悪感を感じさせるのだった。

 

 

「では。その言葉通り、貴方も早々に潰してあげましょう」

 

 

 

 

 

《ガシャッ!》

 

その言葉と共に四機のビットが射出。彼女の周りに展開された。

あれがブルーティアーズの特殊兵器か、と冷静に一夏は分析をしていた。

無線誘導兵器と言うと脳波コントロールだったり空間認知能力だったりと言われているが、脳波コントロールは其処までの科学技術が無い為、実現は不可。

更に、空間認知能力は実現は可能だが、高い能力と集中が必要とされる。

つまり、彼女のビット兵器は集中の為にその場に留まるかをしないとコントロールは不可能だ。

 

(ビットでも攻撃のロスや誤差はある筈。なら、其処から狙えば・・・)

 

 

 

ブースターを吹かし、一夏は再度セシリアに向かい接近する。

彼の接近が予想通りだったのか、接近する一夏に対しビット達が四方八方から攻撃をする。

どの道彼には選択しはこれしかない。被弾覚悟の接近に機体の至る所では被弾の音がしている。

それでも、機体を守るシールドエネルギーはまだまだ余裕の値を示している。

これならまだ多少の無理は出来る。

 

 

 

「・・・ふっ・・・」

 

そう思った時。何か嫌な予感が彼の勘に冴え渡り、無意識にスラスターを使って緊急ブレーキを掛ける。一夏が通ろうとしていた場所にはほぼ全個所から四基のビットが一斉に攻撃を行ったのだ。一度に四基の攻撃が当たった地面は大爆発と共に煙が吹き荒れる。

一歩間違えれば一夏も地面の様に装甲を抉られていたのかもしれない。

だが、彼が驚くべきは其処ではなかった。

 

 

 

 

 

《フォン・・・》

 

 

 

「っ・・・!?」

 

「あら。どうかしまして?」

 

 

 

「馬鹿な・・・」

 

「ビットを動かしている状態で・・・自分の機体を飛ばしている!?」

 

ゆっくりと地面から足を離すセシリア。その表情は余裕の物で、其れを見ていた千冬と真那は彼女の動きに驚いていた。ビットを動かすのには並々ならぬ集中力が居る筈だ。それを彼女は平然と行いつつも飛行を行っている。しかもそのまま動いているというと

 

 

 

「ビットと母機の同時行動。彼女、馬鹿にならない並行操作能力を持っているわね」

 

「ビットだけでも相当の集中力が居る筈。それをああも簡単に・・・」

 

 

「バケモンかよお前・・・」

 

「あら。貴方に言われたくありませんわ。ミスター」

 

「お前と一緒にはゴメンだぜ」

 

「・・・そうですか。なら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ終焉(ファイナル)と致しましょう。

踊りなさい。我がブルーティアーズ達による死の円舞曲(デット・ワルツ)で・・・!」

 

 

 

刹那。彼女のワルツが幕を開け、優雅にビット達が舞い踊る様にして攻撃をしかける。

容赦の無いビットの攻撃に一夏はホバーで攻撃を回避するが、先程までの機械的な攻撃とは違い、踊り子のような動きをするビットの攻撃に翻弄されていた。

一基が攻撃したと思いきや、次にもう一基が直ぐに攻撃を行い、更に其処からとは別の方向から今度は二基がと言った攻撃が続き、再び一夏は劣勢に立たされたいった。

 

「くうっ・・・!」

 

「良い踊りをしますわ・・・貴方の動きは今までの誰よりも良い動きですわよ」

 

「っ・・・」

 

ビットの攻撃が所々に掠り、一夏のシールドエネルギーは段々と消費されていく。

これでは最初に戻ってしまったと思う者も居るが、現状は最初の時よりも酷くなっている。

最初の時にはまだ攻撃の隙があったが、此方ではその隙が全くといって無い。

武器の無い一夏にとって回避だけが出来る行動の全てだった。

嘲笑うかのようにビットを動かすセシリアとそれを回避する一夏。

まるで操り人形の様だと誰もが思う。セシリアの糸に一夏が踊らされる。誰もがそう想像してしまう。

 

「ですが・・・そろそろスタミナも限界でしょう。それに、動きはもう見えてますわよ」

 

「くっ・・・!」

 

一夏の体力はじりじりと削られていき、息が上がり始めている。更にはビットの攻撃も先程よりも当たってきている。このままではいずれなぶり殺しにされるという結末が見えきっている。

勝利は見え始めた。セシリアは勝利を予想したのか、一夏に最後の言葉の様な事を言い放った。

 

「中東では狐狩りの代わりにジャッカルを狩ると言います・・・ですが、貴方は狐にもジャッカルにも成れなかった・・・残念ですわね」

 

「狐ね・・・化かすのは得意だぜ。それに、俺もジャッカルの様な事は散々してきたしな・・・」

 

「それも今日までですわね。か弱い女一人を喰らう事も出来ないという哀れな最期。ジャッカルにも狐にも成り損なった哀れな人・・・」

 

「・・・・・・どうかな。存外そうとは限らないと思うぜ」

 

「・・・寝言はあの世で言いなさい」

 

 

刹那。ビットの攻撃が一瞬だが早くなり、それによって一夏の足が崩される。

足の付く地面と足に直接の攻撃が加わり、その他の方向からの攻撃で体勢を崩してしまった。

普通ならまで姿勢を保てるが、装甲が仇となり、重さで身体が沈んでいったのだ。

正に、亀をひっくり返すのと同じ事だった。幾ら硬かろうと、幾ら倒れる事がなかろうと、それは重心が保たれているからだ。亀は一度でも足を踏み間違えれば倒れ、彼は重心をしっかりと保たなければ自然と沈んでいく。たとえ身体が意識しなくてもだ。

 

 

「っ・・・しまっ・・・」

 

「これで詰めですわ」

 

 

詰めとなった一夏の前に四基のビットが揃う。これでトドメと言う訳らしい。

辛うじて腕一本で体勢を保たせた一夏。しかし、片足は膝を突き、現状腕一本と足が彼の姿勢を保たせていた。このまま回避と言うのは無理がある。

ローリングぐらいは可能だと思われるが、それはそれで亀の様にひっくり返るのかもしれない。更に、そのまま立ち上がるというのも難しい。ISが幾らパワーがあっても起き上がらせるのに通常機以上の時間ロスがある筈だからだ。

 

つまり、どう動こうがビットの攻撃を免れるという事は出来ないのだ。

あるとすれば初期化の最適化が完了するだけではあるがそれが何時なのかは分からない。

何時出来るかもわからない物に賭ける気にはなれない。

 

 

「・・・意外とそのISで持ちましたが・・・所詮その状態です。ココは良く頑張りましたと褒めますが私の勝ちに変わりはありませんから」

 

「・・・どうかな」

 

「・・・・・・」

 

「一つ・・・言っといてやるよ」

 

「お断りします」

 

「・・・だろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那。セシリアは指を鳴らし、彼の言葉を其れを最後にし一斉攻撃を行ったのだった。

乱射されるビットの攻撃に一夏の居た場所は煙が舞い始める。

四基全てが連射を続け、シールドエネルギーをゼロにするまで攻撃を続けるのだろう。

容赦が無いというよりも躊躇ないという事に誰もが怯え、そして戦慄する。

だが、中には其れでよしとする者達も居た。男が生意気を言うなと。女尊男卑主義者達の高笑いの幻影が聞こえてくるようだ。

 

 

「・・・・・・」

 

 

「嘘・・・」

 

 

「ここまでやるか・・・」

 

 

千冬は言葉が出ず、箒は現実を信じられないと。虚は彼女の攻撃に唯それだけしか言えなかった。

当の本人は平然としており寧ろこの位ではと思い、ビットに攻撃を続けさせていた。

その目は冷静で、躊躇などは欠片もなかった。

 

 

これが戦いと言う事だ。相手を殺るからには徹底的に。躊躇すれば死ぬ。

それが戦場の生き方であり、戦いの本質でもある。

正に、これは日本と外国とのISの見方の違いと言う物が現れていた。

日本ではスポーツだのなんだのと言われているが、一歩外に出れば、全ては違う。

ISは兵器であり、ルールと言う縛りは一切無い。

女尊男卑などと言う主義は戦場では通用しない。

あるのは、自分が兵士と言うひとつの存在だと言う事。死ねば皆同じと言う事。

それを彼女は知っている。ある人物から教わり、其れを知ったのだから。

 

 

 

 

 

「これ以上は煙が邪魔か・・・」

 

流石に攻撃の時の生じた煙が邪魔となり、一夏の姿は全くといって見えなくなっていた。

このままでは相手が見えず、どうなったのか分からない。

そこでセシリアは攻撃を中断し、ビットを自分の周りに戻す。ビットはセシリアの元に戻ると機体に再びドッキングする。其処からエネルギーを補給できるからだ。

更に、もし仮に一夏がまだ生き残っていたらと言う事を踏まえ、スナイパーライフルを構える。インターセプターも欲しい所だが、探している余裕は無い。

誰もが流石に決着が付いただろうと思い、煙の舞う方を見る。

あるのは黒コゲの彼か。それともと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・会長?」

 

しかし、その中で楯無は一人考え込んでいた。

それは、あの一夏の機体についての疑問が晴れなかったからだ。

何故デフォルトで搭載されている飛行機能が無いのか。

何故武器が無い代わりに異常に硬い装甲があるのか。と。

 

「・・・時間稼ぎ・・・だとすれば・・・!」

 

 

そして、楯無は一つの確信にたどり着いた。

それはフィールドに変化があったのと同時にであり、まるで彼女の理解したという考えが具現化したようだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《パシュゥゥゥゥ・・・》

 

 

 

(廃熱?けど、一体何を・・・)

 

セシリアの前、一夏が居るであろう場所では廃熱の音が響き、それによって巻き起こった風が煙を吹き飛ばしていく。

廃熱が行われているというのは誰の目からも明らかだ。だが、一体何を廃熱しているのか。

それが分からない者が殆どだった。

しかし、ココに来てようやくセシリアも廃熱の音の意味を理解した。

 

「・・・まさか・・・!?」

 

 

 

 

 

「・・・変だと思っていたの。飛行能力の無いIS。全くといって武器が無いのは仕様でしょうけど、異常な装甲とそれによって生じた飛行能力の使用不可。現存の機体でも意図的に飛行能力をオミットしたりすれば飛べない事は出来るわ。けど、あの異常な装甲。あんなのをびっしりと張り詰めて何の意味があるのか。それをずっと思っていたわ。

 

 

そして、それをようやく理解した・・・」

 

 

 

「異常に硬い装甲・・・まさか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・アジャスト完了。システム最適化。OS設定完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

中空装甲(チョバムアーマー)パージ!」

 

 

『アーマーパージ』

 

 

 

白き煙の中、銀色の鎧が地面にへと落ちていく。

それは全て偽りの姿を保たせる為の単なる盾だった。

その装甲が剥がれ落ちていく様を見て、セシリアは思わず声を上げてそれを言い当てた。

 

 

「っ・・・着脱式の装甲・・・チョバムアーマー・・・!?」

 

 

「世界の大手PMCでもIS用の中空装甲が配備されているって聞いたことがあるけど・・・まさかこの目で見ることが出来るなんてね」

 

「じゃあ、アレは・・・!」

 

 

 

 

銀色の姿は偽りの姿。

それは真の姿までを覆い隠す為の殻だった。

しかし、それももう意味はない。

胎動をしていた者は、もう成熟し、その姿を曝け出せるのだから。

 

 

 

 

『各部アーマーパージ完了。飛行翼展開。システム、レベルⅠに移行。ウェポン・サブ開放。全システム、一次移行完了』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・行くぜ。白式ッ!!」

 

 

白き聖騎士。風を纏い、今。現界する。

 

 

 




オマケ。

中空装甲(チョバムアーマー)について。
ご存知、追加装甲として知られる中空装甲。現実ではHEAT弾や徹甲弾に対して効果があると言われています。しかし、此方の作品ではその他にもビーム等の光線にも効果があるとしています。
その為、ビットの攻撃にも多少は耐えられると言いますが、耐性的には弱い方です。
しかも、装甲自体がかなり重い為、動きに支障が出たりと問題点も多くあります。
そこで、装甲自体は胸部や腕部などの被弾率が高い所のみにするという方法を取っています。
ですが、今回一夏の機体には全身に装甲が擬装用として付けられていたのでかなり重く、しかも飛行能力が使えなくなると言う事に成ってしまいました。これは一次移行までの『凌ぎ』の為であり、最適化完了後にはパージされるという仕組みです。

ISの武器管理システムついて。
MGSではSOPシステムがありましたが、当然ISも例外ではありませんでした。
しかし、それでも専用機やPMC登録機などには管理システムが導入が義務付けられており、SOPとは別の方法で管理されています。
作中で書かれたように管理権限は全てその武器を所持している母機が管理しており、いわば母機がSOPの役目を果たしていると言う事です。その為、母機が許可をすれば他のISでも母機が所持している武器の使用が可能となります。
当然、無許可の場合には接近戦武装だと電撃が走り、強制的に武器を放され、銃火器は発砲不可となると言う事です。
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