機動戦士ガンダムSEED レユニオン・アルカディア   作:虚無の魔術師

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PHASE01 ブレイド・ストライク

「お断りします!僕達をこれ以上、戦争なんかに巻き込まないで下さい!」

 

「貴方の気持ちは分かるわ、けど………」

 

 

仮眠を経た後に呼び出されたレオは、そんな風な会話を聞き流していた。いや、会話にすらなっているのか分からない。同じように呼び出されたキラが明確な拒絶を示し、アークエンジェルの艦長となった女性 マリュー・ラミアス大尉が宥めるように語り掛ける。

 

話の内容としては、キラに『ストライク』に乗って欲しいと頼んでいるのだ。非常時にOSを書き換えたキラ以外に、マトモに『ストライク《を動かせる人間はレオしか居ない。だが、当のレオもあのOSで戦えるか分からない。何より、レオが『ストライク』に乗れば、『ブレイド』を操れる人間は他に居なくなり、本末転倒になる。

 

次点としてはムウ・ラ・フラガ大尉であるが、彼をしても『ストライク』は操れない。そもそも、彼はモビルスーツではなくモビルアーマー乗りである。明確に違う機体を操ることに期待は出来ない。だからこそ、マリュー達はキラに戦って欲しいと頼むしか無いのだ。────今、生き残る為にも。

 

 

だが、ハイそうですかとキラが頷くはずもない。

彼は先程破壊されたコロニー、ヘリオポリスに在学していた学生であり、本来であれば民間人なのだ。命の奪い合いという環境とは無縁であるはずの彼からすれば、そもそもこんな状況自体に耐えられるはずがない。

 

そして、比較的に温厚な────戦いを苦手とする性格からして、キラが相手を殺すような戦いを望むはずがなかった。

 

 

「………良いじゃないですか、無理に乗せてどうするってんです?『ブレイド』一機でも充分、戦力になりますよ。ラミアス大尉」

 

「フレスベルグ少佐………ですが、私達には戦力が足りません。貴方一人で追手の相手にするのは…………」

 

「なら彼が死んだ場合、どう責任を取るんです?民間人を戦わせて死なせたなんて、ザフトでもやらないでしょ。そんなこと」

 

 

レオとしてはあくまでもキラの意思に則りはするが、基本的に反対ではある。彼は自ら志願して軍人になったのであり、死ぬ覚悟は出来ている。

 

だが、キラは違う。まだ学生である彼が戦わなければならない理由はない。力があるからと言って、本人の意志を無視して戦わせるなど、軍人にすることではない。そんな事をするくらいなら、それこそ死んだ方がマシだ。

 

 

「貴方の言いたいことは分かるわ………それでも、私は艦長として、皆が生き残る為に最善を尽くさなきゃいけないの………」

 

「卑怯だ………!この船にはモビルスーツが二機しかなくて、動かせるのは僕とあの人って、そう言うんでしょう!?」

 

「────だから、オレ一人でいいって言ってるでしょ。分からない人だなぁ」

 

 

呆れたようにそう溜め息を吐くレオであったが、次の瞬間緊急通信が鳴り響く。内容は、敵機の接近を確認したとのこと。そのうち四つが『ストライク』と『ブレイド』と同じ、G兵器である。強奪されたあの四機を思い浮かべたレオは、ポケットの栄養ゼリーを口の中に流し込んだ。

 

 

「オレ一人で潰してきますね。彼を無理矢理乗せるんなら、オレ戦うの辞めるんで。そのつもりで」

 

「っ!一人で他のG兵器を!?それこそ無茶よ!」

 

「無茶ってのを通すのが、エースって呼ばれる所以なんでね。艦長と君、キラは安心して待ってれば良いのさ。オレはやることをやってくるんで────んじゃ、そのへんで」

 

 

有無を言わさぬ様子でレオは格納庫へと向かう。そのまま整備中であった『ブレイド』のコクピットに飛び乗り、いつも通りOSを起動させる。そのままCICからの通信を受け取ると、ナタル・バジルールの声を耳にした。

 

 

『フレスベルグ少佐!まだ出撃命令は!』

 

「今更!敵がいるんだ、悠長なことしてられないでしょ。……オレが暴れるから、その内にアークエンジェルはそのまま離脱する!分かったらさっさと動く!」

 

『っ!分かりました!………ご武運を!』

 

 

動き始めたナタル達の様子から、間も無くアークエンジェルは離脱を始めるだろう。ブレイドの中で操縦桿を前にしたレオは指を鳴らしながら、整理する。

 

 

「………『デュエル』に、『バスター』、『ブリッツ』に『イージス』。要は四機全部相手するってことでしょ?上等、むしろ単純すぎだね」

 

 

ヘリオポリスの時と変わらない、何なら雑魚が居ないだけ楽な方だ。相手は『ブレイド』と同じG兵器四機。圧倒的数の差、この状況を不利だと認識したマリュー達の考えは間違っていない。

 

────今ここにいるのが、連合最強のエースでなければ、の話だが。

 

 

「自分以外の敵を倒すってんでしょ────分かりやすくて、やりやすいッ!」

 

 

◇◆◇

 

 

アークエンジェルから飛び出したブレイドが全速力で突き進む。半壊したヘリオポリスの残骸に隠れながら移動していた『ブレイド』であったが、側面のスラスターを吹かして影から姿を現す。

 

四機並んでアークエンジェルを探していたG兵器四機。それらが突然姿を現した『ブレイド』に気付き、展開を始める。

 

 

《見つけたぞブレイドォ!!今ここで墜としてやる!》

 

《また一機かよ!舐められたもんじゃない?流石にさぁ!》

 

《ディアッカ、気を抜かないで下さい。相手は、連合のエースです。全員で相手をしなければ、勝ち目はありませんよ》

 

《────ハロー、やっぱお前らか。相変わらずしつこいなぁ》

 

 

敢えて通信を繋げ、四機のGのパイロットの会話に混ざる。明らかな動揺が過ぎる中、レオは堂々と宣言した。

 

 

《ッ!コイツ、通信を合わせて────!》

 

《奪った機体で攻めてくるとは、ザフトってのはエコだねぇ。まあいいや、倒すついでに何機か返してもらおっカナ》

 

《ほざけブレイド!!散々舐めた真似をしてくれた礼をここで返してやる!》

 

 

そう言ったと同時に突っ込んできたのは『デュエル』。思ったより直情的だな、と思いながら、ビームサーベルを抜いたデュエルに対し、レオも同じビームサーベルで応じる。

 

 

《ッ!コイツ!デュエルと同じ武装を!?》

 

《此方とら近接戦が主体の機体だぜ!機体コンセプト的にも、同じだしさぁ!!》

 

ビームサーベルの衝突の中、弾かれた一瞬の隙を『ブレイド』が突く。複合武装とはいえ、大型シールド『アンタレス』を前に突き出し、『デュエル』へと突進する。

 

重量のある巨体による体当たりで、大きく吹き飛ばされる『デュエル』。その機体に追撃をしようとして、《イザーク!》と仲間を呼ぶ声にレオは一瞬で反応してみせた。

 

大型シールドによりビーム砲撃を防いだ『ブレイド』は、砲撃を行った『バスター』へと標的を切り替える。

 

 

《ハッ!そこかぁ!!》

 

《ッ!寄るんじゃねぇよ!!このぉ!!》

 

 

背部に搭載したスラスターを最大出力で吹かし、バスターへと肉薄する。腰にマウントされたガンランチャーによる一撃を撃ち出すが、全身を纏う鎧と同じ装甲のシールドによって軽々と防がれる。

 

続け様に大型ビームライフルを叩き込もうとする『バスター』に、『ブレイド』の右腕に装着されたワイヤークロー『ランツァアイゼン』を射出する。凄まじい勢いで飛んでいった鉤爪は、腰に接続されたビームライフルを向けようとした『バスター』の行動を妨害。

 

ワイヤーを引き戻した『ブレイド』はその質量に任せ、再びタックル。巨体に任せた突進に『バスター』を巻き込み、ヘリオポリスの残骸へと激突させる。

 

 

《ディアッカ!》

 

《はっ!今度はブリッツか!》

 

 

黒いガンダム────『ブリッツ』から撃ち込まれたランサーダートを防いだことで、『バスター』を取り逃した。面倒だと思いながらも、レオは姿の見えなくなった『ブリッツ』を探し────虚空に向けて機関銃を撒き散らした。

 

 

《っ!不味い!》

 

迫る銃弾に焦りを見せた『ブリッツ』のパイロット ニコルが咄嗟に操作を切り替える。周囲に溶け込んだはずの『ブリッツ』の色が浮かび上がり、放たれた銃弾の雨を容易く防いだ。

 

その一瞬の隙を狙うように、『アンタレス』のテールランスが『ブリッツ』を突き穿つ。装甲に伝わる振動に揺らされたニコルは、戸惑いながら向き合う。

 

 

《くッ!動きが、読まれてる………っ!?》

 

《当たり前じゃん。その機体、誰が造ったと思ってんの?何処から奪ったと思ってんの?》

 

 

そんな少年たちの焦りを、レオは笑って流した。ここに居るのは、新型のGを任されたエースである。そもそもの話、彼等が強奪した新型自体、レオと共に戦うはずであった仲間達が使うはずの機体なのだ。

 

 

《新型のパイロットが、同機のことを知らないわけ無いだろーが!仮にも、一緒に戦うはずの機体だったんだからさぁ!》

 

 

そのまま『ブリッツ』に目掛け、対艦刀を振り上げた『ブレイド』はすぐさま回避行動を取る。重厚な機体の居た場所を穿ち抜いた閃光。高出力のエネルギー砲、『スキュラ』の一撃にレオは、強奪されたG兵器最後の一機の存在を思い出す。

 

 

《ハッ!イージスかい!》

 

《お前は────ッ!!》

 

 

突撃形態へと変形した『イージス』に敢えて無防備を晒す『ブレイド』。四本の爪を展開したMA形態に捕縛された『ブレイド』であったが、待っていたかと言わんばかりに振り上げていた対艦刀を叩きつける。

 

咄嗟にソレに勘付いた『イージス』のパイロット、アスラン・ザラの行動は早かった。すぐさま拘束を解除したかと思えば、目の前で変形しながら『ブレイド』を蹴り、距離を取る。直後に再びMA形態への変形を遂げ、『スキュラ』の砲撃を放った。

 

 

(イージスを使いこなしてやがるな、コイツ。それにこの機転の速さ────一番強いのはコイツ!イージスの役割からしても、コイツが司令塔で間違いない!)

 

《やぁ!イージスのパイロット!奪った機体の調子はどうだ!?》

 

 

一瞬でそう見抜いたレオは、敢えて『イージス』との通信を合わせる。『イージス』を駆るアスランは驚きながらも通信を切断しようとして、戦闘中であるため集中できなかった。

 

 

《随分と使いこなしてくれるな!ソイツの元のテストパイロットは死ぬほど苦労してたんだぜ?まぁ、ソイツは死んだけどな。ヘリオポリスにいた、民間人と一緒に!》

 

《ッ!元はと言えば!お前達があんなものを造るから!あんなものをヘリオポリスに運んだから、こうなったんだろう!?》

 

 

軽く煽れば、強気で言い返してきた。

思った通り、感情的だな、とレオは見透かす。これでいい。この司令塔の怒りを此方が引き受ければ、連中を御する人間は居ない。このまま乱し続ければいいのだ、レオは。

 

 

《当たり前だろ?俺達は戦争やってんだ!勝つために兵器を作って何が悪い!お前らはモビルスーツ造ったクセに、俺達だけは造るなってか!》

 

《………そもそも!お前達が核なんて使わなければ!戦争をする必要はなかったんだ!》

 

《ああ、そうさ。どいつもこいつも手を汚してるのさ!オレもお前も!人を殺したってことだけが圧倒的な事実だろうぜ!》

 

 

人型に戻り、ビームの刃を展開した『イージス』と切り合う。光刃の激突の中、レオはそのまま『イージス』を押し切ろうとした所で、『ブリッツ』からの攻撃に意識を逸らされた。

 

 

《チッ!邪魔でぇ!》

 

《アスラン!大丈夫ですか!?》

 

《ああ、助かったニコル…………お陰で冷静になれた。イザーク、ディアッカ。連携して奴を倒すぞ》

 

《言われなくとも!》

 

《はいはい、分かってるよ》

 

 

自身を囲むように展開した四機のG兵器にレオは溜め息を漏らす。流石に四機同時は厳しい、何より乱したはずのペースはすぐに取り戻された。この状況では無傷というのも厳しいだろう。

 

 

《行くぞぉ!ッ────何!?》

 

 

息巻いて突撃しようとした『デュエル』であったが、背後からの砲撃によって足先を崩される。困惑した一同やレオはすぐに、もう一つの反応を感じ取った。

 

 

《────キラか!?》

 

 

ストライカーパックの一つ、エールを換装した『ストライク』。ソレを動かしているのがあの少年だと理解したレオ、彼の驚きの声を通信越しに聞いたアスランの意識が停止する。

 

その瞬間の隙を、レオは逃さなかった。怒りのままに『ストライク』に意識を向けた『デュエル』をワイヤークローで掴み、機体の力に任せて後方へと放り投げる。砲撃をしようとした『バスター』は射線上に飛ばされた友機を見て中断し、『ブリッツ』が即座に『デュエル』を回収する。

 

 

《レオさん!アークエンジェルの離脱完了しました!一緒に撤退して下さい!》

 

《────キラ、お前はそれでいいのか》

 

《………はい、マリューさん達に言われたんじゃありません。僕自身で決めたことです》

 

《そっか────じゃ、その前に逃げるか》

 

 

複合シールドの『アンタレス』から機雷を投下し、逃げながら複数の小型ミサイルを撃ち出していく。機雷に炸裂したミサイルは無数の火花を宇宙に咲かせ、追撃しようとしたイザーク達の視界を埋め尽くす。

 

万が一の為に機雷をいくつか撒いてから、エールストライクに掴まって『ブレイド』は撤退を始めた。

 

 

《ありがとね、キラ。お陰で助かったよ》

 

《そんな………僕は何もしてません。レオさんがいなきゃ、アークエンジェルが逃げられなかったんですから》

 

《それでも、奴等から逃れたのはキラのお陰さ────オレも死ぬこと無く、生き残ることが出来た。紛れも無く、君が居たからだよ》

 

 

純粋な感謝の言葉に、キラからの声は少し穏やかなものになっていた。やっぱり、自分から決めたとは言ったが、それは責任を感じてのものらしい。自分がコーディネーターであり、力があると追い込まれたからなのかもしれない。

 

────放っておけないな、とレオはキラ・ヤマトという少年への危うさに気付いた。だからこそ、少しで彼が壊れないように、気を掛けることにした。この戦争の狂気に当てられないよう。

 

 

《それにしても、君ってホントに上手いねぇ。もしかしたら、オレと一緒にアークエンジェルの双璧って呼ばれるようになるかもよ?》

 

《あはは………あんまり喜べないですね、それは》

 

《んまー、それが普通だしねー》

 

 

◇◆◇

 

 

「やっ、キラ。お疲れさんさーん」

 

「あ、レオさん。整備の方は終わったんですか?」

 

「まぁね〜、久々に疲れちゃうよ………あのオジサン、オレのこと多用しすぎじゃない?オレが疲れすぎて禿げたら、あの人も禿げさせないと」

 

 

食堂に遅れて現れたレオは、くたびれたように悪態を漏らす。あははと笑うキラは、ついさっきアークエンジェル似戻ったばかりのことを思い出す。

 

人員不足の現状に、自分の機体の整備を任されることになったキラとレオであったが、諦めたように整備を始めたキラとは対照的にレオは疲れてるから眠いー、と逃げようとした。結果、整備班主任のマードック軍曹から「年下の坊主がやるってんだからお前も逃げるな」と引き摺りれて整備をやらされることになった。

 

徹底的にしごかれたはずのレオが涼しい顔でマードックへの不満を吐露している様子に、キラは意外と大胆な人だな、と思うしかなかった。

 

 

「おっと、友達さんも一緒か。お邪魔した?」

 

「いや、そんなことないです!」

 

「レオさん!俺達と一緒に食事でもしませんか!?」

 

 

学友達と食事を共にしているキラを茶化したレオだが、その内の一人から声をかけられる。レオも覚えている、確か銃を向けられた時にキラを庇っていた男子学生だ。向けられた目に眩しい光があるのは、好意的に見られてるからだろうか。

 

 

「んー、いいよ。オレ、暇してたトコだし」

 

 

そうやって、手にしたトレイをキラたちの一緒の机に乗せる。そこから少年達から挨拶と自己紹介を受けた。キラと特段仲の良い二人、トールとミリアリア、クラスメイトのサイとカズイ。アークエンジェルに乗った時に見かけた一同から目を離し、サイの隣にいた少女の自己紹介を聞いた。

 

 

「私はフレイ・アルスターって言うの。よろしくね、レオさん」

 

「此方こそよろしく、フレイちゃん。ああ、そういえばお父さんって元気?」

 

「う、うん、パパは最近会えてないけど………もしかしてパパの知り合いなの!?」

 

「まぁね、実家同士の付き合いでさ。オレの親は、ジョージさんと昔からの友達って言ってたよ」

 

 

そう話すと、フレイ・アルスターは嬉しそうに父親の話を聞いていた。彼女について話すと長くはなるが、彼女はアークエンジェルに合流したという立ち位置になる。

 

ヘリオポリス付近で回収した避難艦に乗っていた彼女は、キラとレオが拾ったことで今ここにいる。当初はナタルからは反発もあったが、そこはレオが上官権限で何とか言い包めて納得させた。

 

………正直、思ったことを口にするタイプの娘ではあるが、性根はそこまで悪くはないと思う。子供ながらの未熟な面が目立つだけだ。

 

 

「あの、レオさん。ずっと気になってたんですけど………」

 

「ん?何?」

 

「そのペンダントに挟んでるのって、写真ですよね?家族のものですか?」

 

「ああ、見る?」

 

 

そう言って、レオは首から下げていたネックレスを外し、ペンダントに挟んでいた写真を見せる。写真を見入ったキラ達は、呆気にとられたように呆けた。

 

 

────写真に写っていたのは、一人の女性と幼い少女であった。穏やかに微笑む美人な女性、レオと同年代に見える彼女の雰囲気は手を繋いだ小さな少女のこともあり、まるで未亡人のような雰囲気すら目立つ。

 

 

「この人、綺麗だなぁ………コーディネーターみたい」

 

「ちょっと!サイ!縁起でもないこと言わないでよ!」

 

「2人とも!レオさんに失礼でしょ!」

 

 

ポツリと、そう漏らしたサイに露骨に嫌がるフレイ。写真に写る女性がレオの身内であるかもしれないことを忘れた二人の無神経な発言に、ミリアリアが声を上げて咎める。

 

ハッとした二人が慌てて謝るが、レオは気にした様子もなく「まぁコーディネーターなのは事実だしねー」と笑う。しかし言い方に関してはレオも優しく二人に注意した所で、カズイが気になったように問いかけてきた。

 

 

「あのレオさん………この写真の人って、レオさんのお姉さんか、親なんですか?」

 

「?オレの嫁だよ」

 

「へぇ、嫁さんなんですか…………え、嫁ぇッ!!?」

 

 

当たり前のような宣言に、この場一帯が大騒ぎになりかけた。騒がしそうにしていたクルーたちもその言葉に呆気に取られたようで、傍らで聞き耳を立てていたムウですら愕然と立ち尽くしていた。

 

 

「れ、れれれ、レオさん!?結婚してたんですか!?」

 

「まぁ、正式にはまだね。結婚式は挙げてないから────ほら、綺麗な方がシエラ、こっちの可愛いのがアーシェね。この戦いが終わってから、正式に結婚するつもりなのよ」

 

 

そんな彼の様子から、相当溺愛しているのだろう。ニタニタと笑みを崩した青年から惚気の気配しか感じない。調子の良いレオに、ムウが口笛を吹いて茶々を入れた。

 

 

「ひゅーっ、やることやって子供までこさえてるとは、若いっていいねー」

 

「はーい、僻むのは止めてねーオジサン。如何にオレが魅力的でイカしてるからって、モテないことへの嫉妬は駄目よ。その内、独身で生涯を遂げるよー」

 

「おい、サラッと俺にクリティカル叩き込んできたねぇ。流石に泣くぞ?」

 

 

露骨なまでに辛辣な言葉に、ムウは弱気な言葉を漏らす。しかし先の発言に思うところがあったのか、惚気ていたはずのレオは異様なまでに静まっており、淡々と口を開いた。

 

 

「ってか一つ言うけど、オレまだシエラとヤッてないからね。っつーか、アーシェはオレとは血繋がってないから」

 

「?どういうことだ?」

 

「………そこは複雑な事情があるの!これ以上やるんなら、おっさんがオレ嫉妬してそういうこと聞いてくるって、マリューさんにチクるからね!」

 

 

ちょっ、おまっ! と慌てるムウを他所に、レオはそこから唐突に話を逸し始めた。複雑な事情がなんなのか、気になってたキラたちであったが、先程のレオの一瞬の変化に戸惑い、聞くことすらできなかった。

 

 

◇◆◇

 

 

とある宙域に、謎の一団が蠢いていた。

破壊されたヘリオポリスの残骸の中、ヘルメットとパイロットスーツを身に着けた男が、先程まで起きていた戦闘の様子を記録していた。

 

 

『────アルカディアに通達、「救世主候補」二人がヘリオポリスを離脱。アークエンジェル艦の今後の方針を観測、行き先を解析しろ』

 

 

生活の痕跡が残されたコロニーの残骸の中で、男は交信していた。普通の通信とは違う、ナニカとの交信。機械的に告げられた報告を受け取ったモノは、結論を提示した。

 

 

『────アルカディアより通達。進行中のアークエンジェルの行き先、アルテミス要塞と仮定。ザフトのクルーゼ隊の追撃により、要塞から抜け出す可能性が高い。しかし、万が一の可能性を兼ね、機を見て要塞への攻撃を実行せよ』

 

『了解。これより、アークエンジェル及びクルーゼ隊を追尾する。此方の判断で要塞への攻撃を開始、可能であればアークエンジェルへの追撃も実行する』

 

 

ナニカからの指令を受け、男は淡々と応じた。通信は途絶え、交信は断絶した。この場にいるのは、ただ男のみ。彼は自分以外に生命の消え去った廃墟、廃界の有り様に目を細める。

 

 

『また、犠牲か………何時になっても、人類というものは飽きないものだな』

 

 

このヘリオポリスで犠牲になった全ての人間、彼等への追悼を示し、男は拾い上げた欠片を握り潰し、灰を宙に放った。そのまま背を向けた彼は、背後に鎮座していた銀の巨体へと乗り込む。

 

 

『ああ、分かっている。俺は俺の使命を果たす────そういう契約だ。

 

 

 

 

 

「ウリエル」、出撃する』

 

 

銀色のモビルスーツが残骸の中で、起動する。光輪を展開したソレは翼を広げ、ヘリオポリスのコロニーから飛び立った。まるで蛹から羽化した蝶のように、覚醒した天使のように。

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