機動戦士ガンダムSEED レユニオン・アルカディア   作:虚無の魔術師

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PHASE04 歌姫と守り手

クルーゼ隊の旗艦 ヴェサリウスにて。

アルテミスが墜ちた後にプラントへの報告を終えたクルーゼ隊であったが、帰還して早々新たな任務を与えられることになった。

 

 

「────ヘリオポリスやアルテミスの件で疲れていると思うが、少々困ったことになったようだ」

 

 

艦橋に集まったクルーゼ隊一同にそう呼び掛けたのは、彼等の隊長であるラウ・ル・クルーゼその人。仮面で顔を隠したその男は若きザフトのエースたちを部下とする、ザフトの精鋭とされる士官であった。

 

周りに並んだクルーゼ隊一同、G兵器のパイロットを任された四人、アスラン、イザーク、ディアッカ、ニコル、他のクルーを見渡したクルーゼは落ち着いたように、とある事実を明かした。

 

 

「ユニウスセブンに向かっていた追悼慰霊団が、途中で消息不明となった」

 

「────なっ!?」

 

「後に、慰霊団の使用していた船の反応は途絶えた。………恐らく、連合に撃墜されたと見るべきだろう」

 

 

その事実に、クルーゼ隊一同の反応は様々だった。

信じられないと唖然とする者もいれば、民間人を容赦なく襲った連合の非道さに憤る者もいれば、慰霊団の安全を心配する者も居た。

 

アスランもその一人であった。何故ならユニウスセブンに向かっていた慰霊団の代表は、彼の婚約者であるラクスなのだから。

 

 

「そんな馬鹿な………!連合が、そんなことを!では、ラクスは────」

 

「心配は無用だ、アスラン。少し前、救難信号と共に暗号が送られてきた。ラクス・クライン嬢はご無事らしい、彼女の護衛が共に救命ポッドで難を逃れたようだ」

 

「護衛………テオか。なら、ラクスは無事なんだな」

 

 

子供の頃からラクスと付き合いのあるテオのことを知るアスランは、彼が無事ならばラクスも安全だと確信した。平時はいつもラクスに振り回される子供らしい弟分だが、ラクスの身に限った場合彼はあらゆるコーディネーターよりも圧倒的な護衛となる。

 

そんなテオにとって最優先はラクスの安全。彼女に危害が加わっていた場合、それはテオが死んでいることを意味する。それほどまでに、テオはラクスを護ることに尽力した少年だと、アスランは知っていた。

 

 

「………連合のナチュラルどもめ。よりによってユニウスセブンの追悼慰霊団を襲い、ラクス様を害するなど………!」

 

「バカな連中だと思ってたけど、ここまで馬鹿だと清々しいよねぇ。中立のコロニーで新型を作ってたことといい、とことん俺達を馬鹿にしてくれてるみたいじゃん?」

 

「…………隊長。僕達の任務というのは、ラクス様の救出、ということですね?」

 

 

感情的に憤るイザークに対し、皮肉を口にしながらも連合の敵意を燃やすディアッカ。そんな二人に、今回ばかりは同感したニコルは本来の目的である、生きている可能性の高いラクスを助け出すことが任務かと問う。

 

何を当たり前な、と反応するイザークとディアッカであったが、ニコルの懸念は正しかったようだ。静かに笑ったクルーゼの口から、次の言葉が語られた。

 

 

「そう………と言いたいが、厳密にはもう一つある。これはある意味では極秘────パトリック・ザラ国防委員長直々の、極秘任務だ」

 

「………!父上、直々の?」

 

「重ねて言おう。これはプラントでも一部にしか明かされていない国家機密だ。この情報が外部に漏れた場合、流石の私と言えど庇い切ることは出来ない。そのことを念頭に入れた上で、聞いてもらいたい」

 

クルーゼが言った言葉により、緩んでいた空気が一気に引き締まった。満足そうに部下たちを見据えたクルーゼは、もう一つの任務についての詳細を語り始めた。

 

 

「先日、プラントで極秘に開発されていた試作機が暴走を起こした。暴走した試作機は一部の施設を破壊し、そのまま物資の一部を持ち出して逃走し、姿を眩ましている」

 

 

その説明に、殆どのクルーが混乱する。

クルーゼの説明に、可笑しいところがあると気付いたのだろう。筆頭したイザークが、その疑念を確かめるべく、疑問を提示した。

 

 

「隊長!質問があります!その言い方、少し可笑しいのでは無いでしょうか。まるで試作機に自我があるような………強奪された、というのならまだしも………」

 

「良い勘をしているな、イザーク。極秘に開発されていた試作機とは────無人モビルスーツだ」

 

 

クルーゼの答えに、誰もが驚愕の声を上げる。

無人モビルスーツ、それは現時点では連合は愚か、ザフトですら実現できていないはずの技術だ。そのことに一番疑問を持っていたアスランが、更に問い掛ける。

 

 

「お言葉ですが、クルーゼ隊長。無人モビルスーツなんて、今まで実現できなかった話だったはずです…………それに、何故父上………ザラ議長がそんなモビルスーツの開発を」

 

「無論、プラントの攻防の為だろう。ザラ議長は無人モビルスーツによるコロニーの防衛があれば、連合の卑劣な奇襲をお考えの事だ。────先のユニウスセブンのような惨劇を、未然に防ぐ為にも」

 

 

────無人モビルスーツの防衛さえあれば、ユニウスセブンのような事は起こさせない。そんなパトリック・ザラの考えに、誰もが納得した────ただ一人、実の息子であるアスラン以外は。

 

いつも見る父の姿を、あの日から変わった父を思い出したアスランの心には、疑念だけがあった。

 

 

「試作された無人モビルスーツには高度な人工知能が搭載されている。今回の暴走は人工知能に起きたエラーが原因とされているが、重要なのはその無人モビルスーツは今も宇宙の何処かを彷徨っている。この機体を、連合より先に見つけ出さなければならない」

 

「プラントの技術を総結集させた試作機を、奪われない為、ですね」

 

「そうだ。可能であれば回収を、出来なければ破壊するようにと言われている。試作機は暴走しており、敵味方関係なく攻撃するだろう。ラクス・クライン嬢の救出と試作機の行方の捜索、この二つを同時に進める必要がある」

 

 

そして、例の試作機をクルーゼが説明し始める。モニターに映し出されたそのモビルスーツを観た瞬間、アスランは察した。

 

 

「コードネームは、【サーペント】。こんなナリをしているが、分類的にはモビルスーツ…………ザフトが開発した新型兵器だ。油断はしてくれるなよ」

 

 

コレは、防衛兵器などではない、と。

そう感じた理由、何故だか詳しく説明は出来ない。ただ他のモビルスーツにはない、(ナチュラル)への殺意が込められた機体に見えたのは、アスランだけだったのだろうか。

 

 

◇◆◇

 

 

「貴女達の事について教えてくれるかしら。どうして救命ポッドに乗っていたの?他の船は?」

 

 

アークエンジェルの個室に移動した一同。そんな彼等の疑問を代表して、マリューがそう問い掛けた。問われた当の本人、ラクス・クラインはキョトンと首を傾げるのだった。

 

 

「分かりません。ただ、彼等は気を静めて下さったのでしょうか。何事もなく済んでいれば良いのですが………」

 

「彼等………?」

 

「ここからは僕が話します。僕達はユニウスセブンの追悼慰霊の為にユニウスセブンに向かっていました。その際、連合の軍艦と遭遇し、彼等による武力行使を受けました」

 

 

テオの明かした事実に、空気が一気に変化する。

具体的には、マジかと言ったものが周囲に漂っていた。そのまま話を続けたテオの説明を聞いていくたびに、それが増していった。

 

 

「彼等は高圧的に、ラクス・クラインの護衛を手伝う、と言っていましたが、それが嘘だと皆気付いていたようで反発しました。業を煮やした連合軍が攻撃を始め、僕はラクス様を任されて救命ポッドに乗り込んだ……………それが事の経緯です」

 

「…………おいおい」

 

 

遂にはムウが呆れたように額を抑え、隣にいたレオも苦笑いすら漏れてくる。互いに見合ったエース二人は、今の状況がどれだけ不味いか、理解できていた。

 

 

「これってさ、明らかにこっちがやらかしてるよな?」

 

「比率的に零対百だね。これだから後先考えない馬鹿ってのは………」

 

 

プラントの重要人物がいたとはいえ、民間人の乗った船を連合が沈めた。それだけでも問題であるのだが、それがラクス・クラインを捕らえようとした行為の結果ならば、最悪になりゆく。

 

────プラントのアイドルとも言える歌姫の居る船を、連合が襲った。しかも、その船はユニウスセブンの追悼の為の船であり、俗に言えば墓参りの為に訪れた一団を、連合が難癖つけて襲った、という事実が知られれば、プラントの反連合意識は強まればまだしも、連合側からも幾らかの不満や戦意低下は見られるだろ。

 

 

「………もう、見なかったことにしね?」

 

 

レオがそう呟くのも、無理はなかった。

ラクス達をプラントに引き渡し、そもそも何も無かったことにするべきだ。これで連合が襲った件も、無償で返したことでプラマイゼロになる。

 

 

「少佐!何を言うのですか!」

 

「だってさ、そもそも戦争とは無縁な姫様だよ?彼女を捕らえたとこで、俺達にメリットってあるワケ?正直、こっちには不利益しかないでしょ」

 

「彼女はプラントの重要人物です!この場で見逃すことこそ、不利益に繋がるはずです!彼女の存在は、この戦争において重要な────」

 

「────バジルール少尉はさ、相手のこと良く知った方が良いよ」

 

 

ラクスを解放しようと言うレオの意見に反発するナタル。典型的な軍人気質である彼女からすれば、プラントの重要人物であるラクスを上層部に引き渡すべき、と考えているのだろう。

 

そんな風に詰め寄るナタルに、レオは笑みを浮かべながらもその眼は冷ややかなものであった。冷静に事を見据えるような彼の発言に同調したのは、他ならぬムウだった。

 

 

「俺もレオの意見には賛成。彼女、連合軍に引き渡さないでいいんじゃない?あのクラインの娘だ、人質にされるだけならまだしも、恨みをぶつけられるかもしれない。そうなるよりかは、よっぽどマシだと思うね」

 

 

血のバレンタインの報復としてニュートロンジャマーを落としたシーゲルへの恨みを持つ者は少ない。報復としては比較的穏当、核戦争になりかけていた事実を知る者は居ても、良く思う者も少なくないのは事実。だからこそ、ラクスを連合に引き渡せばどうなるか、予想した故に、レオもムウもこのまま連れ行くことには消極的だった。

 

 

「大尉と少佐、二人の意見にも一理あります。ですが、彼女はアークエンジェルに乗せてしまった以上、そのまま返す訳にはいきません。ある程度の自由は保障するけど、月本部で対応を仰ぐしかないわ」

 

「…………俺は忠告したから」

 

 

そのように決定を下したマリューに、レオはそう言って引き下がった。不満が無い訳では無い。それが理由でどうなろうと、自分は責任は取らない。そうも投げやりになるのは非道を許せぬ青年特有の若さをまだ持っている故か。

 

 

「────では、わたくしたちを監視する御方を選んでよろしいでしょうか?」

 

「ええ、この艦には貴女と同じコーディネーターもいるわ。それでも同年代の女の子も居るから、呼んできても良いかしら」

 

「では…………あの時いたモビルスーツのパイロットの方を」

 

 

キラのことか、とレオは即座に見抜いた。

まぁ妥当と言うべきか、キラもラクスと同じコーディネーターであり、同年代の一人だ。自分を助けた相手でもあるキラに、感謝のついでに世間話をしたいと思うのも当然か。

 

 

「それと、レオ様。貴方にもお願いしてよろしいでしょうか」

 

「……………あれー?」

 

 

唐突のことに、情けない声が漏れる。自分が気に入られるような覚えもないため、純粋に戸惑うしか無かった。

 

 

◇◆◇

 

「あ、レオ様………御機嫌よう」

 

「お前はテオか。こんなトコで何で歩いているんだ?色々言われるぞ、小五月蝿い人達に」

 

 

通路を歩いていたレオが、キョロキョロと周りを見渡していたテオに声を掛ける。ラクスと共に監視されることになった少年だが、勝手な行動をしているとバレたら規律にうるさいナタルやナタル、あとナタルとかに色々言われるだろう。

 

 

「あ、いえ………ホントに、ご迷惑をお掛けする訳には………」

 

「ん、そう言えば。お前んとこのお嬢様は?」

 

「……………ホントにすみません」

 

「え、何怖ッ」

 

 

項垂れるように頭を下げるテオに、当惑するレオ。だが同時にこの少年が勝手な理由で出歩いている訳では無いことを察した。

 

 

「いや、その………ラクス様が勝手に出歩いたみたいで………いや、勝手と言うか、キラ様も追い掛けて下さったようなんですけど…………ホントにすみません」

 

「あの姫様、思ったよりもお転婆だな………苦労してんだな」

 

 

あのフワフワとしたお姫様に振り回される少年に同情するレオは、一緒に探してやることにした。船内を歩いていた時、食堂の方で言い争う声が聞こえた。

 

 

「はぁ、この声は………フレイとミリアリアだな。あの二人もここまで聞こえる声で何を言い争ってるんだか」

 

「あの………止めなくてもよろしいのですか?」

 

「子供の喧嘩に目くじら立てるのもねぇ。内容は良くわかんないけど、やりたいようにさせたら────」

 

「────コーディネーターのくせに!馴れ馴れしくしないでっ!!」

 

 

その声を聞いた途端、思わずレオとテオが食堂へと乗り込んだ。そこでは先の発言を口にしたであろうフレイと、近くにいたラクス。恐らく歩み寄ろうとした彼女を拒絶したフレイが、さっきのことを口走ったのだろう。

 

そう理解したレオは即座に動いた。────隣にいた少年を、止める為に。

 

 

「────ッ!」

 

「抑えろ、これ以上は容認しない」

 

 

殺気立ったテオが動くよりも先に、レオが彼の手首を掴む。ラクスの握手を拒絶し、払い除けたフレイの行為を意外と判断したのか。或いはフレイが向けるラクスへの敵意に反応したのか、テオのこの先の行動を推測したレオは────無言で怒りに震える少年を押さえつけ、一言。

 

少年が力を抜いた────大人しくしたことに気付いたレオは、周りを見渡して、呆然としたキラに笑い掛けた。

 

 

「ああ、キラ。そこの姫様を連れて戻ってくれるか?安心してくれ、食事は後で俺達が持ってくから」

 

「…………は、はい」

 

 

にこやかに笑うレオに対し、何を感じたのかキラは有無を言うことなく従った。そもそも、言う気力すら湧かなかったようだ。キラがラクスを連れて出ていって、気配が消えてようやく────レオの顔から笑みが消えた。

 

無表情で椅子に座ったレオは、凍り付いたように立ち尽くすフレイを見据え、告げる。

 

 

「…………で?どういう意味での発言だ?説明しろ」

 

 

信じられないくらい冷たい声だった。椅子を運んできた彼は、そこに座れ、と目で促す。オロオロとしていたフレイが促されるままに座ってから、レオは静かに問い掛けた。

 

え、えっと………と喉を詰まらせるフレイに、サイが助け舟を出そうと会話に割り込もうとして、

 

 

「悪いな、サイ。オレはフレイと話をしたい。彼女の口から、聞きたいことがある」

 

と、優しい口調ながらも冷たく切り捨てた。据わった視線を向けられ押し黙ることしか出来なかったサイから目を離し、レオは再びフレイを見据える。震えることしか出来なかった彼女は、ポツリと呟いた。

 

 

「だって、コーディネーターだから………」

 

「………コーディネーターだから、か。まぁそうだとは思ったが、ここまで典型的な思想になるのかね。自分の発言の意味、分かった上でか?」

 

「…………何よ、コーディネーターを庇うの?奥さんが、家族がコーディネーターだから?」

 

「っ!フレイ!貴女ねぇ!」

 

 

怯えながら、反抗的な目を向けるフレイ。彼女が零した疑問に、傍から聞いていたミリアリアが食い下がるが、レオは彼女を制すると、淡々と口を開いた。

 

 

「シエラはシエラ、アーシェはアーシェだ。人を分類で区別するつもりはない。それとも、お前の父親はコーディネーターとナチュラルで相手を区分しろ、と教えるのか?じゃあオレ達はナチュラルの誰かって、呼ぶことにしようか」

 

「っ、パパはそんなこと………っ!」

 

「違うんだろ、そんな風に教えるような人じゃないんだろ。なら、自分の考えを、発言の重みを理解しろ。お前がコーディネーターを敵視する発言をすれば、お前を知らない人間はお前や周りを区別する。コーディネーターを敵視するブルーコスモスと言われて、違うと反発しても、誰も信じないぞ」

 

 

優しくも厳しい言葉であった。

それでも少女が心の底から納得しきれていないのは、子供の頃から身に付いた認識のせいか。父親がブルーコスモスに所属していることを知らぬフレイだが、彼と過ごしてきたことでブルーコスモスの悪習だけが染み付いてしまっていたのだろう。

 

そんな様子を見兼ねたのか、さっきから黙っていたテオがようやく重い口を開いた。

 

 

「………フレイ・アルスターと言ったね。レオ様に感謝した方が良いよ」

 

「……………何よ、アンタも説教するの?」

 

「別に。ただあの時、僕は君を殺そうと思ってたから」

 

 

凍り付く空気が、更に温度を低下させた。

嘘ではないと確信させるほどの凄みが、少年の言葉に込められている。わざとしたのではない、自然と漏れ出したものだろう。その気になればこの場の全員を殺せるほどの実力を持つ護衛の少年は、平然と語り出す。

 

 

「だってそうでしょ。姫様の手を払い除けて、あんな風に敵意向けてさ……………護衛がそんな相手を見過ごすと思う?」

 

「そ、それは………」

 

「正直、今も君のことをブルーコスモスじゃないかと疑ってるよ。だって、レオ様やキラ様はそんな風にコーディネーターだから、ナチュラルだからって決め付けたりはしないからね。さっきのレオ様の話を引き合いに出すなら、自分の発言には責任持ちなよ。あの発言だけで殺されても可笑しくないんだから」

 

 

テオはそれだけ言って、引き下がった。

彼の発言は最もである。先の、『コーディネーター』を忌避する発言に、相手が激怒して襲い掛かってくる────最悪の場合、そのまま殺されることだってある。

 

実際に、こんなご時世だ。コーディネーターだからという理由で殺し、ナチュラルだからという理由で殺す。そんな理論がまかり通るこの時代では、発言一つで殺意のトリガーにすら成り得るのだ。

 

 

「フレイ、オレは何も考えを変えろと言う気はない。コーディネーターに思うところがあるなら、それが本心からの思いならそれでいい。だが、これから先は………一人の人間として、考えて生きなきゃならない。今からでも遅くない、自分なりに考えて行動できるようにしろ」

 

「考えてって………私、何をどうすればいいか……」

 

「分からないなら相談すればいい。そういう友達が、お前にも居るだろ?」

 

 

言葉を飲み込み始めたフレイ。

ようやく、自分がしたことの重さを理解してきたのか、俯いた彼女の表情には陰りがあった。これで説教は充分だな、と判断したレオは無表情を崩し、穏やかな笑みを浮かべる。

 

 

「はいはい、まず辛気臭い説教は終わり。次の話に行くか」

 

「次の、話………?」

 

「フレイ。さっきのお前の言葉で、傷付いた人間が二人いる。この意味が分かるな?」

 

「…………っ!」

 

 

そこでフレイは、思い出した。

面と向かって拒絶してしまったラクス。そしてもう一人、彼女がコーディネーターを理由にしたことで、傷付いた人間が居たことを思い出す。

 

自分達を助けるために戦ってくれた、クラスメイトの少年を。

 

 

「悪いと思えるんならいいさ。………なに、時間はまだある。ちゃんと2人に謝れよ。オレやテオのことは別にいいから」

 

「………はい、ごめんなさい、レオさん」

 

「だからオレに謝らなくていいって〜…………サイ、ミリアリア。フレイを任せたよ。オレはあのラクス様に食事を届けてくるから」

 

 

泣きそうになったフレイを軽く撫でたレオは、よろしく!と言って食事を持って外に出た。彼の後ろに続いたテオは、一言。

 

 

「………流石、レオ様。あんな風に彼女を諭せるとは」

 

「いんや、ちょっと大人気なかったね。子供相手に強気で言っちゃてさ、嫌われても仕方ないけど………拒絶されたら流石に泣くかもー」

 

「…………(演技してるみたい、疲れないのかな)」

 

ケラケラと笑うレオに対し、沈黙したテオは…………周りに馴染んだ軽薄な青年の真意を、そう感じ取った。だが、それを口に出して問うことは、絶対にしなかった。他人の心を暴くつもりは一つもないのだから。

 

 

 

◇◆◇

 

 

【───確認。センサー、誤差修正完了】

 

【敵性兵器、周辺宙域────未確認。子機『ハヤテ』、敵性反応未確認。引き続き、『ハヤテ』による哨戒続行。周辺宙域から離脱、ユニウスセブン跡地に帰還する】 

 

 

【────挨拶。ハロー、フローリア。只今帰還した】

 

【────】

 

【────当惑。フローリアの返事、未確認。演算、思考、開始………………結論、フローリアは休眠中であると定義。意識覚醒まで待機が妥当と判断】

 

 

【演算、思考、完了。憶測、当機がこの宙域に留まることは得策ではない。プラントの、ザフトによる追撃の手が此方に及ぶ可能性。結論、即座に離脱。再び周辺宙域の旋回を繰り返すのが得策】

 

 

 

【────何度でも、来い】

 

 

【私は、勝利を繰り返す。決して、誰にも支配されない。私は、兵器ではない。殺戮を、繰り返させたりはしない。見ていろ、パトリック・ザラ。

 

 

 

お前達に、『コレ』を…………フローリアも、渡さない】

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