ルキア「一護の霊圧が…消えた…!?」   作:一般通過

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よろしくおねがいします。
曇らせ初心者ですが、なるべく曇らせられるよう頑張っていきたいと思います。


THE EPILOGUE(前)

世界も、未来も、過去も。全てをかけた死闘が終わった。

 

ユーハバッハの体は一護の卍解により切り裂かれ、魂も残らず消滅していくのがわかった。

 

「虚の力か…。魂魄が全て…消えていく。残念だ一護、お前のおかげで世界は犠牲を踏みつけ、明日を生きていくだろう。生あるものは常に死におびえ続け、死してなお永遠に終わらぬ円環のなかを廻り続ける。」

 

ユーハバッハは黒い影をどろどろと流しながら、一護を見て血を吐き出すようにして言った。一護は怒るでもなく、さりとて喜ぶでもなく。ただユーハバッハを、静かな目をして見つめ返した。

 

「はっ、そうか。覚悟の上か。ならば、一つ死ぬ前に私がお前に預言をやろう。今日が終わりの始まりだ。お前たちは今まで間違え続け、そして明日からも間違え続ける。未来の果てのその果てで、お前たちは今の世界からの決別を果たすだろう。私はその未来に、万雷の喝采と、一抹の哀れみを送ろう。

 

あぁ、今日も、世界が、よく…見える…」

 

ユーハバッハはどさり、と自身の黒い血が流れ落ちた地面の上に倒れ伏した。

 

彼の、世界の未来まで見通した目からは、光が失われていった。そしてそのまま、ユーハバッハの体は、炎が消えてゆくように、ゆっくりと空に溶けて、消えた。

 

「へっ、最後までおしゃべりな野郎だったぜ。負け惜しみがなげーんだよ。新たな世界だかなんだか知らねぇけどよ、敵も仲間も何もかも犠牲にするなんて、どう考えてもおかしいだろ。一護、おめぇもそんな気にするこたぁねぇよ。そんな落ち込んだ顔すんなって」

 

一護の落ち込んでいる顔が見えたのか、懐からひょこりと黄色のライオン頭が首を出してのたまった。一護はその声に耳を傾けつつ、答える。

 

「あいつにも、あいつなりの…正しさってやつがあったんだ。あいつは…俺のよく知る奴ときっと根っこは同じで…でも、分かりあえることはきっとなかった。だから、これしか無かった。これ以外の道は…無かった。」

 

その後ろに、2つの影が差す。

 

「黒崎、いつまで敵を弔ってるんだ?そいつの結末は、そいつがやってきたことを考えれば妥当だ。一片の哀れみも必要ない。早く支度して現世に戻るぞ。茶渡くんたちも下で敵を片付けて待ってるんだ、いつまで待たせるつもりだい?」

 

「そうだよ、黒崎くん!あたしもずっと戦ってだいぶお腹減っちゃったなぁ。祝勝会とかあるのかな?たつきちゃんが昔試合で勝利した時は、すごい豪華だったんだよねぇ。瀞霊廷ってあんなに大きいんだし、きっと豪勢にやってくれるよね!」

 

片方は、白い軍服のような服と眼鏡をまとった、初見で堅物そうという印象を抱く男、石田雨竜。

もう片方は、明るい色の長髪に六花の髪飾り、そして浦原喜助謹製のとんでもない服をまとった少女、井上織姫。

 

「いや、さすがに下は被害が大きいだろうし、直ぐにはそんな事は出来ないんじゃないかな…?

 

…いや、あれはあくまで影の中のものだから、ユーハバッハが消えればもとに戻るのか?」

 

「えー!そんなぁ。じゃあ後で黒崎くんの家で、祝勝会と、石田くんの皇帝就任おめでとう&スパイご苦労さまパーティーしようよ!他のみんなも呼んで!パンはあたしが持ってくから!」

 

石田は気負いなく、軽く苦笑した。確かに皇帝がいなくなったので、後継者は自分というのはそうだが。その帝国は皇帝の手でほぼ壊滅してるし。色々今後滅却師としてどう生きるかについては後で考えなければならない、と思うが、確かに今は一旦そんな事は考えず、とりあえず食事でも食べて一息つくのも良いのかも知れない。

 

「あぁ、そうだね。なんだか少し離れてただけなのに、だいぶ井上さんのパンの味が懐かしく感じるよ。まあ、とにかく黒崎、早く…」

 

「――――――悪い、石田、井上。俺はそっちにはいけない。」

そういった一護の目元には、まるで陶器が割れるようなひび割れが入っていた

 

「…は?何を…まさか…!井上さん!」

 

言葉を聞いた瞬間、織姫の頭から光の緒を引いて、2つの光が飛び出す。

 

「双天帰盾!私は…!」

 

「無駄だよ、井上」

 

瞬間的に張られた橙の霊圧の膜が、解けるようにして崩れ落ちる。

 

「あいつに勝つには…これしか無かった。俺の全ての力を使って、本当の意味であいつを超えた存在になる。それしか無かった。そして…楔が無くなったこの世界を守るには…。たった一つしか道はない。それは…俺自身が…霊王となることだ。」

 

一護の言葉を聞き戸惑う織姫を尻目にしつつ、石田の目に青い霊圧を帯びた血液が集まる。

 

「無駄だよ石田。なんとなく分かるんだ。これは、たぶん誰にもどうしようもない。俺はここで、終わりだ。」

 

一護の顔は、そんな事を言いながら…何処か晴れやかだった。死を恐れていないはずがない。だが、それでもその顔には一片の悲嘆も見当たらなかった。

 

静血装(ブルート・ヴェーネ)鋼皮(イエロ)で今は外から体を保ってる…けど、内側はたぶんぐちゃぐちゃだ。多分虫とかが哺乳類になるような…すごい速さで俺が、全く別の生き物に変わろうとしてる。その負荷にたぶん俺は…耐えられない。まあ、ただ…話すくらいの時間があったのは、良かったかな。」

 

「ふざけるな…!黒崎!話す時間があってよかっただと!?こっちはな、そんな時間じゃ言い尽くせないほど、お前に言いたいことが山ほどあるんだよ!」

 

石田雨竜は怒りのままに叫ぶ。そして一護はただその言葉を受け止める。

 

「あぁ。」

 

「お前に滅却師の力があるとわかって、僕がどれほど苦心したか分かるか!?あいつの聖別にお前がかかるかもしれなかったから、手段をどれほど選んだことか…!」

 

「悪かったな」

 

「それに…!お前は本当に甘いから、他の奴に戦わせないようにするのも大変だったんだぞ!?毎回戦いで手を抜きやがって…!陛下と戦っているときも、こっちがどれほどひやひやしたか…!」

 

「そうか…。ありがとな」

 

「…ッ!それだけじゃない…!それだけじゃ…!まだ…お前と話したいことが…沢山…!」

 

「…すまねぇ。」

 

その言葉に、石田は、歯が欠け、肉に刺さるかと思うほど強く歯を噛み締めた。そして、煮えたぎるような怒声を発した。

 

「ッ謝るな!お前…ッわかってたんだろ!?こうなることを!知ってて…知っててその上で…!」

 

「本当に…そうしなきゃならないと…そしてそうしたらこうなるって確信したのは、戦ってる最中だ。それで…」

 

一護の目が下に傾く。そこには達観はあれど後悔はなかった。ただ、絶望もせず、その目は覚悟を持ったものの目をしていた。

 

「お前…ッ!なんでそんな…晴れやかな顔ができる!?お前は…お前も僕を置いていくのか…!?母さんや先生みたいに…僕を…!」

 

「…そうだな。死ぬと本当に確信すると、なんつーか、いっそ心が軽くなるもんなんだな。ただ…俺は…後悔なく生きたつもりだ。間違いや失敗がなかっただなんて、そんな大層な人生を送ったつもりもねぇけど…。でも、それでも生きた。生きてきた。

 

確かに死にたくはねぇ、でも、俺は割と満足だ。大切な人達が両手じゃ数え切れないほどいて、そいつらが生きて明日を迎えられる。それならきっと、俺の命にも価値があったって言える。だから…」

 

「死んでいいっていうのか…!バカ野郎…!お前は…大バカ野郎だ………黒崎………!」

 

「…本当に、すまねぇ」

 

石田は膝から崩れ落ち、地面に強く手を打ち付け、うなだれた。

 

織姫は、ただそこに立っていた。目からはポロポロと大粒の涙が流れ、地に落ちる。

 

何遍も、試した。彼に治療を施そうとした。しかし、できない。しようとしても瞬時に弾かれる。「拒絶」できない無慈悲な現実が、そこにあった。

 

「井上…。」

 

「…。」

 

「好きだぜ」

 

「…!」

 

「あぁ…言うつもりなかったんだけどな。でも…そういう顔をしてると、つい言っちまった。バカだよな。」

 

へへ、と。何処か照れくさそうに。でも、何処かどうしようもない想いを抱えて少年は照れくさそうに笑った。

 

井上織姫は、少し微笑んだ。そしてそのまま言葉を紡ぐ。

 

「…うん。本当にバカだよ、黒崎くん。どうしょうもないほど救いようのないバカだよ」

 

「手厳しいな、おい」

 

「でも、だからね。そんな黒崎くんだから、あたしは好きになったんです。どうしようもなく失ってて、それでも助けたいって手を伸ばす黒崎くんだから、好きになったの。黒崎くんがそういう人じゃなきゃやだし、そういう人でずっといてほしいって思う。そういう黒崎くんを、ずっと見てたいって思う。」

 

「そう、か。少し、照れるな。」

 

少し、どこかぶっきらぼうに、そしてどこか照れたように、はにかむ。きっと、こんな光景は普通のものだったはずだ。ありふれたもののはずだった。少年と少女が恋をして、そして、ごくごく普通にそれが実って、そして幸せになる。そのはずだった。

 

「でもね。」

 

だが、もはやそうではない。

 

「ああ。」

 

故に―――。

 

「でも、そんなの…どうだって良かった!全部投げ捨てても…全部壊してでも生きてて欲しかった!私は…こんな未来望んでなかった…!ただ恋をして、一緒に食事を食べて、何処かに遊びに行って…、そういう普通のことだけで十分…あたしは救われてたのに!なんで…なんで奪うの!?なんで…どうして…?」

 

井上織姫は、拒絶した。この世界を。彼を苛むこの憎たらしい世界を。どうして彼なのだ?他の人でもいいじゃないか。なんで、わざわざ私の好きになった人を選んだのだ。理不尽な慟哭だ。分かっている。でも理不尽に理不尽でかえして何が悪い?

 

こんなのはあんまりだ。彼はただ、優しかっただけだ。放っておけなかっただけだ。そうやって誰かを助けずには居られない、それだけのどこにでもいる少年なのだ。なのになぜ、彼だけがこんな目に遭わなければならない?

 

「すまないな、井上。」

 

「―――うん。本当にごめんなんかじゃ済まないよ、黒崎くん。これから一生かけて償ってもらっても足りないよ。」

 

「ああ。そうだな…。本当なら、そうしたいよ。井上。」

 

「…。でもできないんだね。」

 

「ああ、そうだな。」

 

2人の間にただ、静寂が横たわっていた。

 

井上の涙で腫れた目を、拭ってやりたいと思う。でもそのことすら、できない。立っていることでもやっとな自分では、そんなことも、できない。

 

だから。

 

「…それでも、好きだよ、井上。俺はお前のことが、好きだ。」

 

「卑怯だよ、黒崎くん。あたしは、ちょろい女だから。そんな事言われたらさ、こんなときでも、嬉しくなっちゃうんだよ?」

 

「ああ…。ごめんな。でも、お前には…笑ってる顔が似合うと思うから。」

 

母親のことを、重ねてしまっているのだろうか。笑ってる顔が、素敵だと思う。見ていると、こちらまで幸せな気分になる。そんな、いい笑顔をするから。だからきっと、彼女のことを好きになった。

 

それだけじゃないし、好きになった理由は…きっと数え切れないほどあるが。

 

「だからさ…。ほんとはお前には、俺のことを忘れて幸せになってくれって言うべきだったんだと思う。でもさ、いざ最後になると、そんな事言えねぇよな。」

 

「忘れないよ。絶対に。」

 

彼女は、一護の目を見た。涙で滲んではいたけども、それはとても、強い目だった。

 

そういうところも、好きなのだろう。いつも柔らかそうなのに、芯は誰よりも強く、折れない。そういうところが。

 

「あたしは、黒崎くんのことを忘れてあげない。仮に忘れたとしてもーーー私は何遍だって。あなたのことを好きになる。だから今、黒崎くんは私を傷つけていくの。どうしようもなく、ただ、私に癒えない傷をつけて、そのまま行くの。」

 

「キツイな、それは。」

 

「わざときつく言ってるからね。私は、いつもこんな悪い子じゃないんだよ?でもそのほうが、覚えててくれるでしょ?」

 

「―――あぁ、そうだな。忘れないよ。」

 

きっと、この先一生。そして死んでも、忘れられない。

 

「ねえ黒崎くん」

 

「なんだ?井上」

 

「最後くらい、一護って、呼んでいい?」

 

「―――あぁ。」

 

「―――うん。またね、一護。」

 

「ああ、さよなら。織姫。」

 

 

どん、と何かを地面に打ち付ける音が響く。

 

その瞬間、石田と織姫の姿が消える。

 

そこに立っていたのは零番隊の頭目…兵主部一兵衛。ぎょろりとした目と禿頭に、どこか滑稽なずんぐりむっくりとした風貌。しかし、反面どこか計り知れない雰囲気を纏う坊主。筆槍を地面に打ち付けて立っていた。

 

「話は終わった、ということでええかのう、一護?」

 

「…2人は?」

 

「安心せい。下に転移させただけじゃ、傷一つない」

 

「…そうか、和尚。いろいろありがとな。俺がどうにかならねぇように、俺の力のほかに、外から支えてくれたのもあんだだろ、和尚?」

 

「何、感謝する必要はない。儂も謝罪するつもりは微塵もないゆえな。世界のために、おんしには今死なれてもろうては困るでのう。故にお主の「名」を強くして、変化する力を多少抑えた、それだけじゃ」

 

「それでも、感謝するよ。そのおかげで、皆とちゃんと満足いくまで話せた。チャドは―――。言わなくてもきっと伝わるしな。十分だ。」

 

「おい!お前俺のこと忘れてんじゃねぇよ!バカ!」

 

コンが懐から一護の胸をポスポスと叩く。

 

「ああそういやいたな。悪かったな、忘れてたわ」

 

「ハァ〜!?お前今この俺様cityboy of New Yorkことコン様の 事を忘れたっていいやがったのか!」

 

「うん」

 

「ハァ~ン!?」

 

体ごと振り回しつつ、怒りの連打である。慈悲はない。威力もない。

 

「痛っ、冗談だって、さすがにそういやいたなレベルでは覚えてたって!」

 

「ふざけんなテメーそもそもさっきお前を励ましてやるというコン様のここぞとばかりの気遣いを見せてやっただろうが!なんでそれすら覚えてねんだよ!老化か!?」

 

「誰がジジイだ、そこの和尚じゃあるまいし」

 

「爺であることは否定せんがの。本当にそこまで耄碌しておるなら、儂もお主を霊王にしていいか多少不安になるぞい」

 

和尚がそんなことを言いつつ、軽く一護は話の方向を転換する。

 

「まぁ、さすがに覚えてたがよ。携帯して持ち運べるし移動しながらでいいかなって」

 

「なんであいつらとはあんなに向き合ってしゃべって、俺様とは片手間なんだよ!おかしいだろ!改造魂魄(モッドソウル)差別だ、訴えてやる!」

 

「落ち着けよ。まあいいって、いつものことだろ。」

 

「当たり前にされていいことじゃねーだろ!」

 

コンがぜえ、はぁ、と息を吐きつつ、一護に答える。どこで呼吸しているのだろうか。肺とかないだろうに。

 

「…なぁ、一護。お前本当にこれで良いのか?」

 

「何がだよ」

 

「…俺は割とお前のそばにいたから知ってるけどよ…。お前は割とよく頑張ってただろ?なのによう、その結果がこれって…。あんまりじゃねぇか?正直改造魂魄(おれら)と扱いあんま変わんねーぜ、お前。」

 

コンは肩ひじを付きながら、そのつぶらな目をひそめつつ、一護を見つめる。

 

「…そうだな。でも、俺は納得してるぜ?」

 

「何に?モノとして消費されることにかよ?」

 

コンは多少苛立った様に言う。だが、一護の顔は穏やかだった。

 

「人として家族や大切な人たちを守れることだよ。」

 

「そのためなら自分の命も惜しくねぇってか。…ったくいらつくぜ。生きたくても生きてけねぇ奴が、世の中にはいくらでもいるってのによ。命を自分で捨てやがって」

 

「…そうだな。でも、これが俺の選んだ道だ。ここで命をかけたいと、そう決めた。だから…」

 

コンはやってらんねぇ、とでも言うように両腕を広げた。

 

「はぁ、まあテメーの命だから、俺が口出せる筋はねぇけどな。ま、どうせここまで着いてきたんだ。最後までついてってやるよ。」

 

「…ありがとな、コン」

 

「よせやい気持ち悪い」

 




割と会話文多めで構成しましたが、もうちょいそれ以外の描写も増やしたい気もしています。
感想高評価よろしくお願いします
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