目が覚めたら女の子になっていた。そんな創作の中でしか見たことない現象が、アリアに降りかかるとは思ってもみなかった。
「……ほわぁ」
目の前の鏡に映る銀髪の少女。
「これが、アリアなの……ん?あ、あれ?あ、アリ、あ、アリ……あれー!?」
アリアは何度もアリアの事をアリアと呼ぼうと……って心の中も!?
どうやら一人称が全て"アリア"に変換されているらしく、何度アリアの事を別の言葉に置き換えようとしても、アリアと言ってしまう事が分かった。いや、どういうことなの!?
思わずアリアは頭を抱えて蹲ってしまった。すると、右腕にファサっと柔らかな感触。
「あ……え?羽?」
再び鏡を見ると、背中から白銀色の羽が生えていた。……右側からだけ。
「これ、アリアから生えてるの?でもなんで右だけ……?」
もう一度鏡を見る。目は金色、髪は銀色、肌は白くて、手も足もちっちゃい。
「……で、頭の上のこれなんだろう?」
ふよふよと明滅する、銀円の中に金色の丸と寄り添うように紅い丸が浮かんでいる。……なんだろう、とてつもなく見覚えがある気がする。嫌な予感がしたアリアは全力で目を逸らした。
「……まぁ、でもこんな可愛い子になれたなら割とアリかも……?」
鏡を見ながらアリアの顔をむにむにと弄る。
「『気に入ってくれた?』」
……!?え?なに?急に声が……。アリアはきょろきょろと室内を見渡すが誰もいない。
「『ふふ、どこ見てるの?こっちだよ』」
ぐんっと視界が引っ張られ、鏡に戻される。摩訶不思議すぎる状態にアリアの精神状態はパニック寸前だった。
「『アリアの体、気に入ってくれて嬉しいなおにーさん!いや、もうおねーさん?それともアリアって呼んだ方が良い?』」
鏡に映ったアリアがそんなことを言っていた。いや、さっき見たアリアと細部が違う。目は紅く、羽の位置も逆になっている。
「……鏡の中にいる?いや、違う。まさか、アリア……なの?」
先程から鏡の中のアリアが喋ると同時に、自分の口が動いている感覚があった。つまり、鏡に映るアリアはアリアなのだ。
「『ふふ!正~解~♪』」
そう言って鏡の中のアリアは笑うと、アリアも笑った。
「えっと、アリアの体ってことは、この体はアリアじゃなくてアリアのなの?ってどっちかどっちか分からないよ!」
「『あははは!うん、そうだよ。アリアがね、もう一人のアリアが欲しいって願ったんだ。そしたら、叶っちゃった♪』」
鏡の中でコロコロと変わるアリアの顔。顔どころか人格もコロコロと変わって、忙しいことこの上ない。
「願ったって、どういうこと?」
「『願いを叶える石がね、あったんだよ。でも、一回使ったら消えちゃった。もっとお願い事沢山あったのになー』」
「そうなんだ……。それにしてもアリアに主導権があるのかと思ったけど、アリアが動かしてる時にアリアも動かせるんだね」
……。いや、本当にどっちのアリアを指してるのか分からないよこれ。とりあえずアリアは普通にアリアで、もう一人のアリアを指すときは"アリア"って心の中で修正を加えておこう……。
「『あ、いいなーそれ。アリアも真似しよ!もちろん、"アリア"もアリアなんだから体を動かすのも半分こ!』」
ナチュラルに心の中を覗き込まれてるのは置いておいて。つまり、お互いに体の主導権を50%ずつ握っているから、どちらも体を使いたいと思えば好きな時に動かせる……ってことなのかな。……いや、違う。"アリア"が動かしてる時にもアリアには感覚があった。ということは、文字通り半分こ。アリアが動かしてる時も、"アリア"が動かしてる時も、等しく同じ。一つの体を二人で動かすんじゃない、一つの体を二人が常に共有している。
「アリアたちは、一人で二人……つまりそういうことなの?」
スムーズな人格交代もそう考えれば辻褄が合う。一切のラグが無く、アリアと"アリア"が切り替わる。
「『んー、たぶん?』」
"アリア"はただ願っただけだ。"アリア"の隙間を埋めてくれるもう一人のアリアを。だから、知らなくても無理はな……あれ?
「なんでアリア、今"アリア"の記憶を……?」
「『分からないけど、一緒になった時に記憶も一緒になったみたい?』」
……一人で二人の『アリア』。記憶すら共有されるのなら、さっきのアリアの説も現実味を帯びてきた気がする。
「『それにしても、びっくりだよね。この世界が―――空想上の世界だなんて』」
「……記憶を共有してるってことは、そういうことだよね」
「『えっと、【ブルーアーカイブ】?って言うんだ?』」
頭の上のを見た時点で、なんとなくそんな気はしてたけど。
「やっぱりかー……」
ということは転生?転移?元のアリアの体はどうなったんだろう……。もう確かめる術はないから、これ以上考えるのはやめておこう。
「『あれ?嬉しくないの?』」
「……アリアはね、こういうことは妄想の範疇で済ませておくべきだと思うんだ……」
すごく嬉しい。
「『うふふ!"アリア"が嬉しいならアリアも嬉しいな!』」
心は正直でした。でもキヴォトスの外の人間じゃなくて、生徒の肉体なら余程のことが無い限り死なないから、嬉しいか嬉しくないかで言えば、やっぱり嬉しい。
「でもアリア、銃を撃った事無いんだけど……」
「『大丈夫!アリアが分かるから"アリア"もすぐ撃てるようになるわ!』」
"アリア"の経験も共有なら、有難い話だね。
―――コン、コン、コン
"アリア"と話すのに夢中になっていると、ノック音のようなものが聞こえ、そちらに視線を動かすとドアがあった。そして、再び三回ノックされ痺れを切らしたのか、ドアを開けて入ってくる。
「アリア、いるなら返事をしてくれないか?」
そう言いながら入ってきたのは、金髪にケモミミを生やした女の子。
「『セイアーっ!!』」
誰だろう、と記憶を探る間も無く"アリア"が少女に飛び込む。……今、なんて言った?セイア?もしかして、百合園セイア?
「こらっアリアっ。急に飛び込んできたら危ないと、いつも言ってるだろう!」
ゲームより幾分か幼く、トリニティの制服も着ていないから一瞬分からなかったけど、確かにセイアだ。
「『ねえセイア!聞いて!アリアね!願いが叶ったの!』」
「……?待ってほしい、話が見えないのだが?」
セイアに肩を掴まれながらパタパタと腕を振る"アリア"に、セイアは困惑したように尋ねる。
「『だから!アリアが増えたの!もう一人じゃないよ!アリアは二人になったんだから!!』」
「…………は?」
"アリア"の言葉をうまく飲み込めなかったのか、一瞬フリーズしたのち、理解に至ったセイアは口を大きく開けて叫んだ。
「―――はぁぁぁぁぁッ!?」
「『えへへ♪』」
すでに3話目も出来てるので日曜の朝にでも上げておこうかな!
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