レクト社の見落としによりテニスラケットとボールという彼らにとって伝説の装備を手にしたテニヌプレイヤーとクラディールは《アルヴヘイム・オンライン》内で無双状態に突入していた。
まるで水を得た魚(マグロ)レベルで攻略の足取りが軽くなり、ウンディーネ領から世界樹までの道のりの中間地点である虹の丘へ二時間足らずで到着。道中のモンスターについては、
「ダーンクスマッシュゥッ!!」
「──────バウゥッ!!」
二人のパワーショット一撃で粉砕。
道中の中立エリアでお金に物を言わせて買い揃えたアイテムを全身に見にまとったフィリアは加勢する暇すら与えられなかった。
また無双したのはモンスター相手だけではない。PK集団に襲われたときは、最早目も当てられなかった。無論、相手に対してである。
「へぇ、そっちのお嬢ちゃん。凄い装備してるねぇ。俺たちにも分け──「バァッ!!」──てええええええええええええええええっ??!!」
「おいっ?! どうしてテニスボールの一撃で人がと───「ビッグバンッ!!」───ぶうううううううううううううっ!!??」
「うん………なんか、ごめんね」
先手必勝とばかりに会話や台詞の途中で攻撃。ソードアート・オンラインからの帰還者というののもあり、拒否反応が出たとフィリアは考えた。その為か、PK集団の人でテニヌプレイヤーやクラディールに対してまともな台詞を吐いた者は一人もいない。
そんなこんなで剣と魔法ではなく、テニスとボールによって比較的苦労すること無く、攻略を進めていた三人はあっという間に虹の丘も攻略。
終盤で邪神と呼ばれるワールドエネミーと遭遇するアクシデントに見舞われたりもしたが、
「…………風林火山。────雷!!!!」
「ッ??!!!!」
「おいおい、どうした。眉間に風穴が空いているぞ?」
フィリアが思わず「何処の殺し屋よ!! てか、風林火山雷って何?!」とツッコミを入れる程の一撃を邪神へと撃ち込んで撃破。その様子に、最早君こそが邪神だよとフィリアはテニヌプレイヤーを称した。
また、邪神討伐によりフィリアがレジェンダリーウェポンである《カルウェナン》を入手。その能力は使用者を影へと潜ませるという隠密性において追随を許さぬ破格の性能を持っていたが、テニヌプレイヤーやクラディールのテニスを目の当たりにしたフィリアは心から喜ぶことができなかった。
そんなテニスによる快進撃により、三人は遂に《アルヴヘイム》最大の都市である世界樹の麓にある町、《央都アルン》にたどり着いた。
攻略期間。驚異の半日である。
《央都アルン》は最大の都市として設計されただけはあり、ソードアート・オンラインの《はじまりの街》と遜色無い広さを誇っていた。
行き交うプレイヤーも活気があり、種族問わずに賑わっている。
現在、そんな《央都アルン》の大通りにて、テニヌプレイヤーは軽く背伸びをしていた。
「んー………。無事に《央都アルン》に着いたな」
「確かに無事にたどり着いたんだけど。どうしてかしら。変に疲れたわ」
テニヌプレイヤーとクラディールの非常識極まる攻略を間近で見続けた結果、精神的な疲労を蓄積していたフィリアであった。
「ウス…………。一旦休みますか?」
「んー…………今は良いや。私よりもあそこにいるアスナの方が辛い思いをしてるから」
フィリアの視線の先。都市の中央部に位置する場所に世界樹が天高く立っている。
その上部。かつてバカなプレイヤーが写真を撮った場所に、アスナや茅場昌彦がいる。
ようやく…………と言える程の労力や時間を要しなかったが、ここまで辿り着けた。
後は世界樹を攻略するだけである。精神的な苦痛は自分よりも囚われているアスナの方が大変と思い、フィリアは気合いを入れ直す。
「だな。なら、早速攻略…………と行きたいが、一応キリトを探すか。すまないが手分けして探してくれ。まだ来ていない場合はリアルで俺が連絡するから、見つからない時は俺にメッセージを飛ばしてくれ」
「分かった」
「ウス…………」
「よし。では、油断せずに行こう」
テニヌプレイヤーの掛け声と共に、クラディールとフィリアは左右に別れた。
テニヌプレイヤーは真っ直ぐ世界樹の方へと向かい、そこから中央部を中心にキリトの捜索を開始。
一度世界樹の根本へ向かい、キリトと思われる人物を探す。キリトの事であるから全身真っ黒のキャラクターを探すも、見つからない。
「…………少し外れたエリアを探すか」
それから少しずつ外へ向かうように街を練り歩くも、キリトと思わしきプレイヤーは見つからなかった。
一応テニヌプレイヤーはキリトの見た目が真っ黒でない可能性をミリ単位で考慮し、道行くプレイヤーへ世界樹攻略に乗り気であるプレイヤーやここ数日で挑戦したについて訪ねるも、そういったプレイヤーもいなかった。
そうして練り歩くこと一時間。ピコーン、と。テニヌプレイヤーへメッセージが届けられた。
宛名はフィリア。件名は『いない』。本文はなかったが、結果は件名で明白だった。
「やはり早く来すぎたか」
フィリアに対して『別れた場所に集合』とメッセージを送り、テニヌプレイヤーも向かうこととした。
向かう道中でクラディールからもメッセージを受信。内容がフィリアと同じであったため、フィリアと同じメッセージを送る。
そして別れた場所へ向かうと、既にフィリアとクラディールがいた。
「すまない。少し遅れた」
「別にいいわよ。それより、キリトは居なかったわね」
「あぁ。先に世界樹へ攻略に向かったプレイヤーも聞き取りではいなかったから、すれ違ったのも無いだろう」
「だとしたら、待ちか。どうする? キリトを待たずに一度挑戦してみる?」
「………ふむ」
フィリアの言う通り、ここは一度威力偵察をしてみても良いかもしれない。
ゲーム開始時から誰も攻略できない難所をテニヌプレイヤー達は突破しなければならない関係上、情報はいくらあっても良いだろう。それに、キリトが来るまでの時間を何もせず無駄にするより大分建設的である。
「フィリアの言う通り、一度挑戦するか」
「ウス………異論はありません」
「なら決まりね。早速世界樹へ行きましょ」
フィリアの先導のもと、三人は世界樹の根本へと向かう。
大通りを真っ直ぐに進むこと数分。前方に大きな石階段とゲートがあった。
このゲートを潜れば世界樹の内部に行くことができ、そこから上層部へと向かうことができる………らしい。
らしい、と言うのは誰も実践できた試しが無いからだ。道中のプレイヤーに聞きとりをしてみれば、
「んー? お前達見ない格好……というか、そのスポーツウェアどこで手に入るんだ?? まぁいいか。それより、世界樹にそんな人数で挑むのか? 止めとけ止めとけ。サラマンダーの大部隊ですら全滅だ。聞けばガーディアンがアホほど湧き出るらしいからな」
という有難い情報もあった。恐らくだが、真面目にクリアさせる気がないのか、後々キークエストが出るタイプなのかもしれない。
しかし、物は試しとも言う。テニヌプレイヤー達三人は様々なプレイヤーから「コイツら正気か?」という視線を浴びながらも、世界樹のなかへ通ずるゲートを潜った。
「ほぉ。中は広いんだな。まっ、世界樹の中を設定しているから、この広さも納得か」
世界樹の内部は広い円柱状のステージを形成しており、テニヌプレイヤーが上部を見てみれば霞がかっており、天井を見ることはできなかった。
これはかなりの高さが予想される。
三人は上を目指すために飛行を始める。ここに来るまでの道中でクラディールとフィリアも補助なしでの飛行をマスターしていたるため、テニヌプレイヤーへ遅れをとることはなかった。
やがて上層部で異変が起こる───ガーディアンの出現だ。
「さて…………試合開始だ!」
上層部から全身を銀色の鎧で覆ったガーディアンが数十体現れ、テニヌプレイヤー達目掛けて突撃してきた。
テニヌプレイヤーは落ち着いてテニスボールを上へと投げると、先制の合図を告げる。
「一球…………入、魂ッ!!」
スカッドサーブから進化させ、更に威力と速度を増したネオスカッドサーブが先頭のガーディアンへと撃ち込まれ、衝撃を受け止めきれなかったガーディアンは後ろの部隊を巻き込む形で吹き飛び、ガラスの割れる音ともに消失した。
その様子からガーディアンの強さはソードアート・オンラインのボスより弱く、エリアボスに毛が生えた程度とテニヌプレイヤーは推察。これであればパワーショットも温存して戦える事ができる。
戻ってきたテニスボールを片手で受け止めつつ、テニヌプレイヤーはクラディール達の様子を確認する。
「バァッ!!!!」
クラディールより放たれる波動球により、ガーディアンが5体纏めて倒される。疲れた様子が見られないため、この調子なら一試合は保ちそうである。
「なんだ。案外弱くて拍子抜けね。ほら、次ぎ!!」
フィリアについてもレジェンダリーウェポンの恩恵か一撃、多くても二撃でガーディアンを倒していた。
「二人についても問題ないな。なら、俺も少しだけ遊ばせて貰おうか」
サーブに続く二球目。
テニヌプレイヤーは空高くボールを投げる。その瞬間、テニヌプレイヤーの足元から竜巻が発生した。
横目で様子を見ていたフィリアが叫ぶ。
「いやどう言うことッ?!」
ウンディーネであるテニヌプレイヤーは風魔法は使えない。にも関わらず、実際に竜巻が生じていた。これにはフィリアもドン引きであった。
そして竜巻の風流に乗ったボールは上へと運ばれ、いつの間にかそれよりも高く飛んでいたテニヌプレイヤーの元へ辿り着く。
「ウォオオオオオオッ!!」
テニヌプレイヤーの全身が金色に発行し、ラケットを振りかぶる。
十分に力を込め、ベストなタイミングでボールへとラケットを撃ち付けた。
「サイクロンスマッシュッ!!!!」
ゴオオオオオッ!! と轟音と共にテニヌプレイヤーのスマッシュにより放たれた竜巻がガーディアンの群れへと突っ込み、何十体と巻き込まれていく。やがて壁に竜巻が叩きつけられると竜巻は消失。後には大量のガーディアンの山ができていた。そのガーディアンの山も数秒と持たずにポリゴン体となって消失した。
「すっご…………凄いじゃん!! 今のを何度か繰り返したら攻略も可能だよ!!」
圧倒的一撃を目の当たりにしたフィリアは興奮するも、放った本人であるテニヌプレイヤーの表情は暗く、視線は上を向いていた。
そして一言。
「…………撤退だな」
攻略の中止を告げた。
「どっ、どうしてよ。今のを何回か続ければガーディアンが先に尽きるってのに!」
「それはないな。上を見てみろ」
「上? それがどうし────ハァッ?!」
テニヌプレイヤーが指差す方向を見たフィリア。口が驚愕により大きく開かれた。フィリアの視線の先、そこには最初に出現した数を優に越える百数体のガーディアンが所狭しと出現していた。
ガーディアンの出現スピードと三人のパフォーマンスを瞬時に計算したテニヌプレイヤーは攻略不可能の結論に至ったのだ。
「この調子だと、数分後にはこちらの撃墜スピードを軽く超えてくる。手がないわけではないが、下手に手を出して対策されると面倒だ。だから、ここは一次撤退するぞ」
「わっ、分かった!!」
「よし。クラディール、撤退だ!! ─────四十九式波動球!!」
「バァッ!! …………ウス」
テニヌプレイヤーとクラディール共に数初波動球を撃ち込み、そのまま転身。
後ろを振り替えること無くエリアの外へと退避した。
テニヌプレイヤーが早期に撤退を判断したのが功を奏し、ガーディアンが三人へ殺到する前に、無事エリアの外へと出ることに成功した。
☆
世界樹の攻略の偵察後、三人は作戦会議を開いた。
現状では数分程度で撃墜スピードをガーディアン生成が上回るため、攻略で一番可能性があるのが一点突破。
しかし、テニヌプレイヤーとクラディールは道を作る必要があり、フィリアでは突破のための速度と火力が足りない。そのため、条件を二つとも満たせるキリトの到着が不可欠と判断し、テニヌプレイヤーがキリトとリアルで連絡を取り、再度攻略の日取りを決めることとなった。
一次解散となり、適当な宿に泊まったテニヌプレイヤーは一息つき、現実世界へログアウトをした。
目が覚めるとそこは見知った天井。ナーヴギアを取り外したテニヌプレイヤーは早速和人へメッセージを送る。すると和人もタイミングよくログアウトをしていたのか、返事は直ぐに返ってきた。
和人が戻っているのであればメッセージよりも通話の方が早いため、テニヌプレイヤーは和人へ電話を掛ける。数コール後、電話が繋がった。
「よぉ。そっちの攻略状況はどんな感じだ?」
「まぁ、ぼちぼちと言った具合だよ。ログイン時にバグに見舞われたが、親切なシルフのプレイヤーに会えてな。その子が《央都アルン》まで案内してくれることとなったぜ。んで、そう言うそっちはどうなんだよ」
「意外に遅いな。こっちは《央都アルン》に到着したぞ。ついでに世界樹挑戦クエストの偵察もしてきた」
「ハァ?! 速すぎんだろ?! …………で、どうだった?」
「まぁ、こっちも一筋縄ではいかないな。俺とクラディール、フィリアの三人で挑戦したが、エネミー大群の数があり得ない状況だ」
「………お前がそう言うって事は、かなりヤバいんだな。対策はあるのか?」
「あるにはある。だが、そのためにも和人、お前の参加が不可欠だ。《央都アルン》に着いたら連絡してくれ。そこで作戦を伝える」
「分かった。こっちもできる限り急いで向かう」
「そうしてくれ。それと、キリト。お前はどこに落ちたんだ?」
「そう聞いてくるって事は、お前も?」
「あぁ。俺だけではなくクラディールとフィリアも一緒にウンディーネ領へ真っ逆さまだったよ。で、そっちは? お前の事だからスプリガンを選んだと思うが、何処の領に落ちた?」
「なんで俺がスプリガン選んだの分かってんだよ。まぁいいや。こっちはシルフ領へ真っ逆さまさ。てか、お前がウンディーネ領に落ちたのなら、下手に合流しようとしなくて正解だったな」
「みたいだな。恐ろしいほど真反対に落ちたものだ。あと、バグについてすり合わせをしたい」
「わかった」
それからテニヌプレイヤーは和人へバグについて確認。和人の方はキャラの外見についてバグが生じていなかったが、それ以外は概ねテニヌプレイヤー達と同じバグに見合われたようだ。
さらに、和人はソードアート・オンラインでであったユイと再開したこと、そしてカーディナルと繋がったいたユイから《アルヴヘイム・オンライン》がソードアート・オンラインと同じデータを使用している事実を告げられたとの事であった。
カーディナルからのお墨付きとなると、テニヌプレイヤーの推理が空想から現実に落とし込まれる。これは、いよいよもってレクト社の須郷が怪しくなってきた。
しかし、未だ物的証拠は一切無いため、世界樹の攻略は必須だ。
和人には《央都アルン》に着いたら先走らず、必ず連絡するよう念を押し、和人から『お前は俺の母親かっ!!』というツッコミを最後に、テニヌプレイヤーは通話を切る。
「さてと。キリトから連絡が来るまでは此方で待機だな……………練習でもするか」
和人の到着の知らせがあるまで手持ちぶさたとなるテニヌプレイヤーは、日課の壁打ちをしに外へと出ていくのであった。
場所は移り変わり、世界樹上部。鳥籠内部。一人の少女と白衣の男性がいた。
「どうやら私の想い人が先に来たようだ」
「………はぁ」
「ん? 溜め息なんかついてどうしたのだ。君の想い人についても既に現着はしている。私の計算だと、あと2日でここへ来れる筈だ」
「…………そうですか」
「おや、言った移動したのかね、アスナ君。キリト君がもうすぐ来るというのに、嬉しくないのかい?」
「いや…………嬉しい以前に元団長と、その………。どう会話していいのか。距離感が上手く掴めなくて。というか、今回の原因の一端ですし」
「そう言われると何も言い返せないな、私は。では、キリト君か彼が来るまでは喋らないようにしておこう」
「あはは…………。(キリト君………なるべく速く来て)」
この次元では別の意味で辛い目に遭っているティターニアなのであった。
☆
テニヌプレイヤー達による世界樹の偵察から2日たった頃。
ようやく和人からテニヌプレイヤーに《央都アルン》へ辿り着いたとのメッセージが届いた。
意外と遅かったなと思いつつ、テニヌプレイヤーはフィリアとクラディールへ連絡。三人は2日ぶりに《アルヴヘイム・オンライン》へログインした。
「っと、今回のログインは大丈夫そうだな」
初回ログイン時とは違い、無事にログインできたテニヌプレイヤー。宿を出て、街へと繰り出す。
2日ぶりの《央都アルン》は特に変化はなく、いつも通りの活気に満ち溢れていた。
キリトからは世界樹のアクセスポイントである根本のゲート前で待っているとメッセージには書いてあったため、テニヌプレイヤーは指示のある場所へと向かう。
宿から数分で世界樹の根本へと辿り着く。メッセージの通りキリトと思われる黒一色の少年と、緑を基調とした服を着る金髪の少女がいた。
少年の方がキリトで、少女の方がキリトが電話で言っていた案内してくれたプレイヤーだろう。色合いからシルフと思われる。他種族でありながら共に攻略してきたという事実に流石はキリトだと、テニヌプレイヤーは心中で称賛しているのをキリトは知るよしもなかった。
近づくテニヌプレイヤーにキリトは気づいていない様子であったため、テニヌプレイヤーは軽く手を上げて二人へ話しかけた。
「よっ、意外と遅い到着だったな、キリト」
「俺が遅いんじゃなくて、お前が速すぎるんだよ」
「こらキリト君。そんなこと言わないの。貴方がキリト君が言っていた世界樹を目指すプレイヤー……………です……か?」
テニヌプレイヤーがキリトといつものやり取りをした後、もう片方のプレイヤーがテニヌプレイヤーへ話しかけるも、言葉の途中が途切れたものとなっていた。
テニヌプレイヤーは不思議に思い少女の方を見てみると、その顔は赤く染まっており、口は金魚のようにパクパクさせてる。明らかに普通の状態ではない。
「キリト、彼女は大丈──「おにっ、キリト君!! ちょっと!!」夫か? って、はやッ」
テニヌプレイヤーが心配の声をかける前に、少女はキリトを拐って物陰へと向かっていた。
テニヌプレイヤーの頭に疑問符が浮かび上がる中、少女は物陰でキリトを問い詰めていた。
「ちょっと、お兄ちゃん!! 私、あの人が来るなんて聞いてないんだけど?!」
「そっ、そう言えば言ってなかったな。元々は二人で世界樹を調査する予定だったんだ」
「はぁ?! それなら早く教えてよ! 私だってあの人が居るんだったらお兄ちゃんじゃなくて、あの人と一緒に旅がしたかった!!」
「おまっ、そこまで言うか……」
少女の言葉に、キリトは深く傷ついた。
キリトに対して少女がここまで言えるのは、少女がキリトをお兄ちゃんと言っているのに起因している。
別にキリトが言うように脅したり、性癖でお願いしたわけではない。
少女の名はリーファ。リアルでの名前が直葉であり、名実ともにキリト(和人)の妹なのだ。
そんなリーファ。この時空軸においては何があったかのか、キリトに向く筈の矢印がテニヌプレイヤーの方へ完全に向いていた。
理由についてはキリトとの関係改善に親身になって協力したりした結果によるものである。あれだ。近所の優しいお兄さんに恋する少女というわけだ。
そういう恋心もあり、リーファはキリトへと強く当たっていたのだ。しかしリーファよ。仮に気づいたとしてもシルフ領からウンディーネ領までは遠すぎるぞ。
「とりあえず、今度からあの人と遊ぶ時は必ず私に連絡すること。いいね?」
「………はい、分かりました」
言うべき事は言った、と。リーファはキリトを置いて先に戻っていった。
熱烈なお願い(物理+精神)を受けたキリトは疲労困憊になりながらテニヌプレイヤーの元へと戻ると、先に戻っていたリーファが笑顔でテニヌプレイヤーと話をしていた。
我が妹ながら、切りかの速さが素晴らしい。
「改めまして、リーファです! お兄さん共々今回はよろしくお願いします!!」
「リーファちゃんね。これから宜しくな。ところでお兄さんってキリトの事か? もしかして…………」
いかん。このままでは変態のレッテルが張られてしまう。キリトは急いでテニヌプレイヤーの元へと駆け出す。
「へん────」
「ちゃうちゃう! 俺の趣味でも命令でもないから。直葉だよ、直葉。お前の知ってる俺の妹だよ」
「本当か? 昔話に聞いたシリカと同じ感じの可能性も……」
「ねぇよ!! リアルでも俺の妹なんだよ!!」
否定するキリト。その様子があまりにも必死であった。これにはテニヌプレイヤーも納得せざるを得ない。
「…………その調子だと本当のようだな。となれば、直葉もこのゲームをしていたのか。プレイヤースキル重視だから、頼りにしてるぜ?」
必死の形相を浮かべているキリトから視線を逸らすように、テニヌプレイヤーは暫定キリトの妹であるリーファへと語りかけた。
悲しそうな顔で必死なキリトとは違い、話しかけられたリーファは嬉しそうな表情をしていた。まさに対照的な様子である。
「任せてください!! だから、今度の休日に遊びに行きませんか?」
「そう言えば、そんな約束をしてたな。うん。攻略が終われば暫くは落ち着くから、いいよ」
「やった。それじゃあお兄ちゃん。ささっと世界樹攻略しちゃお!!」
「その世界樹のガーディアンに俺はこの前ボコボコにさらたけどな」
「……ボコボコにされた? もしかしてキリト、お前俺の約束破って挑戦したのか?」
キリトはテニヌプレイヤーの問いかけに、思わず「しまった」と言葉を漏らす。
「………いや、これには深いわけがあるんだよ。ユイがアスナのiD反応があるって教えてくれて、いてもたってもいられなかだたんだよぉ」
「全くお前は………待て、iD反応があるって?」
「……そっ、そうなんだよ!! なぁ、ユイ」
「はい、その通りです!」
キリトの胸ポケットから小さい妖精が飛び出てきた。以前、キリトが出会ったAIである。コンバートの影響からこの世界のナビゲーターへと置換されていたようだ。
そんなユイはソードアート・オンライン時代ではカーディナルと繋がっていた存在。そんなユイがアスナのiD反応があると口にしたとなれば、ほぼ間違いなく世界樹の上にアスナと、ついでに茅場昌彦いるのは間違いないだろう。
キリトは《央都アルン》に辿り着いたときにユイからアスナが居ることを知らされ、高度限界まで世界樹へと接近。そしたら面白いアイテムが落ちてきたとの事であった。
「これがそのアイテムだ」
「何かのキーカードか?」
それは一般的なクレジットカードの様な磁気カードであった。妖精の国には似つかわしくないアイテムである。
話を更に詳しく聞くと、そのアイテムを手に入れたことでキリトはアスナが近くにいるのを確信し、単身攻略しようと世界樹に突入したとの事である。
話を聞く限り、キリトの気持ちもテニヌプレイヤーは理解できた。そのためもう少し説教をしたかったが、中断。フィリアとクラディールが揃い次第攻略会議を開くこととした。
そして待つこと数分。
「やっほー。久しぶりね、キリト」
「ウス…………お久しぶりです」
「フィリアにクラディール。お前らも久しぶりだな」
「おぉ………お兄ちゃんにお兄さん以外の友人がいるところ初めて見た」
「おい、俺だって友人の二人や三人はいるっての」
フィリアとクラディールが無事に合流。若干リーファのツッコミでキリトの心が抉られたが、これでようやく本格的な攻略に乗り出すことができる。
テニヌプレイヤーはメンバーに対し、作戦内容を伝えた。
「先ず、この作戦の要はキリト、お前だ」
「俺?」
「そうだ。この作戦は一種の電撃戦となる。本作戦において一番の障壁は数だ」
テニヌプレイヤーの言葉に全員が頷いた。キリトとリーファも頷くということは、あの尋常ではいリポップを知っているようであったため、テニヌプレイヤーは幾つか説明を省略し、本題へと入る。
「チマチマ倒していたらこちらが先に尽きる。だから、あのガーディアンの群れに俺とクラディールが道を作る。キリト、その道を全速力で駆け抜けろ」
「分かった。ソードアート・オンライン一の俊敏値を見せてやるよ」
「頼もしい限りだ。リーファはキリトの補助。おそらくキリトの速度についていけるのは、俺を除くとシルフのリーファだからな。キリトをよろしく頼む」
「任せてください!!」
「そしてフィリアは俺とクラディールの援護を頼む。まあ、球出しだな。俺とクラディールが永遠と打ち続けるから、適宜ボールを投げてくれ」
「了解。正直、2日前の攻略の時に火力不足を痛感したわ。だから、バッチリ援護させて貰うわね」
「最後にクラディール。俺と共に限界まで打ち続けるぞ。いいな?」
「ウス…………。どこまでもお供します」
「よし。以上が作戦だ。正直、力任せな部分が大きい。故に不測の事態や、イレギュラーが起きたら臨機応変に頼む。何か質問はあるか?」
全員が納得の視線をテニヌプレイヤーへと向ける。それを見たどけたテニヌプレイヤーは最後に一言。
「んじゃ、油断せずに行こう」
こうして、テニヌプレイヤー達による世界樹攻略の二回戦の幕が開いた。
アンケートにご協力ありがとうございます。
次のテニヌは何処から始める?
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ユウキたちとの試合
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