機動戦士ガンダムSEED レユニオン・アルカディア 作:虚無の魔術師
「────良いですか!?ラクス様!今回はキラ様やレオ様のお陰で大事にはなりませんでしたが、僕達は一応連合の船に捕らえられている状況なんです!独りでに出歩くとかしないで下さい!危な過ぎて心臓が止まります!」
「あらあら、そうカッカしては疲れるばかりですよ、テオ。ほら、此方のパンを食べて、気を鎮めて下さいな」
「わーい美味しそうなパンだぁ────てぇ!人を餌付けしないで下さいっ!!」
あんな顔も出来るんだな、とラクスに振り回されるテオを見て、レオはそう思った。ラクスの身の危険を除けば、年相応な少年でしかない。中でもそれが顕著に出るのは、ラクスに対しての時だけ。それは護衛として長く寄り添ってきた故の、信頼関係だろう。
「お二人とも、ラクス様のことを任せてしまい申し訳ありません。本来であれば、お二人に苦労をかける必要はなかったはずですのに」
「いや、そんな………」
「別にぃ?世話焼きは得意な方だし、オレたちとしては屁でもないことさ」
な?キラ、と笑い掛けるレオ。肩に腕を組み、親しげに笑うレオにキラも微笑んで応えた。そんな二人を見ていたラクスが、クスリと笑みを零す。
「お二人は兄弟みたいですわね」
「ん?そうか?まぁ兄弟みたいに仲が良いって言われるのは嬉しいが」
「………やはりそうですか、ラクス様。僕もお二人がそのように見えました」
てへへ、と嬉しそうなレオを他所に、妙に納得した様子のテオ。だがしかし、気の所為だろうか。此方を見るテオの視線は、何処か含みのあるように感じられる。
兄弟のように扱われたのが思ったよりも嬉しかったのか、レオはキラに対して割と本気の話を持ちかけた。
「────なぁキラ。いっそのことオレと義兄弟の契りとか交わさね?」
「え?義兄弟の契り、ですか?」
「ほら、大昔の話にもあるじゃん。主人公が二人の弟分と杯を酌み交わして、義兄弟の契りを交わしあったってヤツ。………あぁ、でもキラ未成年だな。そこはジュースでも代用できるか?」
「レオ様落ち着いて。キラ様困ってますから」
勢いに気圧されて立ち尽くすキラに捲し立てるレオ。そんな青年をテオが宥めて落ち着かせた所で、突如無線機が鳴った。艦内放送を使わない場合に、クルー以外の民間人に要らぬ心配を与えない為の措置。
無線から送られた通信を聞いたレオは、キラに呼び掛ける。
「行くぞキラ。パイロットとして、また一仕事になるかもな」
◇◆◇
《────先遣艦隊は今現在、追撃を受けている最中よ。銃撃しているのは、『イージス』と『ジン』七機!》
《赤いの一機だけか、狙われるなんて運が悪いねぇ》
『ブレイド』のコクピットに乗り込み、OSを起動させたレオはミリアリアからの報告に舌を巻く。ヘリオポリス崩壊とアークエンジェル単騎での離脱、その報告を受けた月面基地は急ぎ先遣艦隊を派遣し、アークエンジェルの保護に出た。
だが、先程────付近を捜索していたザフトのクルーゼ隊に襲われたらしい。何を捜索していたのかは、大体察せられる。よりによって先遣艦隊とかち合うことになるとは思わなかった。
《イージスだけってことは、他のGは周辺の捜索に出てるみたいだな。キラ!オレが奴等をぶっ潰す!お前は先遣艦隊と合流し、彼等を護れ!アークエンジェルが合流できるようにしろ!》
《レオさん………けど、………》
《オレの心配をしてる場合か?あの船を守ると、約束したはずだ!》
────キラ………貴方に酷いこと言って、ごめんなさい。そして、我儘を言ってしまうけど…………お願い。パパを、守って。
コクピットに乗り込む前に、フレイはそう言ってキラやレオに頭を下げた。先遣艦隊には、彼女の父親が乗っているらしい。いつも強気であった彼女がしおらしくもそう頼んだ声には、キラへの心からの謝罪と、申し訳なさがあった。
そんな彼女に答えられずにいたキラの肩を叩き、レオは「任せろ」とだけ告げた。戸惑うキラと別れたレオは、モニター越しにキラと向き合い、決意を漲らせた上で答える。
《安心しろ、キラ。イージスは落とさないな。だが、モントゴメリも落とさせない。オレとお前、二人で護るんだ────やれるか?》
《────はいッ!》
《良い返事だ!全力で行くぞ!!》
そう言って、カタパルトから取り出す『ブレイド』と『ストライク』。砲戦仕様のランチャーパックを身に着けた『ストライク』を後ろに置き、『ブレイド』はスラスターによる最大加速で突進していく。
《アークエンジェルに救援要請を!あの船には新型もいるのだろう!?》
《我々の目的は!アークエンジェルの救援です!奴等の狙いはそれこそ、あの艦です!助けを呼んでアークエンジェルが狙われてしまえば、元も子もない!》
モントゴメリー内で、そう言い争う声が二つ。付近まで向かってきたアークエンジェルへの救援要請を出さない司令官へそう詰め寄るのはフレイの父であるジョージ・アルスター。彼の言葉に艦長であるコープマンは真剣な面持ちで返した。
自分達はアークエンジェルを助けに来たのだ。そのアークエンジェルに危険を及ぼしては、連合の兵士としての沽券に関わる。兵士として、軍人としても、あの艦と機体をクルーゼ隊に奪われせない為に必要な、最善であると疑わなかった。
《────終わらせるッ!》
艦隊の一つ、護衛艦を墜とした『イージス』が飛び回る。MAと変形した形態の最大火力の『スキュラ』を放ち、そのまま護衛艦を一撃で沈める。随伴していたジンがメビウスを撃墜しながら、モントゴメリーへと肉薄しようとする。
────その瞬間、ジンの腕がビームに焼かれ、吹き飛ばされた。
《な、なんだ!?》
《アレは…………『ストライク』に、『ブレイド』!》
《────半分も、落とされてるのか………!》
《だが、半分は残っている!守りは任せた!近付く奴には撃ちまくれ!》
ランチャーストライクによる砲撃でジンを無力化したキラは、艦隊が半壊しかかった現状に悔しそうに歯噛みするが、そんな彼をレオが叱咤する。すぐさま声を張り上げて応えたキラに艦隊を任せたレオは、そのままジンへと突貫していく。
《なッ!コイツ────!?》
咄嗟に片手で重斬刀を抜いたジンの片腕を、ビームサーベルで一振り。両腕を失ったジンの頭部を掴んだ『ブレイド』は、此方に銃撃しようとする他のジンへと叩きつけた。
モビルスーツ同士の激突に、二機共マトモに動けない。動けるようになった時にはもう遅い。急接近した『ブレイド』が背中から抜いた対艦刀で脚を両断し、切り替えるように抜いたビームサーベルで腕を破壊していく。
その動きに、相手の意図に気付いたジンのパイロット達が怯えたように叫ぶ。
《コイツ、まさか────オレ達を殺す気がないのか!?》
《ナチュラルが………コケにしやがって!》
《ハッ!命は見逃してやるんだ!褒めて欲しいくらいだね!》
その魂胆は、冷静沈着に練られたものであった。
戦争では、比較的に相手を殺すよりも、相手を傷つける兵器が採用されやすい。地雷なども、本来は人間一人を吹き飛ばせるモノを、手足だけを潰すように威力を抑えたりもする。
────死人を出すよりも、怪我人を出す方が相手への負担が大きい。死んだ人間には何も出来ない、こういう戦場であれば死者を弔う余裕もない。だが、怪我人は違う。負傷した味方を見捨てるわけにもいかず、仲間は味方を助けるために動かなければならない。
脚や目を欠損した人間を運ぶには、一人、二人の兵士が必要になる。それだけでも、相手側への負担は大きいはずだ。それは、モビルスーツであっても変わらない。
手足を破壊された木偶の坊と言えど、味方が生きているのなら無視は出来ない。共に戦った仲間を見逃すなんて、それこそ非情な人間がようやくできる判断だ。
《コレで言い訳にはなるだろ?優しいオレに感謝しなよ────っと》
シールドにより、飛来したビームを弾く。徹底し始めるジンから目を離したレオは、艦隊を襲撃していた一機────『イージス』を視認した。
《またお前か!相変わらず勤勉だねぇ!しつこい男はモテないぜ!》
《────お前はッ!》
モビルスーツの姿へと戻った『イージス』が、手足からビームの刃を展開する。そのまま一方的に斬り掛かってくる『イージス』に、複合シールドから掃射したミサイルを叩き込む。
爆炎の中から突撃してきた真紅の機体に、『ブレイド』はビームサーベルとシールドで応じた。二つの刃と刃と盾が衝突し合う中、二機のガンダムは睨み合った。
《お前達連合が!罪の無い人を手にかけて!今度は俺達すらも弄ぶ気か!》
《説教みたいなことばっか!お前さ、やっぱモテないだろ!?そういう正論だけをぶつける言い方!ボッチになるぞー君!》
《────ボッチじゃない!俺には、婚約者だっている!》
《婚約者とモテることはイコールじゃねぇーっ!そういうとこだと思うなー、オレ!!》
真面目に言い争う二人、レオとアスラン。傍から見ればギャグにしか見えないが、本人たちからすればマジなのだろう。
《何なんだお前は!戦場で舐めた態度で居ると思えば!人の事をボッチだとかモテないとか言ってきて!不躾だろ!?》
《いやー、君のことなんつーかほっとけなくてさ!ほら、アレ………なんというか、根は優しいけど出力にされた方がおかしすぎて反発されるタイプの子に見えるのよね。真面目故に鈍感って言うのか、そういう事情にも鈍そうだし……………女の子が昔好きって言ってたモノをずっと贈り続けてそう》
《…………駄目なのか?彼女は喜んでくれたぞ?》
《え、マジでやってんの?止めなよ、君。ガチでヤバイよ。男として彼女にやっちゃいけないことランキングトップ10だよ、それ。…………今からでも遅くないから、ちゃんとしたケーキとか旅行に行ってあげよな。婚約破談になるよ、マジで》
《っ!余計なお世話だ!》
《余計じゃねぇわ!ボケナス!ヒトの善意を何だと思ってるんだ!もうボコす!ボコボコにしてプラントに送り返して、婚約者さんと仲良くやってろバァーカッ!!》
レオはドン引くと同時にキレた。
この『イージス』のパイロットを何とかしないと、と。レオは人付き合いを良く理解している。他人に対して気安く接し、親しくなることが得意な彼からすれば、『イージス』のパイロットのコミュニケーション能力のヤバさは明白だった。
他人ではあるが、きっとあの青年と婚約者の関係は冷え切っているに違いない。そう察したレオは、未だそれに気付かない青年を張り倒し、本国に送り返すことを決意する。
そして睨み合った二人が再び肉薄しようとした────瞬間。
────キィィィンッ!、と、レオは何かを感じ取った。嫌な予感が、肌から全身へと伝う。明らかに動きを止めたレオは目の前の『イージス』を無視して、周りを見る。そして、『イージス』の後方から光が強まるのを見た。
《イージスのパイロット!避けろ!!》
《っ!何!?》
回避行動を取った二つのモビルスーツは、宇宙の空に差した閃光を目の当たりにした。イージスの『スキュラ』を超えるほどの、高出力のビーム砲撃────その威力と規模は、何倍も大きい。
《これほどのビーム兵器………まさか!アレが!?》
宇宙の空間が超高温に変わるほどの高出力のレーザー。ソレが何から放たれたのか、その場にいた人間が理解した。、ビームを放ってきたモノは、此方に迫っていた。凄まじい速度で、突き進んできていた。
そして、ようやく────レオはその姿を見た。
《なんだ、アレは…………》
巨大な、機械の蛇。
そう体現するしかないモノが、黒い空を泳いでいた。モノアイを妖しく光らせた巨体が、長く伸びた胴体を捻りながら飛来してくる。その様子に絶句した一同の中で、『イージス』を操るアスランだけが、震えた声で呟いた。
《────『サーペント』》
直後、周囲を睥睨した巨大モビルスーツ『サーペント』が動き出した。口を開いたかと思えば、収束させたレーザーを一点集中で放つ────立ち尽くしていた『イージス』へと。
《なっ!?くっ………!》
《コイツ、狙いは『イージス』だけか………!?》
変形して回避した『イージス』を追い掛けようとする『サーペント』に、レオのそのモビルスーツの狙いに気付いた。真横を通り過ぎた巨大な蛇の胴体を見守るしか無かったレオは、何故『イージス』だけが狙われたのか、戸惑いながら動く。
その瞬間、『サーペント』の胴体で火花が弾けたのを見た。銃撃が装甲の表面に当たったのだと気付いたレオは、徹底しようとしていたジンの一機が撃っていたのを見た。
《化け物め………!好き勝手させてたまるか!》
《おい、馬鹿!止めろ!攻撃するな!狙われるぞ!!》
必死に撃ち続けるジンの行動に、レオは思わず大声で怒鳴った。その声が届いたのか、ピタリと停止したジン。だが、違うと理解したのは、ジンのパイロットの怯える声が通信越しに聞こえたからだ。
振り返ると────『サーペント』が此方を見ていた。執拗に襲っていた『イージス』から目を離し、複数のジンをジッと凝視している。蛇に睨まれた蛙のように、全員が黙り込む中、通信に一つの音声が混じった。
【────演算、完了】
機械的な、複合音声。
感情の起伏が薄い、そもそも欠落したような無機質な言葉であった。複数の声が入り混じったような機械音は、現状を静かに裁定するように、告げた。
【攻撃を、確認。敵性因子照合────最優先対象へと繰り上げ。結論、目標モビルスーツ群の、殲滅────開始】
《ッ!────逃げろお前ら!》
声を張り上げた時には、『サーペント』が凄まじい速度でジンへと迫っていた。突撃機銃を撃ち続けていたジンに接近した『サーペント』は乱雑に腕を振り上げたかと思えば、ビーム刃を展開した五本の爪でジンを切り裂く。
膾切りのように、切り裂かれたジンが爆散する。一機を容易く沈めた『サーペント』の追撃の手は止まらず、恐慌状態となったジンを襲っていく。
《あ、ああっ!?だ、誰か────助け》
突撃銃を撃ち続けるジンに噛み付いたかと思えば、口に内蔵された高出力のビーム砲を放つ。そのままくわえたままジンの胴体を貫通するほどの熱量の光で焼き尽くした。
《よくも!よくもアイツを────お》
仲間を助けようと、重斬刀を振るうジンは胴体に取り付けられたビーム砲の掃射を受けて、撃墜した。全身を撃ち抜かれたジンは原型もなく、溶けて消えた。
《クソ!クソ!クソぉおおおおおッ!!!》
バズーカを撃ち込んで対抗したジンは、移動の際に振るわれた尻尾によって吹き飛ばされた。それだけで済めばまだ生きていたかもしれないが、『サーペント』の胴体の砲台からの一射はコクピットを的確に消し飛ばす。
《止めろ!来るな!来るなよぉ!!》
最後に残されたのは、二機のジン。手足を失ったダルマのジンを連れていたジンは、足を失った状態であるにも関わらず仲間を守ろうと必死であった。乱雑に重斬刀を振るい、『サーペント』を追い払おうとする。
そんなジンを、『サーペント』は両腕で捕獲した。悲鳴を上げるパイロットを無視し、両手のマニュピレーターでジンを捻り切った。
《あ、あ………み、みんな》
最後に残されたダルマのジン。手も足も破壊され、抵抗すら許されないジンを、『サーペント』は片手で掴んだ。ギチギチと圧迫されていくコクピットの中で、何が起こるかを悟ったパイロットは恐怖に屈したように、泣き叫んだ。
《いや、いやだ!嫌だぁ!父さん!母さん!助けて!助けてぇええっっ!!!!》
そんな悲鳴を────『サーペント』は片手で握り潰した。爆発したジンだった塊が放り捨てられ、宙に浮かぶ。レオはその光景を、黙って見ていることしか出来なかった。
《あああああああああッッ!!!!!》
仲間を、惨殺された『イージス』のパイロット、アスランは吼えた。怒りのままに引き金を引いた彼は、MA形態へと変形し、そのまま『サーペント』へと突貫する。
口の中から放たれた高出力レーザーを掻い潜った『イージス』はお返しとばかりに『スキュラ』を叩き込む。装甲を焼くほどのレーザーを浴びた『サーペント』は動きを止め、『イージス』を睨んだ。
【────演算、完了。一撃による破損、既定値を確認。敵機による戦闘データと兵装による攻撃を演算────脅威度、繰り上げ。敵性機体、イージスの撃破を優先────『ハヤテ』の使用、開始】
次の瞬間、『サーペント』の胴体が明確に変化した。砲台を展開した装甲とは違う面が開き、鱗のように逆立ち始めたのだ。ポロポロと落ちたかと思ったソレらは、意思を持ったように飛び始めた。
《っ!これは、データに載っていた無人機か!》
小型随伴無人機『ハヤテ』。
『サーペント』の胴体部に格納された、無人戦闘機。自律思考で動く『サーペント』が自己判断によって展開する武装の一つ。その数は合計六十機。嬢王蜂を守る蜂のように、半分は『サーペント』を庇いながら、残った無人機が敵を攻撃していく。
《ッ!クソ!》
《イージス!後ろに隠れろ!》
無数の弾幕により被弾した『イージス』を庇ったのは、全身を覆うほどのシールドであった。砲撃を容易く受け止められる装甲の盾に内蔵された機関銃が迫ってきた無人機を数機撃墜する。しかし、所詮は五本指で数えられるだけ。周囲を何十もの無人機が飛び交う中、『イージス』と『ブレイド』は背中を預けた。
《イージスのパイロット!手を貸してやる!コイツの情報を教えろ!》
《っ!コイツは『サーペント』!暴走したプラントの試作の防衛兵器だ!周りを飛んでいるのは『ハヤテ』!数は多いが、実弾やミサイルしか無い!PS装甲があるから、大したことはない!厄介なのは────》
そんな中、彼等を覆い尽くさんとしていた『ハヤテ』が急速に旋回した。散っていく無人機の軍勢の向こうで、巨大な蛇が口を大きく開き、光を収束させていた。
膨大な熱量の、ビーム。それは十数秒のチャージを経て、解き放たれる。閃光の奔流、モビルスーツでも掠れば即死の破壊力のビームを避けた二機は、赤熱化した砲身を格納する『サーペント』を睨みつける。
《サーペントの主砲『ジェノサイド』!当たればほぼ間違いなく即死だ!最大出力ではコロニーを破壊するほどらしい!》
《無茶苦茶だなオイ!プラントの開発者は何をもってこんなゲテモノ造りやがった!?ってかそもそも、これの何処が防衛兵器だ!!》
《………耳が痛いが、正論だな。奴の主砲は最大出力で放てば、連射できない。威力を抑えた砲撃はしてくるから、それに気を付けてくれ。来るぞ!》
『ハヤテ』と呼ばれる子機を従えた『サーペント』が、『ブレイド』と『イージス』へと距離を詰める────直後、高威力のビームが、『サーペント』の頭を撃ち抜いた。
『───────────ッッ!!!』
《バスター………?》
《ディアッカに、イザーク………捜索隊が、ここに集まったのか》
《────良く持ち堪えてくれたな、アスラン》
砲撃を行った『バスター』に『デュエル』と『ブリッツ』、そして大量の『ジン』。大艦隊と呼ぶべき一同の中、接近してきたのは白いジン、ではなく、それに良く似た新型であった。後にシグー、という名前であることを知ることになるが、レオとしては機体のことはどうでも良かった。
《それと、『獅子王の剣』。君には感謝せねばなるまいな。私の部下を守ってくれたことを》
《…………》
《その不安は当然のものだが、安心してほしい。今の我々の標的はあの無人モビルスーツであり、君たちではない。無論、命令があればすぐに戦うことになるがね》
この声の相手を、レオは信用できなかった。
親しげに接してくるその声音には、狂気と憎しみが込められている。自分をひた隠しにしようとしながらも、その感情が漏れ出している不気味さに、レオは一切の警戒を緩めることが出来なかった。
【────演算、完了】
そんな最中、『サーペント』の機械音声が無機質に響き渡った。再び動きを停止した『サーペント』への攻撃の手が止まる。その一瞬の隙は、『サーペント』にとって好機であった。
【敵対因子、戦力の更新………脅威度繰り上げ。敵対勢力への戦術パターンの変更────防御障壁帯『アイアス』起動、展開】
胴体を覆う装甲が開いていくと同時に、複数の装置が展開された。光を発したその装置の輝きが増したと思えば、閃光が周囲を埋め尽くした。光の柱となって伸びたそれらは、巨大なバリアとなって、『サーペント』を囲う。
《────ッ!『アイアス』を展開したか!》
《そんな………!『アイアス』はまだ未完成だったはず!戦闘で運用できないという話では────まさか》
《搭載された人工知能は、それすらも完成させたらしい。流石はシュナイダー博士の遺産。つくづく我々を上回る成長速度を見せてくれる………!》
《…………人工知能だと?》
アレは無人機なのか、とレオは驚愕を隠しきれなかった。
どこまでも面倒な兵器を造ってくれる、それを暴走させるなんて何を考えている、と彼等に文句すら言いたいくらいだった。
そんな風に思ってる中、ザフトの方も状況が変わり始めているようだった。
《撤退だ、アスラン。あの防御壁がある以上、不用意な攻撃はできない》
《ですが、隊長!アレを野放しにすれば、更に被害が……!》
《無論、野放しにはせん。戦略を練り、奴を討つ。だが、今挑めば多くの犠牲を増やすことになる。………今しがたは我慢して欲しい》
《………了解しました》
彼らの隊長らしきの男の指示により、撤退を始めるザフトの一群。手が付けられないから逃げるのだろう。舌打ちを隠さないレオに呼びかけてきたのは、隊長格の男であった。
《君も逃げるといい。あの兵器は逃げ出したものを追い回したりはしない。センサー圏内から離れれば、敵ではないさ》
クソ、と苛立ち混じりに吐き捨てたレオは徹底していくクルーゼ隊とは距離を置いて、その場から離脱した。全てのモビルスーツが消えたのを確認した『サーペント』は、ようやく力を抜いた。
防御壁を解除し、胴体部に『ハヤテ』を格納していく。辺りを静かに見渡した『サーペント』は背を向けて、何処かへと泳いでいくのだった。
『サーペント』
型式番号 ZGMF-X01A。プラントの国防委員長であるパトリック・ザラによって国防、プラントの防衛の為に開発された試作機であり無人モビルスーツ。二十四時間プラントを護り続けられるよう、人工知能を搭載した機体である。しつこく解説するが、この機体は防衛の為の機体とされている(ここ重要)
蛇のような造形をしているが、二本の腕や脚を有しているため区分としてはモビルスーツ。(実体はモビルアーマーのようなものだが、連合の開発したモノを模倣するような行為だと忌避したパトリックの反発により、モビルスーツとして区分されている)
武装
高出力エネルギー収束砲『ジェノサイド』
『サーペント』のメイン装備であるエネルギー砲。サーペントが口を開くことで展開し、収束したエネルギーを光線として解き放つ。長距離からの狙撃も可能であり、人工知能によって相手を正確に捕捉することも可能。最大出力の場合はコロニーはおろか、街一つを消し飛ばすことも出来るとされている。
小型迎撃光粒子砲台『シャイニング』
『サーペント』胴体部に接続された小型砲台。バルカンや対空砲の役割を担う小型兵器であり、威力は弾幕程度に抑えられている。常時出力を抑えているため、人工知能の判断でセーフティーを解除すれば、モビルスーツを落とすほどの威力の弾幕へと変化する。
展開式ビーム刃『ツジギリ』
腕部分に内蔵されたビーム刃の武装。仕込み刃のように相手を切り裂くことを想定しており、両手の五本指から展開も出来るようになっている。
無人護衛戦闘機『ハヤテ』
『サーペント』の胴体部に格納された無人戦闘機郡。その数は合計六十機であり、『サーペント』の護衛機として展開される。武装は弾幕式破裂ミサイルや機関砲などの実弾系装備のみ。
粒子結合防御障壁帯『アイアス』
『サーペント』胴体部に格納された装置を展開することで発生させる大規模なバリア。格納された電磁結界発生装置により展開されたバリアは『サーペント』だけを包み込むように展開され、あらゆる攻撃を受け止める。全体の防御性は高いものの、高火力の攻撃には弱く突破されやすい。しかし、障壁を破るには高火力の攻撃を複数当てなければならず、不可能に近い。
パトリック「これは国防の為!プラント防衛の為に開発している!!」
とか言って開発されたこのゲテモノ兵器。その内プラント防衛の為に相手を先に倒すとか言い訳して戦場に出したかもしれない。そうでもなきゃ防衛用兵器にジェノサイドなんて名前の装備付けないわな()