走るのをやめたら死ぬ系転生馬   作:名無しの権左衛門

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2:サラ系駄馬の転生者

 すごく今更であるが、自分は転生者である。

最近黄泉の国も一生居座るやつがいるので、現世へリクルートするという働き方改革が行われているようだ。

そこで転生理由、生物種、転生世界選択、転生世界選択理由、抱負を書かされてここに至る。

 最初はウマ娘世界かヒカルの碁・りゅうおうのおしごとで通していたのだが、

色々悪魔合体してここに来たらしい。

 最初に母馬から生まれでてすぐに立ち上がり、親の乳を吸いに行くという本能を優先して行動を行った。

この本能というのも一晩寝て頭がスッキリしたからこそ判明したものだ。

 

 さて、脳内にお祈りの電報が入った。

キツイので、その表現やめてくれないか?

 

1:才能がない(怠惰からパート人生)

2:理由がありふれている(肉体的不自由からの開放)

3:前世と性格が違いすぎる(3世紀霊魂として何も悔い改めていない)

4:死亡理由のでっち上げ(故意の飛び出しは、5:5)

 

 ひどすぎる。希望業界と希望職種、志望理由、自己PRってほとんど同じじゃないか!パソコンならAIの発達で必要になり、徐々に人が少なくなっていく中

システムをアナログからデジタルへ移行し、徐々に省力化していくと思います。

これからAI競争や開発が厳しくなるでしょうが、人が足らなくなる時代で一番生き残れる業種なので選びました。っていう感じでやったのに!

 

 希望職種がプログラマーなら、希望したのはプログラマーです。

先程も申し上げましたようにAIや省力化できる高品質な商品を作り上げるには、

ソフトもハードにも必要な中身を作り上げられる人物がいるからこそ成し遂げられます。

私はこの一端を担いたいです。っていい感じにでっちあげた!

 

 志望理由なんだけど、相手は会社に業務管理のシステムを開発をしている会社。

ならば、御社を志望した理由は、最先端のクラウド同期型管理システムを構築しているからです。

今までの管理システムは、打ち込むところまでは一緒でした。

しかし開発しているソフトが、ネットをつなぐだけで情報が共有されグラフや対前年比等、あらゆるデータをつなぎ可視化できるようになっています。

 以前ソフトを使わせていただいた経緯があります。その中で感じたのは、

手間の現象です。どこもかしこも、人手不足であえいでいます。

特に管理職にあがりたくない若者も多く、数字や人の管理に右往左往することがありました。

そんな織に使用が決定したのは、御社の管理システムです。

 32ビット8メモリでwindows7でも使える圧倒的な処理速度。非常に感動しました。

昨今様々な入力装置やAIといった新技術が多く誕生しています。

これからもますます進化し、御社の商品システムがより多くの人や会社を救うと思いわたしもその輪に入りたいです。ってなんか適当にはぐらかしたのに!

 

 自己PRは、いわゆる自分の性格が相手の気風に合っているかどうか。

プログラマーというかシステムもそうなんだけど、相手会社や株主・企画者が

色々持ってきてデザインやらを草案してもってくる。

で、色々納期までに終わらせる。まあ、これは甘いよな。

 本当は納期寸前に仕様変更というデスマーチが始まる。

営業がちゃんと現場をかじっていればいいんだけど、こういうのって顔と態度だけの商売だから気に入られようとして現場を顧みずに受け入れるんだよな。

しかも顧客が満足したらその功績は営業だけのもの。

プログラマーは辛酸を嘗める。

 

 が、ここでそんなものは出せない。

まずは苦しいときでもみんなで励まし合って、大きなプロジェクトを作り上げたっていう。

後は積極性だな。間違えたら終わりだから、報連相。

それと日本型社会は、仕事に人じゃなくて人に仕事だからなくなったら

次何をすれば聴くことだな。

 積極的に犬で社畜になるって言っとけばいいだろう。

もちろん笑顔ではなく、真剣に、若干声色に表情をつけるぞ。

 

 

 という感じで、履歴書を書き面接を行ったというのに、競走馬になるってなんだよ!

 

 あらゆる鬱憤を吐いて満足したので、確認作業へ移る。

結構な混乱でおかしな仔馬だと厩務員に睨みつけられるが知ったこっちゃない。

 

 お祈り電報は、まだ先があった。

 

 それは今生の無事と少しばかりの恩寵。

また上記の志望欄の下に、ほしい能力があったので書いていたのだ。

 

第一志望:ウマ娘--無限の競争能力       受理

第二志望:ヒカルの碁--無理を打破できる発想力 受理

第三志望:りゅうおうのおしごと--展開を読む力 受理

第四志望:テニスの王子様--無限の体力     受理

 

 

 競走馬における各種技能

 

良--身体:無限の体力 前世の記憶と頭脳 あらゆる病気や怪我が全治一ヶ月

 

 --環境:各一頭の出走レースを一つだけ変更できる(年に一回)

     各一頭のあらゆる怪我や病気を一時的に治せる(年に一回)

     5年毎に牧場内の誕生可能なG1級競走馬が増える。(1995:1、2000:2、~)

 

 --天啓:レース前に史実の展開がわかる

    :レース中の怪我予定の人馬がわかる(直視による凝視と紙面の文字のみ)

    

 --人脈:自身を大切にしてくれる人たち

     共に走った競走馬(種牡馬)を格安で種付けできる

     

     

 

罪--身体:速度とパワーがない。(もともと駄馬)

 

 --環境:全てのレースに名馬が当たる

 

 --天啓:新馬戦後、二ヶ月競走レースにでないと死ぬ。

    :種付を行う毎に猶予が一週間減る。

 

 --人脈:勝つほどに競馬に関係ない人が押しかけてくる

     勝つほど競馬界の人が押しかけてくる。

 

  

 

 いや、これきついだろう。

圧倒的なメリットとデメリット。

つまり死にたくなければ走れというわけだ。

少なくとも新馬戦後なのがよかった。

 さてどうしたのものか。

常識的に考えると一ヶ月に一度走るというのは、

馬を破壊する行為。

自分は特段に特別なだけで仕方がない存在とどのように証明しようか。

 

 放牧中どうしようと周囲を走ってみると、全体的に柵が甘い。

ネットじゃなくて木枠である。というか柵でもない。囲いだ。

なんだかなあと思いながら、プルプルしていると少し離れたところから

子どもたちの声が聞こえる。

 そういえば、親族の子が遊びに来ていると厩務員が言っていたな。

うーん、何をやっているか気になるので、ささっとくぐり抜けて子どもたちのところへ向かう。

 

「わっ」

「トバ!」

「うーんうーん」

 

 驚いている二人に挨拶して、悩んでいる子の鉛筆を借りる。

なるほど、加減乗除の組み合わせか。

これは小学三年生……か? 少し難しい気がする。

 だができないわけじゃない。 解く順番を矢印で結んで行く。

唸ってた子は終わった。もう一人は漢字プリントで、音訓や湯桶読みや体言止め・漢文もあり、中々骨がある。

この馬畜生の灰色な脳でも、意外と解けるんだな。

 

「うわっ、すっげ。なあ、なあ! トバ、これもやってみてくれよ!」

 

 小学4年生のリョウジくんか。君が通っているところは高レベルだなぁ。

どう見ても中学生だよ。

 

    a-3c    a-b      b-2a     b+4c    c-a    c+a

1️⃣ 2(─── - ─── ) -3(─── - ───)+6(───  - ── )

      6    3        2     6      3     2

 

????

 

 ま、まあいいさ。これも答えようじゃないか!

キラキラとした目で見つめてくるもんだから調子に乗って、できるところまでやってしまう。

この子たちのためにならないのはわかっているが、懐かしい教材に胸が踊ってしまう。

レ点や三段活用といったものも懐かしい。

 

「なあなあ、トバ。クソうぜえセンコーに出された問題解いてよ」

 

 一体なんだろうと授業ノートを出してくる。

       

 二次関数。 ax<3>+bx+c+k(x-d)=0 がkの全ての実数値に対して異なる実根を

もつならば、ax<2>+bx+c=0 も異なる実根を持つことを証明せよ。

 

 

 これどこの? え、将来的にパソコンを使うから、商業高校行きたいの?

はえー。図形いるぞこれ、わかんねえ。

とにかく放物線を描いて、y=-k(x-d)が定点(d,0)を通って、放物線が

x軸と二店で交わらないといけない。で? その二店の間にdがないといけない。

 

 そんなこんなで全部答え終わるときには、みんなで机を囲んで

教え教えられの関係になった。

また長男組も割り込んできて、教えてもらおうとやってきてしまった。

やめてくれ、慶應義塾の問題と東大医学はわからねえ。

 

 自分が脱柵していることを咎められることもあったが、ほぼ木の枠でしかない柵をくぐることを想定していない牧場主が悪いと子どもたちが賢しらに捲し立てる場面もあった。

大事な畜生が囲いの外に出るのは、飼い主に責任がかかる問題だから

こんな事をすると牧場主の親父さんに迷惑がかかることになる。

 自分は深く反省して二度とやらないことを誓うと、厩舎に引きこもることにした。

もちろん柵は無理でも厩舎の方を、固く閉めることはできる。

 

 だが内部でなく外部圧力があれば、どうにでもなってしまう。

 

「よ!」

「トバ!」

「こいつ解いてよ!」

 

 子どもたちの好奇心には、全く敵わないと思った。

 

 

【おう、じゃりんこ。今から一緒に走るぞ】

【頼みます、アニキ】

 

 一緒に走れる牡馬がポニーアニキのダイキしかいない。

本来は子どもたちが乗れるおとなしい動物なのだが、なにやらめちゃくちゃ興奮している。

 

【速く走るっていいよな!】

【そっすね!】

 

 小さな牧草地で歩くのではなく、併せ馬で走るほうが性に合うらしい。

もともとの気性は穏やかだったのだが、競走馬として育てられた自分の走りを見て

魂に刻まれたモノが目覚めたと言い、いつも駆け回っている。

 その走りは走るだけの歓喜だけでなく、どのようにすれば速く走れるかと考えられているものだ。

重心低くして土と芝に合う歩様を示してくれる。

 

【さあ、風に乗れ!】

【ハヤテの如く!】

 

 アニキと走るのは気持ちがいい。

それと共に、自分が徐々に完成している感じがして、自身がつく。

 

 そこから牛追い馬として放牧作業を手伝った後、坂路を駆け上がったり

ぬるいお湯が湧き上がっている池に浸かってスタミナトレーニングを行う。

ぬるい池から上がると、自身の身体から水が蒸散する。

蒸気は温ま池よりも多く上がっており、全身の血管が拡張され同時に走れと本能がホルモンを分泌してくる。

 そういえば、来週が地方で新馬戦らしい。

年齢でいえば二歳らしい。もう少しばかり伸ばしてほしかったけど、競馬を知らないまま中央に行くのは怖い。

 

 

「トバ」

『どうしました?』

「お前の競走名は、トーシバ。十始馬として命名した。

地方競馬機関誌をみているからわかっていると思うが、来週笠松で新馬戦だ。

初戦は6月。ダート800m。出走数は6頭。トバ坊、お前はサラ系として登録されたから、少々ハンデが課される。だが、来年中央へ殴り込んだ時、嘗められた分だけ掲示板入をすることで強さを示してくれ」

『任せろ。あと、たくさん走りたい』

「それは疲労による。じゃ、任せた」

 

 

 厩舎に設置された雑誌読み場。これを使って地方競馬について少しばかりしることができるが、新聞なみにあまりわからない。

そこでうちの親父の息子で長男である、奉先くん。

彼が直接笠松競馬場へ赴いて、新馬戦を行う同期の話を聞いてきたらしい。

 ただどの馬もガレていたり、無駄に肉がついていたり自分よりも圧力が足りないみたいだ。

今回出走する馬たちの人生を見てみるが、やはり負けまくったり新馬戦を行ってから半年以上感覚を空けて出走するという、中々凄絶な生き様を見せられた。

自分は彼らを救うことはできない。

しかし、厳しい競走馬の生き残りをかけたレースは、絶対に譲れないね。

 

 一応走れば生き残れるという。

だがそれは甘えだと思う。だから、全力で叩き潰して差し上げよう。

 

 

 名馬が出てくるらしいけど、この時代の名馬なんてわかんないんだよなあ。

 

 

「よ、トバ。馬運車内のスピーカーから聞いてほしい」

 

 ついにその時が来てしまった。

馬運車から外を見る事ができないらしいが、牧場主の親父が特注で作ってくれたから外が見える。

流れる景色とともに、なにやら古めかしい色んな物。

 

「基本的にダートは砂地で、先残りが発生しやすい。しかし、パワーがないお前を勝たせるために、まくりを行う。まずはゲートに入ったら、普通にゲートが出て外からまくっていく。

近くの山を登ったトバなら、これくらいけるだろ」

 

 奉先くんがこの車に乗る前に顔合わせをしたんだけど、物腰が柔らかく笑顔も爽やかな好青年だ。

しかしTVを使った笠松競馬場の過去新馬戦を見せてくれた時、無表情で

淡々と自身の力を最大限に使える方法を伝授してくれる。

 

「名工のおやっさんには、砂に沈まない軽い素材で打ってもらっている。

さあ、砂をかき上げるぞ」

 

 馬運車から降ろされ急造の鐙やハミ等装具をつける。

なんで急造かって?

乗馬クラブとかいいながら、サラブレッドの鐙がなかったんだよ。

っていうか鞍では!?

 

 しかし早馬は鐙らしい。奉先くんも、鐙とか言ってる。

名工のおっさんと獣医のじーちゃんが、うんうん唸って1日中測って作ってくれたもの。

 

 今思えば、競走馬ってアスリートなんだなと思った。

シューズ(蹄鉄)とユニフォーム(鞍)、ゼッケンを身にまとって厩舎の誇りと夢を一身に過酷な世界へ歩みだすんだ。

負けられないね。

 

 

 そうおもってた時期がありました。

 

 

 なんだよこの田んぼは!?

 

「作戦変更。重馬場だから、内ラチから少し外を走るんだ。

トバの体力が底なしなのは知っている。

やるぞ!」

【応!】

 

 

 自分は他者に気取られないように、自分だけの世界『パーソナルリアリティ』を築き上げる。

誰が何者でも良い。勝たなければならない。

 

 

 ぬかるみに足が取られそうになるが、こういうのは温ま池から出た時に味わう。

泳げ。それが最適解だ! 全く、近くの川田さんの田んぼで、田起こしを手伝った経験があってよかったぜ!!

ちゃっちゃと内ラチを走る逃げか先行かよくわからない奴らを、

案の定スタートダッシュが遅れた自分が外からまくりあげていく。

 さあ、耳を澄まして馬身とステップ音を聞き分けろ。

一歩を計算し追いつかれそうならもっと掻き分けないといけない。

そもそもトップスピードが低いんだ。

パワーもないし、追いつかれる可能性────。

 

 

「トバ、終わったぞ」

【え?】

「800Mだからそんなもんだ。おめでとう、1着だ」

【よっしゃー!】

「待て待て! ウィニングランをしような」

 

 こうしてびちゃびちゃな田んぼを制することができた。

 

 そこからしばらく快進撃。

1月には中央に出るのだが、その最初のレースがきさらぎ賞でハクタイセイが出てきた。なぜハクタイセイで驚くのかというと、文字や映像を見るとその馬の生き様がわかる。

つまり勝ち鞍とかわかる。

 

 皐月賞馬とぶつかってしまった。しかも4着で負けた。

 

 自走は皐月賞。その中には、ハクタイセイ以外にもすごいのがいると思われる。

ハクタイセイが参加したレースの映像に、逃げ馬が1匹見える。

『アイネスフウジン』?

なんだろう、この悪寒。底しれない恐怖が身を襲う。

 

 

「よ、トバ。元気かー?」

『元気元気』

「トバ。お前、来週アメリカだってよ」

『WHY!?』

「坂路拡大と牛肉のノウハウを教えてもらいに行くんだってよ。

ついでにアメリカで出走して、あわよくばレースに出てこいってさ」

 

 おいバカやめろ!

少なくとも数年後までは様子見ろよ!

今の米国人達、日本の輩に会社を買われまくって恨みも同時に買ってんだからさあ!

 







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