機動戦士ガンダムSEED レユニオン・アルカディア   作:虚無の魔術師

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PHASE02 軍事要塞アルテミス

アークエンジェルの当初の目的地、軍事要塞アルテミスは間近であった。ヘリオポリスからの緊急離脱を行ったアークエンジェル艦や補給の必要性もあり、地球連合軍の拠点での補給を行う必要があったのだ。

 

そう決めたマリューや支持したナタルとは対照的に、レオやムウの顔は険しかった。

 

 

「なぁ、レオ。確かあのアルテミスの指揮官って………」

 

「ユーラシア連邦のジェラード・ガルシア少将。出世欲の強い俗物って噂だね、確か。俺の上司からも警戒されてたよ、新型のGを狙ってるんじゃないかってね」

 

「…………レオ、坊主にもOSをロックするように伝えておくんだ」

 

「もう伝えてるし、既にロックしてる頃だよ。今はね」

 

 

そう警戒を示した二人の眼前に、目的地の宇宙要塞────アルテミスが鎮座していた。鉄壁の居城と称された、連合の軍事拠点の一つ。周囲に展開した全方位光波防御帯『アルテミスの傘』と呼ばれるバリアが開き、アークエンジェルを出迎えた。

 

────だが、アルテミスはレオ達を歓迎したわけではなかったらしい。

 

 

レオ達に対して、挨拶の代わりに返されたのが向けられた銃口であった。戸惑いながらも詰め寄るマリューやナタルに対し、将官は清々しいほどの建前を吐いてみせた。

 

曰く、アークエンジェルは友軍コードが登録されていない所属不明機であり、味方と識別は出来ない。だからこそ、現状確実な証明が出来るまで、アークエンジェル及びモビルスーツ、そしてクルーの身柄を預かる、とのことだ。

 

 

(狙いは『ストライク』に『ブレイド』、か。上層部への手土産にするつもりだろうが、状況を分かってるのか?)

 

自分達はG兵器を強奪したクルーゼ隊からの追撃を受けているため、こんなことをしている場合ではないと詰め寄るマリューであったが、司令官のガルシアはそれこそ鼻で笑っていた。このアルテミスは無敵であり、ザフトの侵攻を一度も許したことはない、と。

 

随分と信頼が高いガルシア少将だが、レオだけはアルテミスが突破されることを確信していた。アルテミスがここまで無事だったのは、そもそもザフトにとって重要視されていなかっただけである。それに、絶対的な防御性を誇るアルテミスの傘には致命的な弱点がある。

 

────そして、その弱点を突ける機体が、敵のG兵器にはある。

 

(ブリッツのミラージュコロイド、アレならアルテミスの傘を容易く抜けられるだろうな)

 

 

攻撃性に特化した『バスター』や『イージス』、汎用性と近接向きの『デュエル』とは違い、『ブリッツ』には《ミラージュコロイド》という機能が搭載されている。

 

────センサーや目視では認識できない、完全なステルス。細心の警戒をしていれば、『ブリッツ』の侵入に気付けるだろうが、この要塞の空気からして、間違いなく入り込まれて、陥落するだろう。

 

 

そうしてマリュー達から隔離されていたレオやキラ達であったが、突然扉が開け放たれた。現れたのは、この要塞アルテミスの司令官であるガルシア少将であった。

 

 

「この艦に積んであるモビルスーツのパイロット、技術者はどこだね?この中にいるんだろう?」

 

「────オレです、レオと言います。階級は少佐、『ブレイド』のパイロットです」

 

 

 

「ほう、君………成程、少佐か。若いのにそこまで上り詰めたとは、相当良い腕をしているらしい────で?もう一機のパイロットは?」

 

「オレ一人です。『ストライク』は奪われる前にラミアス艦長が確保したのを、オレが回収しました」

 

「ほう?君一人、ね…………そのラミアス艦長はフラガ大尉が動かしていた、と言っていたが?」

 

「………っ!?」

 

 

その言葉に、レオは一瞬言葉を詰まらせた。と同時に、自分が反応してしまったことに気付き、すぐに収める。だが、ガルシア少将は敢えてブラフを掛けていたらしい。レオの様子からあることに勘付いたようで、ニヤリと笑った。

 

 

「そうか、そうか。君は『ストライク』のパイロットを言えないのか。とすると、そこにいる民間人の内の誰か、かね?」

 

「…………っ」

 

「ふむ、まだ若い学生が乗り込んでいるとは思えないが、他のクルーが動かせるようには見えない。もしもの可能性を考えれば、彼女であるかもしれないのかな?」

 

 

そう言うや否や、不安そうにしていたミリアリアを無理矢理立たせるガルシア。あくまでも、脅しだ。レオ達に対し、本当のパイロットを明かさせようという手腕。現に彼女がパイロットだとは一ミリも思ってはいない。

 

しかしそれは、ガルシアが探していたもう一人のパイロットには効果的な行動だった。

 

 

「止めて下さい!『ストライク』に乗っているのは僕です!」

 

 

友人を助けようと、自分から正体を明かしたキラであったが、ガルシアは聞く耳も持たなかった。証拠がない、ただ友達を庇おうと名乗り出ただけと思ったのか、キラに拳を振るおうとした。

 

何とか回避したキラを庇おうと、サイが前に出たがガルシアは容赦なくサイを張り倒した。婚約者に手が及んだことで、怯えて鳴りを潜めていたフレイが悲鳴を上げ、ある事実を明かしてしまう。

 

「ちょっと止めてよ!キラが言ってることは本当よ!彼が本当にパイロットなの!彼、コーディネーターなんだから!!」

 

「ほう………コーディネーターか」

 

 

目を細めたガルシアが銃を向け、部下にキラを囲ませようとする。その瞬間、「止めろ!」と声を張り上げたレオがキラの前に出た。

 

 

「キラに、これ以上彼等に危害を加えるな!そんなことは、オレが許さない!」

 

「フッ、パイロットとはいえ佐官が何を言うかと思えば………君こそ自分が何をしているのか理解しているのかね?」

 

「────オレは、レオ・フレスベルグ」

 

 

ポツリと、告げられた言葉にガルシアの顔から笑みが消えた。言葉を失った全員に向け、レオはひた隠しにしていた自分の名を明かすように、叫んだ。

 

 

「オレは、レオ・フレスベルグ!獅子王の剣と呼ばれた連合のエースだ!」

 

 

そんな彼の勢いに、ガルシア少将の部下達は戸惑いを隠せなかった。その名は、『獅子王』の名は連合に大きく広まっている。連合内の戦意を向上させる為とはいえ、多くの兵士たちからは羨望を集めた英雄の一人。その青年に中を向けることを躊躇い始めた兵士達を無視して、ガルシアはそれはそれは面白いというように口元を歪めた。

 

 

「ほう、君があのフレスベルグ家の人間とは………しかし、解せないな。あのフレスベルグ家が、何故裏切り者のコーディネーターを庇う?君のその行為こそ、お父上に反することではないのかね?」

 

「ッ!人を人と見ないブルーコスモスの過激派連中と!親父を一緒にするな!俺の親父は、奴等は違う!」

 

「フッ、同じブルーコスモスだ。私からすれば同じだと思うがね。それに今の発言、それこそ盟主の耳に留まれば、君達こそただでは済むまい?」

 

「…………ッ!」

 

「………ブルーコスモス?レオさんが?」

 

 

ギリ………!と歯噛みしたレオを他所に、キラはポカンと聞き返す。ブルーコスモス、その名を知らぬ者はいない。

 

環境保護団体と名乗る彼等は、分かりやすく言えば反コーディネーターの一団。現状、地球上の人類の大半がコーディネーターへの敵意を宿しているが、ブルーコスモスほどではないとされている。

 

それほどまでに、ブルーコスモスはコーディネーターを敵視している。同じ人としてではなく、人の姿をした化け物と区別する者すらいるくらいだ。

 

 

「ああ、知らないのかい。彼の実家、フレスベルグ家はね、ブルーコスモスに与しているのだよ。実際は、スポンサー立ち位置ではあるが…………君がそこまで成り上がれたのも、実家のコネのお陰かな?まぁ私としては構わないが、コーディネーターと馴れ合うのは………家族ごっこだけにして欲しいものだ」

 

「それ以上、ふざけたことを言ってみろ………ッ!」

 

「おぉ、怖い怖い。まぁいい、君達にはOSのロックを解除してもらう。君が英雄であろうと、関係ない。対抗するのならば、君の発言を盟主殿にお伝えするのも、悪くはない」

 

「ッ!貴様………!」

 

 

露骨なまでの怒りを剥き出しにしたレオに対し、キラはこれ以上皆を傷付けられたくないという一心で応じようとした────その瞬間。

 

 

『────────ッッ!!』

 

 

不協和音が、一帯に響き渡った。何らかの信号のような不気味なノイズに皆が思わず耳を抑える。大勢が困惑した中、ガルシアとレオ、マードック軍曹だけが何かを思い出したように、目を見開いた。それと同時に、「閣下!大変です!」と一人の兵士が駆け込んできた。

 

 

「要塞に接近する機影、モビルスーツの反応を確認しました!数は一機、此方に急接近しています!」

 

「何だと!?………いや、何を恐れる!相手は一機だ!それに、アルテミスは無敵の要塞!たかだか一機に何が────」

 

 

直後、凄まじい衝撃が周囲を襲った。何かが爆発したような衝撃に、周囲に困惑と不安が漂う。一人の兵士が通信を聞いた途端に青ざめ、ガルシア少将へと報告する。苛立たしそうであったガルシアが、唖然と言葉を漏らした。

 

 

「アルテミスの傘が、破られただと………!?」

 

 

◇◆◇

 

ミラージュコロイドステルスでアルテミス内に入り込んだ『ブリッツ』、それを駆るニコル・アマルフィは何が起きたのか理解しきれなかった。

 

アルテミスの傘の内側に侵入した彼はスラスターを吹かすことなく、外壁に展開された防御帯発生装置を破壊しようとした所で、ソレを見た。

 

────向こう側から、突如発生した閃光の奔流。いや、目視ですら捉えられぬ光が鉄壁の防御であるはずのバリアを貫通し、要塞の外壁を破壊した爆発を引き起こしていた。

 

その衝撃と飛び散る残骸から身を守るために咄嗟にミラージュコロイドを解除し、フェイズシフト装甲を起動した『ブリッツ』の中でニコルは、目の前の現状に言葉を失った。

 

 

「アルテミスの傘が、撃ち抜かれた………?」

 

 

そんな馬鹿な、とニコルは目の前に広がる景色────アルテミスを覆う防御システムに大きな穴が開いていたのを見る。有り得ない、と今でも思ってしまう自分がいた。

 

 

アルテミスの防御システムは鉄壁だ。ザフトが今まで侵攻しなかったのは、拠点を占拠する必要がなかったのと、その防御システムを破るのが一苦労であるからだ。

 

モビルスーツの攻撃ではびくともしない、だからこそ『ブリッツ』による内部破壊を実行しようとしたのだ。正面からアレを撃ち抜くなど、絶対に出来ることではない。

 

 

そう信じたかったニコルは、ふと光の放たれた方を見た。そこには宇宙とは無縁の色をした、全身が銀のモビルスーツが浮かんでいた。

 

 

《────全方位光波防御帯、厄介な防御力だがコレであれば貫通できるか》

 

 

そのモビルスーツは、ザフトが開発しているジン系列でもなければ、連合が作り出したGAT-Xシリーズですら無い。或いは、ソレ以上の性能を誇っているかもしれないその機体を見た瞬間、ニコルはソレを天使だと思ってしまった。

 

無理もない、頭部に浮かんだ光輪と背部に展開した翼。それらの要素を重ねた銀色のモビルスーツは、紛れも無く天使を模倣した機体なのだから。

 

銀色のモビルスーツ『ウリエル』は両手で持ち上げていた大型レールキャノンを手放す。レールキャノンは音を立てて変形すると折り畳まれていき、背中に格納される。

 

 

《穴を開けただけではすぐに塞がるか────だが、その穴があれば充分》

 

再び構築し直そうとする『アルテミスの傘』に、『ウリエル』のパイロットが動く。腕を挙げただけで、反応した二機の随伴機────胴体と頭部が連結した天使のようなモビルスーツが、防御帯に開いた穴から入り込んでいく。

 

 

『────!』

 

硬直する『ブリッツ』を他所に、アルテミスの外壁へと張り付いた二機のモビルスーツが背中に格納していた装置を展開し、起動させる。直後、外壁に展開された多くの防御帯発生装置が機能停止した。

 

 

《他愛も無い。難攻不落のアルテミスもこの程度で仕舞いか》

 

言うや否や、『ウリエル』は『ブリッツ』にビームライフルの一撃を放つ。咄嗟の事に何とか回避した『ブリッツ』だが、ウリエルが続け様に放った徹甲弾が直撃し、吹き飛ばされた。

 

 

《うぅぅっ!!?》

 

そのまま遠くに飛んだ『ブリッツ』から目を離し、『ウリエル』は翼を広げ、アルテミスを睥睨した。機能停止した難攻不落の要塞に、続けてビームライフルを叩き込む。着弾と共に生じる爆発の中、『ウリエル』を操るパイロットは淡々と告げた。

 

 

《さて、早く出てこい。『ストライク』、『ブレイド』。でなければアルテミスごと母艦を沈めるぞ》

 

 

◇◆◇

 

 

「────キラ!オレが前に出る!お前はアークエンジェルの援護を!」

 

《レオさん!一人でやるんですか!?》

 

「この状況、やるしかないだろ!代わりにアークエンジェルを頼むぞ!」

 

アルテミスが襲撃された。その事実に気付いたレオは、即座にガルシア少将たちを張り倒した。緊急時でもあるが、彼が自分達をただで逃すとは思えなかったからこそ、必要な行為だと信じている。

 

キラの乗る『ストライク』に、アルテミスから発艦するアークエンジェルの警護を任せ、レオは『ブレイド』を駆り、アルテミスから飛び出していく。

 

 

「っ!アレが敵か!?」

 

外に出てから目に止まったのは、完全に停止したアルテミスの防衛システム。見たこともないモビルスーツ二機が外面に張り付いており、少し離れた方で見たこともない機体が此方を睥睨していた。

 

 

 

《ようやく来たか、『ブレイド』────救世主の卵》

 

《アルテミスを墜としたのはお前か!?何が目的だ!》

 

《目的はアークエンジェル艦、正確にはお前達だ》

 

 

先制は、『ウリエル』のビームライフルが先であった。不意に撃ち込まれた閃光に、回避行動を取ったレオは目を疑う。アレは、G兵器のビームライフルよりも出力が高い。何よりあの機体、明らかにザフトが運用するものとは違う────見た目もあるが、機能自体が可笑しい。

 

肉薄し、そのまま切り込む『ブレイド』。しかし、『ウリエル』は手にした高出力のビームライフルを下げると共に、もう片方の手からビームサーベルを抜き放った。斬り掛かった対艦刀を切り裂いたその威力に目を巻いたレオは、即座に抜いたビームサーベルで刃を受け止めた。

 

 

《その機体は、何だ!?何故ビームサーベルやビームライフルを使用している!?それはまだ、ザフトは生産できてないはずだ!ソレは、お前は何だ!答えろ!!》

 

《────答える道理はない》

 

 

冷徹なまでの声に、レオは舌打ちを吐く。ビームサーベルの出力すら、あちらのほうが上だ。気を抜けば、此方が切り裂かれることになる。

 

複合シールド『アンタレス』に仕込んだ機関銃の弾丸の雨を叩き込むが、『ウリエル』には通じなかった。実弾に対し、傷一つかない装甲に、レオは直感的にソレの正体を悟った。

 

 

《PS装甲、だと!?》

 

 

GAT-Xシリーズにしか運用されていないはずの、特殊装甲。アレは連合が、それに協力したオーブしか知り得ないもののはずだ。ザフトであれば、絶対に扱えるはずのない技術が、目の前のモビルスーツに使われていると気付いたレオは、通信に向かって問い詰めた。

 

 

《何故ソレを使っている!ザフトの機体が、ソレを持っているはずがない!連合の機体か!?なら何故オレ達を襲う!!》

 

《────コレは我々が開発した技術だ。お前達が開発したソレは、既に我々が過去に会得したものに過ぎない》

 

《何………!?》

 

 

戸惑ったレオに対し、『ウリエル』の鋭い蹴りが叩き込まれる。外壁に衝突した『ブレイド』に休みも無いビームライフルの銃撃が襲う。

 

 

《先の質問、答えよう。俺には名はない、ソレはとうの昔に捨て去った。だが、呼び名はある────────コードネームはエフ。お前達が噂する、『死神』と呼ばれるモノだ》

 

《死神……………まさか、新星攻防戦に現れた、あの!?》

 

 

────ザフトの侵攻により、大きな戦いとなった新星攻防戦。ザフトと連合も多くの兵士を失ったその戦場では、ある噂が流れていた。

 

曰く、連合のMAもザフトのMSも破壊し尽くした所属不明のMSがあった。ソレが現れる直前には、謎のノイズが響き渡り、瞬く間に全ての敵を葬り去る。ソレが介入した戦いでは、連合もザフトもどちらも撤退しており、勝者が生まれない結果となる。

 

最低限の動きで相手を殺すそのMSの乗り手は、いつしか『死神』と呼ばれて怖れられるようになった。連合、ザフトの両方の兵士にとって、純粋な恐怖の化身として。

 

 

《本当に、実在していたのか………!その死神が、オレ達を何故狙う!》

 

《新型など、どうでもいい。用があるのは中身の方だ》

 

 

高出力のビームを避け、アルテミスの通路の一角へ逃げ込む『ブレイド』。『ウリエル』は一切の速度を緩めることなく、追撃を始める。入り組んだ脇道に飛び込んだ『ブレイド』は、即座に回り込んで『ウリエル』の後方を取らんと迫る。

 

見失ったように周りを見渡す『ウリエル』、その隙だらけな背中にビームサーベルを突き立てんと、音を殺して身構えた。

 

 

────だが、レオは気付いた。

此方に背中を向けたウリエルの、背中に格納されたリニアキャノンが音を立てて展開したことに。その銃口が此方を捉えていることに気付いたレオは、停止させていたスラスターを最大で吹かし、放たれた破壊砲撃を避け切った。

 

 

要塞の内部を撃ち抜き、外壁にまで貫通したその威力に背筋が凍る。それ以上に恐ろしいのは、『ウリエル』の対応力だ。アレは此方の反応に気付いた。最大限息を潜めた、間違いない不意打ちだったにも関わらずだ。

 

 

《レオ・フレスベルグ。お前こそ何故戦う》

 

《何を、言っている!》

 

《奪い、殺し、傷つけ合うこの世界で、何時まで戦い続ける。地球連合で戦おうとも、その先に未来はない。あるのは永劫に続く殺し合いの歴史のみだ》

 

 

翼を広げた『ウリエル』から、複数のビームが掃射される。咄嗟にシールドで受け止めたレオであったが、やはりビームの威力に圧倒され、即座に距離を離そうとして───増加装甲を一部、吹き飛ばされた。

 

《ぐっ!?》

 

《人間は変わらない、人類は繰り返す。無限の怨嗟と業を積み重ね、そこに巡るは無辜なる犠牲。故に我等は変革を求めた。戦争しか繰り返さぬ人間たちを犠牲とし、犠牲無き世界の為に。

 

 

お前にはあるか。戦う理由が、この狂った世界を覆すほどの意志が》

 

 

反論するより前に、『ウリエル』の放ったレーザーを収束した閃光が『ブレイド』を押し飛ばす。壁に叩きつけられた『ブレイド』の眼前にビームライフルを向け、『ウリエル』のパイロット エフはそう問い掛けた。

 

 

《決まっている………!大切な誰かを、護る為だ!》

 

《ほう………》

 

《オレには、帰りを待っている家族がいる!アイツらがいるから、オレはオレとして曲がらず前を向いていられる!お前みたいに、人類や世界に絶望するつもりはない!》

 

 

何を思ったのか、『ウリエル』のパイロットは沈黙する。だが、的を射た発言では無かったのか、彼の口から漏れるのは憐れみに等しいため息。

 

 

《するつもりなど関係ない────お前自身が、人類への希望を捨て去るだろう》

 

 

そう告げ、『ウリエル』がビームライフルの引き金を引こうとした────瞬間、近くの通路の壁が爆発した。

 

 

《止めろぉーーーーッ!!》

 

《ッ!キラ!?》

 

《来たか────もう一人の、候補》

 

 

響き渡る怒声、迫る『ストライク』。エールストライカーを換装したストライクがビームライフルを構え、『ウリエル』へと向かう。それ勘付いた『ウリエル』は背後の翼から、ビームを一斉に撃ち始めた。

 

────その瞬間、キラの動きが変化したのを、レオやエフは感じ取った。

 

 

《────ッ!?》

 

 

翼から放たれた無数のレーザーを、『ストライク』は急停止することで潜り抜けた。そのままスライドしながら突き進む『ストライク』の背後で、着弾したレーザーが一気に爆裂していく。

 

 

《避けた……!?あの機体性能で、『グロウリーフレア』を掻い潜ったと言うのか────ならば、これはどうする!》

 

 

ビームライフルを乱雑に撃ち込む『ウリエル』へと肉薄する『ストライク』に、抜き放たれたビームサーベルの刃が迫る。それに対し、『ストライク』の動きも素早かった。

 

グルリ、と凄まじ勢いで全身を捩じる。ビームサーベルの大振りを回避しながら、『ストライク』はバックパックの可変翼で『ウリエル』の頭部を揺らした。不意を突いた一撃に意識を取られた『ウリエル』が突き付けたビームライフルを、ストライクはそれよりも早く抜いたビームサーベルの一閃で斬り払う。

 

 

《な、なに………ッ!?》

 

 

一瞬で、ビームライフルを腕ごと切断された『ウリエル』。遅れてビームサーベルを振り上げた『ウリエル』だが、ストライクが頭部バルカンのイーゲルシュテルンをビームライフルへと浴びせ、そのまま誘爆させて距離を取る。

 

 

《レオさん!今のうちに逃げましょう!》

 

《キラ………お前、今のは………》

 

《良いから!早く!》

 

 

有無を言わさぬキラの迫力に、レオは言いたいことを呑み込んだ。何とか起き上がった『ブレイド』は隣にいた『ストライク』と共に、『ウリエル』へと向き合う。

 

 

《馬鹿な………この動き、自らの無意識によって『因子』を呼び覚ましたというのか。これが、完成された────む、余計なモノが来たか》

 

 

そう呟いたエフの声と共に、近くの通路から別のモビルスーツが飛び出してくる。『イージス』、モビルスーツの形態へと変形したソレは、ようやく周りの状況を理解する。

 

 

《!コイツが、ニコルを襲ったモビルスーツか………!ッ、『ブレイド』………『ストライク』!》

 

此方を見て、正確には『ストライク』に声を詰まらせた『イージス』のパイロット。すると突然、キラが繋げていた回線に声が響いてきた。恐らく、ストライクに繋げられた個人回線だろう。

 

 

《キラ!キラなんだろう!?》

 

《その声、やっぱり………アスランなのか………!》

 

(………まさか、知り合いなのか?)

 

 

そう判断して、レオは咄嗟に回線を切った。

個人回線の内容からして、明らかに個人の事情かもしれない。恐らくだが、イージスのパイロットはキラの知り合いなのだろう。だからこそ、レオは敢えてそれを知らぬように取り組んだ。

 

────もし、その事実が漏れれば、キラは疑いをかけられるだろう。ザフトに通ずるかもしれない、と。彼がコーディネーターであるからこそ、その疑いはより増すはずだ。

 

 

《………潮時だな。お前達は兎も角、クルーゼ隊とも相手をするわけにはいかん。ここで退かせて貰うが────レオ・フレスベルグ、ゆめ忘れぬな》

 

 

────世界の全てに絶望した時、お前は我々の同胞となる。その時こそ、永らく残された神の座を自らの意志で受け継ぐだろう。

 

 

直後、『ウリエル』は翼から解き放ったレーザーで、要塞内部を破壊し尽くした。それに気付いた『ストライク』が『イージス』から別れ、レオの『ブレイド』と共に脱出する。それと同時に、難攻不落とされた宇宙要塞が爆発に呑まれていく。

 

 

アルテミスは、完全に陥落したのだった。




『ウリエル』

型式番号『ADHW-HE-X03』。■■■■■■により開発された新型の機動兵器。連合にもザフトにも与さぬ正体不明のモビルスーツ。本来連合の新型に運用されていたはずの技術をも登用しており、機体出力はストライクやブレイドを超えている。

特殊装甲
フェイズシフト装甲と同じ性質を持つモノ、エフ曰くフェイズシフト装甲と同一であるらしいが、技術盗用したものではないと明言。本来のフェイズシフト装甲よりも特殊なものであるらしい。

ビームサーベル
出力を調整できるビームサーベル。『ウリエル』の主要装備。

ビームライフル
高出力のビームライフル、エールストライクのものよりも格段と威力が高い。ウリエルの主要装備。


高出力レールキャノン『メギド』
『ウリエル』の背部に格納された可変型レールキャノン。その威力は、アルテミスの傘を貫通して要塞外壁を破壊するほどのもの。前面部に展開することで最大出力での砲撃が可能であるが、背部に展開して砲撃することも可能。

『グロウリーフレア』
背部に連結した大型ウィングユニットの翼の先に内蔵されたビーム砲十六門。周囲を破壊するために撒き散らす『乱射モード』、一点集中させて相手を撃ち抜く『収束モード』の二つの機能を使用できる。
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