無法都市での、ゼータの言う情報を聞く為に宿に入る。
入ったのは良いが。
「ゼータ、この宿って、明らかに」
その一言と共に、宿に入った当初は言えなかった事をゼータに向けて言う。
当初、俺は適当なスラムの宿に泊まる為に探していたのだが、その前にゼータが既に宿を取っているから、そこに行こうと行っていた。
子供の時にも、わりとしっかりとした性格という事もあったのだが。
「そうだね、色町の宿だよ」
俺の疑問に対して、ゼータは特に気にした様子もなく答える。
「いや、マズイだろ」
俺は思わず呟く。
あれからの年月を考えて、デルタとゼータの年齢はこの世界でも結婚しても可笑しくない年齢だ。
俺がこれまで回ってきた日本基準の世界でも、まだ高校生である事を考えれば、こうした宿で3人で過ごすのはかなり問題がある。
そう考えて、俺が言おうとした時。
「この町は無法だから、あちらの方の宿には、盗聴される可能性があるからね。その点、ここは最低限のマナーもある。
何よりも獣人も働いているからね、怪しまれる可能性も低いという事だよ」
「・・・」
俺の心配していた言葉をまるで先に予感していたようにすらすらと喋る。
まるで、俺の返答をあらかじめ分かっていたように。
「まぁ、良い。それよりもゼータ。さっきの話はなんだ?」
「吸血鬼狩りじゃないの?」
そう、俺は質問する。
それはデルタも疑問に思っていたのか、ゼータに尋ねる。
ついでに現在、デルタは俺に膝枕をされている状態だ。
それを見たゼータは呆れて。
「吸血鬼共は別にこのメンバーだったら簡単に倒せるでしょ。問題はむしろ今、黒の塔を支配している奴だよ」
「黒い塔?」
その言葉と共に目を向けたのは黒の塔。
この無法都市を支配している三つの塔の内の一つであり、そこにはジャガーノートという奴がいるとは聞いているが。
「そのジャガーノートだったら、もう死んでいるよ」
「何」
ゼータからの言葉に俺は思わず呟く。
「実は、この白の塔の支配者とは知り合いでね。彼女から聞いた話だけど」
それと共に、ゼータは続ける。
「そいつは強いのか?」
「強いんだったら、楽しみですけど」
デルタはのんびりとした口調と共に。
「ディエンド」
「「っ」」
その一言に、俺もデルタも目を見開く。
「それは、本当なのか」
俺の問いかけに対して、ゼータは頷く。
「あぁ、ディエンドの特徴は私も覚えているからね。奴が何を狙っているのか、正直に言えば私は分からないけど、ツカサだったら、分かると思うけど」
「・・・海東は、基本はお宝を狙っている。それを考えれば、この無法都市に奴が狙いそうなお宝だと思うが、おそらくあるのは」
「赤の塔という訳か」
どうやら、今回の戦い。
吸血鬼だけじゃなく、あいつと戦う事になるとはな。